説明

車載装置の制御システム

【課題】車両が置かれた状況において、より適切な車載装置によるサービスの提案を行なうことが可能な車載装置の制御システムを提供すること。
【解決手段】 車両が置かれた状況を検出して、制御の対象となる車載装置を推定するとともに、乗員の言動を検出して、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定する。車両の乗員の言動を検出することにより、車両に搭載されたセンサなどでは取得できない情報や、制御を実行すべき条件を完全には満たしていなくとも、その制御が必要な状況が生じていることを、乗員の言動から検知することができる。そして、この乗員の言動に基づいて、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定することで、車両が置かれた状況において、より適切な車載装置によるサービスを車両の乗員に対して提案することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が置かれた状況に応じて、複数の車載装置を制御する車載装置の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載装置の制御システムとして、特許文献1に記載のシステムが知られている。このシステムは、例えば、ナビゲーションシステムからトンネル情報を得た場合に、ライトを点灯し、窓及びサンルーフを閉め、エアコンを内気に切り替え、オーディオをラジオ交通情報に切り替える。さらに、ワイパー使用時には、ワイパーを停止又は間欠動作に切り替え、トンネル通過後に、それぞれの車載装置を元の状態に復帰させる。
【0003】
また、他の例として、ナビゲーション装置から料金所情報を得た場合に、運転席側の窓を開け、他の窓及びサンルーフを閉め、オーディオの音量を下げるように制御したり、ナビゲーション装置からガソリンスタンド情報を得てガソリンスタンドで停止した場合、運転席の窓を開け、給油口を開け、トリップメータをリセットするなどの制御を行なったりする。
【0004】
そして、特許文献1に記載のシステムでは、上述した制御内容をドライバに報知し、ドライバから制御を許可する旨の回答を得た場合に、制御を実行するようにして、ドライバの意思を反映した制御ができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−127869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した制御システムでは、ナビゲーションシステムなどの検出手段によって制御を行なうためのトリガ情報を検出し、検出されたトリガ情報に基づいて、制御部が制御内容を確定する。
【0007】
しかしながら、例えば、ガソリンスタンドには、店員による給油等のサービスを受けるフルサービスの店舗と、車両の乗員が自ら給油等を行なうセルフサービスの店舗がある。このような、フルサービスとセルフサービスの区別は、車両に搭載された検出手段では検出できない。このため、車両の乗員がセルフサービスのガソリンスタンドを利用するにもかかわらず、運転席側の窓を開けるといった不要な制御の提案を行なってしまい、却って車両の乗員に煩わしさを与えてしまう可能性がある。
【0008】
また、車室内の湿度と、車両内外の温度差に基づいて、車両のウインドシールドに曇りが発生したと判断した場合に、車両に装備されたエアコンのデフロスターを作動させる制御を行なおうとした場合、各種センサによって検出される検出値からは、完全にウインドシールドに曇りが発生する状況とはみなされなくとも、実際には、種々の外乱要因により、曇りが発生することがありえる。このような場合、車両の検出手段によって制御を行なうためのトリガ情報が検出されないので、デフロスターが制御されず、車両の乗員は、ウインドシールドの曇り取りというサービスを受けることができない。
【0009】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、車両が置かれた状況において、より適切な車載装置によるサービスの提案を行なうことが可能な車載装置の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車載装置の制御システムは、
車両に搭載された複数の車載装置と、
車両が置かれた状況に関する情報を取得する取得手段と、
車両の乗員の言動を検出する検出手段と、
車両が置かれた状況から、制御の対象となる車載装置を推定するとともに、乗員の言動を考慮して、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定する決定手段と、
決定手段が制御すべきと決定した車載装置及び制御内容を車両の乗員に報知する報知手段と、
報知手段による報知に対し、制御を許可する旨の乗員の応答が得られたとき、決定手段による決定に従って、車載装置を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上述したように、請求項1では、車両の乗員の言動を検出する検出手段を有する。従って、車両に搭載されたセンサなどの検出手段では取得できない情報や、制御を実行すべき条件を完全には満たしていなくとも、その制御が必要な状況が生じていることを、乗員の言動から検知することができる。そして、この乗員の言動を考慮して、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定することで、車両が置かれた状況において、より適切な車載装置によるサービスを車両の乗員に対して提案することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載したように、車両が置かれた状況において、制御手段によって制御された車載装置及び制御内容の制御履歴を記憶する記憶手段を備え、決定手段は、車両が置かれている状況と同様の状況において、制御された車載装置及び制御内容の制御履歴が記憶手段に記憶されている場合、その制御履歴も考慮して、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定することが好ましい。車両の乗員は、車両が置かれた状況が同様であれば、過去に車載装置により実施されたサービスと同様のサービスを受けることを希望する傾向があるためである。
【0013】
請求項3に記載したように、決定手段は、車両が置かれた状況から、制御の対象となる車載装置を推定したとき、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定するために必要となる情報を車両の乗員に問い合わせ、その問い合わせに対する回答が乗員の言動から得られた場合に、その乗員の言動に基づいて制御すべき車載装置及びその制御内容を決定しても良い。
【0014】
