説明

軸流式マルチサイクロン集塵機

【課題】ガス導入室に配列された複数の軸流式サイクロンに対して含塵ガスを効率よく均等分配して導入できる軸流式マルチサイクロン集塵機を得る。
【解決手段】本発明に係る軸流式マルチサイクロン集塵機は、含塵ガスが導入されると共に複数の軸流式サイクロン11が設置されたガス導入室3と、複数の軸流式サイクロン11によって含塵ガスから分離された粉塵を貯留する集塵室5と、含塵ガスから粉塵が分離された洗浄ガスを集める洗浄ガス室7とを備えた軸流式マルチサイクロン集塵機1であって、ガス導入室3は、含塵ガスが導入されるガス入口9が形成されると共に集塵室5の上部外周を囲うように形成された状面が開口したリング状の流路からなる下部室3aと、下部室3aの上方に下部室3aの開口と連通すると共に前記複数の軸流式サイクロン11が設置された上部室3bとを備えてなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紛塵を含有する気体(以下、「含塵ガス」という)からダストを分離除去する軸流式マルチサイクロン集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流式マルチサイクロン集塵機の使用例として、例えば製銑工場のコークス乾式消火設備(以下、「CDQ」という場合あり)のガス循環装置において、冷却塔から発生する多量の粉塵(ダスト)を1次徐塵された後の含塵ガスを、更に2次集塵するための2次集塵機として使用されているものがある。
軸流式マルチサイクロン集塵機は、一般に、含塵ガスが導入されるガス導入室と、含塵ガスから分離除去された粉塵を貯留できる集塵室と、含塵ガスから粉塵が除去されたクリーンガスを集合排気する洗浄ガス室の3室から構成されている。
【0003】
ガス導入室は、流路が天板と下板とに仕切られており、この流路内に複数個の軸流式サイクロンが碁盤目状、若しくは千鳥状に所定の間隔で配列設置されている。
ガス導入室に導入された含塵ガスは、複数個の軸流式サイクロンを通過することで、粉塵が分離され、分離された粉塵が集塵室に貯留され、含塵ガスから粉塵が除去されたクリーンガスが洗浄ガス室に集合されて排気される。
【0004】
上記のような軸流式マルチサイクロン集塵機の例として、例えば特許文献1、2に開示がある。
特許文献1、2に開示されているように、ガス導入室は矩形状になっているのが一般的である。ガス導入室を矩形状にしている理由は以下の通りである。
含塵ガスを水平方向からガス導入室に導入して、その反対側に排気したり、含塵ガスを水平方向からガス導入室に導入して真上に排気したりするようなガス流れが一般的である。このようなガス流れを前提とすると、軸流式サイクロンの配列とガス流路の納まり方と寸法取合いを考慮すれば、おのずとガス導入室の形状は矩形となる。
なお、特許文献1、2には示されていないが、ガス流れの他の例として、含塵ガスを矩形状のガス導入室の対向する両側面から導入して、隣接する一面から排気するような例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−80244号公報
【特許文献2】特開2004−322086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軸流式マルチサイクロン集塵機で最も重要なことは、ガス導入室に配列された複数の軸流式サイクロンに対して含塵ガスを効率よく均等分配して導入することである。
しかしながら、従来のガス導入室は矩形状であるため、ガス導入室における四隅部分ではガス流れ方が片寄りし、偏流を生ずるために、軸流式サイクロンに均等分配されなくなり集塵効果の低下や一部の軸流式サイクロンの寿命低下を招く恐れがあった。
集塵効果を向上させるため含塵ガスの流速を高目に設定すると、含塵ガスと接触する部材の磨耗が増長されることになるので部品の交換時期が短くなるという他の問題が生ずる。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、ガス導入室に配列された複数の軸流式サイクロンに対して含塵ガスを効率よく均等分配して導入できる軸流式マルチサイクロン集塵機を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る軸流式マルチサイクロン集塵機は、含塵ガスが導入されると共に複数の軸流式サイクロンが設置されたガス導入室と、前記複数の軸流式サイクロンによって前記含塵ガスから分離された粉塵を貯留する集塵室と、前記含塵ガスから粉塵が分離された洗浄ガスを集める洗浄ガス室とを備えたものであって、
