説明

車載電子機器の位置決め構造

【課題】電子機器を車両に固定する際に、電子機器の位置決め作業の負荷を軽減する位置決め構造を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する位置決め構造は、電子機器2の筐体に設けられた締結部10と、電子機器の固定場所に設けられたガイドプレート24で構成される。締結部10は、電子機器の筐体の側面から突出している。締結部10には、ボルトが挿通される貫通孔13が設けられている。さらに締結部10は、ボルト挿通方向に平行な先端平坦側面14aを有する。ガイドプレート24は、締結部10が固定される固定予定領域の境界であって、締結部の先端平坦側面14aの下端エッジに対応する境界から伸びている。そして、ガイドプレート24は、締結部の先端平坦側面14aがガイドプレート24に面接触するように電子機器2を配したときに、締結部10の貫通孔13と固定予定領域に設けられたボルト締結孔22が重なるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を車両に固定する際の位置決め構造に関する。典型的には、エンジンコンパーメント内における電子機器の位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンコンパートメント(フロントコンパートメント)内には様々な機器が搭載される。特に、近年開発が盛んである電気自動車(ハイブリッド車を含む)では、車輪駆動用のモータに交流電力を供給するインバータなど、エンジンコンパートメント内に搭載する電子機器が増えている。そこで、電子機器の車両への搭載に関する改良が例えば特許文献1に提案されている。特許文献1には、車両衝突時の衝撃によってケースが変形または破損しても高電圧出力機器の破損および外部露出を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−154757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンコンパートメントには電子機器の他にもエンジンやバッテリなど、様々な機器が搭載される。また、搭載場所も、広い平坦面ではなく、車両のフレームなど様々に湾曲している部材の一部であることが多い。様々な機器が混在する上に狭いエンジンコンパートメント内に電子機器を搭載する場合、電子機器の位置決めに苦労する。本明細書は、電子機器を車両に固定する際に、電子機器の位置決め作業の負荷を軽減する位置決め構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車載電子機器の位置決め構造は、電子機器の筐体に設けられた締結部と、電子機器の固定場所に設けられたガイドプレートで構成される。締結部は、電子機器の筐体の側面から突出している。締結部には、ボルトが挿通される貫通孔が設けられている。さらに締結部は、ボルト挿通方向に平行な平坦側面を有する。ガイドプレートは、上記の締結部が固定される固定予定領域の境界であって、締結部の平坦側面の下端エッジに対応する境界から伸びている。そして、ガイドプレートは、締結部の平坦側面がガイドプレートに面接触するように電子機器を配したときに、締結部の貫通孔と固定予定領域に設けられたボルト締結孔が重なるように設けられている。
【0006】
上記の位置決め構造を採用すれば、締結部の平坦側面をガイドプレートに押し当てるようにして電子機器を固定予定領域に設置するだけで、締結部の貫通孔とボルト締結孔が一致するように電子機器を位置決めすることができる。電子機器を容易に位置決めすることができる。
【0007】
本明細書が開示する位置決め構造では、さらに、電子機器の締結部が、以下の特徴を有する上部と下部で構成されていることが好ましい。上部は、ボルトを通す貫通孔の中心線に対して平行に伸びており、その中心線に直交する断面において湾曲する先端側面を有する。下部は、上部の下側に位置しており、先端側面の下に続く平坦側面を有する。上部の下に質量の大きい下部を設けることには、締結部の重心位置を下げる効果がある。重心位置が下がれば、車両から締結部を介して電子機器に伝わる振動を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電子機器の斜視図である。
【図2】固定予定領域、及び、電子機器の締結部を拡大した斜視図である。
【図3】固定予定領域と電子機器の模式的平面図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】図3のIV−IV線に相当する断面図であって固定予定領域に電子機器が設置された状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して実施例の位置決め構造を説明する。図1に、車両に固定するインバータ2の斜視図を示す。インバータ2が車両に搭載する電子機器の一例である。インバータ2は、電気自動車に搭載され、車輪駆動用モータに交流電力を供給するデバイスである。インバータ2の一つの側面から締結部10が突出している。なお、締結部10の反対側にも同様の締結部があるが、以下では締結部10のみに着目し、他の締結部については説明を省略する。
【0010】
インバータ2は、車両のフロントコンパートメントに搭載される。図2に、締結部10の部分拡大図と、締結部10(インバータ2)の固定台20(固定場所)の付近の部分斜視図を示す。図2は、固定する前にインバータ2の締結部10が固定台20に近づいたところを示している。固定台20は、電気自動車のフレーム4に予め取り付けられている。本実施例の位置決め構造100は、締結部10と、固定台20とガイドプレート24(後述)で構成される。
【0011】
図面に示した座標系について説明する。Z軸は鉛直方向を向いており、X軸は車両前方を向いており、Y軸は車両横方向を向いている。座標系各軸が示す方向は全ての図で共通である。
【0012】
図3は、締結部10及び固定台20の近傍の平面図である。図3は、図2の斜視図をZ軸方向から見た平面図に書き直したものである。但し、図3では、図2の部品を簡略化して描いてある。図4は、図3のIV−IV線に沿った断面を示している。なお、図4は、図2のIV−IV線に沿った断面にも相当する。図5は、図4の断面図と同じ視点から見た断面図であるが、締結部10が固定台20に位置決めされ、インバータ2がボルト32でフレーム4に固定された状態を示している。
【0013】