例えば、車両がガソリンスタンドにて給油することを検出すると、そのガソリンスタンドがフルサービスの店舗かセルフサービスの店舗かを乗員に問い合わせることにより、乗員から車載のセンサ等では検知できない情報を得ることができる。そして、ガソリンスタンドにおいて、フルサービスかセルフサービスかの違いに応じて、制御すべき車載装置およびその制御内容を変更することにより、より適切な車載装置によるサービスを提供することが可能となる。
【0015】
また、例えば、車両が定速走行装置(先行車両追従型定速走行装置を含む)を備えている場合、車両が高速道路の走行を開始したことをナビゲーションシステムにより検出したとき、その定速走行装置を制御の対象となる車載装置と推定することができる。そして、車両の乗員に、車両を定速走行させる希望速度を問い合わせ、回答が得られた場合に、その希望速度で車両を定速走行させる。このように、車両を定速で走行させる際の、乗員が希望する速度を乗員の言動から取得することにより、定速走行装置を用いてより適切な制御を行なうことができる。
【0016】
請求項4に記載したように、車両が置かれた状況において、制御手段によって制御された車載装置及び制御内容の制御履歴を記憶する記憶手段を備え、決定手段は、車両が置かれている状況と同一の状況において、制御された車載装置及び制御内容の制御履歴が記憶手段に記憶されている場合、車両の乗員に問い合わせを行うことなく、その制御履歴に基づいて、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定するようにしても良い。
【0017】
例えば、あるガソリンスタンドに対して制御履歴が記憶されている場合、既に車両の乗員から、そのガソリンスタンドがフルサービスの店舗であるか、セルフサービスの店舗であるかの情報を取得しており、記憶手段には、その取得した情報に応じて制御された車載装置及び制御内容が記憶されている。また、例えば、車両が過去に走行したことがある高速道路の走行を開始したとき、過去に同じ高速道路を走行した際の制御履歴が記憶されている場合、車両を定速走行させる際の乗員の希望車速がその制御履歴から判明する。従って、このような場合には、車両の乗員に問い合わせを行なわなくても、記憶手段に記憶された制御履歴から、車載装置を制御する上で必要となる情報を取得することができる。
【0018】
請求項5に記載したように、車両が置かれた状況に関する情報は、当該車両の車内の環境に関する環境情報を含み、決定手段は、当該環境情報が、車内の環境を制御する車載装置を制御する必要があることを示す第1の条件を満たすか、あるいは当該車載装置を制御する必要がないことを示す第2の条件を満たすかを判定し、第1及び第2の条件をともに満たさない場合、車内の環境を制御する車載装置を制御の対象となる車載装置として推定するとともに、車内環境の制御を希望する旨の乗員の言動が検出されたとき、当該乗員の言動に基づいて、車内の環境を制御する車載装置を制御すべき車載装置とし、その制御内容を決定するようにしても良い。
【0019】
例えば、車室内の湿度と、車両内外の温度差に基づいて、車両のウインドシールドに曇りが発生するか否かを判断する場合、曇りが発生して、エアコンのデフロスターによる制御が必要と判定するための第1の条件と、曇りは発生せず、デフロスターによる制御は不要と判定する第2の条件とが設定される。そして、車室内の湿度及び車両内外の温度差が第1及び第2の条件をともに満たさない場合であっても、種々の外乱要因によっては曇りが発生する可能性があるため、デフロスターを制御の対象となる車載装置として推定する。そして、このような状況において、例えば車両の乗員が「窓が曇った」とか「曇って見えにくい」と発話したことが検出された場合や窓を拭く乗員の動作が検出された場合に、窓の曇りを取るようにデフロスターを制御する。このように、完全にウインドシールドに曇りが発生する第1の条件を満たさなくとも、窓の曇り取りを希望する乗員の言動を検出したときには、デフロスターを制御すべき車載装置として決定することにより、車内環境を制御する車載装置の制御をより適切に行なうことができる。
【0020】
請求項6に記載したように、決定手段は、環境情報が第1の条件を満たす場合には、乗員の言動に係らず、車内の環境を制御する車載装置を制御すべき車載装置として、その制御内容を決定し、第2の条件を満たす場合には、乗員の言動に係らず、車内の環境を制御する車載装置を制御すべき車載装置から除外することが好ましい。
【0021】
上述した例では、車室内の湿度と車両内外の温度差が第1の条件を満たす場合、窓に曇りが発生する可能性が非常に高まるので、デフロスターを制御することが好ましいためである。一方、第2の条件を満たす場合には、窓に曇りが発生する可能性は非常に低い。このため、デフロスターを制御すべき車載装置から除外することにより、乗員の発話内容等を誤認識して、不要な制御の提案がなされることを防止するためである。
【0022】
請求項7に記載したように、車両の車内環境において、制御手段によって制御された車載装置及び制御内容の制御履歴を記憶する記憶手段を備え、決定手段は、制御履歴に基づいて、第1の条件を、制御が行なわれたときの車内環境に対応するように更新しても良い。これにより、乗員の感覚や使用状況に適するように、制御が実行される第1の条件を更新することができる。
【0023】
請求項8に記載したように、車両が置かれた状況に関する情報は、車両の乗員が車載装置に対して操作を行なったときの操作情報を含み、決定手段は、車両の乗員が操作を行なっている車載装置の操作ガイダンスを行なう車載装置を制御の対象となる車載装置として推定するとともに、操作がうまくできないことを示す乗員の言動が検出されたとき、当該乗員の言動に基づいて、操作ガイダンスを行なう車載装置を制御すべき車載装置とし、その制御内容を決定するようにしても良い。
【0024】
最近の車両は、各種の車載装置がエレクトロニクス化され、その操作手順も複雑化している。例えば、プッシュ式のエンジンスタートボタンを採用する車両では、エンジンを始動させる場合、ブレーキペダルを踏みながらエンジンスタートボタンを押下する必要がある。従って、車両の乗員がエンジンスタートボタンのみを操作しているときに、乗員の「エンジンがかからない」旨の発話を検出した場合、乗員はエンジンを始動させるための操作手順を知らない可能性が高いので、エンジン始動のための操作ガイダンスを提示する。このようにすることにより、車両の乗員は、各種の車載装置の操作を支障なく行なうことができるようになる。
【0025】
請求項9に記載したように、車両が置かれた状況に関する情報は、複数の車載装置から得られるダイアグ情報を含み、決定手段は、車載装置からダイアグ情報が得られた場合、コールセンターへ通話を行なう車載装置を制御の対象となる車載装置として推定するとともに、故障であることを示す乗員の言動が検出されたとき、当該乗員の言動に基づいて、コールセンターへ通話を行なう車載装置を制御すべき車載装置として決定するようにしても良い。これにより、車両のいずれかの車載装置が故障した場合であっても、コールセンターのオペレータの援助で適切な処置を行なうことが期待できる。
【0026】
