説明

農業情報管理システム

【課題】生産者が圃場ごとに各種データを容易に取得できる農業情報管理システムを提供する。
【解決手段】コンバイン(収穫機)30で圃場の農作物を収穫して、その農作物および圃場に係る情報を別に備える管理部50で管理し、コンバイン30と管理部50との間で双方向に情報を送受信する農業情報管理システムであって、コンバイン30に、圃場情報を発呼し、収穫する圃場の圃場情報を選択し、選択された圃場における収穫の開始および終了を発行する入力装置27と、水分センサ24および重量センサ25とを備え、圃場情報および水分センサ24および重量センサ25にて計測された生産情報などを管理部50に送る一方、管理部50に、これらの情報を関連付けて格納する記憶手段52を備え、その記憶手段52にはさらに複数の圃場の圃場情報を予め格納し、入力装置27にて発呼された際に、記憶手段52に格納された複数の圃場情報がコンバイン30に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫機で圃場の農作物を収穫して、その農作物および圃場に係る情報を別に備える管理部で管理し、収穫機と管理部との間で双方向に情報を送受信する農業情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農産物の生産から消費者の手に渡るまでの生産管理や生産履歴の情報を管理して利用できる農業情報管理方法は公知となっている(例えば、特許文献1)。
この技術は、生産単位区画毎に、栽培する作物の種類や農地の履歴や生産者に関する情報等をデータベース等に記憶させて、生産者の情報とし、この情報を収穫後に作物を消費者に販売するときにレシート等に印刷することで、生産者を明確にするとともに、施肥や防除等の情報がわかるようにして、生産者と消費者の間のコミュニケーションが図れるようにしたものである。
【0003】
【特許文献1】特開2002−149744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の農業情報管理方法は、生産者と消費者との間のコミュニケーションを図ることが主な目的であるため、生産者が生産単位区画(圃場)ごとに収穫した作物の種々のデータを得るには多大な労力を要してしまうという問題があった。また、このようなデータを作業日誌として手書きで記録して管理していたので、記入の手間や作業日誌の管理をしなければならず、作業が煩雑になるという問題があった。
そこで本発明の目的は、生産者が圃場ごとに各種データを容易に取得して管理することができる農業情報管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、収穫機で圃場の農作物を収穫して、該農作物および前記圃場に係る情報を別に備える管理部で管理し、前記収穫機と前記管理部との間で双方向に情報を送受信する農業情報管理システムであって、
前記収穫機に、
圃場情報を発呼する発呼手段と、
該発呼手段にて発呼された圃場情報から収穫する圃場の圃場情報を選択する選択手段と、
前記選択された圃場における収穫の開始および終了を確定情報として発行する確定手段と、
前記選択された圃場にて収穫した農作物の生産情報を計測する計測手段とを備え、
前記選択手段にて選択された圃場情報および前記計測手段にて計測された生産情報ならびに前記確定手段にて発行された確定情報を前記管理部に送る一方、
前記管理部に、
前記収穫機より送られてきた前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を関連付けて格納する記憶手段を備え、
該記憶手段にはさらに複数の圃場の圃場情報を予め格納し、前記発呼手段にて発呼された際に、前記記憶手段に格納された前記複数の圃場情報が前記収穫機に送られることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の農業情報管理システムにおいて、前記収穫機に前記発呼手段にて発呼された前記複数の圃場情報を表示する表示手段を備え、該表示手段に表示された複数の圃場情報から、当該収穫を行う圃場の圃場情報を前記選択手段にて選択することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の農業情報管理システムにおいて、前記収穫機に情報保持手段を備え、前記圃場の農作物を収穫するにあたり前記記憶手段から送られてきた前記複数の圃場情報を前記情報保持手段に保持することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の農業情報管理システムにおいて、前記管理部が生産者ごとに圃場に係る前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を関連付けて管理するとともに、
前記生産者が前記管理部と双方向に情報を送受信可能な端末装置を備え、
前記生産者の要求に応じて前記端末装置の表示部に前記圃場に係る前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を表示することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の農業情報管理システムにおいて、前記収穫機に印刷手段を備え、前記選択手段にて選択された圃場情報および前記計測手段にて計測された生産情報ならびに前記確定手段にて発行された確定情報を前記印刷手段にて印刷するとともに、前記表示手段に表示することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の農業情報管理システムにおいて、前記管理部に統計処理手段を備え、該統計処理手段にて前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を統計処理するとともに、
前記端末装置に入力部を備え、該入力部を介して前記統計処理手段に前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を統計処理するよう要求することを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の農業情報管理システムにおいて、前記端末装置に入力部および統計処理手段を備え、
前記入力部にて前記生産者の要求を入力して前記管理部より前記端末装置に前記圃場に係る前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を送信し、該圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を前記統計処理手段にて統計処理することを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項5ないし7のいずれかに記載の農業情報管理システムにおいて、前記端末装置は、パスワードを入力することによって前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の農業情報管理システムにおいて、前記双方向による情報の送受信が衛星を介して行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、収穫機で圃場の農作物を収穫して、その農作物および圃場に係る情報を別に備える管理部で管理し、収穫機と管理部との間で双方向に情報を送受信する農業情報管理システムであって、収穫機に、圃場情報を発呼する発呼手段と、その発呼手段にて発呼された圃場情報から収穫する圃場の圃場情報を選択する選択手段と、選択された圃場における収穫の開始および終了を確定情報として発行する確定手段と、選択された圃場にて収穫した農作物の生産情報を計測する計測手段とを備え、選択手段にて選択された圃場情報および計測手段にて計測された生産情報ならびに確定手段にて発行された確定情報を管理部に送る一方、管理部に、収穫機より送られてきた圃場情報および生産情報ならびに確定情報を関連付けて格納する記憶手段を備え、その記憶手段にはさらに複数の圃場の圃場情報を予め格納し、発呼手段にて発呼された際に、記憶手段に格納された複数の圃場情報が収穫機に送られるので、収穫を終了したときに、収穫を行った圃場の圃場情報および生産情報ならびに確定情報を関連付けて得ることができ、生産者が圃場ごとに各種データを容易に取得して管理することができる農業情報管理システムを提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、収穫機に発呼手段にて発呼された複数の圃場情報を表示する表示手段を備え、その表示手段に表示された複数の圃場情報から、当該収穫を行う圃場の圃場情報を選択手段にて選択するので、これから収穫を行う圃場を収穫機の表示手段において容易に選択することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、収穫機に情報保持手段を備え、圃場の農作物を収穫するにあたり記憶手段から送られてきた複数の圃場情報を情報保持手段に保持するので、収穫機と管理部との間で必要なときのみ送受信すればよく、効率のよい送受信が行える。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、管理部が生産者ごとに圃場に係る圃場情報および生産情報ならびに確定情報を関連付けて管理するとともに、生産者が管理部と双方向に情報を送受信可能な端末装置を備え、生産者の要求に応じて端末装置の表示部に圃場に係る圃場情報および生産情報ならびに確定情報を表示するので、生産者が容易に自己の所有する圃場の各種情報を自己の所有する端末装置に表示することができる。また、取得したデータをもとに次年度の作業計画などを容易に作成することができ、従来手作業で行っていた作業日誌をデータ管理することができる。また、必要に応じて管理部より収穫時のデータを引き出すことができ、作業日誌など作成する必要を省くことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、収穫機に印刷手段を備え、選択手段にて選択された圃場情報および計測手段にて計測された生産情報ならびに確定手段にて発行された確定情報を印刷手段にて印刷するとともに、表示手段に表示するので、圃場の収穫が終了するごとにその圃場の各種情報を表示手段にて確認することができるとともに、印刷手段にて印刷することができ、収穫作業を委託した場合であっても委託された人が収穫作業の終了を容易に生産者に報告することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、管理部に統計処理手段を備え、その統計処理手段にて圃場情報および生産情報ならびに確定情報を統計処理するとともに、端末装置に入力部を備え、その入力部を介して統計処理手段に圃場情報および生産情報ならびに確定情報を統計処理するよう要求するので、生産者が端末装置を介して各自の所有する圃場の圃場情報および生産情報ならびに確定情報のみならず、これらの情報を必要に応じて適宜、統計処理して所望の統計処理データを得ることができる。また、取得したデータを統計処理して次年度の作業計画などを容易に作成することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、端末装置に入力部および統計処理手段を備え、入力部にて生産者の要求を入力して管理部より端末装置に圃場に係る圃場情報および生産情報ならびに確定情報を送信し、その圃場情報および生産情報ならびに確定情報を統計処理手段にて統計処理するので、生産者が端末装置にて自己の所有する圃場に係る圃場情報および生産情報ならびに確定情報を必要に応じて適宜、統計処理することができ、より手軽に自己の所有する圃場に係る各種統計データを得ることができる。また、取得したデータを統計処理して次年度の作業計画などを容易に作成することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、端末装置は、パスワードを入力することによって圃場情報および生産情報ならびに確定情報を表示部に表示するので、セキュリティに特化した農業情報管理システムを提供することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、双方向による情報の送受信が衛星を介して行われるので、通信回線などの通信設備を設けることなく容易に双方向による情報の送受信を行うことができる。特に、収穫機が管理部から遠隔地にあるときには一層効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1はこの発明の農業情報管理システムの一例を示す概略説明図、図2は図1に用いる収穫機としてのコンバインの側面図、図3は図2のコンバインの構成図、図4は図2のコンバインの制御ブロック図、図5は生産者Aの所有する圃場を示した図である。この例では、コンバインで籾を収穫する場合の農業情報管理システムについて説明する。
【0024】
コンバイン(収穫機)30には、後述する刈取部7、脱穀部4、籾と藁を選別する選別部、籾を貯蔵するグレンタンク15、一定量収穫後グレンタンク15から籾を排出する排出オーガ17などの他、籾の水分値を計測する水分センサ(計測手段)24、グレンタンク15に貯蔵された籾の排出質量を計量する重量センサ(計測手段)25、発呼手段と選択手段と確定手段などを備えた入力装置27、圃場情報などを表示する表示装置28、衛星Sとの間で各種の情報を送受信する入出力手段33、情報保持手段34、制御手段31、印刷装置29などを備える。
管理部50は、衛星Sとの間で各種の情報を送受信する入出力手段51、前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を関連付けて格納する記憶手段52、各種の情報を統計処理する統計処理手段53などを備える。
なお、生産情報は、籾の収穫質量および水分量に加えて、消毒剤の散布量、肥料の投入量、土壌改良剤の投入量、コンバイン30の燃料消費量などの情報を含む。圃場情報は、一生産単位区画としての圃場F1,F2それぞれの面積・生産者・地番などの情報を含む。
【0025】
そして、圃場F1,F2の生産者Aの自宅には端末装置61を配置する。この端末装置61には、ディスプレイ(表示部)62、キーボードなどの入力部63、衛星Sとの間で各種の情報を送受信する入出力手段64、プリンタ65などを備える。
コンバイン30は入出力手段33を介して衛星Sと、管理部50は入出力手段51を介して衛星Sと、端末装置61は入出力手段64を介して衛星Sとそれぞれ各種情報を送受信するようになっている。
なお、管理部50と端末装置61との間は、インターネット回線を用いた情報通信方法であってもよい。このようにすると、既存のインフラを用いて管理部50と端末装置61との間で通信することができ、管理部50および端末装置61を複雑にすることがない。
また、コンバイン30と管理部50との間は、地上に設置した電波塔を介して情報を送受信するようにしてもよい。
【0026】
次にコンバイン30の詳細な構成について図2〜図5を用いて詳述する。
図2、図3において、符号1は左右一対の走行クローラ2を装設する左右一対のトラックフレーム、符号3は前記左右トラックフレーム1に架設する機台、符号4はフィードチェン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴を内蔵している脱穀機である脱穀部、符号7は引起機構8及び刈刃9及び穀稈搬送機構10などを備える刈取部、符号13は排藁チェン終端を臨ませる排藁処理部、符号15は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒を介して搬入するグレンタンク、符号17は前記タンク15の穀粒を機外に搬出する排出オーガ、符号19は運転操作ハンドル、符号20は運転席、符号21は運転席20下方に設けるエンジンであり、これらによりコンバイン30が連続的に穀稈を刈取って脱穀するように構成されている。
【0027】
機台3の後部にはグレンタンク15内の穀粒を外部へ排出するための排出オーガ17の縦オーガ23が立設されており、縦オーガ23を中心としてグレンタンク15が左右回動可能に設けられて、グレンタンク15の前部側を外方に回転させて開放可能に構成されている。グレンタンク15の内側上部には、籾の水分を計測する水分センサ24が配設され、収穫した籾の水分量を計測可能となっている。水分センサ24は機体の任意位置に配置した制御手段31(図4参照)と接続され、水分センサ24による検出値が制御手段31に伝達されるように構成されている。
【0028】
また、グレンタンク15と機台3との間には穀物重量を計測する重量センサ25が配設され、収穫した籾の重量を計測可能となっている。本実施例ではロードセルを使用して重量センサ25を構成しており、重量センサ25が制御手段31に接続されて、重量センサ25による検出値が制御手段31に伝達されるように構成されている。
【0029】
そして、水分センサ24により計測された検出値を用いて算出される最高水分値・最低水分値・平均水分値や、重量センサ25により計測されたグレンタンク15内の籾の総重量等の生産情報が、コンバイン30の運転席20近傍に配置した表示装置28及び印刷装置29により確認できるようになっている。なお、印刷装置29は着脱式として必要なときのみプリントアウトできるように構成してもよく、また、制御手段31に接続した入出力手段33より各種情報を、衛星Sを介して管理部50の入出力手段51との間で送受信するようになっている。
【0030】
すなわち、図4に示すように、制御手段31の入力側に水分センサ24、重量センサ25、運転席20近傍に設けた作業スイッチ26とキーボードやタッチパネル等の入力装置27が接続される一方、出力側に運転席20近傍に設けたディスプレイ等の表示装置28、印刷装置(印刷手段)29が接続される。作業スイッチ26は水分センサ24と重量センサ25を作動させるためのものであり、水分センサ24と重量センサ25は作業スイッチ26がONされた状態で、後述するオーガクラッチがONされると作動するようになっている。
【0031】
入力装置27には、圃場情報を発呼する発呼手段、その発呼手段にて発呼された圃場情報から収穫する圃場の圃場情報を選択する選択手段と、選択された圃場における収穫の開始および終了を確定情報として発行する確定手段のほか、収穫する籾の品種などを入力できる。
【0032】
表示装置28には、例えば図6(a)に示すように、重量センサ25により検出した穀物重量に基づいて算出される穀物排出質量や水分センサ24の水分値を表示することができる。また、図6(b)に示すように、穀粒の重量を、水分センサ24により検出した穀粒の水分値に基づいて、規定水分値における穀粒の重量に修正して、修正重量を収穫量(収量)とするようにして、複数の圃場における総質量(総重量)、収量、複数の圃場における水分値の平均値、最高水分値、最低水分値を、表示装置28に表示するようにすることもできる。
一方、印刷装置29により、例えば図6(c)に示すように、収穫作業の日時、圃場、刈取面積、品種、重量センサ25により検出した穀物重量、水分センサ24に基づき算出される平均水分等を記録紙に印刷して、確認できるようになっている。
また、前記制御手段31にGPS受信・位置検出手段を接続して、衛星からの電波を受信してコンバイン30の地図上での現在位置を正確に検出するように構成してもよい。
【0033】
次に、上記農業情報管理システムを用いて、籾を収穫する際に作業者が行う操作の手順について図1〜6を参照しつつ、図7〜11を用いて説明する。なお、図7はオーガコントローラの平面図、図8は籾を収穫する際に作業者が行う操作手順のフローチャート、図9はグレンタンク内の籾の重量と時間との関係を示した図、図10および11は、籾を排出する際の排出オーガの動作を説明するためのフローチャートである。
まず、コンバイン30に備える入力装置27にある発呼ボタン(発呼手段)を押下して圃場情報を発呼して、表示装置28に表示する(S1)。詳しくは、管理部50に備える記憶手段52に予め記憶されている複数の圃場情報を情報保持手段34に呼び出して保持し、表示装置28に表示する。この圃場情報には、各圃場の名称、番地、生産者、面積などが含まれている。そして表示装置28を参照しながら、所望の圃場(ここでは圃場F1)を入力装置27にある選択ボタン(選択手段)で選択する(S2)。すると、入出力手段33を介して圃場F1が選択された旨が記憶手段52に記憶される。
次に、コンバイン30を生産者Aの圃場F1に搬入して、収穫作業を開始する前に入力装置27にある確定ボタン(確定手段)を押下する(S3:図9にて時刻t1)。すると、確定情報が記憶手段52に記憶される。ここで確定情報は圃場F1における作業開始年月日、時刻を含む。そしてコンバイン30にて収穫作業を開始する(S4:図9にて時刻t2)。
【0034】
S5にて、同一圃場(ここでは圃場F1)の収穫作業が終了したかを判定する。同一圃場F1の収穫作業が終了したときは、S8に進む。同一圃場F1の収穫作業が終了していないときはS6に進み、グレンタンク15が満タンになったかを判定する。グレンタンク15が満タンになっていないときは収穫作業を継続する。グレンタンク15が満タンになったときは、収穫作業を停止して(時刻t3)、S7にて排出オーガ17が籾を排出する。なお、グレンタンク15内の籾の貯蔵量の表示は表示装置28にて行う。
【0035】
詳しくは図10,11に示すフローによって、オーガコントローラ150を操作してグレンタンク15内の籾を排出オーガ17で排出する。すなわち、オーガコントローラ150の自動旋回スイッチ153から入力される操作信号に基づいて自動旋回スイッチ153がオンとなったか否かを判断する(S11)。自動旋回スイッチ153がオフの状態であると判断した場合(S11:NO)、自動旋回スイッチ153がオンとなるまで待機する。
【0036】
自動旋回スイッチ153がオンとなったと判断した場合(S11:YES)、制御手段31は、オーガ昇降シリンダを伸長させ、排出オーガ17を載置していたオーガレストより排出オーガ17の上昇移動を開始させる。次いで、制御手段31は、オーガレストに備えるオーガレストスイッチがオフとなったか否かを判断する(S12)。オーガレストスイッチがオンの状態であると判断した場合(S12:NO)、すなわち、依然として排出オーガ17が収納位置に存すると判断した場合、制御手段31は、オーガレストスイッチがオフとなるまで待機する。
オーガレストスイッチがオフとなったと判断した場合(S12:YES)、制御手段31は、その時点からt秒前(例えば、2秒前)の計測値(移動平均)を作業前重量として保持する(S13)。
【0037】
次いで、制御手段31は、排出オーガ17が所定の高さに達するようにオーガ昇降シリンダを伸長させた後、オーガ旋回モータを駆動して、オーガコントローラ150により指定された作業位置へ排出オーガ17を旋回移動させる(S14)。排出オーガ17が指定された作業位置へ到達した時点で制御手段31はオーガ旋回モータを停止させ、オーガ昇降シリンダを短縮させて排出オーガ17を所定位置まで下降させる。
【0038】
次いで、制御手段31は、オーガクラッチスイッチ155から出力される操作信号に基づいてオーガクラッチスイッチ155がオンになったか否かを判断する(S15)。オーガクラッチスイッチ155がオンになっていないと判断した場合(S15:NO)、制御手段31は復帰スイッチ152から出力される操作信号に基づいて復帰スイッチ152がオンになったか否かを判断する(S16)。復帰スイッチ152がオンとなっていないと判断した場合(S16:NO)、制御手段31は処理をS15へ戻す。また、オーガクラッチスイッチ155がオフのままで復帰スイッチ152がオンになったと判断した場合(S16:YES)、すなわち、排出作業の実行指示がなされる前に排出オーガ17を収納位置へ戻すことが指示された場合、制御手段31は、オーガ旋回モータを制御して排出オーガ17を収納位置へ旋回移動させ(S17)、処理をS11へ戻す。
【0039】
また、S15において、オーガクラッチスイッチ155がオンとなったと判断した場合(S15:YES)、制御手段31は、オーガクラッチ125を作動させて排出作業を実行する(時刻t4:S18)。この間、制御手段31はオーガクラッチスイッチ155から出力される操作信号に基づいてオーガクラッチスイッチ155がオフとなったか否かを判断しており(S19)、オーガクラッチスイッチ155がオフとなっていないと判断した場合(S19:NO)、処理をS18へ戻し、排出作業を続行する。
【0040】
一方、オーガクラッチスイッチ155がオフとなったと判断した場合(S19:YES)、制御手段31はオーガクラッチ155を遮断して排出作業を終了する(時刻t5:S20)。そして、制御手段31は復帰スイッチ152からの操作信号を検出することにより、復帰スイッチ152がオンとなったか否かを判断する(S21)。復帰スイッチ152がオンとなっていないと判断した場合には(S21:NO)、制御手段31は復帰スイッチ152がオンとなるまで待機する。オーガコントローラ150の復帰スイッチ152が押下操作され、復帰スイッチ152がオンとなったと判断した場合(S21:YES)、制御手段31は、オーガ昇降シリンダ及びオーガ旋回モータを制御することにより、排出オーガ17を収納位置へ旋回移動させる(S22)。
【0041】
次いで、排出オーガ17がオーガレストに収納されたか否かを判断するために、制御手段31はオーガレストスイッチがオンとなったか否かを判断する(S23)。オーガレストスイッチがオンとなっていないと判断した場合(S23:NO)、制御手段31はオーガレストスイッチがオンとなるまで待機する。オーガレストスイッチがオンとなったと判断した場合(S23:YES)、制御手段31は内蔵タイマにより計時を開始し、所定時間tが経過したか否かの判断を行う(S24)。所定時間tが経過していないと判断した場合(S24:NO)、制御手段31は所定時間tが経過するまで待機し、オーガレストスイッチがオンとなってから所定時間tが経過したと判断した場合(S24:YES)、制御手段31は取込んだ計測値(移動平均)を作業後重量としてコンバインに備えるRAMなどの情報保持手段34に保持する(S25)。
【0042】
次いで、制御手段31は、S13にて保持した作業前重量とS25にて保持した作業後重量との差分をとることにより穀粒の排出重量W1を算出し(S26)、算出した排出重量W1のデータを表示装置28に表示する(S27)とともに、情報保持手段34に保持する。
【0043】
そして、S4(図8)に戻り、時刻t6にて同一の圃場F1での収穫作業を再開し、時刻t7においてグレンタンク15が満タンになったとき(S6)、上述と同様の方法により籾の排出を開始し(S7:時刻t8)、時刻t9にて排出が終了(排出量W2)したら、S4に戻り、時刻t10にて再び、同一の圃場F1での収穫作業を再開する。
そして、時刻t11にて圃場F1すべての収穫作業が終了したら、S8に進み、排出オーガ17を操作して、排出作業を開始し(時刻t12)、時刻t13にて排出を終了(排出量W3)する。なお、排出オーガ17の操作方法は、S7にて説明した方法と同様であるので説明を省略する。
排出終了後、S9にて、入力装置27の確定ボタンを押下する。すると、作業終了年月日、時刻を含む確定情報とともに情報保持手段34に保持された籾の総質量(W1+W2+W3)、収量、水分値などの生産情報が入出力手段33を介して記憶手段52に格納される。同時に、これらの情報を表示装置28に表示し、印刷装置29にて印刷する(図5)。
引き続き圃場F2の収穫を行うときは、図8にて説明した手順によって収穫作業を行う。
【0044】
このようにして管理部50に格納された各種の情報に圃場F1,F2の生産者Aがアクセスして、所望のデータを抽出するには、図12に示すように、まず、端末装置であるパーソナルコンピュータ(PC)61の入力部63にパスワードを入力してログインする(S31)。これにより、生産者Aのみの収穫データが管理部50上で選択される。そして、表示部62上にて生産者Aの圃場F1,F2で収穫された籾に関するデータの抽出方法を選択する(S32)。すなわち、管理部50に格納されている生データ(圃場情報および生産情報ならびに確定情報)を必要としているのか、既成の統計処理データ(例えば、ある年の圃場ごとの反収、圃場F1,F2における各年の反収履歴など)を必要としているのかを選択する。
【0045】
生データを必要としているときは、その旨を画面上で選択して生データを管理部50に記憶手段52よりPC61のハードディスクなどにダウンロードする(S33)。そして、PC61において、ダウンロードした生データから所望の情報を得るべく統計処理手段65により統計処理し(S34)、その結果をプリンタに出力する(S35)。なお、統計処理には市販の表計算ソフトなどを用いてもよい。
【0046】
一方、ステップS32にて、既成の統計処理データを必要としているときは、その旨を入力部63にて選択した後、所望の統計処理タイプを選択する(ステップS36)。すると、管理部50の統計処理手段53にて統計処理が施され、その処理結果としての統計データをPC61に表示し(ステップS37)、その結果をプリンタなどに出力する(ステップS35)。なお、統計処理方法としては、品種、収穫年、圃場、地番などでソートして処理することができる。
【0047】
なお、ステップS31にてログインした後、圃場F1,F2への肥料の投入量、消毒剤の散布量などのデータを管理部50内の記憶手段52にPC61から追加入力することができるようにしてもよい。
【0048】
このように、本発明の農業情報管理システムは、コンバイン(収穫機)30で圃場の農作物を収穫して、その農作物および圃場に係る情報を別に備える管理部50で管理し、コンバイン30と管理部50との間で双方向に情報を送受信する農業情報管理システムであって、コンバイン30に、圃場情報を発呼する発呼手段としての入力装置27と、その入力装置27にて発呼された圃場情報から収穫する圃場の圃場情報を選択する選択手段としての入力装置27と、選択された圃場における収穫の開始および終了を確定情報として発行する確定手段としての入力装置27と、選択された圃場にて収穫した農作物の生産情報を計測する計測手段としての水分センサ24および重量センサ25とを備え、入力装置27にて選択された圃場情報および水分センサ24および重量センサ25にて計測された生産情報ならびに入力装置27にて発行された確定情報を管理部50に送る一方、管理部50に、コンバイン30より送られてきた圃場情報および生産情報ならびに確定情報を関連付けて格納する記憶手段52を備え、その記憶手段52にはさらに複数の圃場の圃場情報を予め格納し、入力装置27にて発呼された際に、記憶手段52に格納された複数の圃場情報がコンバイン30に送られる。
【0049】
また、コンバイン30に入力装置27にて発呼された複数の圃場情報を表示する表示装置(表示手段)28を備え、その表示装置28に表示された複数の圃場情報から、当該収穫を行う圃場の圃場情報を入力装置27にて選択する。
さらに、コンバイン30にRAMなどの情報保持手段34を備え、圃場の農作物を収穫するにあたり記憶手段52から送られてきた複数の圃場情報を情報保持手段34に保持する。
また、管理部50が生産者ごとに圃場に係る圃場情報および生産情報ならびに確定情報を関連付けて管理するとともに、生産者A,Bが管理部50と双方向に情報を送受信可能な端末装置61を備え、生産者A,Bの要求に応じて端末装置61の表示部62に生産者A,Bの所有する圃場に係る圃場情報および生産情報ならびに確定情報を表示する。
【0050】
コンバイン30と管理部50、管理部50と端末装置61との双方向による情報の送受信は衛星Sを介して行われる。
また、管理部50に統計処理手段53を備え、その統計処理手段53にて圃場情報および生産情報ならびに確定情報を統計処理する。この際、端末装置61に統計処理要求手段としての入力部63を備え、その入力部63を介して統計処理手段53に圃場情報および生産情報ならびに確定情報を統計処理するよう要求する。
さらに、端末装置61は、パスワードを入力することによって圃場情報および生産情報ならびに確定情報を表示部62に表示する。
なお、端末装置61に統計処理手段65を備え、生産者A,Bの要求に応じて端末装置61に生産者A,Bの所有する圃場に係る圃場情報および生産情報ならびに確定情報を送信し、その圃場情報および生産情報ならびに確定情報を統計処理手段65にて統計処理するようにしてもよい。
【0051】
作物は籾に限定されるものではなく、大麦、小麦などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の農業情報管理システムの一例を示す概略説明図である。
【図2】図1に用いる収穫機としてのコンバインの側面図である。
【図3】図2のコンバインの構成図である。
【図4】図2のコンバインの制御ブロック図である。
【図5】生産者Aの所有する圃場を示した図である。
【図6】(a),(b)は図2のコンバインに備える表示装置に生産情報が表示された図、(c)は図2のコンバインに備える印刷装置に生産情報が出力された図である。
【図7】図2のコンバインに備えるオーガコントローラの平面図である。
【図8】圃場F1での収穫作業手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】収穫作業を行っているときのグレンタンク内の重量と時間の関係を表した図である。
【図10】排出オーガにてグレンタンク内の籾を排出する方法を説明するフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートの続きを示す図である。
【図12】生産者が端末装置にて各種の情報を出力する手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 トラックフレーム
2 走行クローラ
3 機台
4 脱穀部
5 フィードチェーン
6 扱胴
7 刈取部
8 引起機構
9 刈刃
10 穀稈搬送機構
13 排藁搬送機構
15 グレンタンク
17 排出オーガ
19 運転操作ハンドル
20 運転席
21 エンジン
23 縦オーガ
24 水分センサ(計測手段)
25 重量センサ(計測手段)
26 作業スイッチ
27 入力装置(発呼手段、選択手段、確定手段)
