説明

車載処理装置及び処理プログラム

【課題】複数の処理部が設けられる構成の場合に、各処理部の選択における入力信号数の制限を緩和すると共に、プルアップ制御に係る回路規模の増大を抑制することができる車載処理装置及び処理プログラムを提供する。
【解決手段】車載処理装置1は、電源系統、間欠動作であるか否か、及び、ウェイクアップ対象であるか否かの3つの条件の組み合わせによって入力信号をグループA〜Fに分類し、グループ毎にまとめて主マイコン2又は副マイコン3へ入力する。ただし、ウェイクアップ対象の信号は主マイコン2へ入力し、この信号に応じて主マイコン2が副マイコン3を起動する。また、主マイコン2及び副マイコン3は、通信部23及び33が通信を行うことによって、入力部21及び31へ入力された入力信号に係る情報の共有を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)などの処理部を複数備え、各処理部が入力信号に応じた処理を行う車載処理装置及び処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車輌に搭載されるECU(Electronic Control Unit)などの電子装置(車載処理装置)は、高機能化及び大規模化される傾向にある。これに伴って、車載処理装置に複数のマイコン(処理部)が設けられ、複数のマイコンによって分散して処理が行われる場合がある。車載処理装置は、車輌に搭載されたスイッチ、センサ又は他の装置等(信号出力部)が出力する複数の信号が入力されており、これらの各信号は(少なくとも1つの)マイコンへ入力され、マイコンにて入力信号に応じた処理がなされる。また、車輌処理装置は、車輌のイグニッションスイッチがオフ状態である場合などに、スタンバイモードなどの低消費電力状態へ遷移し、バッテリの電力消費量を低減する機能が備えられている。
【0003】
特許文献1においては、主マイコンが消費電力の少ない待機モード中に起動条件の成立を検知した場合、電源回路から主マイコンへの出力電圧を増大させると共に、通常動作モードへ移行し、その後に副マイコンを動作させるか否かを判断し、電源回路から副マイコンへ電源電圧を供給することによって、副マイコンを起動する構成の車輌用電子制御装置が提案されている。この車輌用電子制御装置は、主マイコンが自らと副マイコンとの電源供給を制御することによって、状況に応じて必要なマイコンだけを作動させることができ、消費電力を効率的に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−166549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車輌の高機能化に伴って、車載処理装置へ入力される入力信号数が増大している。このため、車載処理装置の複数のマイコンにはそれぞれ多数の信号が入力され、信号を入力するためのマイコンのピン数が増大している。特許文献1に記載の車輌用電子制御装置のように、主マイコンが副マイコンを起動する構成の車載処理装置では、副マイコンを起動するか否かの判断に必要な入力信号は主マイコンへ入力されなければならず、入力信号数が主マイコンに偏り、必然的に主マイコンは入力ピン数が多いものを選択する必要が生じる。このように、車載処理装置に複数のマイコンを設ける場合、各マイコンの選択が、そのマイコンでの処理内容又は処理能力等ではなく、入力信号数に応じた入力ピン数によって制限されるという問題がある。
【0006】
また、ユーザが操作するスイッチからの信号を車載処理装置へ入力する構成において、スイッチを電源電圧へプルアップするトランジスタなどの回路が設けられ、スイッチからの入力信号の監視周期などに応じて車載処理装置がプルアップ回路によるプルアップの制御を行う構成とする場合がある。このような場合、複数のマイコンがプルアップの制御を個別に行うためには、車載処理装置に複数の(マイコン毎の)プルアップ回路を搭載する必要があり、回路規模が増大するという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数の処理部が設けられる構成の場合に、各処理部の選択に対する入力信号数の制限を緩和すると共に、プルアップ制御に係る回路規模の増大を抑制することができる車載処理装置、及びこの車載処理装置にて実行される処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車載処理装置は、車載電源