転てつ機
【課題】転てつ機において摺動部や噛合部の磨耗等に起因する転換不能を防止する。
【解決手段】鉄道用分岐器の可動レールを転換するために移動するラック23を備えた動作かん20と噛み合うピニオン40に設けられた鎖錠体50と、動作かん20に設けられた鎖錠体50と当接する被規制部31、32を有していて被規制部31、32が鎖錠体50と当接することで移動が規制される被鎖錠体30とを備え、被鎖錠体30には、被規制部31、32が鎖錠体50と当接する前に鎖錠体50と当接して押される被押圧部32bを設け、鎖錠体50には、ラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動が停止する前に被鎖錠体30の被押圧部32bと当接してラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動停止位置よりもさらに動作かんを移動させる押し付け部および、移動した後の被鎖錠体における被規制部に当接して被鎖錠体30の移動を規制する規制部51、52を設ける。
【解決手段】鉄道用分岐器の可動レールを転換するために移動するラック23を備えた動作かん20と噛み合うピニオン40に設けられた鎖錠体50と、動作かん20に設けられた鎖錠体50と当接する被規制部31、32を有していて被規制部31、32が鎖錠体50と当接することで移動が規制される被鎖錠体30とを備え、被鎖錠体30には、被規制部31、32が鎖錠体50と当接する前に鎖錠体50と当接して押される被押圧部32bを設け、鎖錠体50には、ラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動が停止する前に被鎖錠体30の被押圧部32bと当接してラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動停止位置よりもさらに動作かんを移動させる押し付け部および、移動した後の被鎖錠体における被規制部に当接して被鎖錠体30の移動を規制する規制部51、52を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用分岐器における可動レールの転換・鎖錠を行う転てつ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の転てつ機として、本願発明者が提案した特許文献1に見られる転てつ機が知られている。同文献の符号を借りて説明すると、この転てつ機(1、101)は、鉄道用分岐器(100)の可動レール(トングレールT1、T2)を転換するために移動するラック(ラック歯列21b)を備えた動作かん(20)と、この動作かん(20)のラック(21b)と噛み合うことで動作かん(20)を移動させるピニオン(12)とを有し、前記ラック(21b)とピニオン(12)の両方が間欠ラック、間欠ピニオンで構成されている。
【0003】
この転てつ機は、前記ピニオン(12)に設けられていてピニオン(12)とともに回転する鎖錠体(13)と、前記動作かん(20)に設けられていて動作かん(20)とともに移動し、前記鎖錠体(13)と当接する被規制部(22a、22b)を有していて該被規制部(22a、22b)が前記鎖錠体(13)と当接することで移動が規制される被鎖錠体(22)とを備えている。
【0004】
この転てつ機の作動については特許文献1に詳しく記載されているが、同文献の図2〜図4を参照して簡単に説明すると次の通りである。
【0005】
モータ(2)でピニオン(12)が回転駆動されると、図3、図4のようにラック(20)が進退動し、伝導部(図5の108)を介して可動レール(トングレールT1、T2)が本線側のレール(R1、R2)と直交する方向へ移動して転換動作がなされる。
【0006】
図3(A)では、鎖錠体(13)の規制面(13a)が、動作かん(20)の被規制部(22a)に当接しており、動作かん(20)の左方への移動が規制されている。この状態では、動作かん(20)は図の最も右方に位置する。図3(A)の状態から、回転駆動軸(11)を時計回り方向に回転させると、規制面(13a)が被鎖錠体(22)の被規制部(22a)から外れると同時にピニオン歯列(12b)とラック歯列(21b)との噛合が開始される(図3(B)参照)。
【0007】
ピニオン歯列(12b)とラック歯列(21b)との噛合により動作かん(20)は左方へと移動し(図3(B)〜図4(A))、図4(A)の状態から回転駆動軸(11)をさらに回転させると、図4(B)に示すようにピニオン歯列(12b)とラック歯列(21b)との噛合が解除されると同時に、鎖錠体(13)の規制面(13a)が、動作かん(20)の被規制部(22b)に当接し始める。
【0008】
その後さらに回転駆動軸(11)を回転させると、鎖錠体(13)の規制面(13a)が、動作かん(20)の被規制部(22b)と摺接して被規制部(22b)と完全に当接し(図4(C)参照)、動作かん(20)の右方への移動が規制される。この状態では、動作かん(20)は図の最も左方に位置する。なお、動作かん(20)を逆方向へ移動させてトングレール(T1、T2)を逆方向へ転換させる場合には、上記動作を逆に行う。この転てつ機によれば、構成が簡素で確実に作動するという利点が得られる。
【0009】
また、このような転てつ機は、同公報0049段落に記載されているように、分岐器(100)におけるエスケープクランク(104、106)の位置に配置して使用することができ、その場合、動作かん(20)で分岐器(100)におけるロッド(105、107)を構成することが可能である。すなわち、この転てつ機は、動作かん(20)がレール(R1、R2)と直交するように配置して使用することも可能である。なお、動作かんがレールと直交するように配置して使用することができる転てつ機は、例えば特許文献2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−157448号公報
【特許文献2】特開2001−163221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1記載の転てつ機を、その動作かん(20)がレール(R1、R2)と直交するように配置して使用した場合、次のような課題があることが分かった。
【0012】
特許文献1記載の転てつ機は、鎖錠体(13)の規制面(13a)が動作かん(20)の被規制部(22aまたは22b)に当接することで動作かん(20)の移動を規制する構造となっていて、ピニオン(12)の回転時には、鎖錠体(13)の規制面(13a)と動作かん(20)の被規制部(22aまたは22b)とが摺接するから、この摺接部には摩耗が生じる。
【0013】
そして、転てつ機の使用が長期に及ぶと、上記摺接部の摩耗の増大によって、図27に示すように、ラック(21)とピニオン(12)との噛合が解除されて鎖錠体(13)の規制面(13a)と動作かん(20)の被規制部(22aまたは22b)とが当接すべきときに、両者の間に隙間Cが生じることがある。このような隙間Cが生じても、図27に示す状態において、動作かん(20)に対して、ピニオン(12)との噛合方向(矢印X1方向)への外力が作用せず、したがって動作かん(20)がその外力によって矢印X1方向へ移動しなければ、問題は生じない。その後、ピニオン(12)がラック(21)との噛合方向(矢印RR方向)へ回転すれば、規制面(13a)による被規制部(22aまたは22b)に対する規制が解除されると同時にピニオン(12)とラック(21)とが適正に噛み合って、動作かん(20)が矢印X1方向へ移動することとなる。
【0014】
特許文献1の図5に見られるように、転てつ機を、その動作かん(20)がレール(R1、R2、T1、T2)と平行となるように配置し、動作かんがエスケープクランクを介して分岐器を転換させるようにして使用した場合、分岐器(100)上を列車が通過する際に、可動レール(T1、T2)に列車横圧が加わっても、エスケープクランクに横圧が加わるだけでその力は動作かん(20)に対する上記移動方向(矢印X1方向)への外力としては作用しないかあるいは極めて作用しにくい。したがって、転てつ機を、その動作かん(20)がレール(R1、R2、T1、T2)と平行となるように配置し、エスケープクランクを介して分岐器を転換させる場合には問題は生じにくい。
【0015】
しかし、特許文献1記載の転てつ機を、その動作かん(20)がレール(R1、R2)と直交するように配置して使用した場合には、分岐器(100)上を列車が通過する際に、可動レール(T1、T2)に列車横圧が加わると、その力は動作かん(20)に対する上記移動方向(矢印X1方向)への外力として作用するかあるいは極めて作用し易い状況となる。
【0016】
そして、図27に示した隙間Cが生じている状態において動作かん(20)に対してピニオン(12)との噛合方向(矢印X1方向)への外力が作用し、その外力によって上記隙間Cを埋めるように動作かん(20)が矢印X1方向へ移動した後、図28に示すようにピニオン(12)がラック(21)との噛合方向(矢印RR方向)へ回転すると、上記隙間Cの分だけピニオン(12)とラック(21)との噛合開始位置がずれているため、ピニオン(12)の歯(12a)とラック(ラックの歯21)とが不適切に接触し、両方の歯を不適切に摩耗ないし削ることとなる。このようにしてラック(ラックの歯21)が不適切に摩耗したりあるいは削られたりした部位を図28において破線(22)で誇張して描いてある。
【0017】
このような不適切な摩耗等による歯形の変形は、その後の転てつ動作時にピニオン(12)が矢印RL方向へ回転して動作かん(20)を矢印X2方向へ移動させる際、動作かん(20)の移動量の減少をもたらすから、鎖錠体(13)の規制面(13a)と動作かん(20)の被規制部(22aまたは22b)との摺接力の増大を招き、その摺接部の摩耗を助長させる。
【0018】
以上のような現象が繰り返されると、最終的には、適正な転てつ動作が得られなくなるおそれが生じる。
【0019】
本発明の目的は、上記課題を解決し、従来よりも長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られる転てつ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様に係る転てつ機は、鉄道用分岐器の可動レールを転換するために移動するラックを備えた動作かんと、前記動作かんの前記ラックと噛み合うことで前記動作かんを移動させるピニオンとを有し、前記ラックと前記ピニオンのうち少なくとも一方が間欠ラックないし間欠ピニオンで構成され、
前記ピニオンに設けられていて該ピニオンとともに回転する鎖錠体と、
前記動作かんに設けられていて該動作かんとともに移動し、前記鎖錠体と当接する被規制部を有していて該被規制部が前記鎖錠体と当接することで移動が規制される被鎖錠体とを備えた転てつ機であって、
前記被鎖錠体には、前記被規制部が前記鎖錠体と当接する前に前記鎖錠体と当接して押される被押圧部を設けるとともに、
前記鎖錠体には、前記ラックと前記ピニオンとの噛合による前記動作かんの移動が停止する前に前記被鎖錠体における前記被押圧部と当接して該被押圧部を押し付けて前記ラックと前記ピニオンとの噛合による前記動作かんの移動停止位置よりもさらに前記動作かんを移動させる押し付け部および、該押し付け部にて押し付けられて移動した後の前記被鎖錠体における前記被規制部に当接して該被鎖錠体の移動を規制する規制部を設けたことを特徴とする。
【0021】
この転てつ機は、鉄道用分岐器の可動レールを転換するために移動するラックを備えた動作かんと、この動作かんのラックと噛み合うことで動作かんを移動させるピニオンとを有し、前記ラックとピニオンのうち少なくとも一方が間欠ラックないし間欠ピニオンで構成され、前記ピニオンに設けられていてピニオンとともに回転する鎖錠体と、前記動作かんに設けられていて動作かんとともに移動し、前記鎖錠体と当接する被規制部を有していて該被規制部が前記鎖錠体と当接することで移動が規制される被鎖錠体とを備えているので、簡素な構成で転てつ動作を行うことが可能である。
【0022】
