説明

車線逸脱警報装置及び警報方法

【課題】自車両の走行車線からの逸脱を警報する車線逸脱警報の技術に関し、不要な車線逸脱警報を抑制することができるようにする。
【解決手段】自車両の走行車線の左右各側の路肩を左右個別に認識し、路肩が認識された側においては、予め任意の位置に設定した判定基準値から所定値だけ車線外側にずらした位置に逸脱判定閾値を設定し、路肩が認識されなかった側においては判定基準値をそのまま逸脱判定閾値として設定し、その設定された逸脱判定閾値に基づき自車両の走行車線からの逸脱を判定し、逸脱ありと判定された場合にその逸脱を警報する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行車線からの逸脱を警報する際に、不要な車線逸脱警報を抑制することができるようにした、車線逸脱警報装置及び警報方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が走行している車線から逸脱する場合にその逸脱をドライバに警報する技術が種々開発されており、さらには、このような車線逸脱警報技術において、ドライバにとって不要と考えられる警報を抑制する技術が開発されている。
例えば特許文献1には、道路の走行レーン(走行車線)及び走行レーン上の自車位置を認識する走行レーン認識手段と、その認識結果に基づいて走行レーンを逸脱しそうなときに警報を行なう警報手段とを有する走行レーン逸脱警報装置において、ドライバの意思により走行レーンを変更する場合に警報を禁止する禁止手段(第1〜第4の禁止手段)を備える走行レーン逸脱警報装置が記載されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、警報が必要な場合かあるいは警報を抑制する場合かを適切に定め、ドライバの意思が反映された車両用運転支援装置を提供することを目的として、自車両の自車線からの逸脱を判定する車線逸脱判定手段と、少なくとも自車両の逸脱方向に隣接する車線がない場合に、警報機を作動させる信号を出力する警報信号発生判定手段とを備える車両用運転支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−31300号公報
【特許文献2】特開平11−66494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の技術においては、禁止手段の作動を停止させる停止手段をさらに備えて、自車が走行レーンを逸脱して路肩へ入る場合には禁止手段の作動を停止させ、警報を発するようになっている。また、特許文献2記載の技術においても、特許文献1記載の技術と同様に、路肩へ逸脱する場合には警報を発するようになっている。
しかしながら、例えば高速道路などでは、路肩が広いので、特に大型車の場合、ドライバがあえて路肩側に寄って、走行レーンから多少逸脱しながら走行する場合がある。
【0006】
特許文献1及び2記載の技術によれば、このようにドライバが意図的に路肩側の逸脱を許容している場合にも警報が発せられ、ドライバにとって警報の発生が適切ではないという課題がある。
本発明はこのような課題に鑑みて案出されたもので、自車両の走行車線の路肩を考慮して不要な車線逸脱警報を抑制することができるようにした、車線逸脱警報装置及び警報方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車線逸脱警報装置は、自車両の走行車線からの逸脱を警報する車線逸脱警報装置であって、前記走行車線を規定する白線の位置を前記自車両の位置に対して認識する白線認識手段と、前記走行車線の左右各側の路肩を左右個別に認識する路肩認識手段と、前記白線の位置に対する逸脱判定閾値を設定する逸脱判定閾値設定手段と、前記逸脱判定閾値設定手段の設定した前記逸脱判定閾値と前記白線認識手段の認識する前記自車両の位置とを比較して前記自車両の逸脱を判定する逸脱判定手段と、前記逸脱判定手段が前記自車両の逸脱ありと判定したときにその逸脱を警報する警報手段とを備え、前記逸脱判定閾値設定手段は、前記路肩認識手段が路肩を認識した側においては、前記白線の位置に対して任意の位置に設定した判定基準値から所定値だけ車線外側に変更した位置に前記逸脱判定閾値を設定し、路肩を認識しなかった側においては前記判定基準値をそのまま前記逸脱判定閾値として設定することを特徴としている。なお、路肩は走行車線側方の自車両が走行可能な余裕スペースを意味する。
