説明

送液装置、燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法並びに送液装置及び燃料電池装置

【課題】送液装置や燃料電池装置にけるマイクロポンプ中へ混入した気泡の簡易な排除方法、並びに送液装置及び燃料電池装置を提供する。
【解決手段】複数のマイクロポンプPa、Pbをそれぞれ用いて液体を送り合流させる送液装置MT’において、一方のポンプPa(Pb)内の気泡は他方のポンプPb(Pa)を送液駆動して一方のポンプへ液体を逆流させることでポンプ外へ排除する。マイクロポンプP1、P2、P3を用いて送液する燃料電池装置C1においても、ポンプ内の気泡を同様の手法で排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロポンプを用いて液体を送る送液装置及び該送液装置を応用した燃料電池装置におけるマイクロポンプ内の気泡をポンプ外へ排除する気泡排除方法並びに送液装置及び燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術を応用して化学分析や合成などのための装置や手法を微細化して該分析や合成などを行うμ−TAS(μ−Total Analysis System)が注目されている。旧来の分析、合成等を行う装置に比べ微細化されたμ−TASでは、試料の量が少なく済む、反応時間が短い、廃棄物が少ない等のメリットがある。また、医療分野に採用した場合、検体(血液)の量を少なくすることで患者の負担を軽減でき、試薬の量を少なくすることで検査のコストを下げることができる。さらに、検体及び試薬の量が少ないことから反応時間が大幅に短縮され検査の効率化がはかれる。μ−TASは携帯性にも優れており医療検査、環境分析等の広い分野での応用が期待されている。
【0003】
かかるμ−TASではマイクロ流体システムが採用されることがある。マイクロ流体システムを用いる化学分析、環境計測等では、分析、計測等を行うデバイス(チップ)上で送液、液体混合、検出を行うために、シリンジポンプ等の送液手段が必要とされる。しかし、例えばチップと送液手段が切り離されている場合、両者を接続する必要があるが、それでは両者接続部のデッドボリュームが大きくなり、そのために精密な送液制御が困難であったり、無駄な検体や試薬を必要としたりする。さらに、シリンジポンプ等の外付け送液手段を接続した場合、チップを含む装置全体が大きくなる。
【0004】
この点、例えば、特開2001−322099号公報は、分析、計測、検査等を行うデバイス(チップ)に搭載可能のコンパクトで嵩張らない薄型に形成可能の、マイクロポンプを開示しており、特開2002−214241号公報は、かかるマイクロポンプを利用したコンパクトで嵩張らない薄型に形成可能の液体供給機構及びこれを利用した液体混合機構を搭載した、被検査液体と試薬との反応を検出するマイクロチップを開示している。さらに、特開2003−220322号公報は、かかるマイクロポンプを利用したコンパクトで嵩張らない薄型に形成可能の、改良された液体の拡散混合機構を開示している。
【0005】
ところで、複数種類の液体の送液、混合等が要求される分野は分析、計測、検査等の分野に限られない。
ユビキタス社会の幕開けとともに電池の長寿命に対する要求が高まってきている。従来のリチウム電池はその理論限界に近づきつつあり、これ以上の大幅な性能向上は望めなくなりつつある。そんな中、重量(容積)あたりのエネルギー密度の高さから従来の電池に比べて大幅な長寿命化が可能な燃料電池が注目されている。
【0006】
燃料電池の中でも特に(1) 構造が簡単、(2) 水素スタンドのような大規模なインフラ整備を要することなく燃料の入手が容易、(3) 低コスト、低温での動作が可能などの点で、例えば携帯機器(ノート形パーソナルコンピュータ、携帯電話器等)向けの燃料電池として適していると言える直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)が注目されており、盛んに研究されている。
【0007】
DMFC型燃料電池を採用した燃料電池装置は燃料供給の方法により二つのタイプに分類される。一つはアクティブ型と呼ばれるもので、電池への燃料供給をポンプにより行うタイプであり、もう一つはパッシブ型と呼ばれるもので、ポンプを用いずに毛細管力等により燃料を供給するタイプである。
【0008】
ここでDMFCの反応式を示す。
燃料極側での反応:CH3 OH+H2 O→CO2 +6e- +6H+
空気極側での反応:(3/2) O2 +6H+ +6e- →3H2
全反応 :CH3 OH+(3/2) O2 →CO2 +2H2
【0009】
この反応式によればメタノールと水は燃料極で等モルで反応し、CO2 と6個の電子とプロトンを生成し、CO2 は外部に排出され、電子は外部回路を通って空気極(酸素極)へ、プロトンは電解質膜を通って空気極(酸素極)へそれぞれ別ルートで移動し、そこで反応して水分子3個を生成する。全反応としてはCO2 と2分子のH2 Oを生成する。
【0010】
上記反応式によるればメタノールと水は燃料極において等モルで反応するが、実際に燃料極に供給される燃料には通常濃度が3〜5%と低濃度のメタノール水溶液が用いられる。その理由は、メタノールが燃料極で上記の反応を起こさないまま電解質膜を透過して空気極へ到達してしまうというクロスオーバーという現象を防ぐためである。クロスオーバー現象は燃料中のメタノール濃度が高いほど起こりやすい。このようなクロースオーバー現象が発生すると、DMFCの二つの極(燃料極及び空気極)のうち燃料極で起こるべきメタノールの反応が空気極でも起こり、燃料の無駄と空気極側の電位低下による電池効率の著しい低下が起こる。従って、通常上記の低濃度のメタノール水溶液が用いられる。
【0011】
このようにDMFCでは燃料極へ低濃度メタノール水溶液を供給するのであるが、前記のアクティブ型燃料電池装置では、空気極側で生成される水及び燃料極から電解質膜を通過して空気極側へ移動してきた水を回収してこの水で高濃度メタノール水溶液を希釈(混合の1種)しながら燃料極に供給する燃料希釈循環形のシステムを構築することが可能である。
【0012】
1例として図16の発電システムを示すことができる。図16に示すシステムでは、通電されるべき負荷Lが燃料電池(DMFC)Cに接続されており、電池の外部に燃料タンクt1、回収タンクt2及びミキサー(混合タンク)MXが設けられていて、これらは配管により燃料電池Cに接続されている。燃料電池Cの空気極側で生成される水及び燃料極側から移動してきた液はポンプPM3で回収タンクt2へ回収される。発電にあたっては、燃料タンクt1からポンプPM1で高濃度メタノール水溶液を、回収タンクt2からポンプPM2で希釈用液を、それぞれミキサーMXへ供給し、そこでそれらを混合することで高濃度メタノール水溶液を希釈しつつ、該希釈されたメタノール水溶液を電池の燃料極へ供給する。燃料極へ供給された燃料のうち過剰分は回収タンクt2へ回収する。
【0013】
燃料極へ供給する燃料中のメタノール濃度を適正化するために、ミキサーMXから電池へ向かう燃料のメタノール濃度を濃度検出センサDSで検出し、この検出値に基づいてコントローラCONTがポンプPM1、PM2の動作をコントロールするようにし、これによりミキサーへ供給する高濃度メタノール水溶液の量と希釈用液の量の割合を調整することも可能である。
【0014】
このシステムによると、燃料タンク中のメタノール濃度を上げることが可能になり、例えば60wt%メタノール水溶液を用いれば当初から3wt%〜5wt%メタノール水溶液を用いる場合に比べて略1/20〜1/12に燃料タンクを小さくすることができる。
【0015】
この他、例えば、特開2003−132924号公報には、メタノールタンクから、このタンクに付設されたバルブの操作により高濃度メタノール水溶液を希釈タンクへ供給する一方、燃料電池本体の空気極で生成された水を該希釈タンクへ回収し、該希釈タンクにおいてメタノールタンクからのメタノール水溶液を回収水で希釈し、希釈されたメタノール水溶液を電池の燃料極へ供給することが開示されている。
【0016】
また、特開2003−346846号公報には、電池本体の外部に設けた混合室へ、メタノールタンクからメタノール水溶液を、さらに電池本体から未使用メタノール溶液や副生成物をそれぞれ流入させるとともに該混合室内燃料を電池へ導くための回路を設け、電池本体の燃料導入室或いはそれに通じる液通路の容積をそれらに対して設けた圧電アクチュエータで増減させることで該回路に燃料を循環させることが開示されている。この燃料電池装置においても、メタノールタンクに高濃度メタノール水溶液を収容しておき、これを電池本体から混合室へ回収されてくる水で希釈し、該希釈メタノール水溶液を燃料として用いることが可能であると考えられる。
このようにDMFC形の燃料電池を採用した燃料電池装置においても、2種類の液体(メタノール含有液と希釈用水)の送液及び合流による混合希釈が求められている。
【0017】
【特許文献1】特開2001−322099号公報
【特許文献2】特開2002−214241号公報
【特許文献3】特開2003−220322号公報
【特許文献4】特開2003−132924号公報
【特許文献5】特開2003−346846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、マイクロポンプ、例えば特開2001−322099号公報等に記載されたタイプのマイクロポンプを用いる場合、ポンプ室内に気泡が混入してしまうと、ポン駆動時のポンプ室の変位やポンプ室内の液体の圧力が気泡によって吸収されてしまい、所望の特性(流量)が得られなくなる。
【0019】
このような気泡の混入には、様々な原因が考えられる。例えば、ポンプ内に液体を初期充填する時の気泡の噛み込みや、液体流路の接合段差部に残った気泡が何らかのはずみでポンプ側に流れ込む場合や、液体中の溶存ガスが気泡となって出てくる場合、ポンプ室内の液体を駆動アクチュエータで振動させる時の圧力変動によるキャビテーション、などが考えられる。
【0020】
このような気泡がマイクロポンプのポンプ室に混入すると、ポンプの液体吐出力が気泡によって著しく低減するため、そのポンプ自身の力で気泡を排除することが困難になる。 特に、マイクロポンプを利用した機器等の小型化にともなってマイクロポンプが小型化すればするほど、マイクロポンプの駆動部分の変位量が少なくなるために、僅かな体積の気泡でもポンプの吐出力を大幅に低下させるので、気泡の自力排除は一層困難になる。
このような気泡を排除する方法として、外部に吸引機構を設けて吸引する方法が考えられる。しかし、この方法だとマイクロポンプを含む機器全体の大型化が避けられず、コストも高くなる。
【0021】
このような問題は、特開2001−322099号公報等に開示されたマイクロポンプを採用する場合だけでなく、一般にマイクロ流体システムに利用できるマイクロポンプを利用した送液機構や液体混合機構等について発生する問題である。
【0022】
また、直接メタノール形燃料電池(DMFC)におけるメタノール水溶液と希釈用液との混合希釈についてみると、図15に例示するようなアクティブ型燃料電池装置は、電池本体以外に燃料供給、希釈用液供給、液回収用と三つのポンプ、さらに、高濃度メタノール水溶液と回収水とのミキシング機構(ミキサー)が必要となり、装置が大型化、複雑化し、例えば携帯機器用の電池装置には不向きである。
【0023】
なお、燃料電池装置の大型化を抑制するためにポンプを必要としないパッシブ型DMFCを採用した高濃度メタノール水溶液希釈型の装置が考えられるが、各液の流量等についての積極的な制御を行えない難点がある。
