説明

転造ローラヘッド

【課題】転造ローラとローラリテーナの間の摩擦を軽減すること。
【解決手段】クランクシャフトのジャーナル5におけるアール部又はアンダカット部を複数の転造ローラ3によって転造する転造装置の転造ローラヘッド1であって、前記転造ローラ3が、その周方向6へ、前記ジャーナル5との接触位置の両側に対して複数のローラリテーナ7により支持されているとともに、該ローラリテーナ7内で回転可能にガイドされており、該ローラリテーナ7がローラホルダ10により支持されている前記転造ローラヘッドにおいて、少なくとも1つの前記ローラリテーナ7をリテーナローラ9として形成するとともに、前記転造ローラ3用のブラケット14を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトのジャーナルにおけるアール部又はアンダカット部を複数の転造ローラによって転造する転造装置の転造ローラヘッドであって、前記転造ローラが、その周方向へ、前記ジャーナルとの接触位置の両側に対して複数のローラリテーナにより支持されているとともに、該ローラリテーナ内で回転可能にガイドされており、該ローラリテーナがローラホルダにより支持されている前記転造ローラヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような転造ローラヘッドは、例えば特許文献1に開示されている。この従来技術による転造ローラヘッドは転造ローラを備えており、この転造ローラは、加工すべきクランクシャフトの周方向へ向かって、ジャーナルとの接触位置の両側に対して複数のローラリテーナによって支持されているとともに、該ローラリテーナ内で回転可能にガイドされるようになっている。ここで、ローラリテーナ自体は、転造ローラヘッドにおいて、調整可能なL字状のブラケットによって保持されている。また、転造ローラとローラリテーナの間の摩擦を軽減するために、この従来のローラリテーナは合成樹脂で形成されている。
【0003】
ところで、ローラリテーナの形状が例えば特許文献2に開示されており、ここでは、2重ローラリテーナとして形成されている。すなわち、転造ローラと転造ローラリテーナの間の接触面が摩耗すると、転造ローラヘッド内のローラリテーナが反転され、以後は、ローラリテーナの下端部における同様に形成された接触面が、該接触面が摩耗するまで転造ローラの支持及びガイドを担うようになっている。
【0004】
ローラリテーナの摩耗を軽減するために、例えば特許文献3には、ローラリテーナの少なくとも一部、又は内部において転造ローラがガイドされる凹部の一部を、固形潤滑剤を転造ローラへ供給する材料で形成することが開示されている。
【0005】
要約すれば、各ローラリテーナは転造ローラヘッドにおいて転造ローラを支持する役目を果たすものであり、さらに、クランクシャフトの回転に向いた後方のローラリテーナは、転造に必要な変形力及び転造ローラと該転造ローラを転造ローラヘッド内でガイドするガイドローラの間の摩擦力を発揮させる必要がある。なお、この摩擦力は、転造力の負荷下における転造ローラヘッドの押圧力の約10%である。
【0006】
後方において駆動される上記ローラリテーナは転造ローラとの摩擦により摩耗し、この摩耗により、ローラリテーナと転造ローラの間の接触面が徐々に転造ローラ自体の形状に近づくことになる。そして、非常に大きく摩耗した場合には、転造ローラがロータリテーナに噛み込み、転造ローラの必要な傾斜運動が制限されるとともに、クランクシャフトの形状の不つり合いにより転造ローラの角度調整が必要になった場合に、転造ローラを酷使してしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1318889号明細書
【特許文献2】独国実用新案第20023033号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10045258号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、転造ローラとローラリテーナの間の摩擦を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明においては、駆動される後方のローラリテーナをリテーナローラで置き換えているとともに、転造ローラを転造ローラヘッドにおいて支持するためのブラケットを設けている。また、摩擦を低減するために、リテーナローラはころがり軸受として形成されている。このような軸受は大量生産されるため、このように形成することで低コスト化も実現することができるという利点が得られる。この軸受は、硬化された外表面を有しており、当該軸受上に接触する転造ローラに対して、摩耗しにくい接触面を提供することになる。
【0010】
さらに、このように大量生産によって製造されたころがり軸受は、塵埃等の汚染から保護するために常時潤滑及びカバーディスクを備えることも可能である。まとめると、摩擦の軽減、寿命の延長及び転造ローラヘッドにおける調整の省略が可能である。
【0011】
ところで、リテーナローラを円筒状に形成するのが好ましいが、転造ローラとの良好な接触率を得るために、このリテーナローラの形状を凹状に形成することも考えられる。また、該リテーナローラが転造工程中にジャーナルの形状の不つり合いに適合するよう、リテーナローラの軸方向への変位を制限するのが望ましい。なお、他の利点は、請求項2〜10に係る発明により生じるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、摩擦の軽減、寿命の延長及び転造ローラヘッドにおける調整の省略が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】転造ローラヘッドの側面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】リテーナローラホルダを様々な方向から見た図である。
【図4】転造ローラヘッドの一部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
