説明

車載エアコンの動作設定装置

【課題】 エアコンの動作設定が簡単な操作で、確実にできるようにすることである。
【解決手段】 携帯電話機1等のコントローラと動作設定検出装置2とを、無線通信手段で通信可能とし、携帯電話機1に入力された数値データを、動作設定検出装置2を介してエアコンECU3に送って、エアコンの動作(温度、吹出口、風量)を設定する。エアコンの動作は、常に数値データによって設定されるため、エアコンの温度を設定するためにボタンを多数回押したり、長押ししたりすることが不要になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアコンの動作を設定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の車両の場合、エアコンの動作(エアコンの温度、吹出口、風量)を設定する装置は、運転席の前面部に装着されたインストルメントパネルに組み込まれている。そして、エアコンの温度を設定するとき、「UPボタン」又は「DOWNボタン」を所定回数だけ押したり、それらを長押ししたりするものが存している。
【0003】
このため、従来の車両でエアコンの温度を設定する場合、車両の乗員が「UPボタン」又は「DOWNボタン」を所定回数だけ押したり、それらを長押ししたりしなければならない。すると、現在の温度と希望する温度との差が大きい場合、希望する温度に変更するために時間がかかるという問題がある。また、ボタンを長押しする場合、温度表示パネルを注視しなければならないという問題がある。
【0004】
上記の問題を解消するため、エアコン等の操作スイッチを集約したコントローラを備えた車両の技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、操作スイッチが集約されているため、操作が面倒になったり、スイッチの表示が見にくくなったりするという問題がある。
【0005】
そして、近時、車両の外部からリモコンによってエンジンを始動する装置(「エンジンスターター」と称されている。)が存している。このような車両の場合、エンジンを始動させた後、外部からエアコンの動作を設定することにより、その利便性を向上させることができる。
【特許文献1】特開平8−227314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、エアコンの動作設定が簡単な操作で、確実にできるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
車両に搭載されたエアコンの動作を設定するための装置であって、
車両の乗員によって操作されるコントローラと、
前記コントローラに入力されたデータを受け取って、制御手段に送るデータ送受信装置と、を備え、
予め、エアコンの動作に対応する所定の数値が定められており、
前記コントローラによってエアコンの動作が設定されるとき、乗員によって前記所定の数値が前記コントローラに直接的に入力され、その数値データが前記データ送受信装置を介して前記制御手段に送られることにより、エアコンの新たな動作が設定されることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る車載エアコンの動作設定装置は、上記のように構成されていて、予め定められたエアコンの動作に対応する所定の数値をコントローラに直接的に入力することができる。このため、例えばエアコンの動作の一例である温度を設定したい場合、所定のボタンを複数回押したり、長押ししたりすることが不要となり、操作が簡単になる。また、数値を直接的に入力するため、誤った数値が入力されにくくなり、設定の確実性が向上する。
【0009】
設定されるエアコンの動作として、温度以外に、吹出口、風量があげられる。
【0010】
また、コントローラとして、携帯電話機、ディスプレイ、マイクロホンがあげられる。特に、コントローラが携帯電話機で、無線通信手段によってデータ送信が行われる場合、車内からだけでなく、車外からもエアコンの動作を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例について説明する。図1は本発明の各実施例のエアコンの動作設定装置101〜103の全体構成を示すブロック図、図2は車両の乗員が携帯電話機1にエアコンの温度を入力している状態の作用説明図である。
【実施例1】
【0012】
図1に示されるように、本発明の第1実施例のエアコンの動作設定装置101は、携帯電話機1(コントローラ)と、エアコンの動作設定検出装置2(データ送受信装置)と、エアコンECU3(制御手段)と、エアコンの現在の設定状態を表示するエアコン表示パネル4を備えている。この携帯電話機1は、車両の乗員が所有するものである。また、エアコン表示パネル4は、図2に示されるように、例えばカーナビゲーション装置のディスプレイ5とすることができる。
【0013】
動作設定検出装置2は、携帯電話機1から送信された数値データを受信して、その数値データをエアコンECU3に送信するためのものである。携帯電話機1からの数値データを受信したエアコンECU3は、その数値データに基づいてエアコンの装置本体(図示せず)を作動する。エアコンの現在の動作設定状況は、表示パネル4に表示される。なお、エアコンECU3は、エアコンの装置本体と一体に設けられていてもよい。
【0014】
携帯電話機1から動作設定検出装置2へのデータ送信は、例えば赤外線通信等の無線通信手段によって行われる。それ以外に、携帯電話機1の外部端子と動作設定装置2の入力端子をケーブル(図示せず)で連結し、有線通信手段によってデータ送信を行ってもよい。
