説明

輸送フローの自動解析方法

この発明による方法では、品質試験(QTL)発送物を採用しており、そこに、輸送の間の物理的な特性を時間と関連付けて記録しておき、その後読み出して、輸送プロセス工程にもとづき分類する。この場合、ノードにおいて各QTL発送物を識別して、通過して来たノードに関する場所と時間の関係を検出する工程と、場所と時間の関係及び記録された物理的な状況から成るプロセス要素を用いて、各発送物が通過して来た物流プロセスチェーンを自動的に検出する工程とを実行するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1の上位概念にもとづく輸送フローを自動的に解析するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発送物を運搬する際における集配・郵便業務などの物流網の弱点は、多くの場合配達を遅らせることとなる。郵便業務などの物流網の運用者には、しばしば、そのような弱点の存在が知られているが、従来の手段による場所の特定は、時には大きな負担でしか実現可能でないか、或いはそもそも実現不可能である。
【0003】
(例えば、コンテナのフレーム構造に取り付けることにより)輸送ユニットを監視することを目的とする、例えば、特許文献1などでの貨物を監視するためのシステムが知られている。任意の発送物の監視は不可能である。更に、これらのシステムは、一定の発送物を運搬するための輸送プロセスの種類と時間的な経過を自律的に独立して検出することはできない。更に、何時発送物が一定の仕分けセンターを通過したのかを確認することができるトランスポンダーにより支援された(例えば、特許文献2によるトランスポンダーを用いた)方法が有る(特許文献3)。
【0004】
何時発送物が一定の仕分けセンターを通過したのかを確認するための別の方策が、特許文献4に記載されている。
【0005】
しかし、これらのシステムは、発送物が時間通り輸送されているか否かを求めることしかできない。しかし、時間通りでない輸送の原因を推定することは全く不可能である。輸送チェーンの過程に関する証拠が無いので、例えば、場合によっては起こり得る遅延に関する責任を証明することもできない。
【0006】
目下のところ、郵便業務では、弱点となる場所を特定するために品質試験レター(QTL)が採用されている(特許文献5,6)。このQTLとそれに対応する測定値を画像化するためのソフトウェアを用いて、輸送プロセスとその時間的な過程を一義的に決定することができる。しかし、このシステムでは、場所との関連付けを作成することができない。
【特許文献1】ドイツ特許公開第3942009号明細書
【特許文献2】ドイツ実用新案第69609765号明細書
【特許文献3】米国特許第3750167号明細書
【特許文献4】カナダ特許公開第2285894号明細書
【特許文献5】欧州特許第0744030号明細書
【特許文献6】ドイツ特許公開第19619068号明細書
【特許文献7】ドイツ特許第4000603号明細書
【特許文献8】欧州特許第1222037号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、物流網における輸送フローを自動的に解析するともに、物流チェーンでの弱点も自動的に検出することができる方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、この発明にもとづき、請求項1の特徴によって解決される。
【0009】
それによると、以下の工程を実行する。
・ノードにおいて、各QTL発送物を識別して、通過して来たノードに関する場所と時間の関係を検出する工程
・エキスパートシステムを用いて、この場所と時間の関係及び時間と関連付けて記録された物理的な状況(例えば、開函、輸送形式、仕分け/処理、配達など)から成るプロセス要素から、各発送物が通過して来た物流プロセスチェーンを自動的に検出する工程
この発明の有利な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0010】
即ち、以下の追加的な工程を実行するものである。
・物流網への入力地点と物流網からの出力地点の各々を出発点として、それらに対応する時間と、物流網のノード間の所定の輸送ルール並びにノード内及び関連ノード間での手続規定から選定した運搬条件とを用いて、送出された各QTL発送物の可能な全ての目標輸送フローを自動的に生成する工程
・運搬された各QTL発送物の全ての目標輸送フローと実際の輸送フローを比較して、偏差を算出する工程
・運搬された各QTL発送物に関する実際の輸送フローと目標輸送フロー間の偏差及び最も良く一致した目標輸送フローを弱点データベースに記録する工程
弱点を解析するために、弱点データベースに記録されている偏差を統計的に評価することも有利である。
【0011】
目標輸送フローを生成する際の負担を軽減するためには、物流網を網平面と部分網に分割し、それらに対して、ノード間の輸送ルールとノード内及び関連ノード間での手続規定をそれぞれ定義するのが有利である。
