説明

転炉排ガス処理装置のスカート

【課題】スカートの下端部が損傷したときのスカートの補修コストを低減することが可能で、かつ、スカートの補修作業を容易に行うことが可能な転炉排ガス処理装置のスカートを提供する。
【解決手段】転炉3の上方に配置されるフード2と転炉3との間に上下動可能に設置される転炉排ガス処理装置のスカート1は、上下方向をその長手方向として環状に配列される複数の第1の水管11を有するスカート本体部7と、複数の第2の水管21を有しスカート本体部7の下端に着脱可能に取り付けられるスカート下部6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉の上方に配置されるフードと転炉との間に設置される転炉排ガス処理装置のスカートに関する。
【背景技術】
【0002】
転炉から排出されるガスを処理する転炉排ガス処理装置は、転炉の上方に配置されるフードと転炉との間に設置される上下動可能なスカートを備えている。この種のスカートとして、円環状の複数の水管を上下方向に重ねることで形成された円筒状の水管壁を備えるスカートが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のスカートの水管壁は、円環状の複数の水管を上下方向に重ねることで形成されているため、水管壁の壁面には、凹凸が上下方向に繰り返しで形成される。したがって、このスカートでは、転炉内の溶銑を精錬する吹錬時に、転炉から飛散するダストや地金が水管壁の壁面に付着して堆積しやすい。水管壁の壁面にダストや地金が堆積すると、スカートが上下動する際に、堆積したダストや地金がフードを構成する水管をこすって、フードの水管が摩耗するといった問題がある。
【0003】
かかる問題を解消することが可能なスカートとして、水管を縦向きに配置するとともに円環状に配列することで形成された円筒状の水管壁を備えるスカートが知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のスカートの場合、水管壁の壁面には、凹凸が円周方向に繰り返しで形成されるため、吹錬時に、転炉から飛散するダストや地金が水管壁の壁面に付着しても、付着したダストや地金は、その自重でスムーズに下降していく。したがって、特許文献2に記載のスカートでは、水管壁の壁面にダストや地金が堆積しにくく、その結果、上述の問題を解消することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−126709号公報
【特許文献2】実公平3−36516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転炉の操業中には、転炉の頂部の炉口金物やその上に付着した地金と、スカートの下端部とが接触することがある。炉口金物や地金とスカートの下端部とが接触すると、スカートの下端部を構成する水管の潰れや破損等の損傷が生じる。水管が破損すると、水管からの水漏れが発生して、転炉に水が流れ込むため、転炉の操業を停止して、スカートの補修を行う必要がある。また、水管が潰れた場合には、直ちに水漏れが発生するわけではないが、水管が潰れると水管内の冷却水の流れが悪くなり、そのうちに、転炉からの排ガスの熱で水管が破損するおそれがあるため、転炉の操業を停止して、スカートの補修を行う必要がある。
【0006】
特許文献2に記載のスカートでは、上述のように、特許文献1に記載のスカートの問題を解消することが可能である。しかしながら、特許文献2に記載のスカートでは、水管を縦向きに配置するとともに円環状に配列することで水管壁が形成されているため、転炉の操業中に、炉口金物や地金とスカートの下端部とが接触して、スカートの下端部のみが損傷しても(すなわち、スカートの上端部や中間部が損傷していなくても)、スカート全体を交換しなければならない。したがって、特許文献2に記載のスカートの場合、スカートの下端部が損傷したときのスカートの補修にかかるコストが高くなり、また、スカートの補修作業が煩雑になる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、スカートの下端部が損傷したときのスカートの補修コストを低減することが可能で、かつ、スカートの補修作業を容易に行うことが可能な転炉排ガス処理装置のスカートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の転炉排ガス処理装置のスカートは、転炉の上方に配置されるフードと転炉との間に上下動可能に設置される転炉排ガス処理装置のスカートにおいて、上下方向をその長手方向として環状に配列される複数の第1の水管を有するスカート本体部と、複数の第2の水管を有しスカート本体部の下端に着脱可能に取り付けられるスカート下部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の転炉排ガス処理装置のスカートは、スカート本体部の下端に着脱可能に取り付けられるスカート下部を備えている。そのため、転炉の頂部の炉口金物やその上に付着した地金と、スカートの下端部とが接触して、スカートの下端部のみが損傷した場合には、スカート下部のみを交換すれば良い。したがって、本発明では、スカートの下端部が損傷したときのスカートの補修コストを低減することが可能になる。また、本発明では、スカートの下端部が損傷したときのスカートの補修作業を容易に行うことが可能になる。
