車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構
【課題】
車両走行メカニズムの新規な基本原理の発見をもとに、牽引動力を従来の50%〜30%に軽減でき、車輪に設けたテコ式牽引力軽減機構を提供する。
【解決手段】
固定ハブ8で回転ハブ9を軸支し、両ハブの中に、メカニズムを内蔵させる。即ち、回転ハブ9に内歯歯車9d、フェースギヤ9fを設け、さらに、下端に回転自在に空転歯車28を軸支し、中間が固定ハブ8dで軸支される牽引レバー29を設ける。牽引レバー29は固定ハブの穴8bから突出させ、外部からレバー操作可能とする。また、固定ハブ軸8eで軸支される中間大歯車27を第2空転歯車28aに噛合せ、回転ハブの内歯歯車9dを第1空転歯車28bに噛合せる。空転歯車28はタイヤ回転時、下方の一定位置に保持されるため、空転歯車軸29cと固定ハブ軸8dで軸支されるレバー29はテコのレバーとなり、テコの原理で、軽い力で車両を牽引できる。
車両走行メカニズムの新規な基本原理の発見をもとに、牽引動力を従来の50%〜30%に軽減でき、車輪に設けたテコ式牽引力軽減機構を提供する。
【解決手段】
固定ハブ8で回転ハブ9を軸支し、両ハブの中に、メカニズムを内蔵させる。即ち、回転ハブ9に内歯歯車9d、フェースギヤ9fを設け、さらに、下端に回転自在に空転歯車28を軸支し、中間が固定ハブ8dで軸支される牽引レバー29を設ける。牽引レバー29は固定ハブの穴8bから突出させ、外部からレバー操作可能とする。また、固定ハブ軸8eで軸支される中間大歯車27を第2空転歯車28aに噛合せ、回転ハブの内歯歯車9dを第1空転歯車28bに噛合せる。空転歯車28はタイヤ回転時、下方の一定位置に保持されるため、空転歯車軸29cと固定ハブ軸8dで軸支されるレバー29はテコのレバーとなり、テコの原理で、軽い力で車両を牽引できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等車両の走行エネルギーを軽減する車輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車等車両は、駆動車輪が車体本体を介して直接従動車輪を牽引し、走行している。図1、図2、図3に従来技術による自動車を一例として挙げる。自動車1の駆動車輪2による牽引力は車体本体1で従動車輪3に伝達される。即ち、車体本体1に一体となる軸受1a、1bで車軸4を牽引し、この牽引力が車輪ハブ6、リブ5を介し、タイヤ3を回転させ、走行している。
【0003】
従って、各寸法諸元を図3の如くとし、輪重をW1、車輪半径をR、転がり摩擦係数をf、坂角度をαとすると、牽引力S1は下記となる。
S1=W1(sinα+(fcosα)/R)・・・(1)
従って、この式から分かるように、どこにも牽引力低減策が無いのが現状である。
尚、公知例調査の結果も特許文献1のパワートランスミッション及び動力源の組合体や特許文献2の遊星歯車式差動装置等が出願されているが、いずれも、現状の動力のハイブリット化あるいは多機能化が目的であり、根本的な牽引力そのものの軽減機構に関しては、見当たらない。
【特許文献1】特開平8―238945
【特許文献2】特開平5―187487
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、石油等の化石燃料の枯渇および地球温暖化等地球規模での環境問題に対応すべく、燃料電池車、太陽電池車が開発されている。一方、燃料電池、太陽電池とも現状の車両等の機構では牽引力が大きく、大掛かりな装置となり、高価で大衆化が困難な状況にある。
本発明は、かかる状況に鑑み、小型小容量の燃料電池、太陽電池で現状と同等の車両走行性能を発揮させる、新規な牽引力軽減機構を提供するものである。
また、本発明の更なる目的は、すでに世に出ている自動車等車両の牽引力を軽減し、化石燃料の枯渇および環境問題に対処できるアタッチメント式牽引力軽減機構を提供することにある。
また、本発明の更なる目的は、特許文献3の車輪ハブに設ける遊星歯車式駆動動力軽減機構を駆動車輪に設け、従動車輪に本発明による車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構を設けることにより、車両走行に要するエネルギーを従来の20〜30%とする省エネルギー機構を提供することにある。
【特許文献3】特願2004−268770
【課題を解決するための手段】
【0005】
図4に示す如く、回転する車輪3の中に、垂直に静止し、車輪中心軸Oで軸支されるレバー7を設ける。このレバーの下端aの位置が車輪走行時も常に図4に示す定位置にあるとすれば、レバー7はテコとなり、テコの原理で車軸Oを押し続けることができる。即ち、レバー上部bを押す力をF1とすると、新たな車輪転倒モーメントMT、従来の車輪転倒モーメントMRは、
MT=F1(R+l)・・・(2)
MR=F1R・・・(3)
となる。従って従来に比較してF1lだけ転倒モーメントを大きくすることができる。
【0006】
上記を達成するためには、2つの難問がある。1つは、レバーの下端を新たなエネルギーを付加せずに、如何にして走行中定位置に保ち、定位置に保つ反力を車体から切り離し、大地に作用させるか、即ち大地に接する車輪に作用させるか、である。2つは、車輪に作用する逆転倒モーメントを如何にして小さくし、テコの効果を最大とするか、である。
【0007】
本発明は上記難問を解決し、所期の目的を達成したものである。
本発明の動作原理を図5、図6、図7、図8に基づいて詳述する。図5は本発明の基本動作原理を説明する1実施例の断面図で、図6は全体説明図、図7、図8は図5のA視図、B視図である。
【0008】
初めに構造を概説する。
先ず、ハブを、タイヤ3と一体となり回転する回転ハブ9と、車体に固定される固定ハブ8に分け、固定ハブで回転ハブを支持し、軸受14、18で回転ハブを回転自在に保持する。回転ハブの内部外周には内歯歯車9dを設ける。一方、固定ハブ8eで軸支され、外周に歯車を持つ中間大歯車と内歯歯車9dの間に空転歯車28を設ける。空転歯車は、内歯歯車9dと噛合う第1空転歯車28bと中間大歯車27bと噛合う第2空転歯車で構成し、空転歯車28は、固定ハブ8dで軸支される牽引レバー29の軸29cで回転自在に保持する。また、回転ハブ9の中心部9eにフェースギヤ9fを設け、中間大歯車27の外周部平面にフェースギヤ27aを設ける。この両フェースギヤ間に、固定ハブ8f部で軸直角に軸支する第1動力伝達軸22、および固定ハブ8fと一体となるブラケット26で軸支される第2動力伝達軸23を設ける。第1動力伝達軸の1方は回転ハブのフェースギヤと噛合い、他方の内歯歯車22aは第2動力伝達軸のピニオン23aと噛合い、第2動力伝達軸他端23dは中間大歯車のフェースギヤ27aと噛合せる。また、牽引レバー29は固定ハブ8bの穴から上部に突出させる。
