説明

転写装置

【課題】転写バリの発生を防止することが可能な転写装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、転写装置は、基材とこの基材上に設けられた表面保護層とを有する転写媒体14を、転写位置を通して搬送する供給機構19と、転写位置を通して印刷媒体10を搬送する媒体搬送機構41と、ヒートローラ26およびこのヒートローラに所定の隙間を置いて対向するバックアップローラ28を有し、前記ヒートローラとバックアップローラとの間に前記転写媒体および印刷媒体を重ねた状態で通し、前記転写媒体を加圧および加熱して前記表面保護層を前記印刷媒体表面に転写する転写ユニット30と、転写後、転写媒体の基材を印刷媒体から剥離する第1剥離機構25と、転写後、印刷媒体の搬送方向後端側を転写媒体から離れる方向に変位させ前記転写された表面保護層を前記後端の位置で前記基材から剥離する第2剥離機構60と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、カードや通帳等の印刷媒体の表面に保護膜等の薄いフィルムを形成する転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カードや通帳類の印刷装置においては、印刷したカードや通帳類の表面に、これらを保護する表面保護層の転写し形成することが求められている。つまり、カードにおいては、IC等埋め込みに起因する表面凹凸が存在し、また、通帳類においては、特殊な表面コートをしないと十分な表面平滑性が得られない、など、表面保護層を直接転写する上で障害となる要因がある。そのため、これらの要因を許容する保護層の転写方法が求められている。
【0003】
表面凹凸のあるカード表面や、紙葉類など表面の平滑性が良くない印刷媒体に表面保護層を形成する方法の1つとして、転写フィルムを用いた形成方法がある。一般に、転写フィルムは、基材上に表面保護層(必要に応じて剥離層、接着層)などの薄膜層が塗布されている。転写部にて、ヒートローラとバックアップローラ間に転写フィルムと印刷媒体を挟み込んで圧力と熱を与え、画像が形成された印刷媒体の表面に表面保護層を転写する。次いで、剥離部にて保護層が転写された印刷媒体から転写フィルムの基材をそれぞれ別の方向へ搬送することにより剥離する。転写後、表面保護層は硬化し、印刷媒体上に転写された記録情報の退色や削れを保護する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−423280号公報
【特許文献2】特開2000−120046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した印刷装置における転写方法では、印刷媒体表面に表面保護層を転写した際、印刷媒体の周囲に余分な表面保護層(転写バリと称する)が付着する。このような転写バリは、印刷媒体の搬送方向に発生し、搬送方向の先端と後端とでは、後端側に発生し易い。
【0006】
転写バリは、印刷装置の機体内を浮遊し、印画や印字に影響を及ぼす場合がある。転写後、余分な転写バリが搬送中に剥がれ、ローラに付着すると搬送ジャムを引き起こす原因となる。また、転写バリがあると、完成状態における印刷媒体の美観が損ねられる。美観を保つために、後から転写バリを削り落とすことも考えられるが、この場合、印刷媒体に傷を付けてしまう可能性があり、廃棄品を増やす要因となる。
【0007】
転写バリの発生を考慮して、転写フィルムの供給量を多くすると、例えば、転写フィルムの巻取り量を多くすると、装置が大型化してしまい、設置領域や保守エリアを大きく取らなければならない。
【0008】
この発明の課題は、転写バリの発生を防止することが可能な転写装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、転写装置は、基材とこの基材上に設けられた表面保護層とを有する転写媒体を、転写位置を通して搬送する供給機構と、前記転写位置を通して印刷媒体を搬送する媒体搬送機構と、ヒートローラおよびこのヒートローラに所定の隙間を置いて対向するバックアップローラを有し、前記ヒートローラとバックアップローラとの間に前記転写媒体および印刷媒体を重ねた状態で通し、前記転写媒体を加圧および加熱して前記表面保護層を前記印刷媒体表面に転写する転写ユニットと、前記転写後、前記転写媒体の基材を前記印刷媒体から剥離する第1剥離機構と、前記転写後、前記印刷媒体の搬送方向後端側を転写媒体から離れる方向に変位させ前記転写された表面保護層を前記後端の位置で前記基材から剥離する第2剥離機構と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るカード発行機を概略的に示す側面図。