請求項10に記載したように、コールセンターへ通話を行なう車載装置は、当該コールセンターへデータ通信を行なうことが可能なものであって、ダイアグ情報を含む車両情報をコールセンターへ送信することが好ましい。これにより、オペレータは、車両の故障状況をより正確に認識することができる。
【0027】
さらに請求項11に記載したように、車両のナンバー、車両のユーザとして登録されている登録者の氏名、車両の現在位置及び走行経路の少なくともいずれかを含む個人情報の送信の可否を前記車両の乗員に問い合わせ、送信を許可する旨の応答が乗員から得られた場合に、個人情報を含む車両情報をコールセンターに送信することが好ましい。これらの個人情報は、例えば車両が自走不可能である場合に、オペレータが業者にレッカー移動を依頼する場合などに役立つ。しかしながら、個人情報であるため、その送信は、乗員の許可を得た上で行うことが望ましい。
【0028】
請求項12に記載したように、報知手段が、制御すべきと決定した車載装置及び制御内容を車両の乗員に報知したとき、当該車両の乗員から、制御すべき車載装置及び制御内容の追加又は削除が指示された場合、制御手段は、車両の乗員による追加又は削除指示に応じて、制御すべき車載装置及び制御内容を追加又は削除するように修正し、その修正後の車載装置及び制御内容に従って、当該車載装置を制御することが好ましい。これにより、車両の乗員は、報知された実行予定の車載機器及び制御内容をベースとして、自らの嗜好に合致するように、実行予定の車載機器及び制御内容を修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態による車載装置の制御システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】車載装置の制御システムによる第1の制御例としての、ガソリンスタンドにおける給油準備制御のシーケンス図である。
【図3】ガソリンスタンドにおける給油準備制御のフローチャートである。
【図4】図3における、制御内容決定・報知ステップの詳細な処理を示すフローチャートである。
【図5】学習データの一例を説明するための説明図である。
【図6】車載装置の制御システムによる第2の制御例としての、車両の窓が曇ったときの曇り取り制御のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態による車載装置の制御システムを、図面に基づいて説明する。図1は、実施形態による車載装置の制御システムの全体構成を示す構成図である。
【0031】
図1において、マイク1は、車両の乗員の発話音声を入力して、その音声データを電気信号として出力する。マイク1から出力された音声データは、制御装置10の音声認識部11に入力される。音声認識部11は、図示しない認識用辞書を有し、当該認識用辞書を参照して、音声データに含まれる個々の語句を認識する。認識結果は、推定部13に入力される。
【0032】
本実施形態では、制御装置10が、車内LANを介して、ボデー系ECU5、走行系ECU6、及びナビECU7と相互に通信が可能なように接続されている。すなわち、制御装置10と各ECU5〜7とは、車内LANを介して相互に接続されている。そして、各ECU5〜7が、定期的に、車両の置かれた状況に関する情報を制御装置10に対して送信する。
【0033】
ボデー系ECU5には、燃料タンクの燃料の残量を検出する燃料残量センサ、車室内の湿度を検出する湿度センサ、車内及び車外の温度を検出する車内及び車外温度センサ、日射量を検出する日射センサなどの各種センサが接続されている。ボデー系ECU5は、これらのセンサによって検出された検出結果を、車両が置かれた状況に関する情報として、制御装置10に定期的に送信する。
【0034】
走行系ECU6には、車両の走行速度を検出する車速センサが接続されている。走行系ECU6は、車速センサによる検出結果を、定期的に制御装置10に送信する。また、ナビECU7は、GPS受信機や、車速センサ及びヨーレートセンサを用いて算出された自車位置、さらに、車両が走行している道路や近隣施設を、制御装置10に定期的に送信する。
【0035】
制御装置10の車両情報入力部12は、上述した各ECU5〜7から送信された情報を入力し、推定部13に出力する。
【0036】
推定部13は、車両情報入力部12から入力された車両が置かれた状況に関する情報に基づいて、制御の対象となる車載装置を推定するとともに、音声認識部11から入力された音声データの認識結果、及び記憶されている学習データ14に基づいて、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定する。なお、学習データ14とは、車載装置により制御が行なわれた場合に、車両が置かれた状況を示すシーンごとに、制御された車載装置及びその制御内容の制御履歴を記憶したものである。
【0037】
本実施形態では、車両の乗員によって発話された音声の認識結果に基づいて、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定している。従って、車両に搭載されたセンサなどでは取得できない情報や、制御を実行すべき条件を完全には満たしていなくとも、その制御が必要な状況が生じていることを、乗員の発話音声から検知することができる。従って、乗員の音声に基づいて、制御すべき車載装置及びその制御内容をより適切に決定することができる。
【0038】
また、本実施形態では、学習データ14に基づいて、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定する場合もある。車両の乗員は、車両が置かれた状況が同様であれば、過去に車載装置により実施されたサービスと同様のサービスを受けることを希望する傾向がある。従って、この学習データ14に基づくことによっても、制御すべき車載装置及びその制御内容をより適切に決定することができる。
【0039】
推定部13による決定結果は、システム制御部15に与えられる。システム制御部15は、推定部13によって決定された制御すべき車載装置及びその制御内容を、車両の乗員に報知するよう音声・表示制御部16に指示する。この指示に基づいて、音声・表示制御部16は、スピーカ3から、制御の制御内容を示す音声を出力する。さらに、ディスプレイ4には、制御すべき車載装置及びその制御内容を詳細にリスト表示する。これにより、車両の乗員は、ディスプレイ4の表示画面において、制御を許可するあるいは許可しない車載装置を選択することが可能となる。例えば、ディスプレイ4にタッチパネルを設けておき、画面にタッチすることにより制御を許可するあるいは許可しない車載装置を指定できるようにしたり、または、ディスプレイ4に表示されるカーソルによって制御を許可するあるいは許可しない車載装置を指定できるようにすることが可能である。制御を許可しない車載機器は、制御すべき車載装置のグループから削除される。また、車両の乗員が、ディスプレイ4に表示されていない車載装置及び制御内容を音声にて指示した場合、その指示された車載装置及び制御内容を、制御すべき車載装置及び制御内容に追加するようにしても良い。
【0040】