【0012】
偏差の詳細な解析を得るためには、識別した部分プロセスに関する偏差、偏差の種類及び偏差の原因の中の一つ以上を評価するのが有利である。
【0013】
QTL発送物を識別するためには、様々な有利な手法が有る。即ち、QTL発送物は、機械読取可能な目印を備えることができる。
【0014】
別の手法では、料金別納用スタンプで用いられる二次元バーコードに、少なくとも一つのQTL発送物識別情報と試験フロー識別情報の追加情報を組み込む。
【0015】
QTL発送物は、トランスポンダーを備えることもでき、そのトランスポンダーをノードで読み取って、時間参照情報と共に記録する。
【0016】
更に、QTL発送物がノードを通過したことを、定常的に無線で発信されている識別情報にもとづき、受信器を用いて検知し、その情報を時間参照情報と共にQTL発送物に記録することができる。
【0017】
追加的な特徴が無くても、宛先情報が有る表面から、目立った特徴を検出して、目的とする宛先及び別の試験データと共にデータベースに記録しておくことによって、QTL発送物を識別することができる。目標ノードでは、同様に、到着した発送物の宛先情報が有る発送物表面の目立った特徴を、時間と関連付けて検出し、データベースに記録する。各QTL発送物は、ノードで検出された特徴をQTL発送物に割り当てられた特徴と比較することにより検出され、その際所定の範囲内で一致する場合に、QTL発送物であると識別される。
【0018】
大量のデータフローをより良好に捌くために分散型動作方法を選択した、それに関する別の有利な変化形態では、QTL発送物を物流網に投入する前に、その表面から目立った特徴を検出して、目的とする宛先及び別の試験データと共に中央のデータベースに保存しておく。これらの特徴に関するデータと別の試験データは、目標ノードに伝送され、そこで、各QTL発送物は、伝送されて来た特徴と検出した特徴の比較により検出され、その際所定の範囲で一致する場合に、QTL発送物であると識別される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図面にもとづく実施例により、この発明を説明する。
【0020】
エキスパートシステムを用いて、発送地と目的地に関する情報及び予め規定した物流用ルールにもとづき、発送物に関する可能な目標輸送フローを生成して、データベースにおいて、各試験データに割り付ける。目標輸送フローを生成するために、物流網を様々な物流網平面と部分網に分割する。各網平面に対して、個々のサービスレベルに依存した、ノード間の輸送に関して一般的に適用されるルール及び個々のノードの相互関係を規定する。
【0021】
ここでは、例えば、トラック網と航空郵便網の組合せから構成される物流網を検討する。この場合、網ノード又は処理センター(BZ)間の輸送は、様々な手法で行うことができる。そのような網は、図1に図示されている。目標輸送フローを生成するために、物流網を様々な物流網平面と部分網に分割する。即ち、この例では、全体網が、トラック網と航空郵便網から構成されるものと仮定している。これらの網は、物流網平面としても表示することができる(図2と3参照)。図2は、トラックによる長距離輸送に関する物流網平面を図示している。どのようにして、通常のノード間輸送を行うのかという手法を接続行列で定義している。即ち、例えば、ノード4と1間の輸送の接続は、ノード5と3を経由した進路として求められる。即ち、この例では、別のノードを経由した輸送は、輸送物品の問題の有る配送となるかもしれない。航空郵便網は、物流に関して、例えば、二つの平面に分割することができる。第一には、空港への連絡道路網を規定する網平面(図4参照)と、第二には、航空郵便用ノード間の関係を規定した網(図5)である。
【0022】
網ノード相互の関係の定義は、又もや接続行列によって実現される。
【0023】
更に、網ノードに関して、距離行列を作成して、その行列から、個々の輸送プロセスで見込まれる所要時間を導き出すことができる。
【0024】
実現されていない(信頼できない)接続に関する距離値は、無限又は零の値に設定される。従って、個々の網平面又は部分網に関する平均輸送速度を確定することによって、ノード間の各輸送プロセスの平均的な所要時間を算出することができる(t=s/v)。出発ノードと到着ノードの判定は、それらに対応するノードに一定の郵便番号の範囲を割り当てることによって、例えば、受け渡し地点と目的地点の郵便番号で算出することができる。出発ノードが、各到着ノードに対して決定されたら、エキスパートシステムは、それらのノード間を輸送するための全ての可能な変化形態を算出することができる。この場合、全ての網平面が、可能な輸送順序にもとづき反復的に検索される。即ち、ここで規定した物流網に関しては、ノード1からノード6への配送に対して、以下のノード経路における選択肢が得られる。
【0025】
1. 1,3,5,6 (トラック輸送の網平面)
2. 1,11,10,12,6 (航空輸送の網平面)
逆順での配送に対しては、以下の経路が得られる。
