説明

輸送機健全性管理システムのモデルを統合するための方法

【課題】輸送機健全性管理システムのモデルを統合するための方法を提供する。
【解決手段】輸送機2のための健全性管理システムの機能モデルを統合するための方法であって、輸送機は、通信ネットワーク6に接続された複数のシステム4を有し、複数のシステム4は、複数のシステム4の動作データのうちの少なくともいくつかに関するステータスメッセージおよび生データのうちの少なくとも1つを送信し、輸送機2の健全性機能の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送機健全性管理システムのモデルを統合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機を含めて現代の輸送機は、輸送機における故障を診断または予測(予知)するのを支援するために機上整備システム(OMS)または健全性監視システムもしくは統合輸送機健全性管理(IVHM)システムを含むことがある。そのような健全性管理システムは、様々な輸送機データを収集し、実行可能なソフトウェアとして実施されてきた健全性アルゴリズムである健全性機能を使用してデータを分析することができる。これらの機能は、輸送機の故障または問題の何らかの異常または他の兆しを確認するために使用され得る。そのようなシステムは、いくつかの健全性機能の入力は他の健全性機能の出力に依存するので、自然に層を形成するように構成される。すべての現在のシステムは、現在のところ、より低い層における機能の多くが結果を伝達するだけで、その結果が基づくデータを伝達しないので、より高い層で使用するために、より低い層における完全なデータを入手することができない。より低い層からのデータを失うことなく健全性機能を実行することは有益であろう。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、通信ネットワークに接続され、システムの少なくともいくつかの動作データに関するステータスメッセージおよび生データのうちの少なくとも1つを送信する複数のシステムを有する輸送機のための健全性管理システムの機能モデルを統合するための方法は、複数の健全性モデルを提供するステップであって、各健全性モデルは、輸送機の健全性機能を表し、健全性モデルの少なくともいくつかは、動作データの少なくともいくつかの対応するパラメータを有する、ステップと、対応する健全性機能に関する健全性データを生成するために健全性モデルを実行するステップと、健全性モデルの実行から生成された健全性データのデータベースを形成するステップと、健全性機能の少なくともいくつかのためにデータベースから混合モデルを形成するステップと、健全性機能の少なくともいくつかのために混合モデルから確率的グラフィカルモデル(PGM)を生成するステップと、生成されたPGMに基づいて健全性機能の判定を行うステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】複数の航空機システムを有する航空機の概略図である。
【図2】診断システムにおける階層化の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるPGMの概略図である。
【図4】本発明の第2の実施形態によるPGMの概略図である。
【図5】本発明の第3の実施形態によるPGMの概略図である。
【図6】本発明の第4の実施形態によるPGMの概略図である。
【図7】本発明の第5の実施形態によるPGMの概略図である。
【図8】本発明の第6の実施形態によるPGMの概略図である。
【図9】本発明の第7の実施形態によるPGMの概略図である。
【図10】本発明の第8の実施形態によるPGMの概略図である。
【図11】本発明の第9の実施形態によるPGMの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1は、航空機2の適切な動作を可能にする複数の航空機メンバシステム4、ならびに複数の航空機メンバシステム4が相互におよび航空機健全性管理(AHM)コンピュータ8とそれを介して通信することができる通信システム6を有する航空機2の形での輸送機の一部分を概略的に例示する。本発明の概念は、通信ネットワークに接続され、システムの少なくともいくつかの動作データに関するステータスメッセージおよび生データを送信する複数のシステムを有する任意の輸送機に適用されてよいことが理解されるであろう。AHMコンピュータ8は、任意の適切な数の個々のマイクロプロセッサ、電源、記憶デバイス、インターフェースカード、および他の標準的な構成要素を含んでもよく、またはそれらに関連付けられてもよい。AHMコンピュータ8は、データの取得および記憶を管理する役割を担う任意の数のメンバシステムまたはソフトウェアプログラムから入力を受信することができる。AHMコンピュータ8は、複数の航空機システム4と通信しているように示されており、AHMコンピュータ8は、航空機2における故障を診断または予測するのを支援するために、1つまたは複数の健全性監視機能を実行することができる、または統合輸送機健全性管理(IVHM)システムの一部分でよいことが企図される。動作中、複数の航空機システム4は、複数の航空機システム4の動作データの少なくともいくつかに関するステータスメッセージを送信することができ、AHMコンピュータ8は、そのようなデータに基づいて航空機2の健全性機能の判定を行うことができる。動作中、複数の航空機システム4のアナログ入力およびアナログ出力は、AHMコンピュータ8によって監視されることが可能であり、AHMコンピュータ8は、そのようなデータに基づいて航空機2の健全性機能の判定を行うことができる。
【0006】
診断分析および予知分析は、情報および値を抽出するために、知識をそのようなデータに適用する。IVHMアプリケーションでは、データ操作、状態検出(例えば異常検出)、健全性推論、予知、および決定に必要とされる様々な健全性機能または適切な機能がある。各機能は、タスクをどのように解決するかという知識をエンコードするモデルを必要とする。次いで、推論エンジンまたはアルゴリズムは、新しいデータにこのモデルを適用して予測を行う。したがって、IVHMシステムは、様々な機能に関連する多くの様々なタイプのモデルを包含する。本明細書で使用される場合は、用語「IVHM」は、輸送機の健全性を管理するために必要とされるオンボード機能およびオフボード機能の集まりを表す。IVHMシステムの大きな課題は、モデルの出力をどのように統合するべきか、および様々な監視システムからの出力をどのように融合するべきかである。これがロバストなやり方で行われない場合は、データ操作および状態検出などのより低いレベルの機能からの貴重な情報が推論時に失われる。さらに、多種多様なモデルタイプおよび機能に依拠する手法は、オフボードおよびオンボード両方の統合アーキテクチャを複雑にする。複雑性を低減する手法が重要である。
【0007】
いかなる診断システムまたは予知システムも、様々な層の中に存在する機能を有すると概念化されてよい。階層化は、より高いレベルの機能はより高いレベルの情報を得るように機能の実行を暗黙のうちに順序付けることを含意する。一例は、図2に概略的に示されている状態基準保全のためのオープンシステムアーキテクチャ(OSA−CBM)10である。図2における各ボックスは、1つまたは複数の機能を含有する層である。左から右に順序付けすることは、より高いレベルの層はより低いレベルの層に依存すること、および情報のレベルは順序が上がるにつれて(層がさらに右に移動するにつれて)上がることを示す。jは1つの層を示し、j+1はjの右側の層を示すとする。j+1がjに比べてより高いレベルの情報を有することは、j+1からの出力がjからの出力より大きい有用性(または価値)を有することを意味する。例えば、jが異常を検出する状態検出機能であって、j+1が根本原因を見つける健全性評価機能である場合は、たいていの人々は、j+1がより大きな価値を有すると考えるであろう。たとえ機能層に順序があっても、ある機能がより低い層における機能に出力を要求することができない理由はなく、通信は両方向に流れることができる。
【0008】
データ操作層12は、データ訂正および特徴抽出などのタスクを実行する。状態検出層14は、現在の状態、または予想される状態に関連する挙動を監視する。閾値監視および異常検出などの機能は、状態検出層14に含まれる。健全性評価層16は、診断およびトラブルシューティングを行う。予知評価層18は、将来の健全性、および挙動がどのように悪化する可能性があるかを予測する。勧告生成層20は、意思決定支援を支援し、起こりそうなことのシミュレーションを含んでよく、または費用および利益によって評価されたありそうな結果に基づいて推奨動作を選択することを含んでよい。
【0009】
OSA−CBM機能アーキテクチャ10に関する具体的な例は、有用であることが分かり、タービンエンジンの性能分析に関して説明される。データ操作層12は、標準日条件に関連するデータ訂正を行い、状態検出層14は、回帰モデルを使用することによって剰余測定値を得て、監視されたパラメータの実際の測定値と予測された値との差を計算し、次いで、多変量状態モデルを使用して、予想された健全性挙動に対する性能を評価する。健全性評価層16は、異常な挙動に対するアラートについて推論し、剰余におけるパターンが故障にどのように応答するかという診断知識を使用する。予知評価層18は、何らかの悪化が将来の飛行でどのように進むかを予測し、勧告生成層20は、検査/試験/保守動作のモデルを使用して、推奨動作を最適化する。航空機上のいかなるシステムも、これらの層にそのシステムの健全性管理機能を組み入れることができる。
【0010】
既存の健全性管理システムの基本的な弱点は、様々な機能層からの情報の統合および様々な監視システム(振動、注油監視、性能監視など)によって得られた情報の融合である。例えば、連続分布からの出力は、何らかの閾値を超えているかどうかに基づいてバイナリ値に変換され得る。挙動が少しだけ異なる2つの別個の監視されたアセットは、状態検出からの出力はこれらの出力を健全性評価に伝達するときに不適切なやり方で離散化されているので、非常に様々なやり方で管理される可能性がある。他の例は、2つのサブシステムの出力が完全に独立しているとして不適切に処理される可能性があることである。例えば、エンジンに対する異物損傷は、振動の増大および性能の悪化につながる可能性があり、1つのサブシステムからの応答についての情報は、もう1つのサブシステムからの応答の予想を知らせるはずである。両方のタイプの弱点は、モデル統合の問題とみなされてよい。
【0011】
本発明の諸実施形態は、IVHMのためのモデル統合のためのフレームワークとして確率的グラフィカルモデル(PGM)を使用し、履歴データから様々なPGMモデルを知るための方法を提供する。一般に、PGMは、多次元空間に関する複雑な分布をエンコードするための基礎として図式表示を使用する。このグラフは、結合分布のコンパクトなまたは因子分解された表現である。PGMによって表示され得るモデルのタイプの例には、ベイジアンネットワーク、マルコフモデル、カルマンフィルタ、主成分分析の確率的処理、ガウス混合モデル、および離散混合モデルなどがある。要するに、履歴データ、構成パラメータ、およびモデル構造を本質的に表す状態離散変数のセットを入力とみなす混合モデルラーニングモジュールが実施される。次いで、このモジュールは、混合モデルの集まりを知る。知られた後は、これらの混合モデルは、PGM構造に統合される。PGM構造は、PGMが適用されるべき推論タスクの性質に応じて様々である。
【0012】
PGMフレームワークは、より低い層からのデータを失うことなく輸送機健全性管理データおよび情報の統合のための適切な方法を提供することができる。PGMは、確率変数のセットに関する結合分布を表す。輸送機健全性管理の文脈では、変数は、測定されたパラメータ、故障モード/故障、診断試験、観察または検査、得られたパラメータなどでよい。PGMは、ノードによって表された確率変数のセットから成る。ノードは、多項分布によって表される離散変数でもよく、またはガウス密度によって表される連続変数でもよい。グラフにおけるエッジは、変数間の条件付き関係を表す。変数v1がv1から変数v2に引かれたリンクを有する場合は、v1は、v2の親であると言われ、v2は、v1の子であると言われる。連続変数は、離散親および連続親の両方を有してよいが、離散変数は離散親を有するだけでよい。変数の分布は、その親の制約を受ける。
【0013】
PGMの構造は、変数の定義および変数間の関連を表す。PGMのパラメータは、変数が1つまたは複数の親変数を有する場合は、条件付き分布である変数に割り当てられた確率分布を表す。パラメータは、主観的エキスパートオピニオンに基づいてもよく、または履歴データから得られても(もしくは知られても)よい。エビデンスの入力の後にPGMに関する推論が続き、結果は、個々の変数のための周辺分布、または2つ以上の変数に関する結合分布、もしくはエビデンスの尤度などの全モデル由来の出力である。エビデンスは、変数に値を割り当てることを表す。変数が離散変数である場合は、エビデンスは、変数をその離散値の1つにセットするか、または、ソフトエビデンスを利用する場合は、その離散値に関する分布を割り当てる。連続変数では、エビデンスはその変数に値を割り当てる。PGMに関するクエリは、通常、エビデンスをセットすること、およびエビデンスがセットされていない1つまたは複数の変数の事後周辺を要求することに関係する。クエリはまた、結合分布を要求してもよく、またはエビデンスの尤度などの全体的測度を要求してもよい。クエリはまた、仮説変数としての変数を選択することおよび他のモデル変数のその変数に対する影響を試験することを含んでよい。
【0014】
機械健全性管理アプリケーションでは、状態検出は、しばしば、挙動が予想された挙動からいつ逸脱したかを検出することに関係する。PGMは、IVHMにおける状態検出のための強力なフレームワークを提供する。異常イベントの検出に引き続いて、推論PGMは、PGM異常検出器の出力を使用して原因を隔離することができる。他のPGMは、予知評価および意思決定支援を提供することができる。典型的な意思決定支援シナリオは、疑われる故障または状態に基づいて検査または試験を行うよう決定することである。他のシナリオは、所与の機械の健全性状態および動作役割の適切な保守動作を決定することである。他のタイプの用途は対話型トラブルシューティングのためであり、この場合、プロセスは、モデルが示唆をし、人間のオペレータがフィードバックを提供することを繰り返す。意思決定のモデル化では、PGMは、2つの追加のノードタイプ、すなわち、取られる可能性がある動作を表す意思決定ノードと、それらの動作の費用および利益を表すユーティリティノードとを使用することができる。
【0015】
PGMに関するIVHM機能のいくつかの具体的な例は、有用であることが分かる。剰余値を計算することは、根本原因分析を支援するために広く採用されている方法である。この計算は、他の測定からの値を使用して測定値に関する期待値を予測することを含む。次いで、測定値から期待値を引いて剰余を得る。剰余は期待値からの偏差の量を提供し、したがって、どの測定値が予想されたように動作していないかを確認するのを支援する。仮想センシングは、剰余を計算することに密接に関係している。この概念は、故障した物理的センサを、他のセンサ測定値を使用してその応答を推論することによって、除去または置換することである。上記のタスクは両方とも、1つの変数がその挙動を他の変数とどのように替えるかをモデル化するための能力に依拠する。これらのモデル化方法はすべて、一般的に、回帰モデルとして分類されてよい。そのような回帰モデルは、必要とされる正確さを得るために十分に近似してPGMにマッピングされ得る。
【0016】
PGMモデルを構築するまたはモデル推論を実行する際に使用される手法は、モデルの機能に依存してよい。回帰では、監督された手法においては、モデル変数は、入力変数および出力変数、または予測変数および予測された変数に分割されてよい。エビデンスがセットされている変数またはノードだけが入力変数である。さらに、出力変数は、予測されるべき変数である。監督されていない手法においては、入力変数と出力変数との区別は行われない。
【0017】
監督されていないモデルの例は、PGMへの自然マッピングを有する無条件ガウス混合モデルである。線形回帰モデルは、
【0018】
【数1】

という形の方程式を有する。予測された変数は、yであり、予測変数は、x1およびx2である。モデルパラメータは、β0、β1、β2、β3、β4、およびβ5である。雑音項、εも、測定エラーおよび他の未知数によって導入されたモデルエラーに導入される。回帰方程式は、予測変数に関して定義された交互作用項および二次項を包含する。
【0019】
図3は、以下の方程式のための予測変数32および変数Y34を有するPGM30を示す。
【0020】
【数2】

予測変数32間のリンクは、これらの予測変数32の順序付けを含意することが理解されるであろう。この順序付けには何の意味も付与されていない。すなわち、順序は、パラメータがしかるべく調整されれば、変わってよい。PGMモデル30は、方程式(2)で表されるものへの多くの追加のパラメータを含有してよい。これは、PGMがすべての変数間の全共分散をモデル化するからである。これらの追加のパラメータは、予測変数32の平均値および共分散から得られる。変数Y34におけるパラメータは、方程式(2)におけるパラメータに対応する。PGMは、追加のパラメータを含有するが、さらに多種多様な予測を行うことができるようにする。例えば、yは予測変数として使用され、x3は予測された変数などとして使用され得る。すべての予測変数が独立していて、いかなるリンクをも共用していない場合は、予測変数は、PGMにおいてモデル化する前に相関を除去されてよい。
【0021】
回帰モデルが相互作用項または二次項などを含有する場合は、PGMモデルに、これらの追加の項のそれぞれを表す追加の変数がある。例えば、方程式、
【0022】
【数3】

のためのPGM40は、図4における構造を使用してモデル化されてよく、予測変数42、変数Y44、および二次項46を含んでよい。
【0023】
いくつかのIVHMアプリケーションでは、予測の正確さは、複数の回帰モデルを使用することによって改善されることが可能であり、この場合、各モデルからの出力が混合される、または特定の回帰モデルがいくつかの入力から選択される。例えば、機械の挙動は、機械がどのモードまたはフェーズで動作しているかに応じて変わってよい。回帰モデルは、モードごとに提供され得る。複数の回帰モデルをモデル化するためのPGM50が図5に示されており、予測変数52および成分変数54を含む。成分変数54は、回帰モデルごとに1つの状態を有する離散変数である。PGM50は、混合モードで使用されてよく、この場合、複数の回帰からの出力は、所望の予測値を生成するために結合される。
【0024】
他のタイプのデータ操作タスクは、変数の相関を除去すること、および/または入力をより低い次元の空間にマッピングすることである。例えば、変数間に高い相関がある場合は、変数の縮小セットを使用してデータ分散の大部分を表すことが可能である。主成分分析(PCA)は、入力空間を縮小するかまたは入力空間の相関を除去するための一般的な方法である。PCAのための例示的PGMモデル60が図6に示されている。明確にするために、すべてのリンクがこの図に示されているわけではなく、X変数62はそれぞれ各S変数64に接続されていることが理解されよう。このモデルには、Siによって示された5つのS変数64にマッピングされるXiによって示された5つのX変数62がある。PGMモデル60のためのパラメータは、PCAから得られたパラメータに直接マッピングする。次元の低減は、成分分散を減少させることによって順序付けられるS変数64の数を制御することによって達成される。
【0025】
本発明の方法の一実施形態は、健全性管理システムの機能モデルを統合するために使用されてよく、動作データの少なくともいくつかのデータベースを形成するステップと、健全性機能の少なくともいくつかのために複数のPGMのための構造を形成するステップと、PGMの少なくともいくつかの構造を混合モデルラーニングタスクにマッピングするステップと、混合モデルの少なくともいくつかを知るステップと、知られた混合モデルを使用して、対応するPGMごとにモデルパラメータを提供するステップと、PGMを介して新たに取得された動作データを伝達するステップと、健全性ステータスの判定をして可能な動作を行うステップとを含んでよい。
【0026】
最初に、PGMモデルの少なくともいくつかが混合モデル構造にどのようにマッピングするかが確認され得る。これは、モデルをサブモデルに分解することを含んでよく、この場合、サブモデルは1つまたは複数の離散変数によって割り当てられた値によって識別される。例は、各値がそれぞれ異なるモードを表す離散変数を様々な故障モードに割り当てること、様々な動作状態またはフェーズ(例えば、離陸、航行、アプローチなど)に離散変数を割り当てること、様々なフリートまたはルートに離散変数を割り当てること、時間帯を示すように離散変数を割り当てること(例えば、信号を様々なフェーズに分解すること、またはカレンダを様々な時間帯に分割すること)、および入力空間の様々な分割を示すように離散変数を割り当てること(各測度変数は入力空間の次元である)を含むがそれらに限定されない。
【0027】
混合モデルを形成することは、データベースから混合モデルを知ることを含んでよい。このようにして、混合モデルラーニングモジュールは、PGM変数のパラメータを得るために使用されてよい。そのような混合モデルラーニングモジュールは、連続変数および離散変数に関する混合モデルを知るために専用化された別個のモジュールである。このラーニングモジュールは、大きなデータセットをすべて知り、現実の世界のデータで生じる特異点、欠落データ、雑音のあるデータなどの問題を処理することができる。さらに、これは、モデル構造の一部からラーニングを分離することができる。例えば、多くの状況において、連続変数の混合に関する離散親は、連続変数の混合に関する混合分布を知るために冗長でよい。すなわち、離散親(1つまたは複数)の各値に関するモデルは、別々に知られることが可能であり、この結果、モデルをさらに容易に知ることができ、平行化によってさらに迅速に知ることができるようになる可能性がある。混合モデルは、期待値最大化(EM)を使用して知られ得る。いくつかの機能では、PGMパラメータは、非限定的な例示的標準PCAによることを含めて、他の方法を使用して効率よく得られることが可能である。さらに、回帰モデルなどのいくつかのモデルタイプでは、パラメータ分布を得るために混合モデルラーニング以外のアルゴリズムを使用する理由があり得る。
【0028】
混合モデルを知ることは、知られるべき健全性機能に関係のあるデータベースからデータのサブセットを選択することを含んでよい。データベース内の各行はケースと呼ばれる。ケースは、様々なセンサからのデータまたはセンサ由来の特徴などの取得でよい。測定された変数または得られた特徴はそれぞれ、ケースの中の列に対応する。いくつかの場合には、重み(0と1との間の値)が、ケースとその離散変数値のベクトルとの間の関連の強さによって各ケースに割り当てられてよいことが企図される。例えば、故障に関する徴候は、時間の経過につれてより顕著になる可能性がある。データが故障変数によって分割されている場合は、ケースは、徴候がどれほど顕著であるかによって、または取得が、故障が有効であると判明した点に時間的にどれほど近いかによって加重され得る。
【0029】
混合モデルを知ることはまた、データのサブセット内の離散変数ごとに値を割り当てることを含んでよい。混合モデルラーニングモジュールは、履歴トレーニングデータまたはモデルのためのすでに得られたパラメータのデータベース、連続変数および離散変数を含む変数のセット、混合モデルを知るために使用される構成パラメータ、もしあれば抑制のリスト、および成分除去が許可されるかどうか、およびもしそうであれば除去するための量を定義するパラメータを、入力とみなすことができる。離散変数は、混合モデルを得ることに積極的に参加するものなどのモデルラーニング変数、およびトレーニングデータ内の分割を確認するために使用される条件変数にさらに分割されてよい。データ内の分割ごとに、一意の混合モデルがあってよい。したがって、多くのタスクでは、得られる複数の混合モデルがあることになる。
【0030】
混合モデルを知ることはまた、離散変数のための割り当てられた値によってデータのサブセットを分割することを含んでよい。より具体的には、トレーニングデータは分割されてよく、データは、様々な分割にまたがって繰り返されてよく、分割へのデータの関連を定義する重みを割り当てられてよい。例えば、第1の離散変数が2つの値を有し、第2の離散変数が3つの値を有する場合は、6つの可能なデータの分割がある。分割は、データをサブセットに割り当て、この場合、サブセットは、離散変数に割り当てられた値の組合せによってラベリングされる。サブセットに関連するデータはなくてもよい。分割することは、様々なサブセットにケースを厳格に割り当てることでなくてもよい。言い換えれば、ケースは、様々なサブセットにおいて繰り返されてよい。これは、例えば、ケースが故障の徴候を示すかどうかわからない場合に生じる可能性があり、したがって、ケースは、低い重みを有する故障のないサブセット、およびより高い重みを有する故障のあるサブセットに現れる可能性がある。
【0031】
混合モデルラーニングモジュールは、構成パラメータを入力とみなすことができる。そのような構成パラメータは、成分の数、共分散行列に対する制約、トレーニングが終了する時を制御するための収束許容値、事前確率(prior)、最初のモデル構造の数などを含んでよいがそれらに限定されない多種多様なパラメータを含んでよい。混合モデルラーニングモジュールは、成分の最小数および成分の最大数がステップパラメータと共に定義されることを可能にすることができる。これは、モデルが、最小成分から最大成分までの間で様々である複数のモデルを構築することによって最適モデルを探すことができるようにし、このステップは、次に生成されるモデルに追加するべき追加成分の数を定義する。
【0032】
混合モデルラーニングモジュールは、制約リストを、もしあれば、入力とみなすことができる。そのような制約は、モデル間の成分の共有の方向または量もしくは形状を含んでよいがそれらに限定されない。これらの制約は必ずしもモデルラーニング中に適用されるわけではなく、ラーニング後にも適用される。
【0033】
ラーニング中に、混合モデルラーニングモジュールはデータの分割ごとに混合モデルを得ることができる。分割は、条件変数に応じて決められてよい。混合モデルラーニングモジュールは、モデル成分ごとに条件変数に関する統計値を得ることができる。
【0034】
次いで、PGMが健全性機能の少なくともいくつかのために混合モデルから生成されてよい。これは、混合モデルを各サブセットからPGMにマッピングすることを含む。PGMは、変数、変数間の有向リンク、および変数ごとのパラメータから成ってよい。いくつかの可能な構造があり、それらの構造は、推論タスク、およびサブセットごとのモデルがあるかどうかに依存する。サブセットごとのモデルが存在し、サブセットごとの単一の成分がある場合は、図7におけるPGM70が使用されることが可能であり、予測変数72および離散変数74を含んでよい。
【0035】
図8は、PGM80、予測変数82、および成分変数84を示す。サブセットモデルごとに複数の成分がある場合は、離散変数である成分変数84が導入される。サブセットモデル内の成分は、他のサブセットモデル内の成分と関係がない。したがって、成分変数84内の値の数は、各サブセットモデル内の成分の数の和に等しい。したがって、2つの成分、4つの成分、および2つの成分を有する3つのサブセットでは、成分の総数は8である。成分変数84内の値は、その値がどのモデルおよび成分に関連するかを識別するために適切にラベリングされることが可能である。
【0036】
図9は、予測変数92、成分変数94、および、条件付きでない事前確率分布をセットすることが望ましい離散変数または離散親96によるデータの分割を有するPGM90を示す。言い換えれば、この離散親96は、親変数を有しないことを必要とされる。一例は、変数が故障を表すデータおよび故障を表さないデータによって分割される故障モードをモデル化する場合である。事前確率は、故障発生の尤度を特定する。
【0037】
PGM100が図10に示されており、予測変数102、成分変数104、および成分変数104の子として働く離散変数106を含む。この形の構造化は、エビデンスが連続変数上にセットされた後に続いて離散変数の値ごとの周辺が計算されることを可能にする。代替として、離散変数は、推論中にモデルまたはモデルの中の成分をディセーブルにするフィルタとして働くようにされてよい。分割がサブセットを生成し、各サブセットがそれぞれ異なる機械である場合は、その健全性が判定されつつある機械に関連するモデルをフィルタリングして取り除くことによって、他の機械すべてから機械の健全性または性能に関する見解を得ることが可能である。例えば、図11は、予測変数112、成分変数114、成分変数114の子として働くことができる離散変数116を含むPGM110を示す。この場合、フィルタリングは、各離散変数がその値ごとにバイナリ子118を有する場合は、容易にされる。バイナリ子118は、値真および偽を有してよく、エビデンスは、その値に関連するモデル成分が推論タスクから除去されるべきである場合は、偽にセットされる。
【0038】
混合モデルごとの成分は、混合係数が条件変数に従属しないように単独で知られ得ることが企図される。これは、システム全体を管理可能にするために、複雑なタスクをモデル化することと簡略化することとの厳密さの間でバランスを取る。より小さくてより簡単な構造化モデルを統合することによって、モデル構造の複雑さが低減され、推論能力が維持される。
【0039】
前述の諸実施形態は、従来自己充足的で孤立的なアルゴリズムによって取り組まれてきた様々な機能を単一の理論的フレームワークにマッピングすることを含めて様々な利益を提供する。多くの機能では、このフレームワークは、元の実施形態と全く同じ出力を生成する。同じ理論的フレームワーク内の機能を有するという利点は、統合がはるかに容易であり、データが機能間で伝達されるときに重要な情報の保持を最大化するのに役立つということである。このタイプの手法がなければ、統合はますますその場限りになり、1つの機能からの出力は必ずしも別の機能に容易にマッピングするとは限らないので不可避的に情報の喪失につながる。さらに、前述の諸実施形態は、様々な機能に同じ表現形式を与える標準化されたフレームワークを提供し、これは、さらに精巧なモデルを構築することが可能であり、知識が一箇所でエンコードされることを意味する。本質的に、前述の諸実施形態は、IVHMが簡略化された分析統合アーキテクチャを拡張するばかりでなく能力を高めることもできるようにする。これは、結果として妥当性確認のための時間と労力を低減することになり、継続保守費用を低減する。
【0040】
本明細書は、ベストモードを含めて、本発明を開示するために、さらに、当業者なら誰でも任意のデバイスまたはシステムを作成し使用すること、および任意の組み込まれた方法を実施することを含めて本発明を実施することができるようにするために、例を使用する。本発明の特許可能な範囲は、請求項によって定義され、当業者に思いつかれる他の例を含んでよい。そのような他の例は、請求項の文字言語と異ならない構造要素を有する場合、または請求項の文字言語と事実上異ならない同等の構造要素を含む場合は、請求項の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0041】
2 航空機
4 航空機メンバシステム
6 通信システム
8 航空機健全性管理(AHM)コンピュータ
10 状態基準保全のためのオープンシステムアーキテクチャ(OSA−CBM)
12 データ操作層
14 状態検出層
16 健全性評価層
18 予知評価層
20 勧告生成層
30 PGM
32 予測変数
34 変数Y
40 PGM
42 予測変数
44 変数Y
46 二次項
50 PGM
52 予測変数
54 成分変数
60 PGMモデル
62 X変数
64 S変数
70 PGM
72 予測変数
74 離散変数
80 PGM
82 予測変数
84 成分変数
90 PGM
92 予測変数
94 成分変数
96 離散親
100 PGM
102 予測変数
104 成分変数
106 離散変数
110 PGM
112 予測変数
114 成分変数
116 離散変数
