説明

車椅子固定装置

【課題】車椅子を繋ぎ止めたワイヤの弛張状態に拘らず、ワイヤ巻取ドラムの回転を抑止し、該ワイヤ巻取ドラムとフックの間のワイヤを引き込んで緊張させ、車椅子の拘束力を充分に維持する車椅子固定装置を提供する。
【解決手段】先端にフック2を設けたワイヤ3と、該ワイヤ3を巻取方向へ付勢して巻回したワイヤ巻取ドラム5と、該ワイヤ巻取ドラム5に備えた回転抑止手段6と、フック2とワイヤ巻取ドラム5の間のワイヤ3を掛け、回転抑止手段6によるワイヤ巻取ドラム5の回転抑止状態でワイヤ3を弛張する様にワイヤ巻取ドラム5に対し遠近移動自在に設けた動滑車7とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子を車内フロアに固定する車椅子固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、先端にフックを備えたワイヤを巻取方向へ付勢した一対のワイヤ巻取ドラムを左右に設け、各ワイヤ巻取ドラムにはドラムギヤを同軸固定し、該ドラムギヤの夫々には、周囲の一部に欠歯部を有する中間ギヤを外接配置すると共に、両中間ギヤ同士を噛合し、一方の中間ギヤには、これを回転駆動させる正逆転可能なモータを連繋した車椅子固定装置が開示されている。
【0003】
この装置は、中間ギヤの欠歯部とドラムギヤとが対応している未噛合状態ではドラムは自由に回転できるため、巻取方向への付勢力に抗してワイヤをドラムから引き出し、そのフックを車椅子に引っ掛けられ、かかる状態でモータを正転させ、中間ギヤがドラムギヤに噛合してドラムを回転させ、ワイヤを巻き取ってこれを緊張し、車椅子を確実に固定する様に成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−265535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記装置にあっては、中間ギヤとドラムギヤとの未噛合状態でドラムからワイヤをこれの巻取方向への付勢力に抗して引き出し、その先端のフックを車椅子に引っ掛けて手放した時に、左右の各ワイヤはドラムの前記付勢力により自動的に巻き取られる様に成しているが、左右のワイヤ巻取り量は必ずしも一定とは限らず、例えば一方のワイヤが弛みを生じたままでモータを駆動させ、両ワイヤを巻き取っても、左右のドラムの回転量は同一であるため、弛んだワイヤを緊張させられなかった。
【0006】
この様に、フックを車椅子に引っ掛けた後のドラムの付勢力によるワイヤの巻取りが不十分であると、モータを駆動しても一方のワイヤに車椅子を車内フロアに繋ぎ止める充分な拘束力が得られることはない。
よってモータを駆動させる前に左右のワイヤの張力を確認する必要があり、その取扱いが甚だ面倒であり、その確認を怠れば、再度ワイヤによる車椅子の繋止操作、即ちモータを逆転させ、左右のワイヤが均等な張力でもって車椅子を繋ぎ止められる様に調整し、再度モータを正転させねばならないといった二度手間を要する。
【0007】
そこで、本発明では、車椅子を繋ぎ止めたワイヤの弛張状態に拘らず、ワイヤ巻取ドラムの回転を抑止し、該ワイヤ巻取ドラムとフックの間のワイヤを引き込んで緊張させ、車椅子の拘束力を充分に維持する様にした車椅子固定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明の車椅子固定装置は、先端にフックを設けたワイヤと、該ワイヤを巻取方向へ付勢して巻回したワイヤ巻取ドラムと、該ワイヤ巻取ドラムに備えた回転抑止手段と、フックとワイヤ巻取ドラムの間のワイヤを掛け、回転抑止手段によるワイヤ巻取ドラムの回転抑止状態でワイヤを弛張する様にワイヤ巻取ドラムに対し遠近移動自在に設けた動滑車とから成ることを特徴とする。
【0009】