【0009】
次に動作の基本原理を説明する。
各歯車の歯数、各寸法諸元、回転方向、力、モーメントを図6、図7、図8に記載の記号の如くとすると、各歯車の歯数は、下記(A)、(B)の2条件を満足しなければならない。
【0010】
(A)中間大歯車27bで回される第2空転歯車28aの回転数n4=内歯歯車9dで回される第1空転歯車28bの回転数n4となる条件
中間大歯車27bで回される第2空転歯車28aの回転数n4
n1=Z1n0/Z2・・・(4)
n2=Z3n1/Z4・・・(5)
n3=Z5n2/Z6・・・(6)
n4=Z7n3/Z8・・・(7)
また、内歯歯車9dで回される第1空転歯車28bの回転数n4
n4=Z10n0/Z9・・・(8)
従って、(7)=(8)から、下記条件式が導かれる。
Z1Z3Z5Z7Z9=Z2Z4Z6Z8Z10・・・(9)
(B)歯車が互いに噛合う条件
Z10=Z7+Z8+Z9・・・(10)
【0011】
一方、テコの原理からP1、P2は下記となる。
P1=Pl0/l1・・・(11)
P2=Pl2/l1・・・(12)
【0012】
また、力の釣合いから、P21、P22は次式となる。
P21=Z8P2/(Z8+Z9)・・・(13)
P22=Z9P2/(Z8+Z9)・・・(14)
【0013】
また、各歯車のモジュールをmとすると、P3、P4、P5は下記で求まる。
P3=mZ7P22/(2r6)・・・(15)
P4=2r5P3/(mZ4)・・・(16)
P5=mZ3P4/(2r2)・・・(17)
【0014】
以上から、中間大歯車27をn3方向に回すために回転ハブ、即ちタイヤに働く逆転倒モーメントTq5は下記となる。
Tq5=P5r1・・・(18)
【0015】
以上の式から、反時計回りのモーメントを正、時計回りのモーメントを負とすると、テコのレバー29eを押す力Pが車輪に与えるモーメントの総和M0は次式で求まる。
M0=(P1-P22)R-P21l3-Tq5・・・(19)
【0016】
また、車輪転倒の条件となるモーメントMは次式である。
M=S1R・・・(20)
従って、本発明による転倒モーメントM0がMより大となるPを求めればよい。
即ち、
M0≧M・・・(21)
となるPの値を数理計算で求めればよい。
【0017】
以上から、歯車系の動力伝達損失を無視すると、効率ηは下記の如くなる。
η=P/S1・・・(22)
【0018】
効率ηは車輪半径R、歯車比、歯数によって、変化するが、図9に示す如く、50%〜30%は確保できる。
【発明の効果】
【0019】
以上記載の如く請求項1の発明によれば、回転ハブがタイヤの回転で回されると、回転ハブ内部外周の内歯歯車が第1空転歯車を下方からタイヤと同一方向に回す。一方、回転ハブ中心部のフェースギヤは第1動力伝達軸のフェースギヤ、内歯歯車の両者をタイヤ回転と同方向に回すが、第2動力伝達軸のフェースギヤが中間大歯車のフェースギヤと噛合い、中間大歯車をタイヤ回転と逆方向に回す。この結果、第2空転歯車と噛合う中間大歯車外周の歯車は、中間大歯車が第2空転歯車の上方にあることから、第1空転歯車と同方向に回すことになる。さらに、第1空転歯車と第2空転歯車は同軸一体であり、かつ、(9)式に示す如く、内歯歯車が第1空転歯車を回す回転数と、中間大歯車が回す第2空転歯車の回転数が同じになるよう各歯車の歯数が設定されているため、空転歯車はタイヤ回転時も常に下方の一定位置に保持される。この空転歯車を回転自在に支持する軸をレバーに一体化し、レバーの中間部を車輪中心となる固定ハブの軸で軸支し、さらにこのレバーを固定ハブの穴から突出させれば、このレバーはテコのレバーとなる。従って、固定ハブ軸を押す力を一定とすると、突出レバー先端の牽引力は、レバーの長さを長くすればするほど、テコの原理で小さな力で車輪を回転させることができる。この現象は車輪走行時も継続して行われる事から、車両牽引力の軽減が達成できる。
【0020】
尚、この軽減の程度は、効率をη(η=(本発明による牽引力)/(現状の必要牽引力))とすると、ηは車輪半径R、歯車比、歯数の関数となり、その数値は図9に示す如くη=50%〜30%となる。これは50%〜30%の牽引力で現状の車両を牽引できることを表している。また、逆の言い方をすれば、現状と同じ牽引力で現状の2倍〜3倍の力を要する車両を牽引できることを意味する。
【0021】
これはまた、牽引駆動車の燃比が50%〜70%改善することに相当する。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、空転歯車がレバーから受ける作用力P2は第1空転歯車が内歯歯車に作用する力P21、第2空転歯車が中間大歯車に作用する力P22の2つの力に分けられる。この際、第1空転歯車の直径が第2空転歯車の直径より小さいことから、P22≦P21となる。この結果、大地が受ける反力、即ち大地と接するタイヤの受ける反力P21を大きくでき、走行時逆転倒モーメントとなるTq5を生む力P22を小さくする事ができる。従って、本発明の効果を最大限に発揮させることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、第2動力伝達軸のフェースギヤが中間大歯車から受ける力を最小にでき、第1動力伝達軸のフェースギヤが回転ハブに与えるモーメント、即ち、走行時タイヤに与え、動力損失となる逆転倒モーメントTq5を、最小にする事ができる。この結果、牽引力低減効果を大きくできる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、第1動力伝達軸の内歯歯車と第2動力伝達軸のピニオンを噛合せることにより、第1、第2動力伝達軸の回転方向を同一にでき、かつ、内歯歯車とピニオンの噛合せから、小スペースで大きな歯車比が確保できる。また、左右のフェースギヤ間にある第1、第2動力伝達軸機構を固定ハブ軸軸方向の一平面に設ける事が出来、組立精度が高く、コンパクトな機構を実現する事ができる。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、回転ハブを強固な固定ハブの左右の軸受で保持でき、タイヤ連結の安全性が向上するとともに、オイルシールの設置により、ハブ内機構の潤滑をオイルバス式とする事が出来、機構の潤滑のみならず、機構発熱の冷却効果も発揮できる。
【0026】
