説明

軌道異常検出システム

【課題】軌道の異常を適確に検出できる軌道異常検出システムを提供すること。
【解決手段】軌道4における特定軌道部分4aの変形の有無を検出する変形検出手段Dが、特定軌道部分4aの横脇において長手方向に沿う姿勢で配置されて、かつ、一端部12aが軌道4に固定され他端部12bが軌道4に対して相対移動自在に設けられた被操作体12と、特定軌道部分4aの中間箇所9に設けられ、特定軌道部分4aの変形に伴って被操作体12の一端部12aと他端部12bとの間において被操作体12を変形操作してその他端部12bを特定軌道部分4bの変形前に位置する初期位置から移動させる操作体11と、被操作体12の他端部12aが初期位置から移動したことを検出する検出手段16とを備えて構成されている軌道異常検出システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の走行を案内する軌道と、前記軌道における特定軌道部分の変形の有無を検出する変形検出手段とを備えた軌道異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記軌道異常検出システムは、軌道における異常検出対象として設定された特定軌道部分が地震などにより変形して移動体が正常に走行ない状態を異常として検出するものである。上記軌道異常検出システムの従来例として、特定軌道部分の変形を検出する変形検出手段が、特定軌道部分の両端部に投光体及び受光体を備えて構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
従来のものでは、投光体から軌道の長手方向に沿う検出光を照射して、受光体が検出光を受光しているか否かに基づき、軌道の正常・異常を判別している。すなわち、地震などにより軌道における特定軌道部分が変形して、投光体から照射される検出光の光軸のズレや受光体の設置角度のズレが生じることで、受光体は検出光を受光できなくなる。そのため、受光体が検出光受光しているか否かに基づき特定軌道部分の異常を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−69212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の軌道異常検出システムの構成では、特定軌道部分の中間箇所だけが変形して投光体及び受光体が取り付けられている両端部に変形が及ばない場合は、特定軌道部分の中間箇所が変形しているにも拘らず、投光体が照射した検出光が受光体にて受光されてしまい、特定軌道部分の変形を検出できない。このように、従来の軌道異常検出システムの構成では、特定軌道部分の異常を適確に検出できないおそれがある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、軌道の異常を適確に検出できる軌道異常検出システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る軌道異常検出システム第1特徴構成は、移動体の走行を案内する軌道と、前記軌道における特定軌道部分の変形の有無を検出する変形検出手段とを備えた軌道異常検出システムにおいて、
前記変形検出手段が、前記特定軌道部分の横脇において長手方向に沿う姿勢で配置されて、一端部が前記特定軌道部分の端部の位置に対して位置固定状態でかつ他端部が前記軌道に対して相対移動自在に設けられた被操作体と、前記特定軌道部分の中間箇所に設けられ、前記特定軌道部分の変形に伴って前記被操作体の一端部と他端部との間において前記被操作体を変形操作してその他端部を前記特定軌道部分の変形前に位置する初期位置から移動させる操作体と、前記被操作体の他端部が前記初期位置から移動したことを検出する検出手段とを備えて構成されている点にある。
【0007】
本特徴構成によれば、被操作体は、一端部が特定軌道部分の端部の位置に対して位置固定状態で設けられているが他端部は軌道に対して相対移動自在に設けられているので、例えば、特定軌道部分の中間箇所に変形が生じた場合には、特定軌道部分の中間箇所に設けられた操作体が軌道の変形に伴って位置が変化することで、操作体により被操作体が変形操作される。これにより、一端部が固定されている被操作体は変形し、他端部は特定軌道部分が変形する前に位置していた初期位置から移動する。被操作体の他端部が初期位置から移動すると、検出手段がこれを検出することになる。このように、特定軌道部分に変形が生じると、被操作体の他端部が初期位置から移動するので、その移動を検出手段にて検出することで、軌道の異常を検出することができる。
したがって、異常検出対象として設定された特定軌道部分において、例えば、中間箇所だけに変形が生じた場合でも、特定軌道部分の変形が被操作体の他端部の位置の変化として現れるので、軌道の異常として検出できる。