そして、この転てつ機によれば、前記被鎖錠体には、前記被規制部が前記鎖錠体と当接する前に前記鎖錠体と当接して押される被押圧部が設けられているとともに、前記鎖錠体には、前記ラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動が停止する前に前記被鎖錠体における被押圧部と当接して該被押圧部を押し付けて前記ラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動停止位置よりもさらに動作かんを移動させる押し付け部および、該押し付け部にて押し付けられて移動した後の被鎖錠体における被規制部に当接して被鎖錠体の移動を規制する規制部が設けられているので、転てつ動作時、動作かんは、前記ラックとピニオンとの噛合によって移動した後、さらに押し付け部で押し付けられて移動し、その後、押し付け部が被鎖錠体における被規制部に当接することによって、移動が規制されることとなる。
【0023】
ラックとピニオンとの噛合による移動停止位置からの動作かんのさらなる移動は、鎖錠体の押し付け部と被鎖錠体の被規制部との当接による摩耗に起因する隙間を吸収する役割を果たす。すなわち、ラックとピニオンとの噛合による移動停止位置からさらに動作かんが移動したその移動量が、鎖錠体の押し付け部と被鎖錠体の被規制部との当接による摩耗に起因する隙間の大きさよりも小さくならない限り、その隙間を埋めるように動作かんが移動したとしても、その後のピニオンとラックとの噛合は適切に行われることとなる。
【0024】
したがって、ラックとピニオンの歯が不適切に摩耗ないし削られるという事態が従来より長期に亘って防止され、結果として従来よりも長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られることとなる。
【0025】
本発明の一態様では、前記押し付け部を、前記鎖錠体に対して回転可能に設けたローラで構成するとともに、該ローラで前記規制部も構成することができる。
【0026】
このようにすると、押し付け部および規制部の摩耗を著しく低減でき、従来よりも一層長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られることとなる。
【0027】
また、本発明の一態様では、前記押し付け部を、前記鎖錠体における、前記ラックとピニオンとの噛み合い開始部および噛合終了部に対応した位置に、それぞれ回転可能に設けたローラで構成するとともに、前記規制部を、前記ピニオンの歯先円と同心で曲率半径が前記ピニオンの中心から前記ローラの外端までの長さである、前記被規制部と当接可能な円弧面を有する円弧体で構成することができる。
【0028】
このようにすると、押し付け部がローラで構成されていることで押し付け部による押し付け動作を円滑にできると同時に押し付け部および被押圧部の摩耗を低減でき、また、何らかの理由でピニオンが過回転した場合でも、円弧体によって被規制部を確実に規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る転てつ機の一実施の形態およびその設置例を示す平面図。
【図2】本発明の上記一実施形態の転てつ機における要部の定位鎖錠状態にある平面図とその側面図とを同時に示した図。
【図3】上記一実施形態の定位鎖錠状態から解錠動作を示す図。
【図4】上記一実施形態の解錠動作から転換動作を示す図。
【図5】上記一実施形態の転換動作から被押圧部押し込み動作開始を示す図。
【図6】上記一実施形態の被押圧部押し込み動作を示す図。
【図7】上記一実施形態の被押圧部押し込み動作終了および鎖錠動作開始を示す図。
【図8】上記一実施形態の反位鎖錠状態を示す図。
【図9】上記一実施形態の反位鎖錠状態から解錠動作を示す図。
【図10】上記一実施形態の解錠動作から転換動作を示す図。
【図11】上記一実施形態の転換動作から被押圧部押し込み動作開始を示す図。
【図12】上記一実施形態の被押圧部押し込み動作を示す図。
【図13】上記一実施形態の被押圧部押し込み動作から鎖錠動作を示す図。
【図14】図2の部分拡大図であり,作用説明図。
【図15】本発明の他の実施形態の定位転てつ機における要部の鎖錠状態にある平面図とその側面図とを同時に示した図。
【図16】上記他の実施形態の被押圧部押し込み動作を示す図。
【図17】上記他の実施形態の被押圧部押し込み動作からの鎖錠動作を示す図。
【図18】本発明の更なる他の実施形態の定位転てつ機における要部の鎖錠状態にある平面図とその側面図とを同時に示した図。
【図19】上記更なる他の実施形態の解錠動作を示す図。
【図20】上記更なる他の実施形態の転換動作を示す図。
【図21】上記更なる他の実施形態の転換動作から被押圧部押し込み動作を示す図。
【図22】上記更なる他の実施形態の被押圧部押し込み動作を示す図。
【図23】上記更なる他の実施形態の被押圧部押し込み動作からの鎖錠動作を示す図。
【図24】上記更なる他の実施形態の反位鎖錠への移行過程を示す図。
【図25】上記更なる他の実施形態の反位鎖錠状態を示す。
【図26】図18に示した実施形態の変形例の定位転てつ機における要部の鎖錠状態にある平面図とその側面図とを同時に示した図。
【図27】磨耗する箇所の拡大図(課題の説明図)。
【図28】磨耗による影響を受ける部分の拡大図(課題の説明図)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0031】
<全体構成および設置例>
図1は、本発明に係る転てつ機の一実施の形態およびその設置例を示す平面図である。この転てつ機10は、筐体11と、鉄道用分岐器1の可動レールTを転換するために移動するラック23(図2参照)を備えた動作かん20と、この動作かん20のラック23と噛み合うことで動作かん20を移動させるピニオン40とを有している。ラック23とピニオン40は、少なくとも一方を間欠ラックないし間欠ピニオンで構成すればよいが、この実施の形態ではラック23を間欠ラックで構成するとともに、ピニオン40も間欠ピニオンで構成している(図2参照)。なお、図1においては鉄道用分岐器1の一部のみを描いているが、鉄道用分岐器1は公知の構成を採用しうる。
【0032】
この転てつ機10は、ピニオン40に設けられていてピニオン40とともに回転する鎖錠体50と、動作かん20に設けられていて動作かん20とともに移動し、前記鎖錠体50と当接する被規制部31、32(図2参照)を有していて該被規制部31、32が鎖錠体50と当接することで移動が規制される被鎖錠体30とを備えている。
【0033】
図2に示すように、被鎖錠体30には、被規制部31(32)が鎖錠体50と当接する前に鎖錠体50と当接して押される被押圧部31b(32b)を設けてある。一方、鎖錠体50には、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動が停止する前に前記被鎖錠体30における被押圧部31b(32b)と当接して該被押圧部31b(32b)を押し付けてラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を移動させる押し付け部51(52)および、該押し付け部51(52)にて押し付けられて移動した後の被鎖錠体30における被規制部31(32)に当接して被鎖錠体の移動を規制する規制部51(52)を設けてある。この実施の形態では、押し付け部51および規制部51並びに押し付け部52および規制部52をそれぞれ同一部分で構成したが、後述するように、押し付け部と規制部とは別部分で構成することも可能である。
【0034】
図1に示すように、この転てつ機10は、動作かん20がレールR(T)と直交するように配置して動作かんがエスケープクランクを介さずに分岐器を直接転換するように使用される。転てつ機10は、枕木2に筐体11をボルト12で固定することで枕木2上に設置される。動作かん20には公知のアジャストロッド3が連結され、このアジャストロッド3の図1の左方において連結部(該連結部は図1の左方にあって図示されていない)を介してアジャストロッド3に転てつ棒4が連結され、この転てつ棒4にボルトナット5で可動レール(トングレール)Tが連結されている。6は公知の構成を有する鎖錠かんであり、接続かん7を介して図示しない可動レールTに連結されている。後述するモータの駆動で動作かん20が矢印X1、X2方向へ移動することで可動レールTが移動して転てつ動作がなされる。
【0035】
<動作かん20>
図2は転てつ機10における要部の平面図とその側面図とを同時に示した図である。動作かん20は転てつ機10の筐体11にスライド可能に装着されている。図1に示すように筐体11の左右の側壁には動作かん20が挿通される穴11bが設けられている。動作かん20にはストッパ21、22が一体的に設けられている。動作かん20はこれらストッパ21、22が筐体11の側壁内面に当接する範囲内において図1に示す矢印X1、X2方向(レールRと直交する方向)へスライド可能である。動作かん20は、その移動範囲(ストローク分)にのみラック(ラック歯)23(図2参照)が形成されており、このラック23がピニオン40と噛み合うことによって図1に示す矢印X1、X2方向へ駆動される。
【0036】
<被鎖錠体30>
被鎖錠体30は、動作かん20の移動をロックすることを主目的とするものであり、前述した被規制部31、32を有している。また、前述した被押圧部31b、32bを有している。被鎖錠体30は、動作かん20の移動方向に向かって動作かん20と平行に設けられる板状体ないしブロック体で構成される。
【0037】
被規制部31、32は、被鎖錠体30の移動方向に関して両端角部に傾斜状に形成される。被規制部31は、図2に示すように被規制部31が鎖錠体50における規制部51と当接する位置関係において、鎖錠体50の回転中心O1を中心とする円弧面で構成されている。同様に、被規制部32は、図8に示すように被規制部32が鎖錠体50における規制部52と当接する位置関係において、鎖錠体50の回転中心O1を中心とする円弧面で構成されている。
【0038】
被押圧部31bは、被規制部31に連接している被鎖錠体30の側面(左側面)で構成されている。同様に、被押圧部32bは、被規制部32に連接している被鎖錠体30の側面(右側面)で構成されている。これら被押圧部31b、32bは、被鎖錠体30の移動方向に関し、ラック23の端歯23a、23bに対向する位置に配置されている。なお、鎖錠体50と被鎖錠体30との関係については後に詳しく説明する。図示の被鎖錠体30は、動作かん20と別部材で構成してボルト34で動作かん20の上面に固定したが、動作かん20と一体に構成することもできる。
【0039】
<ピニオン40>
ピニオン40は、動作かん20を移動させるためのものであり、ラック歯23と噛み合う歯(ピニオン歯)43を有している。図示のピニオン40は間欠ピニオンであるが、ラック23を間欠ラックとした場合、必ずしも間欠ピニオンとする必要はない。
【0040】
ピニオン40は軸41で筐体11に回転可能に取り付けられている。図1に示すように、筐体11にはモータ13が固定されており、このモータ13の出力軸に固定された駆動傘歯車14が従動傘歯車15bと噛み合い、従動傘歯車15bと一体の平歯車15cが平歯車16bと噛み合い、平歯車16bと一体の平歯車16cがピニオン40と一体の平歯車40bと噛み合っている。したがって、モータ13の正転または逆転によりピニオン40は図2において矢印RR方向またはRL方向に回転駆動される。
【0041】
<鎖錠体50>
鎖錠体50は、被鎖錠体30に作用して動作かん20の移動をロックすることを主目的とするもので、前述した被鎖錠体30における被規制部31に当接して被鎖錠体30(したがって動作かん20)の移動を規制する規制部51と、同じく被規制部32に当接して被鎖錠体30(したがって動作かん20)の移動を規制する規制部52とを有している。
【0042】
図2に示す鎖錠体50は、ピニオン40と同軸上においてピニオン40にボルト53で固定されたアーム状部材54と、このアーム状部材54の両端に軸55でそれぞれ回転可能に取り付けられたローラ51、52を有している。これらのローラ51、52が上記規制部51、52を構成している。
【0043】
ローラ51はラック23ピニオン40との噛合による動作かん20の移動が停止する前に被鎖錠体30における被押圧部31bと当接して(図11参照)該被押圧部31bを押し付けてラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を移動させる押し付け部51を構成している。
