説明

農園芸用殺虫剤組成物

【課題】 種々の害虫に対して広い殺虫スペクトラムを有し、特に水稲に加害する半翅目害虫に対して低薬量で優れた防除効果を示す農園芸用殺虫剤組成物を提供する。
【解決手段】 ブプロフェジンとジノテフランとを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブプロフェジンとジノテフランを有効成分として含有することを特徴とする農園芸用殺虫剤組成物及びその使用方法並びに農園芸半翅目害虫の防除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の有効成分のブプロフェジン及びジノテフランは何れも公知の化合物であり、共に殺虫活性等を有することが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。ブプロフェジンはキチン合成阻害剤として知られ(例えば非特許文献2)、ジノテフランはニコチン性アセチルコリンに作用することが知られている(例えば非特許文献3)。
【0003】
ブプロフェジンは対象害虫と対象害虫以外の間での選択性が高く一部の農園芸用害虫にしか作用しないため、相乗効果については知られていなかった。ブプロフェジンと他の化合物を混合してなる農園芸用組成物等としては、製剤特許の明細書の一部に例示されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、ブプロフェジンとジノテフランの組み合わせを含む組成物は知られていない。
【0004】
一方ジノテフランは、半翅目害虫に対して、殺虫効果を有することが知られている(例えば、特許文献2を参照)が、これらの文献(特許文献3)の中で、組成物として混合できる農薬等の例が示されているが、ブプロフェジンは例示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2522935号公報
【特許文献2】特許第2766848号公報
【特許文献3】特開平07−179448号公報
【非特許文献1】農薬ハンドブック2005版(社団法人日本植物防疫協会)
【非特許文献2】新農薬の開発展望 シーエムシー出版
【非特許文献3】農薬開発の動向 ―生物制御科学への展開― シーエムシー出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
稲を加害する半翅目害虫類はその作柄に大きな影響を与える。特にトビイロウンカは生息密度が高まると坪枯れを引き起こし、収量を著しく低下させ、かつては飢饉の原因となったこともある。またカメムシ類は乳熟した穂を吸汁し、吸汁痕は斑点米となり作柄に大きな影響を与える。それゆえこれら半翅目害虫類を防除することは極めて重要であり、半翅目害虫類に有効な各種の農園芸用殺虫剤を使用してその防除が行われている。しかし、同一薬剤を多用すると半翅目害虫類に薬剤抵抗性が発現しやすく、未だ新たな防除薬剤についての要望が高い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記状況に鑑み、新規な農園芸用殺虫剤組成物を創出すべく種々の殺虫剤等の組合せにつき鋭意研究を重ねた結果、トビイロウンカ等の半翅目害虫であるウンカ類に対してブプロフェジンをジノテフランと配合すると、ブプロフェジンの殺ウンカ効果が増強されることを知見し、また同時にカメムシ類も防除できることを見出し、本発明を完成させたものである。本願発明のブプロフェジンとジノテフランを有効成分として含有する農園芸用殺虫剤組成物はウンカ類及びカメムシ類に対して、それぞれの薬剤を単用する効果から想到し得ない程の相乗効果を有するものである。
【0008】
即ち本発明は、
[1]、ブプロフェジンとジノテフランを有効成分として含有することを特徴とする農園芸用殺虫剤組成物、
[2]、請求項1に記載の農園芸用殺虫剤組成物を対象植物或いは土壌に処理することを特徴とする農園芸用殺虫剤組成物の使用方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物はトビイロウンカ等の半翅目害虫類に対して、それぞれの薬剤を単用する効果から想到し得ない程の相乗効果を発揮するものである。その結果半翅目害虫類例えばトビイロウンカ等のウンカ類の防除に多量の薬剤を投入することなく、半翅目害虫類等、特にウンカ類、ヨコバイ類、カメムシ類を一回の処理で防除でき、農業生産性を高めることができる。
また、本発明の農園芸用殺虫剤組成物は、処理植物に全く薬害を与えず、人畜に対しても安全に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物は第1の有効成分化合物であるブプロフェジンと第2の有効成分化合物であるジノテフランとを組み合わせて使用すれば良い。本発明の農園芸用殺虫剤組成物中の各有効成分化合物の添加量はそれぞれ約0.1〜50質量部の範囲から適宜選択して使用すれば良く、好ましくはそれぞれ約0.5〜25質量部の範囲から選択して使用すれば良い。又、本発明の農園芸用殺虫剤組成物中のブプロフェジンに対するジノテフランの添加割合は、ブプロフェジン10質量部に対してジノテフラン約0.1から20質量部の範囲から適宜選択して使用すれば良く、好ましくは約1から15質量部の範囲、特に好ましくは3から10質量部の範囲から選択して使用すれば良い。