そして、乗員によって報知された制御が許可(サービスの受理)されたとき、システム制御部15は、駆動制御部17に駆動指示を出力して、乗員により許可された制御を実行させる。乗員による制御の許可/不許可の応答は、少なくとも許可スイッチを備えた応答スイッチ2を操作することによって行なうことも可能であるし、マイク1に対して許可あるいは不許可を示す音声を発話することによっても可能である。
【0041】
駆動制御部17は、乗員により許可された制御を実行すべく、各ECU5〜7に制御指示信号を出力する。例えば、ボデー系ECU5は、制御指示信号に基づいて、給油口を開閉する給油口アクチュエータ、運転席の窓を開閉するパワーウインドウ(P/W)アクチュエータ、トリップメータをリセットするトリップスイッチ、運転席のドアのロック、アンロックを行なうドアロックアクチュエータなどのアクチュエータを駆動制御する。これにより、車両が置かれる各種の状況において、車載装置を制御することによるサービスを実施し、乗員による車載装置の操作負荷を低減することが可能となる。
【0042】
また、走行系ECU6は、スロットルバルブの開度を制御するスロットルアクチュエータを駆動制御することにより、車両を一定の速度で走行させる定速走行制御を行なうことが可能である。この走行系ECU6が、先行車両との車間距離を検出するレーダセンサを備えて、先行車両が存在する場合には、その先行車両に追従走行し、先行車両が存在しない場合には、設定速度で車両を走行させる、いわゆる先行車両追従型定速走行制御を行なうものであっても良い。このように、本実施形態では、車両が定速走行装置を備え、走行系ECU6が、定速走行装置の一部を構成している。従って、走行系ECU6は、制御指示信号に基づき、車両を自動的に定速走行制御することができる。
【0043】
ナビECU7は、外部との通話やデータ通信を行なう通信装置と接続されており、ナビECU7を介して、その通信装置に対して通話を行なったり、データ通信を行なうように指示することが可能である。このため、ナビECU7に対して制御指示信号を出力することにより、自動的に外部との通話やデータ通信を開始することが可能である。これにより、例えば、車両に故障などが生じた緊急時に、ヘルプデスクなどのコールセンターに通話を行なうことが可能となり、コールセンターのオペレータの援助で適切な処置を行なうことが期待できる。
【0044】
駆動制御部17からの制御指示信号を受信すると、各ECU5〜7は、受信した制御指示信号に従い、上述したアクチュエータやスイッチを含む各種の車載装置を制御する。これにより、乗員により許可された制御が実行される。
【0045】
なお、システム制御部15は、駆動制御部17から制御指示信号が出力されると、制御が実行された旨を示す信号を推定部13に送信する。すると、推定部13は、車両が置かれた状況を示すシーンごとに、制御が実行された車載装置及びその制御内容を学習データ14として記憶させる。
【0046】
(第1の制御例)
次に、車載装置の制御システムによる、具体的な制御例について説明する。まず、図2〜図4に基づいて、第1の制御例として、車両がガソリンスタンドで給油する際に実行される、給油準備のための制御について説明する。なお、図2はガソリンスタンドにおける給油準備制御のシーケンス図であり、図3は給油準備制御のフローチャートである。また、図4は、図3における、制御内容決定・報知ステップの詳細な処理を示すフローチャートである。
【0047】
まず、図3のステップS110に示すように、各ECU5,6,7から送信される、車両が置かれた状況に関する情報(車両情報)が取得される。この情報は、図2に示すように、制御装置10の車両情報入力部12において受信され、推定部13に与えられる。すると、推定部13は、与えたれた車両情報に基づいて、車両が置かれた状況、すなわちシーンを推定する。
【0048】
図3のフローチャートに示す例では、ステップS120において、ナビECU7から送信された、車両の自車位置や近隣施設の情報に基づいて、車両がガソリンスタンドに接近しているか、ガソリンスタンドとの距離によって判断する。このとき、ガソリンスタンドに接近していると判定されると、ステップS130に進み、ガソリンスタンドにおいて停止するか否か判断するために、走行系ECU6から送信された車両の走行速度が所定速度(例えば10km/h)以下に低下しているか否かを判定する。このとき、車速が低下していると判定されると、乗員は、ガソリンスタンドにおいて給油しようとしているとみなして、ステップS140の処理に進む。
【0049】
このようにして、推定部13は、車両情報に基づいて、ガソリンスタンドで車両に給油を行なうシーンであることを推定する。なお、そのシーンの推定に当たって、例えばガソリンタンクに残された燃料残量など、他の情報も考慮して、給油を行なうシーンであるかを推定しても良い。
【0050】
ここで、ガソリンスタンドには、店員による給油等のサービスを受けるフルサービスの店舗と、車両の乗員が自ら給油等を行なうセルフサービスの店舗がある。このような、フルサービスとセルフサービスの区別は、車両に搭載された検出手段では検出できない。
【0051】
そこで、ステップS140では、この不足情報を乗員に問い合わせて、その回答が得られた場合に、ガソリンスタンドがフルサービスの店舗である場合と、セルフサービスのテンポである場合とで、制御すべき車載装置およびその制御内容を切り替えるように、制御内容を決定する。これにより、より適切な給油準備制御を行なうことが可能になる。
【0052】
ステップS140における制御内容決定・報知処理の詳細について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
図4のステップS210では、まず、車両に給油を行なうシーンであると推定されるため、給油のための準備動作を行うための車載装置を制御の対象と推定する。いずれの車載装置を対象とするかは、給油準備制御など各種の制御毎に予め定められている。そして、ステップS220では、念のため、ガソリンスタンドを利用するか否かを音声及び/又は画面表示を用いて車両の乗員に問い合わせる。
【0054】
ステップS230において、乗員の回答を判定し、利用する場合には、ステップS240の処理に進み、利用しない場合には、ステップS310の処理に進み、給油準備制御を実行するか否かを示す制御フラグをオフする。
【0055】
ステップS240では、車両の乗員に、ガソリンスタンドがフルサービスの店舗であるか、セルフサービスの店舗であるかを音声及び/又は画面表示を用いて車両の乗員に問い合わせる。すなわち、図2のシーケンス図に示すように、推定部13が不足条件の問い合わせをシステム制御部15に指示する。これにより、システム制御部15がスピーカ3及びディスプレイ4を用いて、不足条件(フルサービスかセルフサービスであるか)を問い合わせるための音声出力及び画面表示を行なう。
【0056】
図4のステップS250において、乗員からフルサービスかセルフサービスかのいずれかの回答が得られたと判定されると、その判定結果に応じて、フルサービスの場合、ステップS260の処理に進み、セルフサービスの場合ステップS280に進む。
