説明

農業用シートの被覆方法及び被覆装置

【課題】播種や定植がなされた広幅の複数の畝を同時に被覆することができる農業用シートの被覆方法、及び被覆装置を提供する。
【解決手段】農業用シート11を被覆する被覆装置12を作業車両13に装着し、該作業車両13の左右の車輪14L,14R,15L,15Rを播種や定植がなされた畝24の畝溝24aを通過させながら、複数の畝24を前記農業用シート11で被覆するにあたり、当該該敷設装置12を、作業車両13の幅方向中心Cから略半畝分左右方向にオフセットした状態で、前記車輪14L,14R,15L,15Rが跨ぐ畝数よりも多い畝を農業用シート11で同時に被覆すると共に、前記畝溝24aにおいて農業用シート11の左右両袖部11eを埋め込む埋設手段66を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物を霜、雨、雹等から守って生育を促す農業用シートの被覆方法及び被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用シートである帯状フィルムをフィルムロールから引き出し、当該帯状フィルムを鎮圧ロールによって凸状の畝に押圧しながら敷設すると共に、前記畝に敷設した帯状フィルムの左右の畝裾を鎮圧する鎮圧輪と、この鎮圧輪で鎮圧した後の畝裾に土を被せる覆土輪を備えたフィルム張設装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、トラクタに連結した耕耘装置により圃場を耕耘すると同時に土壌消毒機による土壌消毒を行い、更にこの圃場表面全体を隙間なくフィルムで被覆すべく、前記土壌消毒機の後方にフィルム被覆機を連結し、このフィルム被覆機に装着したフィルムロールから帯状フィルムを繰出して、その一方の側縁に土掛けをして固定すると共に、他方の側縁を隣接する既敷設フィルムの土掛けした側縁に重ね、両者の合わせ目を上から粘着テープで接続することによって、圃場表面全体を順次被覆する全面マルチが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公昭60−24129号公報(第1−2頁、図1−図3)
【特許文献2】特開平7−59474号公報(第3−4頁、図1−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1のフィルム張設装置は、播種や定植がなされていない一つの凸状の畝を帯状フィルムによって被覆しようとするものであり、二つ以上の畝を同時に被覆することができないので作業性に問題を有していた。
【0005】
また、特許文献2のように、耕耘と同時に土壌消毒がなされた圃場表面全体を帯状フィルムで順次被覆する全面マルチを、例えば大根、人参等の根菜類、及び春菊、ほうれん草等の葉菜類の播種がなされた畝や、苺、メロン、西瓜等の果菜類の定植がなされた比較的広幅な畝に適用しようとすると、フィルム被覆機を連結したトラクタの車輪と耕耘装置で播種または定植がなされた畝を壊しながら走行することになり、現実的な方法ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、農業用シートを被覆する被覆装置を作業車両に装着し、該作業車両の左右の車輪を播種や定植がなされた畝の畝溝を通過させながら、複数の畝を前記農業用シートで被覆するにあたり、当該被覆装置を、作業車両の幅方向中心から略半畝分左右方向にオフセットした状態で、前記車輪が跨ぐ畝数よりも多い畝を農業用シートで同時に被覆することを第1の特徴としている。
【0007】
また、農業用シートを被覆する被覆装置を作業車両に装着し、該作業車両の左右の車輪を播種や定植がなされた畝の畝溝を通過させながら、複数の畝を前記農業用シートで被覆する農業用シートの被覆装置であって、当該被覆装置を、作業車両の幅方向中心から略半畝分左右方向にオフセットした状態で取付可能に構成すると共に、前記畝溝において農業用シートの左右両袖部を埋め込む埋設手段を設けたことを第2の特徴としている。
【0008】