【0010】
また、本発明では、スカート下部は、スカート本体部に着脱可能となっており、第1の水管と第2の水管とが別部材となっている。そのため、第2の水管として強度の高い水管を使用すれば、スカートの下端部の強度を高めることができる。すなわち、第1の水管として強度の低い水管を使用しても、スカートの下端部の強度を高めることが可能になる。したがって、転炉の頂部の炉口金物やその上に付着した地金とスカートの下端部とが接触したときの、スカート下部の損傷の発生を低コストで抑制することが可能になる。
【0011】
本発明において、第2の水管の配管径は、第1の水管の配管径よりも大きく、かつ、第2の水管の厚みは、第1の水管の厚みよりも厚くなっていることが好ましい。このように構成すると、第2の水管の配管径が第1の水管の配管径よりも大きいため、転炉により近い位置に配置されるスカート下部の第2の水管を効率良く冷却することが可能になる。また、このように構成すると、第2の水管の厚みが第1の水管の厚みよりも厚くなっているため、スカートの下端部のみの強度を高めることが可能になる。したがって、転炉の頂部の炉口金物やその上に付着した地金とスカートの下端部とが接触したときの、スカート下部の損傷の発生を低コストで抑制することが可能になる。
【0012】
本発明において、第2の水管は、スカートの周方向をその長手方向とする環状に形成されていることが好ましい。すなわち、本発明では、スカートの周方向をその長手方向とする環状に形成された複数の第2の水管によって、スカート下部の水管壁が形成されていることが好ましい。このように構成すると、スカートの径方向や上下方向をその長手方向として複数の第2の水管が環状に配列されることでスカート下部の水管壁が形成されている場合と比較して、スカート下部に使用される第2の水管の本数を低減することが可能になる。したがって、スカート下部の構成を簡素化することが可能になる。なお、第2の水管が配置されるのはスカートの下端部であるため、スカートが上昇しても、第2の水管はフードと接触しにくい。したがって、スカートの周方向をその長手方向とする環状に第2の水管が形成されていても、上述の特許文献1に記載のスカートのような問題は生じにくい。
【0013】
本発明において、スカート下部は、複数の第2の水管を保持する保持部材を備え、保持部材は、ボルトおよびナットによってスカート本体部に固定されていることが好ましい。このように構成すると、ボルトおよびナットの着脱によって、スカート下部の交換を行うことが可能になる。したがって、スカート下部の交換作業が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の転炉排ガス処理装置のスカートでは、スカートの下端部が損傷したときのスカートの補修コストを低減することが可能になり、また、スカートの補修作業を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかる転炉排ガス処理装置のスカートおよびその周辺部分の概略側面図である。
【図2】図1に示す転炉排ガス処理装置のスカートを説明するための平面図である。
【図3】図1に示すスカート下部を説明するための拡大側面図である。
【図4】図1に示すスカート下部を説明するための拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
(転炉排ガス処理装置のスカートの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる転炉排ガス処理装置のスカート1およびその周辺部分の概略側面図である。図2は、図1に示す転炉排ガス処理装置のスカート1を説明するための平面図である。図3、図4は、図1に示すスカート下部6を説明するための拡大側面図である。
【0018】
本形態の転炉排ガス処理装置のスカート1(以下、「スカート1」とする。)は、フード2、排ガス冷却器(図示省略)、集塵器(図示省略)および誘引送風機(図示省略)等を有する転炉排ガス処理装置の一部を構成している。フード2は、転炉3の中に酸素を吹き込んで転炉3内の溶銑を精錬する吹錬中に、転炉3から排出される排ガスがフード2の内部を通過するように、転炉3の上方に設置されている。スカート1は、フード2と転炉3との間に設置されている。
【0019】
転炉排ガス処理装置は、スカート1を上下動させるシリンダー4を備えており、スカート1は、上下動可能となっている。転炉3内の溶銑を精錬する吹錬中には、図1に示すように、スカート1は下降しており、転炉3とフード2との間での排ガスの漏れを防止している。一方、吹錬が行われていないときには、転炉3を傾けて転炉3内の溶鋼を取り出すため、スカート1は上昇している(図1の二点鎖線参照)。
【0020】