【0044】
同様に、ローラ52はラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動が停止する前に被鎖錠体30における被押圧部32bと当接して(図5参照)該被押圧部32bを押し付けてラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を移動させる押し付け部52を構成している。これらローラ51、52は、鎖錠体50における、ラック23とピニオン40との噛み合い開始部および噛合終了部に対応した位置に、それぞれ軸55で回転可能に設けられている。
【0045】
<作動>
以下、転てつ機10の作動について説明する。図2は動作かん20を矢印X2方向へ移動させた転てつ動作が終了して、動作かん20のX1方向への移動がロックされている状態を示している。
【0046】
この図2に示す状態から動作かん20を矢印X1方向へ移動させる転てつ動作を行う場合、モータ13の駆動でピニオン40をRR方向へ回転させる。なおピニオン40の回転は転てつ動作が終了するまで(図8の状態となるまで)連続して回転する。
【0047】
図2に示す状態からピニオン40がRR方向へ回転すると、図3に示す例では、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが始まる前に、鎖錠体50の規制部51が被鎖錠体30の被規制部31から外れる。これによって動作かん20は矢印X1方向へ移動し得る状態となる。さらなるピニオン40の回転で図4に示すようにピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが開始され、これによって動作かん20は矢印X1方向への移動を開始する。ただし、規制部51が被規制部31から外れるタイミングは、ラック歯23の噛み合いが始まると同時あるいはその直後としてもよい。
【0048】
さらなるピニオン40の回転で動作かん20が矢印X1方向へ移動し続け、その移動の終了が近づくと、図5に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが外れる前に、押し付け部兼規制部52が被鎖錠体30の被押圧部32bに当接する。
【0049】
その後、図6に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いは外れるが、この時、押し付け部兼規制部52は被鎖錠体30の被押圧部32bに当接したままである。したがって、さらなるピニオン40(したがって鎖錠体50)の回転により、被押圧部32bが押し付け部兼規制部52で押され、図7に示すように押し付け部兼規制部52と被押圧部32bとの当接が解除されるまで動作かん20は矢印X1方向へ移動し続けることとなる。
【0050】
すなわち、押し付け部52は、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置(より詳しくは、押し付け部52による押し付け動作がないとしたならば、ラック23とピニオン40との噛合によって移動して停止したであろう位置(図8における仮想線23、24参照))よりもさらに動作かん20を矢印X1方向へ移動させる。その移動量を図8にSで示す。
【0051】
上記動作かん20の移動後のさらなるピニオン40および鎖錠体50の回転により、図8に示すように、押し付け部兼規制部52は被規制部32と当接し、これによって動作かん20の矢印X2方向方向への移動が規制され、転てつ動作が終了する。
【0052】
なお、この状態(図8)において、被規制部32は鎖錠体50の回転中心O1を中心とする円弧面で構成されていることから、動作かん20に対して矢印X2方向への外力が作用しても、被規制部32から鎖錠体50に対して作用する力F1の方向は、ピニオン40および鎖錠体50の回転中心O1に向かう方向となる。したがって、ピニオン40および鎖錠体50を回転させるモーメントは生じないため、規制部52による規制は確実になされる。
【0053】
また、この状態において、何らかの理由により動作かん20が矢印X1方向へ移動しようとしても、ストッパ21(図1、図2参照)が筐体11の内面に当接することによって、動作かん20の矢印X1方向への移動も規制される。
【0054】
その後、図8に示す状態から動作かん20を矢印X2方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、モータ13の駆動でピニオン40をRL方向へ回転させる。ここで、上記押し付けによる移動量Sが大きすぎると、ピニオン40がRL方向(逆の転てつ動作の場合はRR方向)へ回転した際にラック23との噛み合いが行われなくなってしまうから、移動量Sはピニオン40とラック23との噛み合いが可能な範囲内にラック23が位置するような移動量とする。
【0055】
ピニオン40がRL方向へ回転することによって、転てつ機10は上述した作動を左右対称にした動作を行い、図2に示す状態となって転てつ動作が終了する。
【0056】
念のためにその動作を図8〜図13、および図2を参照して説明する。図8に示す状態から動作かん20を矢印X2方向へ移動させる転てつ動作を行う場合、モータ13の駆動でピニオン40をRL方向へ回転させる。なおピニオン40の回転は転てつ動作が終了するまで(図2の状態となるまで)連続して回転する。
【0057】
図8に示す状態からピニオン40がRL方向へ回転すると、図9に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが始まる前に、鎖錠体50の規制部52が被鎖錠体30の被規制部32から外れる。これによって動作かん20は矢印X2方向へ移動し得る状態となる。さらなるピニオン40の回転で図10に示すようにピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが開始され、これによって動作かん20は矢印X2方向への移動を開始する。
【0058】
さらなるピニオン40の回転で動作かん20が矢印X2方向へ移動し続け、その移動の終了が近づくと、図11に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが外れる前に、押し付け部兼規制部51が被鎖錠体30の被押圧部31bに当接する。その後、図12に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いは外れるが、この時、押し付け部兼規制部51は被鎖錠体30の被押圧部31bに当接したままである。したがって、さらなるピニオン40(したがって鎖錠体50)の回転により、被押圧部31bが押し付け部兼規制部51で押され、図13に示すように押し付け部兼規制部51と被押圧部31bとの当接が解除されるまで動作かん20は矢印X2方向へ移動し続けることとなる。すなわち、押し付け部51は、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を矢印X2方向へ移動させる。
【0059】
その後のさらなるピニオン40および鎖錠体50の回転により、図2に示すように、押し付け部兼規制部51は被規制部31と当接し、これによって動作かん20の矢印X1方向への移動が規制され、転てつ動作が終了する。
【0060】
この状態(図2)において、被規制部31は鎖錠体50の回転中心O1を中心とする円弧面で構成されていることから、前述したように規制部51による規制は確実になされる。また、この状態において、何らかの理由により動作かん20が矢印X2方向へ移動しようとしても、ストッパ22(図1、図2参照)が筐体11の内面に当接することによって、動作かん20の矢印X2方向への移動も規制される。
【0061】
<作用効果>
以上のような転てつ機10によれば、次のような作用効果が得られる。
【0062】
(a)この転てつ機10は、鉄道用分岐器1の可動レールTを転換するために移動するラック23を備えた動作かん20と、この動作かん20のラック23と噛み合うことで動作かん20を移動させるピニオン40とを有し、これらラック23とピニオン40のうち少なくとも一方が間欠ラックないし間欠ピニオンで構成され、ピニオン40に設けられていてピニオン40とともに回転する鎖錠体50と、動作かん20に設けられていて動作かん20とともに移動し、鎖錠体50と当接する被規制部被規制部31、32を有していて被規制部31、32が鎖錠体50と当接することで移動が規制される被鎖錠体30とを備えているので、簡素な構成で転てつ動作を行うことが可能である。
【0063】
そして、この転てつ機10によれば、被鎖錠体30には、被規制部31(32)が鎖錠体50と当接する前に鎖錠体50と当接して押される被押圧部31b(32b)が設けられているとともに、鎖錠体50には、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動が停止する前に被鎖錠体30における被押圧部31b(32b)と当接して被押圧部31b(32b)を押し付けてラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を移動させる押し付け部51(52)および、押し付け部51(52)にて押し付けられて移動した後の被鎖錠体30における被規制部31(32)に当接して被鎖錠体30の移動を規制する規制部51(52)が設けられているので、転てつ動作時、動作かん20は、ピニオン40との噛合によって移動した後、さらに押し付け部51(52)で押し付けられて移動し、その後、押し付け部51(52)が被鎖錠体30における被規制部31(32)に当接することによって、移動が規制されることとなる。
【0064】
ラック23とピニオン40との噛合による移動停止位置からの動作かん20のさらなる移動は、鎖錠体50の押し付け部51(52)と被鎖錠体30の被規制部31(32)との当接による摩耗に起因する隙間を吸収する役割を果たす。この点について、図14を参照して説明する。
【0065】
図14は図2の部分拡大図である。図14において、仮想線23、43はラック23とピニオン40との噛合による矢印X2方向への移動停止位置すなわち、押し付け部51による押し付け動作がないとしたならば、ラック23とピニオン40との噛合によって移動して停止したであろう位置(噛み合い解除位置)を示している。Sは、ラック23とピニオン40との噛合による移動停止位置からの動作かん20(したがってラック23)のさらなる移動量を示している。Cはこの転てつ機10を長期使用することにより規制部51(52)と被規制部31(32)の間に生じる摩耗量の一例を示している。S1は摩耗量Cの矢印X1、X2方向成分を示している。
【0066】
図14において、仮想線23、43はラック23とピニオン40との噛合による矢印X2方向への移動停止位置を示しているから、動作かん20が何らかの理由により仮想線23で示す位置よりも矢印X1方向へシフトした状態でピニオン40がRR方向へ回転すると、図28を参照して説明した不適切な噛み合いが生じることとなる。別言すれば、動作かん20が仮想線23で示す位置よりも矢印X1方向へシフトした状態とならなければ不適切な噛み合いは生じないと言うことになる。
【0067】
この実施の形態の転てつ機10を長期使用すると、規制部51(52)と被規制部31(32)の間には摩耗が生じ、その量をCとすれば、動作かん20および被鎖錠体30は摩耗が生じていなかった使用初期状態における停止位置(実線30参照)よりもS1だけ矢印X1方向へシフトした位置で停止することとなる。
【0068】
しかし、上述したように、動作かん20の停止位置が仮想線23で示す位置よりも矢印X1方向へシフトしなければ不適切な噛み合いは生じないから、この実施の形態によれば、S1>Sとならない限り、不適切な噛み合いは生じないこととなる。
【0069】
すなわち、ラック23とピニオン40との噛合による移動停止位置からさらに動作かん20が移動したその移動量Sが、鎖錠体50の押し付け部51(52)と被鎖錠体30の被規制部31(32)との当接による摩耗に起因する隙間の大きさ(正確にはその矢印X1、X2方向成分)S1よりも小さくならない限り、仮に何らかの理由によって上記隙間Cが生じた後にその隙間S1を埋めるように動作かん20が移動したとしても、その後のピニオン40とラック23との噛合は適切に行われることとなる。
