説明

輸液バッグ

【課題】区画された二室の一方に収納した粉末剤と、他方に収納した薬液とが、弱シール部4の剥離後に確実に混合でき、粉末剤が室内に残存しないように液流が円滑となるシール形状をなしていて、上記混合性能を高めることができる輸液バッグを提供すること。
【解決手段】二室に区画された一方の室を薬液収納室2とし、他方の室を粉末剤収納室3とし、二室の境界部における中央部を弱シール部4として形成し、残余部分は強シール部5として形成してあり、薬液を圧することによって弱シール部4を剥離して薬液と粉末剤とを混合できるようにした輸液バッグ1であって、強シール部5は弱シール部4の両端から上下へ略垂直状に延設した形状をなし、強シール部5のうち少なくともバッグの側端10,10′へ連続する部分がアール形状をなし、強シール部5の延設の高さHは弱シール部4の高さhより大きく形成されていることを特徴とする輸液バッグ。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は薬液と粉末剤とをそれぞれ収納する二室を区画し、液圧でこの区画された部分を破って薬液を混合して使用する輸液バッグに関する。
【0002】
【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】
従来より内部に異種の薬液をそれぞれ収納する、区画された薬液収納室を有する合成樹脂製輸液バッグは良く知られている。前記輸液バッグは薬液収納室を境界部で区画するためにクリップ状の区画用具を用いたものもあるが、部品として付属せねばならず嵩ばるほか不用意に区画が解除されたりし易いため、境界部として剥離可能な弱シール部を形成するのが好ましく、この弱シール部が最近の輸液バッグには多く採用されているのが現状である。
【0003】
この弱シール部は、輸液バッグの他の部分における熱シール部に比べて剥離し易いように、輸液バッグ本体とは異種の樹脂テープを輸液バッグ本体の間に挟み、その部分を他の強シール部と一緒に熱癒着することにより作成されている(例えば実開平5−5138号公報参照)。
上記したように、区画された二室にそれぞれ異なる薬液を収納している場合には、弱シール部を液圧で剥離して異なる薬液どうしを混合する場合、薬液対薬液ゆえに弱シール部と連続する強シール部の形状による影響は少ないが、粉末剤を一方の収納室に収納する薬液対粉末剤の場合、薬液によって粉末剤が短時間で溶解する必要があり、収納室の内部に溶けずに粉末のまま残存するようなものであってはならないため、弱シール部と連続する強シール部の形状には種々の改良を要するものであった。
【0004】
そこで、本考案は上記した改良のための考案を種々実験検討の上完成したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した本考案による輸液バッグの構成としては、前記請求項1に記載したように、二室に区画された一方の室を薬液収納室とし、他方の室を粉末剤収納室とし、二室の境界部における中央部を弱シール部として形成し、残余部分は強シール部として形成してあり、薬液を圧することによって弱シール部を剥離して薬液と粉末剤とを混合できるようにした輸液バッグであって、強シール部は弱シール部の両端から上下へ略垂直状に延設した形状をなし、強シール部のうち少なくともバッグの側端へ連続する部分がアール形状をなし、強シール部の延設の高さは弱シール部の高さより大きく形成されていることを特徴としている。
【0006】
上記請求項1記載による本考案によると、強シール部は弱シール部の両端から略垂直状に延設した形状をなしているので、弱シール部が液圧で剥離される際の液圧が弱シール部に集中し易くなり、剥離後の液流も加勢し易く、特に液シール部のうち少なくともバッグの側端へ連続する部分がエッジ形状でなくアール形状をなすので、エッジ形状の場合に生じた側端との境界部分におけるピンホールの発生を防止することができ、安定した輸液バッグの使用が可能となる。又本考案では請求項2に記載したように、弱シール部の幅は強シール部の左右それぞれの幅より大きいか略等しいことを特徴としていると、弱シール部のシール幅として、バッグ全体のうちでバランスが良好となるほか、弱シール部を剥離した後も液流が良好となる通過口を形成できることになる。
【0007】
また、請求項3のように、強シール部の上下への延設頂部がアール形状をなしていることを特徴としていたり、請求項4のように、弱シール部と強シール部との境界がアール形状をなしていることを特徴としていると、弱シール部を剥離した後の液流が良好となり、粉末剤が強シール部の周辺で溶解せずに残存するのを防ぎ、粉末剤が薬液に溶解するのを円滑に助成できる。