以上のように、本特徴構成によれば、軌道の異常を適確に検出できる軌道異常検出システムを提供するに至った。
【0008】
本発明に係る軌道異常検出システムの第2特徴構成は、前記被操作体は、前記操作体に対して前記軌道の長手方向に沿ってスライド移動自在に貫通している点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、被操作体は、操作体に貫通しているので、軌道が変形したときに被操作体が操作体から離れてしまって操作体が被操作体を変形操作できない事態の発生を防止できる。また、被操作体は、操作体に対して軌道の長手方向に沿ってスライド移動自在であるので、操作体の位置が変化した場合に操作体と被操作体が相対移動することで、被操作体が無理に引っ張られて破損する等のトラブルを防止できる。
また、中間箇所で軌道が分断され軌道長手方向に離間する形態の構造上の変化が生じた場合は、上述した従来の構成では、検出光の光軸がズレない限り投光体が照射した検出光が受光体にて受光されてしまい、軌道の構造上の変化を検出できない。
その点、本特徴構成によれば、特定軌道部分の中間箇所で軌道の分断が発生し軌道長手方向に離間した場合には、軌道の長手方向に沿ってスライド移動自在に操作体に貫通している被操作体の全体が、一端部側にスライド移動操作される。これにより、被操作体の他端部は、軌道長手方向に移動する。したがって、異常検出対象として設定された特定軌道部分において、例えば、特定軌道部分の中間箇所で軌道の分断が発生し軌道長手方向に離間した場合でも、特定軌道部分の構造上の変化が被操作体の他端部の位置の変化として現れるので、その移動を検出手段にて検出することで、軌道の異常として検出できる。
このように、軌道の変形や分断といった構造上の変化を被操作体の他端部の初期位置からの変化として検出することで、軌道の異常を適確に検出できる。
【0010】
本発明に係る軌道異常検出システムの第3特徴構成は、前記特定軌道部分は、前記軌道の長手方向に沿って並べて配置された複数の分割軌道部分と、これら複数の分割軌道部分のうち並び方向で両端に位置するものに隣接する一対の隣接軌道部分とで構成され、前記複数の分割軌道部分は、前記隣接軌道部分との間及び前記軌道の長手方向で隣接する他の分割軌道部分との間で間隙を形成する状態で配置され、かつ、前記軌道の長手方向にスライド自在に設けられ、前記操作体が、前記複数の分割軌道部分の夫々を前記中間箇所として、前記複数の分割軌道部分に各別に設けられている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、一対の隣接軌道部分の間に複数の分割軌道部分が軌道の長手方向に沿って並ぶ状態でかつスライド自在に配置されることになるが、複数の分割軌道部分の相互及び分割軌道部分と隣接軌道部分との間には間隙が形成されているので、複数の分割軌道部分は、最大で間隙の長さの和に相当する距離だけ軌道の長手方向に沿ってスライド移動できる。したがって、例えば、隣接する異なる建屋に亘って軌道を設ける場合などは、特定軌道部分が建屋の境界部に位置するように軌道を設けることで、地震により建屋が互いに接近離間移動しても、特定軌道部分における分割軌道部分がスライド移動するので、建屋の移動をある程度許容することができる。したがって、軌道の変形を極力防止できる。
そして、軌道が設けられる箇所が地震により大きく揺れた場合に、複数の分割軌道部分のうち一つでも軌道の長手方向に沿う姿勢から変化して特定軌道部分が変形したときには上述の通り、軌道の変形異常として検出できる。
【0012】
本発明に係る軌道異常検出システムの第4特徴構成は、前記被操作体は、縦向きに配置された板状部材にて構成され、かつ、前記特定軌道部分の非変形状態において前記板状部材の両側面が前記複数の操作体に接触しない状態で前記複数の操作体に貫通している点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、被操作体を縦向き配置の板状部材にて構成することで、被操作体は水平方向に変形し易くなる。また、被操作体は、軌道の長手方向に並ぶ複数の操作体に接触しない状態で貫通しているため、複数の操作体のうち何れかの操作体が水平方向に位置が変形すると、他の操作体との間での摺動抵抗が小さい状態で長手方向にスライド移動できる。このため、被操作体は、操作体の水平方向の位置変化に追従した変形を得やすい。したがって、地震の横揺れにより、操作体が水平方向に位置変化した場合に、被操作体の他端部が初期位置から適確に変化することになり、軌道の変形を適確に検出できる。
【0014】