【図2】図2は、前記カード発行機を概略的に示すブロック図。
【図3】図3は、印刷媒体としてのカードを示す平面図。
【図4】図4は、カードおよび転写フィルムの断面図。
【図5】図5は、前記カード発行機の第2転写装置を一部破断して示す側面図。
【図6】図6は、前記第2転写装置の転写ユニットを概略的に示す側面図。
【図7】図7は、前記転写ユニットのヒートローラおよびバックアップローラを示す側面図。
【図8】図8は、変形例に係る転写ユニットを示す側面図。
【図9】図9は、転写動作時における前記第1の実施形態に係る第2転写装置を一部破断して示す側面図。
【図10】図10は、前記第2転写装置の第2剥離機構を拡大して示す側面図。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る転写装置を示す側面図。
【図12】図12は、前記第2の実施形態に係る転写装置の第2剥離機構を拡大して示す側面図。
【図13】図13は、第3の実施形態に係る転写装置を示す側面図。
【図14】図14は、前記第3の実施形態に係る転写装置の第2剥離機構を拡大して示す側面図。
【図15】図15は、第4の実施形態に係る転写装置を示す側面図。
【図16】図16は、前記第4の実施形態に係る転写装置の第2剥離機構を拡大して示す側面図。
【図17】図17は、第5の実施形態に係る転写装置の剥離シャフトを示す側面図。
【図18】図18は、変形例に係る転写装置の転写ユニットを概略的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態について、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る転写装置を備えるカード発行機全体を概略的に示す図、図2は、カード発行機のブロック図である。
【0012】
図1に示すように、カード発行機9は、収容されている複数のカード基材を一枚ずつ取り出す取出しユニット1と、取り出されたカード基材の表面に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色を重ねる事で、画像を形成する印画ユニット2と、カード基材の表面に必要な文字情報を印字する印字ユニット3と、画像が紫外線に因って体色しない様に紫外線保護膜をカード上に転写する第1転写装置4と、更に、紫外線保護膜の上に表面保護層を形成する第2転写装置5と、を備え、これらのユニットおよび装置により、完成したカードを集積する集積庫6と、上位制御装置からの指示に応じてカード作成を制御する発行機制御部7と、を更に備えている。
【0013】
図2に示すように、上位制御装置8は、主制御部102、制御情報を格納するメモリ104、インターフェース106、操作パネル108、印刷する画像を入力する画像入力部110、印字情報を入力する文字情報入力部112を備えている。
【0014】
発行機制御部7は、インターフェース106を介して上位制御装置8に接続され、上位制御装置8からの指示に応じて、カード発行機9の各ユニットおよび装置の動作を制御する。印画ユニット2は、図示しないインクリボンを用いてカード基材表面に画像を形成するサーマルヘッド126、このサーマルヘッドを制御するヘッド制御部124、ヘッド制御部に画像データを供給する画像処理部122を備えている。
【0015】
取り込みユニット1および他のユニット、装置は、カード取込機構134、カード搬送機構136、転写部搬送機構138、排出搬送機構140、これらの動作を制御するカード搬送、制御部132を備えている。第1転写装置4および第2転写装置5は、ヒートローラを昇降するヒートローラ昇降機構144、ヘッド昇降機構146、転写剥離148、これらの動作を制御する転写、剥離、制御部142を備えている。
【0016】
次に、第2転写装置5、すなわち、カード表面に表面保護層を転写する転写装置について説明する。
図3は印刷媒体としてのカードを示す平面図、図4は、カードおよび転写フィルムの断面図、図5は、第2転写装置5を一部破断して示す側面図、図6は、第2転写装置の転写部回り概略的に示す側面図である。
【0017】
図3および図4に示すように、印刷媒体としてのカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材の上面上に転写形成されたが画像11および印字情報と、備えている。また、カード基材12は、その周縁に沿って表面側に立設された周縁エッジ12aを有していてもよい。転写媒体としての転写フィルム14は、例えば、PETフィルムからなる帯状の基材14aと、この基材上に塗布形成された表面保護層14bと、その上に塗布形成された接着層14cとを有している。また、転写フィルム14には、ホログラム層や紫外線によって発光する蛍光発色層などの機能層を設けて、転写対象への転写と同時にこれらの機能層も転写することが可能である。表面保護層14bの厚さをa、接着層14cの厚さをb、転写フィルム14全体の厚さをTとした場合、カード基材12の周縁エッジ12aの高さhは、(a+b)<h<Tに形成されている。