請求項6記載の発明によれば、本発明による牽引力軽減機構付き車輪を従来の車体に固定するだけでよく、アタッチメント式に容易に従来の車両を改造することができる。また、レバーとロッドの間にバネを設けることにより、1本のロッドで複数のレバーに同等の力を与える事が出来、牽引レバーの一括操作を可能とする事ができる。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、固定ハブ軸と車体との連結を、車体が前後に移動する直動軸受を介して行い、車輪の牽引レバーを車体本体にピン結合するだけで良く、牽引される全ての車両の車輪に容易に適用できる。例えば、手押し車、自転車、オートバイ、乗用車、トラック、バス、電車、トレーラ、特殊車両等適用範囲を極めて広くすることができる。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、交叉型フェースギヤの代わりに交叉型まがり歯かさ歯車を使用すれば、低騒音となり、かつ歯車の動力伝達効率向上が図れる。
【0029】
請求項9記載の発明によれば、特許文献3による車輪ハブに設ける遊星歯車式駆動動力軽減機構による駆動動力軽減効果を50%とし、本発明の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構による牽引力軽減効果を50%とすると、全体で、少なくとも従来の25%前後のエネルギーで車両が走行でき、省エネルギー効果を最大とする事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
車輪のハブを車輪と一体の回転ハブと車体に固定される固定ハブに分け、固定ハブで回転ハブを軸支し、両ハブの中に、メカニズムを内蔵させる。即ち、回転ハブに内歯歯車、フェースギヤを設け、さらに、下端に回転自在に空転歯車を軸支し、中間が固定ハブで軸支される牽引レバーを設ける。牽引レバーは固定ハブの穴から突出させ、外部からレバー操作可能とする。また、固定ハブ軸で軸支される中間大歯車を第2空転歯車に噛合せ、回転ハブの内歯歯車を第1空転歯車に噛合せる。第1、第2空転歯車は同軸一体で、回転ハブの内歯歯車で回される第1空転歯車と、中間大歯車で回される第2空転歯車の回転方向と回転数が同じになるよう、中間大歯車のフェースギヤと回転ハブのフェースギヤ間に第1、第2動力伝達軸を設ける。第1動力伝達軸は、固定ハブ軸で直角に保持し、一端のフェースギヤを回転ハブのフェースギヤに噛合せ、他端に内歯歯車を設ける。第2動力伝達軸は同様に、固定ハブ軸のブラケットで直角に保持し、一端のピニオンが第1動力伝達軸の内歯歯車と噛合い、他端のフェースギヤを中間大歯車に噛合せる。上記構造から、空転歯車はタイヤ回転時、下方の一定位置に保持されるため、空転歯車軸と固定ハブ軸で軸支されるレバーはテコのレバーとなり、テコの原理で、軽い力で車両を牽引できる。
【実施例1】
【0031】
図5は、本発明の1実施例を示す断面図、図6は本発明の全景図、図7は図5のA視図、図8は図5のB視図、図9は本発明の効果説明図である。
先ず構造を説明する。
9はタイヤ3と一体のリム5をフランジ9bのボス9aにボルト10で連結された回転ハブである。8は車体(図示せず)と一体となり、軸芯部8gの軸受18およびネジ部8hのナット17で回転ハブ9を回転自在、横移動不可に軸支し、軸芯部8fで第1動力伝達軸22を軸直角に軸受24、ナット23で軸支し、軸芯部8eの軸受19およびナット20で中間大歯車27を軸支し、軸芯部8dでカラー21を介して牽引レバー29を軸支する固定ハブである。また9dは、回転ハブ9cの内部外周に設けた内歯歯車である。また、回転ハブ9c部は、固定ハブ8c部で軸受14、オイルシール15を介して一体となる。8bは牽引レバー29を外部に出す穴で、12はハブ内のオイルが外に出ないようピン13でレバー29bと固定ハブ8cに固定してあるジャバラである。16は、オイルシール16bにより固定ハブ8gと回転ハブ9eの間からのオイル漏れを防止するカバーで、ボルト16aで回転ハブ9に一体となる。9fは回転ハブ9eに設けたフェースギヤで第1動力伝達軸22のフェースギヤ22bと噛合う。第1動力伝達軸の上部は内歯歯車22aを形成し、第2動力伝達軸23のピニオン23aと噛合う。第2動力伝達軸23は、固定ハブ8fとボルト26aで一体となるブラケット26に軸受25、ナット24aで回転自在に軸支されている。23dはフェースギヤで、中間大歯車のフェースギヤ27aに噛合っている。28は空転歯車で、内歯歯車9dと噛合う第1空転歯車、および中間大歯車27bと噛合う第2空転歯車で成っている。第1、第2空転歯車は同軸一体である。軸29cはレバー29と一体となり、軸受30、ナット31で空転歯車28を軸支する。11は潤滑油の給油口で、シールワッシャー付きボルトである。29eは、牽引レバー29bの牽引ピン穴である。
【0032】
次にこの動作を説明する。牽引レバーを引くと、タイヤは回転するが、空転歯車は、内歯歯車と中間大歯車により上下方向から同速度で回されるため、空転歯車のタイヤに対する相対位置は変化しない。従って、空転歯車はテコの支点として使用することができる。即ち、固定ハブに軸支されるレバーが空転歯車を軸支すると、レバーはテコとなり、レバーの上端を引くと、テコの原理で大きな力が固定ハブ中心軸を押すため、車体は小さな力で動くことになる。この結果、車両の牽引力を軽減する事ができる。
【実施例2】
【0033】
図10は、他の1実施例を示し、既存の自動車等車両にアタッチメント式に取付けられる本発明の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構を持つ、牽引車両の全景図で、図11は図10のC−C視図である。
40は牽引駆動車で、41は牽引駆動車輪、40cは牽引ピンである。42は牽引従動車で、43は牽引車輪、8cは牽引車輪の固定ハブ、8は牽引従動車42に一体となる固定ハブ軸である。42bは牽引従動車42に設けた牽引レバー29bおよび牽引ロッド47の案内空間である。47cは、一端が牽引レバー29bを押し、他端が牽引ロッド47のフランジ47bで圧縮される圧縮バネである。47aは、圧縮バネのストッパーである。45は、牽引ロッドの穴47dが牽引ピン40cに容易に入るように、ローラーで構成した牽引従動車42aの荷重支えである。
【0034】
上記構成から、牽引駆動車40が40a方向に動くと、牽引ロッド47が40b方向に引張られる。牽引レバー29bは僅かの変位で車輪43を動かす。この結果、牽引ロッドと牽引レバーをピンで結合すると、牽引ロッドの伸びや、組立寸法誤差により、1本の牽引レバーにのみ牽引力が加わり、他の牽引車輪は本機能を果たさない。本発明はこれを防止すべく、牽引ロッドと牽引レバーとの間に圧縮バネを設けてある。このバネにより、牽引ロッドの力は、牽引レバーの数だけ、ほぼ同等に分割され、全ての牽引車輪に本発明の機能を発揮させる事ができる。
また、牽引車輪は固定ハブ軸を車体に固定するだけでよく、アタッチメント式に容易に牽引車両を改造する事ができる。
