説明

車線検知装置

【課題】太陽光の反射による白線部分と路面部分との輝度差の減少があっても、安定して白線を検出することのできる車線検知装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】撮像装置10から取得した撮像画像中の特定領域を画像処理して車線を検出する画像処理部20と、この画像処理部20の撮像画像中の路面反射状態を推定する路面反射推定部18と、この路面反射推定部18の推定結果に応じて画像処理部20の画像処理を制御する検出ウインドウ制御部19とを備え、この検出ウインドウ制御部19は、路面反射推定部18の推定結果から路面反射有りと判定した場合、画像処理部20に特定領域の位置を変更して画像処理させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車線を区画する車線の認識結果に基づいて、走行車線からの車両の逸脱を警報する車線検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車線検知装置は、外部環境が変化した場合に、撮影画像の輝度を補正したり、撮影画像の特定部分を除外した上で車線検知したりすることによって精度よく車線を検知している(例えば特許文献1や特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−203446号公報
【特許文献2】特開2003−337950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車線検知装置においては、太陽光の反射による白線部分と路面部分との輝度差の減少に対応することができないため、安定して白線を検出することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、太陽光の反射による白線部分と路面部分との輝度差の減少があっても、安定して白線を検出することのできる車線検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、制御部が、路面反射推定部の推定結果から路面反射有りと判定した場合、画像処理部に特定領域の位置を変更して画像処理させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車線検知装置によれば、太陽光の反射による白線部分と路面部分との輝度差の減少があっても、安定して白線を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態における車線検知装置のブロック図
【図2】同図1の要部であるマイクロコンピュータによる車線検知処理のフローチャート図
【図3】同図2の路面反射推定処理のフローチャート図
【図4】同図2の検出ウインドウ位置変更処理のフローチャート図
【図5】同図2の警報判定処理のフローチャート図
【図6】(a)撮像装置で撮影した道路画像と検出ウインドウの標準位置をイメージで説明する図 (b)路面反射発生が推定される場合における検出ウインドウの設定位置をイメージで説明する図 (c)路面反射発生が推定される場合において自車両が左車線に寄って走行している状態をイメージで説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態における車線検知装置について図面を参照しながら説明する

【0010】
図1は本発明の実施の形態における車線検知装置のブロック図である。
【0011】
図1において車線検知装置1は、撮像装置10と、時計装置11と、位置測定装置12と、方位測定装置13と、照度測定装置14と、傾斜測定装置15と、マイクロコンピュータ16と、警報装置17とからなる。
【0012】
撮像装置10は、例えばCCDカメラやCMOSカメラで構成される。撮像装置10は、自車両の前方もしくは後方に取り付けられて自車両周辺の車線を撮影する。撮像装置10は、マイクロコンピュータ16と接続されており、車両周辺を撮像した撮像画像を映像としてマイクロコンピュータ16に出力する。
【0013】
時計装置11は、例えば時刻情報を受けることのできるGPS受信機で構成される。時計装置11は、自車両に取り付けられて年月日,時分秒の時刻情報を計測する。時計装置11は、マイクロコンピュータ16と接続され、マイクロコンピュータ16に時刻情報を出力する。
【0014】