インバータ2の側面から突出している締結部10について説明する。締結部10には、インバータ2を固定するためのボルトを通す貫通孔13が設けられている。貫通孔13は、インバータ2を車両に搭載した際に上下方向(図のZ軸方向)に伸びている。締結部10は、上下に上部12と下部14に分けられる。上部12は、Z方向には貫通孔13の中心線CL1に平行に伸びており、XY断面において湾曲している先端湾曲側面12aを有する。下部14は、先端平坦側面14aを有している。先端平坦側面14aは、上部12の先端湾曲側面12aに繋がっている。図3の平面図にて明らかなように、XY平面で見ると先端湾曲側面12aの境界線と先端平坦側面14aの境界線は、締結部10の先端で接する。
【0014】
車両のフレーム4に固定されている固定台20について説明する。固定台20の上面は、インバータ2の締結部10が固定される予定領域に相当する。固定台20には、締結部10(インバータ2)を固定するためのボルト締結孔22が設けられており、固定台20の上面の裏側には、ナット31が固定されている。
【0015】
ガイドプレート24について説明する。ガイドプレート24は、車両のフレーム4に固定されており、固定台20の縁20aに沿って伸びている。固定台20の縁20aは、締結部10の固定予定領域の境界に相当するとともに、締結部10を固定台20の上に位置させたときに、締結部10の先端平坦側面14aの下端エッジに対応する部位である。ガイドプレート24の一方の面(締結部10に面する面)は、下側面24aと上側面24bで構成される。下側面24aは、締結部10の先端平坦側面14aの下端エッジに対応する固定領域境界20aからボルト締結孔22の中心線CL2に平行に伸びている。上側面24bは、下側面24aに連なる面であり、図4に示すように、ボルト締結孔22の中心線CL2から遠ざかる方向に傾斜している。
【0016】
ガイドプレート24は、締結部10の先端平坦側面14aがガイドプレート24の下側面24aに面接触するようにインバータ2を配したときに、締結部10に設けられた貫通孔13と固定台20に設けられたボルト締結孔22が重なるように設けられる。
【0017】
ガイドプレート24の機能を説明する。インバータ2を車載する際、作業者は、締結部10の先端平坦側面14aをガイドプレート24の下側面24aに面接触させつつ、インバータ2を下方へ降ろす。そのまま締結部10の下面が固定台20の上面に接するまでインバータ2を降ろす。締結部10の先端平坦側面14aをガイドプレート24の下側面24aに面接触させつつ、締結部10の下面を固定台20の上面に設置すると、ちょうど締結部10の貫通孔13とボルト締結孔22が重なる(図5参照)。図5の直線CL3は、締結部10の貫通孔13の中心線CL1(図4参照)と固定台20に設けられたボルト締結孔22の中心線CL2(図4参照)が重なったものである。従って、図5に示すように、ボルト32をスムーズに貫通孔13とボルト締結孔22に通すことができる。このように、先端平坦側面14aを有する締結部10とガイドプレート24によって、狭い空間でもインバータ2を所定の固定位置に容易に位置決めすることができる。本実施例の位置決め構造100は、インバータ2(車載電子機器)の車載時の位置決め作業の負荷を軽減する。
【0018】
また、インバータ2がXY平面内で回転して締結部10がY方向にずれても、先端平坦側面14aが先端湾曲側面12aよりY方向に幅広であるため、先端湾曲側面12aのみで締結部10を構成した場合と比べ、締結部10の先端(先端平坦側面14a)がガイドプレート24の下側面24aに当接し易く、締結部10の回転を規制することができる。なお、XY平面は、締結部10の底面に平行な平面であり、別言すれば、固定台20上面に平行な平面である。
【0019】
上記の位置決め構造100は、次の利点も有する。ガイドプレート24の上側面24bは、外側(締結部10から離れる方向)に傾斜している。インバータ2を車両に取り付ける場合、最初に先端平坦側面14aをガイドプレート24に当接する際に、先端平坦側面14aを外側に開いた上側面24bにまず当接させ、そのまま上側面24bから下側面24aへとインバータ2を降ろせばよい。ガイドプレート24の側面が湾曲していることも、インバータ2の位置決め作業性を良くすることに寄与する。
【0020】
締結部10の上記構造は、次の効果も奏する。締結部10は、先端側面が湾曲している上部12と、先端側面が平坦な下部14を含む。下部14を備えることによって、下部14を有さない場合と比較して締結部10の重心位置は下側にシフトする。インバータ2は締結部10を介して車両(フレーム4)に固定されるが、締結部10の重心位置が低いので、車両(フレーム4)からの振動がインバータ2に伝わり難くなる。上記構造を有する締結部10は、車両の振動をインバータ2(電子機器)に伝え難いという利点を有する。
【0021】
実施例の位置決め構造100に関する留意点を述べる。位置決めの対象はインバータ2に限られない。本明細書が開示する位置決め構造は、例えば、バッテリなどに適用することも好適である。また、本明細書が開示する位置決め構造は、電気自動車だけでなく、従来のエンジン車に適用することも可能である。
【0022】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0023】
2:インバータ
4:車両のフレーム
10:締結部
12:上部
12:先端湾曲側面
13:貫通孔
14:下部
14a:先端平坦側面
20:固定台20
22:ボルト締結孔
24:ガイドプレート
24a:下側面
24b:上側面
100:位置決め構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載電子機器の位置決め構造であり、
電子機器の筐体から突出しており、ボルトが挿通される貫通孔が設けられているとともにボルト挿通方向に平行な平坦側面を有する締結部と、
電子機器の固定場所に設けられており、前記締結部が固定される固定予定領域の境界であり前記平坦側面の下端エッジに対応する境界から伸びているガイドプレートと、
を備えており、
前記平坦側面がガイドプレートに面接触するように電子機器を配したときに、締結部の貫通孔と固定予定領域に設けられたボルト締結孔が重なることを特徴とする位置決め構造。
【請求項2】
前記締結部が、前記貫通孔の中心線に対して平行に伸びている湾曲した先端側面を有する上部と、前記先端側面の下に続く前記平坦側面を有する下部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の位置決め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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