【0015】
携帯電話機1から数値データを受け取った動作設定装置2は、その数値データをエアコンECU3に送信する。このときの通信手段として、例えばCAN(Controller Area Network),LIN(Local Internet Network)等の多重通信が考えられる。なお、CANは、現在の車載LANの中で事実上の標準となっているプロトコルであり、基幹ネットワークをはじめ、パワートレイン系、ボディ系まで幅広く使用されている。また、LINは、車載LANの通信プロトコルの一形態である。
【0016】
第1実施例の動作設定装置101の作用について説明する。図3に示されるように、予めエアコンの動作を数値に変換しておく。例えば、エアコンの吹出口の場合、図3の(a)に示されるように、エアコンの吹出口が乗員の「上半身」のときの数値を「1」、「上半身と足元」のときの数値を「2」、「足元」のときの数値を「3」、「上半身と足元とガラス」のときの数値を「4」、「ガラス」のときの数値を「5」と設定する。また、エアコンの風量の場合、図3の(b)に示されるように、「OFF(エアコンのファンが停止している状態)」のときの数値を「0」とし、ON状態でのエアコンの風量の強さレベルを数値「1」から「5」まで設定する。
【0017】
車両の乗員が携帯電話機1でエアコンの動作(例えば、エアコンの温度)を設定する場合、次のようにして行う。図2に示されるように、乗員は、携帯電話機1を操作して、動作設定検出装置2と通信可能な状態とする。そして、新たに設定したい温度(例えば、25℃)の場合、携帯電話機1のパネル1aに「2」、「5」と打ち込み、送信ボタン6(例えば、携帯電話機1の通話開始ボタン)を押す。これにより、所定の無線通信手段(例えば、赤外線通信)により、数値データ(「25」)が動作設定装置2を介して、エアコンECU3に送られる。このときの状況を、カーナビゲーション装置のディスプレイ5にアニメーションで表示してもよい。
【0018】
もし、乗員がエアコンの温度だけでなく、風量も同時に調整することを望む場合には次のように操作する。エアコンの設定温度を示す数値「2」及び「5」に続いて、例えば空白(スペース)を打ち込み、設定したい風量の強さレベルの数値(例えば、風量の強さレベルを3にするのであれば「3」)を続けて入力し、送信ボタンを押す。吹出口を同時に調整したい場合も同様である。
【0019】
もし、乗員が誤って通常の設定範囲外の数値を送信した場合、制御可能な温度の上限又は下限で温度を設定するようにしてもよい。そして、乗員に対して、送信された数値データが設定範囲外であることを通知する。この通知方法として、「送信された数値データが設定範囲外である」旨の警告や、連続2回のブザー音のように音声で通知する方法や、ディスプレイ5に警告をフラッシュ表示させる方法が想定される。設定されていない吹出口や風量の強さレベルの数値が入力された場合も同様である。
【0020】
第1実施例のエアコンの動作設定装置101の場合、車両の乗員が携帯電話機1を操作することにより、エアコンの各種の動作を設定することができる。しかも、携帯電話機1にエアコンの動作を示す数値を直接的に入力することができるため、例えばエアコンの設定温度を調整したい場合に、従来のように、「UPボタン」や「DOWNボタン」を多数回押したり、長押ししたりすることは不要である。また、携帯電話機1に入力された数値は、無線通信手段によって動作設定検出装置2に送られるため、車内からだけでなく、車外からエアコンの動作を設定することも可能である。
【0021】
なお、道路交通法の規定により、運転者が運転中に携帯電話機1を操作することは禁止されている。このため、走行中であれば、運転者以外の乗員が携帯電話機1を操作することが望ましい。
【実施例2】
【0022】
次に、第2実施例の動作設定装置102について説明する。図1及び図4に示されるように、第2実施例の動作設定装置102のコントローラは、車両のコンソールボックス7の近辺に取り付けられたマイクロホン8である。このマイクロホン8はケース体9に収容されていて、車両の乗員がマイクロホン8をケース体9から取り上げることにより、エアコンの動作設定をすることが可能になる。例えば、マイクロホン8をケース体9から取り上げることに連動して、カーナビゲーション装置のディスプレイ5にエアコンの温度設定画面が表示される。乗員は、ディスプレイ5に表示されたエアコンの温度設定画面を視認しながら、マイクロホン8に向かって数値を音声入力する。
【0023】
第2実施例の動作設定装置102の場合、乗員が携帯電話機1を所有しない場合であっても、エアコンの動作設定をすることができる。また、車両とマイクロホン8をケーブル11で有線連結することにより、マイクロホン8を紛失しにくくなる。
【0024】
前記マイクロホン8を、車両のインストルメントパネル12に固定してもよい。これにより、運転者がマイクロホン8を手に持って操作しなくても済むため、車両の走行中であっても、運転者がエアコンの動作設定を行うことができるようになる。
【実施例3】
【0025】
次に、第3実施例の動作設定装置103について説明する。図1に示されるように、この実施例のコントローラは、車両に搭載され、オーディオやカーナビゲーション装置の機能を統合したディスプレイパネル13であり、他の機器は第1実施例の場合と同一である。この種のディスプレイパネル13は、例えば「EMV(エレクトロマルチビジョン)」と称されている。図5に示されるように、車両の乗員がエアコンの動作を設定する場合、ディスプレイパネル13の周縁部に設けられたエアコンボタン14を押す。すると、ディスプレイパネル13の画面がエアコンの温度設定画面となり、「ただいまの設定温度」の表示(例えば、28℃)と、タッチパネル式の数字キー15が表示される。エアコンの温度を25℃に設定したい場合、乗員は所定の数字キー15(この場合、「5」のキー)をタッチすることにより、設定したい温度の数値を画面に直接的に入力する。その後、決定キー16をタッチすることにより確定させる。これにより、エアコンの温度が、乗員の希望する温度に設定される。なお、図5において、17は、入力を促すためのカーソルである。