から車載負荷へ複数の電力供給系統が設けられた車輌に搭載され、それぞれがいずれかの電力供給系統に接続された複数の信号出力部が出力する信号が信号配線を介して入力され、入力信号をサンプリングして取得した値に応じた処理を行う主処理部及び副処理部を備える車載処理装置であって、前記副処理部は、処理を停止した待機状態となることができるようにしてあり、前記主処理部は、前記待機状態の前記副処理部を起動する手段を有し、前記複数の入力信号のうちの前記副処理部の起動に係る入力信号を伝達する信号配線は、前記主処理部に接続され、前記副処理部の起動に係る入力信号以外の入力信号を伝達する信号配線は、いずれの電力供給系統に接続された信号出力部からの入力信号を伝達する信号配線であるか、及び/又は、間欠的に入力される入力信号を伝達する信号配線であるか否かの条件に分けて、該条件毎に前記主処理部又は前記副処理部のいずれかに接続され、入力信号に係る値を、前記主処理部及び前記副処理部の間で共有する手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る処理プログラムは、上述の車載処理装置にて実行される処理プログラムであって、前記副処理部へ入力される入力信号に係る値に応じた処理を、前記主処理部に行わせる主プログラムと、前記主処理部へ入力される入力信号に係る値に応じた処理を、前記副処理部に行わせる副プログラムとを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明においては、車載処理装置に主処理部及び副処理部を設け、副処理部は低消費電力状態への遷移が可能な構成とし、低消費電力状態へ遷移した副処理部を、主処理部が起動する(通常の動作状態へ遷移させる)構成とする。また主処理部及び副処理部は、相互に通信などを行うことによって、それぞれが入力信号をサンプリングして得られた値を共有する。
車載処理装置へ入力される信号は、副処理部の起動に係る信号であるか否かで分類することができる。また車輌には、+B系、IG系又はACC系のように、車載電源から車載負荷へ複数の電力供給系統が設けられている。よって車載処理装置へ入力される信号は、いずれの電力供給系統に接続された信号出力部が出力したものであるかによって分類することができる。また車載処理装置への信号を出力する信号出力部には、間欠的に動作を行うものと、連続的に動作を行うものとがある。このため、車載処理装置へ入力される信号は、間欠的に入力されるものであるか否かで分類することができる。
このように入力信号は上記の複数の条件(の組み合わせ)で分類することができる。そこで本発明においては、入力信号を伝達する信号配線を上記の条件毎にグループ化して主処理部又は副処理部のいずれかに接続する構成とする。また副処理部の起動に係る信号を伝達する信号配線は、主処理部へ接続する。主処理部及び副処理部は、入力信号に係る値を共有する構成であり、例えば副処理部の処理に必要な入力信号を主処理部へ入力する構成であっても、副処理部はこの入力信号に係る値を取得して処理を行うことが可能である。このため、主処理部及び副処理部として用いられるマイコンなどの入力ピン数に関係なく、入力信号を伝達する信号配線を車載処理装置へ接続することができる。よって主処理部及び副処理部の処理能力又は処理内容等に関係なく、入力信号を伝達する信号配線を条件毎にグループ化して入力することができるため、プルアップ制御など入力信号の条件毎に必要な制御を主処理部又は副処理部のいずれかのみが行えばよいため、制御に必要なプルアップ回路などの回路の規模増大を抑制できる。
【0011】
複数の処理部を備える車載処理装置では、各処理部にてプログラムが実行され、処理が行われる。本発明の車載処理装置にて実行される処理プログラムは、主処理部にて実行される主プログラムと、副処理部にて実行される副プログラムとを含む。車載処理装置では主処理部及び副処理部が入力信号に係る値を共有するため、主プログラム及び副プログラムは共に、主処理部に対する入力信号に係る値と、副処理部に対する入力信号に係る値とを用いた処理を行うことができる。処理プログラムの開発者などは、主処理部及び副処理部にいずれの入力信号が与えられているかに関係なく、処理プログラムを主プログラム及び副プログラムに分けることができるため、処理プログラムの開発を容易化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による場合は、車載処理装置の主処理部及び副処理部が入力信号に係る値を共有する構成とすることによって、主処理部及び副処理部の入力可能信号数(入力ピン数など)に制限されることなく、複数の入力信号を伝達する信号配線を主処理部又は副処理部へ接続することができる。