【0024】
特開2003−132924号公報や特開2003−346846号公報に開示された燃料電池装置では、電池本体以外に高濃度メタノール水溶液と水とのミキシング機構(ミキシング用のタンク)を必要とし、それだけ装置が大型化する。
【0025】
そこで、DMFC形の燃料電池に関するこのような問題を解決する方法として、マイクロポンプ、例えば特開2001−322099号公報等に記載されたマイクロポンプを利用して液体原燃料(メタノール含有液)及び希釈用液をそれぞれ送って合流混合させ、かくして得られる希釈液体燃料を電池燃料極へ供給するポンプユニットを電池本体に積層することが考えられる。このポンプユニットによると、液体原燃料と希釈用液とを混合するためのミキシング機構を電池本体外に離して設ける必要がないとともに該ミキシング機構と燃料電池とを接続する配管も必要としない。よってそれだけ燃料電池装置全体をコンパクトに小形に形成することができ、例えば、携帯用機器の電源としても利用可能になってくる。
【0026】
また、電池空気極側にも同タイプのマイクロポンプを利用して、該空気極側で生成される水を前記燃料極側のポンプユニットへ循環供給するポンプユニットを設けることも考えられる。これによりコンパクトで小形の希釈液循環型の燃料電池装置を実現することが可能である。
【0027】
しかしながら、かかるポンプユニットを採用する場合次のような新たな問題が発生する。すなわち、DMFC型燃料電池においては、空気極側に生成された水をマイクロポンプを用いて循環させる場合、空気極の周りには当然ながら多くの空気が存在しているために、循環水の中に多くの気泡が混入する。また、燃料極側で生成される炭酸ガスが水に溶け込み、その一部が電解質膜を通過して空気極に達することで、循環水の中に炭酸ガスの気泡ができることも懸念される。
【0028】
これらの気泡が液体の流れにのってマイクロポンプのポンプ室に入ると、ポンプ駆動時のポンプ室の変位やポンプ室内の液体の圧力が気泡によって吸収されてしまい、所望の特性(流量)が得られなくなる。特に、燃料電池装置の小型化にともなってマイクロポンプが小型化すればするほど、マイクロポンプの駆動部分の変位量が少なくなるために、僅かな体積の気泡でもポンプ特性に大きく影響する。ひいては、燃料電池の発電性能が低下する。
【0029】
以上、DMFC型燃料電池装置を中心にその問題点を指摘してきたが、一般的に言って、燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、該液体燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を電池へ供給するタイプの燃料電池装置においては、液体燃料と希釈用液とを混合するミキシング機構(例えば混合タンク)が電池本体外に必要となり、該ミキシング機構のために燃料電池装置が大型化するという難点があり、この問題を解決すべく上述のようなポンプユニットを電池本体に積層すると、該ポンプユニットにおけるマイクロポンプへ気泡が入り込んで燃料電池装置の発電性能が低下するという問題がある。
【0030】
そこで本発明は、複数のマイクロポンプを用いて送液する送液装置における該マイクロポンプ内の気泡を簡易に排除できる送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法及び該方法を実施できる送液装置を提供することを課題とする。
【0031】
また本発明は、燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、ポンプを用いて液体原燃料及び希釈用液を送り、それらを合流混合させて希釈液体燃料とし、それを燃料電池へ供給する燃料電池装置におけるポンプ内気泡の排除方法であって、燃料電池装置自身のコンパクト化、小形化を達成しつつ、ポンプ内気泡を簡易に排除できる燃料電池装置のポンプ内気泡の排除方法及び該方法を実施できる燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記課題を解決するため本発明は次の送液装置、燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法並びに送液装置及び燃料電池装置を提供する。
(1)送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法
複数のマイクロポンプを用いて送液する送液装置における該マイクロポンプ内の気泡を排除する方法であり、該複数のマイクロポンプのうちいずれかのマイクロポンプに気泡が存在し、該マイクロポンプ内気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたり、該気泡排除対象マイクロポンプ以外のマイクロポンプのうち1又は2以上を送液駆動して該気泡排除対象マイクロポンプへ液体を逆流させることで、該気泡を排除する送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【0033】
この気泡排除方法によると、既に備わっているマイクロポンプを用いて気泡排除対象マイクロポンプ内の気泡を該ポンプ外へ簡易に排除できる。
【0034】
送液装置における複数のマイクロポンプの配置態様は送液装置の用途等に応じて任意に決定できるが、例えば、2液以上の液体の混合や、希釈等の目的の送液装置として、複数のマイクロポンプを並列に配置し、それぞれのマイクロポンプで液を送って合流部で合流させて送る送液装置を例示できる。
【0035】
かかる送液装置の場合、該並列に配置されたいずれかのマイクロポンプに気泡が存在し、該マイクロポンプ内気泡をポンプ外へ排除するにあたっては、該気泡排除対象マイクロポンプ以外のマイクロポンプのうち1又は2以上を送液駆動して前記合流部を介して該気泡排除対象マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除することができる。
【0036】
また、気泡排除対象マイクロポンプ内の気泡の排除中は、該気泡排除対象マイクロポンプは駆動しないでおいてもよく、或いは該気泡排除対象マイクロポンプを逆方向に送液を行うように駆動してもよい。後者の場合には、より確実に気泡を排除でき、また、気泡排除時間を短縮できる。
【0037】
前記送液装置は各マイクロポンプに連通する前記合流部より下流側へ延びる液通路を有していてもよい。その場合、より確実に気泡を排除するために、該合流部より下流側へ延びる液通路の流路抵抗の値を前記気泡排除対象マイクロポンプの流路抵抗の値と同程度か、又はそれより大きくしてもよい。或いは、該合流部より下流側へ延びる液通路に液体の流れを抑制するための液流抑制手段を設け、前記気泡排除対象マイクロポンプから気泡を排除するにあたり、該液流抑制手段により前記合流部下流側への液流れを抑制してもよい。
【0038】
かかる液流抑制手段としては、前記合流部より下流側へ延びる液通路の開口を閉じることができる蓋体、該液通路を閉じることができる流体弁、該液通路の流路断面積を減少させ得る絞り機構から選ばれた少なくとも一つを例示できる。
【0039】
いずれにしても送液装置は、少なくとも一つのマイクロポンプについて、より好ましくは各マイクロポンプについて該マイクロポンプに連通して隣り合う液通路に気泡トラップを設けたものとしてもよい。その場合、該気泡トラップは、マイクロポンプ内気泡を排除する方向側に隣り合う液通路に設け、該マイクロポンプへ向かって流れる液体中の気泡を捕捉するが、該マイクロポンプから遠ざかる方向へ流れる液体中の気泡の通過を許す一方向気泡トラップとすればよい。
【0040】
かかる一方向気泡トラップがあることで、マイクロポンプ外へ排除された気泡は該一方向気泡トラップに捕捉され、再びマイクロポンプ内へ混入することが抑制される。
【0041】
前記マイクロポンプとしては、第1絞り流路、第1絞り流路より長い第2絞り流路、第1、第2の絞り流路の間のポンプ室、ポンプ室の可撓性壁に設置された駆動アクチュエータを含み、駆動アクチュエータに交番電圧を印加することで交番電圧波形に応じて第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる正規送液動作、又は第2絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第1絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる逆送液動作をさせ得るマイクロポンプを例示できる。送液装置におけるマイクロポンプのうち少なくとも一つをこのようなマイクロポンプとしてもよい。
【0042】
(2)燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
本発明の気泡排除方法実施の対象となる燃料電池装置は、燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、液体原燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置であり、該燃料電池と、該燃料電池の燃料極に積層された第1ポンプユニットとを含んでおり、第1ポンプユニットは液体原燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料とし、該希釈液体燃料を電池燃料極へ供給するユニットであり、液体原燃料を供給する第1マイクロポンプを含む原燃料供給路、希釈用液を供給する第2マイクロポンプを含む希釈用液供給路、該原燃料供給路と希釈用液供給路の双方に連通する液体混合路を有している燃料電池装置である。
【0043】
かかる燃料電池装置において、第1マイクロポンプ内気泡の排除にあたっては、第2マイクロポンプを送液駆動して前記液体混合路を介して第1マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除し、第2マイクロポンプ内気泡の排除にあたっては、第1マイクロポンプを送液駆動して前記液体混合路を介して第2マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除する。
【0044】
前記燃料電池装置はさらに燃料電池の空気極に積層された第2ポンプユニットを含んでいてもよい。該第2ポンプユニットは、少なくとも燃料電池における電気化学反応により生成される液体を前記希釈用液として前記第1ポンプユニットの希釈用液供給路へ循環させるためのユニットであり、少なくとも電気化学反応による生成液体を回収する第3のマイクロポンプを含む生成液回収路を有しているものである。該第3マイクロポンプ内気泡を排除するにあたっては、前記第1ポンプユニットの第2マイクロポンプを逆方向に送液を行うように駆動させればよい。なお、第2ポンプユニットは、さらに、燃料極側から電解質膜等の部材を通過して空気極側へ移動してきた液体も希釈用液として回収するものであってもよい。
【0045】
いずれにしても、既に備わっているマイクロポンプを用いて気泡排除対象マイクロポンプ内の気泡を該ポンプ外へ簡易に排除できる。この気泡排除方法を、マイクロポンプ内に気泡が存在するようになったとき、或いは随時又は定期的に実施することで、使用液体中の気泡の影響を抑制して所定濃度及び量の希釈液体燃料を電池へ安定的に供給でき、それだけ発電性能を良好に維持できる。
【0046】
また、ここでの燃料電池装置は液体原燃料と希釈用液とを混合するためのミキシング機構を電池本体外に離して設ける必要がないとともに該ミキシング機構と燃料電池とを接続する配管も必要としない。よってそれだけ燃料電池装置全体をコンパクトに小形に形成することができ、例えば、携帯機器用の電源としても利用可能である。