【0026】
3. 6,2,1 (トラック輸送の網平面)
4. 6,12,10,11,1 (航空輸送の網平面)
即ち、純粋なトラック輸送とトラック及び航空機による輸送の両方が可能である。次の工程では、エキスパートシステムによって、ノード経路の順序とルールを用いて、可能な目標フローを生成することができる。この場合、例えば、郵便物流システムを出発点とする。生成される目標フローの数は、ルール集の大きさに依存する。しかし、この発明による方法は、この方法を導入・変更する負担を出来る限り最小限とするために、高度に抽象化された物流フローを規定することを目指している。
【0027】
説明のために、例示した物流網に関して、以下のルールにより、対応する目標フローを生成することとする。
【0028】
1.処理に関するルール
・処理は、出発ノードと到着ノードでのみ行われる。
【0029】
・配達基地までの平均輸送時間 0.5時間
・出発ノードでの平均処理時間 3.0時間
・到着ノードでの平均処理時間 2.0時間
経由ノードでの最大積替時間 0.5時間
・月曜〜金曜日の発送処理
出発ノードでの最も遅い処理終了時刻 22時30分
・日曜日の発送処理
出発ノードでの最も遅い処理終了時刻 19時30分
・月曜〜土曜日の受入処理
到着ノードでの最も遅い処理終了時刻 06時30分。
【0030】
2.収集ルール
・平均開函所要時間 2時間
・開函時間
月曜〜金曜日 16時〜18時
土曜、日曜日 12時〜14時
・開函(出発ノードでの収集)の終了時刻
月曜〜金曜日 19時30分
土曜、日曜日 16時。
【0031】
3.配達ルール
・最も早い配達開始時刻 07時30分
・最も遅い配達終了時刻 12時00分
・平均配達所要時間 3.0時間。
【0032】
4.航空輸送網平面のルール
・航空便の時間帯 24時00分〜03時00分
・運航日 月曜〜金曜日
・航空機の平均輸送速度 300km/時
・トラックの平均輸送速度 60km/時
・ノード10での最大積替時間 0.5時間。
【0033】
5.トラック輸送網平面のルール
・平均輸送速度 90km/時
・ノードでの最大積替時間 0.5時間。
【0034】
6.所要時間のルール(目標と実際の比較及び問題の解析のためだけに必要)
・発送形式に依存した目標所要時間
至急の発送物=E+1、1等級=E+2、2等級=E+3
・収集時刻に依存した目標所要時間
16時以降に郵便ポストに投函された全ての発送物に関しては、所要時間を1日延長 する。
【0035】
・収集された曜日に依存した目標所要時間
土曜日に収集されたものは、日曜日に配送されるものとする。
【0036】
・収集された時刻に依存した目標所要時間
18時以降に投函された全ての発送物に関しては、所要時間を1日延長する。
【0037】
ここで規定した物流網に関しては、ノード1からノード6への配送に対して、前に定義したルールを考慮して、以下の通り、目標フローが算出される。
【0038】
第一としては、ノード間輸送の所要時間(時間単位)と形式を算出する。
【0039】
〔表1〕輸送変化形態1
ノード1,3,5,6 (トラック輸送網平面)
【表1】

【0040】
〔表2〕輸送変化形態2
ノード1,11,10,12,6 (航空輸送網平面)
【表2】

【0041】
即ち、これらから、例えば、収集時点に依存して、以下の目標フローが得られる。
【0042】
1.月曜〜金曜日の16時00分以前に収集
輸送変化形態1の目標フロー:
開函 (早くとも) 16時00分開始
(遅くとも) 18時00分終了
ノード1(出発ノード)での処理 (早くとも) 18時00分開始
(遅くとも) 22時30分終了
トラック輸送 22時30分開始、(1日経過した)23時40分終了
ノード3での積替 23時40分開始、(翌日の)00時10分終了
トラック輸送 00時10分開始、05時10分終了
ノード5での積替 05時10分開始、05時40分終了
トラック輸送 05時40分開始、07時20分終了
ノード6(到着ノード)での処理 04時30分開始、(翌日の)06時30分終了
(配達基地への)トラック輸送 06時30分開始、07時00分終了
配達 (早くとも) 07時30分開始
(遅くとも) 12時00分終了
ノード6へのトラック輸送は、07時20分に終了する。そのため、配達基地での仕分け及び配達基地への時宜を得た輸送は、もはや同日には実施することができない。
所要時間:E+2。
【0043】
輸送変化形態2の目標フロー:
開函 (早くとも) 16時00分開始
(遅くとも) 18時00分終了
ノード1(出発ノード)での処理 (早くとも) 18時00分開始
(遅くとも) 22時30分終了
トラック輸送 22時30分開始、23時45分終了
ノード11での積替 23時45分開始、(翌日の)00時15分終了
航空便 00時15分開始、01時05分終了
ノード10での積替 01時05分開始、01時35分終了
航空便 01時35分開始、02時35分終了
ノード12での積替 02時35分開始、03時05分終了
