説明

農業機械用の制御装置

【課題】スイッチやセンサを追加しなくても、操作具やセンサに不具合が生じたとき、対応するアクチュエータを動作させることができるようにする。
【解決手段】制御装置31は、通常、操作具の操作信号やセンサの検出信号に応じて、対応するアクチュエータを動作させるように構成されるが、農作業に関与する操作具やセンサに不具合が生じたとき、農作業に関与しない方向指示器スイッチ26L、26Rの操作を検出すると共に、該方向指示器スイッチ26L、26Rの操作に応じて前記不具合が生じた操作具やセンサに対応するアクチュエータを動作させる制御モード(非常モード)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの農業機械に設けられる制御装置に関し、特に、操作具の操作信号やセンサの検出信号に応じて、対応するアクチュエータを動作させる農業機械用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイコンなどからなる制御装置を備えた農業機械が知られている。この種の制御装置は、操作具の操作信号やセンサの検出信号に応じて、対応するアクチュエータを動作させるように構成されており、例えば、茎稈を刈り取る前処理部が昇降自在に連結されたコンバイン用の制御装置は、前処理昇降レバーの操作を検出する前処理昇降レバーポテンショや前処理昇降レバースイッチの検出信号に応じて、前処理上昇バルブや前処理下降バルブを開閉動作させるようになっている。
【0003】
このような農業機械では、農作業に関与する操作具やセンサに不具合が生じた場合、対応するアクチュエータが動作不能となり、農作業の続行が困難になるという問題がある。例えば、コンバインでは、前処理昇降レバーポテンショや前処理昇降レバースイッチが故障したり、前処理昇降レバーポテンショや前処理昇降レバースイッチに関わる配線に短絡や断線が生じた場合に、前処理部が昇降操作不能となり、刈取作業の続行が困難になる。
【0004】
そこで、前処理昇降レバーポテンショや前処理昇降レバースイッチが故障したり、前処理昇降レバーポテンショや前処理昇降レバースイッチに関わる配線に短絡や断線が生じた場合でも、前処理部の昇降操作を可能にする代替手段を備えるコンバインが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】実公平7−26909号公報
【特許文献2】特許第3562974号公報
【特許文献3】特許第3669894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に示される代替手段を実現するには、いずれもスイッチなどを追加する必要があるため、部品点数の増加により製造コストが上昇するという問題がある。つまり、特許文献1では、前処理昇降レバーポテンショ(31)とは別に、切換スイッチ(70)を設ける必要があり、また、特許文献2では、前処理昇降レバーポテンショ(61)とは別に、検出スイッチ(S3、S4)を設ける必要があり、さらに、特許文献3では、前処理昇降レバーポテンショ(VR)とは別に、自動昇降スイッチ(SW1、SW2)を設ける必要がある。尚、括弧書きした上記の符号は、各特許文献に記載されている符号である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、操作具の操作信号及び/又はセンサの検出信号に応じて、対応するアクチュエータを動作させる農業機械用の制御装置であって、前記制御装置は、農作業に関与する操作具及び/又はセンサに不具合が生じたとき、農作業に関与しない方向指示器スイッチの操作を検出すると共に、該方向指示器スイッチの操作に応じて前記不具合が生じた操作具及び/又はセンサに対応するアクチュエータを動作させる制御モードを備えることを特徴とする。このようにすると、操作具やセンサに不具合が生じたとき、方向指示器スイッチを代替手段として利用し、その操作に応じて対応するアクチュエータを動作させることができるので、スイッチやセンサの追加を不要にしてコストダウンが図れる。また、不具合が生じた操作具やセンサの代替手段として方向指示器スイッチを利用した場合、方向指示器スイッチとして機能が損なわれることになるが、方向指示器は、主に路上走行時に使用され、農作業には直接関与しないため、農作業中に代替手段として利用する限り、実質的に支障はない。