スカート1は、スカート1の下端部を構成するスカート下部6と、スカート下部6が下端に取り付けられるスカート本体部7とを備えている。スカート本体部7の外周側には、円環状のシールジャケット8が形成されており、シールジャケット8の内部には、シール用の水が入っている。シールジャケット8の中には、フード2に固定された円筒状の仕切筒9が挿入されている。
【0021】
スカート本体部7は、内部を冷却水が通過する複数の水管(第1の水管)11を備えている。複数の水管11は、上下方向をその長手方向として円環状に配列されており、複数の水管11によって、スカート本体部7の水管壁が形成されている。水管11は、J形状に折り曲げられて形成されている。スカート本体部7の下端側に配置される複数の水管11の一端は、円環状に形成されたヘッダー管12に接続され、スカート本体部7の上端側に配置される複数の水管11の他端は、円環状に形成されたヘッダー管13に接続されている。ヘッダー管12は、水管11に冷却水を供給する供給管14に接続され、ヘッダー管13は、水管11を通過した冷却水が排出される排出管15に接続されている。
【0022】
また、スカート本体部7は、シールジャケット8等を支持する支持部材16を備えている。支持部材16は、略円環状に形成されており、ヘッダー管12の外周側に配置されている。支持部材16には、シリンダー4のロッドが取り付けられている。
【0023】
スカート下部6は、内部を冷却水が通過する複数の水管(第2の水管)21を備えており、複数の水管21によって、スカート下部6の水管壁が形成されている。本形態のスカート下部6は、たとえば、9本の水管21を備えている。水管21は、スカート1の円周方向をその長手方向とする円環状に形成された水平横巻水管である。水管21の配管径は、水管11の配管径よりも大きくなっている。また、水管21の厚みは、水管11の厚みよりも厚くなっている。
【0024】
円環状に形成される複数の水管21のそれぞれの外周の径は、互いに異なっており、スカート下部6の径方向外側から径方向内側に向かって水管21の外周の径が次第に小さくなるように、複数の水管21が配列されている。複数の水管21のうちの、スカート下部6の径方向外側に配置される何本かの水管21は、スカート下部6の径方向で重なるように配列されている。また、複数の水管21のうちの、スカート下部6の径方向内側に配置される残りの水管21は、残りの水管21によって形成される水管壁がスカート下部6の径方向内側に向かうしたがって上側へ傾斜するように配列されている。
【0025】
また、スカート下部6は、複数の水管21を保持する保持部材22を備えている。本形態では、図3に示すように、たとえば、2本または3本の水管21が水管固定部材23に固定され、この水管固定部材23が保持部材22に固定されている。すなわち、本形態では、水管固定部材23を介して、複数の水管21が保持部材22に保持されている。保持部材22は、ボルト24およびナット25によって、支持部材16の下面に固定されている。ボルト24およびナット25は、スカート下部6の円周方向に所定のピッチで複数箇所に配置されている。
【0026】
図4に示すように、複数の水管21によって形成される水管壁の上面および外周面は、耐火材26によって覆われている。具体的には、水管壁の上面および外周面を覆うようにワイヤーネット27が水管21に固定されており、ワイヤーネット27を覆うように耐火材26が配置されている。また、スカート本体部7とスカート下部6との境界部分も耐火材26で覆われている。
【0027】
複数の水管21には、水管21に冷却水を供給する供給管30および水管21を通過した冷却水が排出される排出管32が接続されている。供給管30には、供給管30を分割するためのフランジ41、42が取り付けられている。同様に、排出管32には、排出管32を分割するためのフランジ43、44が取り付けられている。
【0028】
上述のように、保持部材22は、ボルト24およびナット25によって、支持部材16の下面に固定されている。また、供給管30は、フランジ41、42で分割可能であり、排出管32は、フランジ43、44で分割可能である。そのため、ボルト24およびナット25を取り外し、フランジ41、42を分離し、フランジ43、44を分離すれば、スカート本体部7からスカート下部6を取り外すことができる。すなわち、スカート下部6は、スカート本体部7の下端に着脱可能に取り付けられている。
【0029】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のスカート1は、スカート本体部7の下端に着脱可能に取り付けられるスカート下部6を備えている。そのため、転炉3の頂部の炉口金物やその上に付着した地金と、スカート下部6とが接触して、スカート下部6のみが損傷した場合には、スカート下部6のみを交換すれば良い。したがって、本形態では、スカート1の下端部が損傷したときのスカート1の補修コストを低減することが可能になる。
【0030】