28 表示装置
29 印刷装置
30 コンバイン(収穫機)
31 制御手段
33,51,64 入出力手段
34 情報保持手段
50 管理部
52 記憶手段
53,65 統計処理手段
61 パーソナルコンピュータ(端末装置)
62 表示部
63 入力部
F1,F2 圃場
S 衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫機で圃場の農作物を収穫して、該農作物および前記圃場に係る情報を別に備える管理部で管理し、前記収穫機と前記管理部との間で双方向に情報を送受信する農業情報管理システムであって、
前記収穫機に、
圃場情報を発呼する発呼手段と、
該発呼手段にて発呼された圃場情報から収穫する圃場の圃場情報を選択する選択手段と、
前記選択された圃場における収穫の開始および終了を確定情報として発行する確定手段と、
前記選択された圃場にて収穫した農作物の生産情報を計測する計測手段とを備え、
前記選択手段にて選択された圃場情報および前記計測手段にて計測された生産情報ならびに前記確定手段にて発行された確定情報を前記管理部に送る一方、
前記管理部に、
前記収穫機より送られてきた前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を関連付けて格納する記憶手段を備え、
該記憶手段にはさらに複数の圃場の圃場情報を予め格納し、前記発呼手段にて発呼された際に、前記記憶手段に格納された前記複数の圃場情報が前記収穫機に送られることを特徴とする、農業情報管理システム。
【請求項2】
前記収穫機に前記発呼手段にて発呼された前記複数の圃場情報を表示する表示手段を備え、該表示手段に表示された複数の圃場情報から、当該収穫を行う圃場の圃場情報を前記選択手段にて選択することを特徴とする、請求項1に記載の農業情報管理システム。
【請求項3】
前記収穫機に情報保持手段を備え、前記圃場の農作物を収穫するにあたり前記記憶手段から送られてきた前記複数の圃場情報を前記情報保持手段に保持することを特徴とする、請求項1に記載の農業情報管理システム。
【請求項4】
前記管理部が生産者ごとに圃場に係る前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を関連付けて管理するとともに、
前記生産者が前記管理部と双方向に情報を送受信可能な端末装置を備え、
前記生産者の要求に応じて前記端末装置の表示部に前記圃場に係る前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を表示することを特徴とする、請求項1に記載の農業情報管理システム。
【請求項5】
前記収穫機に印刷手段を備え、前記選択手段にて選択された圃場情報および前記計測手段にて計測された生産情報ならびに前記確定手段にて発行された確定情報を前記印刷手段にて印刷するとともに、前記表示手段に表示することを特徴とする、請求項2に記載の農業情報管理システム。
【請求項6】
前記管理部に統計処理手段を備え、該統計処理手段にて前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を統計処理するとともに、
前記端末装置に入力部を備え、該入力部を介して前記統計処理手段に前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を統計処理するよう要求することを特徴とする、請求項5に記載の農業情報管理システム。
【請求項7】
前記端末装置に入力部および統計処理手段を備え、
前記入力部にて前記生産者の要求を入力して前記管理部より前記端末装置に前記圃場に係る前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を送信し、該圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を前記統計処理手段にて統計処理することを特徴とする、請求項5に記載の農業情報管理システム。
【請求項8】
前記端末装置は、パスワードを入力することによって前記圃場情報および前記生産情報ならびに前記確定情報を前記表示部に表示することを特徴とする、請求項5ないし7のいずれかに記載の農業情報管理システム。
【請求項9】
前記双方向による情報の送受信が衛星を介して行われることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の農業情報管理システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−81480(P2006−81480A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270690(P2004−270690)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】