説明

軟弱地盤改良材

【目的】 一度硬化したセメントを再活性化させた軟弱地盤改良材を提供すること。
【構成】 硬化したセメントを400℃乃至1300℃の温度で熱処理してなる軟弱地盤改良材。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、硬化したセメントを熱処理して再活性化させた軟弱地盤改良材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、コンクリートは役割を終えると砕かれてコンクリート塊となり、産業廃棄物として棄却されてきた。近年投棄場所の確保が困難になってきたため、コンクリートの再生利用方法としてコンクリートを砕いた後、ふるい分けを行って骨材を取り出し、骨材は再びコンクリート用骨材として利用し、骨材を除いた後の硬化したセメント、いわゆる硬化セメントは埋め戻し用に利用する試みがなされている。しかしながら硬化セメントの利用方法が、埋め戻し用という程度ではコンクリートの再生利用法として十分とは言えず、より有益な硬化セメントの再生利用法の開発が強く望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記したような従来の問題点を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、一度硬化した硬化セメントを再び活性化させ、軟弱地盤改良材として有効利用することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、硬化したセメントを400℃乃至1300℃の温度で熱処理してなる軟弱地盤改良材に関する。
【0005】
【作用】セメントは主としてカルシウムシリケートと呼ばれる酸化カルシウムと二酸化珪素の化合物からなり、他に酸化カルシウムと酸化アルミニウムおよび酸化第2鉄が組合わさった化合物も少量含む。セメントと水を混ぜ合わせるとこれらの化合物と水が反応し、カルシウムシリケートの場合はカルシウムシリケート水和物を、その他の化合物もそれぞれの水和物を生成して硬化する。カルシウムシリケートの場合は、水和反応過程で酸化カルシウムと水だけの化合物である水酸化カルシウムも併せて生成する。本発明は、硬化したセメントを400℃乃至1300℃の温度で、好ましくは400℃乃至800℃の温度で熱処理すると、水和物として結合していた水が脱水されて活性化し、得られた脱水物は軟弱地盤改良材として極めて優れていることの知見に基づいている。
【0006】硬化したセメントを熱処理して脱水させると、カルシウムシリケート水和物や水酸化カルシウムから水を除いた物質が残り、この活性化された脱水物はこれに再び水を加えると、ただちに水と反応して元の水和物に戻り硬化する作用がある。
【0007】本発明において熱処理温度が1300℃を越える高温になると、結合していた水が脱水された後化合物の組替えが起こって元のセメントに戻る。当然のことながら加熱温度が高くなるほどエネルギー消費量が多くなるし、加熱設備も大がかりになるが、セメントそのものは大規模工場設備で多量に製造されているので、高いコストをかけて硬化セメントを元のセメントに戻すのは、硬化セメントの再生利用方法として適当でない。また熱処理温度が低すぎると、脱水が十分でなく軟弱地盤改良材としての効果が不十分になる。熱処理時間は、硬化したセメントの結合水が脱水できる時間であれば特に制限されず、温度が高いほど短時間でよいが、普通には3分乃至120分間、好ましくは5分乃至60分間である。また熱処理は空気などの酸素含有ガス雰囲気下で行うのが好適である。
【0008】本発明において、硬化したセメントとしては、産業廃棄物として排出される使用済のコンクリート、モルタル、未使用で放置されて硬化したセメントなどを挙げることができ、コンクリートやモルタル塊は粗粉砕して粗骨材、細骨材などを分離あるいは分離せずに使用しても差し支えない。また硬化したセメントは、特にその種類に制限はなく、セメントは普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、ビーライト系ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、多成分混合セメントなどいずれであってもよい。
【0009】
【実施例】以下実施例により、本発明を具体的に説明する。
実施例1〜3、比較例1表1に示す性状の有機質粘性土に、硬化した普通ポルトランドセメントを表2に示す製造条件で空気雰囲気下に加熱して製造した軟弱地盤改良材を10重量%(以下%は重量%を意味する)添加し、材令28日の一軸圧縮強度を測定した。軟弱地盤改良材は、硬化した普通ポルトランドセメントを表2に示す製造条件で空気雰囲気下に加熱して製造した。軟弱地盤改良材による固化試験結果を同じく表2に示す。
【0010】
【表1】


【0011】
【表2】


【0012】実施例4〜6、比較例2表3に示す性状の有機質土混じり砂質土に、実施例1〜3と同様に硬化した普通ポルトランドセメントを表4に示す製造条件で空気雰囲気下に加熱して製造した軟弱地盤改良材を10%添加し、材令28日の一軸圧縮強度を測定した。軟弱地盤改良材による固化試験結果を同じく表4に示す。
【0013】
【表3】


【0014】
【表4】


【0015】上記試験結果より、本発明の軟弱地盤改良材混入後の軟弱地盤の一軸圧縮強度は、0.5kgf/cm2 以上であり、軟弱地盤改良材として十分な性能を有している。
【0016】
【発明の効果】本発明による軟弱地盤改良材は元のセメントに比べて大きく性状が異なり、建造物の築造のような通常のセメントの用い方はできないが、軟弱地盤に添加すれば地盤を固化する性能を発揮するので、軟弱地盤改良材としては十分に利用することができる。また、本発明の軟弱地盤改良材は、ネバリケの強い粘性土があたかも砂に変わったようにサラサラした土に変化する現象いわゆる団粒化作用を示すので土との混合作業が容易である。さらに、他の軟弱地盤改良材である生石灰のように多量の発熱をすることがないので、取扱いに危険がなく、混合作業において作業環境を悪化させることがない。その上、コンクリートは硬化セメントと骨材の混合物なので、使用済コンクリートをそのまま加熱すると骨材の混じったものになるが、骨材が混入しても軟弱地盤改良材として使用するのになんら支障はないので、使用済コンクリートからも本発明による軟弱地盤改良材を容易に得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 硬化したセメントを400℃乃至1300℃の温度で熱処理してなる軟弱地盤改良材。