説明

軽量化低床囲炉裏

【課題】囲炉裏内部に軽量不燃断熱材10と上面に串差込孔を複数設けた耐火発泡固形断熱基板2を設置し、炭火5の燃焼火熱への対処と串(食材)の転倒を防ぐ。囲炉裏の軽量化と合せて低床化により、日本文化特有の囲炉裏の風情に極力近づける。
【解決手段】囲炉裏全体の重量を軽減し移動し易くするには、炉箱内部に軽量不燃断熱材10と耐火発泡固形断熱基板2の設置にて軽量化させ、移動用キャスター16を取付ける。耐火発泡固形断熱基板2の上面に串差込孔を複数設け、串(食材)7を受ける。囲炉裏の外観は、炉縁1と表層灰4と炭火5のみが見える事を基本にする。炭火5の燃焼火熱防御策として、耐火発泡固形断熱基板2で上方向への放断熱を主体とし、前記直下は軽量不燃断熱層10で、下方向への透過熱を遮断する。以上の様に、炉箱内部を軽い構成材料とし、重量と高さを押さえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、囲炉裏の構造に関して、炉箱の底部不燃板の上に、軽量不燃断熱材を上下2枚の薄鋼板で包み込んだ軽量不燃断熱層を置き、串孔を設けた軽量の耐火発泡固形断熱基板を重ね、表面に少量の灰を載せて隠ぺいし、全体を軽量化させ、移動用キャスターで移動を容易にした低床囲炉裏であり、床掘り込み固定式にも兼用可能な囲炉裏に関するものである。
【0002】
また本発明は、耐火発泡固形断熱基板を持って串立て用の孔を設け、食材を焼く時の串転倒を防ぐと共に、五徳の座りを安定にした、囲炉裏に関するものである。
【背景技術】
【0003】
可搬式の囲炉裏の場合、燃焼火熱の防御策等において、炉箱を金属板で深めに製作し内部の土と灰の量を多くする構造、あるいは耐火材、レンガ等で炉の容器を保護する等の構造であるが、各構成材料の比重の大きさから見て囲炉裏全体が重くなり、移動や持ち運びに難がある。合わせて、床面から炉縁天端まで高くなる感がある。
【0004】
串(食材)を灰に差して焼く場合、炉内部の土と灰を相応の深さにする必要があり、長い串を用いて倒れを防ぐ、若しくは炉に串受け金具を利用し倒れを防いでいるのが現状である。
【0005】
以上の点から、床面から炉縁天端まで高い場合と、受け金具を置いて串焼きする情景は、日本文化特有である囲炉裏の風情を損なっていると言える。
【0006】
床掘り込み式(古来の囲炉裏)囲炉裏をマンション等の居室に設置する場合、炉その物が深いと床の躯体を一部大きく下げる必要があり、下階の天井高さ等に影響する。よって、階高さを大きくする必要があり、建築設計条件に大きく関係する階高さ確保の点で制約を受ける。換気設備の問題もあるが、一般的に設置していないのが現状である。
【0007】
本発明は、この様な問題点を考慮した囲炉裏である。
【特許文献1】特開2000−171039(P2000−171039A)公報
【特許文献2】特開2000−257863(P2000−257863A)公報
【非特許文献1】発行所 株式会社 地球丸 「薪ストーブと囲炉裏の本」2002年3月10日初版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
囲炉裏全体の重量を軽減し移動を容易にするには、炉箱内部を比重の小さい部材構成にする必要がある。
【0009】
炭火燃焼火熱対策として、囲炉裏表面より上方向に大半を放熱させる様にし、囲炉裏表面より逆方向(下方向)への透過熱は、囲炉裏の底部不燃板到達時点で弱熱にする事を前提に、断熱性能の高い材料で対処する必要がある。
【0010】
串(食材)を灰に差込んだ際の倒れを防ぐ、あるいは串受け金具不用とするには、串の足元を受止め易くする必要がある。
【0011】
床面から炉縁天端までの高さを押さえた低床囲炉裏とし、日本文化特有の囲炉裏の風情を極力損なわない様にする。
【0012】
本発明の囲炉裏をマンション等の居室に固定式で設置する場合、据付収納深さを小さくする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
耐火発泡固形断熱基板にて炭火燃焼火熱の大半を上方向へ放熱させ、下方向への火熱透過量を減少させる。又、表面を覆う灰の量を薄くする事で、放熱し易くさせる。
【0014】