そして、オフセット状態における被覆装置の左右バランスを保持するバランス保持手段を設けたことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、農業用シートを敷設する被覆装置を作業車両に装着し、該作業車両の左右の車輪を播種や定植がなされた畝の畝溝を通過させながら、複数の畝を前記農業用シートで被覆するにあたり、当該被覆装置を、作業車両の幅方向中心から略半畝分左右方向にオフセットした状態で、前記車輪が跨ぐ畝数よりも多い畝を農業用シートで同時に被覆することによって、播種や定植がなされた畝を壊すことなく、前記農業用シートにより二つ以上の畝を同時に被覆することができるようになり作業性が大きく向上する。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、農業用シートを被覆する被覆装置を作業車両に装着し、該作業車両の左右の車輪を播種や定植がなされた畝の畝溝を通過させながら、複数の畝を前記農業用シートで被覆する農業用シートの被覆装置であって、当該被覆装置を、作業車両の幅方向中心から略半畝分左右方向にオフセットした状態で取付可能に構成すると共に、前記畝溝において農業用シートの左右両袖部を埋め込む埋設手段を設けたことによって、播種や定植がなされた畝を壊すことなく、二つ以上の畝を農業用シートで同時に被覆することができるようになり作業性が大きく向上すると共に、畝溝において前記埋設手段を介して農業用シートの左右両袖部を土中に埋め込むことができるので、風によって農業用シートの左右両袖部が剥がれ難くなる。
【0011】
そして、請求項3の発明によれば、オフセット状態における被覆装置の左右バランスを保持するバランス保持手段を設けたことによって、作業車両に対して一側に偏移させたオフセット位置における被覆装置の偏移側への過度なローリングを抑制することができるので、農業用シートの被覆作業が安定して行なえるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、農業用シート11の被覆装置12を作業車両13の後部に装着した状態を示す側面図と平面図である。
【0013】
この作業車両13は、一般的な乗用型田植機の本機部を利用したものであって、該乗用型田植機は、その車輪である左右の前輪14L,14R、及び後輪15L,15Rに支持される走行機体16を有し、この走行機体16の前部にボンネット17で覆われるエンジン18を搭載すると共に、ボンネット17の後方には、ステアリングホィール19、主変速レバー21、座席22等を備える操縦部23が設けてあり、当該作業車両13は、播種や定植がなされた平畝24を跨いで、その畝溝24aに左右の車輪(前後輪)14L,14R,15L,15Rを通過させながら移動することができるようになっている。
【0014】
そして、走行機体16の後部には昇降リンク機構25が設けてあり、この昇降リンク機構25の終端部に装着したヒッチホルダ26を介して、農業用シート11の被覆装置12を着脱可能に取り付けている。尚、昇降リンク機構25は油圧シリンダ27の伸縮動作により上下に昇降連動するが、これらの基本的な構成は何れも従来通りであり詳細な説明を省略する。
【0015】
次に、農業用シート11の被覆装置12について説明する。この被覆装置12は、ヒッチホルダ26にローリング可能に連結したサポートブロック28を介して支持されており、当該被覆装置12全体としては、作業車両13の幅方向(機体)中心Cに位置するヒッチホルダ26の筒軸26aにローリング可能に支承されている。
【0016】
そして、サポートブロック28の後部には、被覆装置12を構成する角パイプ製の横フレーム29を作業車両13の幅方向(左右方向)にスライド可能に支持している。即ち、横フレーム29は、図3及び図6に示すように、サポートブロック28の左右両端部において、上下一対のローラ31,31により挟持した状態でスライド可能に支持してあり、それによって当該被覆装置12を、図2に示す如く作業車両13の幅方向中心Cに位置する非作業姿勢Aから、図5及び図6に示すように、左右一側へオフセットさせた詳細は後述する被覆作業姿勢Bまで容易に変更することができるようになっている。