本発明に係る軌道異常検出システムの第5特徴構成は、前記被操作体の他端部が前記初期位置から移動したことを前記検出手段が設定時間以上連続して検出した場合に、前記特定軌道部分が変形したと判別する判別手段が設けられている点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、地震による揺れが発生している間に、被操作体の他端部が初期位置から移動したことが設定時間未満の短時間だけ断続的に検出手段にて検出されただけでは、特定軌道部分が変形したと判別されない。地震による揺れが発生している間又は揺れが収まった後に、被操作体の他端部が初期位置から移動したことが検出手段により設定時間以上連続して検出された場合には、特定軌道部分が変形したと判別する。したがって、地震による揺れが発生しているときの短時間の検出情報により特定軌道部分が変形した異常が発生したとする誤検出を防止することができる。
【0016】
本発明に係る軌道異常検出システムの第6特徴構成は、前記被操作体の他端部に、前記軌道の長手方向に交差する向きの光軸の検出光を通過させる通過部が形成され、前記検出手段は、前記被操作体の変形状態において前記被操作体にて遮蔽され、かつ、前記被操作体の非変形状態において前記通過部を通過する検出光を検出する光センサにて構成されている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、被操作体の他端部が初期位置から移動したことを光センサのオンオフ情報により検出すればよく、機械的なスイッチや画像認識などを用いた他の構成に比べて比較的構成しやすい。このように、本特徴構成によれば、軌道異常検出システムの好適な実施形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る軌道異常検出システムの概略図
【図2】特定軌道部分の平面図
【図3】図1におけるIII−III断面図
【図4】図1におけるIV−IV断面図
【図5】図1におけるV−V断面図
【図6】台車下部の拡大図
【図7】ステンレスシートの両端部拡大図
【図8】レールチェック処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る軌道異常検出システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、第1建屋1と第2建屋2とが隣接して設けられている。移動体としての物品搬送用の搬送台車3は、二棟の建屋の床面に敷設された一対の軌道4に案内されて走行自在に設けられている。図示は省略するが、搬送台車3は、チェーントランサ等で構成した物品移載装置を備えており、第1建屋1内及び第2建屋2内に複数箇所設定された搬送ステーション間で物品を搬送する。
【0020】
搬送台車3は、走行台車部3bに設けられた走行用モータ5、これにより回転駆動される一つの駆動輪6d及び3つの従動輪6fからなる4つの走行車輪6、地上側コントローラH1との間で運転情報などを無線通信する台車通信装置7、地上側コントローラH1からの運転指令に基づく走行用モータ5の制御や物品移載装置の制御を行う台車コントローラH2などを備えている。
【0021】
また、図6にも示すように、搬送台車3の走行台車部3bには、一対の軌道4の夫々の両横側面に当接して、走行経路幅方向で搬送台車3の走行位置を位置決めするガイドローラ6gを、各走行車輪6当り4個ずつ備えている。搬送台車3には、軌道4に沿って設けられた給電レール18に摺接する集電ブラシを備えた集電装置19が設けられており、地上側の電源装置(図示せず)から動作用の電力の供給を受けることができるようになっている。
【0022】
図1及び図2に示すように、一対の軌道4における異常検出対象として設定された特定軌道部分4aの一方の軌道4の横脇には、軌道4における特定軌道部分4aの変形の有無を検出する変形検出手段Dが設けられている。変形検出手段Dにおける光センサ16のオンオフ情報は、第1建屋の床面に設置されたセンサ信号送信用通信装置17により、運転コントローラH2に無線通信される。なお、運転コントローラH2は、センサ信号送信用通信装置17と同じ建屋である第1建屋1に設置することが通信の信頼性確保の点から好ましい。
【0023】
図2に示すように、特定軌道部分4aは、軌道4の長手方向に沿って並べて配置された複数の分割軌道部分9と、これら複数の分割軌道部分9のうち並び方向で両端に位置する2つの分割軌道部分9(第1建屋1に設置されたもののうち図2で紙面左側に位置する分割軌道部分9a及び第2建屋2に設置された分割軌道部分9c)に隣接する一対の隣接軌道部分8(第1建屋1に位置する第1建屋側隣接軌道部分8a及び第2建屋2に位置する第2建屋側隣接軌道部分8b)とで構成され、複数の分割軌道部分9は、隣接軌道部分8との間及び軌道4の長手方向で隣接する他の分割軌道部分9との間で間隙Gを形成する状態で配置され、かつ、軌道4の長手方向にスライド自在に設けられている。なお、本実施形態では、間隙Gは5mmとしている。
