説明

車車間通信システム、および車車間通信装置

【課題】互いに通信を行う複数の車車間通信装置を備えて構成された車車間通信システムにおいて、移動物体情報をより確実にやり取りできるようにする。
【解決手段】各車車間通信装置は、この車車間通信装置が搭載された自車両の位置情報を含む自車両の情報を取得し、車車間通信装置が搭載された自車両の周囲に存在する移動物体の位置情報を、この移動物体を検出した時刻を表す検出時刻を含む移動物体情報として検出し、検出した移動物体情報をメモリに格納する(S120,S130)。そして、移動物体情報を繰り返し周囲の他車両に搭載された車車間通信装置に送信するとともに、他車両に搭載された車車間通信装置から送信されてくる同種の情報を繰り返し受信する(S160〜S200)。さらに、自車両の位置情報と他車両から受信した移動物体情報とに基づいて、移動物体が自車両にとっての危険要素であるか否かを判断し、この判断結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに通信を行う複数の車車間通信装置を備えて構成された車車間通信システム、および車車間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の車車間通信システムとして、自身の横をすり抜ける移動物体(二輪車等)を検出すると、この移動物体に関する移動物体情報を他車両に送信し、この移動物体情報を受けた他車両において、自身と移動物体との衝突する可能性がある場合に自身の運転者に警告を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−310457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車車間通信システムでは、移動物体を検出した車両が移動物体を検出したタイミングでのみ移動物体情報を周囲の他車両に向けて送信するが、この際に大型車両などによって送受信車両間の伝搬路が遮蔽された、または同時に別の車両から同様の情報が送信されたなど、通信状態によっては他車両が移動物体情報を正常に受信することができない場合があるという問題点があった。
【0005】
そこで、このような問題点を鑑み、互いに通信を行う複数の車車間通信装置を備えて構成された車車間通信システムにおいて、移動物体情報をより確実にやり取りできるようにすることを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために成された第1の構成の車車間通信システムを構成する各車車間通信装置において、車両情報取得手段は、この車車間通信装置が搭載された自車両の位置情報を含む自車両の情報を取得し、移動物体検出手段は、この車車間通信装置が搭載された自車両の周囲に存在する移動物体の位置を、この移動物体を検出した時刻を表す検出時刻を含む移動物体情報として検出し、検出した移動物体情報を検出情報記録部に格納する。そして、通信手段は、検出情報記録部に格納された移動物体情報を繰り返し他車両に搭載された車車間通信装置に送信するとともに、他車両に搭載された車車間通信装置から送信されてくる同種の情報を繰り返し受信する。さらに、危険要素判断手段は、少なくとも車両情報取得手段により取得された自車両の位置情報と通信手段を介して他車両から受信した移動物体情報とに基づいて、移動物体が自車両にとっての危険要素であるか否かを判断し、この判断結果を出力する。
【0007】
このような車車間通信システムによれば、移動物体情報を繰り返し送信することができるので、通信の衝突や大型車両などによる遮蔽が生じた場合、あるいは車車間通信装置を搭載していない車両がいた場合でも移動物体情報をより確実にやり取りすることができる。また、この際、移動物体情報には検出時刻情報を含むので、移動物体情報を受信した車両では、この情報がいつの情報であるかを容易に認識することができる。
【0008】
ところで、上記車車間通信システムにおいては、第2の構成のように、少なくとも一部の車車間通信装置は、検出時刻から予め設定された制限時間以上の時間が経過した移動物体情報を、通信手段が送信することを禁止する第1通信禁止手段、を備えていてもよい。
【0009】
このような車車間通信システムによれば、制限時間以上の時間が経過し、古くなってしまった移動物体情報がいつまでも送信され続けることを防止することができる。なお、第1通信禁止手段(下記の各通信禁止手段でも同様)の具体的な構成としては、検出情報記録部に格納された移動物体情報のうちの制限時間以上の時間が経過したものを削除する構成であってもよい。また、送信する移動物体情報および送信しない移動物体情報をフラグ等によって管理する構成であってもよい。
【0010】
さらに、上記車車間通信システムにおいては、第3の構成のように、移動物体検出手段は、移動物体の速度も取得し、この速度を含む移動物体情報を検出情報記録部に格納し、少なくとも一部の車車間通信装置は、検出情報記録部に格納された移動物体情報に基づいて、自身が検出した移動物体の現在の位置を推定する検出物体位置推定手段と、通信手段を介して外部から取得した移動物体情報に基づいて、他車両で検出された移動物体の現在の位置を推定する取得物体位置推定手段と、自身が検出した移動物体の現在の位置が、他車両で検出された移動物体の現在の位置から基準範囲内となる場合において、外部から取得した移動物体情報に含まれる検出時刻が自身が検出した移動物体情報に含まれる検出時刻よりも現在時刻に近い場合に、この移動物体情報を通信手段が送信することを禁止する第2通信禁止手段と、を備えていてもよい。
【0011】
このような車車間通信システムによれば、同一の移動物体についての移動物体情報であって、自身が送信する情報よりも新しい情報が他の車両から送信された際に、自身がその移動物体についての移動物体情報の送信を停止させることができる。よって、重複するために不要となる、かつ古くて精度の悪い情報が送信され続けることを抑制して通信網の混雑を緩和するとともに、より確実に右直事故防止支援を行なうことができる。
【0012】
なお、検出時刻が現在時刻に近いかどうかを判定する際には、自車両の位置の情報も移動物体情報とともに送信手段が送信するよう構成し、受信した移動物体情報を検出した他車両の位置が自車両の位置よりも前方であるか(特定の交差点に近いか)どうかによって判定してもよい。
【0013】
また、上記車車間通信システムにおいては、第4の構成のように、移動物体検出手段は、移動物体の速度も取得し、この速度を含む移動物体情報を検出情報記録部に格納し、各車車間通信装置は、検出情報記録部に格納された移動物体情報に基づいて、自身が検出した移動物体の現在の位置を推定する検出物体位置推定手段と、検出物体位置推定手段によって推定された自身が検出した移動物体の現在の位置を、移動物体情報に含まれる移動物体の位置として、検出情報記録部に格納された移動物体情報に上書きする上書き手段と、自身が検出した移動物体の現在の位置が、他車両で検出された移動物体の現在の位置から基準範囲内となる場合において、外部から取得した移動物体情報に含まれる検出時刻が、自身が検出した移動物体情報に含まれる検出時刻よりも現在時刻に近い場合に、この移動物体情報を通信手段が送信することを禁止する第2通信禁止手段と、を備えていてもよい。
【0014】
このような車車間通信システムによれば、移動物体の最新の位置を移動物体情報として交換することができる。よって、他車両が検出した移動物体の位置を自車両で計算する処理を省くことができる。
【0015】
さらに、上記車車間通信システムにおいては、第5の構成のように、通信手段は、移動物体情報に移動物体の特徴を示す特徴情報を含めて移動物体情報を送受信可能に構成されており、少なくとも一部の車車間通信装置は、自身が移動物体情報として検出できない特徴情報を表す非検出特徴情報を含む移動物体情報を、通信手段を介して受信する非送信特徴受信手段、を備え、移動物体検出手段は、取得情報記録部に格納された移動物体情報が対応する移動物体の位置と移動物体検出手段により検出された移動物体とが予め設定された一致領域範囲内に位置する場合に、非検出特徴情報を移動物体情報に含めて検出情報記録部に格納してもよい。
【0016】
このような車車間通信システムによれば、車車間通信装置によって検出可能な特徴情報に差異がある場合であっても、移動物体に関するより多くの特徴情報を送信することができる。
【0017】
さらに、上記車車間通信システムにおいては、第6の構成のように、少なくとも一部の車車間通信装置は、自身から基準距離以内に位置する右折車両の有無を表す右折車両情報を取得する右折車両情報取得手段と、右折車両情報に基づき右折車両がない場合に、移動物体情報を、通信手段が送信することを禁止する第3通信禁止手段と、を備えていてもよい。
【0018】
このような車車間通信システムによれば、右折車両が自車両のそばに存在しないときには移動物体情報を送信しないようにすることで、通信網の混雑を緩和することができる。
また、上記車車間通信システムにおいては、第7の構成のように、少なくとも一部の車車間通信装置は、右折車両までの距離を表す距離情報を取得する距離情報取得手段と、距離情報に応じて、通信手段が移動物体情報を繰り返し送信する際の送信周期を設定する送信周期設定手段と、を備えていてもよい。
【0019】
このような車車間通信システムによれば、右折車両への通信の確実性を向上させる必要がある位置(右折車両までの距離)において移動物体情報の送信周期を短く設定することで、移動物体情報を右折車両に受信させる確実性を向上させることができ、右折車両への通信の確実性を向上させる必要がない位置では移動物体情報の送信周期を長く設定することで通信網の混雑を抑制することができる。