【0017】
また、横フレーム29の左右両端部には、後方に延出する角パイプ製の縦フレーム32,32を螺設している。そして、両縦フレーム32,32の略中間部の上面には、ロール状に巻き上げられた農業用シート11を支持する丸パイプ製の芯材33を軸支するためのホルダ34を立設している。
【0018】
また、図2〜図4に示すように、作業車両(乗用型田植機)13のミッションケース35側の(植付)PTO軸36から出力される動力を、ユニバーサルジョイント37を介して入力ケース38に入力し、この入力ケース38内のベベルギヤを介して左右の出力軸39L,39Rに分岐伝動すると共に、両出力軸39L,39Rの軸端側に設けた左右のチェンケース41L,41Rに内装するチェン伝動機構を介して、詳細は後述する覆土装置42に備える土解し手段43を回転駆動させることができるように構成している。
【0019】
更に詳しくは、入力ケース38は、横フレーム29から垂下させたアーム46に取付けてある。また、左右のチェンケース41L,41Rは、横フレーム29の下面に固設した一対の支持部材47,47から垂下させたアーム48,48に共締め状態で螺設してある。そして、両チェンケース41L,41R下部の出力軸51は、被覆装置12の内側方向に突出させてあり、この出力軸51に土解し手段43としての複数の土解し爪52を螺設している。
【0020】
尚、これらの土解し爪52は、側面視で90°位相となるように出力軸51の軸方向に所定の間隔を隔てて配置すると共に、土解し爪52によって解した土が飛散することを防止するための上部カバー53を、横フレーム29の下面に固設した両支持部材47,47のうち被覆装置12の内側方向にある支持部材47と、この支持部材47よりも更に被覆装置12の内側方向で横フレーム29の下面に固設した支持部材54とに螺設している。
【0021】
また、左右のチェンケース41L,41R下部のフランジ部には、土解し手段43の土解し爪52による土解し深さを規制する橇体55を共締め状態で螺設している。更に、上述した支持部材54に上部カバー53を共締めして後方に延出する支持プレート56を設け、この支持プレート56の下端と、横フレーム29の下面に固設した一対の支持部材47,47のうち、被覆装置12の内側方向にある支持部材47から垂下させたアーム48の下端とを連結プレート57を介して連結すると共に、この連結プレート57の下面に固設したジョイント(プレート)57aに溝形成手段であるフラットプレート61を装着している。尚、このフラットプレート61は、土解し手段43の直後に設けてあり、土解し手段43の土解し爪52により解されて柔らかくなった土壌に、詳細は後述する農業用シート11の左右両袖部11eを埋め込むための幅狭な埋設溝Sを形成するものである。
【0022】
そして、横フレーム29の左右両端部に螺設した縦フレーム32,32の略中間部の下面には、農業用シート11を被覆する際に、当該農業用シート11に適度の張力を付与してシワの発生を防止するテンションローラ62用のホルダ63を垂設している。更に、溝形成手段であるフラットプレート61の後方、即ちホルダ63後部の内側に突設したピン64には、アームプレート65を介して上下揺動する鎮圧輪66を自由回転可能に支承してあり、この鎮圧輪66は、農業用シート11の左右両袖部11eを埋設溝S(土中)に埋め込むための埋設手段として作用する。
【0023】
また、上述した鎮圧輪66の後方には、この鎮圧輪66により農業用シート11の左右両袖部11eを埋設溝Sに埋め込んだ後、当該埋設溝Sに土をかけて塞ぐ土寄せ手段67を設けている。更に詳しくは、図4及び図7に示すように、左右の縦フレーム32,32の終端部において敷設装置12の内側方向に横パイプ68を固設し、この横パイプ68の先端に平面視でコの字状の案内体69を垂設すると共に、この案内体69の内側に高さ調節可能に嵌装する平面視でコの字状支持部材71に土寄せ手段67を螺設している。
【0024】