【0035】
図12は、他の1実施例を示し、本発明の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構を持つ、牽引車両の全景図で、図12は図12のD−D視図である。
50は牽引駆動車、51は牽引駆動車輪で、50cは牽引ピンである。52は牽引従動車で、53は牽引車輪、8cは牽引車輪の固定ハブ、8は固定ハブ軸である。また、8jは固定ハブ軸8の両側にあり、車体前後方向に延びる角軸で、車体52c、52dの直動軸受52eにより、車体52に連結されている。29bは牽引レバーで、車体52の固定ピン52bにピン結合されている。
50cは車体52の穴52aに入り、車体52を牽引するピンである。
【0036】
上記構造から、固定ハブ軸8は車体重量を支持すると同時に、車体52に対して、前後動自由となり、車輪53の回転は車体52の前後動に追随する形で動作する。即ち、牽引駆動車50が50a方向に動くと、牽引従動車52はピン50cにより、50b方向に動く。一方、車輪53は、車体52に設けた直動軸受52eの働きで、初めは動かないが、車体固定ピン52bが動くと牽引レバー29bを引張り、この力が車輪53に作用して、車輪53が回転し、走行する事になる。
【0037】
上記から、直動軸受52eを設ける事により、牽引レバー29bに作用する50b方向の牽引力は、車体本体で出来る。この結果、牽引ピン50cは不要となり、図1に示すような通常の車両に、容易に本発明が適用できる。
【0038】
尚、図1の駆動車輪2を、特許文献3の車輪に設ける遊星歯車式駆動動力軽減機構付き車輪とし、従動車輪3を本発明の車輪に設けるテコ式牽引力軽減機構付き車輪とすれば、両者の効果が相乗的に働き、車両走行に要するエネルギーを極端に軽減する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来例の自動車外観図である。
【図2】従来例の車輪断面図である。
【図3】従来例の牽引力計算図である。
【図4】本発明を説明する基本概念図である。
【図5】本発明の1実施例を示す車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構の断面図である。
【図6】本発明の1実施例を示す全景図である。
【図7】図5のA視図である。
【図8】図5のB視図である。
【図9】本発明の効果説明図である。
【図10】本発明をアタッチメント式とした1実施例を示す全景図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【図12】本発明を全ての車両に適用可能とする、車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構を有する車両の1実施例を示す全景図である。
【図13】図12のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1:自動車 1a、1b:軸受 2:駆動車輪 3:従動車輪 4:軸 5:リム 6:ハブ 7:牽引レバー 8:固定ハブ 8j:角軸 9:回転ハブ 9f:フェースギヤ 11:シールワッシャー付きボルト 12:ジャバラ 14、18、19、24、25、30:軸受 15、16b:オイルシール 16:カバー 22:第1動力伝達軸 22a:内歯歯車 22b:フェースギヤ 23:第2動力伝達軸 23a:ピニオン 23d:フェースギヤ 26:ブラケット 27:中間大歯車 27a:フェースギヤ 27b:歯車 28:空転歯車 28a:第2空転歯車 28b:第1空転歯車 29:牽引レバー 40、50:牽引駆動車 40c、50c:牽引ピン 41、51:駆動車輪 42、52:牽引従動車 43、53:車輪 47:牽引ロッド 47c:圧縮バネ 52b:固定ピン 52e:直動軸受
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等車両の走行エネルギーを軽減する車輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車等車両は、駆動車輪が車体本体を介して直接従動車輪を牽引し、走行している。図1、図2、図3に従来技術による自動車を一例として挙げる。自動車1の駆動車輪2による牽引力は車体本体1で従動車輪3に伝達される。即ち、車体本体1に一体となる軸受1a、1bで車軸4を牽引し、この牽引力が車輪ハブ6、リブ5を介し、タイヤ3を回転させ、走行している。
【0003】
従って、各寸法諸元を図3の如くとし、輪重をW1、車輪半径をR、転がり摩擦係数をf、坂角度をαとすると、牽引力S1は下記となる。
S1=W1(sinα+(fcosα)/R)・・・(1)
従って、この式から分かるように、どこにも牽引力低減策が無いのが現状である。
尚、公知例調査の結果も特許文献1のパワートランスミッション及び動力源の組合体や特許文献2の遊星歯車式差動装置等が出願されているが、いずれも、現状の動力のハイブリット化あるいは多機能化が目的であり、根本的な牽引力そのものの軽減機構に関しては、見当たらない。
【特許文献1】特開平8―238945
【特許文献2】特開平5―187487
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、石油等の化石燃料の枯渇および地球温暖化等地球規模での環境問題に対応すべく、燃料電池車、太陽電池車が開発されている。一方、燃料電池、太陽電池とも現状の車両等の機構では牽引力が大きく、大掛かりな装置となり、高価で大衆化が困難な状況にある。
本発明は、かかる状況に鑑み、小型小容量の燃料電池、太陽電池で現状と同等の車両走行性能を発揮させる、新規な牽引力軽減機構を提供するものである。
また、本発明の更なる目的は、すでに世に出ている自動車等車両の牽引力を軽減し、化石燃料の枯渇および環境問題に対処できるアタッチメント式牽引力軽減機構を提供することにある。
また、本発明の更なる目的は、特許文献3の車輪ハブに設ける遊星歯車式駆動動力軽減機構を駆動車輪に設け、従動車輪に本発明による車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構を設けることにより、車両走行に要するエネルギーを従来の20〜30%とする省エネルギー機構を提供することにある。
【特許文献3】特願2004−268770
【課題を解決するための手段】
【0005】
図4に示す如く、回転する車輪3の中に、垂直に静止し、車輪中心軸Oで軸支されるレバー7を設ける。このレバーの下端aの位置が車輪走行時も常に図4に示す定位置にあるとすれば、レバー7はテコとなり、テコの原理で車軸Oを押し続けることができる。即ち、レバー上部bを押す力をF1とすると、新たな車輪転倒モーメントMT、従来の車輪転倒モーメントMRは、