具体的には、一対のワイヤ巻取ドラムを左右対称に設けると共に、該ワイヤ巻取ドラムの夫々にドラム歯車を同軸固定し、ワイヤ巻取ドラムの対称軸線上に左右のドラム歯車に同時に噛合・離脱可能なラックを進退自在に設け、該ラックはドラム歯車に噛合する前方へ付勢され、左右のワイヤを夫々に掛止した動滑車は、ラックをドラム歯車から離脱させる後方へ押圧可能にラック前方に位置すると共に、前記対称軸線上を進退自在にして且つ左右揺動自在に設けたシーソーブラケットの左右各端部に取付け、該シーソーブラケットは一連の伝動機構を介して駆動源に連繋され、該駆動源はシーソーブラケットがラックを後方押圧してドラム歯車から離脱させる定位置で停止する様に設定すると共に、左右のワイヤを緊張させるシーソーブラケットの前進中において駆動源の負荷の大きさを検出するトルクリミッタを備え、該トルクリミッタは左右のワイヤが緊張してシーソーブラケットの前進が制止され、駆動源の負荷が設定値以上になった時に駆動源を停止する様に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
要するに本発明は、先端にフックを設けたワイヤを巻取方向へ付勢して巻回したワイヤ巻取ドラムに回転抑止手段を備え、フックとワイヤ巻取ドラムの間のワイヤを動滑車に掛け、該動滑車は回転抑止手段によるワイヤ巻取ドラムの回転抑止状態でワイヤを弛張する様にワイヤ巻取ドラムに対し遠近移動自在に設けたので、車椅子にフックを掛止した後に、車椅子を繋ぎ止めたワイヤの弛張状態に拘らず、回転抑止手段にてワイヤ巻取ドラムの回転を抑止し、かかる状態で、フックとワイヤ巻取ドラムの間のワイヤが掛けられた動滑車をワイヤ巻取ドラムから遠ざける様に移動させることにより、前記ワイヤをワイヤ巻取ドラム側へ引き込む様に緊張させられ、車椅子を充分な拘束力をもって繋ぎ止めることができ、従来の様な上記二度手間を要しない。
又、動滑車をワイヤ巻取ドラムへ近づける様に移動させ、ワイヤの車椅子に対する上記拘束力を解除し、回転抑止手段によるワイヤ巻取ドラムの上記回転抑止を解除することにより、従前と変わりなく、車椅子からフックを離脱したワイヤをワイヤ巻取ドラムの付勢力により巻き取らせることができる。
【0011】
一対のワイヤ巻取ドラムを左右対称に設け、左右のワイヤを夫々に掛止した動滑車は、ワイヤ巻取ドラムの対称軸線上を進退自在にして且つ左右揺動自在に設けたシーソーブラケットの左右各端部に取付けたので、車椅子に左右のフックを掛止して各ワイヤ巻取ドラムの付勢力にて夫々のワイヤを自動的に巻き取らせた状態で、左右のワイヤ巻取ドラムのワイヤ巻取り量が同等でなくても、両ワイヤ巻取ドラムを回転抑止して左右の動滑車を取付けたシーソーブラケットをワイヤ巻取ドラムから遠ざける様に前進させると、弛み量に応じワイヤ巻取ドラムに対する各動滑車の移動量を調節する様にシーソーブラケットが傾き、即ち弛みの小さい方にシーソーブラケットが傾き、両ワイヤを緊張させられ、車椅子を車内フロアに繋ぎ止める充分な拘束力が得られ、よって従来の様に左右のワイヤの張力を確認する必要がなく、取扱いが非常に便利である。
【0012】
各ワイヤ巻取ドラムにドラム歯車を同軸固定し、上記対称軸線上に左右のドラム歯車に同時に噛合・離脱可能なラックを進退自在に設け、該ラックはドラム歯車に噛合する前方へ付勢され、ラックをドラム歯車から離脱させる後方へ押圧可能にラック前方にシーソーブラケットを配置したので、ラックに対するシーソーブラケットの進退位置のみでラックを押圧又は押圧解除でき、これによりワイヤの引き出し又は巻き取りが自在な各ドラムの回転自由状態と、ワイヤの引き出し又は巻き取りが不能な各ドラムの回転抑止状態と成すことができると共に、シーソーブラケットがラックから離脱した前記回転抑止状態では、同時に各ワイヤを緊張させる様に働くため、動作に無駄なく、各行程をシーソーブラケットの単純な進退動作のみでよどみなく進められ、装置全体を比較的簡単な構成と成すことができ、よって故障も少なくその組み付けも容易である。
【0013】
シーソーブラケットは一連の伝動機構を介して駆動源に連繋され、該駆動源は、シーソーブラケットがラックを後方押圧してドラム歯車から離脱させる定位置で停止する様に設定したので、ワイヤの引き出し又は巻き取りが自在な各ワイヤ巻取ドラムの回転自由状態を維持できる。
又、上記駆動源は左右のワイヤを緊張させるシーソーブラケットの前進中において駆動源の負荷の大きさを検出するトルクリミッタを備え、該トルクリミッタは左右のワイヤが緊張してシーソーブラケットの前進が制止され、駆動源の負荷が設定値以上になった時に駆動源を停止する様に設定したので、フックを車椅子に掛止してワイヤ巻取ドラムの付勢力によってワイヤが巻き取られた後に、駆動源を作動してシーソーブラケットを前進させると、左右のワイヤの弛み量に拘らず、必ず各ワイヤを上記の様に緊張させた後に自動停止し、その緊張状態を保持できる。