【0008】
また、前記逸脱判定閾値設定手段は、前記所定値の大きさを制限する変更許可範囲が予め設定されていることが好ましい。また、前記逸脱判定閾値設定手段は、前記逸脱判定閾値を前記自車両の左右各側で左右別々に独立して設定することが好ましい。また、前記自車両が一定規格以上の道路を走行している場合に作動することが好ましい。
【0009】
また、本発明の車線逸脱警報方法は、自車両の走行車線からの逸脱を警報する車線逸脱警報方法であって、前記走行車線を規定する白線の位置を前記自車両の位置に対して認識する白線認識工程と、前記走行車線の左右各側の路肩を左右個別に認識する路肩認識工程と、前記白線の位置に対する逸脱判定閾値を設定する逸脱判定閾値設定工程と、前記逸脱判定閾値設定工程で設定した前記逸脱判定閾値と前記白線認識工程で認識する前記自車両の位置とを比較して前記自車両の逸脱を判定する逸脱判定工程と、前記逸脱判定手段が前記自車両の逸脱ありと判定したときにその逸脱を警報する警報工程とを備え、前記逸脱判定閾値設定工程では、前記路肩認識工程で路肩が認識された側においては、前記白線の位置に対して任意の位置に設定した判定基準値から所定値だけ車線外側に変更した位置に逸脱判定閾値を設定し、路肩が認識されなかった側においては、前記判定基準値をそのまま逸脱判定閾値として設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車線逸脱警報装置及び警報方法によれば、自車両の走行車線の路肩を考慮して逸脱判定閾値を設定するので不要な車線逸脱警報を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る車線逸脱警報装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車線逸脱警報装置による警報方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る車線逸脱警報装置の注意力判定手段が用いるファジィルールを示す表である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車線逸脱警報装置の逸脱判定閾値設定手段が設定する逸脱判定閾値を示す道路の模式的な平面図である。
【図5】(a),(b)ともに、本発明の一実施形態に係る車線逸脱警報装置の逸脱判定閾値設定手段が設定する逸脱判定閾値の判定基準値の変形例を示す道路の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により本発明の車線逸脱警報装置及びその警報方法の実施の形態について説明する。本発明は、高速道路等の一定規格以上の(高規格の)道路を車両が走行する際に特に有効に機能する。
[一実施形態]
<構成>
図1に示すように、本発明の一実施形態の車線逸脱警報装置1は、カメラ(撮像手段)2と、操舵角センサ3と、ウインカセンサ4と、補助ブレーキセンサ5と、クラッチセンサ(シフト操作センサ)6と、車速センサ7と、警報手段8と、ECU(制御手段)10とを備えている。
【0013】
カメラ2は、自車両の走行方向前方の路面の画像を取得する撮像手段であり、カメラ2が取得した路面画像はECU10に入力されるようになっている。
操舵角センサ3は、ステアリングホイールの操舵角を検出する検出手段であり、ウインカセンサ4は、ウインカレバーの操作状態を検出する検出手段であり、補助ブレーキセンサ5は、エキゾーストブレーキやリターダ等の補助ブレーキの実作動を検出する検出手段であり、クラッチセンサ6は、シフト操作としてクラッチの踏み込み操作状態を検出する検出手段であり、車速センサ7は、自車両の走行速度を検出する検出手段である。
【0014】
各種センサ3〜7の取得した情報はECU10に入力されるようになっている。なお、クラッチセンサ6に替えてシフトレバーセンサを備え、トランスミッションのシフトレバーの操作状態を検出するようにしても良い。
警報手段8は、後述の逸脱判定手段16により車両の逸脱ありと判定されたときに警報を発するものであり、ECU10からの制御信号に基づいて作動するようになっている。警報手段8は、具体的には例えば、警報ブザー(音声手段),警報ランプ(明滅手段),ディスプレイ(表示手段),ステアリングホイールやシート等のドライバに接触する部分に振動を与えるアクチュエータ(振動手段)等の何れか1つ又は複数で構成することが可能である。