118 バイナリ子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークに接続され、複数のシステムの少なくともいくつかの動作データに関するステータスメッセージおよび生データのうちの少なくとも1つを送信する前記システムを有する輸送機のための健全性管理システムの機能モデルを統合するための方法であって、
複数の健全性モデルを提供するステップであって、各健全性モデルは、前記輸送機の健全性機能を表し、前記健全性モデルの少なくともいくつかは、前記動作データの少なくともいくつかに対応するパラメータを有する、ステップと、
前記対応する健全性機能に関する健全性データを生成するために前記健全性モデルを実行するステップと、
前記健全性モデルの前記実行から前記生成された健全性データのデータベースを形成するステップと、
前記健全性機能の少なくともいくつかのために前記データベースから混合モデルを形成するステップと、
前記健全性機能の前記少なくともいくつかのために前記混合モデルから確率的グラフィカルモデル(PGM)を生成するステップと、
前記生成されたPGMに基づいて健全性機能の判定を行うステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記混合モデルを前記形成するステップは、前記データベースから前記混合モデルを知るステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記混合モデルを知るステップは、知られるべき前記健全性機能に関係のある前記データベースからデータのサブセットを選択するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記混合モデルを知るステップは、データの前記サブセット内の離散変数ごとに値を割り当てるステップを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記混合モデルを知るステップは、前記離散変数のための前記割り当てられた値に応じてデータの前記サブセットを分割するステップをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記混合モデルを知るステップは、分割ごとの混合モデルを知るステップを含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記混合モデルを知るステップは、データの前記サブセットから前記連続変数を選択するステップをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記混合モデルを知るステップは、前記連続変数間に制約をセットするステップをさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記混合モデルを知るステップは、データの前記サブセットのための前記混合モデルをトレーニングするステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記PGMを生成するステップは、前記混合モデルをデータの前記サブセットから前記PGMにマッピングするステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記混合モデルは、前記対応する健全性機能に関する前記データベースから連続パラメータおよび離散パラメータに関して形成される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記PGMは、前記対応する健全性モデルの構造から少なくとも部分的に分離される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記健全性機能の前記判定を前記行うステップは、診断判定および予知判定のうちの少なくとも1つを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
添付の図面に関する、本特許請求の範囲に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−100083(P2013−100083A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−241432(P2012−241432)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【出願人】(509133300)ジーイー・アビエイション・システムズ・リミテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】GE AVIATION SYSTEMS LIMITED