説明

退院調整支援システム

【課題】 中核病院と密接な連携の下で退院後の治療を行うことができるばかりでなく、快適な環境下で介護を受けながら、安心して養生生活を送ることができるようにする。
【解決手段】 患者情報を管理する管理サーバ7と地域中核病院1、地域診療所3、介護福祉センタ4、介護施設5に設けた各情報端末1a,3a〜5aを通信回線網11を介して接続し、管理サーバ7に格納した患者情報を共有して退院後の患者を支援する。この場合、情報端末1aから患者の退院計画を入力すると同時に患者IDが付与され、又退院計画は管理サーバに登録される。患者IDは各情報端末3a〜5aに電子メールで送信される。電子メールを受信した各情報端末3a〜5aは患者IDを情報端末に登録する。そして、各情報端末3a〜5aでは患者IDに基づき管理サーバ7にアクセスして管理サーバ7に格納されている患者情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、退院調整によって決定した患者の退院計画が立案された場合、退院後の受け入れを支援する退院調整支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会は高齢化社会を迎えており、高齢化に伴う医療費の増大がクローズアップされている。医療費の増大による医療保険財政の悪化を改善する策として、医療法が数次にわたって改正され、更に平成12年4月の介護保険制度の導入によって医療と介護とを分離する方向で高齢者介護対策が進められている。
【0003】
これらの政策により多くの介護保険施設や在宅介護を支援する施設が整備されるなかで、従来の医療施設が急性期の治療を必要としない高齢者の介護需要を実質的に引き受け、社会的入院を容認しては医療資源の非効率な使用を招くとして、急性期、亜急性期、療養治療などの医療機能の分化を進め、診療体制を見直すために、国は従来の医療技術の評価基準を改め、特に急性期治療の入院診療加算を大幅に上げることによって、密度の高い治療による早期治療を促し、今までの非効率性を排除することによって、入院日数を短縮するよう求めている。
【0004】
すなわち、無駄な入院による必要以上の検査などをなくそうと、在院日数が14日を過ぎた場合、入院料を段階的に減らしていく方式が採用されている。従って、病院は入院が長くなるほど収入が減少するため、一患者当たりの在院日数を短縮することが余儀なくされる。
【0005】
これらの改革は従来の病院経営環境を激変させ、病院の経営の健全化と存続のためには、特殊な疾病をもつ患者以外は、規定の期日までに早期退院を促さざるをえない状況となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、病院側の経営上の理由から早期退院を余儀なくされる患者、特に介護を必要とする患者(以下、「介護患者」と称する)、及びその家族にとっては、身体状況に対する不安や、家族介護力の低下による在宅治療や、介護に対する不安は一層募るばかりである。
【0007】
このような患者や、その家族の不安を取り除くために、地域の中核病院とかかりつけの医師が常駐する地域診療所と地域社会とが一体となって退院後安心して療養し帰宅養生や社会復帰ができる地域完結型の退院後の養生生活を支援するシステムの構築が必要である。
【0008】
又、診療報酬制度の改定に伴う中核病院(地域医療支援病院、急性期病院、亜急性病院)における在院基準を達成するためには、患者の早期退院計画立案のための具体的な受入れ態勢のもとでの退院調整が必要である。
【0009】
退院調整は、患者・家族が退院後も継続して必要なケアを受け、安心して療養生活を送れるようにするために必要であり、無理な在宅療養の選択や安易な施設選択をしないよう、地域支援システムなどの情報を正しく得て、退院調整を行わなければならない。
【0010】
従って、本発明の目的は、中核病院と密接な連携の下で退院後の治療を行うことができ、しかも快適な環境下で介護を受けながら、安心して養生生活を送ることのできる病診連携の介護支援体制を構築する退院調整支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため第1発明は、患者情報を管理する管理サーバと医療機関に設けた情報端末と退院後の患者の受け入れる介護施設に設けた情報端末と主に介護サービスを提供する介護福祉センタに設けた情報端末とを通信回線網を介して接続し、上記管理サーバに格納した上記患者情報を共有して退院後の上記患者を支援する退院調整支援システムにおいて、上記各情報端末の一つから退院計画を入力する手段と、上記退院計画が入力されたとき該退