耐火発泡固形断熱基板の下端中央に一部透過した燃焼火熱(下方向への透過到達熱)は、その下1枚目の薄鋼板で全面に拡散させる。次に1枚目の薄鋼板で拡散した熱を、挟み込んである軽量不燃断熱材で遮断する。最後に軽量不燃断熱材を透過した熱を2枚目の薄鋼板全面に拡散させる。この様に底部不燃板までの到達温度を徐々に弱熱化させる。なお、2枚目の薄鋼板と底部不燃板との間に少し空隙を設け、全面接触を避ける。これは、透過熱を底部不燃板に直接伝導させない様にする為である。
【0015】
炉縁の歪み防止補強合板の中央部に開口を設けておき、底部不燃板に達した最終弱熱を空気の自然対流(ドラフト現象)により解放させる。
【0016】
以上の構成により囲炉裏全体を軽量にし、移動用キャスターを取付けて軽く押せる様にする。
【0017】
耐火発泡固形断熱基板に串孔を任意に設け、串棒の受材として適宜配置し、串焼き時転倒による食材の無駄を無くす事を目的とする。基板の串孔内のみ砂を入れ、その抵抗で食材の重心片よりによる串の自回転を抑え、食材を炭の火熱に対し串の足元を上下させての角度調整と回転を必要時に与える事で、適度な焼き加減を得られる様にする。
【0018】
耐火発泡固形断熱基板は、無機質原料による高温高圧蒸気養生され、断熱性が高く割れ防止金網入りの軽量気泡コンクリートパネル等で、アスベストをはじめ、トルエン、キシレン等の揮発性有機化合物(VOC)は一切含まず、軽量で適度な硬さと厚さで、串を差す孔を適当な径と深さで任意の位置に、容易に空ける事が出来る板材を用いる。
【0019】
囲炉裏炉縁内は灰と炭火のみが見える事を基本に、炉箱内の串孔を設けた耐火発泡固形断熱基板上に少量の灰を載せて隠ぺいする。表層の灰の量を薄くさせる事は、基板による上方向への放熱をし易くさせる主目的の他に、床面から炉縁天端までを低くする事でもある。
【0020】
固定式で据付収納深さを浅くするには、囲炉裏の全高を押さえる意外にない。上記構成断面を基本に、建造物床部分の構造段差を小さく出来る様にする。
【発明の効果】
【0021】
以上で説明したように本発明は、木灰を最小限度の使用量とし、耐火発泡固形断熱基板、各断熱材共比重の小さい材料の構成にしてある為、軽量化が可能となり、持ち上げ移動や移動用キャスターでの移動が容易に出来る。また、日本文化特有の掘り込み式囲炉裏の風情に極力近づける為の、低床化が可能となっている。
【0022】
串焼き時においては、耐火発泡固形断熱基板の串孔を利用し、串の転倒による食材の無駄を無くす事が主な目的であるが、食材を炭の火熱に対し串の足元を上下させ角度の変化と回転を必要時に与え、適度な焼き加減を得る事が出来る。なお、基板の串孔内にある砂の抵抗で、食材の重心片よりによる串の自回転を抑えている。
【0023】
囲炉裏をマンション等の居室に固定式で設置する場合、据付収納深さにおいて躯体スラブの掘り込み段差を浅く出来る為、建築設計条件に関係する階高さ確保の点で立案し易くなる。また、使わない時は蓋をする事で一般の居室床として利用出来る。将来高層住宅等において、固定式囲炉裏の設置需要を期待出来る。
【0024】
多人数で使用可能な、大型の移動式囲炉裏を制作出来る。串も短くて良く、一定の長さと太さの市販品を利用出来る。燃焼灰(木灰)は比較的高価なため、必要最小限の量で済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1 本発明囲炉裏の上部平面図の説明。
炉縁1の端部を 固定ネジ(大)16で結合、炉縁保護用耐火材9で炉縁保護までが炉箱としての平面である。炉箱内部に耐火発泡固形断熱基板2の設置、串立て孔3に立てた串(食材)7、表層灰4、炭火5、五徳6、火箸立部17の各部配置平面図である。
【0027】
図2 断面図の説明。
炉縁1の端部を 固定ネジ(大)16で結合させ、左記炉縁の下端に歪み防止補強合板15を固定ネジ(小)18で密着させ、炉縁1本体の歪み、変形を防ぐ。底部不燃板13を底板として敷き、炉縁保護用耐火材9を内側面に貼り、炉箱の組み立てを終える。次に、炉箱内部に薄鋼板(下)12、軽量不燃断熱材11、薄鋼板(上) 10の熱遮断層を置く。最後に串孔を設けた耐火発泡固形断熱基板2を重ね、表層灰4を少量載せて全て隠ぺいする。
【0028】