【0057】
例えば、図2のシーケンス図では、車両の乗員が発話した音声からフルサービスかセルフサービスかのいずれかの回答が得られた場合を示している。この場合、音声認識部11が、音声認識結果を推定部13に与えることにより、フルサービスモードによる給油準備制御が必要である状況か、セルフサービスモードによる給油準備制御が必要である状況かを判別することができる。従って、推定部13は、乗員からの回答に基づき、制御すべき車載装置及びその制御内容を適切に決定することができる。なお、乗員からの回答は、ディスプレイ4による表示画面を用いて行なうようにしても良い。すなわち、ディスプレイ4にフルサービスとセルフサービスの選択画面を表示し、乗員が画面上においていずれかを選択できるようにしても良い。
【0058】
ステップS260では、フルサービスモードによる給油準備制御を行なうための車載装置及びその制御内容を決定する。具体的には、例えば、車載装置として、給油口アクチュエータ、P/Wアクチュエータ、トリップスイッチを選択し、給油口を開く、運転席の窓を開く、及びトリップメータをリセットすることを各車載装置の制御内容として決定する。
【0059】
一方、ステップS270では、セルフサービスモードによる給油準備制御を行なうための車載装置及びその制御内容を決定する。具体的には、例えば、車載装置として、給油口アクチュエータ、ドアロックアクチュエータ、トリップスイッチを選択し、給油口を開く、運転席ドアをアンロックする、及びトリップメータをリセットすることを各車載装置の制御内容として決定する。
【0060】
ステップS280では、車両の乗員に対して、決定した制御内容を報知する。すなわち、図2のシーケンス図において、推定部13から決定した車載装置及び制御内容をシステム制御部15に通知する。この通知に基づいて、システム制御部15は、音声・表示制御部16に、音声出力及び画面表示を指示する。この指示に基づいて、音声・表示制御部16は、スピーカ3から制御の制御内容を示す音声を出力させ、ディスプレイ4に、車載装置及び制御内容をリスト表示させる。
【0061】
フルサービスモードによる給油準備制御を行なう予定である場合、スピーカ3から、例えば「フルサービスモードで実行します」と制御の制御内容を示す音声を出力させる。一方、セルフサービスモードによる給油準備制御を行なう予定である場合、「セルフサービスモードで実行します」との音声を出力させる。ただし、いずれの場合でも、ディスプレイ4には、上述した車載装置及びその制御内容がリスト表示される。これにより、乗員が必要と考える車載装置による制御のみを選択して実行させることが可能となる。例えば、トリップスイッチによるメータのリセットが不要である場合には、表示画面上においてもしくは音声にて、トリップスイッチを制御対象から除外する指示を行なえば良い。
【0062】
逆に、乗員は、制御の実行を希望する車載装置及びその制御内容が、ディスプレイ4に表示された車載装置及びその制御内容のリストに含まれていない場合、制御の実行を希望する車載装置及びその制御内容を音声にて指示することにより、制御対象となる車載装置を追加することができる。例えば、フルサービスモードによる給油準備制御に関して、店員との会話を円滑に行なうため、オーディオの音量の低下を希望する場合、音声にて「オーディオの音量低下」と指示する。すると、車載機器として「オーディオ」、制御内容として「音量低下」が、フルモードサービスによる給油準備制御における、制御すべき車載装置及び制御内容に追加される。
【0063】
ステップS290では、音声や応答スイッチ2によってなされる乗員の応答を判定し、制御を許可する旨の回答である場合には、ステップS300の処理に進み、制御を許可しない旨の回答である場合には、ステップS310の処理に進む。ステップS300では、フルサービスモードあるいはセルフサービスモードによる給油準備制御を実行するか否かを示す制御フラグをオンする。例えば、図2のシーケンス図では、乗員が音声により、制御を許可、すなわち車載装置の制御によるサービスを受理する旨を回答した場合が示されている。この場合、音声認識部11は、サービスを受理した旨の音声認識結果をシステム制御部15に通知する。
【0064】
図4を用いて説明した制御内容決定・報知処理が終了すると、次に、図3のフローチャートのステップS150が実行される。ステップS150では、制御フラグがオンされている場合に、ステップS260又はS270での決定内容に従って、該当する車載装置を制御するための制御指示信号が出力される。すなわち、図2のシーケンス図に示すように、システム制御部15は、駆動制御部17に対して、該当する車載装置(アクチュエータ等)を駆動するための駆動指示を出力する。これにより、駆動制御部17からボデー系ECU5に制御指示信号が出力され、フルサービスモードあるいはセルフサービスモードによる給油準備制御が実行される。そして、制御が実行されると、システム制御部15は、制御が実行された旨を乗員に報知するために、音声・表示制御部16に対して指示を出す。これにより、音声及び画面表示を通じて、制御が実行されたことが乗員に報知される。
【0065】
最後に、ステップS160において、制御された車載装置及び制御内容を、車両が置かれた状況を示すシーンに対応付けて記憶されることにより、学習データ14が更新される。
【0066】
以上説明したように、ガソリンスタンドがフルサービスの店舗かセルフサービスの店舗かを乗員に問い合わせることにより、乗員から車載のセンサ等では検知できない情報を得ることができる。そして、ガソリンスタンドにおいて、フルサービスかセルフサービスかの違いに応じて、制御すべき車載装置およびその制御内容を変更することにより、より適切な車載装置によるサービスを提供することができる。
【0067】
なお、上述した例は、車両の乗員が初めて訪れるガソリンスタンドにおいて、給油準備制御を実行した場合について説明したものである。初めて訪れたガソリンスタンドでは、そのガソリンスタンドがフルサービスの店舗かセルフサービスの店舗かを乗員に確認しなければならない。しかし、同じガソリンスタンドを再度訪れた場合には、過去に、そのガソリンスタンドにおいて実施された制御履歴及びその際のシーンが学習データ14として記憶されている。
【0068】
この学習データ14の一例を図5に示す。この学習データ14を参照することにより、フルサービスモードによる給油準備制御を行なったか、セルフサービスモードによる給油準備制御を行なったかを判別することができる。このため、車両がガソリンスタンドを訪れた場合、車両の乗員からガソリンスタンドを利用するとの回答を得たときに、学習データ14にそのガソリンスタンドにおける制御履歴が記憶されているか否かを判定する。そして、記憶されている場合には、乗員にフルサービスの店舗かセルフサービスの店舗かを問い合わせることなく、フルサービスモードあるいはセルフサービスモードによる給油準備制御を行なうための車載装置及びその制御内容を決定する。これにより、乗員に対してなんら煩わしさを与えることなく、制御すべき車載装置及び制御内容を決定することができる。ただし、この場合でも、実際に制御を実行する前に、制御の制御内容を報知し、乗員に実行許可を求める。そのような制御が不要である場合もありえるためである。