【0020】
加えて、上記車車間通信システムにおいては、第8の構成のように、距離情報取得手段は、自車両から右折車両までの距離を距離情報として取得するようにしてもよいし、第9の構成のように、距離情報取得手段は、移動物体から右折車両までの距離を距離情報として取得するようにしてもよい。
【0021】
このような車車間通信システムによれば、自車両や移動物体から右折車両までの距離に応じて送信周期を設定することができる。
さらに、上記車車間通信システムにおいては、第10の構成のように、送信周期設定手段は、右折車両までの距離が短くなるにつれて送信周期を短く設定してもよい。
【0022】
このような車車間通信システムによれば、右折車両に近い車両から送信される移動物体情報を右折車両が確実に受信できるようにすることができる。
また、上記車車間通信システムにおいては、第11の構成のように、送信周期設定手段は、右折車両までの距離が長くなるにつれて送信周期を短く設定してもよい。
【0023】
このような車車間通信システムによれば、右折車両からの距離が大きく、電波の減衰が大きくなるために通信の成功率が低くなる車両から送信される移動物体情報を、右折車両がより確実に受信できるようにすることができる。
【0024】
或いは、上記車車間通信システムにおいては、第12の構成のように、送信周期設定手段は、予め設定された所定距離までは右折車両までの距離が長くなるにつれて送信周期を長く設定し、所定距離を超えると右折車両までの距離が長くなるにつれて送信周期を短く設定してもよい。
【0025】
このような車車間通信システムによれば、右折車両と直進する移動物体との事故率が高い場所に位置する車両から送信される移動物体情報を右折車両がより確実に受信できるようにすることができる。
【0026】
また、上記車車間通信システムにおいては、第13の構成のように、少なくとも一部の車車間通信装置は、検出情報記録部に複数の移動物体情報が格納されている場合に、これらの移動物体情報に基づく移動物体の位置を検出し、予め設定された所定範囲内に位置する複数の移動物体について、先頭および最後尾を除く移動物体に関する移動物体情報を、通信手段が送信することを禁止する第4通信禁止手段、を備えていてもよい。
【0027】
このような車車間通信システムによれば、多くの移動物体が存在する場合においても、移動物体情報の送信量を抑制することで、通信網の混雑を緩和することができる。
さらに、上記車車間通信システムにおいては、第14の構成のように、少なくとも一部の車車間通信装置は、移動物体検出手段が移動物体情報を検出情報記録部に格納すると、直ちに移動物体情報を通信手段に送信させる送信制御手段、を備えていてもよい。
【0028】
このような車車間通信システムによれば、より速やかに移動物体情報を送信することができる。
次に、上記目的を達成するためには、第15の構成としての車車間通信装置のように、車車間通信装置は、上記記載の車車間通信システムを構成する車車間通信装置として構成されていてもよい。
【0029】
このような車車間通信装置によれば、上記車車間通信システムと同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態における二輪車の検出方法を示す説明図である。
【図2】第1実施形態における車車間通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】ソナー51〜54に求められる性能(エリアの広さ)を示す説明図である。
【図4】移動検出処理を示すフローチャート(a)、および送信判断処理を示すフローチャート(b)である。
【図5】右直事故支援処理を示すフローチャートである。
【図6】右直事故支援処理のうち到達時間算出処理を示すフローチャートである。
【図7】移動物体の到達時間の演算方法を示す説明図である。
【図8】異なる車両から受信した移動物体の検出情報から到達時間を演算する演算方法を示す説明図である。
【図9】第1実施形態の効果を示す説明図である。
【図10】第2実施形態の検出情報更新処理を示すフローチャート(a)、および移動物体位置予測処理を示すフローチャート(b)である。
【図11】第3実施形態の検出情報更新処理を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の送信判断処理を示すフローチャート(a)、および移動物体位置予測処理を示すフローチャート(b)である。
【図13】第4実施形態の検出情報更新処理を示すフローチャートである。
【図14】第5実施形態の移動物体検出処理を示すフローチャート(a)、および移動物体位置予測処理を示すフローチャート(b)である。
【図15】第5実施形態の検出情報更新処理を示すフローチャートである。
【図16】第6実施形態の右折車両検出判定処理を示すフローチャート(a)、および送信判断処理を示すフローチャート(b)である。
【図17】第7実施形態の右折車両検出処理を示すフローチャート(a)、および送信周期設定処理を示すフローチャート(b)である。
【図18】第7実施形態の送信判断処理を示すフローチャートである。
【図19】第8実施形態の移動物体位置予測処理を示すフローチャート(a)、および右折車両検出判定処理を示すフローチャート(b)である。
【図20】第9実施形態の送信情報選択処理を示すフローチャートである。
【図21】第9実施形態の移動物体検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。なお、本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0032】
[第1実施形態]
まず、本実施形態の概要について図1を用いて説明する。図1は二輪車の検出方法を示す説明図である。
【0033】
図1に示すように、渋滞等により停止または低速走行している対向車両は、この対向車両の脇をすり抜ける二輪車等の移動物体を検出し、この移動物体の情報を、交差点を右折しようとする右折車両に送信する。そして、右折車両では、この移動物体の情報が右折車両にとっての危険要素であるか否かを判定し、危険要素である場合には、警告等の運転動作の支援を行うことにより、移動物体と右折車両との衝突を回避しようとするものである。
【0034】
より詳細な実施形態について、図2以下を用いて説明する。図2は、本発明が適用された車車間通信システム1の概略構成を示すブロック図である。車車間通信システム1は、複数の車両に夫々搭載され、互いに無線通信可能にされた車車間通信装置10により構成されている。
【0035】
各車車間通信装置10は、無線機20、表示装置21、スピーカ22が接続された支援制御ECU2(ECUは電子制御装置)と、ステアリングセンサ31、ヨーレートセンサ32、ブレーキ33が接続されたブレーキECU3と、GPSアンテナ41が接続されたナビゲーションECU4と、4つのソナー51〜54が接続されたソナーECU5と、車速センサ61、噴射制御装置62が接続されたエンジンECU6とを備えている。
【0036】
各ECU2〜6は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されており、通信線を介してCAN等の所定の通信プロトコルで他のECU2〜6と通信可能に構成されている。
【0037】
支援制御ECU2は、後述する移動物体検出処理や右直事故支援処理等を実行し、これらの処理の実行結果を他の車両(他の車車間通信装置10)に無線機20を介して送信したり、車両の運転者に表示装置21やスピーカ22を介して報知したりする。また、支援制御ECU2は、他の車両から無線機20を介して何らかの情報を受信すると、この受信結果に応じた処理を実行する。
【0038】
表示装置21は、例えば地図画像等を表示するLCD(液晶カラーディスプレイ)や、フロントガラスに画像を重ねて表示させるHUD(ヘッドアップディスプレイ)として構成されており、支援制御ECU2による処理の実行結果や、ナビゲーションECU4により生成された地図情報等を表示する。なお、表示装置21およびスピーカ22は、ナビゲーションECU4に接続されていてもよい。
【0039】
ブレーキECU3は、操舵角を検出するステアリングセンサ31や角速度を検出するヨーレートセンサ32による検出結果に応じて、ブレーキ33を制御する。また、ブレーキECU3は、支援制御ECU2から制動制御指令を受けるとブレーキ33を作動させる。
【0040】
ナビゲーションECU4は、GPSアンテナ41による検出結果に基づいて、自車両の現在地を検出し、この現在地に応じて、HDD9に格納された地図情報を読み出し、地図情報に自車両の現在地を重ねた地図画像を生成する。そして、ナビゲーションECU4は、地図情報および生成した地図画像を支援制御ECU2に送信し、表示装置21に地図画像を表示させる。
【0041】
エンジンECU6は、車速センサ61による検出結果に応じてエンジン(噴射制御装置62等)を制御するとともに、車速センサ61による検出結果(車速情報)を支援制御ECU2やナビゲーションECU4に送信する。
【0042】
ソナーECU5は、ソナー51〜54による検出結果を支援制御ECU2に送信する。
ここで、ソナー51〜54には、前方左側ソナー51、前方右側ソナー52、後方左側ソナー53、後方右側ソナー54があり、各ソナー51〜54が車両における4箇所の角部に車両の外側に向けて配置されている。そして、ソナー51〜54は、間欠的に超音波を送信し、車両の周囲に存在する移動物体や障害物等の物体にて反射された超音波の反射波を検出する。
【0043】
