説明

近距離無線通信リンクを構築するための携帯用電子機器及び動作方法

【課題】非常に容易な動作で作動し、従来よりも高い電力節約率を達成することが可能な携帯用電子機器を提供する
【解決手段】近距離無線通信(near field communication:NFC)ユニットを備える携帯用電子機器であり、アクティブモードとアイドルモードとを切り換え可能である。動きセンサユニットが携帯用電子機器の動きを記録し、記録された動きが記述された動き信号を出力する。処理ユニットが、加速フェーズ及び減速フェーズを含む第1の事前に規定された動きパターンを検出するために、動き信号を分析する。NFCユニットは、NFCタッチジェスチャを記述する第1の事前に規定された動きパターンが検出されたときにアクティブモードに切り換えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離無線通信(near field communication:NFC)リンクを構築するように適合されるハンドヘルド電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信(NFC)技術が搭載された携帯用電子機器によって、ユーザは、携帯用電子機器を別の携帯用電子機器又は別の固定された電子機器に単にタッチするだけで、連絡先の詳細、データファイル、支払情報の交換といった、複数の異なる動作を行うことができる。NFC通信を開始する際には、一般的に、2つの電子機器の一方が、無線周波数場(radio frequency field:RF場)を発生させ、リッスン状態(待ち受け状態)にある機器の存在を求めてポーリング(polling)を行う。リッスン状態にある機器は、能動的な受信器を備える機器でも、ポーリングを行う機器から送信されるRF場を変調することによりデータを送信する受動トランスポンダ技術を有する機器でもよい。いずれの場合も、ポーリングのための消費電力量は、待ち受け状態の電力消費量よりもかなり大きい。従来、NFC技術を特徴とする携帯用機器においては、ユーザが特定のボタンを押したり、携帯用機器の表示装置上の該当するメニュー項目を選択したりすることでNFC機能を有効にするときにだけ、RF場を発生させたりポーリングシーケンスを開始したりすることで、消費電力量を低減している。別の手法によれば、NFC機能が有効であることは、携帯用機器がアイドルモード又はスタンバイモードにないことを示す別の情報と関連付けられている。例えば、NFC機能が有効であることは、表示装置の照明状態、又は携帯用電子機器が現在アイドルモード又はスタンバイモードにないことを示すキーパッドと関連付けることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ISO/IEC18029標準仕様
【非特許文献2】NFC Forum Digital Protocol Specification
【非特許文献3】ISO/IEC14443標準仕様
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のNFC技術が搭載された携帯用電子機器では、十分な電力節約率を得ることができないという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、非常に容易な動作で作動し、更に高い電力節約率を達成することが可能な、新規かつ改良された携帯用電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、携帯用電子機器であって、制御信号を受け取るように構成される近距離無線通信ユニットであり、前記制御信号に応答して、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生させる第1のモードと、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生させない第2のモードとを切り換え可能な近距離無線通信ユニットと、前記携帯用電子機器の動きを記録し、かつ前記記録された動きが記述された動き信号を出力する動きセンサユニットと、前記動き信号を受け取り、分析して、第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを検出し、前記第1の事前に規定された動きパターンを検出した場合、前記近距離無線通信ユニットを前記第1のモードに切り換えるための制御信号を送信する処理ユニットと、を含む携帯用電子機器が提供される。
【0006】
また、前記近距離無線通信ユニットは、受動トランスポンダと通信してもよい。
【0007】
また、前記近距離無線通信ユニットは、ISO/IEC18029標準仕様、ISO/IEC18029標準仕様に基づく任意の標準仕様、又はNFC Forum Digital Protocol Specificationに従って通信してもよい。
【0008】
また、前記第1の事前に規定された動きパターンの前記第2のフェーズは、前記第1のフェーズより短くてもよい。
【0009】
また、前記第1及び第2のフェーズは、連続的な直線に沿った、又は肩関節を回転させずに肘関節を伸ばしたときに人間の手が描く曲線状の軌跡に沿った、直線的な動きであってもよい。
【0010】
また、前記処理ユニットは、第2の事前に規定された動きパターンを検出し、かつ前記第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、前記近距離無線通信ユニットの動作を制御してもよい。