MT=F1(R+l)・・・(2)
MR=F1R・・・(3)
となる。従って従来に比較してF1lだけ転倒モーメントを大きくすることができる。
【0006】
上記を達成するためには、2つの難問がある。1つは、レバーの下端を新たなエネルギーを付加せずに、如何にして走行中定位置に保ち、定位置に保つ反力を車体から切り離し、大地に作用させるか、即ち大地に接する車輪に作用させるか、である。2つは、車輪に作用する逆転倒モーメントを如何にして小さくし、テコの効果を最大とするか、である。
【0007】
本発明は上記難問を解決し、所期の目的を達成したものである。
本発明の動作原理を図5、図6、図7、図8に基づいて詳述する。図5は本発明の基本動作原理を説明する1実施例の断面図で、図6は全体説明図、図7、図8は図5のA視図、B視図である。
【0008】
初めに構造を概説する。
先ず、ハブを、タイヤ3と一体となり回転する回転ハブ9と、車体に固定される固定ハブ8に分け、固定ハブで回転ハブを支持し、軸受14、18で回転ハブを回転自在に保持する。回転ハブの内部外周には内歯歯車9dを設ける。一方、固定ハブ8eで軸支され、外周に歯車を持つ中間大歯車と内歯歯車9dの間に空転歯車28を設ける。空転歯車は、内歯歯車9dと噛合う第1空転歯車28bと中間大歯車27bと噛合う第2空転歯車で構成し、空転歯車28は、固定ハブ8dで軸支される牽引レバー29の軸29cで回転自在に保持する。また、回転ハブ9の中心部9eにフェースギヤ9fを設け、中間大歯車27の外周部平面にフェースギヤ27aを設ける。この両フェースギヤ間に、固定ハブ8f部で軸直角に軸支する第1動力伝達軸22、および固定ハブ8fと一体となるブラケット26で軸支される第2動力伝達軸23を設ける。第1動力伝達軸の1方は回転ハブのフェースギヤと噛合い、他方の内歯歯車22aは第2動力伝達軸のピニオン23aと噛合い、第2動力伝達軸他端23dは中間大歯車のフェースギヤ27aと噛合せる。また、牽引レバー29は固定ハブ8bの穴から上部に突出させる。
【0009】
次に動作の基本原理を説明する。
各歯車の歯数、各寸法諸元、回転方向、力、モーメントを図6、図7、図8に記載の記号の如くとすると、各歯車の歯数は、下記(A)、(B)の2条件を満足しなければならない。
【0010】
(A)中間大歯車27bで回される第2空転歯車28aの回転数n4=内歯歯車9dで回される第1空転歯車28bの回転数n4となる条件
中間大歯車27bで回される第2空転歯車28aの回転数n4
n1=Z1n0/Z2・・・(4)
n2=Z3n1/Z4・・・(5)
n3=Z5n2/Z6・・・(6)
n4=Z7n3/Z8・・・(7)
また、内歯歯車9dで回される第1空転歯車28bの回転数n4
n4=Z10n0/Z9・・・(8)
従って、(7)=(8)から、下記条件式が導かれる。
Z1Z3Z5Z7Z9=Z2Z4Z6Z8Z10・・・(9)
(B)歯車が互いに噛合う条件
Z10=Z7+Z8+Z9・・・(10)
【0011】
一方、テコの原理からP1、P2は下記となる。
P1=Pl0/l1・・・(11)
P2=Pl2/l1・・・(12)
【0012】
また、力の釣合いから、P21、P22は次式となる。
P21=Z8P2/(Z8+Z9)・・・(13)
P22=Z9P2/(Z8+Z9)・・・(14)
【0013】
また、各歯車のモジュールをmとすると、P3、P4、P5は下記で求まる。
P3=mZ7P22/(2r6)・・・(15)
P4=2r5P3/(mZ4)・・・(16)
P5=mZ3P4/(2r2)・・・(17)
【0014】
以上から、中間大歯車27をn3方向に回すために回転ハブ、即ちタイヤに働く逆転倒モーメントTq5は下記となる。
Tq5=P5r1・・・(18)
【0015】
以上の式から、反時計回りのモーメントを正、時計回りのモーメントを負とすると、テコのレバー29eを押す力Pが車輪に与えるモーメントの総和M0は次式で求まる。
M0=(P1-P22)R-P21l3-Tq5・・・(19)
【0016】
また、車輪転倒の条件となるモーメントMは次式である。
M=S1R・・・(20)
従って、本発明による転倒モーメントM0がMより大となるPを求めればよい。
即ち、
M0≧M・・・(21)
となるPの値を数理計算で求めればよい。
【0017】
以上から、歯車系の動力伝達損失を無視すると、効率ηは下記の如くなる。
η=P/S1・・・(22)
【0018】
効率ηは車輪半径R、歯車比、歯数によって、変化するが、図9に示す如く、50%〜30%は確保できる。
【発明の効果】
【0019】
以上記載の如く請求項1の発明によれば、回転ハブがタイヤの回転で回されると、回転ハブ内部外周の内歯歯車が第1空転歯車を下方からタイヤと同一方向に回す。一方、回転ハブ中心部のフェースギヤは第1動力伝達軸のフェースギヤ、内歯歯車の両者をタイヤ回転と同方向に回すが、第2動力伝達軸のフェースギヤが中間大歯車のフェースギヤと噛合い、中間大歯車をタイヤ回転と逆方向に回す。この結果、第2空転歯車と噛合う中間大歯車外周の歯車は、中間大歯車が第2空転歯車の上方にあることから、第1空転歯車と同方向に回すことになる。さらに、第1空転歯車と第2空転歯車は同軸一体であり、かつ、(9)式に示す如く、内歯歯車が第1空転歯車を回す回転数と、中間大歯車が回す第2空転歯車の回転数が同じになるよう各歯車の歯数が設定されているため、空転歯車はタイヤ回転時も常に下方の一定位置に保持される。この空転歯車を回転自在に支持する軸をレバーに一体化し、レバーの中間部を車輪中心となる固定ハブの軸で軸支し、さらにこのレバーを固定ハブの穴から突出させれば、このレバーはテコのレバーとなる。従って、固定ハブ軸を押す力を一定とすると、突出レバー先端の牽引力は、レバーの長さを長くすればするほど、テコの原理で小さな力で車輪を回転させることができる。この現象は車輪走行時も継続して行われる事から、車両牽引力の軽減が達成できる。
【0020】
尚、この軽減の程度は、効率をη(η=(本発明による牽引力)/(現状の必要牽引力))とすると、ηは車輪半径R、歯車比、歯数の関数となり、その数値は図9に示す如くη=50%〜30%となる。これは50%〜30%の牽引力で現状の車両を牽引できることを表している。また、逆の言い方をすれば、現状と同じ牽引力で現状の2倍〜3倍の力を要する車両を牽引できることを意味する。
【0021】