【0011】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物を使用する場合、農薬製剤上の常法に従って適当な不活性担体、及び必要に応じて補助剤等と共に上記有効成分を適当な割合に配合して溶解、懸濁、粉砕、混合、捏和、含浸、吸着若しくは付着等させ、使用目的に応じて適当な剤形、例えば乳剤、乳懸濁剤、粉剤、粒剤、水和剤、フロアブル剤、顆粒水和剤、錠剤、ジャンボ剤、ゾル剤、ゲル剤又はパック剤等に調製して使用すれば良い。
【0012】
本発明で使用できる不活性担体としては固体又は液体の何れであっても良く、固体の担体になりうる材料としては、例えばダイズ粉、穀物粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、タバコ茎粉、クルミ殻粉、ふすま、繊維素粉末、植物エキス抽出後の残渣、粉砕合成樹脂等の合成重合体、粘土(クレー)類(例えばカオリン、ベントナイト、酸性白土等)、タルク類(例えばタルク、ピロフィライト等)、シリカ類{例えば珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン(含水微粉珪素、含水珪酸ともいわれる合成高分散珪酸で、製品により珪酸カルシウムを主成分として含むものもある。)}、活性炭、イオウ粉末、軽石、焼成珪藻土、レンガ粉砕物、フライアッシュ、砂、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム又は炭酸マグネシウム等の無機鉱物性粉末、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体、硫安、燐安、硝安、尿素又は塩安等の化学肥料、あるいは堆肥等を挙げることができ、これらは単独で若しくは二種以上の混合物の形で使用される。
【0013】
液体の担体になりうる材料としては、それ自体溶媒能を有するものの他、溶媒能を有さずとも補助剤の助けにより有効成分化合物を分散させうることとなるものから選択され、例えば代表例として次に挙げる担体を例示できるが、これらは単独で若しくは2種以上の混合物の形で使用され、例えば水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール,プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、γ―ブチロラクトン等)、エーテル類(例えばエチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えばケロシン、鉱油等)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えばジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩素化ベンゼン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、ジイソプピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ニトリル類(例えばアセトニトリル等)、ジメチルスルホキシド類、含窒素担体類(N―アルキルピロリドン等)、又は油脂類(例えば、菜種油、大豆油、オリーブ油、コーン油、ヤシ油、ヒマシ油等)等を挙げることができる。
【0014】
他の補助剤としては次に例示する代表的な補助剤をあげることができ、これらの補助剤は目的に応じて使用され、単独で、ある場合は二種以上の補助剤を併用し、又ある場合には全く補助剤を使用しないことも可能である。
有効成分化合物の乳化、可溶化及び/又は湿潤の目的のために界面活性剤が使用され、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ジオクチルスルホサクシネートソーダ)、アルキルアリールスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸縮合物[例えば、β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩;デモールT(花王アトラス株式会社)等]、リグニンスルホン酸塩又は高級アルコール硫酸エステル等の界面活性剤を例示することができる。
また、有効成分化合物の分散安定化、粘着及び/又は結合の目的のために、次に例示する補助剤を使用することができ、例えばカゼイン、ゼラチン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、松根油、糠油、ベントナイト又はリグニンスルホン酸塩等の補助剤を使用することができる。
【0015】
さらに、固体製品の流動性改良のために次に挙げる補助剤を使用することもでき、例えばワックス、ステアリン酸塩又は燐酸アルキルエステル等の補助剤を使用できる。懸濁性製品の解こう剤として、例えばナフタレンスルホン酸縮合物又は縮合燐酸塩等の補助剤を使用することができる。
消泡剤としては、例えばシリコーン油等の補助剤を使用することもできる。
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(商品名:プロキセルGXL)、パラクロロメタキシレノール又はパラオキシ安息香酸ブチル等を添加することができる。
更に必要に応じてテルペン、ポリアミド樹脂又はポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンの高級脂肪酸エステル等の機能性展着剤、ピペロニルブトキサイド等の代謝分解阻害剤等の活性増強剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン又はプロピレングリコール等の凍結防止剤、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)又はブチルヒドロキシアニソール(BHA)等の酸化防止剤、ハイドロキノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はシアノアクリレート系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤、あるいはメチルセルロース、ポリビニルアルコール又はポリアクリル酸ナトリウム等のドリフト防止剤等その他の補助剤等を加えることができる。
【0016】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物は、更に防除対象病害虫、防除適期の拡大のため、或いは薬量の低減をはかる目的で、製剤中で安定である限り、他の農園芸用殺虫剤(殺虫剤)、殺線虫剤、殺菌剤又は生物農薬等と混合して使用することが可能であり、また、使用場面に応じて除草剤、植物成長調節剤又は肥料等と混用することが可能である。
【0017】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物は水稲、野菜、果樹、その他の花卉等を加害する各種農林害虫、園芸害虫、貯穀害虫又は衛生害虫等の害虫防除に適しており、例えば半翅目(Hemiptera)の異翅類(Heteroptera)から、マルカメムシ(Megacopta punctatissima)、オオトゲシラホシカメムシ(Eysarcoris lewisi)、トゲシラホシカメムシ(Eysarcoris aeneus)、ミナミアオカメムシ(Nezara viridula)、チャバネアオカメムシ(Plautiacrossota stali)、ホソハリカメムシ(Cletus punctiger)、クモヘリカメムシ(Leptocorisa chinensis)、ホソヘリカメムシ(Riptortus clavatus)、コバネヒョウタンナガカメムシ(Togo hemipterus)、ナシグンバイ(Stephanitis nashi)、ツツジグンバイ(Stephanitis pyrioides)、ウスミドリカスミカメ(Apolygus spinolai)、アカスジカスミカメ(Stenotus rubrovittalus)、アカヒゲホソミドリカスミカメ(Trigonotylus caelestialium)等を例示することができ、同翅類(Homoptera)から、フタテンヒメヨコバイ(Arboridia apicalis)、チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、タイワンツマグロヨコバイ(Nephotettix virescens)、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)、ミカンキジラミ(Diaphorina citri)、ミカントゲコナジラミ(Aleurocanthus spiniferus)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、ミカンコナジラミ(Dialeurodes citri)、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、
【0018】
ブドウネアブラムシ(Viteus vitifolii)、リンゴワタムシ(Eriosoma lanigerum)、ユキヤナギアブラムシ(Aphis spiraecola) 、マメアブラムシ(Aphis craccivora)、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、ジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani)、ダイコンアブラムシ(Brevicoryne brassicae)、チューリップヒゲナガアブラムシ(Macrosiphum euphorbiae)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ムギクビレアブラムシ(Rhopalosiphum padi)、ムギヒゲナガアブラムシ(Sitobion akebiae)、クワコナカイガラムシ(Pseudococcus comstocki)、ツノロウムシ(Ceroplastes ceriferus)、アカマルカイガラムシ(Aonidiella aurantii)、ナシマルカイガラムシ(Comstockaspis perniciosa)、クワシロカイガラムシ(Pseudaulacaspis pentagona)、ヤノネカイガラムシ(Unaspis yanonensis)等を例示することができ、
【0019】
鱗翅目(Lepidoptera)から、リンゴコカクモンハマキ(Adoxophyes orana fasciata)、チャノコカクモンハマキ(Adoxophyes honmai)、ミダレカクモンハマキ(Archips fuscocupreanus)、モモシンクイガ(Carposina niponensis)、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、チャハマキ(Homona magnanima)、チャノホソガ(Caloptilia theivora)、ヨモギエダシャク(Ascotis selenaria)、グレイプベリーモス(Endopiza viteana)、コドリンガ(Laspeyresia pomonella)、キンモンホソガ(Phyllonorycter ringoniella)、ギンモンハモグリガ(Lyonetia prunifoliella malinella)、ミカンハモグリガ(Phyllocnistis citrella)、コナガ(Plutella xylostella)、ワタアカミムシ(Pectinophora gossypiella)、モモシンクイガ(Carposina niponensis)、ニカメイガ(Chilo suppressalis)、サンカメイガ(Scirpophaga incertulas)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ハイマダラノメイガ(Hellulla undalis)、ナミアゲハ(Papilio xuthus)、モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)、オビカレハ(Malacosoma neustria testacea)、アメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、ヘリオチス種(Heliothis spp.)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、タマナギンウワバ(Autographa nigrisigna)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)等を例示することができ、鞘翅目(Coleoptera)から、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、マメコガネ(Popillia japonica)、ヒラタキクイムシ(Lyctus brunneus)、ヒラタコクヌストモドキ(Tribolium confusum)、ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintioctopunctata)、ゴマダラカミキリ(Anoplophora malasiaca)、マツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)、アズキゾウムシ(Callosobruchus chinensis)、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、ルートワーム種(Diabrotica spp.)、ワタミゾウムシ(Anthonomus gradis grandis)、メキシカンビートル(Epilachna varivestis)、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、イネドロオイムシ(Oulema oryzae)、シバオサゾウムシ(Sphenophrus venatus vestitus)等を例示することができ、膜翅目(Hymenoptera )から、カブラハバチ(Athalia rosae ruficornis)、チュウレンジハバチ(Arge pagana)、クロヤマアリ(Formica japonica)等を例示することができ、
【0020】
双翅目(Diptera )から、イネハモグリバエ(Agromyza oryzae)、イネミギワバエ(Hydrellia griseola)、マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)、タマネギバエ(Delia antiqua)、イエバエ(Musca domestica)、チカイエカ(Culex pipiens molestus)、アカイエカ(Culex pipiens pallens)、アザミウマ目(Thysanoptera)から、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、シロアリ目(Isoptera)から、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、チャタテムシ目(Psocoptera)、ヒラタチャタテ(Liposcelis bostrychophilus)等を例示することができ、直翅目(Orthoptera)から、コバネイナゴ(Oxya yezoensis)、ケラ(Gryllotalpa sp.)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)等を例示することができ、ダニ目(Acarina)から、ミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、ミナミヒメハダニ(Brevipalpus phoenicis)、クローバーハダニ(Bryobia praetiosa)、ミカンサビダニ(Aculops pelekassi)、ニセナシサビダニ(Eriophyes chibaensis)、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)、ロビンネダニ(Rhizoglyphus robini)、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)等を例示することができる。
本発明の農園芸用殺虫剤組成物は、特に各種半翅目害虫の同翅類、なかでもウンカ類、例えばトビイロウンカに対して顕著な相乗効果を示すものである。