【0069】
また、学習データ14を参照することにより、車両の乗員が過去に制御対象から除外したり、追加したりした車載装置は、今回の制御でも、制御対象から除外、追加することができる。従って、車両の乗員の嗜好に合致した車載装置の制御によるサービスを提供することができる。
【0070】
また、今回、利用するガソリンスタンドにおける制御履歴が記憶されていが、同じ種類のサービスを提供する異なるガソリンスタンドにおける制御履歴が記憶されている場合、制御すべき車載機器及びその制御内容を決定する際に、その制御履歴を反映させても良い。具体的には、あるガソリンスタンドにおいて制御対象の除外や追加が行なわれていれば、今回のガソリンスタンドにおいても、制御すべき車載機器及びその制御内容を決定する際に、同じように制御対象の除外や追加を行なうようにしても良い。これは、車両の乗員は、車両が置かれた状況が同様であれば、過去に車載装置により実施されたサービスと同様のサービスを受けることを希望する傾向があるためである。
【0071】
なお、学習データ14は、図5に示すように、例えばスマートエントリシステムにおけるキーIDを用いて乗員を識別し、その識別した乗員の情報も記憶しておくことが好ましい。このようにすると、より的確に各乗員の嗜好を車載装置の制御に反映させることができる。
【0072】
上述した第1の制御例の他にも、車載装置を制御する上で不足する情報を乗員に問い合わせる例は、種々考えられる。例えば、ナビECU7から入力された車両が走行する道路種別に基づき、車両が高速道路の走行を開始したことを検出した場合、定速走行装置が、制御の対象となる車載装置として推定される。ただし、この場合、車両を何キロの速度で走行させるべきかの情報が不足している。従って、車両の乗員に、車両を定速走行させる希望速度を問い合わせ、回答が得られた場合に、制御すべき車載装置を定速走行装置として、その制御内容を、乗員から得られた希望速度での定速走行制御と決定する。このように、車両を定速で走行させる際の、乗員が希望する速度を乗員から取得することにより、定速走行装置を用いてより適切な制御を行なうことができる。
【0073】
また、この場合も、車両が過去に走行したことがある高速道路の走行を開始して、定速走行装置を制御の対象となる車載装置と推定したとき、学習データ14に過去に同じ高速道路を走行した際の制御履歴が記憶されていれば、乗員に希望速度を問い合わせることなく、制御内容を決定することができる。車両を定速走行させる際の乗員の希望車速がその制御履歴から判明するためである。この場合、乗員には、制御内容を決定した後に、制御の制御内容を報知して(例えば、車速xxkm/hで定速走行制御を実行しますか?)、その実施の可否について確認を行なうので、車両の乗員の意図に反した制御を行なう虞はない。
【0074】
(第2の制御例)
次に、車載装置の制御システムによる、第2の制御例について説明する。
【0075】
上述した第1の制御例では、車載装置を制御する上で不足する情報を乗員に問い合わせ、乗員から回答が得られた場合に、その回答に基づいて、制御すべき車載装置及び制御内容を決定するものであった。
【0076】
それに対して、第2の制御例では、車室内の環境に関して、各種のセンサなどから判断される状況は、制御を行なう状況に達していない場合であっても、車両の乗員が制御を希望する旨の言葉を発した場合に、その乗員の発した言葉に応じて、制御を実行するものである。このような第2の制御例の具体例として、窓の曇り取り制御について説明する。
【0077】
図6は、窓の曇り取り制御のシーケンス図である。まず、車両情報入力部12は、湿度センサ、車外及び車内温度センサによって検出された検出結果を入力し、推定部13に、車両情報として出力する。推定部13は、車室内湿度及び車室内外の温度差に基づいて、窓に曇りが発生する状況であるか判定する。この場合、推定部13は、車室内湿度を横軸とし、車室内外の温度差を縦軸とするグラフにおいて、予め、窓に曇りが発生する可能性が非常に高い第1領域、窓に曇りが発生する可能性が非常に低い第2領域、及び第1領域と第2領域とに挟まれた第3領域を定める。そして、検出された車室内湿度と車内外の温度差との関係が、第1〜第3領域のいずれに属するかを判定することにより、窓に曇りが発生する状況かどうかを判定する。
【0078】
車室内湿度と車内外の温度差との関係が、第1領域に属する場合には、上述したように、窓に曇りが発生する可能性が非常に高いので、乗員の発する音声に係らず、エアコンのデフロスターを制御すべき車載装置とし、デフロスターをオンして曇り取り制御を行なうことを制御内容として決定する。
【0079】
一方、車室内湿度と車内外の温度差との関係が、第2領域に属する場合には、上述したように、窓に曇りが発生する可能性は非常に低い。従って、乗員の発する音声に係らず、エアコンのデフロスターを制御すべき車載装置から除外する。これにより、乗員の発話内容を誤認識して、不必要であるにもかかわらず、デフロスターを制御すべき車載装置として決定することを防止することができる。
【0080】
車室内湿度と車内外の温度差との関係が、第3領域に属する場合には、必ずしも窓の曇りが発生するとは限らないが、窓の曇りが発生しないと断定することもできない状況である。この場合、推定部13は、デフロスターを制御の対象となる車載装置と推定し、その状態で待機する。
【0081】
このとき、音声認識部11において、窓の曇りを示す乗員の音声(例えば「窓が曇った」とか「曇って見えにくい」など)が認識された場合、推定部13は、デフロスターを制御すべき車載装置とし、制御内容を曇り取りとして決定する。そして、車両の乗員に、決定した制御内容を報知するために、推定部13は、決定した車載装置及び制御内容をシステム制御部15に通知する。この通知に基づいて、システム制御部15は、音声・表示制御部16に、音声出力及び画面表示を指示する。この指示に基づいて、音声・表示制御部16は、スピーカ3から制御の制御内容を示す音声を出力させ、ディスプレイ4に、車載装置及び制御内容をリスト表示させる。
【0082】
この場合、例えば、スピーカ3から、「窓の曇りを除去しますか?」との音声を出力させる。そして、ディスプレイ4には、制御される車載装置としてデフロスターが表示され、その制御内容として、デフロスターオンと表示される。
【0083】
このような制御内容の報知に対して、乗員から音声や応答スイッチ2により制御を許可する(サービス受理)旨の回答があった場合、システム制御部15が、駆動制御部17に対して、デフロスターを駆動するための駆動指示を出力する。これにより、駆動制御部17からボデー系ECU5に制御指示信号が出力され、エアコンのデフロスターがオンされ、窓の曇り取り制御が実行される。そして、制御が実行されると、システム制御部15は、制御が実行された旨を乗員に報知するために、音声・表示制御部16に対して指示を出す。これにより、音声及び画面表示を通じて、制御が実行されたことが乗員に報知される。
【0084】
このように、第2の制御例である窓の曇り取り制御では、車室内の湿度と車内外の温度差との関係が窓に曇りが発生する条件である第1領域に属するとの条件を満たさなくとも、窓の曇り取りを希望する乗員の言葉を検出したときには、デフロスターを制御すべき車載装置として決定する。これにより、車内環境を制御する車載装置の制御をより適切に行なうことができる。
【0085】
また、上述した第2の制御例の場合も、制御が行なわれたときに、車両が置かれた状況を示すシーンに関連付けて、制御された車載装置及び制御内容を示す制御履歴を学習データ14として記憶する。そして、学習データ14を用いて、車内環境の制御が必要と判定する条件を変更しても良い。例えば、上述した曇り取り制御の例では、曇り取り制御が行なわれたときの車室内湿度と車内外の温度差との関係が第1領域に属するように、第1領域を広げても良い。これにより、乗員の感覚や使用状況に適するように、制御が実行される条件を更新することができる。
【0086】
上述した第2の制御例の他にも、車室内の環境に関して、各種のセンサなどから判断される状況は、制御を行なう状況に達していない場合であっても、車両の乗員が制御を希望する旨の言葉を発した場合に、その乗員の発した言葉に応じて、制御を実行する制御例は、種々考えられる。
【0087】
例えば、乗員が車両に乗車しようとしたときに、車外温度センサ、車内温度センサ、日射センサなどの検出結果に基づき、車室内が高温であることが検出された場合、換気制御を行なうため、各席の窓を開閉するためのP/Wアクチュエータ、及びエアコンが、制御の対象となる車載装置として推定される。
【0088】
この場合も、車室内の高温状態を判定するために、高温状態である可能性が非常に高い第1条件、及び高温状態ではない可能性が非常に高い第2条件を予め設定しておき、各センサによる検出結果が、第1条件、第2条件を満足するか否かを判定する。そして、センサによる検出結果が第1条件を満足する場合には、無条件に換気制御を行なうための車載装置を制御すべき車載装置として決定する。一方、第2条件を満足する場合には、無条件に、換気制御を行なうための車載装置を制御すべき車載装置から除外する。
【0089】
センサによる検出結果が第1条件及び第2条件のいずれも満足しない場合には、P/Wアクチュエータ及びエアコンが、制御の対象となる車載装置として推定される。そして、車室内が暑いことを示す乗員の言葉が認識されたとき、それらの装置を、制御すべき車載装置として決定する。そして、制御内容として、P/Wアクチュエータにより、全席の窓を開け、エアコンを風量最大で稼動させることを決定する。このような換気制御を実行することにより、車室内の熱気が速やかに車室外に放出される。
【0090】
そして、上述した換気制御を実施した後には、各センサの検出結果と制御履歴を学習データ14として記憶し、この学習データ14に基づいて、高温状態と判定するための第1条件を更新する。
【0091】
(第3の制御例)
次に、車載装置の制御システムによる、第3の制御例について説明する。第3の制御例では、車両が置かれた状況に関する情報は、車両の乗員が車載装置に対して操作を行なったときの操作情報である。推定部13は、車両情報入力部12を介して、このような操作情報を取得すると、車両の乗員が操作を行なっている車載装置の操作ガイダンスを行なう車載装置を制御の対象となる車載装置として推定する。
【0092】
そして、音声認識部11によって、操作がうまくできないことを示す乗員の言葉が認識されたとき、推定部13は、その乗員の言葉に基づいて、操作ガイダンスを行なう車載装置を制御すべき車載装置として決定する。
【0093】
最近の車両は、各種の車載装置がエレクトロニクス化され、その操作手順も複雑化している。例えば、プッシュ式のエンジンスタートボタンを採用する車両では、エンジンを始動させる場合、ブレーキペダルを踏みながらエンジンスタートボタンを押下する必要がある。従って、車両の乗員がエンジンスタートボタンのみを操作しているときに、乗員の「エンジンがかからない」旨の発話を検出した場合、乗員はエンジンを始動させるための操作手順を知らない可能性が高いので、エンジン始動のための操作ガイダンスを行なうことを乗員に提案する。そして、乗員にその提案が許可された場合には、車載装置により操作ガイダンスを提示する。このようにすることにより、車両の乗員は、各種の車載装置の操作を支障なく行なうことができるようになる。
【0094】
(第4の制御例)
次に、車載装置の制御システムによる、第4の制御例について説明する。第4の制御例では、車両が置かれた状況に関する情報は、複数の車載装置(ECU)から得られるダイアグ情報である。推定部13は、車両情報入力部12を介して、各ECU5〜7からダイアグ情報を取得した場合、コールセンターへ通話を行なう車載装置を制御の対象となる車載装置として推定する。そして、音声認識部11によって、故障であることを示す乗員の言葉が認識されたとき、推定部13は、その乗員の言葉に基づいて、コールセンターへ通話を行なう車載装置を制御すべき車載装置として決定する。これにより、車両のいずれかの車載装置(ECU)が故障した場合であっても、コールセンターのオペレータの援助で適切な処置を行なうことが期待できる。
【0095】
コールセンターへ通話を行なう車載装置は、当該コールセンターへデータ通信を行なうことが可能なものであり、システム制御部15は、通話を行なう前に、或いは通話を行なっている間に、上述したダイアグ情報を含む車両情報をコールセンターへ送信する。これにより、オペレータは、車両の故障状況をより正確に認識することができるようになる。
【0096】
さらに、車両のナンバー、車両のユーザとして登録されている登録者の氏名、車両の現在位置及び走行経路の少なくともいずれかを含む個人情報も、上述した車両情報の一部として、コールセンターに送信することが好ましい。これらの情報は、例えば、車両に自走不可能な故障などが生じている場合に、オペレータが業者にレッカー移動を依頼する場合などに役立つためである。
【0097】
ただし、車両のナンバー、登録者の氏名、車両の現在位置や走行経路は、個人情報に属するので、その送信の可否を車両の乗員に問い合わせ、送信を許可する旨の応答が乗員から得られた場合にのみ、上述した個人情報を含む車両情報をコールセンターに送信する。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0099】
例えば、上述した実施形態では、マイク1を用いて、車両の乗員の発話音声を検出し、その音声データを音声認識部11により認識するようにした。しかしながら、例えば車両の乗員の様子を撮影するカメラを車室内に設け、そのカメラで撮影した乗員の行動から、乗員の回答や意図を推定するようにしても良い。例えば、制御の提案に対して、乗員がうなずいた場合には、その制御の実行を許可したものと推定することができる。逆に、提案に対して、乗員が首を横に振った場合には、その制御の実行を拒否したものと推定することができる。さらに、例えば乗員が窓を拭く動作を行った場合、窓の曇りを取ろうとしていることが推定される。