また、入力信号を伝達する信号配線を条件毎にグループ化して主処理部又は副処理部のいずれかに接続する構成とすることによって、入力信号の条件毎に必要なプルアップ回路などの制御回路の規模増大を抑制することができる。よって、車載処理装置の回路規模を増大することなく、主処理部及び副処理部として用いるマイコンなどの選択に対する制限を緩和して、開発者による車載処理装置及び処理プログラムの開発を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車載処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】車載処理装置に対する入力信号のグループ分けを説明するための模式図である。
【図3】車載処理装置によるプルアップ制御を説明するための模式図である。
【図4】主マイコンが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】主マイコンが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】副マイコンが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る車載処理装置の構成を示すブロック図である。図において1は、車輌(図示は省略する)に搭載される車載処理装置である。車載処理装置1は、例えばボディECU(Electronic Control Unit)などであり、車輌に設けられた複数のスイッチ又はセンサ等(信号出力部)からの入力信号に応じて、種々の演算処理及び/又は車輌に搭載された各種負荷の制御処理等を行うものである。
【0015】
車載処理装置1は、演算処理などを行うための主マイコン(主処理部)2及び副マイコン(副処理部)3と、これらのマイコンにて実行される処理プログラムを予め記憶するROM(Read Only Memory)4及びROM5等を備えて構成されている。主マイコン2及び副マイコン3は、それぞれ単体のIC(Integrated Circuit)として実現されるものであり、車載処理装置1の回路基板上に搭載され、回路基板に設けられた配線を介して電気的に接続され、相互に情報の送受信を行うことができる。
【0016】
また主マイコン2は、副マイコン3へウェイクアップ信号を割込信号として出力している。副マイコン3は、入力信号に応じた処理を行う通常動作状態と、処理を停止して消費電力を低減するスリープ状態(待機状態)とを切り替えることができ、通常動作状態において所定の処理が終了した後に一定時間に亘って入力信号に変化がない場合などにスリープ状態へ遷移し、スリープ状態にて主マイコン2からウェイクアップ信号が与えられた場合に起動して通常動作状態へ遷移する。
【0017】
主マイコン2は、ROM4に予め記憶された主プログラム41を読み出して実行することによって、種々の演算処理及び制御処理等を行う。主マイコン2は、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路(図示は省略する)の他に、入力部21、記憶部22及び通信部23等を備えている。入力部21は、車輌に搭載されたスイッチ又はセンサ等からの信号が複数入力されており、例えばこれら複数の入力信号を所定周期でサンプリングし、各入力信号に係る情報を記憶部22に記憶する。記憶部22は、SRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリ素子で構成され、主マイコン2の演算処理の過程で発生した情報、入力部21から与えられた情報、及び、通信部23にて受信した情報等の種々の情報を記憶する。通信部23は、副マイコン3との間で情報の送受信を行うものであり、例えば副マイコン3との通信をシリアル通信により行う。また通信部23は、副マイコン3を起動するウェイクアップ信号を出力しており、例えばウェイクアップ信号をローレベルからハイレベルへ切り替えることによって、副マイコン3が起動される。
【0018】
