説明

軽量気泡コンクリートパネル

【課題】例えば建築物の外壁材や間仕切り材などとして用いられる軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)を例えば壁材や間仕切り材などとして使用した場合にも、それによって仕切られた空間の通気性や透光性もしくは採光性、ひいては防犯性等を高めることができるようにする。
【解決手段】パネルの表裏面を貫通する貫通孔または/および切欠き部を1箇所以上設けたことを特徴とする。前記貫通孔の径あるいは幅は30mm以上110mm以下とし、切欠き部の径あるいは幅もしくは長さは、隣り合うパネルをつき合わせた状態で30mm以上110mm以下となるようにするのが望ましい。上記貫通孔または/および切欠き部とパネル表裏面との境界部には面取り加工を、パネルの表面または/および裏面には溝加工をそれぞれ必要に応じて施こすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物の外壁材や間仕切り材などとして用いられる軽量気泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという)に関する。
【背景技術】
【0002】
ALCパネルは、一般に石灰やセメント等の石灰質原料と、珪石や高炉スラグ等の珪酸質原料とを主原料として、これに適量の水と発泡剤や薬品を加えて撹拌混合し、スラリーとしたものを型枠に流し込んで所定の形状に成形する。次いで、孔質化した半可塑状態の成形体をワイヤ等でパネル状に切断したのちオートクレーブ等で蒸気養生して製造するものである。
【0003】
上記のようにして製造されるALCパネルは、遮音性、断熱性、軽量性、施工性に優れていることから、大型のオフィスビルやマンションもしくは戸建住宅等の居住建築物はもとより倉庫等の非居住建築物の外壁材や間仕切り材などとして広く使用されている。
【0004】
ところが、従来のALCパネルは、一般に表面が平らな単なる板状に形成され、装飾性や意匠性に欠ける嫌いがある。そこで、例えば下記特許文献1または特許文献2のようにパネル表面に溝や凹凸模様等を形成することが提案されているが、それらの加工はパネルの表面のみでパネル厚さ方向に貫通するような加工はなされていない。
【0005】
そのため、パネルの厚さ方向には通気性や透光性がなく、例えば建築物の間仕切り材として用いた場合には、隣接する空間からの視界が完全に遮断され、しかもALCパネルの高い遮音性能により音の伝搬も遮断されることになる。従って、ALCパネルで仕切られた空間は密室状態となり、例えば倉庫や店舗等において有価物等を保管・貯蔵する場合には、隣接する空間からの視覚や聴覚による監視ができず防犯上問題となる場合がある。
【0006】
またALCパネルを、例えば食品倉庫の外壁材として使用した場合には、通気性や採光性が悪く、常時エアコンや照明器を使用しなければならず、維持コストが嵩むと共に、倉庫内で働く作業者の環境衛生上好ましくない等の問題があった。
【0007】
【特許文献1】特公平4−78083号公報
【特許文献2】特開平11−148198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、ALCパネルを例えば壁材や間仕切り材などとして使用した場合にも、それによって仕切られた空間の通気性や透光性もしくは採光性、ひいては防犯性等を高めることのできるALCパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために本発明によるALCパネルは、以下の構成としたものである。すなわち、パネルの表裏面を貫通する貫通孔または/および切欠き部を1箇所以上設け、その貫通孔または/および切欠き部にいかなるものも装着もしくは装入しないことにより防犯性および通気性を高めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように本発明によるALCパネルは、その表裏面を貫通する貫通孔または切欠き部もしくは両者を1箇所以上設け、その貫通孔または/および切欠き部にいかなるものも装着もしくは装入しないことにより防犯性および通気性を高めたことによって、例えば有価物を保管・貯蔵する倉庫等の壁材として適用した場合には、その倉庫等に隣接する空間からの視覚や聴覚による監視が容易になり、防犯効果が高まる効果がある。また隣接空間からの視界が確保されるため、別途防犯装置の設置が不要となる等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1(a)は本発明によるALCパネルの一実施形態を示す斜視図、同図(b)はそのALCパネル内に埋設した補強鉄筋の斜視図である。
【0013】
本実施形態は、全体略長方形状に形成したALCパネル1に、その表裏面(図1(a)で手前の表面と向こう側の裏面)を貫通する貫通孔2を複数個設けたもので、特に図の場合は正面略方形の貫通孔をパネル1の幅方向(図1(a)で左右方向)に2列、長手方向(図1(a)で上下方向)に8段設けた例を示す。
【0014】
上記各貫通孔2のパネル表面と裏面の境界部(開口縁部)には、図1(a)および図2(a)に示すように面取り加工3が施され、パネル表面には図1(a)に示すように意匠性を高めるために溝加工4が施されている。また上記パネル1内には図1(b)に示すように補強鉄筋5が埋設され、特に図の場合は上記各貫通孔2を避けて、その周囲のパネル1内に棒鋼等よりなる補強鉄筋5を縦横に複数本ずつ交差させて設けた構成である。
【0015】
なお上記実施形態は、貫通孔2を正面略方形すなわち四角形に形成したが、四角以外の多角形や円形または長円形もしくは星型や各種文字形状その他適宜であり、貫通孔2の配置構成や個数も任意である。さらに上記貫通孔2の径や長さ若しくは幅寸法等も適宜であるが、例えば倉庫の外壁材として用いる場合には、視覚確保と音の伝播を妨げないことを必要とすることから最小で30mm以上とし、また、防犯上と安全上で人の頭部が入らないように最大で110mm以下とするのが望ましい。
【0016】
また屋外で使用する場合に上記貫通孔2内に雨水等が溜まるのを防止するために、例えば図2(b)に示すように貫通孔2の下面に排水溝6を設けてもよく、また例えば図3(a)のように貫通孔2の径がパネル表面側より裏面側の方が漸次小さくなるようにテーパ状に形成したり、あるいは同図(b)のようにパネル表面側と裏面側とで貫通孔2の径が段階的に異なる段付き孔としてもよい。