【0070】
したがって、ラック23とピニオン40の歯が不適切に摩耗ないし削られるという事態が従来より長期に亘って防止され、結果として従来よりも長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られることとなる。
【0071】
(b)さらに、この実施の形態では、押し付け部51、52を、鎖錠体50に対して回転可能に設けたローラで構成するとともに、該ローラで規制部(51、52)も構成してあるので、押し付け部および規制部51、52の摩耗を著しく低減でき、従来よりも一層長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られることとなる。
【0072】
<他の実施の形態1>
図15は他の実施の形態1を示す図で、要部の平面図とその側面図とを同時に示した図である。同図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0073】
この実施の形態が上述した実施の形態と異なる点は、被鎖錠体30の被規制部31、32と当接する鎖錠体50の規制部を、ピニオン40の歯先円(図示せず)と同心で曲率半径が被規制部31(32)と同一の円弧面56cを有する円弧体(扇体)56で構成し、その両端の角部で押し付け部51b、52bを構成した点にあり、その他の点に変わりはない。押し付け部51b、52bをなす円弧体56の角部は、それぞれ被押圧部31b、32bを円滑に押すことができるようにRが付けてある。
【0074】
この実施の形態によっても、上述した実施の形態と同様な作動が得られる。すなわち、図15に示す状態から動作かん20を矢印X1方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、ピニオン40をRR方向へ回転させ、鎖錠体50の規制部56cを被鎖錠体30の被規制部31から外し、ピニオン40とラック23との噛み合いにより、動作かん20を矢印X1方向へ移動させる。その矢印X1方向への移動の終了が近づくと、図16に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが外れる前に、押し付け部52bが被鎖錠体30の被押圧部32bに当接する。
【0075】
その後、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いは外れるが、押し付け部52bは被鎖錠体30の被押圧部32bに当接したままであるので、さらなるピニオン40(したがって鎖錠体50)の回転により、被押圧部32bが押し付け部52bで押され、図17に示すように押し付け部52bと被押圧部32bとの当接が解除されるまで動作かん20は矢印X1方向へ移動する。すなわち、押し付け部52bは、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を矢印X1方向へ移動させる。
【0076】
その後のさらなるピニオン40および鎖錠体50の回転により、規制部56cが被規制部32と当接し、これによって動作かん20の矢印X2方向への移動が規制され、転てつ動作が終了する(この状態は図示しないが図15に示す状態と左右対称状態である)。なお、その後、動作かん20を矢印X2方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、ピニオン40をRL方向へ回転させると、図15に示す状態となって転てつ動作が終了する。この実施の形態によっても、上記(a)と同様な作用効果が得られる。
【0077】
<他の実施の形態2>
図18は他の実施の形態2を示す図で、要部の平面図とその側面図とを同時に示した図である。同図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0078】
この実施の形態が上述した実施の形態と異なる点は、押し付け部51、52を、鎖錠体50における、ラック23とピニオン40との噛み合い開始部および噛合終了部に対応した位置に、それぞれ軸55で回転可能に設けたローラ51、52で構成するとともに、被鎖錠体30の被規制部31、32と当接する鎖錠体50の規制部を、ピニオン40の歯先円(図示せず)と同心で曲率半径がピニオン40の中心O1から前記ローラ51(52)の外端までの長さである、前記被規制部31(32)と当接可能な円弧面56cを有する円弧体(扇体)56で構成した点にあり、その他の点に変わりはない。
【0079】
この実施の形態では、押し付け部をなすローラ51、52を固定する円弧体56の角部は、それぞれローラ51、52の半径と同じ曲率半径の湾曲面で構成することもできるし、図示のようにローラ51、52の半径よりもΔrだけ小さな曲率半径の湾曲面で構成することもできる。
【0080】
円弧体56の角部をローラ51、52の半径と同じ曲率半径の湾曲面で構成した場合には、被規制部31と当接する規制部は、ローラ51(52)と円弧面56cとで構成される。
【0081】
円弧体56の角部を図示のようにローラ51、52の半径よりもΔrだけ小さな曲率半径の湾曲面で構成し、円弧面56cの曲率半径を、図示のようにピニオン40の中心O1からローラ51(52)の外端までの長さよりもΔrだけ小さな曲率半径とした場合、円弧面56cは、基本的には被規制部31、32とは当接しない。しかし、図25に示すように、押し付け部52(51)が被規制部32(31)から脱するまでピニオン40を回転させるようにモータ13を制御するように構成した場合、動作かん20の矢印X2方向への移動は被規制部32(31)が円弧面56cと当接することによって規制される。すなわち、円弧面56cは規制部を構成することとなる。また、円弧面56cの曲率半径をΔrだけ小さな曲率半径とした場合でも、ローラ51、52が摩耗したり、あるいは押し付け部52(51)が被規制部32(31)から脱しないようにピニオン40を回転させるようにモータ13を制御するように構成した場合(図18参照)において、何らかの理由によって、ピニオン40が所定位置より過回転した後に動作かん20が移動しようとしたときにも円弧面56cは被規制部31、32と当接することとなる。
【0082】
この実施の形態によっても、上述した実施の形態と同様な作動が得られる。
【0083】
念のために、図18〜図25を参照して作動を簡単に説明する。図18は動作かん20を矢印X2方向へ移動させた転てつ動作が終了して、動作かん20のX1方向への移動がロックされている状態を示している。なお、この状態は、押し付け部51(52)が被規制部31(32)から脱しないようにピニオン40を回転させるようにモータ13を制御するように構成した状態を示している。
【0084】
この図18に示す状態から動作かん20を矢印X1方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、ピニオン40をRR方向へ回転させる。すると、図19に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが始まる前に、鎖錠体50の規制部51ないし円弧面56cが被鎖錠体30の被規制部31から外れる。これによって動作かん20は矢印X1方向へ移動し得る状態となる。さらなるピニオン40の回転で図20に示すようにピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが開始され、これによって動作かん20は矢印X1方向への移動を開始する。
【0085】
さらなるピニオン40の回転で動作かん20が矢印X1方向へ移動し続け、その移動の終了が近づくと、図21に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが外れる前に、押し付け部52が被鎖錠体30の被押圧部32bに当接する。
【0086】
その後、図22に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いは外れるが、この時、押し付け部52は被鎖錠体30の被押圧部32bに当接したままである。したがって、さらなるピニオン40の回転により、被押圧部32bが押し付け部52で押され、図23に示すように押し付け部と被押圧部32bとの当接が解除されるまで動作かん20は矢印X1方向へ移動し続けることとなる。すなわち、押し付け部52は、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20をS(図24参照)だけ矢印X1方向へ移動させる。
【0087】
その後のさらなるピニオン40および鎖錠体50の回転により、図24に示す状態を経て図25に示すように、規制部56cは被規制部32と当接し得る状態となり、これによって動作かん20の矢印X2方向への移動が規制され、転てつ動作が終了する。なお、図25に示す状態は、押し付け部52(51)が被規制部32(31)から脱するまでピニオン40を回転させるようにモータ13を制御するように構成した場合の状態を示している。
【0088】
その後、図25に示す状態から動作かん20を矢印X2方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、モータ13の駆動でピニオン40をRL方向へ回転させる。ピニオン40がRL方向へ回転することによって、転てつ機10は上述した作動を左右対称にした動作を行い、図25と左右対称な状態または図18に示す状態となって転てつ動作が終了する。
【0089】
この実施の形態によっても、上記(a)と同様な作用効果が得られる。さらに、この実施の形態によれば、押し付け部51、52がローラで構成されていることで押し付け部51、52による押し付け動作を円滑にできると同時に押し付け部51、52および被押圧部31b、32bの摩耗を低減でき、また、何らかの理由でピニオンが過回転した場合でも、円弧体56によって被規制部31、32を確実に規制できる。
【0090】
<変形例>
図26は図18に示した他の実施の形態2の変形例を示す図で、要部の平面図とその側面図とを同時に示した図である。同図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0091】
この変形例が図18に示した実施の形態と異なる点は、ローラ51、52を、円弧体56の側面にではなく円弧体56の内部に軸55による両端支持状態で回転可能に支持した点にあり、その他の点に変わりはない。
【0092】
このように構成すると、ローラ51、52が両端支持状態となっていることによって、より円滑な回転動作が得られて摩耗しにくくなり、したがって、より長期に亘って、確実な転てつ動作が得られる。また、ローラ51、52を、円弧体56の側面にではなく円弧体56の内部に支持したので、転てつ機10の軸41方向の厚さを小さくすることができる。
【0093】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0094】
1:鉄道用分岐器、T:可動レール、20:動作かん、23:ラック(ラック歯)、30:被鎖錠体、31、32:被規制部、31b、32b:被押圧部、40:ピニオン、50:鎖錠体、51、52:規制部(押し付け部)、56:円弧体、56c:円弧面
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用分岐器における可動レールの転換・鎖錠を行う転てつ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の転てつ機として、本願発明者が提案した特許文献1に見られる転てつ機が知られている。同文献の符号を借りて説明すると、この転てつ機(1、101)は、鉄道用分岐器(100)の可動レール(トングレールT1、T2)を転換するために移動するラック(ラック歯列21b)を備えた動作かん(20)と、この動作かん(20)のラック(21b)と噛み合うことで動作かん(20)を移動させるピニオン(12)とを有し、前記ラック(21b)とピニオン(12)の両方が間欠ラック、間欠ピニオンで構成されている。
【0003】
この転てつ機は、前記ピニオン(12)に設けられていてピニオン(12)とともに回転する鎖錠体(13)と、前記動作かん(20)に設けられていて動作かん(20)とともに移動し、前記鎖錠体(13)と当接する被規制部(22a、22b)を有していて該被規制部(22a、22b)が前記鎖錠体(13)と当接することで移動が規制される被鎖錠体(22)とを備えている。
