説明

軸流タービン及び軸流タービンから流れを排出するための方法

【課題】作動条件の不均一性を解消する軸流タービン及び方法を提供する。
【解決手段】それぞれが静翼13と動翼13aとによって形成された複数の膨張段が設けられており、該膨張段に、膨張段2を通過する流れを収集しかつ該流れを排出するためのディフューザ4が続いている軸流タービンであって、膨張段2及び/又はディフューザが少なくとも非軸対称な部分を有している形式のものにおいて、少なくとも1つの膨張段の静翼13が、タービンの周囲に沿ってそれぞれ異なる開口17を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流タービン及び軸流タービンから流れを排出するための方法に関し、この場合、タービンは蒸気タービンである。
【0002】
特に、本発明は、排気ディフューザにおける仕事抽出及び流れに好ましく影響する、最後の段の案内翼及び/又は抽出スリットの上流及び/又は下流の段のための設計に関する。
【背景技術】
【0003】
蒸気タービンは、静翼/動翼から形成された複数の膨張段を有するシリンダを有することが知られている。
【0004】
各段の静翼は全て同じものであり、同じ幾何学的構成に配置されており(すなわち静翼は同じ食い違い角を有している等)、同じ案内翼を形成している。同様に、各段の動翼も全て同じであり、同じ幾何学的構成に配置されており(すなわち動翼はそれぞれ同じ食違い角を有している等)、それぞれ同じ通路を形成している。
【0005】
膨張段の下流に、蒸気タービンは排気ディフューザを有しており、この排気ディフューザは、膨張段から流れてくる蒸気を収集し、通常(発電プラントの場合)この蒸気を凝縮器へ排出する。
【0006】
排気ディフューザは、最後の膨張段から流れてくる蒸気を収集しかつこの蒸気を非軸対称の収集器へ供給する軸対称の部分から形成されており、ほぼ円形の上部ケーシング部分と、凝縮器ネックに接続された矩形の開口を備える下部排出ケーシング部分とを有している。
【0007】
作動中、蒸気は、膨張段を通過し、機械的な動力を動翼(ひいては動翼に結合されたタービンシャフト)に供給する。
【0008】
その後、最後の膨張段から流出した蒸気は排気ディフューザに入り、ここで蒸気は収集されて凝縮器へ排出される。
【0009】
しかしながら、タービンの膨張段は軸対称であるが、排気ディフューザの収集器は軸対称でもなければ、膨張段と同じ方向にも延びていないので、排気ディフューザを通過する時、蒸気流は大きな周方向のゆがみを受ける。
【0010】
これは、最後の膨張段における(特に周方向における)蒸気の作動条件に影響し、これにより、最後の膨張段において蒸気の作動条件が周方向で均一でなくなる。
【0011】
さらに、流れの周方向ゆがみは、蒸気流内での不均一混合損失と、ばらつきのある圧力降下とを生じ、これらは、蒸気タービンの全体的な効率を悪化させる恐れがある。
【0012】
同様の欠点が、例えば抽出スリットによって形成された、タービンの非軸対称な部分によっても生ぜしめられ、この場合、抽出スリットの上流及び下流を流過する蒸気が抽出スリットによって影響される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、排気ディフューザ及び/又は抽出スリットが設けられたタービン部分の非軸対称な構成によって生ぜしめられる流れの周方向ゆがみを解消する軸流タービン及び方法を提供することである。
【0014】
この技術的課題の範囲において、発明の目的は、作動条件の不均一性を解消する軸流タービン及び方法を提供することである。
【0015】
発明の別の目的は、蒸気流の(前記不均一性による)混合損失及び圧力降下が減じられかつ蒸気タービンの全体的な効率が高められる軸流タービン及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
技術的課題は、これらの目的及びその他の目的とともに、添付の請求の範囲に記載された軸流タービン及び方法を提供することによって本発明によって解決される。
【0017】
発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して説明される、本発明による軸流タービン及び方法の、好適な、しかし限定的でない実施態様の説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】蒸気タービンの概略図である。
【図2】排気ディフューザに隣接した膨張段を部分的に示す図である。
【図3】排気ディフューザの側方から見たタービンの概略的な正面図である。
【図4】タービン軸線と、案内翼の開口に対して垂直な軸線との間に規定された、静翼の食違い角の変更を示す図である。
