説明

農業用ハウス

【課題】施工費用が安い1枚フィルム構造の農業用ハウスの内側に、複数のエアーマットを面状に取付けた極めて簡単な構造により断熱効果を高めて省エネルギー化を図ると共に、施工が容易でコストが安く、しかも部分補修が容易な農業用ハウスを提供するものである。
【解決手段】家形フレーム3の表面に透明なプラスチックフィルム5を取付けたハウス内の、側壁面7と天井面に沿ってワイヤ10を蛇行して取付け、更にこれと間隔をおいてワイヤ10を蛇行して取付け、これら両ワイヤ10、10間に、透明なプラスチックフィルム5で形成された複数のエアーマット11を、挟持して面状に取付けて側壁断熱層12と天井断熱層13を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にハウス栽培を行なう温室は鉄骨で家形のフレームを組み、ここにたる木状にフィルム固定具を適宜の間隔で取付け、この上を透明フィルムで覆って組立てられている。また寒冷地にある温室は、暖房を行なって作物の生長を促進させている。暖房により加熱された暖かい空気は、上昇するので天井にカーテンを張って、暖房で暖められた空気が屋根面から外部へ放散するのを防止して省エネルギー化を図ることも行なわれている。
【0003】
また温室の屋根面や壁面を二重構造として、外壁フィルムと内壁フィルムとの間に断熱空間部を形成して、温室の断熱効果を高めて省エネルギー化を図る二重構造の温室も普及してきた(特許文献1)。またこの二重構造のフィルムの間にエアーを強制的に送風して、断熱空間内の圧力を調整する構造のものも開発されている。
【0004】
しかしながらこの二重構造の温室は、外壁フィルムと内壁フィルムとを固定するフィルム固定具の構造が複雑で、二重にフィルムを取付ける作業も面倒であり、施工費用が高くなる問題があった。またフィルムの一部が破損すると、断熱効果が低下し、その補修作業も面倒であった。
【特許文献1】特開2001−211758
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題を改善し、施工費用が安い1枚フィルム構造の農業用ハウスの内側に、複数のエアーマットを面状に取付けた極めて簡単な構造により断熱効果を高めて省エネルギー化を図ると共に、施工が容易でコストが安く、しかも部分補修が容易な農業用ハウスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の農業用ハウスは、家形フレームの表面に透明なプラスチックフィルムを取付けたハウス内の、屋根面または側壁面、若しくは天井面に沿って、透明なプラスチックフィルムで形成された複数のエアーマットを、面状に取付けて断熱層を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2記載の農業用ハウスは、家形フレームの表面に透明なプラスチックフィルムを取付けたハウス内の、屋根面または側壁面、若しくは天井面に沿ってワイヤを蛇行して取付け、更にこれと間隔をおいてワイヤを蛇行して取付け、これら両ワイヤ間に、透明なプラスチックフィルムで形成された複数のエアーマットを、挟持して面状に取付けて断熱層を形成したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3記載の農業用ハウスは、ハウス内の側壁面に沿って取付けた複数のエアーマットが、その上部を吊して面状に取付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る請求項1記載の農業用ハウスによれば、屋根面または側壁面、若しくは天井面に沿って、透明なプラスチックフィルムで形成された複数のエアーマットを、面状に取付けて断熱層を形成したので、断熱効果が高く省エネルギー化を図ることができると共に、入射する太陽光線を妨げることが少なく、しかも施工が容易でコストが安く、一部のエアーマットが破損して空気が抜けても部分的に補修や交換を行なうことができる。
【0010】
また請求項2記載の農業用ハウスによれば、屋根面または側壁面、若しくは天井面に沿ってワイヤを蛇行して取付け、更にこれと間隔をおいてワイヤを蛇行して取付け、これら両ワイヤ間に、透明なプラスチックフィルムで形成された複数のエアーマットを、挟持して面状に取付けるので施工が容易である。
【0011】
また請求項3記載の農業用ハウスによれば、ハウス内の側壁面に沿って取付けた複数のエアーマットが、その上部を紐で吊して面状に取付けるので、更に施工が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図5を参照して詳細に説明する。図において1は農業用ハウスを示すもので、鉄骨2で家形のフレーム3を組み、ここにたる木状にフィルム固定具4を適宜の間隔で取付け、この上面を覆うように透明なプラスチックフィルム5を取付けて、その端部をフィルム固定具4に挟み込んで固定し、屋根面6と側壁面7とが構成されている。
【0013】
更にハウス内の柱8の上部に水平にワイヤ10を蛇行して取付けると共に、側壁面7にもワイヤ10を上下に蛇行して取付け、更にこのワイヤ10と間隔をおいて別のワイヤ10を蛇行して取付け、これら間隔をおいて取付けた二重のワイヤ10、10間に、透明なプラスチックフィルム5で形成された複数のエアーマット11を面状に取付けて側壁断熱層12と天井断熱層13を形成したものである。
【0014】
