説明

転写テープ

【課題】 隠蔽効果の高いパターン形状の隠蔽層を備えた転写テープを提供する。
【解決手段】 本発明の転写テープ1は、基材層2と、塗布膜層7とを備え、塗布膜転写具50によって転写対象の表面に塗布膜層7を転写する転写テープ1において、塗布膜層7は、隠蔽用のパターン形状が印刷されたパターン層42を備え、該パターン層42のパターン形状は、複数のアルファベットが転写テープ1の長手方向に対して斜めに配列されており、塗布膜層7は、更に媒体に色素が含有されたインク層32を備え、該インク層32が表面側に位置しパターン層42が裏面側に位置するように積層されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜転写具において使用する転写テープに関する。
【背景技術】
【0002】
糊の貼付や誤字の修正に用いる塗布膜転写具は、オフィス文具として欠かせないものとなっている。最も一般的な塗布膜転写具は、誤字等があった箇所にホワイト膜を転写することにより誤字を隠し、ホワイト膜上に訂正後の文字を書き込むことができるといった修正テープの塗布膜転写具である。
【0003】
しかし、このような修正テープの塗布膜転写具を用いてホワイト膜を薄い紙等に転写した場合、ホワイト膜が光を通してしまうため、紙を蛍光灯等の光に透かした状態で紙の裏面側からホワイト膜が転写されている位置を見ると、ホワイト膜で隠した位置に記載されていた文字等が読み取れてしまうという問題点があった。
【0004】
又、近年、個人情報保護法等の施行等に伴い、個人や企業が個人情報に関しての取り扱いに敏感になっており、個人情報が記載された文章等はシュレッダーを掛けて処分する、或いは、個人情報が記載された箇所を転写テープ、判子、マジック等で上書きした後に処分するといった方法が取られている。
【0005】
このように塗布膜転写具を用いて個人情報を隠す、或いは、ホワイト膜の下に記載された内容を隠すための提案として、特開平11−343467号公報(特許文献1)では、ホワイト膜の裏側に隠蔽層を設けることにより、裏面側から読み取られることを防止する提案がなされており、この特許文献1における隠蔽層に印刷されたパターン形状としては、太さの等しい縦線が配列されたもの、太さの異なる縦線が配列されたもの、縞模様、水玉の大きさが等しい水玉模様、水玉の大きさが異なる水玉模様等が提案されている。又、隠蔽層のパターン形状としては、アルファベットや片仮名等の文字を縦横に規則的に配列したものもある。
【特許文献1】特開平11−343467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような転写テープのパターン形状では、線や水玉、文字等が規則的に配列されているため空白部分も規則的に存在し、隠蔽する文字等のポイント数によっては隠蔽できない場合があった。又、転写テープを製造する場合、パターン形状が印刷された大きなシートをテープ状に裁断して製造するが、裁断位置によっては空白部分の面積が広い転写テープが発生してしまい、裁断した位置によって隠蔽効果にムラが発生してしまうという問題点もあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、隠蔽効果の高いパターン形状の隠蔽層を備えた転写テープを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材層と、塗布膜層とを備え、塗布膜転写具によって転写対象の表面に塗布膜層を転写する転写テープにおいて、前記塗布膜層は、隠蔽用のパターン形状が印刷されたパターン層を備え、該パターン層のパターン形状は、複数のアルファベットが前記転写テープの長手方向に対して斜めに配列されているものである。
【0009】
又、本発明において前記塗布膜層は、媒体に色素が含有されたインク層を備え、該インク層が表面側に位置し前記パターン層が裏面側に位置するように積層されることもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、隠蔽効果の高いパターン形状の隠蔽層を備えた転写テープを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態の転写テープ1は、基材層2と、塗布膜層7とを備え、塗布膜転写具50によって転写対象の表面に塗布膜層7を転写する転写テープ1において、塗布膜層7は、隠蔽用のパターン形状が印刷されたパターン層42を備え、該パターン層42のパターン形状は、複数のアルファベットが転写テープ1の長手方向に対して斜めに配列されているものである。
【0012】