【図5】各翼のハブからの距離に関して(すなわち半径方向に関して)図4の角度を示す図である。
【図6】ディフューザが結合されたタービンの端部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面(特に図1)を参照すると、参照符号1で示された軸流タービンの全体が概略的に示されている。
【0020】
タービン1は、蒸気タービンであり、複数の膨張段2を有しており、これらの膨張段において、蒸気発生器3によって発生された高圧及び高温の蒸気流が膨張させられ、機械的な動力を取り出す。
【0021】
膨張段2の下流では、蒸気タービン1は排気ディフューザ4を有しており、この排気ディフューザ4は、膨張段2を通過する蒸気流を収集し、この蒸気をタービン軸線の方向とは異なる方向に沿って外部(凝縮器5内)へ排出する。
【0022】
図3は、タービンのタービン軸線21と軸線19とを示している。タービン軸線21に沿って蒸気流が膨張段2において移動し、軸線19に沿って蒸気流は排気ディフューザ4において変向され、凝縮器5内へ排出される。
【0023】
各膨張段は、静翼と動翼とによって形成されている。
【0024】
静翼は、動翼キャリヤに固定されており、複数のブレード流れ案内翼を形成しており、この案内翼を蒸気流が通過する。
【0025】
動翼は、動翼コアに組み付けられており、複数の通路を形成している(各通路は、2つの隣接する動翼の間に形成されている)。
【0026】
ディフューザ4(図6)は、最後の膨張段9から流れてくる蒸気を収集する軸対称な部分7と、凝縮器5のネックに接続された非軸対称な収集器8とを有している。
【0027】
非軸対称な収集器8は、ほぼ円形の若しくは湾曲したケーシングから形成された上側部分8aと、下側の排出部分8bとを有しており、この下側の排出部分8bは、平坦な壁部を有しており、凝縮器5と連通した開口10が設けられている。
【0028】
図2は、静翼13(この図では2つの静翼13のみが示されている)と、静翼の下流における動翼13a(この図では2つの動翼のみが示されている)とを有する最後の膨張段9(すなわちディフューザ4に隣接した膨張段)を示しており、矢印Fは蒸気流の全体的な方向を示している。
【0029】
静翼13は前縁14と後縁15とを有している。さらに、2つの隣接する静翼13の各対は、案内翼16を形成しており、この案内翼は、案内翼の最小の通過断面を規定する開口17を有している。
【0030】
有利には、膨張段のうちの1つの膨張段の静翼13は、タービンの円周に沿って様々な異なる開口17を形成している。
【0031】
特に、図示したように、様々な異なる開口17を規定する静翼13は、ディフューザ4に隣接した段の静翼13である。
【0032】
このように、蒸気タービンは本発明による静翼13を有している。これらの静翼13の後には、(従来のタービンのように)全て同じ動翼13aが設けられており、動翼13aの下流において蒸気タービンはディフューザ4を有している。
【0033】
図2において、参照符号20は周方向を示しており、参照符号21はタービン軸線を示している。
【0034】
静翼13は全て同じであるので、様々な異なる開口17を形成するために、静翼13は、タービン軸線21と、開口17に対して垂直な軸線23との間に規定される様々な異なるゲージ角度Bを有している。
【0035】
好適な実施形態において、排気ディフューザ4に隣接した段は、タービン軸線21と軸線23との間に第1の角度B1を有する静翼の第1のグループ30と、タービン軸線21と軸線23との間に第2の角度B2を有する静翼の第2のグループ32とを有しており、第1の角度B1は第2の角度B2とは異なっている。
【0036】
特に、静翼13の第1のグループ30は排気ディフューザ4の上部ゾーンに位置しており、静翼の第2のグループ32は排気ディフューザ4の下部ゾーンに位置しており、第1の角度B1は第2の角度B2よりも小さく、第1のグループ30の静翼13の間の開口17は、第2のグループ32の静翼13の間の開口よりも大きい。
【0037】
同様に、タービンのために予測された特定の設計及び作動条件によれば、異なる実施形態も可能であり、例えば、第1の角度B1は第2の角度B2よりも大きくてもよく、これにより、上部ゾーンにおける第1のグループ30の静翼13の間の開口17は、第2のグループ32(下部ゾーン)の静翼13の間の開口よりも小さい。
【0038】
さらに、第1のグループ30の静翼13は、軸線19(すなわち排気ディフューザ4の対称軸線)に関して対称に配置されており、第2のグループ32の静翼13も、同じ軸線19に関して対称に配置されている。
【0039】