トラック輸送 03時05分開始、04時20分終了
ノード6(到着ノード)での処理 04時20分開始、(遅くとも)06時30分終了
(配達基地への)トラック輸送 06時30分開始、07時00分終了
配達 (早くとも) 07時30分開始
(遅くとも) 12時00分終了
所要時間:E+1。
【0044】
2.土曜日の12時00分以前に収集
輸送変化形態1の目標フロー:
開函 (早くとも) 12時00分開始
(遅くとも) 16時00分終了
ノード1(出発ノード)での処理 (早くとも) 16時00分開始
(遅くとも) 19時30分終了
トラック輸送 19時30分開始、(1日経過した)20時40分終了
ノード3での積替 20時40分開始、21時10分終了
トラック輸送 21時10分開始、02時10分終了
ノード5での積替 02時10分開始、02時40分終了
トラック輸送 02時40分開始、04時20分終了
ノード6(到着ノード)での処理 04時20分開始、(翌日の)06時30分終了
(配達基地への)トラック輸送 06時30分開始、07時00分終了
配達 (早くとも) 07時30分開始
(遅くとも) 12時00分終了
所要時間:E+1。
【0045】
輸送変化形態2の目標フロー:
輸送変化形態2は、月曜〜金曜日の運行日に限定される。従って、発送物は、出発ノードに保管されて、月曜日に漸く(上記参照)搬出される。
所要時間:E+2。
【0046】
ここで示した目標フローは、これらのルールで生成可能な全ての目標フローの中の一つの部分集合にずぎない。しかし、エキスパートシステムは、ルールにもとづき生成することができる理論的に可能な全ての目標フローを生成する。目標所要時間がE+2である発送物は、計画としては、所要時間E+1の目標フローと所要時間E+2の目標フローの両方で輸送される可能性がある。しかし、目標所要時間が守られているか否かの検査は、エキスパートシステムでの品質制御部で行われる。
【0047】
エキスパートシステムの目標フロー生成部は、この知識と網内の全ノードの距離行列にもとづき、どのようにして、発送物を点Aから点Bに、そして対応する時間的な要件で輸送することができるのかに関する全ての可能性を算出することができる。所要時間に関するルールは、サービス機能の品質に関する要件を与えるとともに、物流網に関するルールは、物流フローの形態と時刻を規定する。
【0048】
従って、目標フローを生成するために、時刻表のコピーは不要である。輸送フローが変更された場合でも、このような網の論理的な分割によって、一定の網要素に関するルールだけを適合させれば良いので、僅かな変更しか必要ではない。
【0049】
そのようなことは、個々の仕分けセンターで発送物を処理している間に自動的に検知され、そのため、場所の変更を登録して、同じく自動的に既存の試験フローデータに追加される。試験フローの終了後、QTL発送物からデータを読み出す。それらのデータから、様々な輸送手段の物理的な特性の測定にもとづき、輸送プロセスの形態と精確な時間的な推移を検出することができる。次の工程では、目標フロー生成部によって生成された目標輸送フローを、それに対応する実際の輸送フローと比較する。その場合、生成された全ての目標フローが、その実際のフローとの一致度合いに関して検査され、一致度合いが最も大きい目標フローが検出される。その目標フローに関して、別のエキスパートシステムにより、目標フローと実際のフロー間の偏差が、起こり得る偏差に関して精確に解析され、物流システムにおける弱点が検出される。エキスパートシステムにより、問題の有るプロセスの形態、問題の種類の他、問題を起こした事象も検出することができる。
【0050】
エキスパートシステムの目標・実際解析部
追跡システムにより、ノード及びノードにおけるQTLの滞留時間が検出される。それらから、ノードでの実際の処理時間と積替時間が得られる。ノードでの連続的な追跡が行われない場合、平均処理時間を出発点とするか、或いはノードでのスキャン前後の輸送間の時間を規定しなければならない。個々の輸送プロセスは、エキスパートシステムの目標・実際解析部の解析モジュールにより、QTLの測定値から得られる。QTLの動作原理(加速度の測定)のために、測定は、非常に大きく位置に依存する。そのため、一定の輸送プロセスが十分な信頼度で検知することができるか否かは、QTLが、輸送手段内のどの位置に有るのかに依存する。しかし、QTLが、普通のレターのように運搬され、普通のレターと区別もされないので、それを制御することはできない。そのことから、並びにレターが、郵便業務で部分的にどのようにして輸送されているのかの手法(例えば、袋で)から、測定値が大きく減衰する可能性が有り、別のエキスパート知識が無いと、輸送プロセスの確実な検知が、もはや不可能となる。QTLは、エネルギー効率の理由から、定期的にしか測定しない。その結果、物理的な特徴を相応に捉えて、十分大きな確率で輸送形態を検出するためには、輸送プロセスは、少なくとも10分継続しなければならない。ここで、QTL測定方法が、追跡方法と組み合わされている場合、エキスパートシステムは、測定値を解析するために援用することができる別の情報(例えば、場所、時間)も保有することとなる。先ずは、測定値を場所情報無しで解析する。その後、検知した輸送プロセスを、ノードで滞留している間の時間長に割り当てる。輸送プロセスの形式及び所要時間によって、物流網に関するルールを考慮して、辿ってきた道程を検出することができる。距離行列で定義された値に対して大きな偏差が生じた場合、その時間をエキスパートシステムにより、より精確に解析する。上方への偏差の場合、輸送フローでの不規則なこと(例えば、渋滞)が推測される。下方への大きな偏差の場合、輸送プロセスは、検知されないこととなる。そのことは、例えば、測定が大きく減衰されたことにより起こる可能性が有る。QTLが、例えば、袋で、多くのレターと一緒に輸送され、更に、それが、最適な位置に無かった場合、もはや加速度(振動)が非常に小さい輸送フェーズを測定することができないという事態となる可能性が有る。それは、特に、航空便の場合に、より頻繁に起こる。離陸及び着陸フェーズは、そこで生じる大きな力のために、依然として十分に検出することができるが、巡航フェーズは、もはや検出することができない。その結果、航空輸送に関する非常に小さい信頼性が生じ、その輸送プロセスは、エキスパートシステムから排除される。ここで、エキスパートシステムは、検知した輸送プロセスでは対応する距離を辿れないという知見により、対応する時間区間を解析することができる。辿ってきた距離に関する知見が無いために拒絶された輸送プロセスは、第二の行程において、より高い信頼性を持つこととなる。ここで、その輸送プロセスで辿ってきた距離が、距離行列内の値と一致するか否かを再び検査する。そこで、辿ってきた距離が明らかに大きすぎる場合、誤った解釈から導き出されたとして、その結果は排除される。更に、その距離が短すぎる場合、尚も全ての輸送プロセスが検知されないこととなる。そのような場合、(目標フロー生成に関するルールではなく)一般的な物流の基本ルールの助けを借りて、更に繰返し過程を実行しなければならない。それに続く繰返し過程も、目的に至らなかった場合、個々の輸送プロセスの信頼性を検査すべきである。異なる輸送形態の物理的な特徴は、状況によりしばしば非常に類似したものとなる。即ち、例えば、鉄道とトラック輸送の場合である。両方の輸送形態が、物流フロー内において可能である場合、エキスパートシステムによって、例えば、同じ時間に関して、トラック輸送と鉄道輸送の両方が検知され、輸送形態に関する信頼性が互いに非常に近いか否かが検査される。その場合、通常は輸送形態の交替によって、辿る道程も変化するものである。次に、妥当性に関して、その結果を再び検査する。
【0051】
更に、一連の短い個々の輸送プロセスとなる物流プロセスが有る。郵便物流網においては、それらは開函と配達である。開函は、一連の短い自動車輸送である。開函のための停車によって、短い輸送フェーズに分断される。配達は、大抵徒歩か、或いは自転車で行われ、家から家への短い道程を特徴とし、郵便受けに手紙の発送物を投入した場合に、静止フェーズとなる。個々の事象が短いために、それらは、エキスパートシステムにより排除されて、これらの時間に関する輸送プロセスは、検出されないこととなる。そのようなプロセスは、それらが、どの時間に期待されるのかが分かった場合にのみ解析することができる。そして、それらの時間における相応のパターンにもとづき検索される。或るノード範囲において、何時開函が行われたか、並びにどの時間範囲に配達が行われたかの知見によって、エキスパートシステムは、非常に良好な認識確率で開函と配達を検出することができる。そのため、処理時間を含めて、試験レター(QTL)が通過して来た物流チェーン全体を検出することができる。このことは、追跡システムとQTLシステムとの結合がもたらした決定的な利点である。最後に、試験フローの実際の所要時間が算出される。監視している発送物の種類に関して、試験フローの所要時間が、目標所要時間以下であると、所要時間目標が達成されたこととなる。上方にずれている場合、問題の有るプロセスと問題の発生場所を検出するために、何時、何処で、そのような偏差が生じたのかを調査することとなる。
【0052】
現実の測定にもとづき実際の完全な物流プロセス過程を検出した後、エキスパートシステムは、それらを、生成した目標フローと比較することができる。第一の繰返し過程において、試験フローの開始及び目標ノードが、目標フローの開始及び目標ノードと一致するか否かを調査する。一致しない場合、場合によっては、開始及び目的とする宛先に関する入力が間違っている。更に、場合によっては、ノードの追跡データが間違っているか否かを調査する。間違っていない場合、エキスパートシステムの目標・実際比較部が、目標フロー生成部から、実際の開始及び目標ノードに対応する目標フローを呼び出す。ノードの順番が一致することを発見した場合、ノードの経路が試験経路と一致する目標フローだけを更に考察する。一致しない場合、フローが誤っていたと推測することができる。
【0053】