【0047】
このように、燃料電池装置のコンパクト化、小形化を達成しつつポンプ内気泡を簡易に排除できる。
【0048】
なお、気泡排除対象マイクロポンプ内の気泡の排除中は、該気泡排除対象マイクロポンプは駆動しないでおいてもよく、或いはより確実に気泡を排除し、また、気泡排除時間を短縮するために該気泡排除対象マイクロポンプを逆方向に送液を行うように駆動してもよい。
【0049】
また、燃料電池装置は、少なくとも一つのマイクロポンプについて、より好ましくは各マイクロポンプについて、該マイクロポンプに連通して隣り合う液通路に気泡トラップを設けたものでもよい。その場合、該気泡トラップは、マイクロポンプ内気泡を排除する方向側に隣り合う液通路に設け、該マイクロポンプへ向かって流れる液体中の気泡を捕捉するが、該マイクロポンプから遠ざかる方向へ流れる液体中の気泡の通過を許す一方向気泡トラップとすればよい。
【0050】
かかる一方向気泡トラップがあることで、マイクロポンプ外へ排除された気泡は該一方向気泡トラップに捕捉され、再びマイクロポンプ内へ混入することが抑制される。
【0051】
マイクロポンプとしては、第1絞り流路、第1絞り流路より長い第2絞り流路、第1、第2の絞り流路の間のポンプ室、ポンプ室の可撓性壁に設置された駆動アクチュエータを含み、駆動アクチュエータに交番電圧を印加することで交番電圧波形に応じて第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる正規送液動作、又は第2絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第1絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる逆送液動作をさせ得るマイクロポンプを例示できる。送液装置におけるマイクロポンプのうち少なくとも一つをこのようなマイクロポンプとしてもよい。
【0052】
本発明は前記気泡排除方法を実施できる次の送液装置及び燃料電池装置も提供する。
(3)送液装置
複数のマイクロポンプを用いて送液する送液装置であって、該複数のマイクロポンプのうちいずれかのマイクロポンプ内に存在する気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたり、該気泡排除対象マイクロポンプ以外のマイクロポンプのうち1又は2以上を送液駆動して該気泡排除対象マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除する動作を実行する駆動部を備えた送液装置。
(4)燃料電池装置
燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、液体原燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置であって、該燃料電池と、該燃料電池の燃料極に積層された第1ポンプユニットとを含んでおり、第1ポンプユニットは液体原燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料とし、該希釈液体燃料を電池燃料極へ供給するユニットであり、液体原燃料を供給する第1マイクロポンプを含む原燃料供給路、希釈用液を供給する第2マイクロポンプを含む希釈用液供給路、該原燃料供給路と希釈用液供給路の双方に連通する液体混合路を有しており、さらに、第1マイクロポンプ内に存在する気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたって第2マイクロポンプを送液駆動して前記液体混合路を介して第1マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除し、第2マイクロポンプ内に存在する気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたって第1マイクロポンプを送液駆動して前記液体混合路を介して第2マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除する動作を実行する駆動部を備えている燃料電池装置。
【発明の効果】
【0053】
以上説明したように本発明によると、複数のマイクロポンプを用いて送液する送液装置における該マイクロポンプ内の気泡を簡易に排除できる送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法、及び該マイクロポンプ内の気泡を簡易に排除できる送液装置を提供することができる。
また本発明によると、燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、ポンプを用いて液体原燃料及び希釈用液を送り、それらを合流混合させて希釈液体燃料とし、それを燃料電池へ供給する燃料電池装置におけるポンプ内気泡の排除方法であって、燃料電池装置自身のコンパクト化、小形化を達成しつつ、ポンプ内気泡を簡易に排除できる燃料電池装置のポンプ内気泡の排除方法、及び燃料電池装置自身のコンパクト化、小形化を達成しつつポンプ内気泡を簡易に排除できる燃料電池装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
<送液装置の基本構造例>
次に、本発明の実施形態に係る送液装置及び燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法等について説明するが、その前に送液装置の1例の基本構造及びマイクロポンプ例について図9及び図10を参照して説明する。
図9に示す送液装置MTは薄型、小形に形成可能のマイクロチップ型の送液装置である。図9(A)は装置MTの平面図であり、図9(B)は同装置の側面図であり、図9(C)は図9(B)のX−X線に沿う断面図である。
【0055】
図9に示す送液装置MTは、2液の混合、希釈等の目的で第1、第2の液をそれぞれ送って合流させるものである。装置MTは、マイクロポンプPaを含む第1液体供給路L1、マイクロポンプPbを含む第2液体供給路L2を備えており、供給路L1のポンプ上流側端には液体供給口Li1が、供給路L2のポンプ上流側端には液体供給口Li2が設けられている。供給路L1、L2のポンプ下流側端は合流部L3でY字状に合流し、混合流路L4に続き、該流路端の液体出口Loに達している。
【0056】
流路L1〜L4の深さは例えば170μmであり、流路L1、L2、L4の幅は例えば150μmである。装置MTの外形寸法は例えば、約20mm×40mm×0.5mmである。もっとも、寸法、形状は、これに限るものではない。
【0057】
マイクロポンプPa、Pbのそれぞれは、液体供給口Li1、Li2から液体出口Loの方へ向かう正規送液方向LDの送液を行えるが、装置メインテナンス等にあたり、必要に応じその逆方向にも送液できる双方向型マイクロポンプである。
【0058】
ここで例示する双方向マイクロポンプPa、Pbは基本的に、第1絞り流路、第1絞り流路より長い第2絞り流路、第1、第2の絞り流路の間のポンプ室、ポンプ室の可撓性壁に設置された駆動アクチュエータを含み、駆動アクチュエータに交番電圧を印加することで交番電圧波形に応じて第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる正規送液動作、又は第2絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第1絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる逆送液動作をさせ得るマイクロポンプである。
【0059】
その具体例を図10を参照して説明する。
図10に示すマイクロポンプは、第1絞り流路f1、第2絞り流路f2、該第1、第2の絞り流路f1、f2間のポンプ室PC、ポンプ室PCの可撓性壁(ダイアフラム)DFに設置された駆動アクチュエータ(図示例では圧電素子PZT)を含んでいる。
【0060】
圧電素子PZTに交番電圧を印加してポンプ室壁(ダイアフラム)DFを連続的に変形させることでポンプ室PCを収縮膨張させ、第1絞り流路f1からポンプ室PC内へ液体を吸引し、第2絞り流路f2からポンプ室内液体を吐出できる。或いは液を逆流させることもできる。
【0061】
さらに説明すると、第1、第2の絞り流路f1、f2は断面積が同じ又は略同じであるが、流路f1より流路f2は長く形成されている。正規送液方向への送液時には、圧電素子PZTを駆動する交番電圧として図10(C)に示すように急峻な立ち上がり、緩やかな立ち下がりを示す交番電圧を用いる。
【0062】
図10(A)に示すように、印加電圧の急峻な立ち上がり時に圧電素子によりダイアフラムDFを急激に変形させてポンプ室PCを急激に収縮させると、長い流路f2では流路抵抗により液体が層流状に流れる一方、短い流路f1では液体が乱流となり、流路f1からの液体の流出が抑制される。これにより、流路f2からポンプ室内液体を吐出することができる。
【0063】
図10(B)に示すように、印加電圧の緩やかな立ち下がり時に圧電素子によりダイアフラムDFを緩やかに復帰動作させてポンプ室PCを緩やかに膨張させると、短い流路f1からはポンプ室PC内へ液体が流入する一方、このとき流路f1より流路抵抗が大きい長い流路f2からの液体吐出が抑制される。これにより、流路f1からポンプ室PC内へ液体を吸引できる。
よって、正規送液方向において上流側に流路f1を下流側に流路f2を配置することで正規送液方向に送液できる。
【0064】
また、図10(F)に示すように、圧電素子PZTに緩やかな立ち上がり、急峻な立ち下がりを示す交番電圧を印加することで、図10(D)に示すように流路f1からポンプ室内液体を吐出させ、図10(E)に示すように流路f2から液体を吸引させることもできる。
【0065】
図9に示す送液装置MTでは各ポンプの圧電素子PZTa、PZTbに駆動部から交番電圧を印加することで該交番電圧波形に応じて供給口Li1、Li2から第1、第2の液体を吸引し、送液し、合流部L3で合流させ、混合流路L4で混合して液体出口Loから吐出することができる。また、各ポンプは液を逆流させるように動作させることもできる。
【0066】
送液装置MTは例えば図11に示す工程により薄型、小形に形成できる。図11は図9(C)のα−α線に沿う切断端面部分を代表的にとりあげて、装置製造工程を示している。
図11(A)に示すように、シリコン基板SiSを準備する。シリコン基板SiSとしては、例えば厚さ200μmのシリコンウエハーを用いる。次に、図11(B)に示すように、シリコン基板SiSの上下面に、シリコン酸化膜SiO2 を形成する。酸化膜は、例えば、それぞれの厚さが1.7μmとなるように、熱酸化により形成する。次に、上面にレジストを塗布して所定パターンのマスクを形成し、該マスクパターンで露光し、次いで現像して酸化膜をエッチングする。そして、上面のレジストを剥離した後、再びレジストを塗布し、露光、現像、エッチングを行う。これにより、図11(C)に示すように、酸化膜を完全に除去した部分aと、厚さ方向に途中まで除去した部分bを形成する。
【0067】
レジスト塗布には、例えば東京応化社製OFPR800等のレジストを用いスピンコ一ターで回転塗布し、レジスト膜の厚さは、例えば1μmとする。露光はアライナ一により行い、現像はデベロッパーにより行う。酸化膜のエッチングには、例えば反応性イオンエッチング法(RIE)を用いる。レジストの剥離には、剥離液、例えば硫酸過水を用いる。
【0068】