前記ガス導入室は、含塵ガスが導入されるガス入口が形成されると共に前記集塵室の上部外周を囲うように形成された上面が開口したリング状の流路からなる下部室と、該下部室の上方に前記下部室の開口と連通すると共に前記複数の軸流式サイクロンが設置された上部室とを備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記下部室における内壁の一部が、前記集塵室の外壁によって形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記下部室の内壁となっている集塵室の外壁の一部および軸流式サイクロンの内筒の一部に磨耗防止のための保護板を取り付けたことを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記ガス入口に含塵ガスを導入する入口ケーシングを有し、該入口ケーシングの両側面は前記下部室の外周面の接線方向に配置されると共に、前記入口ケーシング内に整流板を設置したことを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記上部室と前記下部室との境界部に偏流防止のための流量調整板を設置したことを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記ガス入口にガス流れを前記下部室の両側に分流するための分流板を設置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る軸流式マルチサイクロン集塵機は、含塵ガスが導入されると共に複数の軸流式サイクロンが設置されたガス導入室と、前記複数の軸流式サイクロンによって前記含塵ガスから分離された粉塵を貯留する集塵室と、前記含塵ガスから粉塵が分離された洗浄ガスを集める洗浄ガス室とを備えたものであって、前記ガス導入室は、含塵ガスが導入されるガス入口が形成されると共に前記集塵室の上部外周を囲うように形成された上面が開口したリング状の流路からなる下部室と、該下部室の上方に前記下部室の開口と連通すると共に前記複数の軸流式サイクロンが設置された上部室とを備えてなるので、前記下部室に導入された含塵ガスはリング状の流路の上部開口から上部室に導入され、ガス流れが円周方向から中心に向かう方向となるので、上部室に設置された複数の軸流式サイクロンに含塵ガスを均等に供給でき、集塵効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る軸流式マルチサイクロン集塵機の説明図である。
【図2】図1の矢視A−A図である。
【図3】図1の矢視B−B図である。
【図4】軸流式サイクロンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態に係る軸流式マルチサイクロン集塵機1は、含塵ガスを導入すると共に複数の軸流式サイクロン11が設置されたガス導入室3と、含塵ガスから分離された粉塵を貯留する逆円錐形の集塵室5と、含塵ガスから粉塵が分離された洗浄ガスを集める洗浄ガス室7とを備えている。
各構成を詳細に説明する。
【0017】
<ガス導入室>
ガス導入室3は、含塵ガスが導入されるガス入口9が形成されると共に集塵室5の上部外周を囲うように形成された上面が開口したリング状の流路からなる下部室3aと、下部室3aの上方に下部室3aと連通するように形成されると共に複数の軸流式サイクロン11が設置された上部室3bとを備えている。
ガス入口9には、含塵ガスをガス入口9に導くための入口ケーシング13が設置されている。入口ケーシング13の両側面13a、13bは、図2に示すように、下部室3aの外周面の接線方向に配置されている。また、入口ケーシング13内には、ガス流れを均一化するための整流板15が設置されている。
【0018】
下部室3aは、集塵室5の上部外周を囲うように設置され円筒状の外壁部17と、外壁部17の下部から集塵室5に連結された底部19と、集塵室5の外壁5aによって形成された上面が開口したリング状をしている。本実施の形態においては、集塵室5の外壁5aを下部室3aの内壁としている。集塵室5の外壁5aを下部室3aの内壁とすることにより、集塵室5の外壁5aが高温の含塵ガスと接触することになり、集塵室5内を加温・保温することができる。集塵室5内を加温・保温することで、集塵室5内の結露を防止して、集塵室5内に貯留されている粉塵が固化して排出時に排出口35が閉塞したり、集塵室5内での棚吊現象が発生したりすることを防止できる。
【0019】
本実施の形態では、集塵室5の外壁5aが下部室3aの一部を形成しているので、含塵ガスとの接触による摩耗が考えられる。そこで、下部室3aを形成する集塵室5の外壁5aの一部に摩耗を防止するための保護板(図示なし)を設置するようにするのが好ましい。
【0020】
下部室3aにおけるガス入口9には、図2に示すように、ガス流れを下部室3aの両側に分流するための分流板21が設置されている。分流板21は、集塵室5の外壁5aの接線方向に向かうように設置されている。