【0024】
図4及び図6に示すように、分割軌道部分9は、経路幅方向で間隔を隔てて設置された一対のレール部材23を経路幅方向に沿う連結部材24にて連結して構成されている。レール部材23の両端面がそれぞれレール横断面に対して所定角度(図では45°)傾斜する互いに平行で、隣接軌道部分8や隣接する分割軌道部分9におけるレール部材23の端面に平行な鉛直面に形成されている。そして、一対のレール部材23の下部には複数個のスライドブロック21が長手方向に分散配置された状態(図1参照)で固定されており、第1建屋1の床面及び第2建屋2の床面の夫々に敷設されたガイドレール22の上部に前記スライドブロック21が摺動自在に係合している。ちなみに、第1建屋1側のガイドレール22は、第1建屋1側に配設された分割軌道部分9a及び9bに共通となっている(図1参照)。
【0025】
ガイドレール22上をスライド移動する分割軌道部分9のスライド移動範囲を規制する移動規制部20が分割軌道部分9の連結部材24に設けられている。移動規制部20は、長手方向に設定幅の上向きの開口を有する断面コの字状部材20aと下方に折り曲げ加工された係合部が形成されたフック部材20bとが、互いに係合する状態で隣接する分割軌道部分9の連結部材24の夫々に接続されている。移動規制部20により、隣接する分割軌道部分9の接近方向と離間方向の夫々についての相対スライド量が間隙Gと同じ5mmまでに規制されており、一の分割軌道部分9がスライド移動して、当該分割軌道部分9のレール部材23が隣接する分割軌道部分9のレール部材23と当接した後は、移動規制部20により相対移動が規制された状態で両者が一体となってスライドするようになっている。複数の分割軌道部分9の最大スライド量の合計である限界スライド量は、本実施形態では、接近方向・離間方向の夫々について5mm×4で20mmとなっている。
【0026】
図1並びに図4及び図6に示すように、第1建屋1に位置する第1建屋側隣接軌道部分8aは、第1建屋1の床面に設けられた取付台10にて位置固定状態で支持されている。第2建屋2に位置する第2建屋側隣接軌道部分8bについても同様である。
【0027】
図1及び図2に示すように、変形検出手段Dは、軌道4の長手方向に沿う姿勢で一端部12aが軌道4のうち第1建屋側隣接軌道部分8aのレール部材23にボルト固定され(図3参照)、他端部12bが軌道4に対して相対移動自在に設けられた被操作体としての長尺直線状のステンレスシート12と、特定軌道部分4aの中間箇所、つまり、特定軌道部分4aの長手方向でステンレスシート12の一端部12aと他端部12bとの間に位置する箇所に設けられ、特定軌道部分4aの変形に伴ってステンレスシート12の一端部12aと他端部12bとの間において直線状のステンレスシート12を変形操作してその他端部12bを特定軌道部分4aの変形前に位置する初期位置から移動させる操作体としての支持ブラケット11と、ステンレスシート12の他端部12aが初期位置から移動したことを検出する検出手段としての光センサ16とを備えて構成されている。
【0028】
図4にも示すように、支持ブラケット11は、分割軌道部分9の夫々を中間箇所として複数個設けられており、分割軌道部分9の横脇において、直線状のステンレスシート12が貫通する内筒の長手方向が軌道4の長手方向に沿う姿勢となるように分割軌道部分9のレール部材23にボルト固定されている。図5にも示すように、ステンレスシート12の他端部12bは、第2建屋側隣接軌道部分8bのレール部材23にボルト固定された端部支持ブラケット11Tにて支持されている。また、ステンレスシート12は、面方向が縦向きになる姿勢にて配置されている。つまり、本実施形態では、被操作体が縦向きに配置された板状部材にて構成されている。
【0029】
図4に示すように、特定軌道部分4aの非変形状態においてステンレスシート12の両側面12sが複数の支持ブラケット11の側面部11sに接触しない状態で複数の支持ブラケット11に対して軌道4の長手方向に沿ってスライド移動自在に貫通している。支持ブラケット11は、ステンレスシート12の下端部を摺動自在に載置支持しており、これによりステンレスシート12は支持ブラケット11に対して軌道4の長手方向でスライド自在となっている。また、ステンレスシート12が支持ブラケット11を貫通しているため、地震による揺れが発生しても、ステンレスシート12と支持ブラケット11との係合が外れないようになっている。
【0030】