同様に、副マイコン3は、ROM5に予め記憶された副プログラム51を読み出して実行することによって、種々の演算処理及び制御処理等を行う。副マイコン3は、CPUなどの演算回路の他に、入力部31、記憶部32及び通信部33等を備えている。入力部31は、車輌に搭載されたスイッチ又はセンサ等からの信号が複数入力されており、例えばこれら複数の入力信号を所定周期でサンプリングし、各入力信号に係る情報を記憶部32に記憶する。記憶部32は、SRAM又はDRAM等のメモリ素子で構成され、副マイコン3の演算処理の過程で発生した情報、入力部31から与えられた情報、及び、通信部33にて受信した情報等の種々の情報を記憶する。通信部33は、主マイコン2との間で情報の送受信を行うものであり、例えば主マイコン2との通信をシリアル通信により行う。また通信部33は、主マイコン2からウェイクアップ信号が入力されており、例えばウェイクアップ信号の立ち上がりエッジに応じて副マイコン3を起動する。
【0019】
ROM4及びROM5は、マスクROM、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子で構成され、主マイコン2が実行する主プログラム41及び副マイコン3が実行する副プログラム51が予め記憶されていると共に、これらの処理プログラムの実行に必要な各種の情報が予め記憶されている。なお、図1に示した車載処理装置には、主マイコン2及び副マイコン3に対してそれぞれ個別のROM4及びROM5を設ける構成としたが、これに限るものではなく、主マイコン2及び副マイコン3に共通のROMを設け、このROMに主マイコン2及び副マイコン3を記憶する構成としてもよい。
【0020】
車載処理装置1には車輌中のスイッチ又はセンサ等の信号出力部から出力される複数の信号がそれぞれ信号配線を介して入力されているが、これら複数の入力信号はいくつかのグループに分けられ、グループ毎に主マイコン2又は副マイコン3へ入力される。図2は、車載処理装置1に対する入力信号のグループ分けを説明するための模式図である。車輌にはバッテリ及びオルタネータ等の電源が搭載され、電源から車載処理装置1及び各信号処理部へ電力が供給される。車輌中にはいくつかの電力供給系統が設けられており、例えばバッテリからの電力が直接的に供給される+B系の電力供給系統、及び、バッテリからの電力がイグニッションスイッチ(図3のIGを参照)を介して供給されるIG系の電力供給系統等が含まれる。そこで、車載処理装置1への信号を出力する信号出力部がいずれの電力供給系統にて電力が供給されるものであるかの条件に応じて、入力信号を分類することができる。
【0021】
また、車輌中の信号出力部には、常時的に動作するものと間欠的に動作するものとがある。例えばユーザの操作を受け付けるスイッチは、トランジスタを介して電源に接続され、このトランジスタを車載処理装置1がオンすることによって電源電圧にプルアップされ、プルアップされた状態でユーザの操作が受け付け可能となる。車載処理装置1は、スイッチに接続されたトランジスタを間欠的にオンすることで消費電力の低減を図ることができる。ただし車載処理装置1はトランジスタを常時的にオンしてもよく、常時的な動作を行うか又は間欠的な動作を行うかは、入力信号に対して要求される処理精度などに応じて決定される。このように車載処理装置1への入力信号は、この信号を出力する信号出力部が常時的に動作するものであるか、又は、間欠的に動作するものであるかの条件に応じて分類することができる。
【0022】
また、車載処理装置1への入力信号には、入力信号の変化に対して副マイコン3の処理を必要とするものがあり、この処理を実行するために副マイコン3を起動(ウェイクアップ)する必要がある。このように入力信号は、副マイコン3のウェイクアップ対象の信号であるか否かの条件に応じて分類することができる。なお図2に示す例では、電源系統がIG系の入力信号はウェイクアップ対象でないものとしてある(ただし、電力供給系統IGの入力信号にウェイクアップ対象の信号が含まれる構成であってもよい)。
【0023】
このように、車載処理装置1への入力信号は、電源系統が+B系又はIG系のいずれであるか、動作が間欠又は常時のいずれであるか、及び、ウェイクアップ対象であるか否かの3つの条件で分類され、これによりグループA〜Fの6グループに分類される。これらのうち、ウェイクアップ対象であるグループA及びCの入力信号を伝達する信号配線は、主マイコン2に接続される。その他のグループの入力信号を伝達する信号配線については、主マイコン2及び副マイコン3の入力ピンの空き数などに応じて、いずれに接続するかを適宜に決定すればよい。図1に示す例では、グループBの信号を伝達する信号配線を主マイコン2に接続し、グループD〜Fの信号を伝達する信号配線を副マイコン3に接続してある。