【符号の説明】
【0100】
1 マイク
2 応答スイッチ
3 スピーカ
4 ディスプレイ
5 ボデー系ECU
6 走行系ECU
7 ナビECU
10 制御装置
11 音声認識部
12 車両情報入力部
13 推定部
14 学習データ
15 システム制御部
16 音声・表示制御部
17 駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された複数の車載装置と、
車両が置かれた状況に関する情報を取得する取得手段と、
前記車両の乗員の言動を検出する検出手段と、
前記車両が置かれた状況から、制御の対象となる車載装置を推定するとともに、前記乗員の言動を考慮して、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定する決定手段と、
前記決定手段が制御すべきと決定した車載装置及び制御内容を前記車両の乗員に報知する報知手段と、
前記報知手段による報知に対し、制御を許可する旨の乗員の応答が得られたとき、前記決定手段による決定に従って、前記車載装置を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする車載装置の制御システム。
【請求項2】
前記車両が置かれた状況において、前記制御手段によって制御された車載装置及び制御内容の制御履歴を記憶する記憶手段を備え、
前記決定手段は、前記車両が置かれている状況と同様の状況において、制御された車載装置及び制御内容の制御履歴が前記記憶手段に記憶されている場合、その制御履歴も考慮して、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定することを特徴とする請求項1に記載の車載装置の制御システム。
【請求項3】
前記決定手段は、前記車両が置かれた状況から、制御の対象となる車載装置を推定したとき、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定するために必要となる情報を前記車両の乗員に問い合わせ、その問い合わせに対する回答が乗員の言動から得られた場合に、前記乗員の言動に基づいて制御すべき車載装置及びその制御内容を決定することを特徴とする請求項1に記載の車載装置の制御システム。
【請求項4】
前記車両が置かれた状況において、前記制御手段によって制御された車載装置及び制御内容の制御履歴を記憶する記憶手段を備え、
前記決定手段は、前記車両が置かれている状況と同一の状況において、制御された車載装置及び制御内容の制御履歴が前記記憶手段に記憶されている場合、前記車両の乗員に問い合わせを行うことなく、その制御履歴に基づいて、制御すべき車載装置及びその制御内容を決定することを特徴とする請求項3に記載の車載装置の制御システム。
【請求項5】
前記車両が置かれた状況に関する情報は、当該車両の車内の環境に関する環境情報を含み、
前記決定手段は、当該環境情報が、車内の環境を制御する車載装置を制御する必要があることを示す第1の条件を満たすか、あるいは当該車載装置を制御する必要がないことを示す第2の条件を満たすかを判定し、第1及び第2の条件をともに満たさない場合、車内の環境を制御する車載装置を制御の対象となる車載装置として推定するとともに、車内環境の制御を希望する旨の乗員の言動が検出されたとき、当該乗員の言動に基づいて、車内の環境を制御する車載装置を制御すべき車載装置とし、その制御内容を決定することを特徴とする請求項1に記載の車載装置の制御システム。
【請求項6】
前記決定手段は、前記環境情報が前記第1の条件を満たす場合には、前記乗員の言動に係らず、車内の環境を制御する車載装置を制御すべき車載装置として、その制御内容を決定し、前記第2の条件を満たす場合には、前記乗員の言動に係らず、車内の環境を制御する車載装置を制御すべき車載装置から除外することを特徴とする請求項5に記載の車載装置の制御システム。
【請求項7】
前記車両の車内環境において、前記制御手段によって制御された車載装置及び制御内容の制御履歴を記憶する記憶手段を備え、
前記決定手段は、前記制御履歴に基づいて、前記第1の条件を、制御が行なわれたときの車内環境に対応するように更新することを特徴とする請求項5に記載の車載装置の制御システム。
【請求項8】
前記車両が置かれた状況に関する情報は、前記車両の乗員が前記車載装置に対して操作を行なったときの操作情報を含み、
前記決定手段は、車両の乗員が操作を行なっている車載装置の操作ガイダンスを行なう車載装置を制御の対象となる車載装置として推定するとともに、操作がうまくできないことを示す乗員の言動が検出されたとき、当該乗員の言動に基づいて、操作ガイダンスを行なう車載装置を制御すべき車載装置とし、その制御内容を決定することを特徴とする請求項1に記載の車載装置の制御システム。
【請求項9】
前記車両が置かれた状況に関する情報は、前記複数の車載装置から得られるダイアグ情報を含み、
前記決定手段は、前記車載装置からダイアグ情報が得られた場合、コールセンターへ通話を行なう車載装置を制御の対象となる車載装置として推定するとともに、故障であることを示す乗員の言動が検出されたとき、当該乗員の言動に基づいて、コールセンターへ通話を行なう車載装置を制御すべき車載装置として決定することを特徴とする請求項1に記載の車載装置の制御システム。
【請求項10】
前記コールセンターへ通話を行なう車載装置は、当該コールセンターへデータ通信を行なうことが可能なものであって、前記ダイアグ情報を含む車両情報を前記コールセンターへ送信することを特徴とする請求項9に記載の車載装置の制御システム。
【請求項11】
前記車両のナンバー、前記車両のユーザとして登録されている登録者の氏名、前記車両の現在位置及び走行経路の少なくともいずれかを含む個人情報の送信の可否を前記車両の乗員に問い合わせ、送信を許可する旨の応答が乗員から得られた場合に、前記個人情報を含む車両情報を前記コールセンターに送信することを特徴とする請求項10に記載の車載装置の制御システム。
【請求項12】
前記報知手段が、制御すべきと決定した車載装置及び制御内容を前記車両の乗員に報知したとき、当該車両の乗員から、制御すべき車載装置及び制御内容の追加又は削除が指示された場合、前記制御手段は、前記車両の乗員による追加又は削除指示に応じて、制御すべき車載装置及び制御内容を追加又は削除するように修正し、その修正後の車載装置及び制御内容に従って、当該車載装置を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項11に記載の車載装置の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−247799(P2010−247799A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102317(P2009−102317)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)