説明

送受波器

【課題】 低周波領域においても小型で、かつ設計の自由度があり、広帯域化が可能な送受波器を提供すること。
【解決手段】 第一の円筒型圧電振動子10の内部に円筒型圧電振動子10と外径および長さが異なる第二の円筒型圧電振動子11を配置し、第一および第二の円筒型圧電振動子10、11をそれらの中心軸方向の両側から2つの弾性体12、13により挟んでボルト締めしてランジュバン型振動子を構成している。弾性体12は中心にボルト用の穴を開けた円柱形状の金属からなっているが、弾性体13は弾性体を含めた中心軸方向の長さが第一の円筒型圧電振動子10を挟む部分と第二の円筒型圧電振動子11を挟む部分とで異なるように2つの円柱または円筒を組み合わせた構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として水中で超音波を利用して信号の送受を行う送受波器に関し、特に圧電振動子を弾性体により挟んでボルト締めして構成されるランジュバン型振動子を用いた送受波器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より水中での信号の送受には音波が用いられており、送受話器は下記特許文献1に示されるように圧電振動子または電歪振動子により構成されている。
【0003】
図4は従来のランジュバン型振動子を用いた送受波器の一例を示す断面図である。図4において、円筒型圧電振動子41がその中心軸方向の両側から2個の弾性体42に挟まれボルト45により締め付けられて一体構造となっている。弾性体42は中心にボルト用の穴を開けた円柱形状の金属からなっている。円筒型圧電振動子41に特定の周波数の電圧を印加して励振することにより中心軸方向に音波を発信し、また中心軸方向から到来する音波を円筒型圧電振動子41により電気信号に変換し検出するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−16693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地上での通信と同様、水中での通信においても情報量を増加させるために広帯域化が要請されている。しかし、一般的に振動子の共振特性によってその帯域は制限されてしまう。図4に示す従来のランジュバン型振動子を用いた送受波器の周波数特性の一例を図5に示す。送受波器の弾性体42を含めた中心軸方向の長さをL0、音波の波長をλ0、速度をVsとすると、f0=Vs/λ0=Vs/(2L0)となる周波数f0で共振するため、図5に示すようにf0で音圧感度が最大となる。通常、共振のQ値が6〜7程度であり、また、通信可能距離や通信環境などの点から中心周波数f0は数kHz〜数十kHzの低周波領域であるので、その3dB帯域幅Δfは、2〜3kHzもしくはそれ以下に制限されてしまう。
【0006】
また、帯域を広げるために、図4の弾性体42の上に弾性定数の異なる弾性体を積み重ねて共振のQ値を小さくする工夫も行われているが、形状が大きくなってしまうことや積層体の接着面などの信頼性の確保が難しいこと、設計の自由度がとれないこと等の問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、低周波領域においても、小型で、かつ設計の自由度があり、広帯域化が可能な送受波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の送受波器は、第一の円筒型圧電振動子の内部に該第一の円筒型圧電振動子と外径が異なる第二の円筒型圧電振動子を配置し、前記第一および第二の円筒型圧電振動子をそれらの中心軸方向の両側から2つの弾性体により挟んでボルト締めしてなるランジュバン型振動子を用いている。
【0009】
また、前記弾性体を含めた中心軸方向の長さが前記第一の円筒型圧電振動子を挟む部分と前記第二の円筒型圧電振動子を挟む部分とで異なっていることが望ましい。
【0010】
また、前記第一および第二の円筒型圧電振動子のそれぞれを独立に駆動可能としてもよい。
【0011】
また、前記第一の円筒型圧電振動子を挟む部分の前記弾性体を含めた中心軸方向の長さと前記第二の円筒型圧電振動子を挟む部分の前記弾性体を含めた中心軸方向の長さの比が1/2〜3/2であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、2つの形状の異なる円筒型圧電振動子によりランジュバン型振動子を構成することにより、低周波領域においても小型で、かつ設計の自由度があり、広帯域化可能な送受波器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を以下に図面に基づき説明する。
【0014】
図1は、本発明による送受波器の第一の実施例を示す断面図である。図1において、第一の円筒型圧電振動子10の内部に円筒型圧電振動子10と外径および長さが異なる第二の円筒型圧電振動子11を配置し、第一および第二の円筒型圧電振動子10、11をそれらの中心軸方向の両側から2つの弾性体12、13により挟んでボルト締めしてランジュバン型振動子を構成している。
【0015】
また、弾性体12は図4の弾性体42と同様に中心にボルト用の穴を開けた円柱形状の金属からなっているが、弾性体13は弾性体を含めた中心軸方向の長さが第一の円筒型圧電振動子10を挟む部分と第二の円筒型圧電振動子11を挟む部分とで異なるように2つの円柱または円筒を組み合わせた構造となっている。
【0016】
本実施例においては、円筒型圧電振動子11は円筒型圧電振動子10に比べて外径および長さが小さく、円筒型圧電振動子10の内部に同軸に配置されている。また、弾性体13と弾性体12が円筒型圧電振動子10を挟みこむ部分の長さをL1、弾性体13と弾性体12が円筒型圧電振動子11を挟みこむ部分の長さをL2とすると、円筒型圧電振動子10を挟みこんだ部分の共振周波数f1はf1=Vs/(2L1)、円筒型圧電振動子11を挟みこんだ部分の共振周波数f2はf2=Vs/(2L2)となる。
【0017】