【0021】
上部室3bは下部室3aの上方に下部室3aと連通するように形成され、該上部室3bには複数の軸流式サイクロン11が設置されている。
上部室3bは、下部室3aの外壁部17から連続して上方に延びる外壁部17と、外壁部17の上端部に設置された天板23と、集塵室5との境界部に設置された下板25によって形成されている。
下板25には、複数の軸流式サイクロン11が設置されている。軸流式サイクロン11の配置の一例が図3に示されている。図3に示されるように、軸流式サイクロン11は、ガス流れが阻害されないように適所にメンテナンス通路も兼ねたガス誘導スペース27を設けるようにして配置されている。
【0022】
軸流式サイクロン11は、例えば特許文献1に開示された公知のものを使用することができる。軸流式サイクロン11は、図4に示すように、下板25に配設された軸流式サイクロン羽11aと、下板25の下方に向かって設置された軸流式サイクロン外筒11bと、下端が軸流式サイクロン外筒11bに挿入され上端が天板23の上方に延出する軸流式サイクロン内筒11cとを備えている。軸流式サイクロン内筒11cは含塵ガスに曝されて摩耗するので、摩耗を防止するための保護板29をその一部に設けるのが好ましい。
【0023】
ガス入口9近くにおける下部室3aと上部室3bとの境界部には、図3に示すように、下部室3aから上部室3bに流入するガス流れを調整するための流量調整板31が設置されている。ガス入口9近くでは下部室3aから上部室3bへのガス流入量が多くなる可能性があるので、それを調整することで下部室3aから上部室3bへの均等なガス流入を実現するものである。
【0024】
<集塵室>
集塵室5は、含塵ガスから分離された粉塵を貯留するものである。本実施の形態の集塵室5は、逆円錐状のホッパ型の容器によって形成されている。容器の外周部には容器を支持するための脚部33が複数設けられている。集塵室5の下端部には貯留された粉塵を排出さするための排出口35が設けられ、排出口35には所的時間毎に排出口35から粉塵を排出する排出装置37が設置されている。
本実施の形態では、上述したように、集塵室5の外周形状が円形をしているので、集塵室5の外壁5aがガス導入室3における下部室3aの内壁を兼用している。
【0025】
<洗浄ガス室>
洗浄ガス室7は、含塵ガスから粉塵が分離された洗浄ガスを集めるものであり、本実施の形態では円筒形の容器によって形成されている。
各軸流式サイクロン11の軸流式サイクロン内筒11cから排出される洗浄ガスが洗浄ガス室7に集められて、洗浄ガス排出口39から排出される。
【0026】
上記のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
入口ケーシング13に供給された含塵ガスは、整流板15によって整流されてガス導入室3における下部室3aのガス入口9に導かれる。ガス入口9に導かれた含塵ガスは分流板21によって左右に分流されて、リング状の下部室3a内に導入される。下部室3a内に導入された含塵ガスは、上方に流れを変えて上部室3bに流入する。このように、含塵ガスの上部室3bへの流入経路を円周から円中心に向かうようにしたので、円中心と円周上の任意点間距離は全て等しくなり、上部室3bの下板25に配列された複数の軸流式サイクロン11に含塵ガスを均等に分配できる。
また、含塵ガスの上部室3bへの流入経路を構成する外壁面17は矩形より流線形に近い円形にする方が流体抵抗を小さくできるので望ましい。
【0027】
なお、含塵ガスの上部室3bへの流入経路を周囲から中心に向うようにしたとしても、下部室3a、上部室3bおよび下板25の形状が矩形の場合は、矩形中心点と周上の任意点間距離は全部異なるため、本実施の形態と同様に配列された軸流サイクロン11に均等に分配するのは難しい。
また、含塵ガスの流路が矩形壁面で四隅がエッジである場合、角部でうず流を生じ流体抵抗が増すことになる。
このような意味から含塵ガスの流路の周壁は円形にするのが望ましい。
【0028】
ガス導入室3が円形の場合、含塵ガス流路の水平長さとなる円周長を矩形の場合と比較して長く確保することができ、含塵ガス流路の鉛直方向の高さを低くしても含塵ガス流速を偏磨耗の増長がない適切な流速に調整でき、それ故装置全体をコンパクト化できる。
【0029】
上部室3bに流入した含塵ガスは、下板25に設置された軸流式サイクロン羽11aを通過し、軸流式サイクロン外筒11bで粉塵が分離除去され、軸流式サイクロン内筒11cの中を通って、天板23の上方に形成されている洗浄ガス室7に誘導される。洗浄ガス室7に誘導されたクリーンなガスは集合して任意に方向に排気することができる。