燃焼火熱防御として、先ず、囲炉裏使用時に生ずる炭火5の燃焼火熱の大半は耐火発泡固形断熱基板2にて上方向に放熱させ、炉箱内部の蓄熱を防ぐ。耐火発泡固形断熱基板2の中央下部に透過した下方向の到達熱防御は、薄鋼板(上)10、軽量不燃断熱材11、薄鋼板(下)12の軽量不燃断熱層で弱熱化させ、底部不燃板13を保護する。
【0029】
耐火発泡固形断熱基板2に串立て孔3を任意に設け、串(食材)7の受部として適宜配置する。串(食材)7を焼く時に串の足元を上下させ、炭火5の燃焼火熱に対し角度を変える事で、適度な焼き加減を得る様にしている。焼き上がりの串(食材)8は角度を変えて、燃焼火熱より遠ざけている。
【0030】
図3 部分拡大図の説明。
薄鋼板(下)12と底部不燃板13との間に少し空気層14を設け、全面接触を避ける。これは、最終的に達する透過熱を、薄鋼板(下)12自体の全面に拡散し易くし、透過熱を底部不燃板13に直接伝導させない様にする為である。
【0031】
図4 底面図の説明。
床面21に移動用キャスター20の高さ分空間があるので、歪み防止補強合板15の中央部に弱熱を解放する為の弱熱解放用開口19を適宜設けている。これらの構成により本発明の囲炉裏が完成する。
【実施例2】
【0032】
図5 囲炉裏を居室に固定式で設置した断面図の説明。
(図2の断面図に準ずる)
躯体スラブ23の掘り込み段差24の平面位置をやや広めにし、底部不燃板13からの弱熱を解放し易くする。囲炉裏の炉縁1が根太25の代わりになる様に、高さを調整する。これにより、使わない時は床開口部に蓋板22をする事で一般の居室として利用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】は、上部平面図。
【図2】は、中央縦断面図。
【図3】は、部分拡大図
【図4】は、移動用キャスター20の取り付け位置と、歪み防止補強合板15、及び弱熱解放用開口19の底面図。
【図5】は、図2の断面図に準ずる。囲炉裏を固定式とし、未使用時は蓋板22をはめた断面図。(実施例2)
【符号の説明】
【0034】
1 炉縁 2 耐火発泡固形断熱基板 3 串立て孔
4 表層灰 5 炭火 6 五徳 7 串(食材)
8 串(食材焼き上り) 9 炉縁保護用耐火材
10 薄鋼板(上)
11 軽量不燃断熱材 12 薄鋼板(下) 13 底部不燃板
14 空気層 15 歪み防止補強合板 16 固定ネジ(大)
17 火箸立部 18 固定ネジ(小) 19 弱熱解放用開口
20 移動用キャスター 21 床面 22 蓋板
23 躯体スラブ 24 躯体段差 25 根太

【特許請求の範囲】
【請求項1】
囲炉裏の炉箱の中に、軽量不燃断熱材を上下2枚の薄鋼板で包み込んだ軽量不燃断熱層を置き、その上に耐火発泡固形断熱基板を重ね、表面に少量の灰を載せて隠ぺいする事で、軽量化と低床化をはかる事を特徴とする移動、固定(兼用可能)囲炉裏。
【請求項2】
請求項1の耐火発泡固形断熱基板は、無機質原料で高温高圧蒸気養生された、割れ防止金網入りの軽量気泡コンクリートパネル等から成っている。炭火の燃焼火熱の大半をこの耐火発泡固形断熱基板で上方向へ放熱させる。一方、耐火発泡固形断熱基板を逆方向(下方向)に一部透過する熱に対しては、基板下にある請求項1に記載の軽量不燃断熱層で遮断させ、最下部の底板を保護する事を特徴とする請求項1、又は2記載の移動、固定(兼用可能)囲炉裏。
【請求項3】
耐火発泡固形断熱基板に、串差込用の孔を適当な径と深さで任意に必要数設け、耐火発泡固形断熱基板の表面に少量の灰を乗せて隠ぺいする。炉縁、灰、炭火のみが外観上見える事を基本とし、日本文化特有の囲炉裏(床掘り込み式)の風情に近づける事を特徴とする移動、固定(兼用可能)囲炉裏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−202920(P2008−202920A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43035(P2007−43035)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【特許番号】特許第4061430号(P4061430)
【特許公報発行日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(707000163)