これはまた、牽引駆動車の燃比が50%〜70%改善することに相当する。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、空転歯車がレバーから受ける作用力P2は第1空転歯車が内歯歯車に作用する力P21、第2空転歯車が中間大歯車に作用する力P22の2つの力に分けられる。この際、第1空転歯車の直径が第2空転歯車の直径より小さいことから、P22≦P21となる。この結果、大地が受ける反力、即ち大地と接するタイヤの受ける反力P21を大きくでき、走行時逆転倒モーメントとなるTq5を生む力P22を小さくする事ができる。従って、本発明の効果を最大限に発揮させることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、第2動力伝達軸のフェースギヤが中間大歯車から受ける力を最小にでき、第1動力伝達軸のフェースギヤが回転ハブに与えるモーメント、即ち、走行時タイヤに与え、動力損失となる逆転倒モーメントTq5を、最小にする事ができる。この結果、牽引力低減効果を大きくできる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、第1動力伝達軸の内歯歯車と第2動力伝達軸のピニオンを噛合せることにより、第1、第2動力伝達軸の回転方向を同一にでき、かつ、内歯歯車とピニオンの噛合せから、小スペースで大きな歯車比が確保できる。また、左右のフェースギヤ間にある第1、第2動力伝達軸機構を固定ハブ軸軸方向の一平面に設ける事が出来、組立精度が高く、コンパクトな機構を実現する事ができる。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、回転ハブを強固な固定ハブの左右の軸受で保持でき、タイヤ連結の安全性が向上するとともに、オイルシールの設置により、ハブ内機構の潤滑をオイルバス式とする事が出来、機構の潤滑のみならず、機構発熱の冷却効果も発揮できる。
【0026】
請求項6記載の発明によれば、本発明による牽引力軽減機構付き車輪を従来の車体に固定するだけでよく、アタッチメント式に容易に従来の車両を改造することができる。また、レバーとロッドの間にバネを設けることにより、1本のロッドで複数のレバーに同等の力を与える事が出来、牽引レバーの一括操作を可能とする事ができる。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、固定ハブ軸と車体との連結を、車体が前後に移動する直動軸受を介して行い、車輪の牽引レバーを車体本体にピン結合するだけで良く、牽引される全ての車両の車輪に容易に適用できる。例えば、手押し車、自転車、オートバイ、乗用車、トラック、バス、電車、トレーラ、特殊車両等適用範囲を極めて広くすることができる。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、交叉型フェースギヤの代わりに交叉型まがり歯かさ歯車を使用すれば、低騒音となり、かつ歯車の動力伝達効率向上が図れる。
【0029】
請求項9記載の発明によれば、特許文献3による車輪ハブに設ける遊星歯車式駆動動力軽減機構による駆動動力軽減効果を50%とし、本発明の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構による牽引力軽減効果を50%とすると、全体で、少なくとも従来の25%前後のエネルギーで車両が走行でき、省エネルギー効果を最大とする事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
車輪のハブを車輪と一体の回転ハブと車体に固定される固定ハブに分け、固定ハブで回転ハブを軸支し、両ハブの中に、メカニズムを内蔵させる。即ち、回転ハブに内歯歯車、フェースギヤを設け、さらに、下端に回転自在に空転歯車を軸支し、中間が固定ハブで軸支される牽引レバーを設ける。牽引レバーは固定ハブの穴から突出させ、外部からレバー操作可能とする。また、固定ハブ軸で軸支される中間大歯車を第2空転歯車に噛合せ、回転ハブの内歯歯車を第1空転歯車に噛合せる。第1、第2空転歯車は同軸一体で、回転ハブの内歯歯車で回される第1空転歯車と、中間大歯車で回される第2空転歯車の回転方向と回転数が同じになるよう、中間大歯車のフェースギヤと回転ハブのフェースギヤ間に第1、第2動力伝達軸を設ける。第1動力伝達軸は、固定ハブ軸で直角に保持し、一端のフェースギヤを回転ハブのフェースギヤに噛合せ、他端に内歯歯車を設ける。第2動力伝達軸は同様に、固定ハブ軸のブラケットで直角に保持し、一端のピニオンが第1動力伝達軸の内歯歯車と噛合い、他端のフェースギヤを中間大歯車に噛合せる。上記構造から、空転歯車はタイヤ回転時、下方の一定位置に保持されるため、空転歯車軸と固定ハブ軸で軸支されるレバーはテコのレバーとなり、テコの原理で、軽い力で車両を牽引できる。
【実施例1】
【0031】
図5は、本発明の1実施例を示す断面図、図6は本発明の全景図、図7は図5のA視図、図8は図5のB視図、図9は本発明の効果説明図である。
先ず構造を説明する。
9はタイヤ3と一体のリム5をフランジ9bのボス9aにボルト10で連結された回転ハブである。8は車体(図示せず)と一体となり、軸芯部8gの軸受18およびネジ部8hのナット17で回転ハブ9を回転自在、横移動不可に軸支し、軸芯部8fで第1動力伝達軸22を軸直角に軸受24、ナット23で軸支し、軸芯部8eの軸受19およびナット20で中間大歯車27を軸支し、軸芯部8dでカラー21を介して牽引レバー29を軸支する固定ハブである。また9dは、回転ハブ9cの内部外周に設けた内歯歯車である。また、回転ハブ9c部は、固定ハブ8c部で軸受14、オイルシール15を介して一体となる。8bは牽引レバー29を外部に出す穴で、12はハブ内のオイルが外に出ないようピン13でレバー29bと固定ハブ8cに固定してあるジャバラである。16は、オイルシール16bにより固定ハブ8gと回転ハブ9eの間からのオイル漏れを防止するカバーで、ボルト16aで回転ハブ9に一体となる。9fは回転ハブ9eに設けたフェースギヤで第1動力伝達軸22のフェースギヤ22bと噛合う。第1動力伝達軸の上部は内歯歯車22aを形成し、第2動力伝達軸23のピニオン23aと噛合う。第2動力伝達軸23は、固定ハブ8fとボルト26aで一体となるブラケット26に軸受25、ナット24aで回転自在に軸支されている。23dはフェースギヤで、中間大歯車のフェースギヤ27aに噛合っている。28は空転歯車で、内歯歯車9dと噛合う第1空転歯車、および中間大歯車27bと噛合う第2空転歯車で成っている。第1、第2空転歯車は同軸一体である。軸29cはレバー29と一体となり、軸受30、ナット31で空転歯車28を軸支する。11は潤滑油の給油口で、シールワッシャー付きボルトである。29eは、牽引レバー29bの牽引ピン穴である。
【0032】