そして、ワイヤを緊張させたシーソーブラケットの前進位置から左右のワイヤを弛緩させるために駆動源によって後退するシーソーブラケットは上記定位置で停止して、各ワイヤ巻取ドラムの回転自由状態を復帰できる等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車椅子固定装置の一部を破断した斜視図である。
【図2】ワイヤ巻取ドラムの回転自由状態における車椅子固定装置の一部省略平面図である。
【図3】図2のA−A階段式断面図である。
【図4】ワイヤ緊張時における車椅子固定装置の一部省略平面図である。
【図5】弛み量が異なるワイヤの緊張時における車椅子固定装置の一部省略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
本発明に係る車椅子固定装置は、前後に長い方形状で扁平な被せ箱1内に収納されるものにして、該被せ箱1は、車両内に乗車した車椅子を固定する様に、車内フロア適所に凹設した収容部(図示せず)に設置されている。
【0016】
そして、被せ箱1内には、先端にフック2を設けたワイヤ3と、該ワイヤ3を付勢手段4にて巻取方向へ付勢して巻回したワイヤ巻取ドラム5(以下、単にドラム5と称する。)と、該ドラム5に備えた回転抑止手段6と、フック2とドラム5の間のワイヤ3を掛け、回転抑止手段6によるドラム5の回転抑止状態でワイヤ3を弛張する様にドラム5に対し遠近移動自在に設けた動滑車7とを備えている。
【0017】
ドラム5は、被せ箱1の左右方向の中心線を対称軸とする様に、被せ箱1の底板1a後方に車軸5aを直立させて左右対称に設けている。
各ドラム5の上面にはドラム歯車8を同軸固定し、該ドラム歯車8の上方には車軸5aを回転自在に貫通した支持板9を水平配置している。
【0018】
支持板9上には、下端が底板1a上に軸受けされた車軸5aの上端を軸受けするバネケース10を設け、該バネケース10内における車軸5aには付勢手段4である渦巻きバネをワイヤ3の巻取り方向に付勢する様に巻着している。
又、左右のドラム5はワイヤ3の巻取り方向を相互に逆に設定しているため、各ワイヤ3の繰り出し位置をドラム5の相互に内向する側(底板1aの上記中心線側)と成している。
【0019】
そして、ドラム歯車8と同一平面上において、ドラム5の上記対称軸線(底板1aの中心線)上には左右のドラム歯車8に同時に噛合・離脱可能なラック11を進退自在に設けており、該ラック11とドラム歯車8とにより回転抑止手段6を構成している。
ドラム歯車8の外周は半円形の凹凸が交互に形成され、ラック11は全長がドラム歯車8の外径より長尺にして、後端が前端より長い等脚台形を基本形態とし、その左右の斜辺にドラム歯車8の凹凸に噛合可能な凹凸を形成している。
【0020】
ラック11は、支持板9を介したその上面にバネケース10間で前後に進退自在に摺動する案内基板12を配置している。
案内基板12とラック11の前後には、支持板9において上記対称軸線上に所定長さに渡って貫設した長孔9aを摺動自在に挿通する一対の支軸13を架設し、案内基板12とラック11を一体的に連結している。
又、案内基板12の後端には、支持板9に立設した後端壁9bに平行な立壁12aを設け、該立壁12aと後端壁9bとの間には、ラック11をドラム歯車8と噛合する前方へ付勢する圧縮コイルバネ14(以下、ラックバネ14と称する。)を介装している。
【0021】
左右のドラム5から繰り出されるワイヤ3を夫々に掛止した動滑車7は、ラック11をドラム歯車8から離脱させる後方へ押圧可能にラック11前方に配置すると共に、上記対称軸線上を進退自在にして且つ左右揺動自在に設けたシーソーブラケット15の左右各端部に取付けられている。
このシーソーブラケット15は、動滑車7の車軸7aを鉛直方向に回転自在に支持する上下軸受け板16、17を設け、該上下軸受け板16、17の中央には、後述の歯付きクランク円盤18の適所に基端が枢着された連接棒19の先端を枢着し、該先端枢軸19aを支点として連接棒19はシーソーブラケット15を左右揺動自在に支持している。
【0022】
連接棒19において下軸受け板17を貫通する先端枢軸19aの下端は、底板1aにおける中心線(上記対称軸線)上に所定長さに渡って貫設した案内溝20に摺動自在に装着し、シーソーブラケット15を案内溝20に沿って進退自在と成している。
