説明

車止め装置

【課題】車体が後退した場合でも車止め部材の後退を防止して、車止めとしての機能を保持する。
【解決手段】車輪3の後側には、上下に揺動できるようにリンク部材10が支持されており、該リンク部材10の揺動部位10aには、同じく上下に揺動できるように車止め部材11が支持されている。また、該リンク部材10には、該部材10を車輪方向Aへ揺動させるための重り12が取り付けられており、その結果、車止め部材11は車輪3の側に付勢されることとなる。一方、前記揺動部位10aにはボルトが取り付けられていて、該ボルトは前記車止め部材11の側に形成された長穴に挿通されている。このため、車体2が後退した場合でも、前記車止め部材11が後退することはなく、車止めとしての機能を保持することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車止め装置としては、図4(a) に符号100で例示するような形状のもの(いわゆる“車止めブロック”と称されるタイプのもの)が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。この車止め装置100は持ち運べるようになっていて、使用時には人が車輪103と路面104との間に該車止め装置100を押し込むようになっていた。
【0003】
しかしながら、図4(a) に示す車止め装置100の場合、セットは人が行う必要があり、その作業が煩雑であった。特に、坂道で頻繁に停車して作業を行わなければならないような作業車の場合は、車止め装置のセットを頻繁に行わなければならず、その作業が大変であった。
【0004】
そこで、そのような問題が無い、車両に装備するタイプの車止め装置についても、種々の構成のものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
図4(b) は、車両に装備するタイプの車止め装置の構成の一例を示す側面図であり、符号200A及び201Aは、車輪203の前後にそれぞれ介装される車止め部材を示し、符号200B,200Cは、一方の車止め部材200Aを支持するリンク部材を示し、符号200Dは、該リンク部材200B,200Cを折り畳み状態とするためのスプリングを示し、符号200Eは、リンク部材200B,200Cを持ち上げるためのウィンチを示し、符号201Bは、他方の車止め部材201Aを支持及び移動するためのシリンダを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−213289号公報
【特許文献2】特開平11−192929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4(b) に示す車止め部材200A,201Aの場合、車体202が後退した場合にはその後退方向の力を受けて車止め部材200A,201Aも車体202と共に後退してしまって、車止め部材としての機能を果たせないというおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述の問題を解消することのできる車止め装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、図1(a) に例示するものであって、車輪(3)の後方にて上下に揺動されるように車体(2)に支持されたリンク部材(10)と、
上下に揺動されるように該リンク部材(10)の揺動部位(10b)に支持されて、前記車輪(3)と路面(4a)との間に介装され得るように構成された車止め部材(11)と、
該車止め部材(11)を前記車輪(3)と路面(4a)との間に介装する方向(A)に、前記リンク部材(10)を介して前記車止め部材(11)を付勢する付勢部材(12)と、
を備え、
前記リンク部材(10)の揺動部位(10b)による前記車止め部材(11)の支持は、該揺動部位(10b)及び該車止め部材(11)のいずれか一方(10b又は11)に形成されてなる上下に延設された長穴又は溝部(図2の符号C参照)に、他方(11又は10b)に形成された軸部(同図の符号B参照)が挿入されることによりなされることを特徴とする車止め装置(1)に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記付勢部材(12)が、前記揺動部位(10b)を前記車輪(3)に近接する方向(図1(a) の矢印A参照)に揺動させる重りであることを特徴とする。
【0011】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び2に係る発明によれば、車体が後退したとしても車止め部材は後退せずに、車止めとしての機能を発揮し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a) は、本発明に係る車止め装置の構成の一例を示す側面図であり、同図(b) は、車輪が後退して車止め部材に乗り上げた状態を示す側面図である。
【図2】図2は、車輪が後退して車止め部材に乗り上げた状態を示す拡大図である。
【図3】図3は、本発明に係る車止め装置の使用例を示す側面図である。