そして、この土寄せ手段67は、平面視で略三角形の先端形状を有する底板72の前側傾斜辺72aを上方に向けて曲げ形成することにより、埋設溝S側に土を誘導するための傾斜案内面Gを形成すると共に、前記前側傾斜辺72aに続く後側の辺72bを鎮圧輪66と平行に上方に向けて曲げ形成している。尚、底板72の後側の辺72bを、背面視で鎮圧輪66と重合させることにより、効率よく埋設溝Sに土をかけて塞ぐことができる。尚、前記土寄せ手段67と上述した橇体55は、作業圃場において被覆装置12の不要な沈下を防ぐ支持部材としての作用も有する。
【0025】
ところで、本発明の農業用シートの被覆方法及び被覆装置に採用される農業用シート11は、例えば大根、人参等の根菜類、及び春菊、ほうれん草等の葉菜類の播種がなされた畝や、苺、メロン、西瓜等の果菜類の定植がなされた比較的広幅な畝に適用されるものであって、前記農作を霜、雨、雹等から守って発芽の均一化や生育を促すべく、適度な通気性、通水性、保温性、及び防風性等を備え、且つ軽量で耐久性に優れた不織布製のべた掛け用農業被覆材であり、通常は被覆した農業用シート11の作用効果が達せられると、この農業用シート11を巻き取って繰り返し使用(再利用)されている。
【0026】
以上説明した農業用シート11の被覆装置12は、図2に示すように、作業車両13の幅方向中心C位置で上昇させた非作業姿勢Aで通常の路上走行等がなされる。一方、図5及び図6に示す被覆作業姿勢Bにある被覆装置12は、例えば、左右の車輪14L,14R,15L,15Rを人参の播種がなされた平畝24の畝溝24aを通過させながら、前記車輪14L,14R,15L,15Rが跨ぐ畝数よりも多い2つの平畝24を農業用シート11により同時に敷設しようとするものであって、この時、平畝24の幅W1=1300mm、畝溝24aの幅W2=200mmであることから、当該農業用シート11の全幅は、3200mmのものを使用している。また、左右の車輪14L,14R,15L,15Rの輪距は、それぞれ1450mmとしている。
【0027】
即ち、被覆装置12を、作業車両13の幅方向中心Cに位置する非作業姿勢Aの状態から、略半畝分左右方向にオフセットした被覆作業姿勢Bの状態に変更することによって、このオフセット側(左右一側)の二つ以上の平畝24を、農業用シート11により同時に被覆することができるので作業性が大きく向上するといった利点が得られる。
【0028】
尚、被覆装置12全体は、作業車両13の幅方向(機体)中心Cに位置するヒッチホルダ26の筒軸26aにローリング可能に支承されており、上述の如く被覆装置12を作業車両13の幅方向中心Cに位置する非作業姿勢Aから、略半畝分左右方向にオフセットした被覆作業姿勢Bに変更した場合は、このオフセット状態(被覆作業姿勢B)における被覆装置12の偏移側への過度なローリングを抑制する必要があることから、当該オフセット位置における被覆装置12の左右バランスを保持するためのバランス保持手段Kを、図3及び図6に示すように設けている。
【0029】
このバランス保持手段Kは、ヒッチホルダ26から被覆装置12の偏移方向側へ延出した支持アーム76の先端に回動操作可能に支承したレバー77と、このレバー77と被覆装置12を構成する横フレーム29との間に張設した引張スプリング78からなり、該引張スプリング78を介してオフセット状態における被覆装置12の偏移側へのローリングを抑制し、農業用シート11の被覆作業を安定して行なえるようにすると共に、被覆装置12を非作業姿勢Aから被覆作業姿勢Bにオフセットする際や、逆に被覆作業姿勢Bから非作業姿勢Aに戻す際は、レバー77の回動操作による引張スプリング78の支点越えにより、当該引張スプリング78の吊持力を解除して被覆装置12の姿勢変更が無理なく行えるようにしている。尚、上述したバランス保持手段Kは、図6に示すように、被覆装置
12を構成する横フレーム29の非偏移側の端部に、バランスウェイトWを装着することによって構成することもできる。
【0030】