【0004】
この転てつ機の作動については特許文献1に詳しく記載されているが、同文献の図2〜図4を参照して簡単に説明すると次の通りである。
【0005】
モータ(2)でピニオン(12)が回転駆動されると、図3、図4のようにラック(20)が進退動し、伝導部(図5の108)を介して可動レール(トングレールT1、T2)が本線側のレール(R1、R2)と直交する方向へ移動して転換動作がなされる。
【0006】
図3(A)では、鎖錠体(13)の規制面(13a)が、動作かん(20)の被規制部(22a)に当接しており、動作かん(20)の左方への移動が規制されている。この状態では、動作かん(20)は図の最も右方に位置する。図3(A)の状態から、回転駆動軸(11)を時計回り方向に回転させると、規制面(13a)が被鎖錠体(22)の被規制部(22a)から外れると同時にピニオン歯列(12b)とラック歯列(21b)との噛合が開始される(図3(B)参照)。
【0007】
ピニオン歯列(12b)とラック歯列(21b)との噛合により動作かん(20)は左方へと移動し(図3(B)〜図4(A))、図4(A)の状態から回転駆動軸(11)をさらに回転させると、図4(B)に示すようにピニオン歯列(12b)とラック歯列(21b)との噛合が解除されると同時に、鎖錠体(13)の規制面(13a)が、動作かん(20)の被規制部(22b)に当接し始める。
【0008】
その後さらに回転駆動軸(11)を回転させると、鎖錠体(13)の規制面(13a)が、動作かん(20)の被規制部(22b)と摺接して被規制部(22b)と完全に当接し(図4(C)参照)、動作かん(20)の右方への移動が規制される。この状態では、動作かん(20)は図の最も左方に位置する。なお、動作かん(20)を逆方向へ移動させてトングレール(T1、T2)を逆方向へ転換させる場合には、上記動作を逆に行う。この転てつ機によれば、構成が簡素で確実に作動するという利点が得られる。
【0009】
また、このような転てつ機は、同公報0049段落に記載されているように、分岐器(100)におけるエスケープクランク(104、106)の位置に配置して使用することができ、その場合、動作かん(20)で分岐器(100)におけるロッド(105、107)を構成することが可能である。すなわち、この転てつ機は、動作かん(20)がレール(R1、R2)と直交するように配置して使用することも可能である。なお、動作かんがレールと直交するように配置して使用することができる転てつ機は、例えば特許文献2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−157448号公報
【特許文献2】特開2001−163221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1記載の転てつ機を、その動作かん(20)がレール(R1、R2)と直交するように配置して使用した場合、次のような課題があることが分かった。
【0012】
特許文献1記載の転てつ機は、鎖錠体(13)の規制面(13a)が動作かん(20)の被規制部(22aまたは22b)に当接することで動作かん(20)の移動を規制する構造となっていて、ピニオン(12)の回転時には、鎖錠体(13)の規制面(13a)と動作かん(20)の被規制部(22aまたは22b)とが摺接するから、この摺接部には摩耗が生じる。
【0013】
そして、転てつ機の使用が長期に及ぶと、上記摺接部の摩耗の増大によって、図27に示すように、ラック(21)とピニオン(12)との噛合が解除されて鎖錠体(13)の規制面(13a)と動作かん(20)の被規制部(22aまたは22b)とが当接すべきときに、両者の間に隙間Cが生じることがある。このような隙間Cが生じても、図27に示す状態において、動作かん(20)に対して、ピニオン(12)との噛合方向(矢印X1方向)への外力が作用せず、したがって動作かん(20)がその外力によって矢印X1方向へ移動しなければ、問題は生じない。その後、ピニオン(12)がラック(21)との噛合方向(矢印RR方向)へ回転すれば、規制面(13a)による被規制部(22aまたは22b)に対する規制が解除されると同時にピニオン(12)とラック(21)とが適正に噛み合って、動作かん(20)が矢印X1方向へ移動することとなる。
【0014】
特許文献1の図5に見られるように、転てつ機を、その動作かん(20)がレール(R1、R2、T1、T2)と平行となるように配置し、動作かんがエスケープクランクを介して分岐器を転換させるようにして使用した場合、分岐器(100)上を列車が通過する際に、可動レール(T1、T2)に列車横圧が加わっても、エスケープクランクに横圧が加わるだけでその力は動作かん(20)に対する上記移動方向(矢印X1方向)への外力としては作用しないかあるいは極めて作用しにくい。したがって、転てつ機を、その動作かん(20)がレール(R1、R2、T1、T2)と平行となるように配置し、エスケープクランクを介して分岐器を転換させる場合には問題は生じにくい。
【0015】
しかし、特許文献1記載の転てつ機を、その動作かん(20)がレール(R1、R2)と直交するように配置して使用した場合には、分岐器(100)上を列車が通過する際に、可動レール(T1、T2)に列車横圧が加わると、その力は動作かん(20)に対する上記移動方向(矢印X1方向)への外力として作用するかあるいは極めて作用し易い状況となる。
【0016】
そして、図27に示した隙間Cが生じている状態において動作かん(20)に対してピニオン(12)との噛合方向(矢印X1方向)への外力が作用し、その外力によって上記隙間Cを埋めるように動作かん(20)が矢印X1方向へ移動した後、図28に示すようにピニオン(12)がラック(21)との噛合方向(矢印RR方向)へ回転すると、上記隙間Cの分だけピニオン(12)とラック(21)との噛合開始位置がずれているため、ピニオン(12)の歯(12a)とラック(ラックの歯21)とが不適切に接触し、両方の歯を不適切に摩耗ないし削ることとなる。このようにしてラック(ラックの歯21)が不適切に摩耗したりあるいは削られたりした部位を図28において破線(22)で誇張して描いてある。
【0017】
このような不適切な摩耗等による歯形の変形は、その後の転てつ動作時にピニオン(12)が矢印RL方向へ回転して動作かん(20)を矢印X2方向へ移動させる際、動作かん(20)の移動量の減少をもたらすから、鎖錠体(13)の規制面(13a)と動作かん(20)の被規制部(22aまたは22b)との摺接力の増大を招き、その摺接部の摩耗を助長させる。
【0018】
以上のような現象が繰り返されると、最終的には、適正な転てつ動作が得られなくなるおそれが生じる。
【0019】
本発明の目的は、上記課題を解決し、従来よりも長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られる転てつ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様に係る転てつ機は、鉄道用分岐器の可動レールを転換するために移動するラックを備えた動作かんと、前記動作かんの前記ラックと噛み合うことで前記動作かんを移動させるピニオンとを有し、前記ラックと前記ピニオンのうち少なくとも一方が間欠ラックないし間欠ピニオンで構成され、
前記ピニオンに設けられていて該ピニオンとともに回転する鎖錠体と、
前記動作かんに設けられていて該動作かんとともに移動し、前記鎖錠体と当接する被規制部を有していて該被規制部が前記鎖錠体と当接することで移動が規制される被鎖錠体とを備えた転てつ機であって、
前記被鎖錠体には、前記被規制部が前記鎖錠体と当接する前に前記鎖錠体と当接して押される被押圧部を設けるとともに、
前記鎖錠体には、前記ラックと前記ピニオンとの噛合による前記動作かんの移動が停止する前に前記被鎖錠体における前記被押圧部と当接して該被押圧部を押し付けて前記ラックと前記ピニオンとの噛合による前記動作かんの移動停止位置よりもさらに前記動作かんを移動させる押し付け部および、該押し付け部にて押し付けられて移動した後の前記被鎖錠体における前記被規制部に当接して該被鎖錠体の移動を規制する規制部を設けたことを特徴とする。
【0021】
この転てつ機は、鉄道用分岐器の可動レールを転換するために移動するラックを備えた動作かんと、この動作かんのラックと噛み合うことで動作かんを移動させるピニオンとを有し、前記ラックとピニオンのうち少なくとも一方が間欠ラックないし間欠ピニオンで構成され、前記ピニオンに設けられていてピニオンとともに回転する鎖錠体と、前記動作かんに設けられていて動作かんとともに移動し、前記鎖錠体と当接する被規制部を有していて該被規制部が前記鎖錠体と当接することで移動が規制される被鎖錠体とを備えているので、簡素な構成で転てつ動作を行うことが可能である。
【0022】
そして、この転てつ機によれば、前記被鎖錠体には、前記被規制部が前記鎖錠体と当接する前に前記鎖錠体と当接して押される被押圧部が設けられているとともに、前記鎖錠体には、前記ラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動が停止する前に前記被鎖錠体における被押圧部と当接して該被押圧部を押し付けて前記ラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動停止位置よりもさらに動作かんを移動させる押し付け部および、該押し付け部にて押し付けられて移動した後の被鎖錠体における被規制部に当接して被鎖錠体の移動を規制する規制部が設けられているので、転てつ動作時、動作かんは、前記ラックとピニオンとの噛合によって移動した後、さらに押し付け部で押し付けられて移動し、その後、押し付け部が被鎖錠体における被規制部に当接することによって、移動が規制されることとなる。
【0023】
ラックとピニオンとの噛合による移動停止位置からの動作かんのさらなる移動は、鎖錠体の押し付け部と被鎖錠体の被規制部との当接による摩耗に起因する隙間を吸収する役割を果たす。すなわち、ラックとピニオンとの噛合による移動停止位置からさらに動作かんが移動したその移動量が、鎖錠体の押し付け部と被鎖錠体の被規制部との当接による摩耗に起因する隙間の大きさよりも小さくならない限り、その隙間を埋めるように動作かんが移動したとしても、その後のピニオンとラックとの噛合は適切に行われることとなる。
【0024】
したがって、ラックとピニオンの歯が不適切に摩耗ないし削られるという事態が従来より長期に亘って防止され、結果として従来よりも長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られることとなる。
【0025】
本発明の一態様では、前記押し付け部を、前記鎖錠体に対して回転可能に設けたローラで構成するとともに、該ローラで前記規制部も構成することができる。
【0026】
このようにすると、押し付け部および規制部の摩耗を著しく低減でき、従来よりも一層長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られることとなる。
【0027】
また、本発明の一態様では、前記押し付け部を、前記鎖錠体における、前記ラックとピニオンとの噛み合い開始部および噛合終了部に対応した位置に、それぞれ回転可能に設けたローラで構成するとともに、前記規制部を、前記ピニオンの歯先円と同心で曲率半径が前記ピニオンの中心から前記ローラの外端までの長さである、前記被規制部と当接可能な円弧面を有する円弧体で構成することができる。
【0028】
このようにすると、押し付け部がローラで構成されていることで押し付け部による押し付け動作を円滑にできると同時に押し付け部および被押圧部の摩耗を低減でき、また、何らかの理由でピニオンが過回転した場合でも、円弧体によって被規制部を確実に規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る転てつ機の一実施の形態およびその設置例を示す平面図。
【図2】本発明の上記一実施形態の転てつ機における要部の定位鎖錠状態にある平面図とその側面図とを同時に示した図。
【図3】上記一実施形態の定位鎖錠状態から解錠動作を示す図。