次にこの動作を説明する。牽引レバーを引くと、タイヤは回転するが、空転歯車は、内歯歯車と中間大歯車により上下方向から同速度で回されるため、空転歯車のタイヤに対する相対位置は変化しない。従って、空転歯車はテコの支点として使用することができる。即ち、固定ハブに軸支されるレバーが空転歯車を軸支すると、レバーはテコとなり、レバーの上端を引くと、テコの原理で大きな力が固定ハブ中心軸を押すため、車体は小さな力で動くことになる。この結果、車両の牽引力を軽減する事ができる。
【実施例2】
【0033】
図10は、他の1実施例を示し、既存の自動車等車両にアタッチメント式に取付けられる本発明の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構を持つ、牽引車両の全景図で、図11は図10のC−C視図である。
40は牽引駆動車で、41は牽引駆動車輪、40cは牽引ピンである。42は牽引従動車で、43は牽引車輪、8cは牽引車輪の固定ハブ、8は牽引従動車42に一体となる固定ハブ軸である。42bは牽引従動車42に設けた牽引レバー29bおよび牽引ロッド47の案内空間である。47cは、一端が牽引レバー29bを押し、他端が牽引ロッド47のフランジ47bで圧縮される圧縮バネである。47aは、圧縮バネのストッパーである。45は、牽引ロッドの穴47dが牽引ピン40cに容易に入るように、ローラーで構成した牽引従動車42aの荷重支えである。
【0034】
上記構成から、牽引駆動車40が40a方向に動くと、牽引ロッド47が40b方向に引張られる。牽引レバー29bは僅かの変位で車輪43を動かす。この結果、牽引ロッドと牽引レバーをピンで結合すると、牽引ロッドの伸びや、組立寸法誤差により、1本の牽引レバーにのみ牽引力が加わり、他の牽引車輪は本機能を果たさない。本発明はこれを防止すべく、牽引ロッドと牽引レバーとの間に圧縮バネを設けてある。このバネにより、牽引ロッドの力は、牽引レバーの数だけ、ほぼ同等に分割され、全ての牽引車輪に本発明の機能を発揮させる事ができる。
また、牽引車輪は固定ハブ軸を車体に固定するだけでよく、アタッチメント式に容易に牽引車両を改造する事ができる。
【0035】
図12は、他の1実施例を示し、本発明の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構を持つ、牽引車両の全景図で、図12は図12のD−D視図である。
50は牽引駆動車、51は牽引駆動車輪で、50cは牽引ピンである。52は牽引従動車で、53は牽引車輪、8cは牽引車輪の固定ハブ、8は固定ハブ軸である。また、8jは固定ハブ軸8の両側にあり、車体前後方向に延びる角軸で、車体52c、52dの直動軸受52eにより、車体52に連結されている。29bは牽引レバーで、車体52の固定ピン52bにピン結合されている。
50cは車体52の穴52aに入り、車体52を牽引するピンである。
【0036】
上記構造から、固定ハブ軸8は車体重量を支持すると同時に、車体52に対して、前後動自由となり、車輪53の回転は車体52の前後動に追随する形で動作する。即ち、牽引駆動車50が50a方向に動くと、牽引従動車52はピン50cにより、50b方向に動く。一方、車輪53は、車体52に設けた直動軸受52eの働きで、初めは動かないが、車体固定ピン52bが動くと牽引レバー29bを引張り、この力が車輪53に作用して、車輪53が回転し、走行する事になる。
【0037】
上記から、直動軸受52eを設ける事により、牽引レバー29bに作用する50b方向の牽引力は、車体本体で出来る。この結果、牽引ピン50cは不要となり、図1に示すような通常の車両に、容易に本発明が適用できる。
【0038】
尚、図1の駆動車輪2を、特許文献3の車輪に設ける遊星歯車式駆動動力軽減機構付き車輪とし、従動車輪3を本発明の車輪に設けるテコ式牽引力軽減機構付き車輪とすれば、両者の効果が相乗的に働き、車両走行に要するエネルギーを極端に軽減する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来例の自動車外観図である。
【図2】従来例の車輪断面図である。
【図3】従来例の牽引力計算図である。
【図4】本発明を説明する基本概念図である。
【図5】本発明の1実施例を示す車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構の断面図である。
【図6】本発明の1実施例を示す全景図である。
【図7】図5のA視図である。
【図8】図5のB視図である。
【図9】本発明の効果説明図である。
【図10】本発明をアタッチメント式とした1実施例を示す全景図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【図12】本発明を全ての車両に適用可能とする、車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構を有する車両の1実施例を示す全景図である。
【図13】図12のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1:自動車 1a、1b:軸受 2:駆動車輪 3:従動車輪 4:軸 5:リム 6:ハブ 7:牽引レバー 8:固定ハブ 8j:角軸 9:回転ハブ 9f:フェースギヤ 11:シールワッシャー付きボルト 12:ジャバラ 14、18、19、24、25、30:軸受 15、16b:オイルシール 16:カバー 22:第1動力伝達軸 22a:内歯歯車 22b:フェースギヤ 23:第2動力伝達軸 23a:ピニオン 23d:フェースギヤ 26:ブラケット 27:中間大歯車 27a:フェースギヤ 27b:歯車 28:空転歯車 28a:第2空転歯車 28b:第1空転歯車 29:牽引レバー 40、50:牽引駆動車 40c、50c:牽引ピン 41、51:駆動車輪 42、52:牽引従動車 43、53:車輪 47:牽引ロッド 47c:圧縮バネ 52b:固定ピン 52e:直動軸受
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車等走行時牽引される車輪のハブ6において、ハブを回転ハブ9と固定ハブ8に分け、回転ハブ中心を固定ハブ8gの軸受18で軸支し、外周部を固定ハブ8cの軸受14で回転自在とし、回転ハブ9の内部外周に内歯歯車9dを設け、かつ回転ハブの中心部9eに設けたフェースギヤ
9fを、固定ハブ8fに軸直角に回転自在とした第1動力伝達軸22下端のフェースギヤ22bに噛合せ、さらに上端に設けた内歯歯車22aを、固定ハブ8fと一体のブラケット26に軸支される第2動力伝達軸23下端のピニオン23aに噛合せ、第2動力伝達軸上端のフェースギヤ23dを固定ハブ8eに回転自在に軸支される中間大歯車27のフェースギヤ27aに噛合せ、さらに中間大歯車の歯車27bを、固定ハブ8dで軸支される牽引レバー29の軸29c上で回転自在となる空転歯車28の第2空転歯車28aに噛合せ、さらに空転歯車の第1空転歯車28bを内歯歯車9dに噛合せ、固定ハブの穴8bから突出する牽引レバー29bを牽引できるようにしたことを特徴とする車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項2】