転造ローラヘッド1はそのケーシング(不図示)内で回転可能に支持されたガイドローラ2を含んで構成されており、このガイドローラ2上には、クランクシャフト(不図示)のジャーナル5においてアール部又はアンダカット部を転造するための転造ローラ3が支持されている。この転造ローラ3(通常は転造ローラヘッド1に2つの転造ローラが設けられている。)は、ローラリテーナ7により周方向6へ保持又はガイドされるようになっている。さらに、この転造ローラ3は、転造ローラヘッド1において、側方のブラケット8によって支持されている。
【0016】
本実施の形態においては、駆動する後方のローラリテーナの代わりに、リテーナローラ9が設けられている。このリテーナローラ9はローラホルダ10において回転可能に支持されており、転造ローラ3あるいはリテーナローラ9の回転軸中心11,12は、空間内における同じ位置を占めている。上記のような回転軸中心12回りの回転可能な支持に加えて、リテーナローラ9が変位量13だけ軸方向に変位可能となっている。ローラホルダ10におけるこのリテーナローラ9がピン(不図示)によって固定されている一方、転造ローラ3のブラケット14は、転造ローラヘッド1から転造ローラ3が脱落しないようにする機能を果たすものとなっている。
【0017】
図3にはローラホルダ10の様々な方向から見た図が示されており、図3aは側面図であり、図3bは長手方向断面図であり、図3cは矢印A方向から見た図であり、図3dは底面図であり、図3eは平面図である。ここで、ローラホルダ10を転造ローラ1に固定するために、段状の長孔15が形成されている。
【0018】
また、2つのリテーナローラ9がそれぞれ傾斜状に形成された凹部16,17内に配置され、これら凹部16,17の長手方向中心線18,19は、転造ローラ3の回転軸中心11の勾配と同様の勾配となっている。なお、穴20は、ブラケット14をローラホルダ10に固定する役目を果たすものである。さらに、ガイドローラ2は、そのフランジ部22において長手方向溝21を移動するようになっている。
【0019】
図4aは図1におけるII−II線に沿って示すリテーナローラ9の正面図であり、図4bは長手方向軸中心線19に沿った断面をb−bで示す方向に回転させたものを示している。図に示すとおり、リテーナローラ9は円筒状に形成されており、その中心部24は、ローラホルダ10における円筒状のピン(不図示)上で回転可能に支持されている。本実施の形態においては、ローラリテーナ9は、大量生産されたアキシャルローラベアリングによって形成されている。また、図4aに示すように、円筒状外面部25の近傍に、これとは異なる、長手方向中心線18,19に沿って見て凹状の外周形状を形成してもよい。なお、転造ローラ3は、接触領域26においてリテーナローラ9に対して支持されている。
【符号の説明】
【0020】
1 転造ローラヘッド
2 ガイドローラ
3 転造ローラ
4 アール部又はアンダカット部
5 ジャーナル
6 周方向
7 ローラリテーナ
8 ブラケット
9 リテーナローラ
10 ローラホルダ
11,12 回転軸中心
13 変位量
14 ブラケット
15 長孔
16,17 凹部
18,19 長手方向中心線
20 穴
21 長手方向溝
22 フランジ部
24 中心部
25 円筒状外面部
26 接触領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトのジャーナル(5)におけるアール部又はアンダカット部(4)を複数の転造ローラ(3)によって転造する転造装置の転造ローラヘッド(1)であって、前記転造ローラ(3)が、その周方向(6)へ、前記ジャーナル(5)との接触位置の両側に対して複数のローラリテーナ(7)により支持されているとともに、該ローラリテーナ(7)内で回転可能にガイドされており、該ローラリテーナ(7)がローラホルダ(10)により支持されている前記転造ローラヘッドにおいて、
少なくとも1つの前記ローラリテーナ(7)をリテーナローラ(9)として形成するとともに、前記転造ローラ(3)用のブラケット(14)を設けたことを特徴とする転造ローラヘッド。
【請求項2】
前記リテーナローラ(9)を、ころがり軸受又は該ころがり軸受上に支持された支持ローラとして形成したことを特徴とする請求項1記載の転造ローラヘッド。
【請求項3】
前記リテーナローラ(9)を、スライド軸受上に支持された支持ローラとして形成したことを特徴とする請求項1記載の転造ローラヘッド。
【請求項4】
前記リテーナローラ(9)の前記転造ローラ(3)との接触領域(26)を円筒状に形成したことを特徴とする請求項2又は3記載の転造ローラヘッド。
【請求項5】
前記リテーナローラ(9)の前記転造ローラ(3)との接触領域(26)を凹状に形成したことを特徴とする請求項2又は3記載の転造ローラヘッド。
【請求項6】
前記リテーナローラ(9)を、前記ローラホルダ(10)において軸方向の遊び(13)をもって支持したことを特徴とする請求項1記載の転造ローラヘッド。
【請求項7】
前記リテーナローラ(9)と前記転造ローラ(3)の回転軸中心(11,12)の勾配をほぼ同様に形成したことを特徴とする請求項1記載の転造ローラヘッド。
【請求項8】
前記リテーナローラ(9)の回転軸中心(12)を水平としたことを特徴とする請求項1記載の転造ローラヘッド。
【請求項9】
前記ローラホルダ(10)を、2つの前記リテーナローラ(9)を備えるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の転造ローラヘッド。
【請求項10】
前記リテーナローラ(9)それぞれに前記ローラホルダを設けたことを特徴とする請求項1記載の転造ローラヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−521789(P2011−521789A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511972(P2011−511972)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000784
【国際公開番号】WO2009/146690
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505006839)ヘゲンシャイト−エムエフデー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディト ゲゼルシャフト (9)