そして、ロール状に巻き上げられた農業用シート11が2つの平畝24上に被覆される直前に、この2つの平畝24の外側に隣接する左右両側の畝溝24a,24aの内側部分の土壌が、上述した土解し手段43である土解し爪52により解されて柔らかくなっており、次いで土解し手段43の直後に設けた溝形成手段であるフラットプレート61により、図6〜図8に示すような農業用シート11の左右両袖部11eを埋め込むための幅狭な埋設溝Sが形成される。更に詳しくは、フラットプレート61は、被覆装置12の外側方向に下がり傾斜で装着してあり、それによって前記両畝溝24a,24a表面の外側方向、即ち被覆装置12の外側方向に土を排除しながら埋設溝Sが形成されるようになっている。
【0031】
更に、農業用シート11が2つの平畝24上に被覆されると、その左右両袖部11eは、埋設手段である鎮圧輪66によって図8に示すように埋設溝S(土中)に埋め込まれ、しかる後に上述したフラットプレート61により排除された土量に相当する土Dを、土寄せ手段67を介して効率よく当該埋設溝Sにかけて塞ぐことができるようになっている。そして、前記鎮圧輪66の回転軸81は、図4及び図7に示すように、アームプレート65の左右両側に介装した圧縮スプリング82,82を介して位置決め支持してあり、それによって作業車両13の蛇行走行による鎮圧輪66の追従蛇行を緩慢にして、確実に農業用シート11の左右両袖部11eを埋設溝Sに埋め込むことができるようにしている。
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、農業用シート11を被覆する被覆装置12を作業車両13に装着し、この作業車両13の左右の車輪14L,14R,15L,15Rを播種や定植がなされた平畝24の畝溝24aを通過させながら、複数の平畝24を前記農業用シート11で被覆するにあたり、当該被覆装置12を、作業車両13の幅方向中心Cから略半畝分左右方向にオフセットした状態で取付可能に構成し、このオフセット状態で
前記車輪14L,14R,15L,15Rが跨ぐ畝数よりも多い平畝24を農業用シート11で同時に被覆すると共に、前記畝溝24aにおいて農業用シート11の左右両袖部11eを埋め込む埋設手段としての鎮圧輪66を設けたことによって、播種や定植がなされた平畝24を壊すことなく、二つ以上の平畝24を農業用シート11で同時に被覆することができるようになり作業性が大きく向上すると共に、畝溝24aにおいて前記埋設手段66を介して農業用シート11の左右両袖部11eを土中に埋め込むことができるので、風によって農業用シート11の左右両袖部11eが剥がれ難くなる。また、被覆装置12を装着するための専用の作業機を用意しなくても、乗用型田植機等の本機部に被覆装置12を装着することができ、またこの被覆装置12をトラック等の荷台に搭載して容易に運搬することができるのでコスト的に優れている。
【0033】
更に詳しくは、畝溝24aにおいて農業用シート11の左右両袖部11eを確実に覆土すべく、畝溝24a内の土壌を解す土解し手段43と、該土解し手段43の直後に設けた幅狭な埋設溝Sを形成する溝形成手段61と、該溝形成手段61の後方に設けた農業用シート11の左右両袖部11eを埋め込む埋設手段66と、該埋設手段66の後方に設けた土寄せ手段67からなる覆土装置42を被覆装置12に設けているが、農業用シート11自体が土中の微生物によって生分解され易い素材からなる場合は、その左右両袖部11eに必要以上の覆土を行うと生分解が進行してシート幅が狭くなり、当該農業用シート11を巻き取って繰り返し使用(再利用)することができなくなることから、その場合は、前記土寄せ手段67が作用しない高さ位置に上昇調節して、農業用シート11の左右両袖部11eの埋設手段である鎮圧輪66の鎮圧(押圧)作用のみで、前記埋設溝Sに農業用シート11の左右両袖部11eを埋め込むことによって、農業用シート11の左右両袖部11eを風によって剥がれ難くすることが可能である。
【0034】
尚、被覆装置12により圃場に被覆した農業用シート11の作用効果が達せられると、通常はこの農業用シート11を巻き取って繰り返し使用しているので、更に作業性を向上させるには、図1、図2、及び図5に示すように、作業車両13の前端部にホルダ91と図示しないスライド機構を介して、被覆装置12と同様に作業車両13の幅方向中心Cに位置する非作業姿勢から、略半畝分左右方向に偏移させた巻取作業姿勢にオフセット可能な農業用シート11の巻取装置92を設けることが好ましい。