上記した本考案による輸液バッグは請求項5に記載したように両側端がシールされていないチューブ形状の場合と、請求項6に記載したように両側端がシールされたチューブ形状の何れでもよい。
【0008】
また、本考案は請求項7に記載したように、粉末剤の収納室の表裏の一方が透明に形成されてあり、透明の面を剥離自在なアルミシートで被蔽してあることを特徴としていると、使用前における粉末剤を良好に保護できることになるほか、使用時には透明な面から粉末剤の溶解状況を視覚でき至便である。
さらに、本考案は請求項8に記載したように、薬液収納室が50〜200mlの収容容積であって、このように収容量が少ない場合にも、本考案の構成によると、他室の粉末剤が強シール部の周辺で溶解せずに残存したりすることはなくなる。
【0009】
【考案の実施の形態】
次いで、本考案による実施形態を添付図面を参照しながら以下に説明する。
本考案による輸液バッグを示す図1は正面図、図2は背面図、図3は側面図、図4はカバーとなるアルミシートを剥離した正面図、図5は要部の拡大断面図であって、輸液バッグ1は合成樹脂シートで形成されてあり、両側端10,10′がシールされていないチューブ状のものを用いて構成してある。この輸液バッグ1は薬液収納室2と粉末剤収納室3の二室に区画してあり、二室の区画部分となる境界部における中央部を弱シール部4として形成し、これに続く残余部分は強シール部5として形成してあり、薬液を強く圧することにより弱シール部を剥離して薬液と粉末剤とを混合できるようにしてある。この弱シール部4は合成樹脂シート間に樹脂テープT,Tを挟んで130℃〜200℃で熱シールして作られてあり(特に図5参照)、樹脂テープT,Tが液圧で剥離できるようになっている。6は上側周縁の強シール部、7は口栓8を有する下側周縁の強シール部を示してある。何れのシール部も熱融着によるシールを採用している。9は吊下孔、Sは二つ折り線を示している。上記した輸液バッグ1の薬液収納室2としては、50〜200mlの収容容積を有するものが好ましい。
【0010】
そして、本考案の輸液バッグ1では、弱シール部4に続く前記強シール部5は弱シール部4の両端から略垂直状に延設した立上がり形状をなしており、強シール部5のうち輸液バッグ1の側端10,10′へ連続する部分51がアール形状をなし、強シール部5の延設高さHは弱シール部の高さhより大きく形成されていて、弱シール部4を安定よく保護しているとともに弱シール部4を液圧で剥離した後には液流に勢いがつき易い形状にしている(図2参照)。
【0011】
また弱シール部4の幅bは強シール部5の左右それぞれの幅b′より大きいか略等しく形成してあり、弱シール部4の剥離後にできる開口が液流を円滑にできる大きさになるように形成されている(図2参照)。
さらに液流を円滑にできるように強シール部5の上下への延設頂部52や弱シール部4と強シール部5との境界53が何れもアール形状をなしている。
以上のような弱シール部4と強シール部5による形態によって、弱シール部4の剥離後における薬液と粉末剤との混合は極めて短時間で行われ、特に×印で示す箇所周辺に粉末剤が残り易かった従来の欠点を解消することができた(図4参照)。
【0012】
さらに本考案による輸液バッグ1においては、粉末剤の収納室の少なくとも一方の面が透明に形成されてあり、透明な面を剥離自在なカバーとなるアルミシート(合成樹脂フィルムがラミネートされたアルミシート)Aにて内部空間Cを介して被蔽して保護してあり、他方の面も同様のアルミシートA′が貼着されている(図5参照)。
次に図6〜9は形状の異なる変更実施例を示す背面図であり、図6および図7は弱シール部のシール幅をかなり大きくした場合、図8および図9は側端形状を変化させた場合を示している。特に図9は両側端10,10′がシールされたチューブ形状のものを用いた変更実施例を示す背面図であり、前記した他の形状の輸液バッグとしても側端がシールされたものを用いて実施することも可能である。
【0013】
輸液バッグ1を形成する合成樹脂シートは、ポリオレフィン系樹脂の一種であるポリエチレン樹脂、好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて構成された内外層と、ポリオレフィン系樹脂の一種であるポリエチレン樹脂、好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂にて構成された中間層との多層体にて構成されており、前記内外層を構成する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の性質は、密度:0.920〜0.940g/cm3、メルトフローレート:0.5〜5.