位置測定装置12は、例えばGPS受信機で構成される。位置測定装置12は、自車両に取り付けられて自車両の現在地を計測する。位置測定装置12は、マイクロコンピュータ16と接続され、マイクロコンピュータ16に自車両の位置情報を出力する。なお、時計装置11と位置測定装置12は同じGPS受信機で構成されてもよいし別体であってもよい。
【0015】
方位測定装置13は、例えば地磁気センサで構成される。方位測定装置13は、自車両に取り付けられ、自車両の向いている方位を測定する。方位測定装置13は、マイクロコンピュータ16と接続され、マイクロコンピュータ16に方位情報を出力する。
【0016】
照度測定装置14は、例えば光電センサで構成される。照度測定装置14は、車外の光を遮らない場所に設置される。例えば自車両のフロントガラスの直下に設置される。照度測定装置14は、マイクロコンピュータ16と接続され、マイクロコンピュータ16に車外の照度情報を出力する。
【0017】
傾斜測定装置15は、例えば加速度センサで構成される。傾斜測定装置15は、自車両に設置され、自車両が接地する道路面の傾斜を測定する。傾斜測定装置15は、マイクロコンピュータ16と接続され、マイクロコンピュータ16に自車両が接地する道路面の傾斜情報を出力する。
【0018】
マイクロコンピュータ16は、例えばCPU(Central Processing
Unit)やDSP(Digital Signal Processor)で構成される。マイクロコンピュータ16は、路面反射推定部18と、検出ウインドウ制御部19と、画像処理部20と、警報判定部21と、バス22とを内部に有している。路面反射推定部18と、検出ウインドウ制御部19と、画像処理部20と、警報判定部21とはバス22を介して互いに接続されている。マイクロコンピュータ16は、時計装置11、位置測定装置12、方位測定装置13、照度測定装置14、傾斜測定装置15の少なくとも1つから入力された情報にもとづいて、撮像装置10から入力された撮像画像における車線検出用の特定領域を設定する。そして、マイクロコンピュータ16は、検出した車線の情報にもとづいて、警報の要否を判定する。警報が必要な場合、マイクロコンピュータ16は、警報装置17に警報命令を出力する。なお、マイクロコンピュータ16の内部構成や各構成による演算処理については後述する。
【0019】
警報装置17は、例えばスピーカやディスプレイや振動アクチュエータで構成される。警報装置17は、自車両が車線から逸脱の可能性がある旨を車両の運転者に警報し、運転者に車線逸脱の回避を促す。警報装置17は、視覚情報による警報、聴覚情報による警報、触覚情報による警報いずれを行ってもよい。警報装置17は、マイクロコンピュータ16と接続されている。警報装置17は、マイクロコンピュータ16から出力された警報情報を元に警報を実施する。
【0020】
次に、マイクロコンピュータ16の内部構成について説明する。
【0021】
路面反射推定部18は、撮像装置10で撮影した映像中の道路面に太陽光の反射(以下、路面反射と記す)が発生しているか否かを推定する。路面反射推定部18は、時計装置11と、位置測定装置12と、方位測定装置13と、照度測定装置14と、傾斜測定装置15と接続されている。路面反射推定部18は、各装置から受信した情報にもとづいて路面反射の発生を推定する。また、路面反射推定部18は、推定した路面反射情報を、バス22を介して検出ウインドウ制御部19に出力する。
【0022】
検出ウインドウ制御部19は、撮像装置10によって撮影された映像中において、検出ウインドウの位置を制御する。ここで、検出ウインドウは、撮像画像の横方向の長さ全体と縦方向の長さの一部からなる矩形領域で構成される。検出ウインドウ制御部19は、路面反射推定部18から入力された路面反射情報にもとづいて、撮像画像中、路面反射が発生している位置を避けて、検出ウインドウ位置を設定する。検出ウインドウ制御部19は、設定した検出ウインドウの位置情報を、バス22を介して画像処理部20に出力する。
【0023】
画像処理部20は、撮像装置10から映像を受信する。画像処理部20は、検出ウインドウ制御部19によって指定された映像中の車線検出ウインドウの範囲の画像処理を行い、車線を検出する。画像処理部20は、検出した車線情報を、バス22を介して警報判定部21に出力する。
【0024】