院計画に付随する患者識別コードを付与する患者識別コード付与手段と、上記退院計画を上記管理サーバに登録する管理サーバ登録手段と、上記患者識別コードを上記各情報端末に送信するデータ送信手段と、上記各情報端末で受信した上記患者識別コードを登録する情報端末登録手段と、上記各情報端末に登録されている上記患者識別コードに基づき上記管理サーバにアクセスして該管理サーバに格納されている上記患者情報を該各情報端末にダウンロードする患者情報ダウンロード手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成では、退院計画が決定した場合、医療機関と介護施設と介護福祉センタとの一つから退院計画を入力すると、当該情報端末にて患者識別コードが付与される。そして情報端末から入力された退院計画は管理サーバに患者情報として登録され、又、患者識別コードはデータ送信手段によって各情報端末に送信される。そして、各情報端末で受信した患者識別コードは、情報端末に登録される。一方、各情報端末に、通信回線網を介して管理サーバに格納されている患者情報をダウンロードするには、各情報端末から、この情報端末に登録されている患者識別コードに基づき管理サーバにアクセスし、管理サーバに格納されている患者情報をダウンロードする。各情報端末に送信する患者識別コードはデータ送信手段を用いて送信し、一方管理サーバに格納されている患者情報は通信回線網を介してダウンロードするようにしたので、二重リレーションにより高いセキュリティを得ることができる。
【0013】
第2発明は第1発明において、上記ダウンロード手段でダウンロード可能な上記患者情報は、上記各情報端末毎に設定されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成では、ダウンロード可能な患者情報を情報端末毎に設定することで、各情報端末では、治療或いは介護などに必要な情報のみを閲覧させるようにしたので、不要な情報が漏出することがない。
【0015】
第3発明は、第1或いは第2発明において、上記管理サーバに格納されている上記患者情報は開放可能なオープン情報とクローズド情報とを有し、上記オープン情報は各情報端末でダウンロードが可能であり、上記クローズド情報は上記各情報端末毎にダウンロード可能な情報が制限されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、管理サーバに格納されている患者情報に、オープン情報とクローズド情報とを設定し、クローズド情報は各情報端末毎にダウンロード可能な情報を制限するようにしたので、より高いセキュリティを得ることができる。
【0017】
第4発明は、第1〜第3発明の何れかにおいて、上記データ送信手段は、電子メールと電子ファクシミリとの一方で構成されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成では、データ送信手段を電子メールと電子ファクシミリとの一方としたので、各情報端末から一々管理サーバにアクセスすることなく、受信した電子メール或いは電子ファクシミリから患者識別コードを容易に入手することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、中核病院と密接な連携の下で退院後の治療を行うことが可能となり、しかも快適な環境下で介護を受けながら、安心して養生生活を送ることができるなど、優れた効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1は退院調整支援システムの構成図である。
【0021】
同図において、本形態による退院調整支援システムは、その主要な構成が、地域の中核となる医療機関である地域中核病院1、地域中核病院1内に設けられ、或いはこの地域中核病院1からは独立しているが地域中核病院1と密接に連携している訪問看護ステーション2、地域中核病院1から退院後に紹介され或いは地域中核病院1に患者を紹介したかかりつけの医療機関である地域診療所3、介護を請け負い、ホームヘルパ、介護士などの介護従事者を派遣するなどの介護サービスを提供すると共に、要介護者が通所して介護を受ける通所介護施設を備える介護福祉センタ4、及び要介護者の養成施設を提供する介護施設5の各所にそれぞれ分散して配置されている。
【0022】
なお、介護施設5としては、医師を有する短期療養生活介護施設が好ましく採用されるが、介護福祉センタ4から介護援助を受けるだけの施設である連携ナーシングアパートメントを採用することもできる。ただし、地域中核病院1や地域診療所3は、医師を有する短期療養生活介護施設に対して患者を紹介することはできるが、医師を有さない施設である連携ナーシングアパートメントに対して患者を紹介することはできないので、連携ナーシングアパートメントを介護施設として利用する場合は、患者自身によって選択してもらう必要がある。