【0011】
また、前記処理ユニットは、前記近距離無線通信ユニットを、前記第2の事前に規定された動きパターンによって識別されるデータを送信するように動作させてもよい。
【0012】
また、前記近距離無線通信ユニットは少なくとも2つの異なるアプリケーションを実行するように構成され、前記処理ユニットは、前記第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、前記近距離無線通信ユニットにより実行される前記アプリケーションを選択し、かつ前記近距離無線通信ユニットを前記第1のモードに切り換える前に、アプリケーションに特有のパラメータを前記近距離無線通信ユニットに提供してもよい。
【0013】
また、前記処理ユニットは、前記近距離無線通信ユニットが有効化された後、事前に規定された所定の期間の経過後に通信リンクが構築されていなかった場合、前記近距離無線通信ユニットを非有効化してもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、前記携帯用電子機器と、前記近距離無線通信ユニットを使用して前記携帯用電子機器との通信リンクを構築するように動作可能な別の電子機器とを含むことを特徴とする近距離無線通信システムが提供される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、携帯用電子機器を動作させる方法であって、前記携帯用電子機器に一体化された動きセンサユニットが、前記携帯用電子機器の動きを記録し、前記記録した動きが記述された動き信号を出力するステップと、第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを前記動き信号から検出する処理ユニットが、前記動き信号を分析するステップと、前記処理ユニットが、前記第1の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生しない第2のモードから、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生する第1のモードに切り換えるための制御信号を前記近距離無線通信ユニットに送るステップと、を含む方法が提供される。
【0016】
また、前記処理ユニットが、第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して前記近距離無線通信ユニットの動作を制御するステップをさらに含み、前記近距離無線通信ユニットは、前記第2の事前に規定された動きパターンにより識別されたデータを送信するように動作させられてもよい。
【0017】
また、前記処理ユニットが、第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して前記近距離無線通信ユニットの動作を制御するステップをさらに含み、前記近距離無線通信ユニットにより実行されるアプリケーションは、前記第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して選択される、及び/又はアプリケーションに特有のパラメータが、前記近距離無線通信ユニットを前記第1のモードに切り換える前に前記近距離無線通信ユニットに提供されてもよい。
【0018】
また、前記処理ユニットは、前記近距離無線通信ユニットが有効化された後、事前に規定された所定の期間の経過後に通信リンクが構築されていなかった場合、前記近距離無線通信ユニットを非有効化するステップをさらに含んでもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、携帯用電子機器に一体化された動きセンサユニットが、前記携帯用電子機器の動きを記録し、前記記録された動きが記述された動き信号を出力する手順と、第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを前記動き信号から検出する処理ユニットが、前記動き信号を分析する手順と、前記処理ユニットが、前記第1の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生しない第2のモードから、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生する第1のモードに切り換えるための制御信号を送信する手順と、を実行させるためのプログラムが提供される。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、携帯用電子機器に一体化された動きセンサユニットが、前記携帯用電子機器の動きを記録し、前記記録された動きが記述された動き信号を出力する手順と、第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを前記動き信号から検出する処理ユニットが、前記動き信号を分析する手順と、前記処理ユニットが、前記第1の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生しない第2のモードから、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生する第1のモードに切り換えるための制御信号を送信する手順と、を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0021】