また、茎稈を刈り取る前処理部が昇降自在に連結されたコンバインに設けられ、農作業に関与する前処理昇降操作具又はその操作を検出するセンサに不具合が生じたとき、農作業に関与しない方向指示器スイッチの操作を検出すると共に、該方向指示器スイッチの操作に応じて前処理昇降用アクチュエータを動作させる制御モードを備えることを特徴とする。このようにすると、前処理昇降操作具又はその操作を検出するセンサに不具合が生じたとき、方向指示器スイッチを代替手段として利用し、その操作に応じて前処理昇降用アクチュエータを動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[第一実施形態]
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5と、オペレータが乗り込む運転操作部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成されている。
【0008】
前処理部2は、茎稈を分草するデバイダ8と、茎稈を引き起す引き起し装置9と、茎稈の株元を切断する刈刃装置(図示せず)と、刈り取った茎稈を脱穀フィードチェン(図示せず)の始端部まで搬送する扱深さ搬送装置(図示せず)とを備えて構成されている。前処理部2全体は、走行機体の前端部に昇降自在に連結されると共に、走行機体と前処理部2との間に介設される前処理昇降シリンダ(図示せず)の油圧伸縮動作に応じて昇降されるようになっている。
【0009】
運転操作部6の下方には、エンジン(図示せず)を内装するエンジンルーム(図示せず)が形成されており、このエンジンルームには、さらに、エンジン冷却水が循環するラジエータ(図示せず)や、エンジンカバー10を介して冷却風を吸入するエンジンファン(図示せず)も設けられている。本実施形態のエンジンファンは、回転方向が正逆切換え可能となっており、例えば、刈り取り作業中にエンジンファンを定期的に逆転させることにより、藁屑などによるエンジンカバー10の目詰まりを防止できるようになっている。
【0010】
エンジンの動力は、走行系、前処理系及び脱穀系に分岐される。走行系の動力は、走行HST(図示せず)により無段変速されて、走行部7に伝動される。また、前処理系の動力は、搬送HST(図示せず)により無段変速されて、脱穀フィードチェンに伝動されると共に、刈取クラッチ(図示せず)を介して前処理部2に伝動される。さらに、脱穀系の動力は、脱穀クラッチ(図示せず)を介して脱穀部3に伝動される。
【0011】
図3に示すように、運転操作部6には、オペレータが着座する運転座席11が設けられると共に、その周囲には、始動キースイッチ12、マルチステアリングレバー13、主変速レバー14、副変速レバー15、刈取・脱穀クラッチ操作レバー16、刈高自動スイッチ17、強制掻込みスイッチ18、倒伏刈りスイッチ19、扱深さ手動操作スイッチ20、21、コンビネーションスイッチ22などの操作具や、刈高ポジコンランプ27、倒伏刈りランプ28、水温ランプ29、負荷モニタランプ30などの表示器が設けられている。
【0012】
始動キースイッチ12は、エンジン始動スイッチ及び電源スイッチを兼ねる操作具であり、キーの挿入によりこれらの操作が許容される。
マルチステアリングレバー13は、前処理昇降操作具及び機体操向具を兼ねる操作具であり、前処理部2の昇降操作は、前後方向のレバー操作に基づいて行われる。
主変速レバー14は、走行HSTを操作する走行主変速操作具であり、1本のレバー操作により前進領域及び後進領域の無段変速操作が可能である。
副変速レバー15は、ミッションケース(図示せず)に組み込まれる走行副変速機構の変速操作具であり、例えば3段階の走行副変速操作が可能である。
刈取・脱穀クラッチ操作レバー16は、刈取クラッチ操作具及び脱穀クラッチ操作具を兼ねる操作具であり、両クラッチが切りとなるポジションと、脱穀クラッチのみが入りとなるポジションと、両クラッチが入りとなるポジションとを有している。
【0013】
刈高自動スイッチ17は、前処理高さを設定高さに維持する刈高自動制御の入切操作具である。
強制掻込みスイッチ18は、走行停止時に前処理部2及び脱穀フィードチェンを動作させる操作具であり、主変速レバー14の握り部に設けられている。
倒伏刈りスイッチ19は、倒伏茎稈を刈り取る際に前処理部2の動作速度を増速(倒伏刈りモード)させる操作具であり、主変速レバー14の握り部に設けられている。
扱深さ手動操作スイッチ20、21は、扱深さ搬送装置を手動操作(左スイッチ20で浅側、右スイッチ21で深側)するための操作具であり、主変速レバー14の握り部に設けられている。
図4に示すように、コンビネーションスイッチ22は、計器の照明や前照灯を点灯・消灯操作するライトスイッチ23と、ホーンを吹鳴させるホーンスイッチ24と、左右の方向指示器25L、25Rを点滅・消灯操作する方向指示器スイッチ26(L、R)とが組み込まれた複合操作具である。
【0014】
刈高ポジコンランプ27は、刈高自動制御の入切を表示する表示器である。