好適な構成において、本発明のタービンは、第1の角度B1及び第2の角度B2と異なる、タービン軸線21と軸線23との間の角度B3,B4…を有する静翼の第3のグループ34をも有しており、この角度は、第1の角度B1と第2の角度B2との間である。第3のグループ34の翼は、第1及び第2のグループ30,32の翼の間に配置されており、条件の急激な変化を回避するために、流れを調整する。
【0040】
例えば、翼の第1のグループ30は、全て同じ角度B1を有する翼を有しており、翼の第2のグループ32は、全て同じ角度B2を有する翼を有しており、翼の第3のグループ34は、角度B3,B4,B5を有する翼を有している。翼の第3のグループ34は、翼の第1のグループ30と第2のグループ32との間の両方の移行ゾーンに配置されている。
【0041】
図4は、水平軸線25に対して成す角度Aによって規定された周方向での角度Bの変化を概略的に示している(図3も参照)。
【0042】
特に、0〜180の間に規定されたゾーンはタービンの上部であり、180〜360の間のゾーンはタービンの下部である。
【0043】
この図は、従来の形式で(すなわち、全て同じ開口17を備える静翼のために)計算された、タービン軸線21と、開口17に対する垂線23との間の最適化された角度Boptを規定するベースライン26に関して示されている。図4の曲線28及び28aは、この最適化された角度Boptからの角度Bのずれを示している。
【0044】
曲線28は、角度B2よりも大きな角度B1を有する実施形態を示しており(すなわち開口17は下部よりも上部において小さい)、曲線28aは、角度B2よりも小さな角度B1を有する実施形態を示している(すなわち開口17は下部よりも上部において大きい)。
【0045】
角度B1及びB2のずれは好適には同じである。
【0046】
角度B1及びB2のずれは好適には2〜5°である。
【0047】
図示のように、Boptからの角度Bの全体的なずれはゼロである。
【0048】
さらに、上部及び下部において角度Bが異なるので、上部と下部との間のゾーンは、角度Bが互いに合致するように角度Bを有している。
【0049】
これに関して、周方向角度0(及び360)及び180をはさんだゾーンにおいて、曲線28及び28aは、角度Bが第1及び第2の角度B1,B2とは異なるが第1の角度と第2の角度との間の値を有している(これは静翼の第3のグループ34である)ことを示している。
【0050】
図5は、各翼のための角度Bを示している。特に、図5は、ベースライン26と、角度B1及びB2に対応する2つのラインを示している。角度B3,B4,B5は、B1とB2との間である。
【0051】
本発明は、排気ディフューザを特に引用して説明されたが、抽出スリットの上流及び/又は下流に配置された静翼も、前述のように食違い角を変更させられてよい(抽出スリットは、段から蒸気を抽出するために使用される)。
【0052】
本発明の軸流タービンの運転は、説明及び例示されたものから明らかであり、実質的に以下の通りである。
【0053】
蒸気発生器3によって発生された蒸気流は、膨張段2に流入し、動翼に機械的動力を供給する。
【0054】
以下で、下部よりも上部においてより大きな開口17を備える好適な実施形態が引用される。
【0055】
最後の段9(排気ディフューザ4の上流の段)において、蒸気流は、より大きな流量がディフューザ4の上部(すなわちディフューザ4の開口10の近く)に向かって駆動されるように逸らされ、より少ない蒸気流量がディフューザの下部(すなわちディフューザ4の収集ゾーン7の近く)に向かって駆動されるように逸らされる。
【0056】
この蒸気流分配により、より均一な運転条件が達成され、ディフューザにおける混合損失及び圧力降下が低減され、全体的な効率が高まる。
【0057】
本発明は、複数の膨張段を有していてこれらの膨張段の後に膨張段を通過する流れを収集及び排出するためのディフューザが設けられている軸流タービンから流れを排出する方法にも関し、この方法において、膨張段2及び/又は排気ディフューザ4は少なくとも非軸対称の部分を有している。
【0058】
この方法は、タービンの周囲に沿った角度位置若しくは周方向位置に従って膨張段内の流れを異なって駆動することを含む。
【0059】
特に、この発明によれば、ディフューザ4の上流及び/又は抽出スリットの上流及び/又は下流での膨張段における流れのみが異なって駆動され、静翼のみが流れを異なって駆動する(すなわち動翼は駆動しない)。
【0060】