【0023】
又、訪問看護ステーション2には、退院後の治療を受ける患者を訪問して、退院後の治療に係る医学的指導を患者に対して行う訪問看護士が待機している。更に、訪問看護ステーション2には、地域中核病院1と連絡を密にすると共に、介護福祉センタ4、介護施設5などとの間で情報を交換する地域連携室6が設置されている。
【0024】
尚、地域診療所3、介護福祉センタ4、及び介護施設5は、1つの退院調整支援システム中に、それぞれ1つ或いは複数含まれるように構成されており、図1においては、これらを便宜的に1つずつで構成した態様で示す。
【0025】
地域中核病院1内には、退院調整の組織(医師、看護師、ケースワーカー、ケアマネジャーなどからなる)が設置されており、訪問看護ステーション2内の地域連携室6と連携する介護施設5の空室情報や、通所介護施設を備える介護福祉センタ4、訪問看護ステーション2、介護福祉センタ4からの運用情報のバックアップ情報を参考に退院支援計画が策定され、早期退院する患者の受け入れ支援のバックアップシステムが運用される。
【0026】
この地域中核病院1に情報端末1aが備えられている。この情報端末1aは、汎用のパーソナルコンピュータなどのコンピュータに本システム専用のアプリケーションプログラムをインストールして構成されていると共に、インターネットを代表とする通信回線網11に接続されている。この情報端末1aは、退院調整によって決定した患者の退院計画を入力するもので、付属するキーボードやマウスなどの入力装置を操作して退院計画を入力する。又、この情報端末1aにハードディスクなどの記録媒体1bが備えられている。
【0027】
地域中核病院1の情報端末1aを操作して、退院調整によって決定した患者の退院計画を入力すると、一つの退院計画に対して1つのIDが付与され、後述する地域連携室6に設けられている管理サーバ7に送信される。地域連携室6と地域中核病院1とは、通信回線網の一つであるイントラネットなどのLAN(Local Area Network)12を介して接続されている。
【0028】
管理サーバ7は退院患者情報データベース7aを有しており、この退院患者情報データベース7aに退院計画情報が記憶される。尚、地域連携室6は、他の地域の医療機関との調整機能も有している。
【0029】
管理サーバ7の退院患者情報データベース7aには、地域中核病院1で治療を行った患者の情報、及び各介護施設5の空室情報などが格納されており、これらは管理サーバ7にて一括管理される。この管理サーバ7に対する、患者に関する情報の入力は、基本的には地域中核病院1によって行われる。但し、地域診療所3,或いは介護施設5において独自に予約し、或いは予約を受け付けた介護施設5での宿泊情報は、当該地域診療時3,或いは介護施設5側から入力することができる。
又、退院患者情報データベース7aは、CGI(Common Gateway Interface)などのグループウェアーによる指定URL(Uniform Resource Locator)にアクセスすることで通信回線網11を介しての閲覧が可能である。
【0030】
又、退院患者情報データベース7aに格納されている患者情報としては、退院患者に対して発行される患者識別コード(以下「患者ID」と称する)、診療所紹介No、地域中核病院1の名前、地域診療所3の名前、担当する訪問看護ステーション2の名前、退院後に使用する介護福祉センタ4や介護施設5の名前などがあり、更に、介護患者の初診場所からの経過状況、現在の養生先、及び今後の予定などの患者情報が併せて記録されている。
【0031】
このように、退院患者情報データベース7aには、患者を特定する個人情報(患者の氏名、住所、電話番号など)は登録されておらず、患者IDのみによって管理される。これによって、高度セキュリティーシステムを用いることなく、患者の個人情報の機密性を確保することができる。
【0032】
又、各施設3,4,5には、各々情報端末3a,4a,5aが配設されている。この各情報端末3a,4a,5aは、汎用のパーソナルコンピュータなどのコンピュータに本システム専用のアプリケーションプログラムをインストールして構成されていると共に通信回線網11に接続されている。各情報端末3a,4a,5aには患者データベース3b,4b,5bが設けられており、管理サーバ7から、退院計画に該当する施設3,4,5に、データ送信手段としての電子メールや電子ファクシミリを用いて送信された患者ID(患者識別コード)と患者の個人情報(患者の氏名、住所、電話番号など)が、各患者データベース3b,4b,5bに登録される。又、各患者データベース3b,4b,5bには、IDによりコード化された患者情報を復号する患者データベースフィルタが設置されている。
【0033】
更に、各患者名や診療所紹介NoのIDは、その患者に関して連携している地域中核病院1、地域診療所3、介護福祉センタ4、介護施設5でのみ共有するようにしている。従って、第3者である他の地域病院、他の地域診療所、他の介護福祉センタや介護施設は、たとえ退院患者情報データベース7aの患者データベースフィルタを設置していたとしても、当該患者の情報を復号化することはできない。その結果、一患者に対する地域中核病院1、地域診療所3、介護福祉センタ4の連携を強化することができると共に、患者が安心して養生生活を送ることができる。
【0034】
又、退院計画を入力する際に付与される患者IDは、地域診療所3から地域中核病院1へ、或いは地域中核病院1から地域診療所3へ患者を紹介する場合において取り交わされる文書による一定様式の紹介状中の空白部分(図5参照)に付記するか、或いは添付することで地域診療所3と地域中核病院1との双方が共有する。
【0035】
介護福祉センタ4へ電子メール(或いは電子ファクシミリ)によって送信される患者のID情報は、当該患者が退院後、訪問看護ステーション2、介護福祉センタ4に委託する際に当該訪問看護ステーション2から介護福祉センタ4に通知することで共有される。
【0036】
又、地域診療所3は、患者情報を患者データベースフィルタを通して復号化することで当該患者を担当する訪問看護ステーション2の名前、介護福祉センタ4の名前や介護施設5の名前を、情報端末3aのモニタに表示させることができる。
【0037】
次に、このような構成による退院調整支援システムの作用について説明する。本形態では、地域診療所3から紹介された患者や、地域中核病院1に直接入院した患者を、地域中核病院1にて治療した後、退院調整のための早期退院計画を立てる。
【0038】
すなわち、訪問看護ステーション2内に設置されている地域連携室6と連携する組織を構成し、更に、地域診療所3の医師が往診・在総診が可能な介護施設5を使用契約した上で、介護施設5で管理する空室状況や、看護、介護の運用状況を把握した情報を基に、患者や、その家族の意向を聞きながら早期退院支援計画を立案し、実際に地域中核病院1から退院する患者が当該介護施設5に入所する際、患者担当の地域診療所3のかかりつけの医師に当該患者の診療を受け渡す。
【0039】
地域中核病院1から地域診療所3に患者を逆紹介することで、医療を機能分化することができ、地域中核病院1と地域診療所3との連携を密にすることで、退院患者や、その家族の療養・介護体制を確立し、患者が安心して療養することができる。
【0040】
退院調整の決定した患者の退院計画は、地域中核病院1に設置されている情報端末1aから入力する。図2には情報端末1aで処理される退院計画処理ルーチンが示されている。
【0041】
先ず、地域中核病院1の情報端末1aから退院計画ボタン(例えばキーボードの「Enter」)をONすると、ステップS1の待機状態から、ステップS2へ進み、患者IDが付与される。
【0042】
次いで、ステップS3でモニタに退院計画を入力する画面が表示される。図5に示すように、退院計画を入力する画面には、患者の氏名、住所を入力する画面が表示される。この退院計画を入力する画面は、地域中核病院1から地域診療所3への紹介状と、介護福祉センタ4、介護施設5の申込用紙のプリントアウトを兼用しており、プリントアウトに際しては、申込用紙は予め設定された様式に従って作成される。又、退院計画を入力する画面の余白部分に、ステップS2で付与された患者ID(AAA01AA03)が表示されている。
【0043】
そして、ステップS4で、キーボード、マウスなどの入力装置を操作して、退院調整の決定した患者の退院計画(氏名と住所)を入力すると、ステップS5へ進み、モニタ上に介護施設を選択する画面が表示される。次いで、ステップS6へ進み、表示された介護施設の一覧から特定の介護施設5を選択すると、ステップS7で、管理サーバ7にLAN12を介してアクセスし、退院患者情報データベース7aに格納されている当該介護施設5の空室情報が読込まれ、ステップS8へ進み、モニタ上に、選択された介護施設5の空室情報が表示される。
【0044】
なお、前述したように、地域中核病院1や地域診療所3は、医師を有する短期療養生活介護施設に対して患者を紹介することはできるが、医師を有さない施設である連携ナーシングアパートメントに対して患者を紹介することはできないので、この場合の介護施設5は、医師を有する短期療養生活介護施設である必要がある。連携ナーシングアパートメントを介護施設として利用する場合は、患者自身によって希望する連携ナーシングアパートメントを選択してもらい、その上で空き室情報を表示させる必要がある。
【0045】
図6(a)に退院患者情報データベース7aに格納されている患者情報を示す。ここで、RSMは介護施設の名前、RSRは部屋番号、STは入居月、EDは退居月を示す。従って、患者IDがAAAA01AA01の患者は、介護施設AAの部屋番号(F1)の部屋をAA01月の一ヶ月間予約していることになる。一方、患者IDがACAA01AA02の患者は、介護施設ABの部屋番号(F3)の部屋をAA01月〜AA04月の間予約していることになる。更に、図示しないが、退院患者情報データベース7aには、患者の病名、入院期間などの治療情報が格納されている。
【0046】
このように、退院患者情報データベース7aには患者を特定する個人情報は登録されておらず、従って、例えば退院患者情報データベース7aに格納されている患者情報をオープンにしても、患者を特定する個人情報が漏出することはない。
【0047】
又、ステップS8で読込まれる情報は、退院患者情報データベース7aに格納されている空室情報の中で、選択した介護施設5の空室情報のみが表示される。
【0048】
又、図7にモニタに表示される介護施設5の空室情報を示す。尚、ここでは介護施設5として「AA」という名称の介護施設が示されている。同図において、左側のタテ列に当該介護施設5の部屋番号(F1,F2…)が表示され、上部横列に予約月(AA01,AA02,AA03,AA04)が一ヶ月ごとに表示されている。
【0049】
図7においては、例えば予約月(AA03,AA04)の二ヶ月間、部屋番号(F1)が空室となっており、その空欄に患者ID(AAA01AA03)を入力することで予約が完了する。尚、本形態では、予約月(AAA03)の一ヶ月間、部屋番号(F1)を予約するものとする。
【0050】
そして、ステップS9でモニタに表示された予約月(AAA03)と部屋番号(F1)とが交差する欄に、患者ID(AAA01AA03)を入力する。
【0051】
すると、ステップS10において、モニタ上に登録を確認するダイアログボックスが表示され、登録する場合は、登録のチェックボックスをチェックすると、ステップS11へ進み、又、キャンセルのチェックボックスをチェックするとステップS1へ戻り、モニタ上に退院計画の入力を開始する初期画面が表示される。尚、この場合、モニタに表示されるダイアログボックスにステップS5へ戻るチェックボックスを追加するようにしても良い。ステップS5へ戻るチェックボックスを設けることで、例えば介護施設5(「AA})に空室が無い場合、別の介護施設の空室情報を簡単に表示させることができる。
【0052】
そして、ステップS11へ進むと、管理サーバ7の退院患者情報データベース7aに格納されている当該介護施設5の空室情報の内容が更新され、予約月(AAA03)の部屋番号(F1)の欄に、患者ID(AAA01AA03)が登録される。すなわち、図6(b)に示すように、今回登録する予約情報は、患者ID(AAA01AA03)が「AA」という介護施設5の部屋番号(F1)の部屋を「AA03」の一ヶ月予約したことになり、ステップS11では、この内容を同図(a)に示す空室情報に追加する。
【0053】
そして、ステップS12へ進むと、地域中核病院1の情報端末1aから通信回線網11を介して電子メール(或いは電子ファクシミリ)にて、退院調整の決定した患者ID、及び患者の個人情報(患者の氏名、住所、電話番号など)を、紹介状を提出する地域診療所3、患者の介護を担当する介護福祉センタ4、及び入居を申し込んだ介護施設5の各情報端末3a,4a,5aに送信する。その際、メールアドレスを各施設の管理者宛とし、電子メール(或いは電子ファクシミリ)を開封する者を特定する。尚、この電子メール(或いは電子ファクシミリ)は、訪問看護ステーション2の地域連携室6に設けられている管理サーバ7に、LAN12を介して一旦送信し、この管理サーバ7から各施設3〜5へ送信するようにしても良い。
【0054】
ところで、上述した介護施設の選択は、退院患者が退院後に通院する地域診療所3において予約することもできる。このような場合、上述したステップS5〜S9、及びステップS11を省略し、ステップS4で退院計画を入力した後、ステップS9へジャンプして、登録画面を表示させて、それを登録した後、ステップS12へ進み、各施設の情報端末3a,4a,5aへ送信する。
【0055】
その後、ステップS13へ進み、退院計画書をプリントアウトしてルーチンを終了する。退院計画書は、提出する施設毎に予め指定されている様式に従って作成される。因みに、退院計画書には、退院調整の決定した患者の氏名、住所、以外に、退院日、介護施設名、地域診療所名が記載されている。地域診療所3へ提出する紹介状には、例えば現在の症状、経過、退院日、病名などが記載される。又、介護施設を予約する書類には、入居する患者の氏名、入居期間が記載されている。この場合、訪問看護ステーション2に対しても、医師が記入した医療管理を指導する書類が提出される。
【0056】
一方、地域中核病院1の情報端末1aから通信回線網11を介して送信された電子メール(或いは電子ファクシミリ)を受信した地域診療所3、介護福祉センタ4、介護施設5の各情報端末3a,4a,5aは、図3に示す患者ID登録ルーチンに従って、受信した患者IDを登録する。
【0057】
先ず、ステップS21で電子メール(或いは電子ファクシミリ)の受信により、各情報端末3a,4a,5aの各患者データベース3b,4b,5bに設けたメールボックスに格納された受信メールを読込む。
【0058】
次いで、ステップS22で、受信メールのヘッダ部を参照して割り当てられた差出人、宛先、送信日時、受信メールの開封状況などのヘッダ情報を解析する。
【0059】
その後、ステップS23へ進み、受信メールの本文に記載されている患者ID、及び当該患者の個人情報(氏名以外に、住所、電話番号などが含まれる)を、各情報端末3a,4a,5aの各患者データベース3b,4b,5bに登録し、ルーチンを終了する。
【0060】
図8(a)に示すように、各患者データベース3b,4b,5bには、患者ID、及び当該患者の個人情報が格納されており、この患者データベース3b,4b,5bに、同図(b)に示す今回受信した患者ID、及び当該患者の個人情報が追加登録される。
【0061】
一方、地域診療所3、介護福祉センタ4、介護施設5の責任者は、受診した患者IDに基づき、地域連携室6の管理サーバ7にアクセスして、患者情報を確認することができる。
【0062】
この患者情報の確認は、図4に示す患者情報確認ルーチンに従って処理される。先ず、ステップS31で、各情報端末3a,4a,5aから通信回線網11を介して訪問看護ステーション2の地域連携室6に設けられている管理サーバ7にアクセスする。
【0063】
すると、各情報端末3a,4a,5aのモニタに、患者IDの入力を要求する画面が表示される。そして、ステップS32において、各情報端末3a,4a,5aの患者データベース3b,4b,5bに登録されている患者IDを入力する。このときの患者IDは、複数入力することが可能である。
【0064】
すると、ステップS33において、管理サーバ7の退院患者情報データベース7aに格納されている、一人或いは複数の患者IDの患者情報がダウンロードされ、管理サーバ7にアクセスした情報端末3a,4a,5aに設けられている患者データベースフィルタを通して復号化して、患者データベース3b,4b,5bに格納した後、ルーチンを終了する。
【0065】
復号化される患者情報には、閉鎖された情報(クローズド情報)と開放された情報(オープン情報)とがある。クローズド情報は、患者の病状、術後の経過などカルテに記載されている情報が含まれており、各情報端末3a,4a,5a毎にダウンロード可能な情報が規制されている。又、オープン情報には、患者ID、退院予定日、退院後の居所(介護施設名)等がある。オープン情報は、全ての情報端末3a,4a,5aでダウンロード可能な情報である。
【0066】
各情報端末3a,4a,5aのモニタには、ステップS32で入力した患者IDに対応する患者情報と、各情報端末3a,4a,5aに登録されている当該患者IDに対応する個人情報(患者の氏名など)が表示される。例えば図9(a)には地域診療所3の情報端末3aから管理サーバ7にアクセスして、患者情報をダウンロードした場合について例示されている。同図にハッチングで示す部分は、地域診療所3の情報端末3aから患者IDが入力されなかった部分であり、管理サーバ7にアクセスした患者IDに対応する患者情報のみが表示される。換言すれば、当該地域診療所3で担当する患者の情報のみをダウンロードすることができる。
【0067】
ところで、地域診療所3では、当該地域診療所3で担当する患者の情報を取得した後、患者或いはその家族など相談して、介護施設5の選択、及び宿泊施設の予約を独自に行うことができる。この場合、上述した図2に示す退院計画処理ルーチンの中の、ステップS5〜S10において行われる処理を、地域診療所3の情報端末3a側から行う。尚、当該処理については既述したので、ここでの説明は省略する。
【0068】
一方、図9(b)には介護施設5の情報端末5aから管理サーバ7にアクセスして、患者情報をダウンロードした場合が例示されている。同図にハッチングで示す部分は、地域診療所3の情報端末3aから患者IDが入力されなかった患者情報が登録されている部分であり、介護施設5の情報端末5aからはダウンロードすることができない。
【0069】
このように、本形態では、退院調整が決定した場合、地域中核病院1を基軸とした地域診療所3、訪問看護ステーション2、介護福祉センタ4、介護施設5を連携させて患者の退院後の治療及び養生生活を行えるようにしたので、快適な環境下で介護を受けながら、安心して療養生活を送ることができる。
【0070】
又、管理サーバ7の退院患者情報データベース7aにはオープン情報とクローズド情報とが格納されており、クローズド情報はダウンロード可能な情報が各情報端末3a,4a,5a毎に規制され或いは禁止し、又、退院患者情報データベース7aには患者の個人情報は登録せず、患者IDのみによって管理し、一方各情報端末3a〜5aからは通信回線網11を介して管理サーバ7にアクセスし、患者IDを用いて患者情報を取得し、各情報端末3a,4a,5aに格納されている患者ID毎の個人情報と照合するようにした二重リレーションにより高いセキュリティを得ることができる。
【0071】
又、退院調整が決定した場合、地域中核病院1の情報端末1aから退院計画を入力すると患者IDが発行され、この患者IDを退院患者が受ける施設3〜5へ電子メール或いは電子ファックスで送信し、この患者IDを各施設3〜5の情報端末3a〜5aに登録し、その後は、各施設3〜5の情報端末3a〜5aから患者IDにより、地域連携室6の管理サーバ7にアクセスすることで、患者IDに登録されている患者情報をダウンロードすることができるので、従来のように予め設定されているパスワードとIDとを一々入力する必要が無く、操作性が良い。又、退院計画毎に患者IDが付与されるので、患者IDが入手されない限り、簡単に管理サーバ7から患者情報を取得することができず、高いセキュリティを得ることができる。
【0072】
又、地域中核病院1、地域診療所3、訪問看護ステーション2、介護福祉センタ4、介護施設5の各施設管理者がそれぞれの部署でそれぞれが必要とする情報を共有し、更に、それぞれの施設1〜5が自己に必要な情報のみを管理することで、各施設1〜5の連携をより効率的に機能させることができる。尚、訪問看護ステーション2に設けた地域連携室6は、他の地域の施設との調整機能を有しており、従って、隣接する地域の施設を照会する場合は、代表となる1つの地域連携室6を窓口として調整することができるため、迅速な対応を図ることができる。
【0073】
以上の結果、本形態による退院調整支援システムを採用することで、以下に示す効果が奏される。
【0074】
(1)地域中核病院1の介護患者の退院計画を規定入院日数の満了前に調整し、退院調整の決定した患者を、地域診療所3、介護福祉センタ4、介護施設5に連絡し、退院後直ちに各連携施設が患者を受け入れることができるので、介護患者の早期退院を円滑に進めることができる。
【0075】
(2)訪問看護ステーション2内の地域連携室6と連携する複数の介護施設5はそれぞれの施設における空室情報を管理し、個々の退院患者の状況に応じて適切な退院後の介護施設を提供することができる。
【0076】
(3)訪問看護ステーション2は地域中核病院1との連絡を密にするため地域連携室6を設置し、地域連携室6にて患者情報を一括管理することで、この地域連携室6から介護福祉センタ4、介護施設5などに情報を共用化させることができる。更に、退院患者や、その家族と24時間の連絡体制を確保すると共に、退院患者の看護及び医師のサポートなど安心した養生生活を確保することができる。
【0077】
(4)患者の退院後の状態を地域連携室6の管理サーバ7にアクセスすることで、簡単に把握することができる。
【0078】
(5)介護施設5で養生している患者に緊急事態が発生した場合であっても、訪問看護ステーション2内に設置されている地域連携室6を通して地域中核病院1や地域診療所3と容易に連絡することができるので、迅速な対応が可能となる。
【0079】
(6)退院前に介護施設5を予約することができるので、早期退院に伴う不安を解消することができる。
【0080】
尚、上述した形態では、患者の退院計画を例に説明したが、地域診療所3から患者を地域中核病院1に紹介するようにしても良い。この場合、地域診療所3の情報端末3aで患者IDを付与するようにしても良く、或いは情報端末3aから地域連携室6の管理サーバ7にアクセスし、管理サーバ7から患者IDの付与を受けるようにしてもよい。
【0081】
又、管理サーバ7の退院患者情報データベース7aには、カルテなどに記載されている患者の個人情報をクローズド情報として格納し、地域診療所3が患者データベースフィルタを通して復号化した後、ダウンロードできるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、中核病院と密接な連携の下で退院後の治療を行うことができ、しかも快適な環境下で介護を受けながら、安心して養生生活を送ることができる病診連携の介護支援体制を構築する退院調整支援システムとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】退院調整支援システムの構成図である。
【図2】退院計画処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】患者ID登録ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】患者情報確認ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】退院計画を入力する画面の説明図である。
【図6】(a)は退院患者情報データベースに格納されている患者情報の説明図、(b)は新たに登録する患者情報の説明図である。
【図7】モニタに表示される介護施設の空室情報を示す説明図である。
【図8】(a)は患者データベースに格納されている患者情報の説明図、(b)は新たに登録する患者情報の説明図である。
【図9】(a)は地域診療所の情報端末に格納されている患者情報の説明図、(b)は介護施設の情報端末に格納されている患者情報の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1 地域中核病院
1a,3a,4a,5a 情報端末
1b 記録媒体
2 訪問看護ステーション
3 地域診療所
3b,4b,5b 患者データベース
4 介護福祉センタ
5 介護施設
6 地域連携室
7 管理サーバ
7a 退院患者情報データベース
11 通信回線網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者情報を管理する管理サーバと医療機関に設けた情報端末と退院後の患者の受け入れる介護施設に設けた情報端末と主に介護サービスを提供する介護福祉センタに設けた情報端末とを通信回線網を介して接続し、
上記管理サーバに格納した上記患者情報を共有して退院後の上記患者を支援する退院調整支援システムにおいて、
上記各情報端末の一つから退院計画を入力する手段と、
上記退院計画が入力されたとき該退院計画に付随する患者識別コードを付与する患者識別コード付与手段と、
上記退院計画を上記管理サーバに登録する管理サーバ登録手段と、
上記患者識別コードを上記各情報端末に送信するデータ送信手段と、
上記各情報端末で受信した上記患者識別コードを登録する情報端末登録手段と、
上記各情報端末に登録されている上記患者識別コードに基づき上記管理サーバにアクセスして該管理サーバに格納されている上記患者情報を該各情報端末にダウンロードする患者情報ダウンロード手段とを備えることを特徴とする退院調整支援システム。
【請求項2】
上記ダウンロード手段でダウンロード可能な上記患者情報は、上記各情報端末毎に設定されていることを特徴とする請求項1記載の退院調整支援システム。
【請求項3】
上記管理サーバに格納されている上記患者情報は開放可能なオープン情報とクローズド情報とを有し、
上記オープン情報は各情報端末でダウンロードが可能であり、上記クローズド情報は上記各情報端末毎にダウンロード可能な情報が制限されていることを特徴とする請求項1或いは2記載の退院調整支援システム。
【請求項4】
上記データ送信手段は、電子メールと電子ファクシミリとの一方で構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の退院調整支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−318174(P2006−318174A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139601(P2005−139601)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506200359)特定非営利活動法人病院地域医療推進協議会 (2)