倒伏刈りランプ28は、倒伏刈りモードの入切を表示する表示器である。
水温ランプ29は、エンジン冷却水の温度異常を表示する表示器である。
負荷モニタランプ30は、エンジンの過負荷を表示する表示器である。
【0015】
図5に示すように、コンバイン1には、マイコンなどを用いて構成される制御装置31が設けられている。制御装置31の入力側には、前述した方向指示器スイッチ26L、26Rや刈高自動スイッチ17に加え、マルチステアリングレバー13の前処理昇降操作を検出する前処理昇降レバーポテンショ(又は昇降レバースイッチ)32が接続されており、また、出力側には、前述した刈高ポジコンランプ27に加え、前処理昇降シリンダを昇降動作させる前処理上昇バルブ33や前処理下降バルブ34が接続されている。
【0016】
制御装置31は、通常、操作具の操作信号やセンサの検出信号に応じて、対応するアクチュエータを動作させるように構成されるが、本発明の制御装置31は、農作業に関与する操作具やセンサに不具合が生じたとき、農作業に関与しない方向指示器スイッチ26L、26Rの操作を検出すると共に、該方向指示器スイッチ26L、26Rの操作に応じて前記不具合が生じた操作具やセンサに対応するアクチュエータを動作させる制御モード(非常モード)を備えている。このようにすると、操作具やセンサに不具合が生じたとき、方向指示器スイッチ26L、26Rを代替手段として利用し、その操作に応じて対応するアクチュエータを動作させることができるので、スイッチやセンサの追加を不要にしてコストダウンが図れる。また、不具合が生じた操作具やセンサの代替手段として方向指示器スイッチ26L、26Rを利用した場合、方向指示器スイッチ26L、26Rとして機能が損なわれることになるが、方向指示器25L、25Rは、主に路上走行時に使用され、農作業には直接関与しないため、農作業中に代替手段として利用する限り、実質的に支障はない。
【0017】
例えば、本実施形態の制御装置31は、刈取作業に関与するマルチステアリングレバー13やその前処理昇降操作を検出する前処理昇降レバーポテンショ32に不具合が生じたとき、所定のモード切換操作に基づいて制御モードを非常モードに切換えると、刈取作業に関与しない方向指示器スイッチ26L、26Rの操作を検出し、該方向指示器スイッチ26L、26Rの操作に応じて前処理上昇バルブ33や前処理下降バルブ34を動作させるようになる。このようにすると、前処理昇降操作具又はその操作を検出するセンサに不具合が生じたときでも、方向指示器スイッチ26L、26Rを代替手段として利用し、その操作に応じて前処理部2を昇降させることができる。以下、上記のような機能を実現する制御装置31の具体的な制御手順(前処理昇降制御メイン及び非常モード制御)について、図6及び図7を参照して説明する。
【0018】
図6に示すように、前処理昇降制御メインでは、まず、サブルーチンである非常モード突入チェックを実行する(S11)。非常モード突入チェックは、非常モードへの突入条件が成立したか否かを判断し、突入条件が成立したとき、非常モード突入済フラグに「1」をセットするモード切換処理であり、例えば、始動キースイッチ12によるメイン電源ON時(制御装置31の起動時)に、刈高自動スイッチ17がONであった場合に、非常モード突入済フラグに「1」をセットする。
【0019】
非常モード突入チェックの実行後、非常モード突入済フラグを参照し(S12)、非常モード突入済フラグのセット値が「0」の場合は、前処理昇降レバーポテンショ32のエラーチェックを行う(S13)。このチェック結果が正常である場合は、前処理昇降レバーポテンショ32の検出値に応じて前処理部2を昇降動作させる通常の前処理昇降制御を実行するが(S14)、エラーチェックでエラーが発生した場合は、通常の前処理昇降制御を実行することなく、前処理昇降動作を停止させる(S15)。このような状態では、マルチステアリングレバー13を操作しても前処理部2が昇降しないため、オペレータは異常状態を認識し、刈取作業を中断する。ここで、オペレータは、始動キースイッチ12を一旦OFFにした後、刈高自動スイッチ17をON操作しながら、始動キースイッチ12をONする。これにより、非常モード突入済フラグに「1」がセットされ、非常モード制御が実行される(S16)。
【0020】
図7に示すように、非常モード制御では、まず、刈高ポジコンランプ27を点滅させ(S21)、非常モードに突入したことをオペレータに報知する。次に、方向指示器スイッチ26L、26Rの操作(ON/OFF)を判断し(S22、S23)、いずれもOFFの場合は、前処理昇降停止状態を維持するが(S24)、方向指示器スイッチ26RがONの場合は、前処理下降出力にONをセットし(S25)、方向指示器スイッチ26LがONの場合は、前処理上昇出力にONをセットする(S26)。これにより、前処理昇降レバーポテンショ32に不具合が生じても、方向指示器スイッチ26L、26Rによる前処理昇降操作が可能になる。