本願発明の目的は、特許請求の範囲の独立請求項に記載された内容で達成される。さらなる実施形態がそれぞれの独立請求項で規定される。本発明の詳細及び有利な点が、添付の図面と併せて、実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。様々な実施形態の特徴は、互いに背反しない限り組み合わせられ得る。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、近距離無線通信(NFC)ユニットを備える携帯用電子機器に関して、非常に容易な動作で作動し、更に高い電力節約率を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による携帯用電子機器を含む近距離無線通信システムの概略を示す構成図である。
【図2A】本発明の一実施形態の効果を説明するための、直線状の軌跡に沿った携帯用電子機器の動きを示す概略図である。
【図2B】本発明の他の実施形態の効果を説明するための、曲線状の軌跡に沿った携帯用電子機器の動きを示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態による近距離無線通信ユニットを含む携帯用電子機器を動作させる方法を説明するための、簡略化された流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
本発明の一実施形態は、近距離無線通信ユニットがRF場を発生させるアクティブモードと、近距離無線通信ユニットがRF場を発生させないアイドルモードとを切り換えることが可能な近距離無線通信ユニットを含む携帯用電子機器に関する。本発明の他の実施形態は、近距離無線通信ユニットを含む携帯用電子機器を動作させる方法に関する。
【0026】
図1は、別の携帯用電子機器又は別の固定された電子機器190(以下、別の電子機器190という)との近距離無線通信リンクを構築する携帯用電子機器110を備える近距離無線通信システム100を示す。携帯用電子機器110は、移動電話、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、スマートホン、又はポケットベルのような携帯用通信装置であってもよい。他の実施形態によれば、携帯用電子機器は、広範囲のワイヤレス通信のためのインタフェースを持たなくてもよい。例えば、音楽プレーヤ、電子ブック、カメラ、又は特定用途向けの目的のために電力を供給される機器、例えば識別機器であってもよい。
【0027】
携帯用電子機器110は、ユーザがデータ及びコマンドを入力することができるキーパッド(Kpd)115、及びユーザにデータを出力するための表示装置(Displ)116を含み得る。携帯用電子機器110は、例えばカメラ、広範囲のRF通信、スピーカ、マイクロホン、別のローカルワイヤレス通信機能を提供する複数のアプリケーションユニット(App)117をさらに含み得る。携帯用電子機器110の処理ユニット(μP)111が、キーパッド115、表示装置116、及びアプリケーションユニット117に接続され、携帯用電子機器110のサブユニットの制御を行う。
【0028】
携帯用電子機器110は、近距離無線通信(NFC)ユニット114を含み、NFCユニット114は、NFCユニット114がポーリング信号を送信する第1のモード(アクティブモード)と、NFCユニット114がポーリング信号を送信しない第2のモード(リッスンモード、アイドルモード)との間で切り換え可能である。本発明の一実施形態では、NFCユニット114は、アクティブモードではRF場を発生させ、ポーリング信号を送信するが、アイドルモードではRF場を発生させることも、ポーリング信号を送信することもしない。携帯用電子機器110内に一体化された動きセンサユニット(MotSns)112が、携帯用電子機器110の動きを記録し、記録された動きが記述された動き信号を出力する。
【0029】
図1に示される実施形態によれば、動きセンサユニット112は、処理ユニット111に接続されるサブユニットである。別の実施形態によれば、動きセンサユニット112は、その他のサブユニットの1つに、例えばNFCユニット114に一体化されてもよい。例えば、NFC機能及び動きセンサユニット112は、同一のチップパッケージ又は同一のICに一体化され得る。
【0030】
動きセンサユニット112は、別のタイプの動きをそれぞれ記録する複数のセンササブユニットを含み得る。例えば、動きセンサユニット112は、少なくとも1つの方向、例えば3つの直交する方向に対する直線の動きを記録する。及び/又は、少なくとも1つの軸、例えば3つの直交する軸に対する回転の動きを記録する。各センササブユニットは、携帯用電子機器110の物理的加速度を測定することに適した加速度計ユニットを含み得る。各加速度計はMEMS(Microelectromechanical System:微小電気機械システム)として実現され得る。
【0031】