実際には、使用される材料及び寸法は、条件及び技術水準に従って意志で選択することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 蒸気タービン、 2 膨張段、 3 蒸気発生器、 4 排気ディフューザ、 5 凝縮器、 7 排気ディフューザの軸対称の部分、 8 非軸対称の収集器、 8a 排気ディフューザの非軸対称の収集器の上部、 8b 排気ディフューザの非軸対称の収集器の下部排出部、 9 最後の膨張段、 10 開口、 13 静翼、 13a 動翼、 14 前縁、 15 後縁、 16 案内翼、 17 開口、 19 排気ディフューザの対称軸線、 20 周方向、 21 タービン軸線、 23 開口に対して垂直な軸線、 25 軸線19に対して垂直な水平軸線、 26 ベースライン、 28 Bのずれ、 28a Bのずれ、 30 静翼の第1のグループ、 32 静翼の第2のグループ、 34 静翼の第3のグループ、 A 水平軸線25と一般的な半径方向軸線との間の角度、 B タービン軸線と開口に対して垂直な軸線との間の角度、 F 蒸気流の全体的な方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが静翼(13)と動翼(13a)とによって形成された複数の膨張段(2)が設けられており、該膨張段に、膨張段(2)を通過する流れを収集しかつ該流れを排出するためのディフューザ(4)が続いている軸流タービンであって、膨張段(2)及び/又はディフューザが少なくとも非軸対称な部分を有している形式のものにおいて、膨張段のうちの少なくとも1つの膨張段の静翼(13)が、タービンの周囲に沿って様々な異なる開口(17)を形成していることを特徴とする、軸流タービン。
【請求項2】
前記様々な異なる開口(17)を形成する静翼(13)が、ディフューザ(4)に隣接した段及び/又は抽出スリットの上流及び/又は下流の段の静翼である、請求項1記載の軸流タービン。
【請求項3】
前記様々な異なる開口(17)を形成するために、前記静翼(13)が、軸線方向(21)と、開口(17)に対して垂直な軸線(23)との間に形成された様々な異なる角度(B)を有している、請求項2記載の軸流タービン。
【請求項4】
タービンの軸線方向(21)と、開口(17)に対して垂直な軸線(23)との間の第1の角度(B1)を有する静翼の第1のグループ(30)と、タービンの軸線方向(21)と、開口(17)に対して垂直な軸線(23)との間の第2の角度(B2)を有する静翼の第2のグループ(32)とを有している、請求項3記載の軸流タービン。
【請求項5】
前記静翼の第1のグループ(30)が排気ディフューザ(4)の上部ゾーンに配置されており、前記静翼の第2のグループ(32)が排気ディフューザ(4)の下部ゾーンに配置されており、第1の角度(B1)が第2の角度(B2)よりも小さく、第1のグループ(30)の静翼の間の開口(17)が、第2のグループ(32)の静翼の間の開口(17)よりも大きい、請求項4記載の軸流タービン。
【請求項6】
前記第1のグループ(30)の静翼(13)が、ディフューザ(4)の対称軸線(19)に関して対称に配置されており、前記第2のグループの静翼が、ディフューザ(4)の同じ対称軸線(19)に関して対称に配置されている、請求項5記載の軸流タービン。
【請求項7】
タービンの軸線方向(21)と、開口(17)に対する垂線(23)との間に、前記第1の角度(B1)及び前記第2の角度(B2)とは異なりかつ第1の角度(B1)と第2の角度(B2)との間である角度(B3,B4)を有する静翼(13)の第3のグループ(34)が設けられている、請求項4記載の軸流タービン。
【請求項8】
前記タービンが蒸気タービンであり、前記流れが蒸気流である、請求項1記載の軸流タービン。
【請求項9】
複数の膨張段(2)を有しており、該膨張段に、該膨張段(2)を通過する流れを収集及び排出するためのディフューザ(4)が続いている軸流タービンから流れを排出する方法において、前記膨張段(2)及び/又はディフューザが、少なくとも1つの非軸対称の部分を有している方法において、静翼(13)が、タービンの周囲に沿った角度位置に応じて、膨張段(2)において流れを様々に異なって駆動することを特徴とする、軸流タービンから流れを排出する方法。
【請求項10】
ディフューザ(4)に隣接した膨張段及び/又は抽出スリットの上流及び/又は下流の膨張段においてのみ流れを様々に異なって駆動する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
排気ディフューザ(4)の上部ゾーンにおいて、同じ排気ディフューザ(4)の下部ゾーンよりも多い流れを駆動する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記タービンが蒸気タービンであり、前記流れが蒸気流である、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−58498(P2011−58498A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−205726(P2010−205726)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland