送電コイル及びそれを用いた非接触電力伝送及び通信システム
【課題】 小型実装に適したループコイルまたはスパイラルコイルからなり、動作周波数の高調波成分や動作周波数以外の周波数成分の放射を抑制することが可能な送電コイル及びそれを用いた非接触電力伝送装置及び通信システムを提供すること。
【解決手段】 平面基板102上に形成されたスパイラル形状のコイルである基本コイル部100と、1つの先端開放スタブ101とを有している。基本コイル部100には、送電装置から電力を入力する入力接続部104と電力を出力する出力接続部105が設置され、先端開放スタブは101は、基本コイル部100の入力接続部104に近接したスタブ接続部103において一端を接続され、基本コイル部100の内側に沿って配置された線状の導体からなっている。
【解決手段】 平面基板102上に形成されたスパイラル形状のコイルである基本コイル部100と、1つの先端開放スタブ101とを有している。基本コイル部100には、送電装置から電力を入力する入力接続部104と電力を出力する出力接続部105が設置され、先端開放スタブは101は、基本コイル部100の入力接続部104に近接したスタブ接続部103において一端を接続され、基本コイル部100の内側に沿って配置された線状の導体からなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電子機器などに備えた受電装置と給電機器などに備えた送電装置とからなり、電磁誘導により、送電装置から受電装置へ非接触で電力を送電する機能と両装置間で非接触でデータ通信を行う機能とを有する非接触電力伝送及び通信システムで使用する送電コイル、及びそれを用いた非接触電力伝送及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化に伴い、携帯電話や携帯型音楽プレーヤー等に代表される携帯型電子機器は、小型化や軽量化が図られ、広く普及してきている。一般的に、携帯型電子機器に内蔵された二次電池またはキャパシタへの充電は、携帯型電子機器の充電端子と充電装置の充電台(クレードル)に設置してある充電端子を接触させて電気的に接続し、充電台から電力を供給して携帯型電子機器の二次電池またはキャパシタを充電する方式がとられる。
【0003】
しかし、充電端子同士を接触して接続する充電方式では、充電端子の汚れや、充電端子間への異物侵入により充電ができない場合があるので、最近は電磁誘導の原理を利用した非接触の電力供給方式が多く使用されており、これに用いる非接触電力伝送装置の需要が増加している。非接触電力伝送装置では、一般的に、送電装置の送電コイルと受電装置の受電コイルとを近接して対向させて配置し、送電コイルと受電コイル間の電磁結合を介して電力の伝送が行なわれている。さらに、受電側の要求電力や異常時の送電停止等を指示するデータや送受電装置間のID認証などのデータも送電コイルと受電コイル間を介して通信する機能を有する非接触電力伝送及び通信システムが開発されている。
【0004】
このようなシステムでは、送電コイルおよび受電コイルとしては、小型実装のためにループコイルやスパイラルコイルが適している。しかし、一般にループコイルやスパイラルコイルを用いて電力を送電する場合、送電コイルに流れる電流には送電周波数の高調波成分や送電回路において発生する他の周波数成分が含まれてしまう場合があり、これらの周波数の電磁放射ノイズが発生してしまう。そこで、安定した電力供給および通信を行うためには、放射ノイズの発生を抑制したループコイルやスパイラルコイルからなる送電コイルを実現し、システムの動作周波数以外の周波数成分の信号の送電コイルからの放射をできるだけ抑える必要がある。
【0005】
従来、特定の周波数成分の信号の伝播を抑制する手段として、スタブを用いる方法がある。例えば、特許文献1には、コイルをアンテナとして用いた無線通信装置において、信号入出力端に先端開放スタブ(オープンスタブ)を設けて、干渉対策を行う手段が開示されている。図14は、特許文献1に記載された従来のコイルをアンテナとして用いた無線通信装置としてのRFIDタグを示す構成説明図である。これによれば、この無線通信装置は二つの周波数帯域の信号に対応した無線通信装置であり、低い周波数帯の誘導電磁界でアンテナとして動作しICチップ208に接続されたコイル200と、高い周波数帯の放射電磁界で動作しICチップ207に接続されたアンテナ206の二つのアンテナを有している。そして、誘導電磁界で動作するコイル200に接続されたICチップ208の入出力端子にオープンスタブ201を設置することにより、放射電磁界で動作するアンテナ206からの干渉を抑制する構造を実現し、通信性能の劣化を低減させている。
【0006】
また、オープンスタブとアンテナとを組み合わせた従来の他の構造として、オープンスタブを整合用として設置する方法も報告されている。例えば、特許文献2には、車載用の無線通信装置に用いるアンテナにオープンスタブを設けて、アンテナのインピーダンス整合を行う構造が示されている。図15は、特許文献2に記載された、アンテナと整合用スタブの構造を3次元的に示す説明図である。これによれば、基板の表面に配置された2つの線状アンテナ300と、裏面に配置され、それらを接続する接続ライン309との境界において、線状アンテナを伝搬する信号の反射が生じないように、その境界に設けた整合用スタブ301によりインピーダンス整合を行う構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−288874号公報