次に、図11(D)に示すように上面についてシリコンエッチングを途中まで行った後に、bの部分の酸化膜をエッチングにより完全に除去し、再びシリコンエッチングを行い、図11(E)に示すようにシリコン基板SiSを170μmエッチングした部分a’と、25μmエッチングした部分a”とを形成する。シリコンエッチングには、例えば、ICP(高周波誘導結合型プラズマ、Ind uctively Coupled Plasma )によるエッチング法を用いる。さらに、図11(E)に示すように酸化膜を、例えばBHFを用いて完全に除去する。
【0069】
次に、図11(F)に示すように、シリコン基板の下面に電極膜e(例えばITO膜)を成膜する。そして、図11(G)に示したように、シリコン基板の上面にガラス板GLを貼り付ける。この貼り付けは、例えば、1200V、400℃で、陽極接合により行う。最後に、図11(H)に示すように、ポンプ室PCの振動板の部分に圧電素子を接着する。
送液装置MTはこのようにして薄型に小形に形成できるが、このあと説明する本発明の実施形態に係る一方向気泡トラップを備えた送液装置や、燃料電池装置におけるポンプユニットも板状部材のエッチング処理等により同様な手法で精度よく形成できる。
【0070】
<マイクロポンプ内気泡排除対象の送液装置>
次に図1を参照してマイクロポンプ内気泡排除対象の送液装置の1例(送液装置MT’)について説明する。図1に示す送液装置MT’は図9に示す送液装置MTに一方向気泡トラップTrを設けたものであり、薄型、小形に形成可能のマイクロチップ型のものである。一方向気泡トラップTrを設けた点を除けば装置MTと実質上同構造、作用のものであり、装置MTにおける部分、部品と実質上同じ部分、部品には装置MTと同じ参照符号を付してある。
図1(A)は装置MT’の平面図であり、図1(B)は図1(A)のY−Y線に沿う切断端面図である。
【0071】
図1の送液装置MT’では、正規送液方向LDにおいてマイクロポンプPaに隣り合う上流側及び下流側のそれぞれの液通路に一方向気泡トラップTrを設けてあるとともに、マイクロポンプPbに隣り合う上流側及び下流側のそれぞれの液通路にも一方向気泡トラップTrを設けてある。これら一方向気泡トラップTrはいずれも同構造のものであり、一方向へ流れる液体中の気泡を捕捉するが、反対方向に流れる液体中の気泡の通過を許すものである。装置MT’における各マイクロポンプ両側の気泡トラップTrは、マイクロポンプPa(Pb)を間にして互いに逆向きに、且つ、マイクロポンプPa(Pb)へ向かって流れる液体中の気泡を捕捉するが、マイクロポンプから遠ざかる方向へ流れる液体中の気泡の通過を許すように設けてある。
【0072】
気泡トラップTrについて、ポンプPbの上流側のトラップTr(Trb)を例にとって説明すると、トラップTr(Trb)はマイクロポンプPbへ向かって順次配置された第1、第2及び第3の流路部分51、52、53を含んでいる。第1、第3の流路部分はいずれも深さ170μm、幅500μmであるが、第2流路部分52は深さが25μmと浅く形成されている。さらに、第2流路部分52と第1流路部分51との境界部521の流路断面積が(深さ25μm×幅500μm)であり、第2流路部分52と第3流路部分53との境界部522の流路断面積(深さ25μm×幅25μm)より大きく形成されている。第1、第2の流路部分の境界部に対して深さ145μmの段差部520が提供されている。他の気泡トラップTrも同寸法構造に形成されている。
【0073】
マイクロポンプPa、Pbのそれぞれにおける第1絞り流路f1は、流路断面積が〔深さ(高さ)25μm×幅25μm〕であり、長さは25μmである。第2絞り流路f2は、流路断面積が〔深さ25μm×幅36μm〕であり、長さ440μmである。
【0074】
送液装置MT’では、正規送液方向LDに送液する場合において、ポンプPa(Pb)の上流側(液体供給口Li1、Li2側)の一方向気泡トラップTrに対して気泡を含む液体がポンプPa(Pb)のポンプ室PCに向かう方向に流れてきた場合、気泡の大部分はトラップTrの段差部分520で引っかかり、捕捉され、それだけポンプ内への気泡混入が抑制される。かくして、送液装置MT’は、それだけ安定した流量特性が得られる。
【0075】
装置MT’のメインテナンス時等において、例えば双方向型ポンプPa、Pbを正規送液方向LDとは逆方向に送液するように駆動して液体を逆流させる場合においても、ポンプPa(Pb)の下流側(液体出口側)の一方向気泡トラップTrに対して気泡を含む液体がポンプPa(Pa)のポンプ室PCに向かう方向に流れてきた場合、気泡の大部分は該トラップTrの段差部分520で引っかかり、捕捉され、該気泡がマイクロポンプ中へ混入することが抑制される。
【0076】
また、かかる逆流により、正規送液時にポンプ上流側の一方向気泡トラップTrに捕捉されていた気泡を該トラップTrより上流側へ追い出し排除することもできる。かかる気泡の追い出し排除は、ポンプ下流側にも一方向気泡トラップTrを設けてあることで、逆流液体中の気泡のポンプへの混入を抑制する状態で行える。
これらにより、逆流を伴うメインテナンス等を円滑に、効率よく行えるとともにその後の正規送液方向への送液において安定した流量特性が得られる。
【0077】
正規送液方向であれ、その逆方向であれ、マイクロポンプから遠ざかる方向に流れる液体がトラップTrへ進入してくる場合、該液体はトラップTrの第2、第3の流路部分52、53の、流路断面積が著しく絞られた境界部522へ進入することになり、そのとき流速が上がるので、該液体中に気泡が含まれていても、該気泡は該境界部522の部位にある段差部520’を乗り越えてトラップTrの外側へ抜け出ることができる。
【0078】
ここで、気泡が段差部520’を乗り越えられるかどうかは、該段差部での液体流速に大きく依存するが、この送液装置MT’では、トラップTrにおける第2流路部分52と第1流路部分51との境界部521の流路断面積(25μm×500μm)に対し第2流路部分52と第3流路部分53との境界部522の流路断面積(25μm×25μm)は20分の1と小さく形成されているので、同じ流量で比較すると境界部521、522では流速も20倍異なることになる。従って、ポンプへ向かう方向の液体中の気泡のみ捕捉される。
【0079】
エタノールを用いた実験では、ポンプに近づく方向に対しては300nL(ナノリットル)/sec以上の流量でも気泡はトラップされて動かなかったが、ポンプから遠ざかる方向への流れでは、100nL/secにも満たない流量でも気泡が通過できることが繰り返し確認された。
【0080】
なお、送液装置MT’のマイクロポンプPa、Pbでは、ポンプ室PC両側に絞り流路f1、f2が設けられているが、この部分の開口断面積は気泡トラップTrの気泡トラップ機能のある境界部521の流路断面積よりも十分に狭い断面積であることから、かかる絞り流路f1、f2に気泡が溜まってしまうことは無かった。
【0081】
一方向気泡トラップTrの境界部521と段差部520は形状効果のみでも気泡を捕捉する能力を有するが、さらに、かかる部分の壁面の一部等にフッ素系樹脂を塗布するなどによって撥水処理を施したり、壁面を粗らしたりして気泡を動きにくくすると、気泡捕捉により有効である。
【0082】
送液装置に採用できる一方向気泡トラップは前記のトラップTrに限定されない。例えば、一方向気泡トラップに対応するマイクロポンプへ向かって、流路幅方向に延びる段差を呈するように流路断面積が縮小された部分を含む一方向気泡トラップも採用できる。
その具体例として、図2から図5のそれぞれに示すものを挙げることができる。これらは気泡トラップ構成部分の形状に関するものであり、断面の幅が変化している例である。
【0083】
図2の一方向気泡トラップは、ポンプに向かって急激に断面幅が狭くなり、その後ゆっくりと断面幅が広がっているトラップである。
図3の一方向気泡トラップは、ポンプに向かって、まず一旦断面幅が徐々に広がっており、その後急激に断面幅が狭くなっているトラップである。
【0084】
図4の一方向気泡トラップは、ポンプに向かって、まず一旦、断面幅が徐々に広がっており、その後急激に断面幅が狭くなり、さらにその後、再びゆっくりと断面幅が広がっているトラップである。
この構成の一方向気泡トラップは、図3のトラップよりも気泡トラップ部の断面積比を大きくすることができる。
【0085】
図5の一方向気泡トラップは、マイクロポンプへ向かって段差を呈するように流路断面積が縮小された部分が、該部分に隣り合う、該部分より流路断面積が大きい流路部分の断面中心を通って送液方向に延ばした線CLから外れた位置で開口しているトラップである。このトラップは、前後の流路の中心線CLに対して、流路が狭まっている部分の位置が左右どちらかにずれている例である。
このような形にすれば、気泡がトラップされる部分(段差)が流路の左右どちらかに偏って面積が大きくなるので、より大きな気泡もトラップすることができる。
また、幅が狭まっている部分の流路幅よりも直径が大きい気泡に関しては、幅が狭まっている部分がこのように片側に偏っていると、幅狭部の内壁に気泡が触れにくくなるので、より気泡が抜けにくくなるという利点がある。
また、流路が親水性の場合、比較的大き目の気泡(直径が流路幅に対して無視できない大きさの気泡)は、液体が流れているときには流路断面の中心によろうとする傾向がある。従って、幅が狭まっている部分を前後の流路の中心線CLにかからないようにずらすと、気泡捕捉のうえでより有効である。
【0086】
なお、図2から図5に示す一方向気泡トラップは、いずれも深さが一定の例である。
このようにすると、図1の装置MT’におけるトラップTrのように深さを変える必要がないので、トラップ製作においてエッチングの回数が少なく済むので、作製の手間が少なくてすむ。
なお、図1のトラップTrのように深さを変えたトラップと、図2から図5のように幅を変えたトラップを組み合わせた構造の一方向気泡トラップを採用することも可能である。
【0087】
送液装置MT’では一方向気泡トラップTrは各マイクロポンプの両側に一つずつ設けられているだけであるが、少なくとも一つのマイクロポンプについて、マイクロポンプ両側の液通路のうち少なくとも一方に、一方向気泡トラップが複数直列配置で設けられていてもよい。
例えば図6(A)に示すように、図1に示すタイプのトラップTrを向きを同じにして複数個直列に配置する場合を挙げることができる。なお図6(B)は図6(A)のZ1−Z1線に沿う切断端面図である。
このようにすると、もし一つのトラップTrをすり抜けた気泡があったとしても、次の気泡トラップ部で捕捉することができる。
【0088】
さらに、直列配置された複数の一方向気泡トラップは、マイクロポンプから遠い方のトラップから近い方のトラップへ、気泡をトラップする部分の流路断面積が段階的に小さくされていてもよい。
例えば図7(A)に示すように、図6(A)に示す複数の直列配置の気泡トラップTrの大きさをポンプに近いものほど順次小さくした場合を挙げることができる。なお、図7(B)は図7(A)のZ2−Z2線に沿う切断端面図である。
このようにすることで、まず流路断面の大きなトラップ部で大きな気泡をトラップし、ポンプに近いところで小さな気泡をトラップすることができる。また、ポンプから遠いトラップ部の断面積を広げておくことで、ポンプから遠いところで、できるだけ多くの気泡をトラップしておく空間を提供することもできる。
【0089】
上記のような、同一方向の複数の直列トラップ構造は、図1に示すタイプのトラップTrばかりを直列配置するものだけでなく、かかるトラップTrの他、図2から図5のそれぞれに示される構造の一方向気泡トラップも採用対象に含めて、これらから選択した一方向気泡トラップを組み合わせてもよい。