【0021】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通の構成については、第一実施形態と同じ符号を付け、第一実施形態の説明を援用する。
【0022】
図8に示すように、第二実施形態において、制御装置31Bの入力側には、前述した方向指示器スイッチ26L、26Rや強制掻込みスイッチ18に加え、コンバイン1の車速を検出する車速センサ35、搬送HSTの出力回転を検出する搬送回転センサ36、主変速レバー14の操作を検出する走行主変速レバーポテンショ37などが接続されており、また、出力側には、前述した倒伏刈りランプ28に加え、搬送HSTを制御する搬送HST制御モータ38が接続されている。
【0023】
第二実施形態の制御装置31Bは、前処理部2や脱穀フィードチェンの茎稈搬送速度を車速に連動させるべく、車速センサ35、搬送回転センサ36及び走行主変速レバーポテンショ37の検出値に応じて搬送HST制御モータ38を動作させる搬送HST制御(後述する通常の搬送制御に含まれる制御処理)を実行するが、車速センサ35、搬送回転センサ36又は走行主変速レバーポテンショ37に不具合が生じたとき、所定のモード切換操作に基づいて制御モードを非常モードに切換えると、刈取作業に関与しない方向指示器スイッチ26L、26Rの操作を検出し、該方向指示器スイッチ26L、26Rの操作に応じて搬送HST制御モータ38を動作させるようになる。このようにすると、車速センサ35、搬送回転センサ36又は走行主変速レバーポテンショ37に不具合が生じても、方向指示器スイッチ26L、26Rを代替手段として利用し、その操作に応じて搬送HSTを変速動作させることができるので、刈取作業を続行することが可能になる。以下、上記のような機能を実現する制御装置31Bの具体的な制御手順(搬送制御メイン及び非常モード制御)について、図9及び図10を参照して説明する。
【0024】
図9に示すように、搬送制御メインでは、まず、サブルーチンである非常モード突入チェックを実行する(S31)。非常モード突入チェックは、非常モードへの突入条件が成立したか否かを判断し、突入条件が成立したとき、非常モード突入済フラグに「1」をセットするモード切換処理であり、例えば、始動キースイッチ12によるメイン電源ON時(制御装置31Bの起動時)に、強制掻込み18がONであった場合に、非常モード突入済フラグに「1」をセットする。
【0025】
非常モード突入チェックの実行後、非常モード突入済フラグを参照し(S32)、非常モード突入済フラグのセット値が「0」の場合は、車速センサ35、搬送回転センサ36及び走行主変速レバーポテンショ37の検出値に応じて搬送HST制御モータ38を動作させる通常の搬送制御を実行するが(S33)、非常モード突入済フラグのセット値が「1」の場合は、通常の搬送制御を実行することなく、非常モード制御を実行する(S34)。
【0026】
図10に示すように、非常モード制御では、まず、倒伏刈りランプ28を点滅させ(S41)、非常モードに突入したことをオペレータに報知する。次に、方向指示器スイッチ26L、26Rの操作(ON/OFF)を判断し(S42、S43)、いずれもOFFの場合は、現在の搬送速度を維持するが(S44)、方向指示器スイッチ26RがONの場合は、搬送増速出力にONをセットし(S45)、方向指示器スイッチ26LがONの場合は、搬送減速出力にONをセットする(S46)。これにより、車速センサ35、搬送回転センサ36又は走行主変速レバーポテンショ37に不具合が生じ、通常の搬送制御が不能となっても、方向指示器スイッチ26L、26Rによる手動の搬送HST制御を行うことにより、刈取作業の続行が可能になる。
【0027】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、図11〜図13を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付け、前記実施形態の説明を援用する。
【0028】
図11に示すように、第三実施形態において、制御装置31Cの入力側には、前述した方向指示器スイッチ26L、26Rや扱深さ手動操作スイッチ21が接続されており、また、出力側には、前述した水温ランプ29に加え、エンジンファンの回転方向を制御するエンジンファン回転方向制御モータ39が接続されている。
【0029】
第三実施形態の制御装置31Cは、藁屑などによるエンジンカバー10の目詰まりを防止するために、刈り取り作業中に、所定のタイミングでエンジンファンを自動的に逆転させる逆転ファン制御機能(後述する通常の逆転ファン制御)を備えているが、逆転ファン制御に関与する操作具やセンサに不具合が生じた場合や、整備などに際してエンジンファン回転方向制御モータ39を動作させる場合、バッテリを直結する必要があった。本実施形態の制御装置31Cは、このような状況が生じたとき、所定のモード切換操作に基づいて制御モードを手動モードに切換えると、刈取作業に関与しない方向指示器スイッチ26L、26Rの操作を検出し、該方向指示器スイッチ26L、26Rの操作に応じてエンジンファン回転方向制御モータ39を動作させる。以下、上記のような機能を実現する制御装置31Cの具体的な制御手順(逆転ファン制御及び手動モード制御)について、図12及び図13を参照して説明する。
【0030】
図12に示すように、逆転ファン制御では、まず、サブルーチンである手動モード突入チェックを実行する(S51)。手動モード突入チェックは、手動モードへの突入条件が成立したか否かを判断し、突入条件が成立したとき、手動モード突入済フラグに「1」をセットするモード切換処理であり、例えば、始動キースイッチ12によるメイン電源ON時(制御装置31Cの起動時)に、扱深さ手動操作スイッチ21がONであった場合に、手動モード突入済フラグに「1」をセットする。手動モード突入チェックの実行後、手動モード突入済フラグを参照し(S52)、手動モード突入済フラグのセット値が「0」の場合は、通常の逆転ファン制御を実行するが(S53)、手動モード突入済フラグのセット値が「1」の場合は、通常の逆転ファン制御を実行することなく、手動モード制御を実行する(S54)。
【0031】
図13に示すように、手動モード制御では、まず、水温ランプ29を点滅させ(S61)、手動モードに突入したことをオペレータに報知する。次に、方向指示器スイッチ26L、26Rの操作(ON/OFF)を判断し(S62、S63)、いずれもOFFの場合は、エンジンファン回転方向制御モータ39を停止させるが(S64)、方向指示器スイッチ26RがONの場合は、エンジンファン回転方向制御モータ39をファン逆転方向に駆動し(S65)、方向指示器スイッチ26LがONの場合は、エンジンファン回転方向制御モータ39をファン正転方向に駆動させる(S66)。
【0032】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について、図14〜図16を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付け、前記実施形態の説明を援用する。
【0033】
図14に示すように、第四実施形態において、制御装置31Dの入力側には、前述した方向指示器スイッチ26L、26Rや扱深さ手動スイッチ20に加え、刈取・脱穀クラッチ操作レバー16の位置を検出するクラッチレバー位置検出センサ40などが接続されており、また、出力側には、前述した負荷モニタランプ30に加え、刈取・脱穀クラッチ制御モータ41が接続されている。
【0034】
第四実施形態の制御装置31Dは、クラッチレバー位置検出センサ40の検出に応じて刈取・脱穀クラッチ制御モータ41を動作させるが、クラッチレバー位置検出センサ40に不具合が生じたときや、整備などに際して刈取・脱穀クラッチ制御モータ41を手動操作する必要がある場合に、所定のモード切換操作に基づいて制御モードを手動モードに切換えると、刈取作業に関与しない方向指示器スイッチ26L、26Rの操作を検出し、該方向指示器スイッチ26L、26Rの操作に応じて刈取・脱穀クラッチ制御モータ41を動作させようになる。このようにすると、クラッチレバー位置検出センサ40に不具合が生じても、方向指示器スイッチ26L、26Rを代替手段として利用し、その操作に応じて刈取・脱穀クラッチ制御モータ41を動作させることができるので、刈取作業を続行することが可能になる。また、整備に際しては、バッテリの直結などを行うことなく、刈取・脱穀クラッチ制御モータ41を任意の位置まで動作させることが可能になる。以下、上記のような機能を実現する制御装置31Dの具体的な制御手順(クラッチ制御及び手動モード制御)について、図15及び図16を参照して説明する。
【0035】
図15に示すように、クラッチ制御では、まず、サブルーチンである手動モード突入チェックを実行する(S71)。手動モード突入チェックは、手動モードへの突入条件が成立したか否かを判断し、突入条件が成立したとき、手動モード突入済フラグに「1」をセットするモード切換処理であり、例えば、始動キースイッチ12によるメイン電源ON時(制御装置31Bの起動時)に、手動扱深さスイッチ20がONであった場合に、手動モード突入済フラグに「1」をセットする。
【0036】