【図4】図4(a) は、従来の車止め装置の構成の一例を示す側面図であり、同図(b) は、従来の車止め装置の構成の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に係る車止め装置は、図1(a) に符号1で例示するものであって、車体2に揺動自在に支持されたリンク部材10を備えている。このリンク部材10は、車輪3の後方(本来車輪3が進行すべき方向と反対の方向の意味であって、図面では右方)にて上下に揺動されるように支持されており、該リンク部材10の揺動部位10b(つまり、該リンク部材10の揺動中心10aから所定距離だけ離れた部位)には、車止め部材11が上下に揺動されるように支持されていて、前記車止め部材11は前記車輪3と路面4aとの間に該車輪3の後方側から介装されるように構成されている。なお、この車止め部材11は、少なくとも路面4aに接する面(図2の符号11a参照)が滑りにくい材料で形成されており、車両前進側(図示左側)が薄く形成され車両後退側(図示右側)が厚く形成された楔状である。
【0016】
そして、本発明に係る車止め装置1は、前記リンク部材10を介して前記車止め部材11を付勢する付勢部材12を備えており、前記車止め部材11が前記車輪3と路面4aとの間に介装される方向(矢印A参照)に付勢されるように構成されている。なお、図1(a) に示す付勢部材12は、前記揺動部位10bを前記車輪3に近接する方向Aに揺動させる重り(ウェイト)であるが、もちろんこれに限られるものではなく、バネ(例えば、ねじりバネや板バネ)や他の公知部材を用いても良い。
【0017】
さらに、前記リンク部材10の揺動部位10bによる前記車止め部材11の支持は、図2に詳示するように、該揺動部位10b及び該車止め部材11のいずれか一方(該揺動部位10b又は該車止め部材11)に形成されてなる上下に延設された長穴又は溝部Cに、他方(該車止め部材11又は該揺動部位10b)に形成された軸部Bが挿入されることによりなされるようになっている。つまり、この支持の態様としては以下のものを挙げることができる。
・ 前記リンク部材10の揺動部位10bに長穴又は溝部Cが形成されており、前記車止め部材11に形成された軸部Cが該長穴又は溝部Bに移動自在に挿通されている態様
・ 前記車止め部材11に長穴又は溝部Bが形成されており、前記リンク部材10の揺動部位10bに形成された軸部Cが該長穴又は溝部Bに移動自在に挿通されている態様
【0018】
本発明によれば、前記付勢部材12の付勢力Pwによって前記リンク部材10が前記揺動中心10aを中心として矢印Aの方向(つまり、車輪3に近接する方向)に揺動し、前記揺動部位10bには車体2の前進方向(図1(a) の矢印D参照)への付勢力Pcが作用し、該付勢力Pcによって前記車止め部材11は前記車輪3に押し付けられることとなる。ところで、前記車体2を坂道の途中で停止させるには該車体2等に装備されている停止装置(ブレーキ)を使用するのが一般的であるが、その停止装置が効かずに前記車体2が図1(b)
に矢印Eで示すように後退した場合(つまり、前記車輪3が前記車止め部材11の上面11bに上ろうとした場合)には図1(b) に符号PAで示すような力が、前記リンク部材10の前記揺動中心10aに働く。いま、図2において、図1(a)
に示す状態にある車止め装置(二点鎖線参照)と、図1(b) に示す状態にある車止め装置(実線及び破線参照)とを重ね合わせて示すと、車体が後退する前の軸部材の位置は符号B’で示す位置となり、車体が後退した後の軸部材の位置は符号Bで示す位置となる。そして、路面4aに沿った方向の移動量Mhは、前記付勢力Pc(つまり、前記付勢部材12の付勢力Pwに伴う前進方向の付勢力Pc)によって打ち消され、路面4aに垂直な方向の移動量Mvは、前記長穴又は溝部Cにより吸収される。したがって、前記車輪3の変位に前記車止め部材11は同調せず、停止機能が保持され続ける。つまり、本発明によれば、車体2が後退したとしても車止め部材11は後退せずに、車止めとしての機能を発揮し続けることができる。
【0019】
本発明に係る車止め装置1は、図3に例示するように、レール4上を移動する作業車2に使用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 車止め装置
2 車体
3 車輪
4a 路面
10 リンク部材
10a リンク部材の揺動部位
11 車止め部材
12 付勢部材(重り)
B 軸部
C 長穴又は溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の後方にて上下に揺動されるように車体に支持されたリンク部材と、
上下に揺動されるように該リンク部材の揺動部位に支持されて、前記車輪と路面との間に介装され得るように構成された車止め部材と、
該車止め部材を前記車輪と路面との間に介装する方向に、前記リンク部材を介して前記車止め部材を付勢する付勢部材と、
を備え、
前記リンク部材の揺動部位による前記車止め部材の支持は、該揺動部位及び該車止め部材のいずれか一方に形成されてなる上下に延設された長穴又は溝部に、他方に形成された軸部が挿入されることによりなされる、
ことを特徴とする車止め装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記揺動部位を前記車輪に近接する方向に揺動させる重りである、
ことを特徴とする請求項1に記載の車止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−192857(P2012−192857A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58921(P2011−58921)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)