【0015】
ECU10は、メモリやCPU等からなる電子制御ユニットであり、白線認識手段11と、路肩認識手段12と、注意力判定手段13と、車線変更判定手段14と、逸脱判定閾値設定手段15と、逸脱判定手段16とをソフトウェア(コンピュータプログラム)として備えている。
ECU10は、その入力側にはカメラ2や各種センサ3〜7が接続され、また、出力側には警報手段8が接続されており、カメラ2や各種センサ3〜7から入力された情報に基づいて、認識や判定や設定等の各種の処理を行ない、警報手段8を制御するようになっている。
【0016】
白線認識手段11は、カメラ2から入力された路面画像を画像処理し、自車両の走行している走行車線を規定する白線を、自車両の左右各側で個別に認識するとともに、自車両の位置に対する左右各側の白線の位置(換言すれば、白線で規定される走行車線内の自車両の位置)を認識するようになっている。白線を認識する方法は、例えば画像を2値化して走査し輝度分布を見る等の公知の方法を利用することが可能である。
【0017】
路肩認識手段12は、白線認識手段11と同様にカメラ2から入力された路面画像を画像処理し、自車両の走行車線を規定する白線の車線外側に路肩があるか否かを認識するようになっている。路肩は左右各側で個別に認識する。
路肩を認識する方法は公知の方法を利用することが可能である。例えば、白線の車線外側に白線から所定距離だけ間隔をあけてガードレール等の道路を区画する構造物があるか否かによって、路肩の有無を認識することが可能である。一般的には、複数の車線がある対面通行の道路において、一番左側の車線を走行している場合は左側に路肩があり、一番右側の車線を走行している場合には右側に路肩がある。ただし、対面通行でない自動車専用の道路(インターチェンジの進入出路も含む)では左右に路肩が存在し得る。ここでの路肩は、走行車線側方の自車両が走行可能な余裕スペースを意味する。
【0018】
注意力判定手段13は、運転中のドライバの注意力レベルを判定する手段である。なお、注意力判定については特許第3039327号公報に詳述された公知のものを利用することができるので詳細な説明は省略する。
簡単に説明すると、注意力判定手段11は、ウインカ,補助ブレーキ及びシフト操作の頻度を反映した「単調度」と、単位時間当たりの修正操舵の積算値である「操舵量」と、白線認識によって車両のふらつきを求め計算する「蛇行率」の3項目を入力パラメータとしたファジィ推論によって注意力を判定する。ウインカの操作情報はウインカセンサ4から取得し、補助ブレーキの操作情報は補助ブレーキセンサ5から取得し、シフト操作の情報はクラッチセンサ6から取得する。
【0019】
単調度は、時間経過と単調感の両者を含めて定量化すべく設定した項目である。時間経過を反映するために、単調度の計算に際しては、何も操作しなければ単調度は徐々に増加するような計算方式になっている。また、単調感を定量化するために、ウインカ,補助ブレーキ及びシフト操作の頻度を反映している。これは、上記の操作系の頻度と単調な道路環境や交通状況が対応するとの本発明者の知見による。
【0020】
操舵量は、左右の方向を区別せず、単位時間に操舵操作した量の絶対値を積算した値である。本発明者の知見によれば、ドライバは正常時には細かな修正操舵をまめに行なうため操舵量が大きくなるが、注意力低下時には1回の修正操舵が大きくなり頻度が低下して操舵量が小さくなり、さらに注意力の低下が進行すると、時には修正操舵を全くしない時間が出現するようになり、操舵量は一層小さくなる。操舵量は、このような特徴を総合的に示す測度であり、操舵角センサ3から取得した操舵角の情報に基づき、単位時間当たりの修正操舵の積算値として算出される。
【0021】
蛇行率は、白線に対するトレース性を評価する値であり、両側の白線の中心点の動きを計測することで得た蛇行データの単位時間当たりの標準偏差によって表される。注意力が維持されているときにはドライバは無意識のうちに自車両を走行車線内に収めるように努力し、白線を踏み越すようなことはほとんどないとの本発明者の知見により、注意力を判定する項目の1つとして採用される。
【0022】