【図4】上記一実施形態の解錠動作から転換動作を示す図。
【図5】上記一実施形態の転換動作から被押圧部押し込み動作開始を示す図。
【図6】上記一実施形態の被押圧部押し込み動作を示す図。
【図7】上記一実施形態の被押圧部押し込み動作終了および鎖錠動作開始を示す図。
【図8】上記一実施形態の反位鎖錠状態を示す図。
【図9】上記一実施形態の反位鎖錠状態から解錠動作を示す図。
【図10】上記一実施形態の解錠動作から転換動作を示す図。
【図11】上記一実施形態の転換動作から被押圧部押し込み動作開始を示す図。
【図12】上記一実施形態の被押圧部押し込み動作を示す図。
【図13】上記一実施形態の被押圧部押し込み動作から鎖錠動作を示す図。
【図14】図2の部分拡大図であり,作用説明図。
【図15】本発明の他の実施形態の定位転てつ機における要部の鎖錠状態にある平面図とその側面図とを同時に示した図。
【図16】上記他の実施形態の被押圧部押し込み動作を示す図。
【図17】上記他の実施形態の被押圧部押し込み動作からの鎖錠動作を示す図。
【図18】本発明の更なる他の実施形態の定位転てつ機における要部の鎖錠状態にある平面図とその側面図とを同時に示した図。
【図19】上記更なる他の実施形態の解錠動作を示す図。
【図20】上記更なる他の実施形態の転換動作を示す図。
【図21】上記更なる他の実施形態の転換動作から被押圧部押し込み動作を示す図。
【図22】上記更なる他の実施形態の被押圧部押し込み動作を示す図。
【図23】上記更なる他の実施形態の被押圧部押し込み動作からの鎖錠動作を示す図。
【図24】上記更なる他の実施形態の反位鎖錠への移行過程を示す図。
【図25】上記更なる他の実施形態の反位鎖錠状態を示す。
【図26】図18に示した実施形態の変形例の定位転てつ機における要部の鎖錠状態にある平面図とその側面図とを同時に示した図。
【図27】磨耗する箇所の拡大図(課題の説明図)。
【図28】磨耗による影響を受ける部分の拡大図(課題の説明図)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0031】
<全体構成および設置例>
図1は、本発明に係る転てつ機の一実施の形態およびその設置例を示す平面図である。この転てつ機10は、筐体11と、鉄道用分岐器1の可動レールTを転換するために移動するラック23(図2参照)を備えた動作かん20と、この動作かん20のラック23と噛み合うことで動作かん20を移動させるピニオン40とを有している。ラック23とピニオン40は、少なくとも一方を間欠ラックないし間欠ピニオンで構成すればよいが、この実施の形態ではラック23を間欠ラックで構成するとともに、ピニオン40も間欠ピニオンで構成している(図2参照)。なお、図1においては鉄道用分岐器1の一部のみを描いているが、鉄道用分岐器1は公知の構成を採用しうる。
【0032】
この転てつ機10は、ピニオン40に設けられていてピニオン40とともに回転する鎖錠体50と、動作かん20に設けられていて動作かん20とともに移動し、前記鎖錠体50と当接する被規制部31、32(図2参照)を有していて該被規制部31、32が鎖錠体50と当接することで移動が規制される被鎖錠体30とを備えている。
【0033】
図2に示すように、被鎖錠体30には、被規制部31(32)が鎖錠体50と当接する前に鎖錠体50と当接して押される被押圧部31b(32b)を設けてある。一方、鎖錠体50には、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動が停止する前に前記被鎖錠体30における被押圧部31b(32b)と当接して該被押圧部31b(32b)を押し付けてラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を移動させる押し付け部51(52)および、該押し付け部51(52)にて押し付けられて移動した後の被鎖錠体30における被規制部31(32)に当接して被鎖錠体の移動を規制する規制部51(52)を設けてある。この実施の形態では、押し付け部51および規制部51並びに押し付け部52および規制部52をそれぞれ同一部分で構成したが、後述するように、押し付け部と規制部とは別部分で構成することも可能である。
【0034】
図1に示すように、この転てつ機10は、動作かん20がレールR(T)と直交するように配置して動作かんがエスケープクランクを介さずに分岐器を直接転換するように使用される。転てつ機10は、枕木2に筐体11をボルト12で固定することで枕木2上に設置される。動作かん20には公知のアジャストロッド3が連結され、このアジャストロッド3の図1の左方において連結部(該連結部は図1の左方にあって図示されていない)を介してアジャストロッド3に転てつ棒4が連結され、この転てつ棒4にボルトナット5で可動レール(トングレール)Tが連結されている。6は公知の構成を有する鎖錠かんであり、接続かん7を介して図示しない可動レールTに連結されている。後述するモータの駆動で動作かん20が矢印X1、X2方向へ移動することで可動レールTが移動して転てつ動作がなされる。
【0035】
<動作かん20>
図2は転てつ機10における要部の平面図とその側面図とを同時に示した図である。動作かん20は転てつ機10の筐体11にスライド可能に装着されている。図1に示すように筐体11の左右の側壁には動作かん20が挿通される穴11bが設けられている。動作かん20にはストッパ21、22が一体的に設けられている。動作かん20はこれらストッパ21、22が筐体11の側壁内面に当接する範囲内において図1に示す矢印X1、X2方向(レールRと直交する方向)へスライド可能である。動作かん20は、その移動範囲(ストローク分)にのみラック(ラック歯)23(図2参照)が形成されており、このラック23がピニオン40と噛み合うことによって図1に示す矢印X1、X2方向へ駆動される。
【0036】
<被鎖錠体30>
被鎖錠体30は、動作かん20の移動をロックすることを主目的とするものであり、前述した被規制部31、32を有している。また、前述した被押圧部31b、32bを有している。被鎖錠体30は、動作かん20の移動方向に向かって動作かん20と平行に設けられる板状体ないしブロック体で構成される。
【0037】
被規制部31、32は、被鎖錠体30の移動方向に関して両端角部に傾斜状に形成される。被規制部31は、図2に示すように被規制部31が鎖錠体50における規制部51と当接する位置関係において、鎖錠体50の回転中心O1を中心とする円弧面で構成されている。同様に、被規制部32は、図8に示すように被規制部32が鎖錠体50における規制部52と当接する位置関係において、鎖錠体50の回転中心O1を中心とする円弧面で構成されている。
【0038】
被押圧部31bは、被規制部31に連接している被鎖錠体30の側面(左側面)で構成されている。同様に、被押圧部32bは、被規制部32に連接している被鎖錠体30の側面(右側面)で構成されている。これら被押圧部31b、32bは、被鎖錠体30の移動方向に関し、ラック23の端歯23a、23bに対向する位置に配置されている。なお、鎖錠体50と被鎖錠体30との関係については後に詳しく説明する。図示の被鎖錠体30は、動作かん20と別部材で構成してボルト34で動作かん20の上面に固定したが、動作かん20と一体に構成することもできる。
【0039】
<ピニオン40>
ピニオン40は、動作かん20を移動させるためのものであり、ラック歯23と噛み合う歯(ピニオン歯)43を有している。図示のピニオン40は間欠ピニオンであるが、ラック23を間欠ラックとした場合、必ずしも間欠ピニオンとする必要はない。
【0040】
ピニオン40は軸41で筐体11に回転可能に取り付けられている。図1に示すように、筐体11にはモータ13が固定されており、このモータ13の出力軸に固定された駆動傘歯車14が従動傘歯車15bと噛み合い、従動傘歯車15bと一体の平歯車15cが平歯車16bと噛み合い、平歯車16bと一体の平歯車16cがピニオン40と一体の平歯車40bと噛み合っている。したがって、モータ13の正転または逆転によりピニオン40は図2において矢印RR方向またはRL方向に回転駆動される。
【0041】
<鎖錠体50>
鎖錠体50は、被鎖錠体30に作用して動作かん20の移動をロックすることを主目的とするもので、前述した被鎖錠体30における被規制部31に当接して被鎖錠体30(したがって動作かん20)の移動を規制する規制部51と、同じく被規制部32に当接して被鎖錠体30(したがって動作かん20)の移動を規制する規制部52とを有している。
【0042】
図2に示す鎖錠体50は、ピニオン40と同軸上においてピニオン40にボルト53で固定されたアーム状部材54と、このアーム状部材54の両端に軸55でそれぞれ回転可能に取り付けられたローラ51、52を有している。これらのローラ51、52が上記規制部51、52を構成している。
【0043】
ローラ51はラック23ピニオン40との噛合による動作かん20の移動が停止する前に被鎖錠体30における被押圧部31bと当接して(図11参照)該被押圧部31bを押し付けてラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を移動させる押し付け部51を構成している。
【0044】
同様に、ローラ52はラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動が停止する前に被鎖錠体30における被押圧部32bと当接して(図5参照)該被押圧部32bを押し付けてラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を移動させる押し付け部52を構成している。これらローラ51、52は、鎖錠体50における、ラック23とピニオン40との噛み合い開始部および噛合終了部に対応した位置に、それぞれ軸55で回転可能に設けられている。
【0045】
<作動>
以下、転てつ機10の作動について説明する。図2は動作かん20を矢印X2方向へ移動させた転てつ動作が終了して、動作かん20のX1方向への移動がロックされている状態を示している。
【0046】
この図2に示す状態から動作かん20を矢印X1方向へ移動させる転てつ動作を行う場合、モータ13の駆動でピニオン40をRR方向へ回転させる。なおピニオン40の回転は転てつ動作が終了するまで(図8の状態となるまで)連続して回転する。
【0047】
図2に示す状態からピニオン40がRR方向へ回転すると、図3に示す例では、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが始まる前に、鎖錠体50の規制部51が被鎖錠体30の被規制部31から外れる。これによって動作かん20は矢印X1方向へ移動し得る状態となる。さらなるピニオン40の回転で図4に示すようにピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが開始され、これによって動作かん20は矢印X1方向への移動を開始する。ただし、規制部51が被規制部31から外れるタイミングは、ラック歯23の噛み合いが始まると同時あるいはその直後としてもよい。
【0048】
さらなるピニオン40の回転で動作かん20が矢印X1方向へ移動し続け、その移動の終了が近づくと、図5に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが外れる前に、押し付け部兼規制部52が被鎖錠体30の被押圧部32bに当接する。
【0049】
その後、図6に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いは外れるが、この時、押し付け部兼規制部52は被鎖錠体30の被押圧部32bに当接したままである。したがって、さらなるピニオン40(したがって鎖錠体50)の回転により、被押圧部32bが押し付け部兼規制部52で押され、図7に示すように押し付け部兼規制部52と被押圧部32bとの当接が解除されるまで動作かん20は矢印X1方向へ移動し続けることとなる。
【0050】
すなわち、押し付け部52は、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置(より詳しくは、押し付け部52による押し付け動作がないとしたならば、ラック23とピニオン40との噛合によって移動して停止したであろう位置(図8における仮想線23、24参照))よりもさらに動作かん20を矢印X1方向へ移動させる。その移動量を図8にSで示す。
