説明

車載電子機器の電源回路

【課題】高温状態であっても正常にスイッチングレギュレート制御が行われて常に所定の5〔V〕に維持する。
【解決手段】スイッチング用トランジスタTR1とこのスイッチング用トランジスタTR1をスイッチングさせてバッテリ電源VBを5Vとなるようにフィードバックしてスイッチング用トランジスタTR1を制御するためのスイッチングレギュレータ用ICIC1とからなるレギュレータ回路RFを有する車載用電源回路において、スイッチング用トランジスタTR1のベースとエミッタ間に配置した電圧を飽和電圧以下にするための制御用トランジスタTR3とその制御をするコンパレータIC2とを有する保護回路SCを具えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される電子機器(車載電子機器)の電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエンジン、サスペンション、トランスミッション、ブレーキなどの電源装置として、バッテリ電圧をレギュレータにより所定の低電圧に降圧して供給されている。
【0003】
ところで、レギュレータのスイッチング素子が何らかの原因により短絡してバッテリ電圧がそのまま降圧されずに車載電子機器に供給されると高圧の電圧が車載機器やその間に介設されている各種の電子回路の素子に供給されてしまい、多大な発熱が生じて制御に支障をきたしたり機器が損傷することになる。
【0004】
そこで、例えは特開平2−252007号公報に提示されているように、レギュレータの異常を検出する手段を設けて、レギュレータの異常を検出したときに、レギュレータを強制的に遮断するスイッチ手段からなる保護回路を具えたものが知られている。
【0005】
図3は例えばエンジンの燃料供給を制御するCPU(図示せず)にバッテリ電源VBを例えば5〔V(ボルト)〕として供給するための従来の電源回路の一例を示すものであり、スイッチング用トランジスタTR1とこのスイッチング用トランジスタTR1をスイッチングさせてバッテリ電源VBを5Vとなるようにフィードバックしてスイッチング用トランジスタTR1を制御するためのスイッチングレギュレータ用IC(IC1)とからなるレギュレータ回路RCと、電解コンデンサC1、電流を回帰させるダイオードD1からなる安定化電源を提供するための平滑回路RFと、前記5〔V〕の出力電圧がVp〔V〕以上にならないようにスイッチング用トランジスタTR1のベースB電圧を遮断するためのトランジスタTR2およびその制御をするコンパレータIC2とを有する保護回路SCを具えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−252007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記従来の電源回路は、通常の電源供給時には、コンパレータIC2の出力段が常時0になっており、前記スイッチング用トランジスタTR1のベースB電圧はIC1によりON/OFF制御される。
【0008】
このとき、前記スイッチング用トランジスタTR1がOFF状態のときにも次の式(1)に示すように、V1〔V〕の電圧がスイッチング用トランジスタTR1のベースBとエミッタE間に印加されていることになる。
【0009】
【数1】