【0024】
図3は、車載処理装置1によるプルアップ制御を説明するための模式図である。車輌には、バッテリ7から直接的に電力が供給される+B系の電力供給系統と、バッテリ7からイグニッションスイッチIGを介して電力が供給されるIG系の電力供給系統とが設けられている。例えばグループA又はBに属する信号を出力するスイッチSW1及びSW2は、一端が抵抗器及びトランジスタT1を介して+B系の電力供給系統に接続され、他端が接地電位に接続されており、トランジスタT1は主マイコン2によってオン/オフの制御が間欠的に行われる。主マイコン2は、トランジスタT1をオフ状態とした場合には、スイッチSW1及びSW2からの信号を受け付けず、トランジスタT1をオン状態とした場合にのみ、スイッチSW1及びSW2からの信号を受け付ける。トランジスタT1がオン状態の場合に、例えばスイッチSW1が開状態であれば主マイコン2にはハイレベルの信号が入力され、スイッチSW1が閉状態であれば主マイコン2にはローレベルの信号が入力される。
【0025】
また例えばグループEに属する信号を出力するスイッチSW3及びSW4は、一端が抵抗器及びトランジスタT2を介してIG系の電力供給系統に接続され、他端が接地電位に接続されており、トランジスタT2は副マイコン3によってオン/オフの制御が間欠的に行われる。副マイコン3は、トランジスタT2をオフ状態とした場合には、スイッチSW3及びSW4からの信号を受け付けず、トランジスタT2をオン状態とした場合にのみ、スイッチSW3及びSW4からの信号を受け付ける。トランジスタT2がオン状態の場合に、例えばスイッチSW3が開状態であれば副マイコン3にはハイレベルの信号が入力され、スイッチSW3が閉状態であれば副マイコン3にはローレベルの信号が入力される。
【0026】
このように、間欠的に動作するスイッチ(信号出力部)からの信号を、電力供給系統毎に分類して主マイコン2又は副マイコン3へ入力することによって、車載処理装置1に搭載するプルアップ制御のためのトランジスタの数を低減できる。
【0027】
車載処理装置1への入力信号を上記の3つの条件の組み合わせによりグループA〜Fに分類し、グループ毎に入力信号を伝達する信号配線を主マイコン2又は副マイコン3に接続する構成とすることによって、上記の3つの条件は必ずしも主マイコン2及び副マイコン3が行う処理の内容に応じたものではないため、主マイコン2の処理に必要な入力信号が副マイコン3へ入力され、副マイコン3の処理に必要な入力信号が主マイコン2へ入力されている場合がある。そこで本実施の形態に係る車載処理装置1は、主マイコン2及び副マイコン3が通信を行うことによって、入力信号に係る情報(値)を送受信し、情報の共有を行う。これにより主マイコン2にて実行される主プログラム41では、主マイコン2への入力信号に係る情報のみでなく、副マイコン3への入力信号に係る情報に基づく処理を行うことができる。同様に、副マイコン3にて実行される副プログラム51では、副マイコン3への入力信号に係る情報のみでなく、主マイコン2への入力信号に係る情報に基づく処理を行うことができる。
【0028】
入力信号に係る情報の共有は、例えば主マイコン2が処理の過程で副マイコン3への入力信号に係る情報が必要であると判断した場合に、この情報の送信要求を副マイコン3へ与え、この送信要求に対する応答として副マイコン3から情報を受信することで実現できる。副マイコン3が主マイコン2への入力信号に係る情報が必要な場合も同様である。
【0029】
また例えば、主マイコン2は周期的に入力信号をサンプリングし、サンプリングした情報を記憶部22へ記憶すると共に、副マイコン3へ送信し、これを受信した副マイコン3が自らの記憶部32へ受信情報を記憶することによって、入力信号に係る情報の共有を実現できる。この場合、副マイコン3は、主マイコン2の入力信号に係る情報が必要な場合には、自らの記憶部32に記憶された情報を読み出して用いることができる。副マイコン3が入力信号をサンプリングした場合も同様に、サンプリングした情報を主マイコン2へ送信する。
【0030】
図4及び図5は、主マイコン2が行う処理の手順を示すフローチャートであり、主プログラム41の実行によって行われる処理である。主マイコン2は、所定周期で入力信号のサンプリングを行っており、このサンプリングを行うタイミングに至ったか否かを判定し(ステップS1)、サンプリングタイミングに至っていない場合には(S1:NO)、サンプリングタイミングに至るまで待機する。サンプリングタイミングに至った場合(S1:YES)、主マイコン2は、入力部21にて入力信号のサンプリングを行い(ステップS2)、サンプリングした入力信号に係る情報を記憶部22へ記憶する(ステップS3)。