例えば、図5に示すような左右非対称のトラップを、左寄りのものと右寄りのものを交互に配置するという方法も考えられる。このようにすると、流路中で左右どちらかに偏った気泡についても、より確実にトラップできる。
【0090】
送液装置MT’においては、一方向気泡トラップTrのうち少なくとも一つについて、該一方向気泡トラップにおける気泡トラップ部分に連通すの気泡抜き用孔又は該一方向気泡トラップを間にしてマイクロポンプとは反対側に位置する液通路部分に連通する気泡抜き用孔を形成しておいてもよい。
かかる気泡抜き用孔を設けておくことで、メインテナンスモード等において該孔から気泡を外部へ吸引することが可能になる。
【0091】
気泡抜き用孔は次のように設けてもよい。すなわち、図8(A)に例示するように、一方向気泡トラップTrについて、該一方向気泡トラップTrと同構造で逆向きの逆一方向気泡トラップTr’を一方向気泡トラップTrに隣り合わせてマイクロポンプとは反対側に設けるとともに、該両トラップTr、Tr’間の液通路部分(気泡貯留部AR)に連通する気泡抜き用孔Hを形成するのである。なお、図8(B)は図8(A)のZ3−Z3線に沿う切断端面図である。
かかる構造は、捕捉された気泡が流路内を動きまわらないように決められた領域ARに留めておいて、そこに設けられた気泡抜き孔Hから気泡を排出するためのものである。孔Hは換言すれば気泡排除孔である。
【0092】
かかる気泡貯留部ARを含む構造により、液体が逆流した場合でも、一旦トラップTrに溜まった気泡が逆流して流路中に戻ることが抑制されるので、流路中の気泡を効率よく排除できる。また、気泡を気泡貯留部に貯めておいて、後で一括して排除することもできるので、メンテナンスが簡単になる。
【0093】
気泡排除孔Hは、そこから液体が勝手に溢れ出さない程度に孔径を狭めて、撥水処理を施すことで使い勝手がよくなる。この孔Hに着脱式の蓋(図示省略)を設けておけば、非使用時の液漏れや流路の乾燥、空気の混入などを防げる。また、この蓋をメンテナンス時以外のポンプ動作時には閉めておけば、液体に加わる圧力で液体が漏れ出すことも防止できる。
【0094】
気泡貯留部ARに溜まった気泡は、孔Hの外部に設けた図示省略の吸引装置によって吸引することができる。或いは、ポンプ駆動開始時に孔Hの蓋を開けていれば、一定量以上溜まった気泡は勝手に孔Hから排出される。或いは、メンテナンス時に通常動作時よりも気泡貯留部ARに大きい圧力がかかるようなポンプ動作を行わせて気泡を排除することもできる。
【0095】
<送液装置MT’のマイクロポンプからの気泡排除方法>
以上説明したように送液装置MT’では、一方向気泡トラップTrが設けられていることでポンプPa、Pbへの気泡混入を抑制できるが、もし、マイクロポンプPa、Pbのいずれかでポンプ室PC中に気泡が存在するようになってしまった場合でも、該気泡をポンプ室から排除することが可能である。以下、ポンプ内気泡の排除方法について説明する。
【0096】
例えばマイクロポンプPaにある大きさ以上の気泡が混入した場合、該ポンプを駆動しても気泡が圧力ダンパーとして働くので液体は流れにくくなり、液体中の気泡もその場に滞留したまま動かなくなってしまう。かかるポンプPa中の気泡は、並列に配置されているもう一つのマイクロポンプPbを駆動したときに生じる液流を利用して排除できる。
【0097】
具体的には、例えば、マイクロポンプPbを所定の駆動波形(図10(C)の交番電圧波形)で駆動することによって、ポンプPbから合流部L3の方へ液体を送液する。この時、合流部L3より下流側の液体出口Loに蓋(栓)をしておく。
そうすると、ポンプPbから送り出された液体は、合流部L3を通ってマイクロポンプPaに流れ込む。この流れによって、ポンプPaのポンプ室PC内に滞留した気泡を液体供給口Li1の方向へ逆流させて押し出すことができる。
【0098】
このとき、少なくとも、押し出された気泡がポンプPaの上流側(液体供給口側)の一方向気泡トラップTrを通り抜けてポンプPaから離れた流路に押し出されるまで気泡排出動作を行う。
気泡は、一旦気泡トラップTrよりも上流側に押し出されれば、再び液体が正規送液方向LDに送液された場合にも、その気泡は該気泡トラップTrに捕捉されるために、再びポンプPa内へ混入することが抑制される。
【0099】
かかる気泡排除によると、気泡排出動作時に気泡を液体供給口Li1まで完全に押し戻す必要がないので、液体の逆流送液量は僅かでもよく、それだけ気泡排出動作時間を短縮できる。また、逆流させる液量が少なくて済むので、液体の無駄も少なく済むという利点もある。
【0100】
つまり、例えば、送液装置MT’を2液混合装置として用いる場合、気泡排出動作時には、第2の液体で第1の液体を押すことになり、第2の液体が合流部L3を通ってポンプPa側の流路の途中まで進入することになる。この時、既述した一方向気泡トラップTrを設けてあるので、マイクロポンプPa内での液体の逆流量が少なくて済むので、ポンプPbで送られる第2の液体がポンプPa側の流路へ進入する進入量も少なくて済む。
【0101】
もしそうでなければ、この進入量の分の液体は、その後の通常送液時の2液混合比を狂わせる原因になるので、その分の液体は廃棄せざるを得なくなり、液体の無駄が生じてしまう。しかし、送液装置MT’では、一方向気泡トラップTrをポンプPaの上流側の近い位置に設けてあるので、かかる無駄な液体の量は少しで済むようになる。
【0102】
気泡は液体供給口Li1まで押し戻して排出してしまってもよい。
既述のとおり、装置MT’では、マイクロポンプPa、Pbのそれぞれの上流側だけでなく下流側にも一方向気泡トラップTrを設けているので、気泡排出動作時に合流部L3の方からポンプPaに逆流してくる液体中に気泡が存在していても、その気泡がポンプPa内に混入することを抑制でき、それだけ安心して気泡排除動作を行える。
【0103】
前記の気泡排出動作で気泡を排出するには、気泡排出動作時には、気泡が混入したポンプPaには駆動電圧を全く印加しないという方法が、最も簡易的に考えられる方法である。しかし、気泡の排出をさらに効果的に行うためには、マイクロポンプPaには気泡排出をアシストするアシスト駆動電圧波形をかけてもよい。
【0104】
例えば、マイクロポンプPaには、マイクロポンプPbとは逆向き送液用の、図10(F)に例示するような電圧波形を印加する方法である。このような電圧波形を加えると、ポンプPaのポンプ室PCから気泡が抜け出た瞬間にポンプPaが気泡の無い状態でのポンプ本来の機能を果たせるようになり、抜け出た気泡を速やかに気泡トラップTrまで送り出せるため、気泡排出動作の時間を短縮できる。
【0105】
また、ポンプPaの圧電素子PZTaには、単にポンプ室PC内の圧力を増減振動させるためだけの駆動電圧波形をかけ、それによりポンプ室内の気泡を揺らしてポンプ室内壁面から気泡が剥離しやすいようにすることで、ポンプPbからの液体の流れにのって気泡を抜けやすくするという方法もある。
【0106】
以上、マイクロポンプPa中に気泡が存在している場合を例にとって説明したが、マイクロポンプPb中に気泡が存在していても同様に該気泡を排除することができる。
また、マイクロポンプを含む液通路の数が3以上に増えても、同様にポンプ内気泡を排除できる。つまり、いずれのマイクロポンプも気泡排出動作の駆動源になり、気泡排出対象ポンプの側にまわることもある。このことは、各マイクロポンプのサイズが異なっていても成り立つことである。
【0107】
以上説明したポンプ内気泡排除は複数のマイクロポンプが並列に配置されている場合のものであるが、図14(A)に例示するように、複数のマイクロポンプPa1〜Pa3が直列に並んでいる場合でも、ポンプ内気泡排除を行える。すなわち、気泡が入ったポンプ室内の気泡を、直列に並んでいる残りのマイクロポンプで押出すことが可能である。
さらに、図14(B)に例示するように、直列と並列が混在した複合システムでも気泡が入ったポンプ室内の気泡を同様に排出できる。これら各液通路に属するマイクロポンプは、それぞれ別々の液体を送液するものであってもよいし、そのなかの幾つかの液通路についてはそれに属するポンプの全部が同じ液体を送液するものでもよい。また、小さなマイクロポンプで流量を稼ぐために複数のマイクロポンプを並列配置したものなどでもよい。いずれもポンプ内気泡排除を行える。
【0108】
なお、直列配置されたポンプ群についてみれば、ポンプ室に気泡が入ったマイクロポンプ自身にも、残りのポンプと同じように気泡排除のための駆動電圧波形をかけ続けていてもよい。
マイクロポンプの配列と、それらを含んでいる液通路の繋がり方、そしてそれぞれのマイクロポンプ内の液体の種類に関して、任意の組み合わせにおいてポンプ内気泡排除が可能である。
【0109】
例えば三つ以上の複数のマイクロポンプが並列に配置されている場合、気泡が入ったマイクロポンプ以外の残りすべてのマイクロポンプを駆動するとポンプ内気泡排除に最も効果的である。しかし、必ずしも残りすべてのマイクロポンプを駆動することが必須というわけではない。例えば、気泡排除用に駆動させるマイクロポンプを予め決めておき、それだけを駆動させてもよい。この時、残りのマイクロポンプは駆動を休んでいてもよいし、或いは残りのマイクロポンプ内の液体が気泡排除用マイクロポンプの発生圧力に負けて押し戻されない程度に微弱な圧力で(例えば、図10(C)の電圧波形において電圧を微弱化した駆動波形で)駆動を行っていてもよい。後者の方法にすると、気泡排除動作させているマイクロポンプからの液の逆流入が抑えられるため、混合比率が不適正となって廃棄しなければならない液の量が少なく済み、液体が無駄になることを抑制できる。
ここで説明したことは、図14(B)に例示するような複合システムの場合にも、例えば各液通路に属するポンプを一つとみなして同様に適用できる。
【0110】
いずれにしても、気泡排出動作は、気泡を適当な気泡検知手段で検知するようにし、該検知手段が気泡を検知すると行ってもよいし、ポンプが動作不良を起こしたことを流量センサーで検知したり、液体混合路の混合生成物の状態などを見て判断して行ってもよい。
【0111】
また、かかる検知によらず、定期的に、あるいは随時、気泡排出動作を行ってもよい。この場合、複数のマイクロポンプのうちのどれに気泡が混入しているか分からない。そこで、例えば、気泡の有無は問わずに任意のマイクロポンプを一つだけ選び、選んだマイクロポンプだけを駆動OFFにして、他のマイクロポンプの駆動をONにするという操作を所定時間行い、これをすべてのマイクロポンプについて行えば、すべてのマイクロポンプの気泡排出が可能になる。
【0112】
なお、図14(B)に例示するような複合システムの場合も含めて、並列配置のマイクロポンプの個数が多く、且つ、気泡が混入してしまったマイクロポンプの数がその中で大きな割合を占める場合、以上説明した気泡排除方法では気泡排除のために駆動するポンプだけでは、気泡排除のための流量が少ないうえ、その流れが気泡が存在するすべてのマイクロポンプに分散して流れ込んでしまうために、十分な気泡除去能力が得られない可能性がある。このような場合、前記の操作を一通り行っても、すべてのマイクロポンプの気泡を取り除けるとは限らない。
【0113】
しかし、一度すべてのマイクロポンプについて前記の操作を行えば、そのうちのいくつかは気泡が抜けきるため、もう一度同じ操作を繰り返し行えば前回よりも気泡が抜ける確率は高くなる。したがって、より確実にすべてのポンプ内の気泡を抜きとるには、前記操作を繰り返し行うことが有効である。
【0114】