【0018】
図5に示すように、第2転写装置5は、転写媒体としての転写フィルム14を、転写位置を通る所定の搬送路に沿って搬送し、転写後に、転写フィルムを巻き取るフィルム供給機構19と、転写位置を通してカード10を搬送する媒体搬送機構41と、転写位置において、転写フィルム14をカード10の表面に重ね合わせ、圧力と熱によって上面保護層をカード表面に転写する転写ユニット30と、転写後、剥離位置において、印刷媒体から転写フィルム14を剥離する剥離シャフト25と、を備えている。
【0019】
フィルム供給機構19は、脱着自在なフィルムカセット20と、カセットを駆動する図示しない駆動部と、を備えている。フィルムカセット20は、転写フィルム14が巻き付けられた送り出しロール21と、転写後の転写フィルム14を巻き取る巻取りロール22と、送り出しロール21から送り出された転写フィルム14を所定の搬送路に沿って走行させる複数のガイドローラ24と、第1剥離機構として機能する前述の剥離シャフト25と、を有している。剥離シャフト25は、例えば、円柱形状に形成され、転写フィルム14およびカード10の幅よりも長く形成されている。駆動部により巻取りロール22を回転させることにより、送り出しロール21から転写フィルム14が引き出され、所定の経路に沿って走行する。ガイドローラ24と剥離シャフト25との間において、転写フィルム14は、転写位置を通してほぼ水平に案内、走行される。
【0020】
転写位置を通してカード10を搬送する媒体搬送機構41は、転写位置を含む水平な搬送路に沿って配置されたガイド板53、54と、カード10を挟んで搬送する複数の搬送ローラ44、46、48と、搬送ローラを駆動する図示しない駆動機構と、を備えている。搬送路の入口には、カード10の挿入を検知する挿入センサ50と、転写位置の搬送下流側に設けられ、カード10の排出を検知する排出検知センサ52と、を備えている。下流側の搬送ローラ46、48は、剥離シャフト25と排出検知センサ52との間に配置され、転写フィルム14を剥離した後のカード10を挟持して搬送する。更に、媒体搬送機構41は、後述するヒートローラ26の直前に設けられた突当兼残留検知センサ42を備えている。
【0021】
転写位置の下流側に設けられたガイド板54は、剥離シャフト25の下方に位置している。また、ガイド板54は、搬送路と直交する軸の周りで回動可能に支持され、搬送路に沿って水平に位置するガイド位置と、時計回りに回動し搬送路に対して傾斜して位置する剥離位置との間を回動される。このガイド板54を所定のタイミングで回動させる図示しないモータ等の駆動部が設けられている。これらのガイド板54および駆動部は、第2剥離機構60を構成している。
【0022】
図5に示すように、転写ユニット30は、ガイドローラ24と剥離シャフト25との間で、水平なフィルム搬送路の一方側に設けられた金属性のヒートローラ26と、フィルム搬送路を挟んでヒートローラ26に対向して配設されたバックアップローラ28と、ヒートローラ26を昇降させる昇降機構144と、バックアップローラ28をヒートローラ側に付勢する押圧機構37と、を備えている。
【0023】
昇降機構144は、ヒートローラ26を支持した揺動アーム31と、ヒートローラ26が搬送路から離れる方向に揺動アーム31を付勢する引張りばね32と、ヒートローラ26が搬送路に近付く方向に揺動アーム31を押圧するカム34と、このカムを駆動する図示しない駆動モータと、を備えている。このカムを回転することにより、揺動アーム31が回動し、ヒートローラ26が昇降する。
【0024】
押圧機構37は、バックアップローラ28を支持した揺動アーム33と、バックアップローラ28が搬送路に近付く方向、つまり、ヒートローラ26に近付く方向に揺動アーム33を押圧する圧縮ばね40およびばね支持体45と、ローラ間ギャップ調整機構38と、を備えている。
【0025】
図6および図7に示すように、ヒートローラ26は、その内部にヒータ27が内蔵されているとともに、ローラ表面には、シリコンゴム26aが巻かれている。シリコンゴム26aの厚みは1〜3mm程度、ゴム硬度は、20〜50°が良い。ゴム厚みは熱伝導性に影響する。薄ければ熱が伝わり易いが、破損し易い。またゴム厚みを増やすと、耐久性は若干上がるが、熱の伝わりが悪くなる。この場合、細かい炭素繊維を放射方向に配列させる事で、熱伝導性を上げる事が可能である。また、シリコンゴム26aの硬度はエッジ効果とヒートローラ寿命に影響する。