【0031】
次いで主マイコン2は、サンプリングした情報に基づいて、副マイコン3の起動が必要であるか否かを判定し(ステップS4)、起動が必要であると判定した場合には(S4:YES)、副マイコン3へウェイクアップ信号を出力し(ステップS5)、ステップS6へ処理を進める。また、副マイコン3の起動が必要でないと判定した場合には(S4:NO)、主マイコン2は、ウェイクアップ信号の出力を行うことなく、ステップS6へ処理を進める。
【0032】
その後、主マイコン2は、主プログラム41に従って、車載処理装置1への入力信号に基づく処理を開始する(ステップS6)。この処理の中で、主マイコン2は、副マイコン3の情報が必要であるか否かを判定する(ステップS7)。副マイコン3の情報が必要であると判定した場合(S7:YES)、主マイコン2は、副マイコン3が通常動作状態であるか又はスリープ状態であるかに応じて、副マイコン3の起動が必要であるか否かを更に判定する(ステップS8)。主マイコン2は、副マイコン3の起動が必要であると判定した場合には(S8:YES)、副マイコン3へウェイクアップ信号を出力した後(ステップS9)、また、副マイコン3の起動が必要でないと判定した場合には(S8:NO)、ウェイクアップ信号を出力することなく、副マイコン3への所望の情報の送信要求を与える(ステップS10)。
【0033】
その後、主マイコン2は、副マイコン3から所望の情報を受信したか否かを判定し(ステップS11)、情報を受信していない場合(S11:NO)、情報を受信するまで待機する。所望の情報を受信した場合(S11:YES)、主マイコン2は、受信した情報を記憶部22に記憶し(ステップS12)、入力信号に基づく処理を継続して行う。その後、主マイコン2は、その周期における処理を終了したか否かを判定し(ステップS13)、処理を終了していない場合には(S13:NO)、ステップS7へ処理を戻し、入力信号に基づく処理を継続して行う。その周期における処理を終了した場合(S13:YES)、主マイコン2は、ステップS1へ処理を戻し、次の周期に至るまで待機する。
【0034】
図6は、副マイコン3が行う処理の手順を示すフローチャートであり、副プログラム51の実行によって行われる処理である。副マイコン3は、主マイコン2からのウェイクアップ信号が与えられることによって起動する(ステップS21)。その後、副マイコン3は、入力信号のサンプリングを行うタイミングに至ったか否かを判定し(ステップS22)、サンプリングタイミングに至っていない場合には(S22:NO)、サンプリングタイミングに至るまで待機する。サンプリングタイミングに至った場合(S22:YES)、副マイコン3は、入力部31にて入力信号のサンプリングを行い(ステップS23)、サンプリングした入力信号に係る情報を記憶部32へ記憶する(ステップS24)。
【0035】
次いで、副マイコン3は、副プログラム51に従って、車載処理装置1への入力信号に基づく処理を開始する(ステップS25)。この処理の中で、副マイコン3は、主マイコン2の情報が必要であるか否かを判定する(ステップS26)。主マイコン2の情報が必要でないと判定した場合(S26:NO)、副マイコン3は、ステップS30へ処理を進める。また主マイコン2の情報が必要であると判定した場合(S26:YES)、副マイコン3は、主マイコン2への所望の情報の送信要求を与える(ステップS27)。その後、副マイコン3は、主マイコン2から所望の情報を受信したか否かを判定し(ステップS28)、情報を受信していない場合(S28:NO)、情報を受信するまで待機する。所望の情報を受信した場合(S28:YES)、副マイコン3は、受信した情報を記憶部32に記憶し(ステップS29)、入力信号に基づく処理を継続して行う。
【0036】
その後、副マイコン3は、その周期における処理を終了したか否かを判定し(ステップS30)、処理を終了していない場合には(S30:NO)、ステップS26へ処理を戻し、入力信号に基づく処理を継続して行う。その周期における処理を終了した場合(S30:YES)、副マイコン3は、スリープ状態への遷移を行うか否かを判定する(ステップS31)。スリープ状態への遷移を行わないと判定した場合(S31:NO)、副マイコン3は、ステップS22へ処理を戻し、次の周期に至るまで待機する。スリープ状態への遷移を行うと判定した場合(S31:YES)、副マイコン3は、スリープ状態へ遷移し(ステップS32)、処理を終了する。