以上説明した気泡排除においては、気泡排除動作で駆動するマイクロポンプの送液方向はマイクロポンプから液通路の合流部に向かう方向であるが、この方向は各マイクロポンプで統一していれば逆方向でもよい。その場合、マイクロポンプから排出される気泡は合流部方向へ排出される。液体供給口側への気泡の戻りが好ましくないようなシステムの時、このような方法を採用できる。
【0115】
先の送液装置MT’におけるポンプPa内からの気泡排除においては液体出口Loに蓋(栓)をしたが、これに代えて、合流部L3に続く混合流路L4の一部に流体弁を設けたり、流路断面積を減少させる機構などを設ける等して、気泡排除動作中には合流部L3より下流への液体の流れが抑制されるようにそれらを作用させるようにしてもよい。
【0116】
合流部L3から液体出口Loに至るまでの流路L4が、ある程度の大きさ以上の流路抵抗値を持っている場合は、前記のように液体出口Loに蓋をするような工夫をしなくてもよい場合がある。例えば、かかる流路抵抗値がマイクロポンプPaの流路抵抗の値と同程度の値であれば、マイクロポンプPbを駆動して送液される液体のうちの半分の量はマイクロポンプPaの方向へ送られる。従って、前記流路抵抗値が概ねマイクロポンプPaの流路抵抗の値と同程度か、或いはそれ以上の値であれば、液体出口Loに蓋(栓)をしなくてもポンプPa内気泡を排除できることになる。
もっとも、前記流路抵抗の値がマイクロポンプPaの流路抵抗の値より低いからといって、かならずしも液体出口Loに蓋をするなどが必須条件になるというわけでほない。
【0117】
<マイクロポンプ内気泡排除対象の燃料電池装置>
次に図1の送液装置MT’と同様の送液構造を利用した燃料電池装置C1について図12及び図13を参照して説明する。
図12(A)は燃料電池装置C1の平面図、図12(B)は該装置の側面図、図12(C)は該装置の底面図である。
また、図13(A)は図12(B)のA−A線断面図、図13(B)は図12(B)のB−B線断面図、図13(C)は図12(B)のC−C線断面図、図13(D)は図12(B)のD−D線断面図である。
【0118】
燃料電池装置C1は、燃料電池3と、電池3に積層固定された第1ポンプユニット1及び第2ポンプユニット2を含んでいる。
燃料電池3は、本例では直接メタノール形燃料電池(以下、「DMFC」と言うことがある。)であり、ここでは、電解質膜31の両面に燃料極32及び空気極33を接合したMEA(Membrane Electrode Assembly)構造のものである。MEAは各種構造のものが知られているが、本例では電解質膜31は電解質高分子膜〔例えばデュポン社製ナフィオン(パーフルオロスルホン酸膜)〕であり、燃料極32は電解質膜31に接する触媒層(例えば白金黒或いは白金合金をカーボンブラックに担持させたもの)とこれに積層されたカーボンペーパ等の電極からなり、空気極33も電解質膜31に接する同様の触媒層とこれに積層された同様の電極からなっている。
【0119】
なお、MEAの構造によっては電力取り出しのための電極層を第1、第2ポンプユニット1、2の少なくとも一方に設けてもよい。
かかる電極層は、例えば燃料極或いは空気極に対向するポンプユニットの面にスパッタリング法等の各種薄膜形成手法を利用して白金等で形成することができる。ポンプユニットの構成部材を導電性材料製とすることで該電極層を得てもよい。この電極層は例えば導電性接着剤で燃料極或いは空気極に接着すればよい。
【0120】
第1ポンプユニット1は、平坦な四角形状の部材11、13を含んでいる。これら部材は平坦形状に積層されている。部材11は、図12(A)及び図13(A)に示すように、下層の部材13に対向する面にマイクロポンプP1を含む液体原燃料供給路111、マイクロポンプP2を含む希釈用液供給路112、これら両供給路にそれぞれ連通する共通の液体混合路113を有している。液供給路111、112及び混合路113は下層部材13へ向け開放された溝状のものである。
【0121】
混合路113はポンプP1、P2より下流側に形成されている。原燃料供給路111においてポンプP1より上流側の端には液体原燃料供給口114が貫通形成されており、希釈用液供給路112におけるポンプP2より上流側の端には希釈用液受入れ部116が形成されているとともにその間に図示省略の蓋体(栓)で開閉可能の希釈用液供給口115が貫通形成されている。希釈用液受入れ部116は下層部材13へ向け開放された凹所状のものである。
【0122】
また、液体原燃料供給路111におけるポンプP1より上流側部分及び下流側部分のそれぞれに一方向気泡トラップTr11、Tr12が設けられているとともに、希釈用液供給路112におけるポンプP2より上流側部分及び下流側部分のそれぞれに一方向気泡トラップTr13、Tr14が設けられている。なお、図12、図13では、これら一方向気泡トラップは鎖線楕円で簡略化して示してある。
【0123】
これら一方向気泡トラップはいずれも図1に示す送液装置MT’における一方向気泡トラップTrと同構造のものであり、いずれもポンプP1、P2へ向かう流れの液中の気泡を捕捉できるように設けてある。なお、これら一方向気泡トラップのそれぞれは図2から図8に示されるいずれかのトラップ構造に置き換えることもできる。
【0124】
部材13は、図3(B)に示すように、電池3の燃料極32に対向する面に希釈液体燃料を該燃料極へ供給するための櫛状配列の溝状の複数本の希釈液体燃料通路131を有しているとともに該複数本の通路131に連通する共通の凹所状の希釈液体燃料通路132を有している。通路132から部材11側へ貫通孔133が形成されている。貫通孔133は部材11の液体混合路113に連通している。
【0125】
部材13には、さらに、各通路131を部材外部へ連通させる溝状のガス抜き孔134が形成されており、ガス抜き孔134の間には貫通孔135が形成されている。貫通孔135は部材11の希釈用液受入れ部116に連通しているとともに電池3の貫通液体通路34(図12(B)参照)に連通している。ガス抜き孔134は燃料極側で生成される炭酸ガスの放出に用いられる。
【0126】
以上のほか、部材11、13には、互いに位置が合致するようにガス流通部GDが設けられている。ガス流通部GDは複数の微細なガス流通孔を形成するとともに液体の通過を阻止するように撥水処理を施した部分である。ガス流通部GDは少なくとも一つ、より好ましくは複数、例えば各希釈液体燃料通路131(図13(B)参照)に対応させて設けるとよい。第1ポンプユニット1におけるガス流通部GDはガス放出のためのものである。
【0127】
第2ポンプユニット2は、平坦な四角形状の部材21、23を含んでいる。これら部材は平坦形状に積層されている。部材21は、図13(C)に示すように、電池3の空気極33に対向する面に、燃料電池3における電気化学反応により生成される液体(ここでは水)及び電池の燃料極32側から電解質膜31を通過して空気極33側へ移動してきた液体(水或いは水等)を通すための通路、すなわち、櫛状に配列された溝状の複数本の通路211及び該通路に連通する共通の凹所状の通路212を有している。通路212から部材23側へ貫通孔213が形成されている。さらに、各通路211を部材外部と連通させる溝状の空気取り入り孔214が形成されており、空気取り入れ孔214の間には貫通孔215が形成されている。貫通孔215は電池3の液体通路34に連通している。
【0128】
部材23は、図12(C)及び図13(D)に示すように、部材21に対向する面に、マイクロポンプP3を含む溝状の液体回収路231を有している。液体回収路231は燃料電池3における電気化学反応により生成される液体(ここでは水)及び電池の燃料極32側から電解質膜31を通過して空気極33側へ移動してきた液体を回収するものである。液体回収路231のポンプP3より上流側の端には凹所状の液体受入れ部232が形成されており、ポンプP3より下流側の端には液体排出部233が形成されている。液体受入れ部232は部材21の貫通孔213に連通しており、液体排出部233は部材21の貫通孔215に連通している。液体排出部233は空気極側で生成される水や燃料極側からの移動水を部材21の貫通孔215へ供給する。なお、例えば液体排出部233等に液放出口を設けておいて、該放出口から原燃料の希釈に要するより過剰の水を外部へ放出できるようにしてもよい。後述するポンプP3内気泡の排除にあたっては該放出口を閉じればよい。
【0129】
また、液体回収路231におけるポンプP3より上流側部分及び下流側部分のそれぞれに一方向気泡トラップTr21、Tr22が設けられている。なお、図12、図13では、これら一方向気泡トラップは鎖線楕円で簡略化して示してある。
これら一方向気泡トラップも、図1に示す送液装置MT’における一方向気泡トラップTrと同構造のものであり、いずれもポンプP3へ向かう流れの液中の気泡を捕捉できるように設けてある。なお、これら一方向気泡トラップのそれぞれは図2から図8に示されるいずれかのトラップ構造に置き換えることもできる。
【0130】
以上のほか、部材21、23には、互いに位置が合致するようにガス流通部GDが設けられている。ガス流通部GDは第1ポンプユニット1におけるものと同じもので、少なくとも一つ、より好ましくは複数、例えば各液体通路211(図13(D)参照)に対応させて設けるとよい。ここでのガス流通部GDは外部からの空気取り入れに利用される。
【0131】
ポンプユニット2における部材23の液体排出部233、部材21の貫通孔215、電池3の液体通路34、ポンプユニット1における部材13の貫通孔135及び部材11の希釈用液受入部116は、第2ポンプユニット2から希釈用液として用いる水を第1ポンプユニット1へ供給する循環路30を形成している(図12(B)参照)。
【0132】
第1ポンプユニット1のマイクロポンプP1、P2、第2ポンプユニト2のマイクロポンプP3はいずれも図10に示す基本構造及び動作を示すものである。
ポンプP1、P2、P3のそれぞれの送液能力は、各ポンプにおけるポンプ室容積、圧電素子の性能、第1、第2の絞り流路の断面積及び(又は)長さ等のうち1又は2以上を適宜選択決定することで所望のものにでき、ここでは、液体原燃料と希釈用液を所定の割合で混合して希釈できるようにポンプP1、P2、P3のそれぞれの送液能力を定めてある。
【0133】
第1ポンプユニット1の部材11における液体燃料供給口114には図示省略のカートリッジタイプの液体燃料収容容器を交換可能に接続できる。また、希釈用液供給口115は必要に応じ、開くことができ、そこから希釈用液(ここでは水)を供給したりできる。マイクロポンプP1、P2、P3は、それらの圧電素子にポンプ駆動部5(図12(B)参照)から所定電圧を印加して駆動可能である。
【0134】
燃料電池装置C1によると、第1ポンプユニット1に液体燃料収容容器から液体原燃料としてメタノール含有液(例えば高濃度メタノール水溶液)を供給するとともにポンプ駆動部によりポンプP1〜P3の圧電素子PZT1〜PZT3にそれぞれ交番電圧を印加してそれらポンプを運転することで燃料電池3に燃料を供給し、電池3で
CH3 OH+(3/2) O2 →CO2 +2H2 O の反応を生じさせ、それにより発電させ、該電池3に接続した負荷Lに通電することができる。
【0135】
この燃料電池装置C1の使用開始当初、電池3に供給されるのは図示省略の液体燃料収容容器から供給される液体原燃料(メタノール含有液)と、希釈用液供給口115から供給される希釈用液との混合による希釈液体燃料であるが、その後、電池3の電気化学反応により空気極33側で生成される水及び燃料極側から電解質膜31を通過して移動してきた水が第2ポンプユニット2により第1ポンプユニット1へ供給され始め、第1ポンプユニット1は、液体燃料収容容器から供給される液体原燃料から供給されるメタノール含有液を第2ポンプユニット2から供給されてくる水で混合希釈し、希釈液体燃料として燃料電池3に供給でき、これにより容器に収容された原燃料をもって長時間発電させることができる。