処理ユニット111は、動きセンサユニット112から出力される動き信号を受け取り、分析することができ、動き信号によって記述されて取り込まれた動きパターンを、第1の事前に規定された動きパターンと比較することができる。取り込まれた動きパターンの、第1の事前に規定された動きパターンからの偏差が、事前に規定された範囲内にあるとき、処理ユニット111は、取り込まれた動きパターンが第1の事前に規定された動きパターンを表すと判断し、NFCユニット114を第2のモードから第1のモードに切り換えるための制御信号を送信する。第1の事前に規定された動きパターンの時間−方向シグネチャは、携帯用機器110の加速を表す第1のフェーズ、及び携帯用機器110の減速を表す第2のフェーズを含む。本発明の一実施形態によれば、第1のフェーズは緩やかな加速を表し、第2のフェーズは大きな減速を表す。すなわち、加速率は減速率より小さい。ここで、シグネチャとしては、例えば、少なくとも移動している物体の運動に関する情報、すなわち、移動方向、速度、及び加速度と時間との関係を含む情報が関連付けられている。
【0032】
近距離無線通信の典型的な適用分野として、例えば、連絡先データ、住所データ、テキストファイル、画像データ、オーディオコンテンツを、携帯用電子機器110と、別の携帯機器又は別の固定された機器との間で交換する、データ交換に関連する分野がある。他の適用分野として、キャッシュカード、アクセス管理システム、電子チケットシステム、オンラインカード支払システム、電子マネーシステム、及び識別システムに関連する分野がある。この場合、ユーザが識別情報又は支払情報を含む媒体、例えば携帯用電子機器110を、リーダ機器、リーダ/ライタ機器、又は電子現金自動支払機である、別の電子機器190のすぐ近くに持って行く。ユーザが自分自身を識別してもらいたい、又は支払機能を使いたいときには、携帯用電子機器110を、別の電子機器190に向かって自分の体から離す典型的ジェスチャ(「NFCタッチジェスチャ」)で動かす。その際、リーダ機器の近くでは、携帯用電子機器110の加速は、減速よりも緩やかなものである。従って、NFCタッチジェスチャは、高い確率で、徒歩のような他の多くの動作と区別されることができる。もしもNFCタッチジェスチャが誤検出されたとしても、最大限達成可能な電力節約量には影響を及ぼすが、ユーザ体験には影響を及ぼさず、別の電子機器190が近くにない限りは、情報の伝達は行われない。
【0033】
別の電子機器190は、デフォルトでリッスン状態であり、かつポーリング信号を受け取った後にだけ起動して能動的にデータを送信する能動トランスポンダを含み得る。また、本発明の他の実施形態によれば、NFCユニット114はRF ID(radio frequency identification)タグのような、受動トランスポンダを含む電子機器と通信するように構成され得る。本発明の一実施形態によれば、NFCユニット114は、ISO/IEC18029標準仕様、ISO/IEC18029標準仕様に基づく任意の標準仕様、又は任意のNFC Forum Digital Protocol Specificationに従って通信するように構成される。さらに、NFCユニット114は、ISO/IEC14443標準仕様に従って通信することもできる。別の標準仕様でも同様に通信可能である。
【0034】
携帯用電子機器110の動きを伴う各ジェスチャは、動きセンサユニット112により出力される動き信号で、ある種の時間−方向シグネチャを有する。NFCタッチジェスチャについては、シグネチャは、緩やかな加速フェーズ、及び通信リンクが構築される別の電子機器190の近くで、携帯用電子機器110を保持している手をユーザが止めるときの急激な減速フェーズに伴う、方向と動きに関する情報を含む。シグネチャはまた、ほぼ腕半分の長さとなり得る動きの始点と終点の間の距離に関する情報を含み得る。
【0035】
第1の事前に規定された動きパターンは、及び/又は、検出された動きが第1の事前に規定された動きパターンに対応すると考えられる許容範囲は、様々な人々により行われる多種多様なジェスチャが第1の事前に規定された動きパターンと一致していると識別されるように、定義されることができる。本発明の他の実施形態によれば、第1の事前に規定された動きパターンは、NFCタッチジェスチャの誤検出の回数を低減するために、より厳密に定義され得る。また他の実施形態によれば、第1の事前に規定された動きパターンは、各ユーザの個々の動きを学習するフェーズ中に定義され得る。
【0036】
図2Aは、本発明の一実施形態として、ユーザが、携帯用電子機器110を手で保持したまま、軸212を中心に肘関節202を動かして腕を伸ばしながら、肘関節202による前腕の回転を補償する方向に、軸214を中心に肩関節204を動かして前腕を持ち上げる動きを示す。このとき、携帯用電子機器110は、ほぼ直線250に沿った動きをするため、NFCタッチジェスチャは、ほぼ直線250に沿った動きとして定められる。従って、第1の事前に規定された動きパターンは、第1のフェーズの緩やかな加速及び第2のフェーズの急激な減速を含む、ほぼ直線250に沿って携帯用電子機器を保持する手の動きとして事前に規定されることができる。さらに、このとき、高い確率で別の動きと識別することができるように、動きのシグネチャは、第2のフェーズが第1のフェーズよりも短くなるように設定する。さらに他の実施形態によれば、第1の事前に規定された動きパターンは、加速フェーズの前及び減速フェーズの後に、どんな動きもない停止フェーズを含んでもよい。
【0037】
図2Bは、本発明の一実施形態として、第1の事前に規定された動きパターンが、ユーザが、携帯用電子機器110を手で保持したまま、肩間接204が固定された又はほとんど固定された状態で、軸212を中心に肘関節202を動かして腕を伸ばすNFCタッチジェスチャに対応する場合を示す。この場合、携帯用電子機器110の動きの軌跡は、第1のフェーズの緩やかな加速及び第2のフェーズの突然の減速を伴いながら、曲線状の軌跡252に沿って曲げられる。このタイプのジェスチャは設定しやすく、携帯電子機器が取り得る多くの別の動きと高い確率で区別することができるため、電力の節約量を改善することができる。