図5及び図7に示すように、ステンレスシート12の他端部12bには、軌道4の長手方向に交差する向きの光軸となるように設置された光センサ16の検出光を通過させる通過部としての丸穴13が形成されている。端部支持ブラケット11Tの両側面には、光センサ16の光軸を通過させるブラケット側通過孔14が同じく丸穴にて形成されている。ステンレスシート12に形成された丸穴13は、光センサ16の検出光の有効直径より大きく、ブラケット側通過孔14の直径は、ステンレスシート12の丸穴13よりさらに大きくしている。端部支持ブラケット11Tに関して光センサ16と反対側の近接する箇所には、反射板15が設けられている。ステンレスシート12の一端部12aには、取付位置調整用の長穴25が形成されており、複数の分割軌道部分9が、全ての間隙Gが適正に形成される配置状態となっているときに、図7においてXで示す位置に光センサ16の光軸が通過するように直線状のステンレスシート12の取付位置が調整されている。
【0031】
これにより、地震による揺れが発生して、第1建屋1と第2建屋2とが、接近又は離間した場合に、ステンレスシート12の他端部12bが押し操作又は引き操作されて光センサ16の検出光がステンレスシート12にて遮蔽されて光センサ16がオン状態からオフ状態に切り換わるようになっている。
【0032】
地震による揺れが大きく、第1建屋1と第2建屋2とが、複数の分割軌道部分9の最大限界スライド量を超えて接近離間するような揺れが発生した場合には、第1建屋1と第2建屋2とが複数の分割軌道部分9の限界スライド量を超えて接近したときに、特定軌道部分4aの何れかの箇所で折れ曲がるような変形が生じる。このような特定軌道部分4aの変形が生じると、揺れが収まった後に第1建屋側隣接軌道部分8aと第2建屋側隣接軌道部分8bとが地震発生前の位置関係に戻ったとしても、特定軌道部分4aの中間箇所の変形していることから、ステンレスシート12の一部は変形しており、ステンレスシート12の他端部12bが端部支持ブラケット11Tから軌道4の長手方向で移動して地震発生前とは異なる位置に位置している。
【0033】
したがって、地震により特定軌道部分4aの何れかの箇所で折れ曲がるような変形が生じた後は、ステンレスシート12にて光センサ16の検出光が遮蔽された状態となり、光センサ16はオフ状態に維持される。したがって、光センサ16の検出状態を確認することで、特定軌道部分4aが変形した状態を検出することができる。このように、本実施形態では、検出手段が、ステンレスシート12の変形状態においてステンレスシート12にて遮蔽され、かつ、ステンレスシート12の非変形状態において名が丸孔13を通過する検出光を検出する光センサ16にて構成されている。
【0034】
また、第1建屋1と第2建屋2とが複数の分割軌道部分9の限界スライド量を超えて離間したときには、移動規制部20が破壊される等により、地震の揺れが収まった後も特定軌道部分4aの構造は元の状態には戻らず、ステンレスシート12の他端部12bが端部支持ブラケット11Tから軌道4の長手方向で移動して地震発生前とは異なる位置に位置している。したがって、光センサ16の検出状態を確認することで、特定軌道部分4aの構造が変化した状態を検出することができる。
【0035】
光センサ16の検出情報は、センサ信号送信用通信装置17にて定期的に運転コントローラH1に送信されている。運転コントローラH1は、光センサ16がオン状態からオフ状態に切り換わった場合には、非常停止処理を実行する。非常停止処理では、運転指令の送信を停止して、搬送台車3の運転を停止し、走行中の搬送台車3があれば、走行中の搬送台車3に対して非常停止指令を指令して搬送台車3を走行停止させる。
【0036】
運転コントローラH1には、地震の発生を検出する地震検出手段Wの検出情報も入力されている。運転コントローラH1は、地震検出手段Wから地震発生情報(予報も含む)を受信した場合にも、上記非常停止処理を実行する。地震検出手段Wは、感震計を用いて構成してもよいし、地震動予報業務許可事業者がインターネットにより配信する緊急地震速報を受信自在な緊急地震速報受信端末を用いて構成してもよい。
【0037】
このように、運転コントローラH1は、軌道異常検出システムと地震検出システムとの双方の検出情報をトリガとして非常停止処理を実行することで、地震の揺れによる搬送台車3の事故を極力防止している。なお、運転コントローラH1は、地震検出手段Wから地震発生情報を受信することなく、光センサ16がオン状態からオフ状態に検出状態が切り換わった場合には、地震による揺れがないにも拘らず光センサ16の検出状態が切り換わったとして、システム異常が発生したと判別し、システム異常情報を作業者等に通報する。
【0038】