ソナーECU5は、ソナー51〜54を用いて、反射波が検出されるまでの時間を測定することにより、車両の周囲に存在する移動物体や障害物等の物体の有無や、物体までの距離を検出することができる。なお、本実施形態においては、ソナー51〜54を用いて自車両の脇をすり抜ける二輪車を検出することを想定しているので、ソナー51〜54には、以下のような性能が求められる。
【0044】
まず、検出対象となる物体(二輪車)の速度が高速である場合においても確実に物体を検出するために、ソナー51〜54から送信される超音波の送信間隔は、極力短く設定されていることが求められる。ただし、超音波が乱反射することにより長時間反射波が検出される現象(マルチパス)の影響を考慮すると、75ms程度の送信間隔が必要となる。
【0045】
また、原動機付自転車のような二輪車には、ソナー51〜54から送信された超音波を反射する部材が約50cm角しかないものもあるため、二輪車の検出可能長さは50cmとして、この二輪車を最低2回は検出できるような検知エリア幅(二輪車の進行方向における長さ)を設定する。
【0046】
ここで、ソナー51〜54に求められる性能(エリアの広さ)について図3を用いて説明する。ソナー51〜54から二輪車が移動する軌跡を表す動線までの距離(必要検知距離)は、通常では2m程度であるが、ソナー51〜54に求められる必要検知距離としては余裕をとって3mに設定する。
【0047】
また、必要検知エリア幅は、
(1送信周期あたりの二輪車の移動距離(m))*(検出回数)−(二輪車の長さ(m))
で求められるので、
0.75*2−0.5=1.00
となる。
【0048】
つまり、本実施形態のソナー51〜54としては、検知距離:3m、検知エリア幅:1mのソナーを用いればよい。
このようなソナー51〜54を用いて二輪車を検出する際には、車両の左側に配置されたソナー51,53を用いて二輪車を検出する。すなわち、ソナーECU5は、ソナーによる検出結果が、「未検出」、「検出」、「未検出」の順で変化すると、二輪車(移動物体)を検出したものと判定し、この検出結果を支援制御ECU2に送信する。
【0049】
支援制御ECU2は、ソナーECU5からの検出結果を受信することにより、二輪車(移動物体)を検出することができる。次に、車車間通信装置10が搭載された車両により二輪車を検出する処理について図4(a)を用いて説明する。図4(a)は車車間通信装置10の支援制御ECU2が実行する移動物体検出処理を示すフローチャートである。
【0050】
この移動物体検出処理は、車車間通信装置10の起動中に繰り返し実行される処理であって、まず、自車両の現在地が交差点手前の規定距離(例えば、100m)以内であって、かつ自車両の走行速度が規定速度(例えば、4km/h)以下であるか否かを判定する(S110)。
【0051】
ここで、この処理においては、ナビゲーションECU4から受信した地図情報や、エンジンECU6から受信した車速情報に基づいて判定を行う。自車両の現在地が交差点手前の規定距離より大きいか、或いは自車両の走行速度が規定速度より大きければ(S110:NO)、S110の処理を繰り返す。
【0052】
また、自車両の現在地が交差点手前の規定距離以下であって、かつ自車両の走行速度が規定速度以下であれば(S110:YES)、自車両の左側方を通過する移動物体(具体的には二輪車)を監視する(S120)。つまり、ソナー51〜54をアクティブな状態とする。
【0053】
続いて、何れかのソナー51〜54で移動物体を検出したか否かを判定する(S130)。全てのソナー51〜54が移動物体を検出していなければ(S130:NO)、移動物体検出処理を終了する。
【0054】
また、何れかのソナー51〜54で移動物体を検出していれば(S130:YES)、移動物体の位置、種別、時刻、速度等の情報を含む移動物体情報をRAM等のメモリに記録し(S140)、移動物体検出処理を終了する。なお、S140の処理において、移動物体の位置(絶対的な位置)は、ナビゲーションECU4にて検出される自車両の位置と、移動物体を検出したソナー51〜54の位置と位置関係に基づいて求められる。
【0055】
次に、周期的に繰り返し移動物体情報を送信する処理について図4(b)を用いて説明する。図4(b)は、支援制御ECU2が実行する送信判断処理を示すフローチャートである。
【0056】
送信判断処理は、例えば、車両の電源が投入されると開始され、その後、繰り返し実行される処理である。詳細には、まず、情報の送信タイミングを管理するためのカウンタ(レジスタ等の)を初期化する(S160)。そして、メモリ内に移動物体情報があるか否かを判定する(S170)。
【0057】
移動物体情報がなければ(S170:NO)、後述するS190の処理に移行する。また、移動物体情報があれば(S170:YES)、無線機20を介してメモリ内の移動物体情報を送信し(S180)、カウンタ値と送信周期に対応した基準値とを比較する(S190)。つまり、移動物体情報を送信してから一定時間(例えば75ms)が経過したか否かを判定する。
【0058】
カウンタ値が基準値未満であれば(S190:NO)、カウンタをインクリメント(カウントアップ)し(S200)、S190の処理に戻る。また、カウンタ値が基準値以上であれば(S190:YES)、送信判断処理を終了する。
【0059】
なお、送信判断処理において送信される移動物体情報には、前方のソナーにて移動物体を検出した時刻(前方検出時刻)、前方のソナーによる移動物体の検出継続時間(前方滞在時間)、前方のソナーから移動物体までの距離(前方検出距離)、前方のソナーにて移動物体を検出する際の検出誤差(前方検出誤差)、同様に後方のソナーにて移動物体を検出した際の後方検出時刻、後方滞在時間、後方検出距離、後方検出誤差等の各種情報を送信してもよい。
【0060】
また、送信判断処理においては移動物体情報とともに、自車両の情報である自車情報を送信してもよい。この場合、自車情報としては、自車位置(現在地)、自車位置を測定したときの予測誤差、自車位置を測定したときの時刻、自車両の進行方向、自車両の車速、自車両のシフト位置、ブレーキ33のONOFF等の各種情報を送信してもよい。
【0061】
また、自車位置の情報としては、車両の中心位置(つまり車両の現在地)とソナーの位置との距離の情報等も含まれる。また、自車位置を測定したときの予測誤差とは、検出した自車位置を中心として、経験的に自車両が所定確率以上(例えば80%以上)の確率で存在する領域の半径を示す。なお、上記のうち、検出できなかった情報に関しては、情報を送信する際に、検出不可である旨を送信するようにしてもよい。
【0062】
次に、移動物体検出処理を実行した車両(対向車両)から検出情報を受信する車両(右折車両)における処理を図5および図6を用いて説明する。図5は支援制御ECU2が実行する右直事故支援処理を示すフローチャート、図6は右直事故支援処理のうち到達時間算出処理を示すフローチャートである。
【0063】
なお、右直事故支援処理においては、他の車両から受信した各種情報を支援制御ECU2のRAM等のメモリに順次格納し、必要に応じてメモリから各種情報を読み出すことにより処理を実行する。
【0064】
右直事故支援処理は、図5に示すように、まず、移動物体の検出情報を受信したか、或いは規定時間が経過したかを判定する(S310)。移動物体の検出情報を受信しておらず、規定時間も経過していなければ(S310:NO)、S310の処理を繰り返す。
【0065】
また、移動物体の検出情報を受信したか、或いは規定時間が経過していれば(S310:YES)、到達時間算出処理を実行する(S320)。
到達時間算出処理は、図6に示すように、まず、同一車両から移動物体の検出情報を複数検出したか否かを判定する(S510)。すなわち、この処理では、1台の車両の前後の両方において移動物体を検出できたか否かを判定する。
【0066】
同一車両から移動物体の検出情報を複数検出していれば(S510:YES)、移動物体が交差点内の交差ポイントに到達するまでの到達時間を演算する(S520)。
このS520における処理については、図7を用いて説明する。図7は、移動物体の到達時間の演算方法を示す説明図である。
【0067】
なお、交差ポイントとは、右折車両の位置情報から予想される予想進路と移動物体の移動ベクトルから予想される予想進路とから推定される、右折車両および移動物体の予想進路が交差する点を示す。
【0068】
右折車両の予想進路は、右折車両が右折レーン内に進入しているか否かや、ナビゲーションECU4から取得した情報に基づいて右折予定の交差点に接近しているか、または、ウインカの作動状態等の情報により特定される。
【0069】
また、移動物体の予想進路は、検出された移動物体の位置および進行方向(移動ベクトル)で、そのまま走行を継続するものとして特定される。従って、右折車両の予想進路と移動物体の予想進路とが交差する位置が交差ポイントとして設定される。
【0070】
移動物体が交差ポイントに到達するまでの到達時間を演算するにあたっては、まず、移動物体の速度が演算される。移動物体の速度V(m/s)は、図7に示すように、前後のソナー間の距離をX(m)、前方左側ソナー51による移動物体の検出時刻をTa、後方左側ソナー53による移動物体の検出時刻をTbとすると、
V=X/(Ta−Tb)
と求められる。このとき、車両が移動中の場合には、車両の速度を移動物体の速度として加算する。
【0071】
ここで、ナビゲーションECU4により検出された自車両の現在地と交差ポイントの位置とに基づいて、自車両の現在地と交差ポイントまでの距離である交差ポイント距離Yが演算され、移動物体が交差ポイントに到達するまでの到達時間Txは、
Tx=Y/V
と求められる。
【0072】
なお、ナビゲーションECU4により検出された自車両の現在地には誤差があり、ソナーが移動物体を検出する検出範囲には一定の広さがあるため、本処理においてはこの誤差についても考慮する。