【0051】
上記動作かん20の移動後のさらなるピニオン40および鎖錠体50の回転により、図8に示すように、押し付け部兼規制部52は被規制部32と当接し、これによって動作かん20の矢印X2方向方向への移動が規制され、転てつ動作が終了する。
【0052】
なお、この状態(図8)において、被規制部32は鎖錠体50の回転中心O1を中心とする円弧面で構成されていることから、動作かん20に対して矢印X2方向への外力が作用しても、被規制部32から鎖錠体50に対して作用する力F1の方向は、ピニオン40および鎖錠体50の回転中心O1に向かう方向となる。したがって、ピニオン40および鎖錠体50を回転させるモーメントは生じないため、規制部52による規制は確実になされる。
【0053】
また、この状態において、何らかの理由により動作かん20が矢印X1方向へ移動しようとしても、ストッパ21(図1、図2参照)が筐体11の内面に当接することによって、動作かん20の矢印X1方向への移動も規制される。
【0054】
その後、図8に示す状態から動作かん20を矢印X2方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、モータ13の駆動でピニオン40をRL方向へ回転させる。ここで、上記押し付けによる移動量Sが大きすぎると、ピニオン40がRL方向(逆の転てつ動作の場合はRR方向)へ回転した際にラック23との噛み合いが行われなくなってしまうから、移動量Sはピニオン40とラック23との噛み合いが可能な範囲内にラック23が位置するような移動量とする。
【0055】
ピニオン40がRL方向へ回転することによって、転てつ機10は上述した作動を左右対称にした動作を行い、図2に示す状態となって転てつ動作が終了する。
【0056】
念のためにその動作を図8〜図13、および図2を参照して説明する。図8に示す状態から動作かん20を矢印X2方向へ移動させる転てつ動作を行う場合、モータ13の駆動でピニオン40をRL方向へ回転させる。なおピニオン40の回転は転てつ動作が終了するまで(図2の状態となるまで)連続して回転する。
【0057】
図8に示す状態からピニオン40がRL方向へ回転すると、図9に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが始まる前に、鎖錠体50の規制部52が被鎖錠体30の被規制部32から外れる。これによって動作かん20は矢印X2方向へ移動し得る状態となる。さらなるピニオン40の回転で図10に示すようにピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが開始され、これによって動作かん20は矢印X2方向への移動を開始する。
【0058】
さらなるピニオン40の回転で動作かん20が矢印X2方向へ移動し続け、その移動の終了が近づくと、図11に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが外れる前に、押し付け部兼規制部51が被鎖錠体30の被押圧部31bに当接する。その後、図12に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いは外れるが、この時、押し付け部兼規制部51は被鎖錠体30の被押圧部31bに当接したままである。したがって、さらなるピニオン40(したがって鎖錠体50)の回転により、被押圧部31bが押し付け部兼規制部51で押され、図13に示すように押し付け部兼規制部51と被押圧部31bとの当接が解除されるまで動作かん20は矢印X2方向へ移動し続けることとなる。すなわち、押し付け部51は、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を矢印X2方向へ移動させる。
【0059】
その後のさらなるピニオン40および鎖錠体50の回転により、図2に示すように、押し付け部兼規制部51は被規制部31と当接し、これによって動作かん20の矢印X1方向への移動が規制され、転てつ動作が終了する。
【0060】
この状態(図2)において、被規制部31は鎖錠体50の回転中心O1を中心とする円弧面で構成されていることから、前述したように規制部51による規制は確実になされる。また、この状態において、何らかの理由により動作かん20が矢印X2方向へ移動しようとしても、ストッパ22(図1、図2参照)が筐体11の内面に当接することによって、動作かん20の矢印X2方向への移動も規制される。
【0061】
<作用効果>
以上のような転てつ機10によれば、次のような作用効果が得られる。
【0062】
(a)この転てつ機10は、鉄道用分岐器1の可動レールTを転換するために移動するラック23を備えた動作かん20と、この動作かん20のラック23と噛み合うことで動作かん20を移動させるピニオン40とを有し、これらラック23とピニオン40のうち少なくとも一方が間欠ラックないし間欠ピニオンで構成され、ピニオン40に設けられていてピニオン40とともに回転する鎖錠体50と、動作かん20に設けられていて動作かん20とともに移動し、鎖錠体50と当接する被規制部被規制部31、32を有していて被規制部31、32が鎖錠体50と当接することで移動が規制される被鎖錠体30とを備えているので、簡素な構成で転てつ動作を行うことが可能である。
【0063】
そして、この転てつ機10によれば、被鎖錠体30には、被規制部31(32)が鎖錠体50と当接する前に鎖錠体50と当接して押される被押圧部31b(32b)が設けられているとともに、鎖錠体50には、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動が停止する前に被鎖錠体30における被押圧部31b(32b)と当接して被押圧部31b(32b)を押し付けてラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を移動させる押し付け部51(52)および、押し付け部51(52)にて押し付けられて移動した後の被鎖錠体30における被規制部31(32)に当接して被鎖錠体30の移動を規制する規制部51(52)が設けられているので、転てつ動作時、動作かん20は、ピニオン40との噛合によって移動した後、さらに押し付け部51(52)で押し付けられて移動し、その後、押し付け部51(52)が被鎖錠体30における被規制部31(32)に当接することによって、移動が規制されることとなる。
【0064】
ラック23とピニオン40との噛合による移動停止位置からの動作かん20のさらなる移動は、鎖錠体50の押し付け部51(52)と被鎖錠体30の被規制部31(32)との当接による摩耗に起因する隙間を吸収する役割を果たす。この点について、図14を参照して説明する。
【0065】
図14は図2の部分拡大図である。図14において、仮想線23、43はラック23とピニオン40との噛合による矢印X2方向への移動停止位置すなわち、押し付け部51による押し付け動作がないとしたならば、ラック23とピニオン40との噛合によって移動して停止したであろう位置(噛み合い解除位置)を示している。Sは、ラック23とピニオン40との噛合による移動停止位置からの動作かん20(したがってラック23)のさらなる移動量を示している。Cはこの転てつ機10を長期使用することにより規制部51(52)と被規制部31(32)の間に生じる摩耗量の一例を示している。S1は摩耗量Cの矢印X1、X2方向成分を示している。
【0066】
図14において、仮想線23、43はラック23とピニオン40との噛合による矢印X2方向への移動停止位置を示しているから、動作かん20が何らかの理由により仮想線23で示す位置よりも矢印X1方向へシフトした状態でピニオン40がRR方向へ回転すると、図28を参照して説明した不適切な噛み合いが生じることとなる。別言すれば、動作かん20が仮想線23で示す位置よりも矢印X1方向へシフトした状態とならなければ不適切な噛み合いは生じないと言うことになる。
【0067】
この実施の形態の転てつ機10を長期使用すると、規制部51(52)と被規制部31(32)の間には摩耗が生じ、その量をCとすれば、動作かん20および被鎖錠体30は摩耗が生じていなかった使用初期状態における停止位置(実線30参照)よりもS1だけ矢印X1方向へシフトした位置で停止することとなる。
【0068】
しかし、上述したように、動作かん20の停止位置が仮想線23で示す位置よりも矢印X1方向へシフトしなければ不適切な噛み合いは生じないから、この実施の形態によれば、S1>Sとならない限り、不適切な噛み合いは生じないこととなる。
【0069】
すなわち、ラック23とピニオン40との噛合による移動停止位置からさらに動作かん20が移動したその移動量Sが、鎖錠体50の押し付け部51(52)と被鎖錠体30の被規制部31(32)との当接による摩耗に起因する隙間の大きさ(正確にはその矢印X1、X2方向成分)S1よりも小さくならない限り、仮に何らかの理由によって上記隙間Cが生じた後にその隙間S1を埋めるように動作かん20が移動したとしても、その後のピニオン40とラック23との噛合は適切に行われることとなる。
【0070】
したがって、ラック23とピニオン40の歯が不適切に摩耗ないし削られるという事態が従来より長期に亘って防止され、結果として従来よりも長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られることとなる。
【0071】
(b)さらに、この実施の形態では、押し付け部51、52を、鎖錠体50に対して回転可能に設けたローラで構成するとともに、該ローラで規制部(51、52)も構成してあるので、押し付け部および規制部51、52の摩耗を著しく低減でき、従来よりも一層長期にわたって適正な転てつ動作が確実に得られることとなる。
【0072】
<他の実施の形態1>
図15は他の実施の形態1を示す図で、要部の平面図とその側面図とを同時に示した図である。同図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0073】
この実施の形態が上述した実施の形態と異なる点は、被鎖錠体30の被規制部31、32と当接する鎖錠体50の規制部を、ピニオン40の歯先円(図示せず)と同心で曲率半径が被規制部31(32)と同一の円弧面56cを有する円弧体(扇体)56で構成し、その両端の角部で押し付け部51b、52bを構成した点にあり、その他の点に変わりはない。押し付け部51b、52bをなす円弧体56の角部は、それぞれ被押圧部31b、32bを円滑に押すことができるようにRが付けてある。
【0074】
この実施の形態によっても、上述した実施の形態と同様な作動が得られる。すなわち、図15に示す状態から動作かん20を矢印X1方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、ピニオン40をRR方向へ回転させ、鎖錠体50の規制部56cを被鎖錠体30の被規制部31から外し、ピニオン40とラック23との噛み合いにより、動作かん20を矢印X1方向へ移動させる。その矢印X1方向への移動の終了が近づくと、図16に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが外れる前に、押し付け部52bが被鎖錠体30の被押圧部32bに当接する。
【0075】
その後、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いは外れるが、押し付け部52bは被鎖錠体30の被押圧部32bに当接したままであるので、さらなるピニオン40(したがって鎖錠体50)の回転により、被押圧部32bが押し付け部52bで押され、図17に示すように押し付け部52bと被押圧部32bとの当接が解除されるまで動作かん20は矢印X1方向へ移動する。すなわち、押し付け部52bは、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20を矢印X1方向へ移動させる。
【0076】