一方、分離除去された粉塵は集塵室5内に貯留され、所定時間が経過すると集塵室5の下部にある排出装置37で系外に搬出される。
【0030】
以上のように、本実施の形態においては、ガス導入室3をリング状の下部室3aと、下部室3aの上方に形成された上部室3bから構成し、下部室3aに導入された含塵ガスが下部室3aの全周から上部室3bに供給されるようにしたので、上部室3bの下板25に所定間隔で配置されている軸流式サイクロン11に均等に含塵ガスを均等に分配供給でき、ガス導入室が矩形の場合と比較して集塵効果を向上させることができ、かつ部品の磨耗延長ができ寿命低下を防げる。
また、本実施の形態においては、下部室3a及び上部室3bの外周が円形になっているので、内圧(正圧の場合や負圧の場合がある)に対して容器剛性が高まり、補強を軽減でき、輸送費の低減、建設工事の容易性につながるという効果もある。
さらに、ガス導入室3、集塵室5及び洗浄ガス室7を円形にしたことにより、周長を矩形の場合よりも短くできることから、塗装や断熱材施工面積が減少し工事コストの節減になる。
また、本実施の形態では、集塵室5を逆円錐上の丸型(円形)ホッパによって形成したので、角形ホッパと比較して傾斜角度が同じであれば容器形状を最小限のコンパクトなものにすることができる。その理由は以下の通りである。角形ホッパの場合にはコーナー部における傾斜角度がもっとも緩くなるため、コーナー部における傾斜角度を粉の摩擦角以上に設定する必要がある。他方、円形ホッパの場合には傾斜角度は円周方向で全て同じであるため、傾斜角度を粉の摩擦角度以上に設定すればよい。仮に、角形ホッパのコーナー部の傾斜角度と円形ホッパの傾斜角度が同じであれば、円形ホッパの平断面が角形ホッパの平断面に内接する関係になるため、円形ホッパを角形ホッパよりもコンパクトな形状にすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 軸流式マルチサイクロン集塵機
3 ガス導入室
3a 下部室
3b 上部室
5 集塵室
5a 集塵室の外壁
7 洗浄ガス室
9 ガス入口
11 軸流式サイクロン
11a 軸流式サイクロン羽
11b 軸流式サイクロン外筒
11c 軸流式サイクロン内筒
13 入口ケーシング
13a、13b 入口ケーシングの両側面
15 整流板
17 外壁部
19 底部
21 分流板
23 天板
25 下板
27 ガス誘導スペース
29 保護板
31 流量調整板
33 脚部
35 排出口
37 排出装置
39 洗浄ガス排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塵ガスが導入されると共に複数の軸流式サイクロンが設置されたガス導入室と、前記複数の軸流式サイクロンによって前記含塵ガスから分離された粉塵を貯留する集塵室と、前記含塵ガスから粉塵が分離された洗浄ガスを集める洗浄ガス室とを備えた軸流式マルチサイクロン集塵機であって、
前記ガス導入室は、含塵ガスが導入されるガス入口が形成されると共に前記集塵室の上部外周を囲うように形成された上面が開口したリング状の流路からなる下部室と、該下部室の上方に前記下部室の開口と連通すると共に前記複数の軸流式サイクロンが設置された上部室とを備えてなることを特徴とする軸流式マルチサイクロン集塵機。
【請求項2】
前記下部室における内壁の一部が、前記集塵室の外壁によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の軸流式マルチサイクロン集塵機。
【請求項3】
前記下部室の内壁となっている集塵室の外壁の一部および軸流式サイクロンの内筒の一部に磨耗防止のための保護板を取り付けたことを特徴とする請求項2記載の軸流式マルチサイクロン集塵機。
【請求項4】
前記ガス入口に含塵ガスを導入する入口ケーシングを有し、該入口ケーシングの両側面は前記下部室の外周面の接線方向に配置されると共に、前記入口ケーシング内に整流板を設置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の軸流式マルチサイクロン集塵機。
【請求項5】
前記上部室と前記下部室との境界部に偏流防止のための流量調整板を設置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の軸流式マルチサイクロン集塵機。
【請求項6】
前記ガス入口にガス流れを前記下部室の両側に分流するための分流板を設置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の軸流式マルチサイクロン集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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