【0073】
すなわち、続くS530,S540の処理では、誤差を考慮して、最遅到達時間、最速到達時間を演算する。最遅到達時間および最速到達時間を演算するにあたっては、自車両の現在地の誤差半径をD0、ソナーによる検知エリア幅をD1(図3では1mに設定)とする。
【0074】
最遅到達時間を演算する処理(S530)においては、まず、ソナーにより検出され得る移動物体の最低速度Vminを演算する。最低速度Vminは、次式により求められる。
Vmin=(X+D1)/(Ta−Tb)
よって、最遅到達時間Tmaxは、次式により求められる。
Tmax=(Y+D0)/Vmin
一方、最速到達時間を演算する処理(S540)においては、まず、ソナーにより検出され得る移動物体の最高速度Vmaxを演算する。最高速度Vmaxは、次式により求められる。
Vmax=(X−D1)/(Ta−Tb)
よって、最速到達時間Tminは、次式により求められる。
Tmin=(Y−D0)/Vmax
なお、最遅到達時間Tmaxが0以下である場合には、既に移動物体が交差ポイントを通過しているものとして、この移動物体の検出情報を削除する。また、移動物体の速度Vが予め設定された基準速度よりも遅い場合には、この移動物体を無視するようにしてもよい。
【0075】
このように、S530,S540の処理を終了すると、S550に移行する。また、S510にて、同一車両から移動物体の検出情報を複数検出していなければ(S510:NO)、S550に移行する。
【0076】
S550では、複数の車両から移動物体の検出情報を受信したか否かを判定する(S550)。複数の車両から移動物体の検出情報を受信していなければ(S550:NO)、到達時間算出処理を終了する。
【0077】
また、複数の車両から移動物体の検出情報を受信していれば(S550:YES)、異なる車両からの検出情報に基づいて、移動物体が交差ポイントに到達するまでの到達時間を演算する(S560〜S580)。
【0078】
S560〜S580の処理については、図8を用いて説明する。図8は異なる車両から受信した移動物体の検出情報から到達時間を演算する演算方法を示す説明図である。
この演算方法においては、横軸に時間をとり、縦軸に交差ポイントまでの距離をとって、検出情報をプロットしたグラフを作成し、このプロットから直線あてはめを行うことにより、移動物体が交差ポイントに到達するまでの時間を演算する。
【0079】
具体的には、図8に示すように、まず、時刻T3において、交差ポイント距離Y3に位置する車両が移動物体を検出し、その後、時刻T2において、交差ポイント距離Y2に位置する車両が移動物体を検出すると、グラフ上にこれら2つのポイントを通る直線が引かれる(S560)。そして、交差ポイントから離れる直線(つまり右上がりの直線)、および移動速度が規定速度(例えば5〜50km/h)外の直線を削除する(S570)。
【0080】
そして、削除されなかった直線が、時間軸と交わる点までの時間が、移動物体が交差ポイントに到達する到達時間して設定される(S580)。その後、さらに、時刻T1において、交差ポイント距離Y1に位置する車両が移動物体を検出すると、前述の誤差(各車両の現在地の誤差、ソナーによる検知エリア幅による誤差)を加味して、例えば、重み付き最小二乗法およびロバスト推定を併用した手法による直線あてはめを行うことにより、時間および交差ポイント距離を両軸にとる直線が再度引かれ(S560)、不要な直線を削除し(S570)、到達時間が再度演算される(S580)。
【0081】
また、受信した移動物体の検出情報は、規定時間(例えば10秒)が経過すると削除される。S580の処理が終了すると、到達時間算出処理を終了し、図5のS330に移行する。
【0082】
続くS330〜S370、S390〜S420においては、到達時間算出処理(S320)による演算結果および受信した移動物体の検出情報に応じて、移動物体の危険レベルを設定し、この危険レベルに応じて車両の運転者に対する支援方法を設定する。
【0083】
具体的には、規定時間Tc(例えば、Tc=3(秒):許容時間)以内に交差ポイントに到達する移動物体があるか否かを判定し(S330)、規定時間Tc以内に交差ポイントに到達する移動物体がある場合には(S330:YES)、この到達時間の信頼性を判定する(S340〜S360)。
【0084】
すなわち、最遅到達時間Tmax≧規定時間Tc*定数x(例えば、x=2.0)であるか否かの判定(S340)、最速到達時間Tmin≦規定時間Td(例えば、Tmin≦−1.0秒)であるか否かの判定(S350)、規定距離La(例えば、La=100(m))内の何れかの車両から移動物体の検出情報が得られたか否かの判定を実施する(S360)。
【0085】
S330〜S360の処理のうち何れかの処理で否定判定されれば、S390に移行する。また、S330〜S360の処理の全ての処理で肯定判定されれば、運転者の発進操作の有無を検出する(S370)。運転者の発進操作が検出されなければ(S370:NO)、S390に移行する。また、運転者の発進操作が検出されれば(S370:YES)、警告および発進抑制を実施する(S380)。
【0086】
ここで、この発進抑制の処理としては、ブレーキECU3に対してブレーキ33を作動させる制動指令を送信し、エンジンECU6に対して燃料カット信号を送信する。この指令を受けたブレーキECU3は、ブレーキを作動させ、エンジンECU6は、燃料の噴射を抑制するので、車両の発進が抑制される。なお、S380の処理が終了すると、右直事故支援処理を終了する。
【0087】
一方、S390では、規定時間Td(例えば、Td=5(秒))以内に交差ポイントに到達する移動物体があるか否かを判定する(S390)。規定時間Td以内に交差ポイントに到達する移動物体がない場合には(S390:NO)、右直事故支援処理を終了する。また、規定時間Td以内に交差ポイントに到達する移動物体がある場合には(S390:YES)、この到達時間の信頼性を判定する(S400〜S420)。
【0088】
すなわち、最遅到達時間Tmax≧規定時間Td*定数w(例えば、w=1.5)であるか否かの判定(S400)、規定距離Lb(例えば、Lb=100(m))内の何れかの車両から移動物体の検出情報が得られたか否かの判定を実施する(S410)。
【0089】
S400,S410の処理のうち何れかの処理で否定判定されれば、S440に移行する。また、S440,S410の処理の全ての処理で肯定判定されれば、算出した到達時間が低信頼性であるか否かを判定する(S420)。ここでは、例えば、到達時間が複数の車両による移動物体の検出結果に基づく直線(S560〜S580の処理)にて演算されており、この直線を導出する根拠となる検出結果の数が2つしかない場合等に、算出した到達時間が低信頼性であると判断する。
【0090】
算出した到達時間が低信頼性でなければ(S420:NO)、運転者に対して警告を実施し(S430)、右直事故支援処理を終了する。また、算出した到達時間が低信頼性であれば(S420:YES)、低レベル警告を実施し(S440)、右直事故支援処理を終了する。
【0091】
なお、本実施形態において、通常の「警告」は、スピーカ22を介した音声による警告、および表示装置21における該当移動物体の点滅表示により行い、「低レベル警告」は、表示装置21における該当移動物体の点滅表示のみを行うものとする。
【0092】
この右直事故支援処理を実行する車両において、表示装置21には、車車間通信装置10を搭載した車両の情報と、移動物体の情報とが表示される。特に、移動物体が警告を要するような危険要素である場合には、移動物体の情報が点滅表示されることになる。
【0093】
[第1実施形態による効果]
以上のように詳述した車車間通信システム1において、各車車間通信装置10の支援制御ECU2は、この車車間通信装置10が搭載された自車両の位置情報を含む自車両の情報を取得し、車車間通信装置10が搭載された自車両の周囲に存在する移動物体の位置を、この移動物体を検出した時刻を表す検出時刻を含む移動物体情報として検出し、検出した移動物体情報をメモリに格納する。そして、メモリに格納された移動物体情報を繰り返し他車両に搭載された車車間通信装置10に送信するとともに、他車両に搭載された車車間通信装置10から送信されてくる同種の情報を繰り返し受信する。さらに、自車両の位置情報と他車両から受信した移動物体情報とに基づいて、移動物体が自車両にとっての危険要素であるか否かを判断し、この判断結果を出力する。
【0094】
このような車車間通信システム1によれば、図9に示すように、車車間通信装置10を搭載した車両A5が移動物体Cを検出すると、車車間通信装置10を搭載した右折待ち車両B1に対して移動物体情報を繰り返し送信することができるので、移動物体情報をより確実にやり取りすることができる。また、この際、移動物体情報には検出時刻情報を含むので、移動物体情報を受信した右折待ち車両B1等では、この情報がいつの情報であるかを容易に認識することができる。
【0095】
[第1実施形態の変形例]
本実施形態において、車車間通信装置10は、ソナー51〜54を車両の4箇所の角部に配置し、左側2箇所のソナーにて移動物体を検出するように構成したが、例えば、少なくとも車両の左側には3箇所にソナーを配置し、これらのソナーによる検知結果に基づいて、移動物体が交差ポイントに到達するまでの到達時間を演算してもよい。この場合には、S560〜S580にて使用した直線あてはめの手法を採用すれば良好に到達時間を算出することができる。
【0096】