【0038】
また他の実施形態によれば、処理ユニット111は、第1の事前に規定された動きパターンの検出の前に、第2の事前に規定された動きパターンを検出して、NFCユニット114がアクティブモードに切り換えられる前又は後に、第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答してNFCユニット114の動作を制御するように構成される。
【0039】
例えば、第2の事前に規定された動きパターンは、事前に規定されたデータ又は事前に規定されたアプリケーションを選択するための選択ジェスチャを記述することができる。選択ジェスチャは、振ること、注ぐこと(pouring)、投げること、転がすこと、しゃべること(jawing)のような規定されたジェスチャ、例えば携帯用電子機器を手の中に入れた状態で、前腕を軸にして、肘間接で前腕を回転させることでもよい。ジェスチャと、アプリケーション又はアプリケーションデータとの間の割り当ては、事前に規定される、又はユーザによりプログラム可能であり得る。
【0040】
また他の実施形態によれば、携帯用電子機器は少なくとも2つのアプリケーション、例えば、互いに異なる口座に関連付けられている第1及び第2の支払機能を実行し得る。ユーザは、電子現金自動支払機器に近づき、引き落とす口座を選択するために、まず選択ジェスチャを行う。次に、ユーザはNFCタッチジェスチャを行う。通信リンクが構築された後、電子現金自動支払機器は、それ以上のユーザとのやり取りなしに、選択された口座から引き落とすために必要な情報を受け取る。別の口座に対しては、別の選択ジェスチャを事前に規定することができる。
【0041】
ここで、NFCユニット114が少なくとも2つの異なるアプリケーションを実行するように構成されており、NFCユニット114が第1のモードに切り換えられる前に、処理ユニット111が第2の事前に規定された動きの検出に応答してNFCユニット114により実行されるアプリケーションを選択するように構成される手法について詳しく説明する。
【0042】
図1を再び参照すると、携帯用電子機器110は、例えば複数の支払サービスのような対応するアプリケーションとの通信リンクを構築するために使用される、複数の通信パラメータセット121、122、123を記憶するための第1の記憶要素120aを含むセキュアエレメント(secure element:SecEl)120を含み得る。例えばセキュアエレメント120はSIM(subscriber identity module)カードでもよい。また、NFCユニット114は、処理ユニット111に搭載可能なメモリよりも小さいサイズが許容される第2の記憶要素114aを含み得る。NFCユニット114内の第2の記憶要素114aは、アプリケーションの1つに割り当てられ、かつNFC通信リンクを構築するときに、初期化フェーズで使用されるパラメータセットを記憶することができる。別のNFC機器との新しい通信リンクを構築し始めるとき、NFCユニット114は、第2の記憶要素114aに記憶されるパラメータセットを使用して、衝突防止シーケンス(anticollision sequence)を実行し得る。その際、衝突防止パラメータセットが、通信リンクが構築される別の電子機器の衝突防止パラメータセットと一致しない場合、正しい衝突防止パラメータセットが、セキュアエレメント120からNFCユニット114の中にダウンロードされなければならないため、新しい通信リンクの構築に遅延をもたらす。
【0043】
NFCタッチジェスチャに先行する特定の選択ジェスチャを、衝突シーケンスに対する正しいパラメータセットを事前選択するために使用することができる。これを利用すれば、携帯用電子機器110が別の電子機器190の範囲内に存在する前に、正しいパラメータセットをNFCユニット114に前もってダウンロードすることができる。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、NFC機能が有効化される、すなわち、NFCユニット114が有効化されると、NFCユニット114は、携帯用電子機器110と別の電子機器119との間の通信が、プロトコルにより、又は事前に規定されたユーザ入力により終了させられるまで、第1のモードに留まり得る。また、他の実施形態によれば、NFCタッチジェスチャが誤検出されたときでも電力節約を行うために、NFC機能が有効化された後に、例えば何秒間といった、事前に規定された有効化期間が経過しても通信リンクが構築されていない場合、処理ユニット111が、NFCユニット114を非有効化するように構成される。
【0045】
図3は、NFCユニットを含む携帯用電子機器を動作させる方法を図示している。まず、携帯用電子機器に一体化された動きセンサユニットが、携帯用電子機器の動きを記録し、記録された動きが記述された動き信号を出力する。すなわち、NFCタッチジェスチャを検出する(302)。次に、処理ユニットが、動き信号の中から、第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを検出するために、動き信号を分析する。処理ユニットは、第1の事前に規定された動きパターンを検出したときにNFCユニットを第2のモードから第1のモードに切り換えるために、制御信号をNFCユニットに送信する。すなわち、NFCユニットが起動され、有効化される(304)。そして、携帯用電子機器を、リッスン状態にある別の電子機器に近づけることで、NFC通信リンクが構築される(306)。第1のモードは、NFCユニットが無線周波数場を発生させるポーリングモードである。第2のモードは、NFCユニットが無線周波数場を発生させないアイドルモードでもよい。一実施形態によれば、第1のフェーズは緩やかな加速でもよく、第2のフェーズは急激な減速でもよい。