なお、第2ポンプユニット2により第1ポンプユニット1に供給される水のうち過剰の水は供給口115を通じて外部に排出される。供給口115に希釈用液を収容する容器を接続している場合はこの容器に回収するようにしてもよい。
【0136】
燃料電池装置を希釈用液循環型の燃料電池装置とすると、常に新しい液体を電池3へ供給する場合と比べて、各マイクロポンプへの気泡の混入の危険性が高くなる。これは、燃料電池の反応が気液2相反応であるため、反応に用いるための空気や、反応によって生成した炭酸ガスが水中に混在したまま循環してくる可能性があるからである。
【0137】
しかしここでの燃料電池装置C1では、ポンプP1、P2、P3のそれぞれの上流側、下流側に一方向気泡トラップを設けて液体中の気泡がポンプ内へ混入することを抑制しているので、それだけ液体原燃料及び希釈用液中の気泡の影響を抑制して所定濃度及び量の希釈液体燃料を電池へ安定して供給でき、それだけ発電性能を良好に維持できる。
【0138】
また、燃料電池装置C1では、液体原燃料と希釈用液とを混合するためのミキシング機構を電池本体3外に離して設ける必要がないとともに該ミキシング機構と燃料電池とを接続する配管も必要としない。よってそれだけ燃料電池装置全体をコンパクトに薄形、小形に形成することができ、例えば、携帯用機器の電源としても利用可能である。
【0139】
なお、燃料電池装置C1のマイクロポンプユニット1、2の一方向気泡トラップTr11〜Tr14、Tr21〜Tr21に捕捉された気泡は、メンテナンスモードで各ポンプを逆方向に駆動したり、図示省略の外部吸引機構でガス抜き孔134、214等から吸引したり、原燃料供給口114、希釈用液受入れ部115等から吸引したりして、外部へ排出できる。
【0140】
一方向気泡トラップの気泡トラップ部等に気泡抜き孔を形成しておいて、溜まった気泡をその場で該孔から外部へ排出してしまう方法も有効である。燃料電池装置C1では、空気極側で生成された水が第2ポンプユニット2のポンプP3へ流れ込むときに、最も気泡混入の危険性が懸念される。そこで、ポンプP3の上流側の気泡トラップTr21にはかかる気泡抜き孔を設けるなどして、他の気泡トラップ部からよりも、溜まった気泡を排出しやすいようにしてもよい。
【0141】
燃料電池装置C1では、第2ポンプユニット2で回収される水の量は、ポンプユニット1での原燃料希釈に要する水量より過剰になる傾向がある。従って、余分な水は外部へ放出できるようにしておくことが好ましく、そのために、例えば、気泡トラップTr21に対して気泡抜き孔を設けておき、且つ、該孔は大きめに形成しておき、該孔から水と一緒に気泡を排出できるようにしてもよい。そうすれば、気泡のみを選択的に排出するよりも、容易に気泡を排出できる。
【0142】
燃料電池装置C1は、電池3の空気極33側で生成される液体(水)を原燃料希釈用の液として循環使用するものであり、ポンプユニット2からポンプユニット1へ供給される希釈用液のうち過剰のものは供給口115を通じて排出又は回収されるようにしているが、空気極33側で生成される水は、第2ポンプユニット2から図示省略の生成水回収通路、例えば第1ポンプユニット1、電池3及び第2ポンプユニット2の積層体に設けた生成水回収通路を介して図示省略の回収タンクへ回収するようにしてもよい。さらに、該回収タンクから第1ポンプユニット1へ希釈用液を供給するようにしてもよい。また、ポンプユニット1の希釈液体燃料通路へ供給される希釈液体燃料のうち過剰のものは、そこから図示省略の排出通路を介してポンプユニット1外へ排出するようにしてもよい。さらにこのようにして排出される過剰希釈液体燃料は回収タンクへ回収するようにしてもよい。
【0143】
<燃料電池装置C1のマイクロポンプからの気泡排除方法>
まず、マイクロポンプユニット1のマイクロポンプP1、P2のいずれかに気泡が混入してしまった場合の気泡排除方法について説明する。
図12、図13に示す燃料電池装置C1ではマイクロポンプP1、P2は並列関係にあり、これらポンプを含む液供給路111、112は混合路113へ合流して、電池燃料極32に臨む希釈液体燃料通路132、131へ連通している。ポンプユニット1にはガス抜き孔134があるが、液体が外部に流れ出す開口部はない。従って、希釈液体燃料通路132、131へ流れ込んだ希釈液体燃料は燃料電池3の燃料極32で化学反応で消費されるか、電解質膜31を通過して空気極33側へ染み出すしか逃げ道がない。
【0144】
従って、第2ポンプユニット2におけるマイクロポンプP3を相対的に吐出圧力が強くなるように駆動して、マイクロポンプP1の駆動を止めた場合、マイクロポンプP2から流れ出た液体の一部は混合路113を通ってマイクロポンプP1の方向に流れることになる。このようにしてポンプP1に液体を逆流させることで、ポンプP1内に混入した気泡を液体原燃料の供給口114の方へ排除することができる。
マイクロポンプP2に気泡が混入した場合も、ポンプP2の駆動を止めることでポンプP2に液体を逆流させて該気泡を希釈用液供給口115の方へ排除することができる。
【0145】
また、空気極側で生成された水を排出、循環させるための第2ポンプユニット2におけるマイクロポンプP3はポンプユニット1におけるポンプP2と直列配置関係にある。これら二つのマイクロポンプP2、P3間をつなぐ流路は、外部から水を供給するための供給口115やユニット2の部材23における液体排出部233などが大気に連通していれば、互いのマイクロポンプの力が及ばない可能性がある。そこで、例えばマイクロポンプP3のポンプ室内に気泡が混入した場合は、該供給口115など大気に通じる部分を閉じてからポンプP2を逆方向に駆動すればよい。そうすれば、互いのマイクロポンプの間で力が直接働きあうようになるので、ポンプP2を逆駆動することによってポンプP3のポンプ室内の気泡を抜くことができる。
【0146】
本発明に係る送液装置や燃料電池装置おけるマイクロポンプ内の気泡の排除はポンプ駆動部の指示のもとになされるように該駆動部を構成しておけばよいのであるが、かかる気泡排除のための駆動部の動作の1例を図15を参照して説明しておく。
図15(A)のフローチャートに示すように、駆動部は、図示省略の気泡センサによる気泡検知やタイマの予め定めた時間のカウントアップ等に応じて、気泡排除動作を開始させる必要があれば(ステップS1でYES)、ポンプ群に気泡排除動作を行わせる(ステップS2)。気泡排除動作が終了したのち、ポンプ群に通常動作を行わせる(ステップS3)。通常動作は終了の指示など終了する必要が生じるまで継続され、必要に応じて気泡排除動作が逐次実行される(ステップS4)。気泡排除動作は、図15(B)に示すサブルーチンを実行することで行われる。すなわち、ステップS21に示すように、複数ポンプのうち特定のものを気泡排除動作させ、残りのポンプを大気状態(休止或いは微弱電圧による駆動)とする。気泡排除動作が完了(センサ等で気泡排除完了を確認してもよいし、気泡が抜けるに十分な時間の経過により完了したとしてもよい)すれば(ステップS22でYES)、気泡排除処理が必要な他のポンプがある場合(ステップS23でNO)、気泡排除動作させるポンプと待機状態にするポンプを適宜切り換えて(ステップS24)、ステップS21に戻り同様の動作を実行する。必要なすべてのポンプについて気泡排除を行う処理を再度実行する必要があるときは(ステップS25でYES)、ステップS21に戻って同様の動作を再実行する。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の気泡排除方法は、マイクロポンプを用いて送液する送液装置や燃料電池装置に適用してそれらの所期の性能を発揮させることに利用できる。
なお、送液装置は液体燃料とその希釈用液の送液、混合希釈に利用できるほか、生化学検査、免疫検査、遺伝子検査等の医療分野や、環境分析、化学合成や新薬創製など、様々な分野で利用できる。また、燃料電池装置は例えば携帯機器等に搭載する電源としての利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明に係る気泡排除方法の実施対象である送液装置の1例を示すもので図1(A)はその平面図、図1(B)は図1(A)のY−Y線に沿う切断端面図である。
【図2】一方向気泡トラップの他の例を示す図である。
【図3】一方向気泡トラップのさらに他の例を示す図である。
【図4】一方向気泡トラップのさらに他の例を示す図である。
【図5】一方向気泡トラップのさらに他の例を示す図である。
【図6】一方向気泡トラップの配置の他の例を示す図であり、図6(A)はその平面図、図6(B)は図6(A)のZ1−Z1線に沿う切断端面図である。
【図7】一方向気泡トラップの配置のさらに他の例を示す図であり、図7(A)はその平面図、図7(B)は図7(A)のZ2−Z2線に沿う切断端面図である。
【図8】気泡貯蔵部を提供する一方向気泡トラップの配置例を示す図であり、図8(A)はその平面図、図8(B)は図8(A)のZ3−Z3線に沿う切断端面図である。
【図9】送液装置の基本構造例を示すもので、図9(A)その平面図、図9(B)はその側面図、図9(C)は図9(B)のX−X線に沿う断面図である。
【図10】マイクロポンプの1例の基本構造及び動作を示すもので、図10(A)は液体吐出動作を示す図、図10(B)は液体吸引動作を示す図、図10(C)はかかる液体の吐出動作、吸引動作のための圧電素子への印加電圧波形を示す図である。図10(D)は図10(A)とは反対方向への液体吐出動作を示す図、図10(E)は図10(B)とは反対方向の液体吸引動作を示す図、図10(F)はかかる反対動作のための圧電素子への印加電圧波形を示す図である。
【図11】図9に示す送液装置の製造工程例を示す図である。
【図12】本発明に係る気泡排除方法の実施対象である燃料電池装置の1例を示すもので、図12(A)はその平面図、図12(B)はその側面図、図12(C)はその底面図である。
【図13】図13(A)は図12(B)のA−A線断面図、図13(B)は図12(B)のB−B線断面図、図13(C)は図12(B)のC−C線断面図、図13(D)は図12(B)のD−D線断面図である。
【図14】(A)、(B)はマイクロポンプ配列の他の例を示す図である。
【図15】ポンプ駆動部の気泡排除のための動作の1例を示すフローチャートである。
【図16】燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、該液体燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置の考えられる例を示す図である。
【符号の説明】
【0149】
MT 基本構造の送液装置
Pa、Pb マイクロポンプ
Li1、Li2 液体供給口
Lo 液体出口
L1、L2 液体供給路
L3 合流部
L4 混合流路
e 電極膜
LD 正規送液方向

f1 第1絞り流路
f2 第2絞り流路
PC ポンプ室
DF ポンプ室壁(ダイアフラム)
PZT、PZTa、PZTb 圧電素子

MT’ 送液装置
Tr(Trb) 一方向気泡トラップ
51、52、53
トラップTrの第1、第2、第3の流路部分
521 流路部分51と52の境界部
522 流路部分52と53の境界部
520、520’ 段差部
CL 流路部分断面中心を通る線
Tr’ 逆向き一方向気泡トラップ
H 気泡抜き用孔(気泡排除孔)
AR 気泡貯留部

C1 燃料電池装置