前記エアーマット11は図2に示すように、帯状をなす2枚の透明なプラスチックフィルム5を重ねてその縁部を熱シールして袋状に形成し、一方の透明なプラスチックフィルム5に空気吹込み口14を取付けて、ここから空気を吹込むことによりマット状に膨らませたものである。また透明なプラスチックフィルム5としては透明性と強度に優れたフッソ系フィルムやポリオレフィン系フィルムが好ましく、その厚さは0.03mm程度の薄いもので十分である。
【0015】
この側壁断熱層12と天井断熱層13の形成方法としては、例えば図3に示すようにハウス内の側壁面7に沿って、上下にワイヤ10を蛇行して取付けていく。またハウス内の柱8の上部に直交した梁状のフィルム固定具4と、対向する側壁面7の柱8の上部に直交した梁状のフィルム固定具4との間に、水平にワイヤ10を蛇行して取付ける。このワイヤ10としては、細いプラスチック線や金属線を束ねたもので良い。
【0016】
次に図4に示すように、この側壁面7に沿って取付けたワイヤ10と間隔をおいて、同様に上下にワイヤ10を蛇行して取付けると共に、対向する柱の上部のフィルム固定具4の間に水平に取付けたワイヤ10と間隔をおいて、同様に水平にワイヤ10を蛇行して取付ける。
【0017】
この後、空気吹込み口14から空気を吹込んで膨らませたエアーマット11を、前記間隔をおいて取付けたワイヤ10、10の間に挟み込んで、順次横方向に隙間なく面状に取付けて図5に示すように側壁断熱層12と天井断熱層13を形成する。
【0018】
上記構成の農業用ハウス1は、作物を栽培する空間部分が側壁断熱層12と天井断熱層13とで覆われているので、断熱効果が高く、暖房で暖められたハウス内の空気が屋根面6や側壁面7から外部へ放散するのを防止して省エネルギー化を図ることができる。しかもエアーマット11は薄くて透明性のあるプラスチックフィルム5で形成されているのでハウス内に入射する太陽光線を妨げることが少なく、作物の生長を促進することができる。
【0019】
また一部のエアーマット11が破損して空気が抜けても部分的に補修や交換を容易に行なうことができる。またエアーマット11を取付けていくだけなので施工性に優れ、施工費用も安く、既設の農業用ハウス1にも取付けることができる。またエアーマット11は工場で袋状に製造したものを、現場で空気を吹込んで膨らませるので、かさばらず保管や運搬が容易である。
【0020】
図6は本発明の他の実施の形態を示すもので、農業用ハウス1内の屋根面6に沿ってワイヤ10を蛇行して取付ける。更にこのワイヤ10と間隔をおいてワイヤ10を蛇行して取付け、これら間隔をおいて二重に取付けた両ワイヤ10、10間に、透明なプラスチックフィルム5で形成された複数のエアーマット11を面状に取付けて屋根断熱層15を形成する。
【0021】
また側壁面7の内側には、柱8の上部に直交して設けた梁状のフィルム固定具4に、側壁面7に沿って隙間なく複数のエアーマット11を紐16で順次面状に吊して側壁断熱層12を形成したものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
なお上記説明では野菜やきのこ、イチゴなどの果実、花などを栽培する農業用ハウスに適用した場合について示したが、畜舎や堆肥生産工場などにも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の一形態による側壁断熱層と天井断熱層を形成した農業用ハウスを示す縦断正面図である。
【図2】エアーマットの斜視図である。
【図3】図1の農業用ハウスの側壁面と天井面にワイヤを蛇行して取付けた状態を示す側面図である。
【図4】図3の農業用ハウスの側壁面と天井面にワイヤを二重に蛇行して取付けた状態を示す側面図である。
【図5】図4の農業用ハウスの側壁面と天井面に二重に取付けたワイヤの間にエアーマットを面状に取付けて側壁断熱層と天井断熱層を形成した状態を示す側面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態による側壁断熱層と屋根断熱層を形成した農業用ハウスを示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 農業用ハウス
2 鉄骨
3 家形のフレーム
4 フィルム固定具
5 透明なプラスチックフィルム
6 屋根面
7 側壁面
8 柱
10 ワイヤ
11 エアーマット
12 側壁断熱層
13 天井断熱層
14 空気吹込み口
15 屋根断熱層
16 紐


【特許請求の範囲】
【請求項1】
家形フレームの表面に透明なプラスチックフィルムを取付けたハウス内の、屋根面または側壁面、若しくは天井面に沿って、透明なプラスチックフィルムで形成された複数のエアーマットを、面状に取付けて断熱層を形成したことを特徴とする農業用ハウス。
【請求項2】
家形フレームの表面に透明なプラスチックフィルムを取付けたハウス内の、屋根面または側壁面、若しくは天井面に沿ってワイヤを蛇行して取付け、更にこれと間隔をおいてワイヤを蛇行して取付け、これら両ワイヤ間に、透明なプラスチックフィルムで形成された複数のエアーマットを、挟持して面状に取付けて断熱層を形成したことを特徴とする農業用ハウス。
【請求項3】
ハウス内の側壁面に沿って取付けた複数のエアーマットが、その上部を吊して面状に取付けたことを特徴とする請求項1記載の農業用ハウス。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−20492(P2007−20492A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208736(P2005−208736)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(592143839)株式会社グリーンシステム (5)
【Fターム(参考)】