又、塗布膜層7は、媒体に色素が含有されたインク層32を備え、該インク層32が表面側に位置しパターン層42が裏面側に位置するように積層されているものである。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例に係る転写テープ1に関して図に基づいて詳説する。本実施例の転写テープ1は、図1に示すように、基材層2と、アンカー層3と、隠蔽層4とが積層されて形成されるものであり、塗布膜転写具によって転写対象の表面に押圧転写することにより、アンカー層3と隠蔽層4とが塗布膜層7として転写対象の表面に転写され、転写対象に記載された文字等を隠すことができるものである。又、転写テープ1は、基材層2及びアンカー層3並びに隠蔽層4が積層された大きなシートを細長くテープ状に裁断することによって製造され、裁断された一枚一枚が転写テープ1として塗布膜転写具に組み込まれて使用されるものである。
【0014】
そして、基材層2は、基材22と、基材22の表裏両面に積層された第一剥離層21及び第二剥離層23とから形成されるものである。又、この第一剥離層21は、転写テープ1が後述する塗布膜転写具の繰出ボビン等に巻装されている場合に最上層とされる第二粘着層43と基材22を剥離させるために形成された離型剤の層であり、シリコーン樹脂等によって形成されているものである。更に、基材22は、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)等の樹脂フィルムで形成された丈夫な層である。又、第二剥離層23は、後述するアンカー層3の第一粘着層31と基材層2を剥離させるために形成された離型剤の層であってシリコーン樹脂等によって形成されたものである。この基材層2は、柔らかく脆いアンカー層3や隠蔽層4を保持及び保護するための層であり、塗布膜転写具における転写時には、転写テープ1を繰り出すために巻取ボビンによって巻き取られる層である。
【0015】
又、アンカー層3は、インク層32と、インク層32と第二剥離層23の間に積層される第一粘着層31とから形成されるものである。このインク層32は、媒材とこの媒材に含有された例えば白色の着色顔料から形成された層であり、第一粘着層31は、アクリル系等の感圧接着剤の層であって、基材層2とアンカー層3を接着させるための層である。
【0016】
更に、隠蔽層4は、パターン形状等が印刷されるパターン層42と、パターン層42とアンカー層3との間に配置された透明層41と、パターン層42に積層された第二粘着層43とから形成されるものである。このパターン層42は、媒材と媒材に印刷されたパターン形状を形成する着色顔料とから形成されるものであり、透明層41は、アンカー層3のインク層32とパターン層42とを区画する樹脂等で形成された層であり、第二粘着層43は、アクリル系等の感圧接着剤の層であり、塗布膜層7を転写対象の表面に接着させるための層である。尚、パターン層42にパターン形状を形成するため媒材に印刷する方法は、活版印刷やオフセット印刷、グラビア印刷等、公知の印刷技術を利用するものである。
【0017】
又、パターン層42に印刷されたパターン形状は、図2(a)及び図2(a)に示すパターンの一部を拡大した図2(b)に示すように、向きや傾きの異なる6ポイント(point)の大文字アルファベットが斜めに等間隔で配列された形状とされているものである。ここで、1ポイント(point)は一般的に縦横の長さが1/72インチとされており、1インチを25mmとすると、1ポイントは縦横の長さが0.35mmとなり、6ポイントの場合に縦横の長さは2.1mmとなる。尚、本実施例では6ポイントの大文字アルファベットを斜めに配置しているが、転写対象に記載された文字の大きさによって、テープ幅の3割から8割程の大きさの文字を使用することがあり、6ポイントに限定しているわけではなく、ビジネス文章等で用いられる文字の大きさが一般的に10ポイント〜12ポイントであるため、このポイントの文字を消すのに適した6ポイントの大文字アルファベットを使用しているものである。
【0018】
そして、転写テープ1は、基材層2の第一剥離層21を最下層とし、第一剥離層21上に基材22が積層され、基材22上に第二剥離層23が積層され、第二剥離層23上にアンカー層3の第一粘着層31が積層され、第一粘着層31上にインク層32が積層され、インク層32上に隠蔽層4の透明層41が積層され、透明層41上にパターン層42が積層され、パターン層42上である最上層に第二粘着層43が積層されているものである。又、転写テープ1は、これらの層から形成されたシートを、図2(c)に示すような細長いテープ状に裁断することによって製造されるものである。
【0019】