【0026】
バックアップローラ28の表面にゴム28aが巻かれている。ゴム厚みは1〜2mm程度、硬度は、80〜90°のシリコンゴムを用いている。シリコンゴムの厚みが厚く、硬度が低いと、圧力が掛かりにくくなり、寿命が短くなる為、上記厚さおよび硬度としている。シリコンゴムは、その特性上、化学変化に強く表面に表面保護層が付着してもゴムの状態が変化し難いため、望ましい。
【0027】
図7に示すように、ヒートローラ26とバックアップローラ28との間の隙間(ギャップg)は、カード10の厚さをSとした場合、g<(S/2)に設定される。このようなギャップgとすることで、カード10をヒートローラ26とバックアップローラ28との間に挿入する際、カード先端をヒートローラ26へ突き当て、先端に発生する転写バリを防止する。カード10の先端エッジが、バックアップローラ28の圧力によって、転写フィルムへ食い込む事で、表面保護層の切れが良くなり、そのまま剥離しても転写バリが発生しにくい。
【0028】
図8に示すように、バックアップローラ28は、搬送表面にゴムを巻かず、金属材料のままでも良い。この場合、ローラの表面粗さは、平均粗さで0.6〜6.3μm以下、例えば、1.6μmとする。表面粗さが低すぎる(ツルツルすぎる)と、搬送の際にカード10とバックアップローラ28間でスリップを起こし搬送ジャムを引き起こす可能性がある。
【0029】
バックアップローラ28が金属の場合、ローラの清掃が容易かつ、バックアップローラの定期交換を不要とする事が可能となる。また、ヒートローラ26側に駆動力を持たせると滑りに対して更に有効である。速度差が出ない様に、動力元を同一箇所から取るのが望ましい。
【0030】
駆動モータ57によりローラ26、28を別々に駆動する場合、その時の速度差は、3%以内が良い。それ以上の速度差は、搬送に影響を与え、転写欠けや中抜け、皺の発生を起こしやすくなる。転写フィルム14の厚さが増えれば、ヒートローラ26側も金属とする事が可能である。転写フィルム14が厚くなると、転写フィルム自体がゴムの役目を持つ様になり、ヒートローラ26の金属化が可能である。
【0031】
転写フィルム14に傷を作成しない様、この時のローラ表面粗さは、1.6μm以下が望ましい。ヒートローラ26も金属化する事で、両ローラの定期交換が不要となり、ライフサイクルコストを下げる事が可能となる。また、表面にゴムが無い事で、熱伝達効率が上がり、消費電力も抑えられ、環境にも優しい装置とする事が出来る。
【0032】
次に、上記のように構成された第2転写装置5の転写動作について説明する。
図5に示すように、上流側のユニットからカード10が送られてくると、媒体搬送機構41は、このカードを受取り、転写位置を通して搬送方向Bにカード10をほぼ水平に搬送する。すなわち、挿入センサ50によりカード10の先端を検知すると、媒体搬送機構41は搬送ローラ44、46を回転させ、カード10を搬送方向Bに搬送する。ほぼ同時に、フィルム供給機構19により転写フィルム14を搬送路に沿って供給し、カード10の上面に順次重ね合わせる。
【0033】
カード10の先端を突当兼残留検知センサ42で検知すると、カム34によってヒートローラ26を下げ、カード先端をヒートローラに突き当てる。この時、バックアップローラ28は、特に上下運動する事は無い。カード10の先端がヒートローラ26に突き当てられると、転写が開始される。
【0034】
カード10およびその上面に重ねられた転写フィルム14は、ヒートローラ26とバックアップローラ28との間のギャップgに挿入され、これらのローラに挟持および搬送される。同時に、転写フィルム14も一定テンションで巻取りロール22に巻き取られる。この時、ヒートローラ26からは熱を、バックアップローラ28からは圧力を転写フィルム14およびカード10に付与し、転写フィルム14とカード10を密着させる事で、転写フィルム14上の表面保護層14bをカード表面に移行させる。この際、図4で示したように、カード基材の周縁に沿ってエッジ12aが立てられていることから、エッジ12aがカード10の表面上に転写された上面保護層14bに食い込み、上面保護層をエッジ12aに沿って、つまり、カード10の外周縁に沿って、分断する。これにより、転写フィルム14をカード10から剥離する際、上面保護層14bをカード10の外周縁に沿って切れ易くし、転写バリの発生を抑制する。
【0035】
続いて、フィルムカセット20に設けられた剥離シャフト25によって、カード10の搬送方向先端側から転写フィルム14を剥離して行き、巻取りロール22側へ導く。カード10は、そのまま搬送方向Bに搬送され、カード先端が排出検知センサ52により検知された時点で、ヒートローラ26を搬送路および転写フィルム14から離れる位置へ押し上げる。カード10の搬送と、転写フィルム14の巻き上げを続ける。排出検知センサ52の直前には、搬送ローラ46、48が設置され、これらのローラによって、カード10を挟持することにより、カード10が転写フィルム14に持って行かれる事は無い。