また、移動物体が危険要素であるか否かを判定するには、少なくとも自車両の位置情報と移動物体の位置情報とから移動物体が危険要素であるか否かを判定すればよい。例えば、自車両および移動物体の位置情報のみから危険要素を判定する場合には、これらの位置情報に基づいて自車両と移動物体との距離を演算し、この距離が予め設定された判定距離よりも接近しているか否かによって、移動物体が危険要素であるか否かを判定すればよい。
【0097】
また、交差ポイントを検出する際に利用する自車両の予想進路は、自車両の現在地が特定の位置にあるか否か(例えば自車両が右折レーン等の特定のレーン内にあるか否か)に基づいて、予想進路を特定してもよいし、カーナビゲーションシステム等から車両の予想進路の情報が取得できる場合には、この情報を利用してもよい。
【0098】
また、本実施形態においては、右折車両にて運転支援を行うよう構成したが、例えば、移動物体を検出した車両の前方に位置する前方車両にて、移動物体が接近している旨の情報を受信し、移動物体の存在を警告することにより、この前方車両が左折する際に移動物体を巻き込むこと、および前方車両にてドアが開かれることによる事故を防止するようにしてもよい。
[第2実施形態]
次に、別形態の車車間通信システム1aについて説明する。本実施形態(第2実施形態)以下の実施形態では、第1実施形態の車車間通信システム1と異なる箇所のみを詳述し、第1実施形態の車車間通信システム1と同様の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0099】
第2実施形態の車車間通信システム1aでは、メモリ内の移動物体情報を削除する処理を実施する。図10(a)は、支援制御ECU2が実行する検出情報更新処理を示すフローチャートである。
【0100】
検出情報更新処理は、車両の電源が投入されると繰り返し実行される処理であって、まず、メモリ内に移動物体情報があるか否かを判定する(S610)。移動物体情報があれば(S610:YES)、メモリ内の各移動物体情報について移動物体の検出時刻からの経過時間T0を計算する(S620)。
【0101】
続いて、メモリ内の各移動物体情報について経過時間T0と規定時間(例えば5秒)とを比較する(S630)。経過時間T0が規定時間以上となるものがあれば(S630:YES)、経過時間T0が規定時間以上となる移動物体情報をメモリから削除し(S640)、検出情報更新処理を終了する。
【0102】
また、S610の処理にて移動物体情報がない場合(S610:NO)、またはS610の処理にて経過時間T0が規定時間以上となるものがない場合(S630:NO)には、直ちに検出情報更新処理を終了する。
【0103】
このような車車間通信システム1aにおいて支援制御ECU2は、検出時刻から予め設定された制限時間以上の時間が経過した移動物体情報を削除することで、制限時間以上の時間が経過した移動物体情報が送信されることを禁止する。
【0104】
このような車車間通信システム1aによれば、制限時間以上の時間が経過し、古くなってしまった移動物体情報がいつまでも送信され続けることを防止することができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の車車間通信システム1bについて説明する。第3実施形態の車車間通信システム1bでは、他の車車間通信装置10によって新たに移動物体情報が送信され始めると、同じ移動物体についての移動物体情報を送信していた車車間通信装置10による情報の送信を停止させる機能を備えている。
【0105】
ここで、図10(b)は、第3実施形態において支援制御ECU2が実行する移動物体位置予測処理を示すフローチャートである。この移動物体位置予測処理は、例えば、車両の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実行される処理である。
【0106】
詳細には、まず、メモリ内に移動物体情報があるか否かを判定する(S660)。移動物体情報があれば(S660:YES)、メモリ内の移動物体情報に含まれる、移動物体を検出した時刻、および移動物体の速度を利用して、移動物体情報毎に移動物体の現在位置を計算する(S670)。
【0107】
続いて、前方に存在する他車両からの移動物体情報を受信したか否かを判定する(S680)。この処理においては、移動物体情報とともに送信される他車両の位置の情報に基づいて、受信した移動物体情報が前方に存在する他車両からの移動物体情報であるか否かを判断する。
【0108】
なお、移動物体情報が前方に存在する他車両からの移動物体情報であるか否かについては、自身が有する移動物体情報と他車両から受信した移動物体情報とに含まれる移動物体の検出時刻を比較することによって判断してもよい。つまり、自身が有する移動物体情報の検出時刻よりも他車両から受信した移動物体情報の検出時刻が新しければ、前方の他車両からの移動物体情報であると判断すればよい。
【0109】
前方に存在する他車両からの移動物体情報を受信していれば(S680:YES)、受信した移動物体情報から移動物体の現在位置を計算する(S690)。この際、受信した移動物体の速度と移動物体の検出時刻とを利用して現在位置を算出する。
【0110】
続いて、それぞれの予測移動物体情報をRAM等のメモリに出力し(S700)、移動物体位置予測処理を終了する。また、S660の処理にて、移動物体情報がない場合(S660:NO)、またはS680の処理にて前方に存在する他車両からの移動物体情報を受信してない場合(S680:NO)には、直ちに移動物体位置予測処理を終了する。
【0111】
次に、本実施形態の検出情報更新処理について図11を用いて説明する。本実施形態の検出情報更新処理では、前述の検出情報更新処理のS640の処理の後で、後述するS710〜S750の処理を実施する。
【0112】
すなわち、S640の処理が終了すると、図11に示すように、メモリ内の全ての移動物体情報に送信識別子を付加し(S710)、予測移動物体情報が取得できるか否か(予測移動物体情報がメモリに新たに記録されたか否か)を判定する(S720)。予測移動物体情報が取得できれば(S720:YES)、他車両から受信した移動物体情報に基づく移動物体の位置から、自車両が記録している移動物体情報に基づく移動物体の位置までの距離Dを計算する(S730)。
【0113】
そして、距離D<規定範囲(例えば2m)となる移動物体情報があるか否かを判定する(S740)。距離D<規定範囲となる移動物体情報があれば(S740:YES)、距離D<規定範囲となる移動物体情報から送信識別子を外し(S750)、検出情報更新処理を終了する。
【0114】
また、S720の処理にて、予測移動物体情報が取得できなかった場合(S720:NO)、またはS740の処理にて距離D<規定範囲となる移動物体情報がない場合(S740:NO)には、直ちに検出情報更新処理を終了する。
【0115】
次に、本実施形態の送信判断処理について図12(a)を用いて説明する。本実施形態の送信判断処理では、図4に示したS180の処理に代えて、メモリに格納された移動物体情報のうちの、送信識別子が付加されている移動物体情報を送信する(S760)。
【0116】
以上のような第3実施形態の車車間通信システム1bにおいて支援制御ECU2は、移動物体の速度も取得し、この速度を含む移動物体情報をRAM等のメモリに格納し、RAM等のメモリに格納された移動物体情報に基づいて、自身が検出した移動物体の現在の位置を推定するとともに、外部から取得した移動物体情報に基づいて、他車両で検出された移動物体の現在の位置を推定する。そして、自身が検出した移動物体の現在の位置が、他車両で検出された移動物体の現在の位置から基準範囲内となる場合において、外部から取得した移動物体情報に含まれる検出時刻が、自身が検出した移動物体情報に含まれる検出時刻よりも現在時刻に近い場合に、この移動物体情報を送信することを禁止する。
【0117】
このような車車間通信システム1bによれば、同一の移動物体についての移動物体情報であって、自身が送信する情報よりも新しい情報が他の車両から送信された際に、自身がその移動物体についての移動物体情報の送信を停止させることができる。よって、重複するために不要となる、かつ古くて精度の悪い情報が送信され続けることを抑制して通信網の混雑を緩和するとともに、より確実に右直事故防止支援を行なうことができる。
【0118】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の車車間通信システム1cについて説明する。第4実施形態の車車間通信システム1cでは、このシステム4を構成する各車車間通信装置10が、それぞれ移動物体の現在位置を予測し、移動物体の現在地を移動物体情報に含めて送信する。
【0119】
詳細には、図12(b)に示す処理を実施する。図12(b)は、支援制御ECU2が実行する移動物体位置予測処理を示すフローチャートである。移動物体位置予測処理は、例えば、車両の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実行される処理である。
【0120】
この処理では、まず、メモリ内に移動物体情報があるか否かを判定する(S810)。移動物体情報がなければ(S810:NO)、直ちに移動物体位置予測処理を終了する。また、移動物体情報があれば(S810:YES)、メモリ内の移動物体情報(位置、速度、時刻等)に基づいて、移動物体の現在位置を計算する(S820)。そして、計算した位置情報を新たな移動物体情報としてメモリ内に上書きし(S830)、移動物体位置予測処理を終了する。
【0121】
次に、本実施形態の検出情報更新処理では、図11に示す検出情報更新処理に代えて、図13に示す処理を実施する。図13は第4実施形態の検出情報更新処理を示すフローチャートである。