また、本形態では、スカート下部6のみが損傷した場合には、スカート下部6のみを交換すれば良いため、スカート1の下端部に損傷が発生したときのスカート1の補修作業を容易に行うことが可能になる。特に本形態では、水管21を保持する保持部材22が、ボルト24およびナット25によって支持部材16の下面に固定され、供給管30がフランジ41、42で分割可能となっており、排出管32がフランジ43、44で分割可能となっている。そのため、ボルト24およびナット25の着脱、フランジ41、42の接合、分離、および、フランジ43、44の接合、分離を行えば、スカート下部6を交換することができる。したがって、本形態では、スカート下部6の交換作業が容易になる。
【0031】
本形態では、スカート下部6は、スカート本体部7に着脱可能となっており、水管11と水管21とが別部材となっている。また、本形態では、水管21の厚みが水管11の厚みよりも厚くなっている。そのため、スカート本体部7の強度を変えることなく、スカート下部6のみの強度を高めることができる。したがって、本形態では、転炉3の頂部の炉口金物やその上に付着した地金とスカート下部6とが接触したときの、スカート下部6の損傷の発生を低コストで抑制することが可能になる。また、スカート下部6の損傷の発生を抑制することが可能になるため、スカート1からの水漏れの発生を抑制することが可能になり、その結果、転炉3の操業停止の頻度を低減させることが可能になる。また、本形態では、水管21の配管径が水管11の配管径よりも大きなっているため、転炉3により近い位置に配置される水管21を効率良く冷却することが可能になる。
【0032】
本形態では、スカート1の円周方向をその長手方向とする円環状に形成された複数の水管21によってスカート下部6の水管壁が形成されている。そのため、スカート1の径方向や上下方向をその長手方向として複数の水管21が円環状に配列されることでスカート下部6の水管壁が形成されている場合と比較して、スカート下部6に使用される水管21の本数を低減することができる。したがって、本形態では、スカート下部6の構成を簡素化することが可能になる。なお、水管21は、スカート1の下端側に配置されているため、スカート1が上昇しても、水管21は、フード2に接触しにくい。そのため、水管21がスカート1の円周方向をその長手方向とする円環状に形成されていても、上述の特許文献1に記載のスカートのような問題は生じにくい。
【0033】
(他の実施の形態)
上述した形態では、水管21の厚みは、水管11の厚みよりも厚くなっているが、水管21の厚みは、水管11の厚み以下であっても良い。また、上述した形態では、水管21の配管径は、水管11の配管径よりも大きくなっているが、水管21の配管径は、水管11の配管径以下であっても良い。
【0034】
上述した形態では、スカート1の円周方向をその長手方向とする円環状に形成された複数の水管21によってスカート下部6の水管壁が形成されているが、スカート1の径方向や上下方向をその長手方向として複数の水管21が円環状に配列されることでスカート下部6の水管壁が形成されても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 スカート(転炉排ガス処理装置のスカート)
2 フード
3 転炉
6 スカート下部
7 スカート本体部
11 水管(第1の水管)
21 水管(第2の水管)
22 保持部材
24 ボルト
25 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉の上方に配置されるフードと前記転炉との間に上下動可能に設置される転炉排ガス処理装置のスカートにおいて、
上下方向をその長手方向として環状に配列される複数の第1の水管を有するスカート本体部と、複数の第2の水管を有し前記スカート本体部の下端に着脱可能に取り付けられるスカート下部とを備えることを特徴とする転炉排ガス処理装置のスカート。
【請求項2】
前記第2の水管の配管径は、前記第1の水管の配管径よりも大きく、かつ、前記第2の水管の厚みは、前記第1の水管の厚みよりも厚くなっていることを特徴とする請求項1記載の転炉排ガス処理装置のスカート。
【請求項3】
前記第2の水管は、前記スカートの周方向をその長手方向とする環状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の転炉排ガス処理装置のスカート。
【請求項4】
前記スカート下部は、複数の前記第2の水管を保持する保持部材を備え、
前記保持部材は、ボルトおよびナットによって前記スカート本体部に固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の転炉排ガス処理装置のスカート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246563(P2012−246563A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121577(P2011−121577)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(501120122)スチールプランテック株式会社 (49)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】