又、シーソーブラケット15の上軸受け板16の後端中央は、円弧状に湾出した凸部16aを設け、該凸部16aは、これと同曲率の円弧状に湾入形成したラック11の前端を押圧可能と成している。
【0023】
尚、シーソーブラケット15の左右の動滑車7に掛止したワイヤ3の先端側は、ドラム5の左右斜め前方で底板1aと支持板9との間に車軸を回転自在に垂直支持した縦軸定滑車21と、該縦軸定滑車21の近傍であって底板1a上の後方隅角部に固定したコ字状ブラケットに車軸が水平架設された横軸定滑車22とに案内掛止されている。
【0024】
そして、シーソーブラケット15は、上記歯付きクランク円盤18、連接棒19及び案内溝20から成る一連の伝動機構23を介して底板1a上の右側前方に固定された正逆回転可能な電動モータから成る駆動源24に連繋されている。
歯付きクランク円盤18(以下、円盤18と称する。)は、底板1a上において、その中心線上の前方に回転自在に装着されており、右側の略半円周部位に駆動源24の駆動軸に軸着した駆動歯車24aが噛合する歯部18aを設け、駆動歯車24aの正逆回転により円盤18を介して連接棒19と共にシーソーブラケット15を対称軸線上の案内溝20に沿って前後動する様に成している。
【0025】
駆動源24は、その駆動を制御するトルクリミッタを図示しない制御装置内に備えている。
このトルクリミッタは、駆動源24の作動による左右のワイヤ3を緊張させるシーソーブラケット15の前進中において、駆動源24の負荷の大きさを検出し、左右のワイヤ3が緊張してシーソーブラケット15の前進が制止され、駆動源24の負荷が設定値以上になった時にトルクリミッタからの検出信号を制御装置の制御部に送出し、上記検出信号を受信した制御部により、駆動源24を停止する様に設定している。
【0026】
又、円盤18の歯無し部適所には、底板1a上において円盤18の左側に固定すると共に、駆動源24の上記制御装置に接続して成るリミットスイッチ25のスイッチレバー25aを押圧及び押圧解除するカム面18bを形成し、該カム面18bは、駆動源24の作動で回転する円盤18を介して後退する連接棒19により、シーソーブラケット15の凸部16aがラック11の前端を後方へ押圧してドラム歯車8からラック11を離脱させる定位置に到達した回転位置で、スイッチレバー25aを押圧して駆動源24を停止させる様に設定している。
【0027】
この様に構成された車椅子固定装置にあっては、図1〜3に示すワイヤ3を引き出し又は巻き取りが自在な各ドラム5の回転自由状態では、連接棒19の先端枢軸19aが案内溝20後端に位置する様に円盤18の歯部18aの始端に駆動歯車24aが噛合しており、駆動源24が停止していることでその状態が維持されている。
【0028】
上記の様に先端枢軸19aが案内溝20後端に位置することにより、凸部16aがラックバネ14の付勢力に抗してラック11の前端を後方へ押圧してドラム歯車8からラック11を離脱させる定位置にシーソーブラケット15を配置している。
【0029】
そして、乗車した車椅子を固定する場合、付勢手段4の付勢力に抗してワイヤ3をドラム5から引き出し、その先端のフック2を車椅子のフレーム適所に掛止してフック2を手放す。
すると、付勢手段4の付勢力により、ワイヤ3はドラム5に巻き取られる。
尚、この時各ドラム5に巻き取られるワイヤ3の緊張状態は確認する必要がなく、ドラム5のワイヤ巻取り量は左右で同等でなくて良い。
【0030】
次いで、駆動源24を作動させて駆動歯車24aを左回りに回転させ、これに噛合する円盤18を右回りに回転させる。
これにより、連接棒19は後退し、その先端枢軸19aは案内溝20内をその後端から前進し、同時にシーソーブラケット15を前進させる。
【0031】
シーソーブラケット15の前進により、これがラックバネ14の付勢力に抗して押圧していたラック11の前端から離脱するため、ラック11はラックバネ14の付勢力により長孔9aに沿って前方の支軸13が長孔9a前端に達するまで前進し、左右のドラム歯車8に噛合する。
かかるドラム歯車8とラック11の噛合状態では、ドラム5の回転は抑止され、かかる状態は、ラックバネ14の付勢力により保持されている。
【0032】