【0046】
図3に示す動作方法は、第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、NFCユニットの動作を制御することをさらに含み得る。一実施形態によれば、NFCユニットは、第2の事前に規定された動きパターンにより識別されるデータを送信するように、又は第2の事前に規定された動きパターンにより識別されるアプリケーションに従って動作するように、動作させることができる。例えば、NFC通信リンクを構築するためにNFCユニットにより使用されるパラメータ及びデータが、第2の事前に規定された動きパターンによって事前に選択され得る。
【0047】
また、NFCユニットを含む携帯用電子機器を動作させるこれらの手順は、プログラムとして各種の記録媒体に記録され得る。また、そのプログラムは、各種記録媒体からコンピュータによって読み取られ、実行され得る。
【0048】
以上、説明してきたように、本願発明に係る携帯用電子機器によれば、従来の携帯用電子機器で生じ得た、表示装置の照明状態やキーパッドの状態によってユーザの意図に反してNFC機能が有効になってしまい、消費電力量が増加してしまうという問題を、解決することができる。
【0049】
また、本願発明に係る携帯用電子機器によれば、同じく従来の携帯用電子機器で生じ得た、NFC機能を有効にするためのユーザの操作が煩雑なため、素早くNFC機能を有効にすることができないという問題を、解決することができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0051】
100 近距離無線通信システム
110 携帯用電子機器
111 処理ユニット
112 動きセンサユニット
114 NFCユニット
114a 第2の記憶要素
115 キーパッド
116 表示装置
117 アプリケーションユニット
190 別の電子機器
120 セキュアエレメント
120a 第1の記憶要素


【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用電子機器であって、
制御信号を受け取るように構成される近距離無線通信ユニットであり、前記制御信号に応答して、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生させる第1のモードと、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生させない第2のモードとを切り換え可能な近距離無線通信ユニットと、
前記携帯用電子機器の動きを記録し、かつ前記記録された動きが記述された動き信号を出力する動きセンサユニットと、
前記動き信号を受け取り、分析して、第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを検出し、前記第1の事前に規定された動きパターンを検出した場合、前記近距離無線通信ユニットを前記第1のモードに切り換えるための制御信号を送信する処理ユニットと
を含むことを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項2】
前記近距離無線通信ユニットが、受動トランスポンダと通信することを特徴とする、請求項1に記載の携帯用電子機器。
【請求項3】
前記近距離無線通信ユニットが、ISO/IEC18029標準仕様、ISO/IEC18029標準仕様に基づく任意の標準仕様、又はNFC Forum Digital Protocol Specificationに従って通信することを特徴とする、請求項1又は2に記載の携帯用電子機器。
【請求項4】
前記第1の事前に規定された動きパターンの前記第2のフェーズが、前記第1のフェーズより短いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯用電子機器。
【請求項5】
前記第1及び第2のフェーズが、連続的な直線に沿った、又は肩関節を回転させずに肘関節を伸ばしたときに人間の手が描く曲線状の軌跡に沿った直線的な動きであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯用電子機器。
【請求項6】
前記処理ユニットが、第2の事前に規定された動きパターンを検出し、かつ前記第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、前記近距離無線通信ユニットの動作を制御することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯用電子機器。
【請求項7】
前記処理ユニットが、前記近距離無線通信ユニットを、前記第2の事前に規定された動きパターンによって識別されるデータを送信するように動作させることを特徴とする、請求項6に記載の携帯用電子機器。
【請求項8】