そして、注意力判定手段13は、図3に示すようなファジィルールを定義し、算出された単調度,操舵量及び蛇行率それぞれに対応するメンバーシップ関数を用いて注意力を判定する。注意力はここでは、0.5きざみの1から5までのレベルで求められ、レベル1が最も注意力が低く、レベル5が最も注意力が高くなるように設定されている。
車線変更判定手段14は、操舵角センサ3から取得した操舵角と、ウインカセンサ4から取得したウインカ情報と、白線認識手段11の認識した白線と自車両との相対位置関係とに基づき、車線変更中であるか否かを判定するようになっている。具体的には、(1)操舵角が予め設定された所定角度以上である、(2)ウインカレバーが操作されている、の何れか1つが成立し、尚且つ、(3)白線と自車両との相対位置関係が予め設定された所定値より接近している場合には、ドライバの要求に応じてなされた正当な車線変更であると判定するようになっている。
【0023】
逸脱判定閾値設定手段15は、後述の逸脱判定手段16による車線逸脱判定に用いる逸脱判定閾値Thを自車両の左右各側で左右別々に独立して設定するものである。逸脱判定閾値設定手段15は、図4に示すように、白線認識手段11によって認識された白線の幅方向中心の位置を逸脱判定閾値Thの基準値(判定基準値)Th0として設定する。なお、図4は、逸脱判定閾値Thを把握しやすいように道路上の白線や走行車線内を走行する自車両を模式的に描いた平面図であり、白線等の各寸法を厳密に表したものではない。
【0024】
そして、路肩認識手段12が左右何れかに路肩があると認識しているときには、路肩が認識された側(片側又は両側)においては、予め設定された所定の値の大きさの変更値d(例えば30cm)だけ判定基準値Th0を車線外側に変更した位置に逸脱判定閾値Thを設定するようになっている。一方、路肩が認識されなかった側(片側又は両側)においては、判定基準値Th0をそのまま逸脱判定閾値Thとして設定する。
【0025】
逸脱判定閾値Thに対しては道路状況等に鑑みて変更許可範囲が予め設定され、上記変更値dは、逸脱判定閾値Thが変更許可範囲を超えない大きさに制限される。
逸脱判定手段16は、白線認識手段11により認識される自車両の位置と逸脱判定閾値設定手段15により設定される逸脱判定閾値Thとを比較して、自車両の位置が逸脱判定閾値Thを超えたときに、自車両が車線を逸脱したと判定するようになっている。
【0026】
なお、本車線逸脱警報装置1による逸脱警報の機能をオンオフするスイッチが例えばインストルメントパネル等のドライバ近傍の位置に設けられて、ドライバにより操作可能になっていても良い。
上記のように構成されたECU10は、図2に示すフローチャートにしたがって制御を行なう。
【0027】
まず、ステップS10(位置認識工程,路肩認識工程及び注意力判定工程)では、白線認識手段11により白線の位置と自車両の位置とを認識するとともに、路肩認識手段12により自車両の左右各側で路肩の有無を認識し、また、注意力判定手段13により注意力を判定する。その後、ステップS20に進む。
ステップS20(逸脱判定閾値設定工程)では、逸脱判定閾値設定手段15により、ステップS10で路肩が認識された側の逸脱判定閾値Thを判定基準値Th0から変更値dだけ外側の位置に設定する。また、路肩が認識されなかった側は、判定基準値Th0をそのまま逸脱判定閾値Thとして設定する。その後、ステップS30に進む。
【0028】
ステップS30(逸脱判定工程)では、逸脱判定手段16により、ステップS20で設定された逸脱判定閾値Thに基づき自車両の逸脱を判定する。逸脱と判定すればステップS40に進み、そうでなければフローの最初に戻る。
ステップS40(車線変更判定工程)では、車線変更判定手段14により車線変更中であるか否かを判定する。車線変更中であると判定すればフローの最初に戻り、そうでなければステップS50に進む。
【0029】
ステップS50(警報禁止工程)では、注意力判定手段13により注意力が所定値以上(例えばレベル4以上)であるか否かを判定する。注意力が所定値よりも高ければフローの最初に戻り、所定値に満たなければステップS60に進む。つまり、このステップS50により注意力が所定値よりも高い場合には警報が禁止される。
ステップS60(警報工程)では、警報手段8により警報を発する。
【0030】