地震の揺れにより特定軌道部分4aの構造が変化すると、特定軌道部分4aの補修が必要であり、また、大きな揺れの地震の場合、軌道4以外の他の異常も問題となるので、搬送台車3の運転を即座に再開させることはできない。しかしながら、地震の揺れが微弱であった場合(例えば、震度0.1〜1程度)は、第1建屋1と第2建屋2とが複数の分割軌道部分9の限界スライド量超えない範囲でしか接近離間しないため、複数の分割軌道部分9の夫々が最大スライド量以内でスライドすることで、第1建屋1と第2建屋2とが接近離間することによる特定軌道部分4aの変形や分断などの構造上の変化は発生しない。そのため、軌道4に異常が発生するおそれは殆どなく、また、軽微な揺れであればその他の設備に異常が発生するおそれも少ない。そこで、運転コントローラH1は、光センサ16の検出状態がオン状態からオフ状態に切り換わることがあっても、設定時間T以上連続してオフ状態となっていない限り、軌道4における特定軌道部分4aに構造上の変化があったとは判別せず、極力早期に搬送台車3の運転を再開させる。
【0039】
このための構成として、運転コントローラH1は、ステンレスシート12の他端部12aが初期位置から移動したことを光センサ16が設定時間T以上連続して検出した場合に、特定軌道部分4aが変形したと判別する判別手段P1をソフトウェア形式で備えている。具体手には、運転コントローラH1は、レールチェック処理プログラムを実行することで判別手段P1の機能を実現している。以下、運転コントローラH1が実行するレールチェック処理の内容について図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0040】
図8に示すように、運転コントローラH1は、レールチェック処理を周期的(例えば、1秒毎)に実行することで、光センサ16の検出状態がオン状態からオフ状態に切り換わったどうかを常時監視している(ステップ#1)。光センサ16の検出状態がオフ状態に切り換わると、設定時間Tを計時するためのタイマをスタートさせる(ステップ#2)。そして、再び光センサ16がオン状態に切り換わるまでタイマによる計時を継続する(ステップ#3〜#4)。タイマが設定時間T(例えば30秒)をカウントアップするまでに光センサ16がオン状態に戻るとタイマのカウント値をリセットする(ステップ#5)。光センサ16がオフ状態のままタイマが設定時間Tをカウントアップしたら、軌道4に構造上の異常が発生したとして、ステップ#6のレール異常判定処理が実行される。レール異常判定処理では、例えば、軌道4の異常発生を通報する処理や搬送台車3の運転再開を禁止する禁止情報を生成する処理などを行う。
【0041】
このように、本実施形態の軌道異常検出システムによれば、軌道4の変形や分断といった構造上の変化をステンレスシート12の他端部12aの初期位置からの変化として検出することで、軌道4の異常を適確に検出でき、地震による揺れが軌道4の異常に至らない程度の微弱な揺れであった場合は、その揺れによりステンレスシート12の他端部12aの位置が変化しても、軌道4の異常とは判別しないので、極力早期に運転を再開させることが可能となる。
【0042】
〔別の実施形態〕
以上、発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。以下、本発明の別実施形態を例示する。
【0043】
(1)上記実施形態では、検出手段が光センサ16にて構成されたものを例示したが、これに限らず、検出手段がリミットスイッチなど他の形態のセンサにて構成されたものであってもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、軌道における特定軌道部分が複数の分割軌道部分を備えて構成されたものを例示したが、特定軌道部分が長手方向に連続した軌道の一部分であってもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、被操作体の他端部に形成される通過部が丸穴13で構成されたものを例示したが、通過部としては、他の形状の穴であってもよく、また穴状に形成しなくとも切り欠き状に形成してもよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、被操作体の一端部が隣接軌道部分に支持されたものを例示したが、被操作体の一端部が隣接軌道部分が設けられている設置箇所(例えば、床や天井)に設けられた支持部材により支持されたものであってもよい。
【0047】
(5)上記実施形態では、移動体が一対の軌道を走行するものを例示したが、移動体が単一の軌道を走行するものであってもよい。また、移動体としては、搬送台車3に限らず、スタッカクレーンや天井搬送車であってもよい。
【0048】