【0026】
決定キー16がタッチされると、図6に示されるように、ディスプレイパネル13の画面がエアコンの吹出口設定画面となり、5種類の吹出口を表示するイラスト18と、それぞれのイラスト18の下方に対応するタッチパネル式の数字キー「1」〜「5」が表示される。このとき、現在の吹出口(例えば、「上半身と足元」)のイラスト18aが、他の吹出口のイラストよりも明るく表示される。これにより、乗員は、現在の吹出口の設定を視認できる。乗員が別の吹出口(例えば、「上半身」)を設定したい場合、所定の数字キー19a(この場合、「1」のキー)をタッチする。そして、設定したい吹出口の数字キー19aの数値(「1」)を画面のカーソル21に表示させ、決定キー22をタッチすることにより確定させる。これにより、エアコンの吹出口が、乗員の希望するものに設定され、図7に示されるエアコンの風量設定画面が表示される。
【0027】
もし、吹出口の設定の必要がなければ、そのまま決定キー22をタッチすることにより、図7に示されるエアコンの風量設定画面が表示される。上記と同様に、乗員は所定の数字キー23をタッチし、決定キー24をタッチすることによって、エアコンの風量を希望のレベルに設定できる。図7に示される場合では、現在のエアコンの風量の強さであるレベル「1」を、レベル「3」に設定している。
【0028】
第3実施例の動作設定装置103の場合、第1実施例の動作設定装置101と同様に、エアコンの動作を数値で直接的に入力できるという利点がある。また、運転者以外の乗員だけでなく、運転者が走行中にエアコンの動作を設定することもできる。しかも、ディスプレイパネル13の周辺部に、多数個のエアコンの操作スイッチを配置させることが不要になるため、インストルメントパネル12における占有面積が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の動作設定装置101〜103の全体構成を示すブロック図である。
【図2】車両の乗員が携帯電話機1にエアコンの温度を入力している状態の作用説明図である。
【図3】エアコンの吹出口及び風量に対応する数値を表示する図である。
【図4】第2実施例の動作設定装置102を示す図である。
【図5】第3実施例の動作設定装置103において、エアコンの温度を設定する状態の作用説明図である。
【図6】同じくエアコンの吹出口を設定する状態の作用説明図である。
【図7】同じくエアコンの風量を設定する状態の作用説明図である。
【符号の説明】
【0030】
101〜103 動作設定装置
1 携帯電話機(コントローラ)
2 動作設定検出装置(データ送受信装置)
3 エアコンECU(制御手段)
4 エアコン表示パネル
5 ディスプレイ(エアコン表示パネル)
8 マイクロホン(コントローラ)
13 ディスプレイパネル(コントローラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエアコンの動作を設定するための装置であって、
車両の乗員によって操作されるコントローラと、
前記コントローラに入力されたデータを受け取って、制御手段に送るデータ送受信装置と、を備え、
予め、エアコンの動作に対応する所定の数値が定められており、
前記コントローラによってエアコンの動作が設定されるとき、乗員によって前記所定の数値が前記コントローラに直接的に入力され、その数値データが前記データ送受信装置を介して前記制御手段に送られることにより、エアコンの新たな動作が設定されることを特徴とする車載エアコンの動作設定装置。
【請求項2】
前記コントローラは携帯電話機であり、該携帯電話機から前記データ送受信装置へのデータ送信は無線通信手段によって行われることを特徴とする請求項1に記載の車載エアコンの動作設定装置。
【請求項3】
前記コントローラは車両に設けられたマイクロホンであり、
車両の乗員が前記エアコンの動作に対応する所定の数値をマイクロホンに音声入力することを特徴とする請求項1に記載の車載エアコンの動作設定装置。
【請求項4】
前記コントローラは車両に搭載されたカーナビゲーション装置のディスプレイであり、該ディスプレイには数字キーが表示され、
車両の乗員が前記エアコンの動作に対応する所定の数値をディスプレイにタッチ入力することを特徴とする請求項1に記載の車載エアコンの動作設定装置。
【請求項5】
前記コントローラによって設定されるエアコンの動作は、エアコンの温度であり、乗員が希望するエアコンの温度がコントローラに直接的に数値入力されることによって、当該エアコンの温度が設定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車載エアコンの動作設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−76482(P2010−76482A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244101(P2008−244101)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】