前記近距離無線通信ユニットが少なくとも2つの異なるアプリケーションを実行するように構成され、前記処理ユニットが、前記第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、前記近距離無線通信ユニットにより実行される前記アプリケーションを選択し、かつ前記近距離無線通信ユニットを前記第1のモードに切り換える前に、アプリケーションに特有のパラメータを前記近距離無線通信ユニットに提供することを特徴とする、請求項6に記載の携帯用電子機器。
【請求項9】
前記処理ユニットは、前記近距離無線通信ユニットが有効化された後、事前に規定された所定の期間の経過後に通信リンクが構築されていなかった場合、前記近距離無線通信ユニットを非有効化することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の携帯用電子機器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の前記携帯用電子機器と、
前記近距離無線通信ユニットを使用して前記携帯用電子機器との通信リンクを構築するように動作可能な別の電子機器と
を含むことを特徴とする近距離無線通信システム。
【請求項11】
携帯用電子機器を動作させる方法であって、
前記携帯用電子機器に一体化された動きセンサユニットが、前記携帯用電子機器の動きを記録し、前記記録した動きが記述された動き信号を出力するステップと、
第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを前記動き信号から検出する処理ユニットが、前記動き信号を分析するステップと、
前記処理ユニットが、前記第1の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生しない第2のモードから、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生する第1のモードに切り換えるための制御信号を前記近距離無線通信ユニットに送るステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記処理ユニットが、第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して前記近距離無線通信ユニットの動作を制御するステップをさらに含み、
前記近距離無線通信ユニットは、前記第2の事前に規定された動きパターンにより識別されたデータを送信するように動作させられることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理ユニットが、第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して前記近距離無線通信ユニットの動作を制御するステップをさらに含み、
前記近距離無線通信ユニットにより実行されるアプリケーションが、前記第2の事前に規定された動きパターンの検出に応答して選択される、及び/又はアプリケーションに特有のパラメータが、前記近距離無線通信ユニットを前記第1のモードに切り換える前に前記近距離無線通信ユニットに提供されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記処理ユニットは、前記近距離無線通信ユニットが有効化された後、事前に規定された所定の期間の経過後に通信リンクが構築されていなかった場合、前記近距離無線通信ユニットを非有効化するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータに、
携帯用電子機器に一体化された動きセンサユニットが、前記携帯用電子機器の動きを記録し、前記記録された動きが記述された動き信号を出力する手順と、
第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを前記動き信号から検出する処理ユニットが、前記動き信号を分析する手順と、
前記処理ユニットが、前記第1の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生しない第2のモードから、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生する第1のモードに切り換えるための制御信号を前記近距離無線通信ユニットに送る手順と、を実行させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
携帯用電子機器に一体化された動きセンサユニットが、前記携帯用電子機器の動きを記録し、前記記録された動きが記述された動き信号を出力する手順と、
第1のフェーズの加速及び第2のフェーズの減速を含む第1の事前に規定された動きパターンを前記動き信号から検出する処理ユニットが、前記動き信号を分析する手順と、
前記処理ユニットが、前記第1の事前に規定された動きパターンの検出に応答して、近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生しない第2のモードから、前記近距離無線通信ユニットが無線周波数場を発生する第1のモードに切り換えるための制御信号を前記近距離無線通信ユニットに送る手順と、を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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