【0021】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物を使用できる有用植物は特に限定されるものではないが、例えば穀類(例えば、稲、大麦、小麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ等)、豆類(大豆、小豆、そら豆、えんどう豆、インゲン豆、落花生等)、果樹・果実類(林檎、柑橘類、梨、葡萄、桃、梅、桜桃、胡桃、栗、アーモンド、バナナ、イチゴ等)、葉・果菜類(キャベツ、トマト、ホウレンソウ、ブロッコリー、レタス、タマネギ、ネギ、ピーマン、ナス、ペッパー等)、根菜類(ニンジン、馬鈴薯、サツマイモ、サトイモ、大根、蓮根、カブ、ゴボウ、ニンニク等)、加工用作物(棉、麻、ビート、ホップ、サトウキビ、テンサイ、オリーブ、ゴム、コーヒー、タバコ、茶等)、ウリ類(カボチャ、キュウリ、マクワウリ、スイカ、メロン等)、牧草類(オーチャードグラス、ソルガム、チモシー、クローバー、アルファルファ等)、芝類(高麗芝、ベントグラス等)、香料鑑賞用作物等(ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、胡椒、生姜等)、花卉類(キク、バラ、カーネーション、蘭等)、庭木(イチョウ、サクラ類、アオキ等)又は林木(トドマツ類、エゾマツ類、松類、ヒバ、杉、桧等)等の植物を例示することができる。
また、当該有用植物は、遺伝子組換え等により、殺虫性有効成分を成長過程で産生するものであっても良い。当該殺虫有効成分としては、例えばBt(Bacillus thuringiensis;土壌細菌)毒素等を例示することができる。
【0022】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物を使用する場合、目的に応じた製剤形態の組成物をそのまま、又は水等で希釈して使用すれば良く、その施用量は、有効成分の配合割合、気象条件、製剤形態、施用時期、施用方法、施用場所、防除対象有害生物又は対象作物等により異なるが、有効成分化合物として10アール当たり、2種の有効成分の合計で、通常約0.1〜500gの範囲で処理すれば良く、好ましくは約1〜250gの範囲であり、更に好ましくは5g〜100gの範囲である。
【0023】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物は、駆除すべき半翅目害虫等が棲息する植生、特に茎、葉、種子、球根又は種芋(以下、種子、球根又は種芋を単に種子と略記する。)又は果実等に施用できる。施用方法としては、例えば葉面又は茎への散布又は噴霧、種子処理(例えば、浸種又は粒剤の種子粉衣等)、土壌施用(例えば、粒剤の畦間散布もしくは畦間噴霧等)、本田への水面施用等が挙げられる。
【0024】
種子への処理においては種子重量との比較で、種子100重量部に対して2種の有効成分の合計として約0.01〜50重量部の範囲で使用することが可能であり、好ましくは約0.1〜20重量部の範囲である。乳剤又は水和剤等を水等で希釈して施用する場合、その施用濃度は2種の有効成分の合計として約0.00001〜0.1重量%であり、粒剤、粉剤あるいは種子に処理する場合の液剤等は、通常希釈することなくそのまま施用すれば良い。
【0025】
土壌施用の場合、通常は本発明の農園芸用殺虫剤組成物を処理すべき圃場もしくは作物栽培地区の全域の土壌に散布等し、水を噴霧するかまたは自然の降雨作用等に任せることによって有効成分を土壌中で拡散させ得る。また、種子もしくは苗等の植え付け穴の土壌に散布又は噴霧等して施用してもよく、さらに植物の極めて近傍の土壌に散布、噴霧又は注入等によって施用してもよい。土壌施用の時期は、種子又は苗等の植付け前、植付け中又は植付け後であって発芽前もしくは発芽後のいずれでもよい。
【0026】
また、本発明はブプロフェジンとジノテフランとを併用することによる薬剤抵抗性ウンカ類の防除方法に関する。ブプロフェジンとジノテフランとの併用は、例えば駆除すべきウンカ・ヨコバイ類が棲息する上記植生に対して、ブプロフェジンとジノテフランとを含有する本発明の組成物を施用する形態であればよい。また、前記併用は、ブプロフェジンを有効成分として含有する組成物とジノテフランを有効成分として含有する組成物とを施用時に本発明の組成物と同様の割合となるように混合し、希釈等により施用混合剤を調製して施用する形態であってもよく、さらに、ジノテフランを有効成分として含有する組成物とブプロフェジンを有効成分として含有する組成物をそれぞれ任意の濃度に別々に調製し、これらを同時期に或いは別々に施用する形態であってもよい。この場合におけるブプロフェジンとジノテフランのそれぞれの施用量は、上記本発明の施用量と同様となるよう調製するのがよい。
【0027】
なお、本明細書において、「防除」なる用語は例えば、半翅目害虫類(例えばウンカ、ヨコバイ類、カメムシ類)の薬殺、生育の阻止、抑制、忌避又は防止を意味し、半翅目害虫類による損傷から植物を保護することを意味する。
【0028】
また、農園芸殺虫作用とは、農園芸植物に加害するウンカ類に対する殺虫作用を意味する。すなわち、ジノテフランの混用によりウンカ類に対するブプロフェジンの殺虫効果が増強されるので、ブプロフェジンが低濃度、例えば通常のブプロフェジンのウンカ類に対する殺虫有効量以下であっても、殺虫効果を発揮し得る。
【0029】
本発明におけるウンカ類の防除方法を実施するために、ブプロフェジンと、ジノテフランとを同一パッケージに包装して、前記ブプロフェジンとジノテフランとを混用するための農園芸用殺虫キット、とりわけ薬剤抵抗性ウンカ類防除用キットとすることもできる。
【0030】