目標フローの順番と最も一致しないノードが、高い確率で、問題の有るフローの場所と看做される。その後、個々の輸送プロセスが、どの程度互いに送受し合っているのかが漸次調査される。偏差が生じていない目標フローが有る場合、そのプロセスは続行されて、残りの目標フローは排除される。その他の全てのプロセスも、その目標フローと一致する場合、試験フローは、規則通りに推移していることとなる。偏差が発見された場合、別のフローで再び一致が見られるか否かを調査することとなる。一致が見られる場合、部分的な関連の無い偏差であると推測することができる。一日以上のずれで一致が見られる場合、試験発送物が、処理プロセス中の一つに滞留していたと推測しなければならない。一つのプロセスに関して、輸送時間が明らかに超過している場合、渋滞又は長過ぎる休止時間が、その遅れの原因であるとすることができる。輸送プロセスの開始が遅れた場合、積替時間が超過したか、或いはその前の処理プロセスの終了時間が守られていなかったものと大いに考えられる。このようにして、エキスパートシステムは、プロセス過程での問題が起こる時点と場所並びに問題の有るプロセスを自動的に検出することができる。それによって、初めてQTLによる試験フローの全自動での評価が可能となる。
【0054】
以下における発送物を識別するための様々な変化形態に関する構成の記述(図7と8)にもとづき、この発明の方法の過程を具体的に説明する。郵便業務では、郵送物の料金別納スタンプ用に二次元バーコードが益々用いられて来ている。QTL発送物5及び試験フローに目印を付けるために、QTL−ID番号、試験フロー−ID番号及びその他の時間情報などのデータ1を生成して、QTL発送物5のQTL測定・メモリユニット3内に保存するとともに、バーコードプリンタ4と接続された二次元バーコード生成ユニット2に伝送する。次に、二次元バーコードをQTL発送物5上にプリントする。それと並行して、試験フローデータ、QTLデータ及び時間データ1並びに物流網への入力地点と物流網からの出力地点、並びに例えば、発送物の種類にもとづき選定した輸送条件に関するデータ(例えば、郵便番号)6を、データベース10と目標輸送フローを生成するエキスパートシステム7に伝送し、そのルール集8を用いて生成した、QTL及び試験フロー識別情報を含む目標フローデータ9をデータベース10に保存する。QTL発送物5が、物流網、即ち、入力ノードに投入された後、印刷面の有る発送物の表面は、スキャナー11を用いて走査される。そして、二次元バーコードは、二次元バーコード読取機12で読み取られて、QTL−ID及び試験フロー−ID、時間情報、機械の識別情報を含む場所などの相応のデータ13がデータベース10に伝送される。更に、宛先読取機14では、目的とする宛先を読み取って、郵便番号15を検出し、それにもとづき、仕分け及び図示されていない仕分けセンター/ノードを経由した最後の仕分けセンターまでの配送が行われる。或る仕分けセンターとその前の仕分けセンターの両方では、同様にスキャナー16を用いて、発送物の表面を撮影して、二次元バーコード読取機17を用いて、QTL発送物5を識別する。それにもとづき、QTL−ID、試験フロー−IDと時間情報、機械の識別情報並びに機械の所在地をシステムのデータベース10に送信する。QTL−IDと試験フロー−IDによって、データベースのデータを相応に割り当てることができる。最後の仕分けセンターでは、発送物の識別情報も、バーコードとして読み取られて19、それにより、郵便番号20が検出され、次に、それに対応して、QTL発送物5が仕分けされて、受取人に配達される。QTL発送物5の配達後に、QTLメモリ3からデータを読み出して、データベース10に送信する。それに続いて、前述した通り、エキスパートシステム22により、可能な目標輸送フローのデータを実際の輸送フローのデータとそれぞれ互いに比較して、物流フローでの場合によっては起こる偏差を算出し、それらの偏差を生じさせた問題を検出する。その後、各試験フローに関する問題解析の結果23(QTL−ID、試験フロー−ID、解析データ、品質指数、問題の調書)をデータベース10にフィードバックして記録する。同じ方法は、これに代わるプラネットコードなどのバーコードでも、修正した形で使用可能である。当然のことながら、QTL発送物を識別するために、別個の機械読取可能なIDコードを取り付けることも可能である。
【0055】
周知のQTL発送物の電気回路及びファームウェア又はソフトウェアを拡張して(特許文献5,6参照)、RFID特性を持つ測定システムと組み合わせることにより、アンテナ33,34,37を用いて、QTL発送物5を識別し、それにより場所/時間参照情報を生成することが可能である。能動的なトランスポンダーを持つQTL発送物5を実現した場合、QTL測定・メモリユニット3を備えたQTL発送物5は、小さいアンテナ33を介して、QTL−ID、トランスポンダー−ID、試験フロー−IDなどのデータを送信する。これらのデータは、各ノードのアンテナ34,37によって受信されて、RFID読取機35,38に転送される。この読取機は、タイムスタンプと場所の識別情報を付加して、これらのデータ36,39をデータベース10に伝送する。受動的なトランスポンダーで実現した場合、QTL発送物5は、受信器として設計される。各ノードの送信器からは、絶えず場所の識別情報が送信されている。QTL測定・メモリユニット3は、この識別情報を、対応するタイムスタンプと共に自身のデータメモリに保存する。同じ場所識別情報の最初と最後に受信した時点が登録される。それにより、所定の場所/ノード(例えば、仕分けセンター)での滞留時間も検出することが可能である。同様に、QTL発送物を識別し、その位置を求めるために、WLAN技術又はGSMを使用することもできる。目標輸送フローの生成と自動的な問題解析は、前述した説明に対応して行われる。