図2は、本実施例の送受波器の周波数特性の一例を示す図である。図2のように本実施例の周波数特性は、周波数f1での破線で示す共振特性と周波数f2での破線で示す共振特性を重畳した実線で示す特性となり、その3dB帯域Δfは図5に示した従来の送受波器に比べて2倍程度以上とすることができる。図5においては共振の等価的なQ値も従来の半分程度以下となる。
【0018】
この周波数特性は、長さL1とL2の選択、円筒型圧電振動子10と11の形状の設計により目的にあわせて最適化可能である。さらに本実施例においては、円筒型圧電振動子10と11の駆動端子をそれぞれ独立に取り出す構造とし、それらの駆動信号の振幅や位相を独立に制御することにより、周波数f1での共振特性と周波数f2での共振特性を独立に制御し、それらを重畳した周波数特性を調整することも可能である。以上のように本実施例の送受波器は従来の送受波器に比べて得られる特性における設計の自由度が大きい。
【0019】
また、本実施例においては帯域幅を広げるために従来のように円筒型圧電振動子を挟む弾性体を複数個積み重ねる必要がないので小型化が可能である。
【0020】
なお、本実施例において使用する円筒型圧電振動子10、11は、PZTなどの一般的な圧電材料により構成することができ、また、弾性体12、13はアルミニウムやステンレス、真ちゅうなどの金属材料、または前記材料と音速、密度等の弾性定数が同程度の他の材料を用いることができる。本実施例の送受波器の形状は使用する周波数により決定されるが、外径は10〜20cm程度、長さは20〜50cm程度である。
【0021】
図3は、本発明による送受波器の第二の実施例を示す断面図である。図3において、第一の円筒型圧電振動子20の内部に円筒型圧電振動子20と外径および長さが異なる第二の円筒型圧電振動子21を配置し、第一および第二の円筒型圧電振動子20、21をそれらの中心軸方向の両側から2つの弾性体22、23により挟んでボルト締めしてランジュバン型振動子を構成している。
【0022】
また、弾性体22は図4の弾性体42と同様に中心にボルト用の穴を開けた円柱形状の金属からなっているが、弾性体23は弾性体を含めた中心軸方向の長さが第一の円筒型圧電振動子20を挟む部分と第二の円筒型圧電振動子21を挟む部分とで異なるように2つの円柱または円筒を組み合わせた構造となっている。
【0023】
本実施例においては、円筒型圧電振動子21は円筒型圧電振動子10に比べて外径が小さく、長さは長く、円筒型圧電振動子20の内部に同軸に配置されている。また、弾性体23と弾性体22が円筒型圧電振動子20を挟みこむ部分の長さはL11、弾性体23と弾性体22が円筒型圧電振動子21を挟みこむ部分の長さはL22であり、第一の実施例と同様に、それらの長さに応じた2つの共振周波数を持ち、広い周波数帯域が得られる。
【0024】
以上のように本実施例においても、低周波領域においても小型でかつ設計の自由度があり、広帯域化可能な送受波器が得られる。
【0025】
なお、周波数f1とf2が離れすぎると使用可能な周波数帯域が分離してしまうので、それを防ぐためにはL1とL2、またはL11とL22の長さの比は1/2〜3/2であることが望ましい。
【0026】
本発明において、第一の円筒型圧電振動子と第二の円筒型圧電振動子の長さが同じで、それらを挟む弾性体の中心軸方向の長さが異なっている場合にも互いに異なる2つの共振周波数が得られ、本発明の効果が得られる。また、第一の円筒型圧電振動子と第二の円筒型圧電振動子の長さが異なり、それらを挟む弾性体を含めた中心軸方向の長さが同じとなる場合でも、第一及び第二の円筒型圧電振動子を挟む部分のそれぞれの弾性的構造が異なり、等価的な音速が異なるので、互いに異なる2つの共振周波数が得られ、本発明の目的が達せられる。この場合には、Δfの増加の効果は小さいが、製造や取扱い上の利点が生ずる。
【0027】
また、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、目的とする周波数特性に応じて円筒型圧電振動子や弾性体の形状、材料を選択、設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による送受波器の第一の実施例を示す断面図。
【図2】第一の実施例の送受波器の周波数特性の一例を示す図。
【図3】本発明による送受波器の第二の実施例を示す断面図。
【図4】従来のランジュバン型振動子を用いた送受波器の一例を示す断面図。
【図5】従来のランジュバン型振動子を用いた送受波器の周波数特性の一例を示す図。
【符号の説明】
【0029】
10、11、20、21、41 円筒型圧電振動子
12、13、22、23、42 弾性体
15、25、45 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の円筒型圧電振動子の内部に該第一の円筒型圧電振動子と外径が異なる第二の円筒型圧電振動子を配置し、前記第一および第二の円筒型圧電振動子をそれらの中心軸方向の両側から2つの弾性体により挟んでボルト締めしてなるランジュバン型振動子を用いたことを特徴とする送受波器。
【請求項2】
前記弾性体を含めた中心軸方向の長さが前記第一の円筒型圧電振動子を挟む部分と前記第二の円筒型圧電振動子を挟む部分とで異なることを特徴とする請求項1記載の送受波器。
【請求項3】
前記第一および第二の円筒型圧電振動子のそれぞれを独立に駆動可能としたことを特徴とする請求項1または2記載の送受波器。
【請求項4】
前記第一の円筒型圧電振動子を挟む部分の前記弾性体を含めた中心軸方向の長さと前記第二の円筒型圧電振動子を挟む部分の前記弾性体を含めた中心軸方向の長さの比が1/2〜3/2であることを特徴とする請求項2または3記載の送受波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−78718(P2008−78718A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252264(P2006−252264)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】