(6)上記実施形態では、特定軌道部分が直線状のものを例示したが、特定軌道部分が曲線状のものであってもよい。従来の軌道異常検出システムでは、検出光の直線性を利用して軌道の変形を検出するものであるため、軌道の直線部分に対しては適用できるが、軌道の曲線部分に対しては適用できないが、本発明において、被操作体を曲線状に構成することで、軌道の曲線部分を特定軌道部分として設定することができる。
【0049】
(7)上記実施形態では、軌道に特定軌道部分が単独で設定されたものを例示したが、軌道に特定軌道部分を複数設定してもよい。この場合、複数の特定軌道部分を分散して設定してもよいし、連続して設定してもよい。さらに、二つの特定軌道部分を連続して設定する場合、被操作体の固定する箇所を兼用してもよい。すなわち、軌道の長手方向に沿って連続する二つの特定軌道部分が設定され、一方の特定軌道部分についての被操作体の一端部と他方の特定軌道部分についての被操作体の一端部とが起動長手方向で同じ位置に位置したものであってもよい。この場合、被操作体の一端部を共通の固定具で固定することもできるが、一方の特定軌道部分についての被操作体と他方の特定軌道部分についての被操作体とを軌道長手方向に連続する一連の被操作体にて構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
D 変形検出手段
G 間隙
T 設定時間
P1 判別手段
3 移動体
4 軌道
4a 特定軌道部分
8 隣接軌道部分
9 分割軌道部分
11 操作体
12 板状部材
12s 両側面
13 通過部
16 光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の走行を案内する軌道と、
前記軌道における特定軌道部分の変形の有無を検出する変形検出手段とを備えた軌道異常検出システムであって、
前記変形検出手段が、
前記特定軌道部分の横脇において長手方向に沿う姿勢で配置されて、一端部が前記特定軌道部分の端部に対して位置固定状態でかつ他端部が前記軌道に対して相対移動自在に設けられた被操作体と、
前記特定軌道部分の中間箇所に設けられ、前記特定軌道部分の変形に伴って前記被操作体の一端部と他端部との間において前記被操作体を変形操作してその他端部を前記特定軌道部分の変形前に位置する初期位置から移動させる操作体と、
前記被操作体の他端部が前記初期位置から移動したことを検出する検出手段とを備えて構成されている軌道異常検出システム。
【請求項2】
前記被操作体は、前記操作体に対して前記軌道の長手方向に沿ってスライド移動自在に貫通している請求項1記載の軌道異常検出システム。
【請求項3】
前記特定軌道部分は、前記軌道の長手方向に沿って並べて配置された複数の分割軌道部分と、これら複数の分割軌道部分のうち並び方向で両端に位置するものに隣接する一対の隣接軌道部分とで構成され、
前記複数の分割軌道部分は、前記隣接軌道部分との間及び前記軌道の長手方向で隣接する他の分割軌道部分との間で間隙を形成する状態で配置され、かつ、前記軌道の長手方向にスライド自在に設けられ、
前記操作体が、前記複数の分割軌道部分の夫々を前記中間箇所として、前記複数の分割軌道部分に各別に設けられている請求項2記載の軌道異常検出システム。
【請求項4】
前記被操作体は、縦向きに配置された板状部材にて構成され、かつ、前記特定軌道部分の非変形状態において前記板状部材の両側面が前記複数の操作体に接触しない状態で前記複数の操作体に貫通している請求項3記載の軌道異常検出システム。
【請求項5】
前記被操作体の他端部が前記初期位置から移動したことを前記検出手段が設定時間以上連続して検出した場合に、前記特定軌道部分が変形したと判別する判別手段が設けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の軌道異常検出システム。
【請求項6】
前記被操作体の他端部に、前記軌道の長手方向に交差する向きの光軸の検出光を通過させる通過部が形成され、
前記検出手段は、前記被操作体の変形状態において前記被操作体にて遮蔽され、かつ、前記被操作体の非変形状態において前記通過部を通過する検出光を検出する光センサにて構成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の軌道異常検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−188906(P2012−188906A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55749(P2011−55749)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】