【0036】
また、カード10先端側から転写フィルム14の剥離を開始した後、図9および図10に示すように、第2剥離機構60のガイド板54を図13(a)に示す水平なガイド位置から時計方向に5〜30度の範囲で回動させ、図10(b)に示す左斜め上を向いた剥離位置へ移動した状態とする。この際、転写フィルム14は、所定のテンションで張られていることから、ガイド板54によってカード10の後端を転写フィルム14から離れる方向に回動させることにより、上面保護層14bがカード後端に沿って分断され、転写フィルム14から剥がれる。これにより、カード後端側に転写バリが発生することを防止する。
【0037】
その後、ガイド板54をガイド位置に戻し、カード10の搬送および転写フィルム14の巻き上げを続ける。排出検知センサ52によりカード10の後端が検知されると、カード10のみを次ユニットへ搬送し、転写フィルム14の巻取りを停止する。
次のカード10が第2転写装置5に入ってくると、上述の転写動作を繰り返す。
【0038】
以上のように構成された第2転写装置5によれば、第2剥離機構60を設け、カード後端に沿って上面保護層14bを分断し、転写フィルムから上面保護層を剥離することにより、カード後端側の転写バリの発生を確実に防止することができる。また、ヒートローラとバックアップローラとの間のギャップをカードの厚さよりも小さくし、カード挿入時にカード先端をヒートローラに突き当てることより、カード先端側での転写バリの発生を防止することができる。更に、カード基材の外周縁に沿ってエッジを立てることにより、カードエッジが、バックアップローラの圧力によって、転写フィルムへ食い込む事で、表面保護層の切れが良くなり、そのまま剥離してもバリが発生しにくくすることが可能である。
以上のことから、装置を大型化することなく、転写バリの発生を防止することが可能な転写装置が得られる。
【0039】
次に、他の実施形態に係る転写装置について説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
【0040】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る転写装置の要部を示す側面図、図12は、転写装置の第2剥離機構を拡大して示す側面図である。
【0041】
本実施形態によれば、第2剥離機構60は、転写ユニット30の下流側で、ヒートローラ26とガイド板54との間に設けられた回動板55と、この回動板を所定のタイミングで回動させる図示しないモータ等の駆動部と、を備えている。回動板55は、搬送路と直交する軸の周りで回動可能に支持され、搬送路に沿ってほぼ水平に位置しカード10の搬送をガイドするガイド位置と、時計回りに回動し搬送路に対して傾斜して位置する剥離位置との間を回動される。なお、ガイド板54は、前述した第1の実施形態と同様に、回動可能に設けられていても、あるいは、水平なガイド位置に固定的に設けられていてもよい。
【0042】
転写装置5の転写動作において、回動板55は、カード10の先端および転写フィルム14がヒートローラ26とバックアップローラ28との間を通り抜けた直後は、先端を持ち上げる状態でほぼ水平なガイド位置に待機している。カード10先端側から転写フィルム14の剥離を開始した後、第2剥離機構60の回動板55をガイド位置から時計方向に5〜30度の範囲で回動させ、図12に示すバックアップローラ28側に右斜め下を向いた剥離位置へ移動した状態とする。この際、転写フィルム14は、所定のテンションで張られていることから、回動板44によってカード10の後端を転写フィルム14から離れる方向に回動させることにより、転写フィルム14上の上面保護層14bがカード後端に沿って分断され、転写フィルム14から剥がれる。これにより、カード後端側に転写バリが発生することを防止する。その後、回動板55をガイド位置に戻し、カード10の搬送および転写フィルム14の巻き上げを続ける。前述した排出検知センサによりカード10の後端が検知されると、カード10のみを次ユニットへ搬送し、転写フィルム14の巻取りを停止する。
以上のように構成された第2の実施形態によれば、第2剥離機構60を設け、カード後端に沿って上面保護層14bを分断し、転写フィルムから上面保護層を剥離することにより、カード後端側の転写バリの発生を確実に防止することができる。第2の実施形態において、転写装置5の他の構成および作用効果は、前述した第1の実施形態と同一である。