0g/10minである。前記中間層を構成する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の性質は、密度:0.890〜0.930g/cm3、メルトフローレート:0.1〜5.0g/10minであることが好ましい。前記中間層を構成する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の性質は、密度:0.890〜0.930g/cm3、メルトフローレート:0.1〜0.5g/10minであることがさらに好ましい。合成樹脂シート全体の厚みは、0.2〜0.5mmであり、そのうち中間層の厚みは、全体の厚みに対して40〜60%である。
【0014】
なお上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂の他、ポリプロピレン樹脂を採用してもよい。また中間層として、非晶性又は低結晶性エチレンαオレフィン系エラストマーと直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とをブレンドした層をブレンド中間層を採用してもよい。中間層としてブレンド中間層を採用した場合は、エチレンαオレフィン系エラストマーの性質は、密度:0.860〜0.
890g/cm3、メルトフローレート:0.1〜4.5g/10minであることが好ましい。エチレンαオレフィン系エラストマーの性質は、密度:0.860〜0.890g/cm3、メルトフローレート:0.1〜2.5g/10minであることがさらに好ましい。
【0015】
本考案の輸液バッグ1の薬液収納室2には、溶解液として生理食塩液等の薬液を収納し、粉末剤収納室3には抗生物質または制癌剤等の薬剤を収納して使用する。
【0016】
【考案の効果】
以上説明した本考案による輸液バッグによると、区画された二室の一方に収納した粉末剤と、他方に収納した薬液とが、弱シール部の剥離後に確実に混合でき、粉末剤が室内に残存しないように液流が円滑となるシール形状をなしていて、上記混合性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】正面図である。
【図2】背面図である。
【図3】側面図である。
【図4】アルミシートを剥離した状態の正面図である。
【図5】要部の拡大断面図である。
【図6】形状の異なる実施変更例を示す背面図である。
【図7】実施変更例を示す背面図である。
【図8】実施変更例を示す背面図である。
【図9】側端がシールされたバッグを用いた実施変更例の背面図である。
【符号の説明】
1 輸液バッグ
2 薬液収納室
3 粉末剤収納室
4 弱シール部
5 強シール部
51 強シール部のうちバッグ側端に連続する部分
52 強シール部の延設頂部
53 弱シール部と強シール部との境界部
10,10′ 側端
A,A′ アルミシート

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】二室に区画された一方の室を薬液収納室とし、他方の室を粉末剤収納室とし、二室の境界部における中央部を弱シール部として形成し、残余部分は強シール部として形成してあり、薬液を圧することによって弱シール部を剥離して薬液と粉末剤とを混合できるようにした輸液バッグであって、強シール部は弱シール部の両端から上下へ略垂直状に延設した形状をなし、強シール部のうち少なくともバッグの側端へ連続する部分がアール形状をなし、強シール部の延設の高さは弱シール部の高さより大きく形成されていることを特徴とする輸液バッグ。
【請求項2】弱シール部の幅は強シール部の左右それぞれの幅より大きいか略等しいことを特徴とする請求項1記載の輸液バッグ。
【請求項3】強シール部の上下への延設頂部がアール形状をなしていることを特徴とする請求項1または2記載の輸液バッグ。
【請求項4】弱シール部と強シール部との境界がアール形状をなしていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の輸液バッグ。
【請求項5】バッグは両側端がシールされていないチューブ形状のものからなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の輸液バッグ。
【請求項6】バッグは両側端がシールされたチューブ形状のものからなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の輸液バッグ。
【請求項7】粉末剤の収納室の表裏の一方が透明に形成されてあり、透明の面を剥離自在なアルミシートで被蔽してあることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の輸液バッグ。
【請求項8】薬液収納室が50〜200mlの収容容積であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の輸液バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【登録番号】実用新案登録第3074192号(U3074192)
【登録日】平成12年10月4日(2000.10.4)
【発行日】平成12年12月19日(2000.12.19)
【考案の名称】輸液バッグ
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2000−4279(U2000−4279)
【出願日】平成12年6月20日(2000.6.20)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)