このステップS10〜S60からなるフローは、車両の走行中、所定周期で繰り返される。
【0031】
<作用・効果>
本発明の一実施形態に係る車線逸脱警報装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
【0032】
左右の逸脱判定閾値Thを区別して独立に設定し、路肩があると認識された側の逸脱判定閾値Thのみを判定基準値Th0から変更するとともに、路肩があると認識されなかった側は判定基準値Th0をそのまま逸脱判定閾値Thとして設定して、この逸脱判定閾値Thに基づき逸脱判定を行なうので、路肩側の逸脱判定条件を緩くして(警報タイミングを遅くして)、路肩が広くてドライバが意図的に逸脱を許容しているような場合に不必要に車線逸脱警報が発せられることを抑制することができる。特に、実際の高速道路走行においては、危険性の少ない側への注意力を減少させて運転疲労に対処している傾向のドライバがおり、本実施形態によれば、一定規格以上の道路の走行時に本装置が作動することで上記のようなドライバに対する車線逸脱警報の発生を適正頻度に抑制することができる。
【0033】
この結果、ドライバの本車線逸脱警報の受容性が向上し、ドライバがスイッチで本逸脱警報機能をオフするようなケースが減少するので、ドライバの運転支援への貢献度が向上するという利点も奏する。
また、逸脱判定閾値Thに対して変更許可範囲が予め設定されているので、逸脱判定閾値Thが実際の白線よりも過剰に車線外側に設定されることを防止して、安全性を損なうことなく不要な警報を抑制することができる。
【0034】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、白線認識手段11はカメラ2の撮像した画像を画像処理して白線を認識したが、白線を認識する方法はこれに限定されず、例えば道路上に敷設されたレーンマーカを利用して白線や自車両の位置を認識しても良い。
また、画像処理により白線を十分に抽出できなくても、自車両の位置や周囲の道路環境に基づき、公知の方法を利用して白線を推定し、推定した白線を実際の白線として認識しても良い。このときカメラ2は、白線に加えて他の車両や歩道やガードレールや街路樹や路肩等も含めて撮像し、白線認識手段11がこれらを認識するようにすると好ましい。
【0036】
また、白線認識手段11は、ECU10内の構成要素として構成されていなくても良い。つまり、ECU10とは別体にカメラ2用ECUとして白線認識手段11を備え、白線認識手段11が認識した情報をECU10に入力するようにしても良い。また、路肩認識手段12は、カメラ2をステレオカメラとして構成し、ステレオカメラで撮像した路面画像により走行路面と同一平面とみなせる領域を認識して良い。
【0037】
また、上記実施形態では、注意力判定手段13は、単調度と操舵量と蛇行率とからファジィ推論を用いて注意力を判定したが、注意力を判定する具体的な方法はこれに限定されず、他の公知の方法で注意力を判定しても良く、例えば、ドライバの顔を撮影するカメラをさらに備えて、所定時間中のまばたきの回数や時間(目の開度値)を利用して判定しても良いし、視線方向を利用して判定しても良い。また、注意力をレベルで判定するのではなく、例えばパーセンテージ等の他のスケールで注意力を判定しても良い。さらに、注意力判定手段13自体を備えなくても良い。つまり、図2に示すフローチャートのステップS10から注意力を判定する工程を省略するとともに、注意力が所定値以上であるか否かを判定するステップS50を省略するようにしても良い。
【0038】
また、上記実施形態では、車線変更判定手段14は、操舵角とウインカ情報と白線及び自車両の相対位置関係とに基づき車線変更中であるか否かを判定したが、車線変更を判定する具体的な方法はこれに限定されず、他の公知の方法でドライバの意図的な車線変更を判定しても良く、例えば単純に、ウインカセンサ4によりウインカレバーが操作されていることが検出されれば正当な車線変更であると判定するようにしても良い。
【0039】
また、上記実施形態では、逸脱判定閾値設定手段15は逸脱判定閾値Thに対して変更許可範囲を設けたが、必ずしも変更許可範囲を設けなくても良い。
また、上記実施形態では、逸脱判定閾値Thの判定基準値Th0を白線の中心の位置としたが、他の白線に対する任意の位置であっても良く、例えば図5(a)に示すように白線の内側の位置を判定基準値Th0としても良いし、図5(b)に示すように白線の外側の位置を判定基準値Th0としても良い。