【0122】
本実施形態の検出情報更新処理では、S720の処理とS730の処理との間において 前方に存在する他車両からの移動物体情報を受信したか否かを判定する(S860)。この処理では、前述のS680の処理と同様にして前方に存在する他車両を特定すればよい。
【0123】
前方に存在する他車両からの移動物体情報を受信していれば(S860:YES)、S730の処理に移行する。また、前方に存在する他車両からの移動物体情報を受信していなければ(S860:NO)、検出情報更新処理を終了する。
【0124】
以上のような第4実施形態の車車間通信システム1cにおいて支援制御ECU2は、移動物体の速度も取得し、この速度を含む移動物体情報をメモリに格納し、RAM等のメモリに格納された移動物体情報に基づいて、自身が検出した移動物体の現在の位置を推定する。そして、推定された自身が検出した移動物体の現在の位置を、移動物体情報に含まれる移動物体の位置として、メモリに格納された移動物体情報に上書きする。また、自身が検出した移動物体の現在の位置が、他車両で検出された移動物体の現在の位置から基準範囲内となる場合において、外部から取得した移動物体情報に含まれる検出時刻が、自身が検出した移動物体情報に含まれる検出時刻よりも現在時刻に近い場合に、この移動物体情報を送信することを禁止する。
【0125】
このような車車間通信システム1cによれば、移動物体の最新の位置を移動物体情報として交換することができる。よって、他車両が検出した移動物体の位置を自車両で計算する処理を省くことができる。
【0126】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の車車間通信システム1dについて説明する。第5実施形態の車車間通信システム1dでは、各車車間通信装置10において、検出可能な移動物体情報の種別が異なる場合があることを想定し、このような場合でも、より多くの情報を右折車両等の情報を受ける側の車両に提供できるようにしている。
【0127】
詳細には、本実施形態(第5実施形態)では、図4(a)に示す移動物体検出処理に代えて図14(a)示す移動物体検出処理を実施し、図12(b)に示す移動物体位置予測処理に代えて図14(b)に示す移動物体位置予測処理を実施し、図10(a)等に示す検出情報更新処理に代えて図15に示す検出情報更新処理を実施する。
【0128】
移動物体検出処理では、図14(a)に示すように、S130の処理とS140の処理との間において、S910,S920の処理を実施する。すなわち、後述する検出情報更新処理においてメモリに記録される検出不可能情報が取得できるか否か(つまり、メモリに検出不可能情報が記録されているか否か)を判定する(S910)。
【0129】
そして、検出不可能情報が取得できれば(S910:YES)、検出不可能情報を移動物体情報に含めるよう設定し(S920)、前述のS140の処理に移行する。また、検出不可能情報が取得できなければ(S910:NO)、直ちにS140の処理に移行する。
【0130】
また、移動物体位置予測処理では、S660〜S680の処理(図10(b)参照)に代えて、図14(b)に示すように、後方に存在する他車両からの移動物体情報を受信したか否かを判定する処理を行う(S930)。
【0131】
後方に存在する他車両からの移動物体情報を受信していれば(S930:YES)、前述のS690の処理に移行する。また、後方に存在する他車両からの移動物体情報を受信していなければ(S930:NO)、直ちに移動物体位置予測処理を終了する。
【0132】
また、検出情報更新処理では、図15に示すように、S640の処理の後で、S960〜S990の処理を実施する。詳細には、まず、予測移動物体情報を取得できたか否かを判定する(S960)。
【0133】
予測移動部物体情報を取得できていれば(S960:YES)、予測移動物体情報に対応する移動物体の現在位置が自車両の規定範囲(例えば、ソナーによる検出範囲内およびその周囲の誤差範囲内)であるか否かを判定する(S970)。移動物体の現在位置が自車両の規定範囲内であれば(S970:YES)、この移動物体情報に自車両では検出不可能な情報を含むか否かを判定する(S980)。
【0134】
なお、自車両では検出不可能な情報とは、例えば、ある車車間通信装置10には、車両周囲を撮像することで移動物体の種別や色等を識別する機能を有しているが、他の車車間通信装置10にはこの機能が備えられていないような場合において、移動物体の種別や色等の識別結果(移動物体の特徴を示す特徴情報)が移動物体情報に含めて送信された場合等を示す。
【0135】
受信した移動物体情報に自車両では検出不可能な情報を含む場合には(S980:YES)、この情報を検出不可能情報としてRAM等のメモリに記録し(S990)、検出情報更新処理を終了する。
【0136】
また、予測移動部物体情報を取得できていない場合(S960:NO)、移動物体の現在位置が自車両の規定範囲内でない場合(S970:NO)、受信した移動物体情報に自車両では検出不可能な情報を含まない場合には(S980:NO)、直ちに検出情報更新処理を終了する。
【0137】
以上のような第5実施形態の車車間通信システム1dにおいて支援制御ECU2は、移動物体情報に移動物体の特徴を示す特徴情報を含めて移動物体情報を送受信可能に構成されており、自身が送信しない特徴情報を表す検出不可能情報(非検出特徴情報)を含む移動物体情報を、検出不可能情報が含まれる移動物体情報に基づく移動物体の位置と自身が検出いた移動物体とが予め設定された一致領域範囲内に位置する場合に、検出不可能情報を移動物体情報に含めてメモリに格納する。
【0138】
このような車車間通信システム1dによれば、車車間通信装置10によって検出可能な特徴情報に差異がある場合であっても、より多くの特徴情報を送信することができる。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態の車車間通信システム1eについて説明する。第6実施形態の車車間通信システム1eにおいては、自車両と対向して右折しようとする右折車両の有無に応じて、移動物体情報を送信するか否かを決定する機能を有する。ここで、図16(a)は、支援制御ECU2が実行する右折車両検出判定処理を示すフローチャートである。
【0139】
なお、各車両の車車間通信装置10は、ウインカの作動状態や自車両の走行位置(右折レーン内かどうか)を検出することによって、自身の車両が右折しようとしているかどうかを判断し、自車両が右折しようとしている場合、右折しようとしている旨の情報(右折車両情報)を自車両の情報とともに送信する。そして、各車車間通信装置10では、この情報に基づいて右折車両検出判定処理を実施する。
【0140】
なお、右折車両検出判定処理は、例えば、車両の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実行される処理である。右折車両検出判定処理では、図16(a)に示すように、まず、右折車両情報を取得したか否かを判定する(S1010)。右折車両情報を受信していなければ(S1010:NO)、S1010の処理を繰り返す。
【0141】
また、右折車両情報を受信していれば(S1010:YES)、右折車両情報を送信した右折車両が自車両の前方にあるか否かを判定する(S1020)。右折車両が前方になければ(S1020:NO)、右折車両検出判定処理を終了する。
【0142】
右折車両が前方にあれば(S1020:YES)、右折車両と自車両との距離Lを計算する(S1030)。続いて、距離Lと閾値Aとを比較する(S1040)。この閾値Aは、右折車両に移動物体の情報を提供する必要がある範囲内が含まれる値に設定されている。
【0143】
距離Lが閾値A以下であれば(S1040:YES)、移動物体情報を送信すべき旨を示す判定情報をRAM等のメモリに記録し(S1050)、右折車両検出判定処理を終了する。また、距離Lが閾値Aよりも大きければ(S1040:NO)、直ちに右折車両検出判定処理を終了する。
【0144】
次に、本実施形態の送信判断処理について図16(b)を用いて説明する。図16(b)に示す送信判断処理では、図4に示す送信判断処理のS160の処理とS170の処理との間において、メモリから判定情報を取得できたか否か(メモリに判定情報が記録されているか否か)を判定する(S1070)。
【0145】
判定情報を取得できていれば(S1070:YES)、S170の処理に移行する。また、判定情報を取得できていなければ(S1070:NO)、S190の処理に移行する。
【0146】
以上のような第6実施形態の車車間通信システム1eにおいて支援制御ECU2は、自身から基準距離以内に位置する右折車両の有無を表す右折車両情報を取得し、右折車両情報に基づき右折車両がない場合に、移動物体情報を送信することを禁止する。
【0147】
このような車車間通信システム1eによれば、右折車両が自車両のそばに存在しないときには移動物体情報を送信しないようにすることができる。
[第7実施形態]
次に、第7実施形態の車車間通信システム1fについて説明する。第7実施形態の車車間通信システム1fにおいては、自車両から右折車両までの距離に応じて移動物体情報の送信周期を変更するよう構成されている。
【0148】
詳細には、右折車両検出処理において、S1050の処理(図16(a)参照)に代えて、図17(a)に示す、算出した距離Lを距離情報としてメモリに記録する処理を実施する(S1110)。
【0149】
そして、送信周期設定処理を実施する。図17(b)は、支援制御ECU2が実行する送信周期設定処理を示すフローチャートである。送信周期設定処理は、例えば車両の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実行される。