【0017】
さらに上記実施形態は、パネル1に貫通孔2を形成したが、その貫通孔2の代わりに若しくは貫通孔2と併用して、パネル1の縁部にパネル表裏面を貫通するようにして切欠き部7を設けるようにしてもよい。図4および図5はその一例を示すもので、図4は全体略長方形状を呈するALCパネル1の長辺小口と短辺小口の略中央部にそれぞれ切欠き部7を設けた例、図5はALCパネル1の角部(隅部)に切欠き部7を設けた例である。
【0018】
上記切欠き部7の大きさ形状も前記貫通孔2と同様に適宜であるが、上記パネル1を例えば倉庫の外壁材として用いる場合には、上記切欠き部7の長さや幅寸法は、隣り合うパネルを付き合わせた状態で視覚確保と音の伝播を妨げないことを必要とすることから最小で30mm以上とし、また防犯上と安全上で人の頭部が入らないように最大で110mm以下とするのが望ましい。
【0019】
上記切欠き部7の内面、特に切欠き部7の下側となる面についても前記図3(a)または(b)と同様にテーパ状あるいは段付き孔としてもよい。また上記のような切欠き部7を形成するALCパネル1内にも補強鉄筋を設けるとよく、その場合、上記切欠き部7は前記貫通孔2と同様に補強鉄筋の無い箇所に形成するか、切欠き部7を設ける箇所の鉄筋は予め移動しておくか除去しておくとよい。ただし、強度不足にならないことが明らかな場合などには、上記切欠き部7を形成する際に、それと干渉する位置にある補強鉄筋5を切断除去するようにしてもよい。前記貫通孔2を形成する際も同様である。
【0020】
さらに上記のような切欠き部7とALCパネル1の表裏面の境界部においても前記と同様の面取り加工3を施してもよく、また上記のような切欠き部7を有するALCパネル1においても、その表面に前記図1(a)に示すような溝加工4を施してもよい。その溝加工4はパネルの縁部や裏面側に形成してもよく、又その溝加工4の断面形状や配置構成等は適宜変更可能であり、それらの変更は前記例の場合も同様である。
【0021】
上記のように本発明によるALCパネル1は、その表裏面を貫通する貫通孔2または切欠き部7もしくは両者2,7を1箇所以上設けたことによって、通気性や透光性のよいパネルが得られ、例えば有価物を保管・貯蔵する倉庫等の壁材として適用した場合には、その倉庫等に隣接する空間からの視覚や聴覚による監視が容易になり、防犯効果が高まる効果がある。また上記のように隣接空間からの監視が容易となることから、場合によって防犯装置等を省略することも可能となる。
【0022】
さらに本発明によるALCパネルは、例えば食品倉庫や立体駐車場などの外壁材や間仕切り材等としても使用可能であり、そのような場合には、通気性もよくなり、換気装置やエアコン等の設備を縮小したり、それら稼働を軽減して設備コストや維持コストを低減することができる。また換気がよくなることで上記倉庫や駐車場内で働く作業者や駐車場に出入りする人の健康維持や環境衛生を向上させることができる等の効果がある。
【0023】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように本発明によるALCパネルは、貫通孔や切欠き部を設けたことによって、これまでの単なる平板状のパネルでは得られない通気性や透光性ひいては防犯性等が向上し、ALCパネルの機能や用途を拡張して汎用性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は本発明によるALCパネルの一実施形態を示す斜視図、(b)は上記パネル内に埋設した補強鉄筋の配置構成を示す斜視図。
【図2】(a)は上記ALCパネルに設けた貫通孔の拡大図、(b)は貫通孔の下面に排水溝を設けた例の同上図。
【図3】(a)は貫通孔をテーパ状に形成した例の断面図、(b)は貫通孔を段付き孔として例の断面図。
【図4】ALCパネルの長辺小口と短辺小口に切欠き部を設けた例の斜視図。
【図5】ALCパネルの角部に切欠き部を設けた例の斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 ALCパネル
2 貫通孔
3 面取り加工
4 溝加工部
5 補強鉄筋
6 排水溝
7 切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの表裏面を貫通する貫通孔または/および切欠き部を1箇所以上設け、その貫通孔または/および切欠き部にいかなるものも装着もしくは装入しないことにより防犯性および通気性を高めることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項2】
前記貫通孔の径あるいは長さ又は幅が最小30mm以上、最大110mm以下である請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項3】
前記切欠き部はパネルの縁部に形成され、その切欠き部の長さ又は幅が隣り合うパネルをつき合わせた状態で最小30mm以上、最大110mm以下である請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項4】
貫通孔または/および切欠き部とパネル表裏面との境界部に面取り加工を施してなる請求項1〜3のいずれかに記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項5】
前記パネルの表面または/および裏面に溝加工を施してなる請求項1〜4のいずれかに記載の軽量気泡コンクリートパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−138119(P2006−138119A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328835(P2004−328835)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(399117730)住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Fターム(参考)】