又、本実施例における転写テープ1は、図3に示すような、塗布膜転写具50によって転写対象の表面に転写されるものであり、この塗布膜転写具50は、転写テープ1が巻装された供給ボビン51と、基材層2のみを巻き取る巻取ボビン52と、塗布膜層7を転写対象の表面に押圧転写する転写ヘッド53と、カバー部材54とから形成されるものである。この塗布膜転写具50は、供給ボビン51と巻取ボビン52が図示しない歯車によって連動して回転するようにカバー部材54に軸着され、供給ボビン51に巻装された転写テープ1の一端が転写ヘッド53を介して巻取ボビン52と連結されているものである。そして、転写ヘッド53等を転写対象の表面に押圧した状態で前或いは後に稼動させると、転写テープ1が引っ張られて供給ボビン51から新しい転写テープ1が繰り出され、塗布膜層7が基材層3から剥離して転写対象の表面に粘着され、基材層3は歯車によって供給ボビン51の回転に従って回転する巻取ボビン52に巻き取られるものである。
【0020】
次に本実施例の効果について述べる。転写テープ1を製造するためにシートをテープ上に裁断する場合において、パターン層42に印刷されたパターン形状が、図4(a)に示すようにアルファベットが規則的に横方向に配列された従来のパターン形状である場合、裁断位置が図4(b)及び図4(c)に示すように文字と文字の間に来たときには、裁断部の近傍に空白の領域が増えてしまうという問題があり、裁断位置によって隠蔽効果に差が出てしまっていた。又、横方向に規則的に配列されているため、転写対象に記載された小さな文字等がアルファベットとアルファベットの間に位置する場合には、容易に読み取れてしまうことがあった。
【0021】
しかし、本実施例の転写テープ1によれば、パターン形状をアルファベットを斜めに配列した形状とすることにより、転写テープ1の製造時にシートをテープ状に横方向に裁断した場合においてもアルファベット間に裁断位置が来ることが無いため、裁断位置によって隠蔽効果の差が出ることが無く、又、転写対象に記載された小さな文字等がアルファベットとアルファベットの間に位置した場合においても、空白が横方向に連続することがないため、例え一文字や二文字を読み取られた場合でも全てを読み取られることが無く、隠蔽効果を高めることができる。
【0022】
尚、本実施例においては、白色顔料のアンカー層3を設けて誤記した文字上に正しい文字を書き直すことができるようにアンカー層3と隠蔽層4を積層した転写テープ1としているが、アンカー層3を形成せずに基材層2と隠蔽層4のみからなる転写テープ1とし、単純に転写対象に記載された文字等を隠すことができるようにした個人情報保護テープとして使用することもできる。又、パターン形状として、大小異なるアルファベットや片仮名をランダムに配置しても同様の効果を得ることができる。
【0023】
そして、本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る転写テープの断面図。
【図2】本発明に係る転写テープのパターン形状を説明する図。
【図3】本発明に係る転写テープが組み込まれた塗布膜転写具の使用説明図。
【図4】比較例における転写テープのパターン形状を説明する図。
【符号の説明】
【0025】
1 転写テープ 2 基材層
3 アンカー層 4 隠蔽層
7 塗布膜層 21 第一剥離層
22 基材 23 第二剥離層
31 第一粘着層 32 インク層
41 透明層 42 パターン層
43 第二粘着層 50 塗布膜転写具
51 供給ボビン 52 巻取ボビン
53 転写ヘッド 54 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、塗布膜層とを備え、塗布膜転写具によって転写対象の表面に塗布膜層を転写する転写テープにおいて、
前記塗布膜層は、隠蔽用のパターン形状が印刷されたパターン層を備え、
該パターン層のパターン形状は、複数のアルファベットが前記転写テープの長手方向に対して斜めに配列されていることを特徴とする転写テープ。
【請求項2】
前記塗布膜層は、媒体に色素が含有されたインク層を備え、該インク層が表面側に位置し前記パターン層が裏面側に位置するように積層されていることを特徴とする請求項1に記載の転写テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−12671(P2010−12671A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173944(P2008−173944)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(301033282)プラスステーショナリー株式会社 (24)