警報判定部21は、画像処理部20から入力された車線情報によって、自車両が車線から逸脱する可能性を推定する。警報判定部21は、この推定情報にもとづいて運転者に対する警報の要否判定をしている。また、警報判定部21は、路面反射推定部18の情報を加味して、警報の要否判定を行う。警報判定部21は、警報判定結果にもとづいて警報命令を警報装置17に出力する。
【0025】
以上のように構成された車線検知装置1について、以下にその処理動作を説明する。
【0026】
図2は図1のマイクロコンピュータ16による車線検知処理のフローチャート図である。
【0027】
まず、ステップS21に示すように、路面反射推定部18は、撮像装置10で撮影した道路映像上に太陽光による路面反射が発生しているか路面反射推定処理を行う。
【0028】
次にステップS22に示すように、検出ウインドウ制御部19は、ステップS21における路面反射推定部18での推定結果に従い、路面反射が発生しているか判定を行う。
【0029】
ステップS22でNOの場合、検出ウインドウ制御部19は、ステップS23に示すように検出ウインドウを標準位置に設定する。標準位置は、撮像装置10で撮影した道路画像から車線を検出しやすい画像領域の一例を指す。例えば、検出ウインドウ制御部19は、路面反射が発生していないと判定した場合に、検出ウインドウの縦方向の位置を予め定
められた撮像画像の画面中央位置に設定する。
【0030】
一方、ステップS22でYESの場合、検出ウインドウ制御部19は、ステップS24に示すように、検出ウインドウを標準位置と別の位置に設定する検出ウインドウ位置変更処理を行う。例えば、検出ウインドウ制御部19は、路面反射が発生していると判定した場合に、撮像画像中の路面反射が発生している領域に検出ウインドウの標準位置が含まれているか否かを判定する。そして、検出ウインドウ制御部19は、撮像画像中の路面反射が発生している領域に検出ウインドウの標準位置が含まれている場合に、撮像画像中の路面反射が発生していない領域に検出ウインドウの位置を変更する。
【0031】
次にステップS25に示すように、画像処理部20は、撮像画像における検出ウインドウで囲まれた特定領域について画像処理を行って車線検出処理を行う。この処理には、検出ウインドウ中における車線位置の算出が含まれる。
【0032】
最後にステップS26に示すように、警報判定部21は、画像処理部20から入力された車線検出情報に従い、警報判定処理を行う。
【0033】
次に、図2の路面反射推定処理について説明する。
【0034】
図3は、図2における路面反射推定処理のフローチャート図である。
【0035】
まず、ステップS31に示すように、照度測定装置14は、車外の照度を測定する。
【0036】
次に、ステップS32に示すように、路面反射推定部18は、照度測定装置14から入力された照度の測定値が予め定められた一定値以上であるか否かを判定する。これによって、路面反射推定部18は、車両周辺の環境がトンネル中などの屋内でなく、太陽が雲などに隠れていないいわゆる晴れの状態であり、路面反射が発生しうる環境であるか否かを判定する。
【0037】
ステップS32でNOの場合、路面反射推定部18は、ステップS33に示すように、路面反射無しと判定して処理を終了する。
【0038】
ステップS32でYESの場合、路面反射推定部18は、ステップS34に示すように、時計装置11と位置測定装置12とからそれぞれ入力された時刻情報と自車両の位置情報とから、太陽方位を算出する。
【0039】
次に、ステップS35に示すように、路面反射推定部18は、方位測定装置13から入力された自車両方位情報から撮像装置10の方位を算出する。自車両に対する撮像装置10の設置向きはあらかじめ定められているため、撮像装置10の方位は、自車両に対する撮像装置10の設置向きと、方位測定装置13から出力される自車両方位情報で算出される。
【0040】
次に、ステップS36に示すように、路面反射推定部18は、ステップS34で算出した太陽方位と、ステップS35で算出した撮像装置10の方位との差が予め定められた一定範囲以内であるか判定する。
【0041】
ステップS36でNOの場合、路面反射推定部18は、ステップS33の処理を行う。例えば、路面反射推定部18は、ステップS34で算出した太陽方位と、ステップS35で算出した撮像装置10の方位との差が一定範囲より大きい場合に路面反射が起きにくい状態であると判定して路面反射なしと推定する。
【0042】