【0037】
以上の構成の車載処理装置1は、電源系統、間欠動作であるか否か、及び、ウェイクアップ対象であるか否かの3つの条件の組み合わせによって入力信号をグループA〜Fに分類し、グループ毎に入力信号を伝達する信号配線をまとめて主マイコン2又は副マイコン3に接続すると共に、主マイコン2及び副マイコン3が入力信号に係る情報を共有する構成である。この構成によって、主マイコン2及び副マイコン3の処理能力及び処理内容等に関係なく複数の信号を入力することができるため、主マイコン2及び副マイコン3を入力ピン数などに制限されることなく選択することができ、また車載処理装置1が行う処理を主プログラム41及び副プログラム51に容易に分けることができるため、車載処理装置1の開発を容易化することができる。また、プルアップ制御を行うためのトランジスタの搭載数を低減できるなど、車載処理装置1の回路規模の増大を抑制できる。
【0038】
なお、本実施の形態においては、車載処理装置1が副マイコン3を1つ備える構成としたが、これに限るものではなく、2つ以上の副マイコン3を備える構成としてもよい。また図1において、グループA〜Cの信号を主マイコン2へ入力し、グループD〜Fの信号を副マイコン3へ入力する構成としたが、グループB、D〜Fの信号については、主マイコン2又は副マイコン3のいずれに入力する構成であってもよい。また、主マイコン2の通信部23及び副マイコン3の通信部33が通信を行うことで入力信号に係る情報の共有を行う構成としたが、これに限るものではなく、例えば主マイコン2及び副マイコン3が共にアクセス可能な共有メモリを設け、この共有メモリに入力信号に係る情報を記憶するなど、その他の方法で情報の共有を行う構成であってもよい。また車載処理装置1への信号を出力する信号出力部は、スイッチSW1〜SW4に限らず、センサなどのその他の装置であってよい。
【符号の説明】
【0039】
1 車載処理装置
2 主マイコン(主処理部、起動する手段)
3 副マイコン(副処理部)
4、5 ROM
7 バッテリ
21 入力部
22 記憶部
23 通信部(共有する手段)
31 入力部
32 記憶部
33 通信部(共有する手段)
41 主プログラム
51 副プログラム
IG イグニッションスイッチ
SW1〜SW4 スイッチ(信号出力部)
T1、T2 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載電源から車載負荷へ複数の電力供給系統が設けられた車輌に搭載され、それぞれがいずれかの電力供給系統に接続された複数の信号出力部が出力する信号が信号配線を介して入力され、入力信号をサンプリングして取得した値に応じた処理を行う主処理部及び副処理部を備える車載処理装置であって、
前記副処理部は、処理を停止した待機状態となることができるようにしてあり、
前記主処理部は、前記待機状態の前記副処理部を起動する手段を有し、
前記複数の入力信号のうちの前記副処理部の起動に係る入力信号を伝達する信号配線は、前記主処理部に接続され、
前記副処理部の起動に係る入力信号以外の入力信号を伝達する信号配線は、いずれの電力供給系統に接続された信号出力部からの入力信号を伝達する信号配線であるか、及び/又は、間欠的に入力される入力信号を伝達する信号配線であるか否かの条件に分けて、該条件毎に前記主処理部又は前記副処理部のいずれかに接続され、
入力信号に係る値を、前記主処理部及び前記副処理部の間で共有する手段を備えること
を特徴とする車載処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載処理装置にて実行される処理プログラムであって、
前記副処理部へ入力される入力信号に係る値に応じた処理を、前記主処理部に行わせる主プログラムと、
前記主処理部へ入力される入力信号に係る値に応じた処理を、前記副処理部に行わせる副プログラムと
を含むこと
を特徴とする処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−6482(P2013−6482A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139656(P2011−139656)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)