手動モード突入チェックの実行後、手動モード突入済フラグを参照し(S72)、手動モード突入済フラグのセット値が「0」の場合は、クラッチレバー位置検出センサ40の検出値に応じて刈取・脱穀クラッチ制御モータ41を動作させる通常のクラッチ制御を実行するが(S73)、手動モード突入済フラグのセット値が「1」の場合は、通常のクラッチ制御を実行することなく、手動モード制御を実行する(S74)。
【0037】
図16に示すように、手動モード制御では、まず、負荷モニタランプ30を点滅させ(S81)、手動モードに突入したことをオペレータに報知する。次に、方向指示器スイッチ26L、26Rの操作(ON/OFF)を判断し(S82、S83)、いずれもOFFの場合は、刈取・脱穀クラッチ制御モータ41を停止させるが(S84)、方向指示器スイッチ26RがONの場合は、刈取・脱穀クラッチ制御モータ41をクラッチ入り側に駆動させ(S85)、方向指示器スイッチ26LがONの場合は、刈取・脱穀クラッチ制御モータ41をクラッチ切り側に駆動させる(S86)。これにより、クラッチレバー位置検出センサ40に不具合が生じても、方向指示器スイッチ26L、26Rを代替手段として利用し、その操作に応じて刈取・脱穀クラッチ制御モータ41を動作させることにより、刈取作業の続行が可能になる。
【0038】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、例えば、方向指示器スイッチを備える農業機械の制御装置であれば、コンバイン以外の農業機械(トラクタ、田植機など)に搭載される制御装置でも実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】コンバインの前方斜視図である。
【図2】コンバインの後方斜視図である。
【図3】運転操作部の平面図である。
【図4】コンビネーションスイッチの平面図である。
【図5】第一実施形態に係る制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図6】第一実施形態に係る前処理昇降制御メインのフローチャートである。
【図7】第一実施形態に係る非常モード制御のフローチャートである。
【図8】第二実施形態に係る制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図9】第二実施形態に係る搬送制御メインのフローチャートである。
【図10】第二実施形態に係る非常モード制御のフローチャートである。
【図11】第三実施形態に係る制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図12】第三実施形態に係る逆転ファン制御のフローチャートである。
【図13】第三実施形態に係る手動モード制御のフローチャートである。
【図14】第四実施形態に係る制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図15】第四実施形態に係るクラッチ制御のフローチャートである。
【図16】第四実施形態に係る手動モード制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 コンバイン
2 前処理部
6 運転操作部
13 マルチステアリングレバー
17 刈高自動スイッチ
22 コンビネーションスイッチ
26 方向指示器スイッチ
31 制御装置
32 前処理昇降レバーポテンショ
33 前処理上昇バルブ
34 前処理下降バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作具の操作信号及び/又はセンサの検出信号に応じて、対応するアクチュエータを動作させる農業機械用の制御装置であって、
前記制御装置は、農作業に関与する操作具及び/又はセンサに不具合が生じたとき、農作業に関与しない方向指示器スイッチの操作を検出すると共に、該方向指示器スイッチの操作に応じて前記不具合が生じた操作具及び/又はセンサに対応するアクチュエータを動作させる制御モードを備えることを特徴とする農業機械用の制御装置。
【請求項2】
茎稈を刈り取る前処理部が昇降自在に連結されたコンバインに設けられ、農作業に関与する前処理昇降操作具又はその操作を検出するセンサに不具合が生じたとき、農作業に関与しない方向指示器スイッチの操作を検出すると共に、該方向指示器スイッチの操作に応じて前処理昇降用アクチュエータを動作させる制御モードを備えることを特徴とする請求項1記載の農業機械用の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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