その後のさらなるピニオン40および鎖錠体50の回転により、規制部56cが被規制部32と当接し、これによって動作かん20の矢印X2方向への移動が規制され、転てつ動作が終了する(この状態は図示しないが図15に示す状態と左右対称状態である)。なお、その後、動作かん20を矢印X2方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、ピニオン40をRL方向へ回転させると、図15に示す状態となって転てつ動作が終了する。この実施の形態によっても、上記(a)と同様な作用効果が得られる。
【0077】
<他の実施の形態2>
図18は他の実施の形態2を示す図で、要部の平面図とその側面図とを同時に示した図である。同図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0078】
この実施の形態が上述した実施の形態と異なる点は、押し付け部51、52を、鎖錠体50における、ラック23とピニオン40との噛み合い開始部および噛合終了部に対応した位置に、それぞれ軸55で回転可能に設けたローラ51、52で構成するとともに、被鎖錠体30の被規制部31、32と当接する鎖錠体50の規制部を、ピニオン40の歯先円(図示せず)と同心で曲率半径がピニオン40の中心O1から前記ローラ51(52)の外端までの長さである、前記被規制部31(32)と当接可能な円弧面56cを有する円弧体(扇体)56で構成した点にあり、その他の点に変わりはない。
【0079】
この実施の形態では、押し付け部をなすローラ51、52を固定する円弧体56の角部は、それぞれローラ51、52の半径と同じ曲率半径の湾曲面で構成することもできるし、図示のようにローラ51、52の半径よりもΔrだけ小さな曲率半径の湾曲面で構成することもできる。
【0080】
円弧体56の角部をローラ51、52の半径と同じ曲率半径の湾曲面で構成した場合には、被規制部31と当接する規制部は、ローラ51(52)と円弧面56cとで構成される。
【0081】
円弧体56の角部を図示のようにローラ51、52の半径よりもΔrだけ小さな曲率半径の湾曲面で構成し、円弧面56cの曲率半径を、図示のようにピニオン40の中心O1からローラ51(52)の外端までの長さよりもΔrだけ小さな曲率半径とした場合、円弧面56cは、基本的には被規制部31、32とは当接しない。しかし、図25に示すように、押し付け部52(51)が被規制部32(31)から脱するまでピニオン40を回転させるようにモータ13を制御するように構成した場合、動作かん20の矢印X2方向への移動は被規制部32(31)が円弧面56cと当接することによって規制される。すなわち、円弧面56cは規制部を構成することとなる。また、円弧面56cの曲率半径をΔrだけ小さな曲率半径とした場合でも、ローラ51、52が摩耗したり、あるいは押し付け部52(51)が被規制部32(31)から脱しないようにピニオン40を回転させるようにモータ13を制御するように構成した場合(図18参照)において、何らかの理由によって、ピニオン40が所定位置より過回転した後に動作かん20が移動しようとしたときにも円弧面56cは被規制部31、32と当接することとなる。
【0082】
この実施の形態によっても、上述した実施の形態と同様な作動が得られる。
【0083】
念のために、図18〜図25を参照して作動を簡単に説明する。図18は動作かん20を矢印X2方向へ移動させた転てつ動作が終了して、動作かん20のX1方向への移動がロックされている状態を示している。なお、この状態は、押し付け部51(52)が被規制部31(32)から脱しないようにピニオン40を回転させるようにモータ13を制御するように構成した状態を示している。
【0084】
この図18に示す状態から動作かん20を矢印X1方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、ピニオン40をRR方向へ回転させる。すると、図19に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが始まる前に、鎖錠体50の規制部51ないし円弧面56cが被鎖錠体30の被規制部31から外れる。これによって動作かん20は矢印X1方向へ移動し得る状態となる。さらなるピニオン40の回転で図20に示すようにピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが開始され、これによって動作かん20は矢印X1方向への移動を開始する。
【0085】
さらなるピニオン40の回転で動作かん20が矢印X1方向へ移動し続け、その移動の終了が近づくと、図21に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いが外れる前に、押し付け部52が被鎖錠体30の被押圧部32bに当接する。
【0086】
その後、図22に示すように、ピニオン歯43とラック歯23との噛み合いは外れるが、この時、押し付け部52は被鎖錠体30の被押圧部32bに当接したままである。したがって、さらなるピニオン40の回転により、被押圧部32bが押し付け部52で押され、図23に示すように押し付け部と被押圧部32bとの当接が解除されるまで動作かん20は矢印X1方向へ移動し続けることとなる。すなわち、押し付け部52は、ラック23とピニオン40との噛合による動作かん20の移動停止位置よりもさらに動作かん20をS(図24参照)だけ矢印X1方向へ移動させる。
【0087】
その後のさらなるピニオン40および鎖錠体50の回転により、図24に示す状態を経て図25に示すように、規制部56cは被規制部32と当接し得る状態となり、これによって動作かん20の矢印X2方向への移動が規制され、転てつ動作が終了する。なお、図25に示す状態は、押し付け部52(51)が被規制部32(31)から脱するまでピニオン40を回転させるようにモータ13を制御するように構成した場合の状態を示している。
【0088】
その後、図25に示す状態から動作かん20を矢印X2方向へ移動させる転てつ動作を行う場合には、モータ13の駆動でピニオン40をRL方向へ回転させる。ピニオン40がRL方向へ回転することによって、転てつ機10は上述した作動を左右対称にした動作を行い、図25と左右対称な状態または図18に示す状態となって転てつ動作が終了する。
【0089】
この実施の形態によっても、上記(a)と同様な作用効果が得られる。さらに、この実施の形態によれば、押し付け部51、52がローラで構成されていることで押し付け部51、52による押し付け動作を円滑にできると同時に押し付け部51、52および被押圧部31b、32bの摩耗を低減でき、また、何らかの理由でピニオンが過回転した場合でも、円弧体56によって被規制部31、32を確実に規制できる。
【0090】
<変形例>
図26は図18に示した他の実施の形態2の変形例を示す図で、要部の平面図とその側面図とを同時に示した図である。同図において、上述した実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
【0091】
この変形例が図18に示した実施の形態と異なる点は、ローラ51、52を、円弧体56の側面にではなく円弧体56の内部に軸55による両端支持状態で回転可能に支持した点にあり、その他の点に変わりはない。
【0092】
このように構成すると、ローラ51、52が両端支持状態となっていることによって、より円滑な回転動作が得られて摩耗しにくくなり、したがって、より長期に亘って、確実な転てつ動作が得られる。また、ローラ51、52を、円弧体56の側面にではなく円弧体56の内部に支持したので、転てつ機10の軸41方向の厚さを小さくすることができる。
【0093】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0094】
1:鉄道用分岐器、T:可動レール、20:動作かん、23:ラック(ラック歯)、30:被鎖錠体、31、32:被規制部、31b、32b:被押圧部、40:ピニオン、50:鎖錠体、51、52:規制部(押し付け部)、56:円弧体、56c:円弧面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道用分岐器の可動レールを転換するために移動するラックを備えた動作かんと、前記動作かんの前記ラックと噛み合うことで前記動作かんを移動させるピニオンとを有し、前記ラックと前記ピニオンのうち少なくとも一方が間欠ラックないし間欠ピニオンで構成され、
前記ピニオンに設けられていて該ピニオンとともに回転する鎖錠体と、
前記動作かんに設けられていて該動作かんとともに移動し、前記鎖錠体と当接する被規制部を有していて該被規制部が前記鎖錠体と当接することで移動が規制される被鎖錠体とを備えた転てつ機であって、
前記被鎖錠体には、前記被規制部が前記鎖錠体と当接する前に前記鎖錠体と当接して押される被押圧部を設けるとともに、
前記鎖錠体には、前記ラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動が停止する前に前記被鎖錠体における前記被押圧部と当接して該被押圧部を押し付けて前記ラックと前記ピニオンとの噛合による前記動作かんの移動停止位置よりもさらに前記動作かんを移動させる押し付け部および、該押し付け部にて押し付けられて移動した後の前記被鎖錠体における前記被規制部に当接して前記被鎖錠体の移動を規制する規制部を設けたことを特徴とする転てつ機。
【請求項2】
請求項1において、
前記押し付け部を、前記鎖錠体に対して回転可能に設けたローラで構成するとともに、該ローラで前記規制部も構成したことを特徴とする転てつ機。
【請求項3】
請求項1において、
前記押し付け部を、前記鎖錠体における、前記ラックと前記ピニオンとの噛み合い開始部および噛合終了部に対応した位置に、それぞれ回転可能に設けたローラで構成するとともに、
前記規制部を、前記ピニオンの歯先円と同心で曲率半径が前記ピニオンの中心から前記ローラの外端までの長さである、前記被規制部と当接可能な円弧面を有する円弧体で構成したことを特徴とする転てつ機。
【請求項1】
鉄道用分岐器の可動レールを転換するために移動するラックを備えた動作かんと、前記動作かんの前記ラックと噛み合うことで前記動作かんを移動させるピニオンとを有し、前記ラックと前記ピニオンのうち少なくとも一方が間欠ラックないし間欠ピニオンで構成され、
前記ピニオンに設けられていて該ピニオンとともに回転する鎖錠体と、
前記動作かんに設けられていて該動作かんとともに移動し、前記鎖錠体と当接する被規制部を有していて該被規制部が前記鎖錠体と当接することで移動が規制される被鎖錠体とを備えた転てつ機であって、
前記被鎖錠体には、前記被規制部が前記鎖錠体と当接する前に前記鎖錠体と当接して押される被押圧部を設けるとともに、
前記鎖錠体には、前記ラックとピニオンとの噛合による動作かんの移動が停止する前に前記被鎖錠体における前記被押圧部と当接して該被押圧部を押し付けて前記ラックと前記ピニオンとの噛合による前記動作かんの移動停止位置よりもさらに前記動作かんを移動させる押し付け部および、該押し付け部にて押し付けられて移動した後の前記被鎖錠体における前記被規制部に当接して前記被鎖錠体の移動を規制する規制部を設けたことを特徴とする転てつ機。
【請求項2】
請求項1において、
前記押し付け部を、前記鎖錠体に対して回転可能に設けたローラで構成するとともに、該ローラで前記規制部も構成したことを特徴とする転てつ機。
【請求項3】
請求項1において、
前記押し付け部を、前記鎖錠体における、前記ラックと前記ピニオンとの噛み合い開始部および噛合終了部に対応した位置に、それぞれ回転可能に設けたローラで構成するとともに、
前記規制部を、前記ピニオンの歯先円と同心で曲率半径が前記ピニオンの中心から前記ローラの外端までの長さである、前記被規制部と当接可能な円弧面を有する円弧体で構成したことを特徴とする転てつ機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2011−88454(P2011−88454A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241060(P2009−241060)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
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