本発明の農園芸用殺虫剤組成物の防除方法は、例えば獣医薬もしくは畜産業の分野または公衆衛生維持の分野で、動物、特に温血脊椎動物、例えば人体または家畜、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ニワトリ、イヌまたはネコに寄生するダニ類やノミ類に対して使用し得る。該ダニ類としては、マダニ類(例えば、Ixodes種(マダニ)、Boophilus種(例えば、Boophilusmicroplus)、Amblyomma種、Hyalomma種(チマダニ)、Rhipicephalus種(例えば、Rhipicehalus appendiculatus(イエダニ))、Haemaphysalis種、Dermacentor種、Ornithodorus種(例えば、Ornithodorus
moubata)及びその他のダニ類(例えば、Damalinia種(Dermahyssus gallinae)、Sarcoptes種(ヒゼンダニ)(例えば、Sarcotpes
scabiei)、Psorotes種、Chorioptes種、Demodex種(ニキビダニ)、Eutrombicula種)等が挙げられる。
動物におけるダニの防除は、例えば経口投与又は動物への散布等により実施できる。
【0031】
以下に実施例、試験例等により本発明を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
ブプロフェジン 10質量部
ジノテフラン 5質量部
含水珪酸 30質量部
ハイテノールN08(第一工業製薬(株)製) 5質量部
リグニンスルホン酸カルシウム 3質量部
水和剤用クレー 47質量部
有効成分化合物を含水珪酸に含浸させた後、他の成分と均一に混合して水和剤とする。
【実施例2】
【0033】
ブプロフェジン 10質量部
ジノテフラン 2質量部
NPE−100(第一工業製薬(株)製) 20質量部
プロピレングリコール 5質量部
ロードポール23(ローヌ・プーラン(株)製) 2質量部
水 61質量部
以上を均一に混合し、水に分散させてフロアブル剤とする。
【実施例3】
【0034】
ブプロフェジン 20質量部
ジノテフラン 10質量部
含水珪酸 20質量部
SP−3005X(東邦化学(株)製) 30質量部
デモールT(花王アトラス(株)製) 10質量部
キシレン 10質量部
以上を均一に混合溶解して乳剤とする。
【実施例4】
【0035】
ブプロフェジン 1質量部
ジノテフラン 0.35質量部
含水珪酸 5質量部
ハイテノールN08(第一工業製薬(株)製) 5質量部
PAP(新日本石油化学(株)製) 0.15質量部
ポリブテン(新日本石油化学(株)製) 0.2質量部
粉剤用DLクレー 88.3質量部
有効成分化合物を含水珪酸に含浸させた後、他の成分と均一に混合して粉剤とする。
【実施例5】
【0036】
ジオクチルスルホサクシネートソーダ 1質量部
ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル 2質量部
プロピレングリコール 10質量部
シリコーンKM−73(信越化学工業社製) 0.5質量部
プロキセルGXL(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
0.1質量部
水 77.7質量部
を加え、攪拌機(ホモミキサー、特殊機化工業社製)により混合溶解し、
次いで
ブプロフェジン 5質量部
ジノテフラン 2.5質量部
を加え湿式粉砕機(ダイノーミルKDL型、バッコーフェン社製)により微粉砕を行う。粉砕物に
キサンタンガム 0.2質量部
精製ベントナイト 1.0質量部
を加えて均一に混合して乳懸濁状農薬組成物とする。
【0037】
[試験例1]
イネ寄生のセジロウンカ、トビイロウンカおよびツマグロヨコバイに対する殺虫効果試験
供試薬剤:ブプロフェジン及びジノテフラン
移植62日後のイネ(品種:日本晴(穂孕み期))に、第1表、第2表及び第3表に記載の供試薬剤の薬量を散布した。調査は処理前および処理6日後に、1区(1区50m2、3連制)30株について粘着板(30×21cm)への払い落とし法で行い、生息数を成幼虫別に計数し、下記計算式に従って補正密度指数を算出した。
【0038】
[式1]
補正密度指数=(処理区の処理6日後の成幼虫数/処理区の処理前成幼虫数)×(無処理区の処理前成幼虫数/無処理区の処理6日後の成幼虫数)×100
【0039】
試験結果:
第1表.セジロウンカに対する殺虫効果試験結果


【0040】
第2表.トビイロウンカに対する殺虫効果試験結果


【0041】
第3表.ツマグロヨコバイに対する殺虫効果試験結果


【0042】
ブプロフェジンとジノテフランとの混用によるトビイロウンカ、セジロウンカおよびツマグロヨコバイに対する殺虫効果の共力作用を検討した。その結果、ブプロフェジンとジノテフランとの混用でそれぞれの単剤対比で効果向上が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブプロフェジンとジノテフランを有効成分として含有することを特徴とする農園芸用殺虫剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の農園芸用殺虫剤組成物を対象植物或いは土壌に処理することを特徴とする農園芸用殺虫剤組成物の使用方法。

【公開番号】特開2010−275194(P2010−275194A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126335(P2009−126335)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】