ステップS36でYESの場合、路面反射推定部18は、ステップS37に示すように、路面反射ありと推定する。例えば、路面反射推定部18は、ステップS34で算出した太陽方位と、ステップS35で算出した撮像装置10の方位との差が一定範囲以内である場合に路面反射が起きやすい逆光状態であると判定して路面反射ありと推定する。
【0043】
次に、図2の検出ウインドウ位置変更処理について説明する。
【0044】
図4は、図2における検出ウインドウ位置変更処理のフローチャート図である。
【0045】
最初にステップS41に示すように、路面反射推定部18は、時計装置11と位置測定装置12からそれぞれ入力された時刻情報と自車両の位置情報とから、太陽方位と太陽高度を算出する。
【0046】
次に、ステップS42に示すように、路面反射推定部18は、ステップS41で算出した太陽方位と太陽高度の情報と、傾斜測定装置15から入力された道路面傾斜情報から、太陽光の道路への入射角を算出する。自車両に対する撮像装置10の設置位置はあらかじめ定められているため、撮像装置10からみた太陽光の道路への入射角は、太陽方位と太陽高度の情報と、道路面傾斜情報から算出できる。
【0047】
次に、ステップS43に示すように、路面反射推定部18は、ステップS42で算出した太陽光の道路への入射角の情報にもとづいて、検出ウインドウ位置を決定する。映像中の路面反射領域では輝度飽和が発生して、車線となる白線の検出が困難になるため、路面反射推定部18は、路面反射領域を避けて検出ウインドウの位置を設定する。具体的には、路面反射推定部18は、太陽方位と太陽高度と道路面傾斜から、太陽光の道路への入射角を算出し、この入射角から推定される路面反射領域が検出ウインドウの領域外となる位置に検出ウインドウを設定する。ここで、太陽光の道路への入射角を路面反射の推定に用いるのは、太陽光の道路への入射角が大きいほど路面反射が起こりやすく、映像中の路面反射領域も広くなるからである。例えば、路面反射推定部18は、太陽光の道路への入射角の増加に応じて路面反射の重み付けを大きくしたり路面反射領域を広くする。そして、路面反射推定部18は、路面反射の重み付けが所定値以上になった場合に路面反射と推定する。
【0048】
このように、検出ウインドウ制御部19は、路面反射していないと判定した領域に検出ウインドウの位置を変更する。これにより、撮像画像中の一部の領域で路面反射が起こっていても、車線の検出精度の低下を抑制することができる。例えば、検出ウインドウ制御部19は、路面反射が発生している領域の最も下方の位置を検出ウインドウの上辺の位置に設定する。なお、検出ウインドウ制御部19は、路面反射が発生している領域の最も下方の位置より所定距離下の位置を検出ウインドウの上辺の位置に設定してもよい。これにより、路面反射が発生している領域の最も下方の位置を検出ウインドウの上辺の位置に設定した場合よりも車線の検出精度を向上させることができる。
【0049】
次に、図2の警報判定処理について説明する。
【0050】
図5は、図2の警報判定処理のフローチャート図である。
【0051】
最初にステップS51に示すように、警報判定部21は、画像処理部20から入力された車線情報から、自車両の両側に車線を検出しているか判定する。警報判定部21は、一定時間内に自車両の両側に位置する車線情報が入力されれば車線を検出していると判定する。これは、車線が破線である場合を考慮したものである。この判定により、画像処理部
20が検出ウインドウ内で白線部分と白線でない路面部分を交互に検出した場合であっても、警報判定部21が車線なしと判定することを避けることができる。
【0052】
ステップS51でNOの場合、警報判定部21は、ステップS52に示すように画像処理部20から入力された車線情報から、自車両の片側のみ車線を検出しているか判定する。警報判定部21は、ステップS51と同様に一定時間内に自車両の片側に位置する車線情報が入力されれば車線を検出していると判定する。
【0053】
ステップS52でNOの場合、ステップS53に示すように、警報判定部21は、警報判定処理ができないと判定する。このように判定する理由は、車線の検出が不十分で、車線検知できる情報が得られないからである。
【0054】
ステップS52でYESの場合、ステップS54に示すように、警報判定部21は、路面反射推定部18から入力された路面反射情報をもとに、路面反射の発生を推定できるか判定する。