前記空転歯車を、回転ハブの内歯歯車と噛合う第1空転歯車と、中間大歯車と噛合う第2空転歯車で構成し、第1空転歯車を第2空転歯車より小さくする事を特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項3】
前記回転ハブのフェースギヤ直径を、中間大歯車のフェースギヤ直径より小さくすることを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項4】
前記回転ハブのフェースギヤと中間大歯車のフェースギヤ間に、第1動力伝達軸と第2動力伝達軸を設け、第1動力伝達軸又は第2動力伝達軸のどちらか一方に内歯歯車を設け、この内歯歯車に第1または第2動力伝達軸のピニオンを噛合せることを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項5】
前記回転ハブと固定ハブを、左右の軸受を介して連結し、連結部にオイルシールを設けたことを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項6】
前記固定ハブ車軸を車体本体に固定し、右側および左側に車輪牽引レバーを一括操作する牽引ロッドを設け、牽引ロッドと車輪牽引レバーを、圧縮ばねを介して連結し、両ロッドを車体前方で一体とし、牽引車両の連結ピンに結合する事を特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項7】
前記固定ハブ車軸を車体本体の、前後方向移動可とする直動軸受で軸支し、車輪牽引レバーを車体本体にピン結合することを特徴とする請求項6記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項8】
前記回転ハブの交叉型フェースギヤ、中間大歯車の交叉型フェースギヤをそれぞれ、交叉型まが
り歯かさ歯車とすることを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項9】
車輪ハブに設ける遊星歯車式駆動動力軽減機構付き駆動車輪の牽引力を小さくすることを目的とした、従動車輪に設ける請求項6記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項1】
自動車等走行時牽引される車輪のハブ6において、ハブを回転ハブ9と固定ハブ8に分け、回転ハブ中心を固定ハブ8gの軸受18で軸支し、外周部を固定ハブ8cの軸受14で回転自在とし、回転ハブ9の内部外周に内歯歯車9dを設け、かつ回転ハブの中心部9eに設けたフェースギヤ
9fを、固定ハブ8fに軸直角に回転自在とした第1動力伝達軸22下端のフェースギヤ22bに噛合せ、さらに上端に設けた内歯歯車22aを、固定ハブ8fと一体のブラケット26に軸支される第2動力伝達軸23下端のピニオン23aに噛合せ、第2動力伝達軸上端のフェースギヤ23dを固定ハブ8eに回転自在に軸支される中間大歯車27のフェースギヤ27aに噛合せ、さらに中間大歯車の歯車27bを、固定ハブ8dで軸支される牽引レバー29の軸29c上で回転自在となる空転歯車28の第2空転歯車28aに噛合せ、さらに空転歯車の第1空転歯車28bを内歯歯車9dに噛合せ、固定ハブの穴8bから突出する牽引レバー29bを牽引できるようにしたことを特徴とする車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項2】
前記空転歯車を、回転ハブの内歯歯車と噛合う第1空転歯車と、中間大歯車と噛合う第2空転歯車で構成し、第1空転歯車を第2空転歯車より小さくする事を特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項3】
前記回転ハブのフェースギヤ直径を、中間大歯車のフェースギヤ直径より小さくすることを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項4】
前記回転ハブのフェースギヤと中間大歯車のフェースギヤ間に、第1動力伝達軸と第2動力伝達軸を設け、第1動力伝達軸又は第2動力伝達軸のどちらか一方に内歯歯車を設け、この内歯歯車に第1または第2動力伝達軸のピニオンを噛合せることを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項5】
前記回転ハブと固定ハブを、左右の軸受を介して連結し、連結部にオイルシールを設けたことを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項6】
前記固定ハブ車軸を車体本体に固定し、右側および左側に車輪牽引レバーを一括操作する牽引ロッドを設け、牽引ロッドと車輪牽引レバーを、圧縮ばねを介して連結し、両ロッドを車体前方で一体とし、牽引車両の連結ピンに結合する事を特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項7】
前記固定ハブ車軸を車体本体の、前後方向移動可とする直動軸受で軸支し、車輪牽引レバーを車体本体にピン結合することを特徴とする請求項6記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項8】
前記回転ハブの交叉型フェースギヤ、中間大歯車の交叉型フェースギヤをそれぞれ、交叉型まが
り歯かさ歯車とすることを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【請求項9】
車輪ハブに設ける遊星歯車式駆動動力軽減機構付き駆動車輪の牽引力を小さくすることを目的とした、従動車輪に設ける請求項6記載の車輪ハブに設けるテコ式牽引力軽減機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−111029(P2006−111029A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297109(P2004−297109)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(500206722)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(500206722)
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