【0043】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態に係る転写装置の要部を示す側面図、図14は、転写装置の第2剥離機構を拡大して示す側面図である。
【0044】
本実施形態によれば、第2剥離機構60は、転写ユニット30の下流側で、ヒートローラ26とガイド板54との間に設けられた固定シャフト61および可動シャフト62と、可動シャフト62を昇降させる図示しない駆動部と、を備えている。固定シャフト61および可動シャフト62は、搬送路を挟んで、つまり、転写フィルム14およびカード10を挟んで上下に配置され、カードの搬送ガイドを兼ねている。可動シャフト62は、搬送路の下方位置から、この搬送路を横切って、上方へ移動可能に、すなわち、固定シャフト61側へ移動可能に、支持されている。
【0045】
転写装置5の転写動作において、カード10の先端および転写フィルム14がヒートローラ26とバックアップローラ28との間を通り抜けた直後は、固定シャフト61および可動シャフト62は搬送路の上下に接して位置し、転写フィルム14およびカード10の搬送をガイドする。カード10の後端がヒートローラ26とバックアップローラ28の間を通り抜け、可動シャフト62を通過した直後に、図14に示すように、可動シャフト62を左斜め上に5〜15度移動させる。この際、カード後端および転写フィルム14は、固定シャフト61に当接しているとともに、転写フィルム14は所定のテンションで張られていることから、カード後方の転写フィルム14のみが可動シャフト62によって押し上げられ、上面保護層14bがカード後端に沿って分断される。これにより、カード後端側に転写バリが発生することを防止する。
【0046】
このように構成された第3の実施形態においても、第2剥離機構60によりカード後端に沿って上面保護層14bを分断し、転写フィルムから上面保護層を剥離することにより、カード後端側の転写バリの発生を確実に防止することができる。第3の実施形態において、転写装置5の他の構成および作用効果は、前述した第1の実施形態と同一である。
【0047】
(第4の実施形態)
図15は、第4の実施形態に係る転写装置の要部を示す側面図、図16は、転写装置の第2剥離機構を拡大して示す側面図である。
【0048】
本実施形態によれば、第2剥離機構60は、転写ユニット30の下流側で、バックアップローラ28の近傍に設けられた円柱形状の固定の第2剥離シャフト64を有している。第2剥離シャフト64は、カード10の搬送路(搬送面)から下方へ5mm程度、突出するように配置されている。第2剥離シャフト64は、ヒートローラ26が転写位置に下降しても、干渉しない位置関係にある。
【0049】
転写装置5の転写動作において、カード10の先端が排出検知センサに検知されると、ヒートローラ26を転写位置から上方に移動させる。カード10と転写フィルム14は、転写された状態(重なった状態)で、剥離シャフト25まで搬送される。この転写後、搬送時には、転写フィルム14の張力は、通常より10〜20%程度、弱い状態となる。そして、カード10の先端が剥離シャフト25を通過した時点で、転写フィルム14の張力を元に戻す。この状態で、カード10および転写フィルム14の搬送を続けると、図16に示すように、カード10の後端がバックアップローラ28の頂点を過ぎた辺りで、カード10の後端部がバックアップローラ28と第2剥離シャフト64によって屈曲される。その結果、転写フィルム14上の上面保護層14bがカード後端に沿って分断され、転写フィルム14から剥がれる。これにより、カード後端側に転写バリが発生することを防止する。
【0050】
このように構成された第4の実施形態においても、第2剥離機構60によりカード後端に沿って上面保護層14bを分断し、転写フィルムから上面保護層を剥離することにより、カード後端側の転写バリの発生を確実に防止することができる。第4の実施形態において、転写装置5の他の構成および作用効果は、前述した第1の実施形態と同一である。
【0051】
(第5の実施形態)
図18は、第5の実施形態に係る転写装置の剥離シャフトを示している。本実施形態によれば、フィルムカセット20に設けられる剥離シャフト25は、転写フィルム14の幅方向中央に接する分の径が最も大きく、両側に行くに従って徐々に径が小さくなるように、R500〜1000程度、好ましくは、R700程度のクラウニングが付けられている。
【0052】
このような剥離シャフト25を用いることにより、転写フィルム巻き取り時に、剥離シャフトによって、転写フィルム14が湾曲し、転写フィルムとカード側縁部とが剥がれ易くなり、転写バリの発生を防止することができる。転写フィルム14の張力の関係から、カード角方向から剥離される事によって、カードから転写フィルム14の剥離も容易に出来る。