【0040】
また、上記実施形態では、逸脱判定手段16は、実際に自車両の位置が逸脱判定閾値Thを超えたとき(換言すれば、自車両のタイヤが逸脱判定閾値Thで規定される仮想白線を踏み超えたとき)に逸脱ありと判定したが、逸脱が予測されるときに逸脱ありと判定しても良い。つまり、例えば、車速センサ7から取得した車速Vや操舵角センサ3から取得した操舵角を利用して、所定時間後に逸脱判定閾値Thを超えて車線から逸脱することが予測される場合に、自車両の逸脱ありと判定しても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 車線逸脱警報装置
2 カメラ(撮像手段)
3 操舵角センサ
4 ウインカセンサ
5 補助ブレーキセンサ
6 クラッチセンサ(シフト操作センサ)
7 車速センサ
8 警報手段
10 ECU
11 白線認識手段
12 路肩認識手段
13 注意力判定手段
14 車線変更判定手段
15 逸脱判定閾値設定手段
16 逸脱判定手段
d 変更値
Th 逸脱判定閾値
Th0 判定基準値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行車線からの逸脱を警報する車線逸脱警報装置であって、
前記走行車線を規定する白線の位置を前記自車両の位置に対して認識する白線認識手段と、
前記走行車線の左右各側の路肩を左右個別に認識する路肩認識手段と、
前記白線の位置に対する逸脱判定閾値を設定する逸脱判定閾値設定手段と、
前記逸脱判定閾値設定手段の設定した前記逸脱判定閾値と前記白線認識手段の認識する前記自車両の位置とを比較して前記自車両の逸脱を判定する逸脱判定手段と、
前記逸脱判定手段が前記自車両の逸脱ありと判定したときにその逸脱を警報する警報手段とを備え、
前記逸脱判定閾値設定手段は、前記路肩認識手段が路肩を認識した側においては、前記白線の位置に対して任意の位置に設定した判定基準値から所定値だけ車線外側に変更した位置に前記逸脱判定閾値を設定し、路肩を認識しなかった側においては前記判定基準値をそのまま前記逸脱判定閾値として設定する
ことを特徴とする、車線逸脱警報装置。
【請求項2】
前記逸脱判定閾値設定手段は、前記所定値の大きさを制限する変更許可範囲が予め設定されている
ことを特徴とする、請求項1記載の車線逸脱警報装置。
【請求項3】
前記逸脱判定閾値設定手段は、前記逸脱判定閾値を前記自車両の左右各側で左右別々に独立して設定する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車線逸脱警報装置。
【請求項4】
前記自車両が一定規格以上の道路を走行している場合に作動する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の車線逸脱警報装置。
【請求項5】
自車両の走行車線からの逸脱を警報する車線逸脱警報方法であって、
前記走行車線を規定する白線の位置を前記自車両の位置に対して認識する白線認識工程と、
前記走行車線の左右各側の路肩を左右個別に認識する路肩認識工程と、
前記白線の位置に対する逸脱判定閾値を設定する逸脱判定閾値設定工程と、
前記逸脱判定閾値設定工程で設定した前記逸脱判定閾値と前記白線認識工程で認識する前記自車両の位置とを比較して前記自車両の逸脱を判定する逸脱判定工程と、
前記逸脱判定手段が前記自車両の逸脱ありと判定したときにその逸脱を警報する警報工程とを備え、
前記逸脱判定閾値設定工程では、前記路肩認識工程で路肩が認識された側においては、前記白線の位置に対して任意の位置に設定した判定基準値から所定値だけ車線外側に変更した位置に逸脱判定閾値を設定し、路肩が認識されなかった側においては、前記判定基準値をそのまま逸脱判定閾値として設定する
ことを特徴とする、車線逸脱警報方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−3419(P2012−3419A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136448(P2010−136448)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】