1 第1ポンプユニット
11 ポンプユニット1の部材
P1、P2 マイクロポンプ
111 液体原燃料供給路
112 希釈用液供給路
113 液体混合路
114 液体燃料供給口
115 希釈用液供給口
116 希釈用液受入れ部
Tr11〜Tr14 一方向気泡トラップ
13 ポンプユニット1の部材
131、132 希釈液体燃料通路
133 貫通孔
134 ガス抜き孔
135 貫通孔
GD ガス流通部
2 第2ポンプユニット
21 ポンプユニット2の部材
211、212 生成水通路
213 貫通孔
214 空気取り入り孔
215 貫通孔
23 ポンプユニット2の部材
P3 マイクロポンプ
231 液体回収路
232 液体受入れ部
233 液体排出部
Tr21、Tr22 一方向気泡トラップ
3 燃料電池
31 電解質膜
32 燃料極
33 空気極
34 液体通路
30 希釈用液循環路

C 燃料電池
L 負荷
PM1、PM2、PM3 ポンプ
t2 回収タンク
t1 燃料タンク
MX ミキサー
DS 濃度検出センサ
CONT コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロポンプを用いて送液する送液装置における該マイクロポンプ内の気泡を排除する方法であり、該複数のマイクロポンプのうちいずれかのマイクロポンプに気泡が存在し、該マイクロポンプ内気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたり、該気泡排除対象マイクロポンプ以外のマイクロポンプのうち1又は2以上を送液駆動して該気泡排除対象マイクロポンプへ液体を逆流させることで、該気泡を排除することを特徴とする送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項2】
前記送液装置は複数のマイクロポンプを並列に配置し、それぞれのマイクロポンプで液を送って合流部で合流させて送る送液装置であり、該並列に配置されたいずれかのマイクロポンプに気泡が存在し、該マイクロポンプ内気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたり、該気泡排除対象マイクロポンプ以外のマイクロポンプのうち1又は2以上を送液駆動して前記合流部を介して該気泡排除対象マイクロポンプへ液体を逆流させることで、該気泡を排除する請求項1記載の送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項3】
前記気泡排除対象マイクロポンプ内の気泡の排除中は、該気泡排除対象マイクロポンプは駆動しないか、又は該気泡排除対象マイクロポンプを逆方向に送液を行うように駆動する請求項1又は2記載の送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項4】
前記送液装置は前記各マイクロポンプに連通する前記合流部より下流側へ延びる液通路を有しており、該合流部より下流側へ延びる液通路の流路抵抗の値が前記気泡排除対象マイクロポンプの流路抵抗の値と同程度か、又はそれより大きい請求項2又は3記載の送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項5】
前記送液装置は前記各マイクロポンプに連通する前記合流部より下流側へ延びる液通路を有しており、該合流部より下流側へ延びる液通路に液体の流れを抑制ための液流抑制手段を有しており、前記気泡排除対象マイクロポンプから気泡を排除するにあたり、該液流抑制手段により前記合流部下流側への液流れを抑制する請求項2又は3記載の送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項6】
前記液流抑制手段は、前記合流部より下流側へ延びる液通路の開口を閉じることができる蓋体、該液通路を閉じることができる流体弁、該液通路の流路断面積を減少させ得る絞り機構から選ばれた少なくとも一つである請求項5記載の送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項7】
前記送液装置は、各マイクロポンプについて該マイクロポンプに連通して隣り合う液通路に気泡トラップを設けたものであり、該気泡トラップは、マイクロポンプ内気泡を排除する方向側に隣り合う液通路に設けられており、該マイクロポンプへ向かって流れる液体中の気泡を捕捉するが、該マイクロポンプから遠ざかる方向へ流れる液体中の気泡の通過を許す一方向気泡トラップである請求項1から6のいずれかに記載の送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項8】
前記マイクロポンプのうち少なくとも一つは、第1絞り流路、第1絞り流路より長い第2絞り流路、第1、第2の絞り流路の間のポンプ室、ポンプ室の可撓性壁に設置された駆動アクチュエータを含み、駆動アクチュエータに交番電圧を印加することで交番電圧波形に応じて第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる正規送液動作、又は第2絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第1絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる逆送液動作をさせ得るマイクロポンプである請求項1から7のいずれかに記載の送液装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項9】
燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、液体原燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置であって、該燃料電池と、該燃料電池の燃料極に積層された第1ポンプユニットとを含んでおり、第1ポンプユニットは液体原燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料とし、該希釈液体燃料を電池燃料極へ供給するユニットであり、液体原燃料を供給する第1マイクロポンプを含む原燃料供給路、希釈用液を供給する第2マイクロポンプを含む希釈用液供給路、該原燃料供給路と希釈用液供給路の双方に連通する液体混合路を有している燃料電池装置における該第1、第2のマイクロポンプ内の気泡をマイクロポンプ外へ排除する方法であり、第1マイクロポンプ内気泡の排除にあたっては、第2マイクロポンプを送液駆動して前記液体混合路を介して第1マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除し、第2マイクロポンプ内気泡の排除にあたっては、第1マイクロポンプを送液駆動して前記液体混合路を介して第2マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除することを特徴とする燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項10】
前記燃料電池装置はさらに燃料電池の空気極に積層された第2ポンプユニットを含んでおり、該第2ポンプユニットは、少なくとも燃料電池における電気化学反応により生成される液体を前記希釈用液として前記第1ポンプユニットの希釈用液供給路へ循環させるためのユニットであり、少なくとも電気化学反応による生成液体を回収する第3のマイクロポンプを含む液回収路を有しており、該第3マイクロポンプ内気泡を排除するにあたっては、前記第1ポンプユニットの第2マイクロポンプを逆方向に送液を行うように駆動させる請求項9記載の燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項11】
前記気泡排除対象マイクロポンプ内の気泡の排除中は、該気泡排除対象マイクロポンプは駆動しないか、又は該気泡排除対象マイクロポンプを逆方向に送液を行うように駆動する請求項9又は10記載の燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項12】
前記燃料電池装置は、各マイクロポンプについて該マイクロポンプに連通して隣り合う液通路に気泡トラップを設けたものであり、該気泡トラップは、マイクロポンプ内気泡を排除する方向側に隣り合う液通路に設けられており、該マイクロポンプへ向かって流れる液体中の気泡を捕捉するが、該マイクロポンプから遠ざかる方向へ流れる液体中の気泡の通過を許す一方向気泡トラップである請求項9、10又は11記載の燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項13】
前記マイクロポンプのうち少なくとも一つは、第1絞り流路、第1絞り流路より長い第2絞り流路、第1、第2の絞り流路の間のポンプ室、ポンプ室の可撓性壁に設置された駆動アクチュエータを含み、駆動アクチュエータに交番電圧を印加することで交番電圧波形に応じて第1絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第2絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる正規送液動作、又は第2絞り流路からポンプ室内へ液体を吸引し、第1絞り流路からポンプ室内液体を吐出させる逆送液動作をさせ得るマイクロポンプである請求項9から12のいずれかに記載の燃料電池装置のマイクロポンプ内気泡の排除方法。
【請求項14】
複数のマイクロポンプを用いて送液する送液装置であって、該複数のマイクロポンプのうちいずれかのマイクロポンプ内に存在する気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたり、該気泡排除対象マイクロポンプ以外のマイクロポンプのうち1又は2以上を送液駆動して該気泡排除対象マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除する動作を実行する駆動部を備えたことを特徴とする送液装置。
【請求項15】
燃料として液体燃料が使用される燃料電池が採用され、液体原燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料を該燃料電池へ供給する燃料電池装置であって、該燃料電池と、該燃料電池の燃料極に積層された第1ポンプユニットとを含んでおり、第1ポンプユニットは液体原燃料を希釈用液で希釈して希釈液体燃料とし、該希釈液体燃料を電池燃料極へ供給するユニットであり、液体原燃料を供給する第1マイクロポンプを含む原燃料供給路、希釈用液を供給する第2マイクロポンプを含む希釈用液供給路、該原燃料供給路と希釈用液供給路の双方に連通する液体混合路を有しており、さらに、第1マイクロポンプ内に存在する気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたって第2マイクロポンプを送液駆動して前記液体混合路を介して第1マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除し、第2マイクロポンプ内に存在する気泡を該マイクロポンプ外へ排除するにあたって第1マイクロポンプを送液駆動して前記液体混合路を介して第2マイクロポンプへ液体を逆流させることで該気泡を排除する動作を実行する駆動部を備えていることを特徴とする燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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