【0056】
発送物に特別な目印(所定の機械読取可能なコード)を付けること無く、或いは送信器及び/又は受信器を配備すること無く、出来る限り小さい負担で発送物を識別するために、画像から得られる目立った特徴、所謂フィンガープリントにもとづき、発送物を識別する方法が開発されている(特許文献7)。更に、この識別技術を実際に使用することを容易にするために、発送物を識別するための検索範囲を明らかに縮小することができる方法が記載されている(特許文献8)。以下に示す通り、この方法は、上記の使用法と組み合わせて、発送物の特殊な目印を不要とすることができるような形に拡張される(図9参照)。そのことは、出来る限り全ての発送物が、この手法で一義的に識別可能であることを前提としている。QTL発送物5を送出する前に、初期フェーズにおいて、QTL発送物5の所謂フィンガープリントを求める。このフィンガープリントは、スキャナー40を用いて記録した画像から、フィンガープリント識別ユニット41により導き出した目立った特徴を有するものであり、それにもとづき、以降の処理工程において、各QTL発送物5を識別することができる。この場合でも、検出した解析すべきデータを割り当てるために、既に述べた通り、QTL−ID、試験フロー−ID、時間情報などの別のデータを、フィンガープリントと共にデータベース10に伝送するとともに、物流網の入力地点と出力地点及び発送物の種類と共に、目標輸送フローを生成するエキスパートシステム7に伝送する。物流網/発送・配送センターへの投入時に発送物を登録する場合、初期化時のように、スキャナー42とフィンガープリント識別ユニット43によって、フィンガープリントと配送情報を求める。これらのデータは、時間情報、配送センター(ノード)と処理機に関する情報及び場合によっては発送物に関する別の情報と共に、データベース10を備えた中央のサーバーに送られ、そこで、保存してあるフィンガープリントを宛先情報により限定して、発送物の実際に検出されたフィンガープリントの特徴と比較することにより、各QTL発送物5の識別を行う。類似性が十分に大きく、別の可能性も排除することができる場合、当該の発送物は、識別されたものと看做される。そして、データベース10に保存されている情報を、この発送物に割り当てることができる。この場合、データセットが生成されるが、実際のタイムスタンプと新しい仕分け情報を用いて生成される。更に、宛先読取機44により、目的とする宛先を読み取って、それに対応して、QTL発送物5を更に運搬する。これらのデータセット45は、データベース10に加えて、検出した輸送進路における次の別の配送センターに提供され、そのセンターでは、それらのデータセットは、それぞれローカルデータベースに保存されるとともに、そこでは、スキャナー47とフィンガープリント識別ユニット48を用いてそこで検出された実際のフィンガープリントとQTL発送物5の記録されている識別情報との比較が行われる。そして、識別された発送物の実際のデータセット49は、新しい場所と時間情報と共にデータベースに伝送される。そうすることにより、データベース10とのデータトラフィック量を低減することができる。各QTL発送物5に対して付与された一義的なID番号にもとづき、個々の処理工程に付属するデータセットを相互に割り当てることができる。従って、完全に検出したQTL発送物5に関しては、それらが、何時、どこで、どの配送・仕分け工程で処理されたのかを追跡することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】トラック網と航空郵便網の組合せ(全体網)の模式図
【図2】トラックでの長距離輸送に関する網平面
【図3】二つの部分網平面を持つ航空郵便網の網平面
【図4】空港への連絡道路網としての部分網平面1と接続行列
【図5】航空郵便網としての部分網平面2と接続行列
【図6】全体網に関する距離行列
【図7】各ノードの仕分け機でQTL発送物を識別するための修正した二次元バーコードを用いた解析方法の構成図
【図8】各ノードの仕分け機でQTL発送物を識別するためのRFID技術を用いた解析方法の構成図
【図9】発送物の画像の目立った特徴にもとづきQTL発送物を識別するための解析方法の構成図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