【0150】
詳細には、図17(b)に示すように、まず、距離情報が取得できるか否かを判定する(S1140)。距離情報が取得できなければ(S1140:NO)、S1140の処理に戻る。
【0151】
また、距離情報が取得できれば(S1140:YES)、距離情報に応じて送信周期Tcを設定する。この処理においては、例えば、右折車両までの距離が短くなるにつれて送信周期を短く設定するとよい。この場合には、右折車両に近い車両から送信される移動物体情報を右折車両が確実に受信できるようにすることができる。
【0152】
また、右折車両までの距離が長くなるにつれて送信周期を短く設定するようにしてもよい。この場合には、右折車両からの距離が大きく、電波の減衰が大きくなるために通信の成功率が低くなる車両から送信される移動物体情報を、右折車両がより確実に受信できるようにすることができる。
【0153】
或いは、予め設定された第1の所定距離までは右折車両までの距離が長くなるにつれて送信周期を長く設定し、第1の所定距離以上の値に設定された第2の所定距離を超えると右折車両までの距離が長くなるにつれて送信周期を短く設定するようにしてもよい。この場合、第1の所定距離と第2の所定距離とは同じ距離であってもよく、異なる値であってもよい。第1の所定距離と第2の所定距離とが異なる値である場合には、第1の所定距離と第2の所定距離との間においては送信周期を任意の値(例えば送信周期を最短とするなど)に設定することができる。
【0154】
この場合には、右折車両と直進車両との事故率が高い場所に位置する車両から送信される移動物体情報を右折車両が確実に受信することができる。また、右折車両までの距離が長くなるにつれて送信周期を短く設定する場合の長所と、右折車両までの距離が長くなるにつれて送信周期を短く設定する場合の長所とを兼ね備えることができる。
【0155】
続いて、この送信周期Tcを含む情報を送信周期情報としてメモリに記録し(S1160)、送信周期設定処理を終了する。
次に、本実施形態の送信判断処理について図18を用いて説明する。本実施形態の送信判断処理では、図4(a)で示した送信判断処理のS160の処理とS170の処理との間において、送信周期情報を取得できるか否かを判定する処理(S1180)を実施する。送信周期情報を取得できれば(S1180:YES)、S170の処理に移行する。送信周期情報を取得できなければ(S1180:NO)、S190の処理に移行する。
【0156】
また、S180の処理とS190の処理との間において、送信周期を更新する処理(S1190)を実施する。支援制御ECU2は、更新された送信周期に従って、移動物体情報を送信することになる。
【0157】
上記のような第7実施形態の車車間通信システム1fにおいて支援制御ECU2は右折車両までの距離を表す距離情報を取得し、距離情報に応じて、移動物体情報を繰り返し送信する際の送信周期を設定する。
【0158】
このような車車間通信システム1fによれば、右折車両への通信の確実性を向上する必要がある位置(右折車両までの距離)において移動物体情報の送信周期を短く設定することで、移動物体情報を右折車両に受信させる確実性を向上させることができ、右折車両への通信の確実性を向上する必要がない位置では移動物体情報の送信周期を長く設定することで通信網の混雑を抑制することができる。
【0159】
また、車車間通信システム1fにおいて支援制御ECU2は、自車両から右折車両までの距離を距離情報として取得する。このような車車間通信システム1fによれば、自車両から右折車両までの距離に応じて送信周期を設定することができる。
【0160】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態の車車間通信システム1gでは、自車両でなく、移動物体から右折車両までの距離に応じて送信周期を設定する。
【0161】
詳細には、移動物体位置予測処理のS830の処理(図12(b)参照)に代えて、図19(a)に示すように、移動物体の現在位置の情報を含む予測移動物体情報をメモリに記録させる処理(S1310)を実施する。
【0162】
そして、右折車両検出判定処理では、図16(a)のS1020の処理とS1040の処理との間において、図19(b)に示すように、S1320、S1330の処理を実施する。詳細には、まず、予測移動物体情報を取得できるか否かを判定する(S1320)。
【0163】
予測移動物体情報を取得できるならば(S1320:YES)、右折車両と自車両との間に存在し、かつ右折車両に最も近い移動物体と右折車両との距離Lを計算する処理を実施する(S1330)。予測移動物体情報を取得できないならば(S1320:NO)、右折車両検出判定処理を終了する。
【0164】
以上のような第8実施形態の車車間通信システム1gにおいて支援制御ECU2は、移動物体から右折車両までの距離を距離情報として取得する。このような車車間通信システム1によれば、移動物体から右折車両までの距離に応じて送信周期を設定することができる。
【0165】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態の車車間通信システム1hについて説明する。第9実施形態の車車間通信システム1hにおいては、移動物体が連続して存在する場合、一部の移動物体についての移動物体情報のみを送信することで、通信帯域を確保する。
【0166】
詳細には、図20に示す送信情報選択処理を実施する。図20は、支援制御ECU2が実行する送信情報選択処理を示すフローチャートである。送信情報選択処理は、車両の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実行される処理である。
【0167】
送信情報選択処理では、図20に示すように、まず、メモリ内に移動物体情報があるか否かを判定する(S1410)。移動物体情報がなければ(S1410:NO)、S1410の処理に戻る。
【0168】
また、移動物体情報があれば(S1410:YES)、メモリ内の全ての移動物体情報に対する送信識別子を外し(S1420)、先頭に位置する移動物体についての移動物体情報に送信識別子を付加する(S1430)。そして、送信識別子が付加された移動物体情報が対応する移動物体の後方に移動物体が存在するか否かを判定する(S1440)。
【0169】
後方に移動物体が存在していれば(S1440:YES)、最後尾の移動物体から後方閾値D内に存在する移動物体のうち、最後尾の移動物体に対応する移動物体情報に対して送信識別子を付加し(S1450)、S1440の処理に戻る。また、後方に移動物体が存在していなければ(S1440:NO)、送信情報選択処理を終了する。
【0170】
また、本実施形態の車車間通信システム1hにおいては、移動物体を検出すると直ちに移動物体情報を送信する。すなわち、本実施形態の移動物体検出処理では、図21に示すように、S130の処理とS140の処理との間において、S1470〜S1490の処理を実施する。
【0171】
詳細には、移動物体を検出すると、メモリ内に移動物体情報があるか否かを判定する(S1470)。移動物体情報があれば(S1470:YES)、メモリ内で記録している移動物体情報と、新たに検出した移動物体に関する情報とを無線機20に送信させる(S1480)。また、移動物体情報がなければ(S1470:NO)、新たに検出した移動物体に関する情報を無線機20に送信させる(S1490)。
【0172】
このような第9実施形態の車車間通信システム1hにおいて支援制御ECU2は、RAM等のメモリに複数の移動物体情報が格納されている場合に、これらの移動物体情報に基づく移動物体の位置を検出し、予め設定された所定範囲内に位置する複数の移動物体について、先頭および最後尾を除く移動物体に関する移動物体情報送信することを禁止する。
【0173】
このような車車間通信システム1hによれば、多くの移動物体が存在する場合においても、移動物体情報の送信量を抑制することができる。
さらに、上記車車間通信システム1hにおいて支援制御ECU2は移動物体情報をRAM等のメモリに格納すると、直ちに移動物体情報を送信させる。このような車車間通信システム1によれば、速やかに移動物体情報を送信することができる。
【0174】
[実施形態における構成と本発明の構成との関係]
実施形態において支援制御ECU2が車両の情報を取得する構成は、本発明でいう車両情報取得手段に相当する。また、実施形態においてS120、S130、S920の処理は、本発明でいう移動物体検出手段に相当し、実施形態においてS160〜S200、S310の処理は、本発明でいう通信手段に相当する。
【0175】
さらに、実施形態においてS320〜S370、S390〜S420の処理は、本発明でいう危険要素判断手段に相当し、実施形態においてS620〜S640の処理は、本発明でいう第1通信禁止手段に相当する。また、実施形態においてS670、S820の処理は、本発明でいう検出物体位置推定手段に相当し、実施形態においてS690の処理は、本発明でいう取得物体位置推定手段に相当する。
【0176】
さらに、実施形態においてS750の処理は、本発明でいう第2通信禁止手段に相当し、実施形態においてS670、S820の処理は、本発明でいう検出物体位置推定手段に相当する。また、実施形態においてS830の処理は、本発明でいう上書き手段に相当し、実施形態においてS750の処理は、本発明でいう第2通信禁止手段に相当する。さらに、実施形態においてS910の処理は、本発明でいう非送信特徴受信手段に相当し、実施形態においてS1050の処理は、本発明でいう右折車両情報取得手段に相当する。
【0177】