ドラム5の上記回転抑止状態では、付勢手段4による左右のドラム5のワイヤ巻取り量が一定でなくても、左右の動滑車7を取付けたシーソーブラケット15がドラム5から遠ざかる様に前進することによって、各ワイヤ3をその弛み量に応じ緊張させる。
【0033】
例えば、図4に示す様に、左右のワイヤ3の弛み量が同等であれば、シーソーブラケット15は傾くことなく直進し、左右のワイヤ3が同様に緊張してシーソーブラケット15の前進が制止され、トルクリミッタによって駆動源24は停止する。
又、図5に示す様に、右側のワイヤ3の弛み量が大きい場合では、左側のワイヤ3が緊張してもなお右側のワイヤ3は弛みを有するため、このワイヤ3を緊張させるまでシーソーブラケット15は先端枢軸19aを支点として右側が前方へ突き出る様に傾きながら前進し、右側のワイヤ3が緊張した時に上記と同様にトルクリミッタによって駆動源24は停止する。
この様に、両ワイヤ3を緊張させた時点で停止する駆動源24により、その緊張状態が維持されるため、車椅子を車内フロアに充分な拘束力をもって繋ぎ止められる。
【0034】
車椅子のワイヤ3による上記拘束を解くには、駆動源24を作動させ、駆動歯車24aを上記とは逆方向に回転させることにより、円盤18を介して連接棒19を案内溝20に沿って後退させる。
これにより、左右のワイヤ3を緊張させていたシーソーブラケット15も後退し、緊張状態にあった各ワイヤ3は弛緩し、やがて連接棒19の先端枢軸19aが案内溝20の後端に位置し、シーソーブラケット15の凸部16aがドラム歯車8に噛合しているラック11の前端をラックバネ14の付勢力に抗して後方へ押圧し、ドラム歯車8からラック11を離脱させる定位置にシーソーブラケット15が到達すると、ドラム5の回転抑止が解除される。
同時に、円盤18のカム面18bがリミットスイッチ25のスイッチレバー25aを押圧することにより、駆動源24は停止する。
この様にしてドラム5の回転自由状態が復帰した時点で、車椅子からフック2を外すことで車椅子の移動が可能となる。
【符号の説明】
【0035】
2 フック
3 ワイヤ
5 ワイヤ巻取ドラム
6 回転抑止手段
7 動滑車
8 ドラム歯車
11 ラック
15 シーソーブラケット
23 伝動機構
24 駆動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にフックを設けたワイヤと、該ワイヤを巻取方向へ付勢して巻回したワイヤ巻取ドラムと、該ワイヤ巻取ドラムに備えた回転抑止手段と、フックとワイヤ巻取ドラムの間のワイヤを掛け、回転抑止手段によるワイヤ巻取ドラムの回転抑止状態でワイヤを弛張する様にワイヤ巻取ドラムに対し遠近移動自在に設けた動滑車とから成ることを特徴とする車椅子固定装置。
【請求項2】
一対のワイヤ巻取ドラムを左右対称に設け、左右のワイヤを夫々に掛止した動滑車は、ワイヤ巻取ドラムの対称軸線上を進退自在にして且つ左右揺動自在に設けたシーソーブラケットの左右各端部に取付けたことを特徴とする請求項1記載の車椅子固定装置。
【請求項3】
各ワイヤ巻取ドラムにドラム歯車を同軸固定し、上記対称軸線上に左右のドラム歯車に同時に噛合・離脱可能なラックを進退自在に設け、該ラックはドラム歯車に噛合する前方へ付勢され、ラックをドラム歯車から離脱させる後方へ押圧可能にラック前方にシーソーブラケットを配置したことを特徴とする請求項2記載の車椅子固定装置。
【請求項4】
シーソーブラケットは一連の伝動機構を介して駆動源に連繋され、該駆動源はシーソーブラケットがラックを後方押圧してドラム歯車から離脱させる定位置で停止する様に設定すると共に、左右のワイヤを緊張させるシーソーブラケットの前進中において駆動源の負荷の大きさを検出するトルクリミッタを備え、該トルクリミッタは左右のワイヤが緊張してシーソーブラケットの前進が制止され、駆動源の負荷が設定値以上になった時に駆動源を停止する様に設定したことを特徴とする請求項3記載の車椅子固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−34830(P2012−34830A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177415(P2010−177415)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(393020122)トーシンテック株式会社 (20)