【0055】
ステップS54でNOの場合、警報判定部21は、ステップS53の処理を行う。
【0056】
ステップS54でYESの場合、または、ステップS51でYESの場合、警報判定部21は、ステップS55に示すように警報することが可能と判定する。例えば、警報判定部21は、自車両の両側の車線を検出できたと判定したとき、または、片側の車線のみ検出するとともに路面反射が推定される場合、車線警報逸脱判定に十分な情報が得られるため警報判定することができると判定する。
【0057】
次に、ステップS56に示すように、警報判定部21は、画像処理部20が検出した車線位置から自車両に車線逸脱の可能性があるか判定する。例えば、警報判定部21は検出ウインドウ内において設定範囲をあらかじめデータテーブルとして保持している。警報判定部21は、この設定範囲内に車線位置があるときに自車両が車線内にあると判定する。このデータテーブルに保持された設定範囲は、検出ウインドウ位置毎に決められる。警報判定部21は、データテーブルから検出ウインドウ位置に応じた設定範囲を読み出す。警報判定部21は、画像処理部20から入力された車線位置が設定範囲に入っているか否かを判定する。
【0058】
ステップS56でYESの場合、ステップS57に示すように、警報判定部21は、警報すると判定して警報装置17に警報命令を出力する。警報装置17は警報判定部21から入力された警報命令に従って車線逸脱の警報を出力する。
【0059】
一方、ステップS56でNOの場合、ステップS58に示すように、警報判定部21は、警報しないと判定して処理を終了する。
【0060】
次に、路面反射の状態に応じた検出ウインドウの設定と車線検知について、撮像装置10が撮像した撮像画像を用いて説明する。
【0061】
図6(a)は、撮像装置10が撮影した道路画像と検出ウインドウの標準位置をイメージで説明する図である。図6(b)は、路面反射の発生が推定される場合における検出ウインドウの設定位置をイメージで説明する図である。図6(c)は、路面反射の発生が推定される場合において自車両が左車線に寄って走行している状態をイメージで説明する図である。
【0062】
図6(a)に示すように、検出ウインドウ制御部19は、路面反射が発生していないと
判定した場合、撮像装置10が撮像した撮像画像の中央を標準位置として検出ウインドウ60を設定する。画像処理部20は、検出ウインドウ60内において車線を検出する。画像処理部20は、左側車線61と右側車線62を検出することができる。
【0063】
図6(b)に示すように、検出ウインドウ制御部19は、路面反射が発生していると判定した場合、撮像装置10が撮像した撮像画像中の路面反射推定範囲63を算出する。そして、検出ウインドウ制御部19は、この路面反射領域63を避ける位置に検出ウインドウ64を設定する。具体的には、検出ウインドウ制御部19は、路面反射領域63の底辺63aの位置より所定量下方に検出ウインドウ64の位置を設定する。この検出ウインドウ位置の変更により、検出ウインドウ64内に路面反射領域63が含まれなくなるので、検出ウインドウ64内で路面反射にもとづく輝度飽和が起こらずに車線の検出精度の低下を抑制することができる。画像処理部20は、路面反射の影響のない位置に設置した検出ウインドウ64内において、左側車線65と右側車線66を検出することができる。
【0064】
図6(c)に示すように、検出ウインドウ制御部19は、路面反射が発生していると判定した場合、路面反射が発生していない位置に検出ウインドウ67内を設定する。そして、画像処理部20は、この検出ウインドウ67内で車線の検出処理を行う。図6(c)に示すように、画像処理部20は、左側車線68のみ検出し、右側車線69を検出できない。画像処理部20は、このように片側の車線のみを検出した場合に、遠近法を用いて自車両が車線を逸脱する可能性を判定する。
【0065】
ここで、警報判定部21による遠近法を用いた車線逸脱可能性の判定方法について説明する。
【0066】
まず、検出ウインドウ位置とその位置での車線幅に着目する。図6(b)における検出ウインドウ位置は図6(a)における検出ウインドウ位置(標準位置)よりも下側に設定されている。これにより、図6(a)、(b)における同じ撮像画像であっても、検出ウインドウ内の車線61と車線65の幅は異なっている。具体的には、図6(a)における車線61の幅よりも図6(b)における車線65の幅の方が広い。これは、遠近法により、撮像装置10の近傍にあたる撮像画像下側の方が幅が広く見えるためである。