V1:スイッチング用トランジスタ(TR1)がOFF時にベースエミッタ間にかかる
電圧〔V〕
VB:バッテリ電源電圧〔V〕
【0010】
そして、図4に示すように、低温時にはスイッチング用トランジスタTR1がOFF状態にあるが、高温時になると、スイッチング用トランジスタTR1を完全にOFFさせるためのベースBとエミッタE間の電圧VBE〔V〕が次第に小さくなり、t1〔℃〕以上になると電圧V1〔V〕を下回り、スイッチング用トランジスタTR1をスイッチング制御したとしても出力電圧である5〔V〕を維持することができくなるという問題がある。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高温状態にある場合にも正常にスイッチングレギュレート制御が行われて常に所定の5〔V〕に維持することができる車載電子機器の電源回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた本発明は、スイッチング用トランジスタとこのスイッチング用トランジスタをスイッチングさせてバッテリ電源を5Vとなるようにフィードバックしてスイッチング用トランジスタを制御するためのスイッチングレギュレータ用ICとからなるレギュレータ回路を有する車載用電源回路において、前記スイッチング用トランジスタのベースとエミッタ間に配置した電圧を飽和電圧以下にするための制御用トランジスタとその制御をするコンパレータとを有する保護回路を具えた。
【0013】
特に、前記制御用トランジスタのコレクタ、エミッタ間飽和電圧が、スイッチング用トランジスタのベース、エミッタ間飽和電圧を超えないこととする。
【0014】
本発明によれば、スイッチング用トランジスタはスイッチングレギュレータ用により直接行うようにするとともに、出力電圧が5〔V〕から上昇したとき、コンパレータによりトランジスタをON状態として、スイッチング用トランジスタのベースとエミッタ間の電圧を制御用トランジスタのコレクタ、エミッタ間飽和電圧以下にして、確実にスイッチング用トランジスタをOFFさせることができる。
【0015】
また、制御用トランジスタは通常時はOFFしているためスイッチング用トランジスタのベース、エミッタ間の電圧に影響を与えることがなく、スイッチング用トランジスタのOFF時にベース、エミッタ間の電圧がほぼ0〔V〕になり、その結果、高温状態でも正常にスイッチングレギュレート制御が行われる所定の5〔V〕に維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明である車載電子機器の電源回路は、高温状態であっても正常にスイッチングレギュレート制御が行われて常に所定の5〔V〕に維持することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す回路図である。
【図2】図1に示した実施の形態についてのスイッチング用トランジスタについての電流を遮断するベース−エミッタ間電圧の温度特性に関するグラフである。
【図3】従来例を示す回路図である。
【図4】図3に示した従来例についてのスイッチング用トランジスタについての電流を遮断するベース−エミッタ間電圧の温度特性に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
図1は本発明である車載用電子機器の電源回路は、前記図3に示した従来例と同じく、例えばエンジンの燃料供給を制御するCPU(図示せず)にバッテリ電源VBを例えば5〔V〕として供給するための一例を示すものであり、スイッチング用トランジスタTR1とこのスイッチング用トランジスタTR1をスイッチングさせてバッテリ電源VBを5Vとなるようにフィードバックしてスイッチング用トランジスタTR1を制御するためのスイッチングレギュレータ用IC(IC1)とからなるレギュレータ回路RCと、電解コンデンサC1、電流を回帰させるダイオードD1からなる安定化電源を提供するための平滑回路RFとを有している。
【0020】
特に、前記5〔V〕の出力電圧がVp〔V〕以上にならないようにスイッチング用トランジスタTR1のベースB電圧を遮断するための保護回路SCが、前記スイッチング用トランジスタTR1のベースB−エミッタE間に配置した電圧を飽和電圧以下にするための制御用トランジスタTR3とその制御用のコンパレータIC2と、前記制御用トランジスタTR3のバイアス抵抗R1、R2により構成され、特に、前記制御用トランジスタTR3のコレクタ、エミッタ間飽和電圧が、スイッチング用トランジスタTR1のベース、エミッタ間飽和電圧を超えないこととした。
【0021】
本発明によれば、スイッチング用トランジスタTR1はスイッチングレギュレータ用IC(IC1)により直接行うようにするとともに、出力電圧が5〔V〕から上昇したとき、コンパレータIC2によりトランジスタTR3をON状態として、スイッチング用トランジスタTR1のベースB−エミッタE間の電圧を制御用トランジスタTR3のVCE(sat)(コレクタ、エミッタ間飽和電圧)以下にして、確実にスイッチング用トランジスタTR1をOFFさせることができる。
【0022】
また、制御用トランジスタTR3通常時はOFF状態にあるためスイッチング用トランジスタTR1のベースB、エミッタE間の電圧に影響を与えることがなく、スイッチング用トランジスタTR1のOFF時にベースB、エミッタE間の電圧V1〔V〕がほぼ0〔V〕になり、その結果、図2に示すように、高温状態でも正常にスイッチングレギュレート制御が行われる所定の5〔V〕に維持することができる。
【符号の説明】
【0023】
TR1 スイッチング用トランジスタ、VB バッテリ電源、IC1 スイッチングレギュレータ用IC、RC レギュレータ回路、C1 電解コンデンサC1、D1 ダイオード、IC2 コンパレータ、TR3 制御用トランジスタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング用トランジスタとこのスイッチング用トランジスタをスイッチングさせてバッテリ電源を5Vとなるようにフィードバックしてスイッチング用トランジスタを制御するためのスイッチングレギュレータ用ICとからなるレギュレータ回路を有する車載用電源回路において、前記スイッチング用トランジスタのベースとエミッタ間に配置した電圧を飽和電圧以下にするための制御用トランジスタとその制御をするコンパレータとを有する保護回路を具えたことを特徴とする車載電子機器の電源回路。
【請求項2】
前記御用トランジスタのコレクタ、エミッタ間飽和電圧が、スイッチング用トランジスタのベース、エミッタ間飽和電圧を超えないことを特徴とする請求項1記載の車載電子機器の電源回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−221883(P2010−221883A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72012(P2009−72012)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)