また、実施形態においてS1070の処理は、本発明でいう第3通信禁止手段に相当し、実施形態においてS1110の処理は、本発明でいう距離情報取得手段に相当する。また、実施形態においてS1150、S1210〜S1250の処理は、本発明でいう送信周期設定手段に相当し、実施形態においてS1410〜S1450の処理は、本発明でいう第4通信禁止手段に相当する。さらに、実施形態においてS1470〜S1490の処理は、本発明でいう送信制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0178】
1(1a〜1h)…車車間通信システム、2…支援制御ECU、3…ブレーキECU、4…ナビゲーションECU、5…ソナーECU、6…エンジンECU、10…車車間通信装置、20…無線機、21…表示装置、22…スピーカ、31…ステアリングセンサ、32…ヨーレートセンサ、33…ブレーキ、41…GPSアンテナ、51…前方左側ソナー、52…前方右側ソナー、53…後方左側ソナー、54…後方右側ソナー、61…車速センサ、62…噴射制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、互いに通信を行う複数の車車間通信装置を備えて構成された車車間通信システムであって、
前記各車車間通信装置は、
当該車車間通信装置が搭載された自車両の位置情報を含む自車両の情報を取得する車両情報取得手段と、
当該車車間通信装置が搭載された自車両の周囲に存在する移動物体の位置を、該移動物体を検出した時刻を表す検出時刻を含む移動物体情報として検出し、検出した移動物体情報を検出情報記録部に格納する移動物体検出手段と、
前記検出情報記録部に格納された移動物体情報を繰り返し他車両に搭載された車車間通信装置に送信するとともに、前記他車両に搭載された車車間通信装置から送信されてくる同種の情報を繰り返し受信する通信手段と、
少なくとも前記車両情報取得手段により取得された自車両の位置情報と前記通信手段を介して他車両から受信した移動物体情報とに基づいて、前記移動物体が自車両にとっての危険要素であるか否かを判断し、該判断結果を出力する危険要素判断手段と、
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車車間通信システムにおいて、
少なくとも一部の車車間通信装置は、
前記検出時刻から予め設定された制限時間以上の時間が経過した移動物体情報を、前記通信手段が送信することを禁止する第1通信禁止手段、
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車車間通信システムにおいて、
前記移動物体検出手段は、移動物体の速度も取得し、該速度を含む移動物体情報を前記検出情報記録部に格納し、
少なくとも一部の車車間通信装置は、
前記検出情報記録部に格納された移動物体情報に基づいて、自身が検出した移動物体の現在の位置を推定する検出物体位置推定手段と、
前記通信手段を介して外部から取得した移動物体情報に基づいて、他車両で検出された移動物体の現在の位置を推定する取得物体位置推定手段と、
自身が検出した移動物体の現在の位置が、他車両で検出された移動物体の現在の位置から基準範囲内となる場合において、外部から取得した移動物体情報に含まれる検出時刻が自身が検出した移動物体情報に含まれる検出時刻よりも現在時刻に近い場合に、該移動物体情報を前記通信手段が送信することを禁止する第2通信禁止手段と、
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の車車間通信システムにおいて、
前記移動物体検出手段は、移動物体の速度も取得し、該速度を含む移動物体情報を前記検出情報記録部に格納し、
前記各車車間通信装置は、
前記検出情報記録部に格納された移動物体情報に基づいて、自身が検出した移動物体の現在の位置を推定する検出物体位置推定手段と、
前記検出物体位置推定手段によって推定された自身が検出した移動物体の現在の位置を、前記移動物体情報に含まれる移動物体の位置として、前記検出情報記録部に格納された移動物体情報に上書きする上書き手段と、
自身が検出した移動物体の現在の位置が、他車両で検出された移動物体の現在の位置から基準範囲内となる場合において、外部から取得した移動物体情報に含まれる検出時刻が自身が検出した移動物体情報に含まれる検出時刻よりも現在時刻に近い場合に、該移動物体情報を前記通信手段が送信することを禁止する第2通信禁止手段と、
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車車間通信システムにおいて、
前記通信手段は、前記移動物体情報に前記移動物体の特徴を示す特徴情報を含めて前記移動物体情報を送受信可能に構成されており、
少なくとも一部の車車間通信装置は、
自身が前記移動物体情報として検出しない特徴情報を表す非検出特徴情報を含む移動物体情報を、前記通信手段を介して受信する非送信特徴受信手段、を備え、
前記移動物体検出手段は、前記取得情報記録部に格納された移動物体情報が対応する移動物体の位置と前記移動物体検出手段により検出された移動物体とが予め設定された一致領域範囲内に位置する場合に、前記非検出特徴情報を移動物体情報に含めて前記検出情報記録部に格納すること
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車車間通信システムにおいて、
少なくとも一部の車車間通信装置は、
自身から基準距離以内に位置する右折車両の有無を表す右折車両情報を取得する右折車両情報取得手段と、
前記右折車両情報に基づき右折車両がない場合に、前記移動物体情報を前記通信手段が送信することを禁止する第3通信禁止手段と、
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車車間通信システムにおいて、
少なくとも一部の車車間通信装置は、
右折車両までの距離を表す距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に応じて、前記通信手段が移動物体情報を繰り返し送信する際の送信周期を設定する送信周期設定手段と、
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車車間通信システムにおいて、
前記距離情報取得手段は、自車両から右折車両までの距離を距離情報として取得すること
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項9】
請求項7に記載の車車間通信システムにおいて、
前記距離情報取得手段は、移動物体から右折車両までの距離を距離情報として取得すること
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の車車間通信システムにおいて、
前記送信周期設定手段は、前記右折車両までの距離が短くなるにつれて前記送信周期を短く設定すること
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項11】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の車車間通信システムにおいて、
前記送信周期設定手段は、前記右折車両までの距離が長くなるにつれて前記送信周期を短く設定すること
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項12】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の車車間通信システムにおいて、
前記送信周期設定手段は、予め設定された所定距離までは前記右折車両までの距離が長くなるにつれて前記送信周期を長く設定し、前記所定距離を超えると前記右折車両までの距離が長くなるにつれて前記送信周期を短く設定すること
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項13】
請求項1〜請求項12の何れか1項に記載の車車間通信システムにおいて、
少なくとも一部の車車間通信装置は、
前記検出情報記録部に複数の移動物体情報が格納されている場合に、これらの移動物体情報に基づく移動物体の位置を検出し、予め設定された所定範囲内に位置する複数の移動物体について、先頭および最後尾を除く移動物体に関する移動物体情報を、前記通信手段が送信することを禁止する第4通信禁止手段、
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項14】
請求項1〜請求項13の何れか1項に記載の車車間通信システムにおいて、
少なくとも一部の車車間通信装置は、
前記移動物体検出手段が移動物体情報を検出情報記録部に格納すると、直ちに移動物体情報を前記通信手段に送信させる送信制御手段、
を備えたことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項15】
車両に搭載され、他の車両に搭載された同種の装置と通信を行う車車間通信装置であって、
当該車車間通信装置は、請求項1〜請求項14の何れか1項に記載の車車間通信システムを構成する車車間通信装置として構成されていること
を特徴とする車車間通信装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−92932(P2013−92932A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235101(P2011−235101)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】