【0067】
次に、警報判定部21による逸脱判定について説明する。図6(c)では、自車両が車線の左側に寄って走行しているため、道路画像全体は図6(b)に比べ、右にずれて見えている。検出ウインドウ67の位置は標準位置である図6(a)の検出ウインドウ60の位置よりも下方である。すなわち、検出ウインドウ67で検出される車線68の幅は検出ウインドウ60で検出される車線61の幅より長い。このため、自車両が横方向に動いた場合、検出ウインドウ60に比べて検出ウインドウ67の方が車線がウインドウ領域外にはみ出しやすい。例えば、図6(c)に示すように、自車両が左方向に寄ると、検出ウインドウ67に右側の車線69が含まれなくなり、画像処理部20が車線69を検出できなくなる。このように、図6(b)に示すように、路面反射に応じて標準位置より下側に検出ウインドウ64の位置を設定すると、図6(a)に示すように標準位置に検出ウインドウ60の位置を設定した場合に比べて、車線を両側とも検出することが難しい場合がある。
【0068】
そこで、警報判定部21は、図6(c)のように自車両の片側の車線68のみ検出した場合(ステップS52でYESの場合)であっても、路面反射がある(ステップS54でYES)と判定した場合、警報可能と判定する。これにより、警報判定部21は、路面反射ありと判定した場合であっても警報可能な判定の条件を緩和するので、自車両が横方向に移動した場合に逸脱判定の精度が低下することを抑制することができる。
【0069】
なお、本実施の形態において、画像処理部20で道路画像から路面反射による輝度飽和部分を検出し、その情報を用いて路面反射推定部18で路面反射推定を行ってもよい。これにより、時計装置11と、位置測定装置12と、方位測定装置13と、照度測定装置14と、傾斜測定装置15とを省略できるという効果を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の車線検知装置は、車両走行時に意図しない車線逸脱を防ぐ装置として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 車線検知装置
10 撮像装置
11 時計装置
12 位置測定装置
13 方位測定装置
14 照度測定装置
15 傾斜測定装置
16 マイクロコンピュータ
17 警報装置
18 路面反射推定部
19 検出ウインドウ制御部
20 画像処理部
21 警報判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置から取得した撮像画像中の特定領域を画像処理して車線を検出する画像処理部と、
この画像処理部の撮像画像中の路面反射状態を推定する路面反射推定部と、
この路面反射推定部の推定結果に応じて前記画像処理部の画像処理を制御する制御部とを備え、
この制御部は、前記路面反射推定部の推定結果から路面反射有りと判定した場合、前記画像処理部に特定領域の位置を変更して画像処理させることを特徴とする車線検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記路面反射推定部から入力された太陽高度と路面傾斜の情報から特定領域の位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の車線検知装置。
【請求項3】
前記路面反射推定部は、時刻情報と自車位置と自車方位と外部照度と路面傾斜の情報に基づいて路面反射状態を推定することを特徴とする請求項2に記載の車線検知装置。
【請求項4】
外部を撮影して前記画像処理部に撮像画像を入力する撮像装置と、
前記画像処理部が検出した車線から自車両が逸脱可能性があるか否かを判定する逸脱判定部とをさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の車線検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−73821(P2012−73821A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218170(P2010−218170)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】