【0053】
以上のように、第2ないし第5の実施形態においても、装置を大型化することなく、転写バリの発生を防止することが可能な転写装置を提供することができる。
【0054】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、印刷媒体は、カードに限らず、通帳、単票、ラベルシート等、種々の媒体に適用することができる。また、図18に示す変形例のように、ヒートローラ26およびバックアップローラ28、媒体搬送機構は、前述した実施形態と上下逆に配置してもよい。
【符号の説明】
【0055】
5…転写装置、10…カード、12…カード基材、14…転写フィルム、
14b…表面保護層、19…フィルム供給機構、26…ヒートローラ、
28…バックアップローラ、30…転写ユニット、41…カード搬送機構、
54…ガイド板、55…回動板、60…第2剥離機構、61…固定シャフト、
62…可動シャフト、64…第2剥離シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とこの基材上に設けられた表面保護層とを有する転写媒体を、転写位置を通して搬送する供給機構と、
前記転写位置を通して印刷媒体を搬送する媒体搬送機構と、
ヒートローラおよびこのヒートローラに所定の隙間を置いて対向するバックアップローラを有し、前記ヒートローラとバックアップローラとの間に前記転写媒体および印刷媒体を重ねた状態で通し、前記転写媒体を加圧および加熱して前記表面保護層を前記印刷媒体表面に転写する転写ユニットと、
前記転写後、前記転写媒体の基材を前記印刷媒体から剥離する第1剥離機構と、
前記転写後、前記印刷媒体の搬送方向後端側を転写媒体から離れる方向に変位させ前記転写された表面保護層を前記後端の位置で前記基材から剥離する第2剥離機構と、
を備える転写装置。
【請求項2】
前記第2剥離機構は、前記転写ユニットと前記第1剥離機構との間で、前記印刷媒体の搬送路に沿って配置され前記印刷媒体の搬送をガイドするガイド板と、このガイド板を前記転写媒体から離間する方向に回動させる駆動部と、を備えている請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記媒体搬送機構は、前記転写ユニットと前記第1剥離機構との間で、前記印刷媒体の搬送路に沿って配置され前記印刷媒体の搬送をガイドするガイド板を備え、
前記第2剥離機構は、前記転写ユニットと前記ガイド板との間で、前記印刷媒体の搬送路に沿って配置された回動可能な回動板と、この回動板を前記転写媒体から離間する方向に回動させる駆動部と、を備えている請求項1に記載の転写装置。
【請求項4】
前記第2剥離機構は、前記転写ユニットの下流側で、前記転写媒体および印刷媒体を挟んで前記搬送路の両側に配置された固定シャフトおよび可動シャフトと、前記可動シャフトを前記搬送路を横切って、前記固定シャフト側へ移動させる駆動部と、を備えている請求項1に記載の転写装置。
【請求項5】
前記媒体搬送機構は、前記転写ユニットと前記第1剥離機構との間で、前記印刷媒体の搬送路に沿って配置され前記印刷媒体の搬送をガイドするガイド板を備え、
前記第2剥離機構は、前記転写ユニットとガイド板との間に設けられた固定の第2剥離シャフトを備え、前記第2剥離シャフトは、前記印刷媒体の搬送路から一方側へ突出するように配置されている請求項1に記載の転写装置。
【請求項6】
前記ヒートローラとバックアップローラとの隙間は、前記印刷媒体の厚さよりも狭く形成され、前記転写ユニットは、前記バックアップローラを前記ヒートローラ側に弾性的に付勢する押圧機構を有している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項7】
前記第1剥離機構は、前記転写媒体の基材が巻き付けられる剥離シャフトを備え、この剥離シャフトは、前記基材の幅方向中央に接する分の径が最も大きく、両側に行くに従って徐々に径が小さくなるように、クラウニングが付けられている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の転写装置。
【請求項8】
前記印刷媒体は、矩形板状に形成され、その周縁に沿って立設されたエッジを有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−107209(P2013−107209A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251452(P2011−251452)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】