【0035】
また、上述した実施例では、被覆装置12を、作業車両13の幅方向中心Cに位置する非作業姿勢Aから、略半畝分左右方向にオフセットした被覆作業姿勢Bに変更可能に構成することによって、作業車両13の左右の車輪14L,14R,15L,15Rが跨ぐ畝数よりも多い平畝24、即ち2つの平畝24を農業用シート11により同時に敷設できるように構成しているが、前記被覆装置12の取付位置を変更することなく、略半畝分左右方向にオフセットした被覆作業姿勢B位置で固定配置されるものであってもよい。また、図9及び図10に示すように、前記車輪14L,14R,15L,15Rが2つの平畝24を跨いで走行できるように輪距を広げることによって、被覆装置12を左右一側へオフセットできるように構成しなくても、2つの平畝24を農業用シート11により同時に被覆することが可能である。この時、農業用シート11の左右両袖部11eを覆土する覆土装置42は、上述した実施例と同様な構成を採用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】作業車両に被覆装置を装着した状態を示す側面図。
【図2】作業車両に被覆装置を装着した状態を示す平面図(非作業姿勢)。
【図3】被覆装置の側面図。
【図4】覆土装置の構成を示す平面図。
【図5】被覆作業状態の作業車両と被覆装置の平面図。
【図6】被覆作業状態の被覆装置の背面図。
【図7】覆土装置の構成を示す一部を省略した背面図。
【図8】農業用シートの袖部を覆土した状態を示す背面図。
【図9】作業車両の輪距を広げた場合の被覆作業状態を示す背面図。
【図10】輪距を広げた作業車両に被覆装置を装着した状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0037】
11 農業用シート
11e 左右両袖部
12 被覆装置
13 作業車両
14L 車輪(左前輪)
14R 車輪(右前輪)
15L 車輪(左後輪)
15R 車輪(右後輪)
24 畝
24a 畝溝
66 埋設手段
C 幅方向中心(作業車両)
K バランス保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用シート(11)を被覆する被覆装置(12)を作業車両(13)に装着し、該作業車両(13)の左右の車輪(14L,14R,15L,15R)を播種や定植がなされた畝(24)の畝溝(24a)を通過させながら、複数の畝(24)を前記農業用シート(11)で被覆するにあたり、当該被覆装置(12)を、作業車両(13)の幅方向中心(C)から略半畝分左右方向にオフセットした状態で、前記車輪(14L,14R,15L,15R)が跨ぐ畝数よりも多い畝を農業用シート(11)で同時に被覆することを特徴とする農業用シートの被覆方法。
【請求項2】
農業用シート(11)を被覆する被覆装置(12)を作業車両(13)に装着し、該作業車両(13)の左右の車輪(14L,14R,15L,15R)を播種や定植がなされた畝(24)の畝溝(24a)を通過させながら、複数の畝(24)を前記農業用シート(11)で被覆する農業用シートの被覆装置であって、当該被覆装置(12)を、作業車両(13)の幅方向中心(C)から略半畝分左右方向にオフセットした状態で取付可能に構成すると共に、前記畝溝(24a)において農業用シート(11)の左右両袖部(11e)を埋め込む埋設手段(66)を設けたことを特徴とする農業用シートの被覆装置。
【請求項3】
オフセット状態における被覆装置(12)の左右バランスを保持するバランス保持手段(K)を設けた請求項2に記載の農業用シートの被覆装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−289093(P2007−289093A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121993(P2006−121993)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】