品質試験(QTL)発送物を用いて、その発送物に輸送の間の物理的な特性を時間と関連付けて記録しておき、その後読み出して、輸送プロセス工程にもとづき分類する、物流網での輸送フローを自動的に解析するための方法において、
ノードにおいて各QTL発送物を識別して、通過して来たノードに関する場所と時間の関係を検出する工程と、
場所と時間の関係及び記録して来た物理的な状況から成るプロセス要素を用いて、各発送物が通過して来た物流プロセスチェーンを自動的に検出する工程と、
を特徴とする方法。
【請求項2】
更に、物流網への各入力地点及び物流網からの各出力地点を出発点として、それらに関する時間と、物流網のノード間に規定された輸送ルール並びにノード内及び関連ノード間での手続規定から選定した輸送条件とを用いて、発出された各QTL発送物の可能な全ての目標輸送フローを自動的に生成する工程と、
全ての目標輸送フローと輸送された各QTL発送物の実際の輸送フローを比較して、偏差を算出する工程と、
実際の輸送フローと目標輸送フロー間の偏差及び輸送された各QTL発送物に関して最も良く一致する目標輸送フローを弱点データベースに記録する工程と、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
弱点データベースに記録された偏差を統計的に評価することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
物流網を網平面と部分網に分割し、それらに対して、ノード間の輸送ルールとノード内及び関連ノード間での手続規定をそれぞれ定めることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
識別した部分プロセスに関する偏差、その偏差の種類及びその偏差の原因の中の一つ以上を評価することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
QTL発送物を識別するために、QTL発送物に機械読取可能な目印を付与することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
QTL発送物を識別するために、料金別納用スタンプのための二次元バーコードに、少なくとも一つのQTL発送物識別情報と試験フロー識別情報の更なる情報を組み込むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
QTL発送物を識別するために、QTL発送物にトランスポンダーを配備し、そのトランスポンダーをノードで読み取って、時間参照情報と共に記録することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
無線により定常的に送信されている識別情報にもとづき、QTL発送物がノードを通過したことを検知して、その情報を時間参照情報と共にQTL発送物に記録することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
QTL発送物を識別するために、その宛先情報を有する表面から目立った特徴を検出して、目的とする宛先及びその他の試験データと共にデータベースに保存しておき、目標ノードにおいて、同様に、到着した発送物の宛先情報を有する発送物表面の目立った特徴を、時間と関連付けて検出し、データベースに保存するとともに、そのノードで検出した特徴をQTL発送物に割り当てられている特徴と比較することにより、各QTL発送物を検出し、その際所定の範囲内で一致する場合に、QTL発送物が識別されたものとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
QTL発送物を識別するために、それを物流網に投入する前に、その表面から目立った特徴を検出して、目的とする宛先及びその他の試験データと共に中央のデータベースに保存するとともに、それらの特徴に関するデータとその他の試験データを目標ノードに伝送しておき、伝送されて来た特徴と検出した特徴を比較することにより、各QTL発送物を検出し、その際所定の範囲内で一致する場合に、QTL発送物が識別されたものとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−507781(P2008−507781A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523002(P2007−523002)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008115
【国際公開番号】WO2006/010593
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(591209109)シーメンス アクチェンゲゼルシャフト (29)
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS AKTIENGESELLSCHAFT