【特許文献2】特開2009−100445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の従来例では、一体化して配置され異なる周波数帯で動作する2種類のアンテナを使用する場合、低い周波数帯で動作するコイルアンテナへの入出力端子に先端開放スタブを設けて、他の周波数信号に対する電磁干渉対策を行っている。また、特許文献2の従来例では、先端開放スタブによって、アンテナ接続部の境界における接続線路のインピーダンス整合を行っている。しかし、上述のように、非接触電力伝送及び通信システムにおいては、送電コイルからのシステムの動作周波数以外の周波数成分の放射をできるだけ抑えることが要求されており、この目的に対しては上記の従来の技術をそのまま適用することはできない。
【0009】
そこで、本発明の課題は、小型実装に適したループコイルまたはスパイラルコイルからなり、動作周波数の高調波成分や動作周波数以外の周波数成分の放射を抑制することが可能な送電コイル及びそれを用いた非接触電力伝送装置及び通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明による送電コイルは、送電コイルと前記送電コイルに電力を供給するための送電回路とを有する送電装置と、前記送電コイルに電磁結合可能な受電コイルを有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイル間の電磁結合を介して非接触で電力伝送及び通信を行う非接触電力伝送及び通信システムに使用される送電コイルであって、ループ形状またはスパイラル形状のコイルと、少なくとも1つの前記コイルに沿って配置された線状の導体からなる先端開放スタブとを有し、前記先端開放スタブは、前記コイルの一部に一端を接続されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、30MHz以上、1000MHz以下の周波数であって、かつ、前記送電回路の少なくとも一部において発生する電気信号またはその高調波成分の少なくとも1つの周波数に対応する波長の1/4倍を前記導体の長さとすることが望ましい。
【0012】
また、前記コイルおよび前記先端開放スタブは、磁性体を主な材料とする基板、または誘電体を主な材料とする基板、または磁性体及び誘電体とを主な材料とする基板の表面または内部に形成されていてもよい。
【0013】
さらに、前記基板は導体層が多層状に配置された多層基板であって、前記先端開放スタブの少なくとも一部は、前記コイルが形成された導体層とは異なる導体層に形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明による非接触電力伝送及び通信システムは、上記のいずれかの送電コイルを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明の送電コイルは、コイルの一部に接続された先端開放スタブを有するループ形状またはスパイラル形状のコイルであり、動作周波数の高調波成分あるいは所望の他の周波数成分の信号を先端開放スタブによって除去することで、送電コイルに電磁妨害対策を施し、送電コイルからの不要な放射ノイズの発生を防ぐものである。
【0016】
すなわち、本発明の送電コイル及びそれを使用した非接触電力伝送及び通信システムにおいては、送電コイルの動作周波数では本来の目的とする送電動作や通信動作を保ちつつ、システムの妨害となる所望の周波数に阻止帯域を設定することが可能となる。なお、この妨害となる周波数は、通常の非接触電力伝送及び通信システムにおいては、30以上、1000MHz以下の間に存在するので、本発明はその妨害波を阻止するものである。
【0017】
本発明の送電コイル及びそれを使用した非接触電力伝送及び通信システムによれば、所望の周波数に阻止帯域を設定することで送電コイルに供給される電力を減少させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の送電コイルでは、先端開放スタブは、送電コイルのコイルパターンに沿って配置されるため、送電コイルの全体形状を大きくすること無く、小型化な高調波抑制型の送電コイルの提供が可能となる。
【0019】
また、本発明の送電コイルでは、長さの異なる複数個の先端開放スタブを配置することが可能であるため、複数の阻止帯域を設定することが可能となる。
【0020】
よって、本発明により、小型実装に適したループコイルまたはスパイラルコイルからなり、動作周波数の高調波成分や動作周波数以外の周波数成分の放射を抑制することが可能な送電コイル及びそれを用いた非接触電力伝送及び通信システムの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による送電コイルの第1の実施の形態を説明する平面図。
【図2】本発明による送電コイルの第1の実施の形態を説明する斜視図。
【図3】第1の実施の形態の送電コイルの実施例の透過特性を示す図。
【図4】第1の実施の形態の送電コイルの実施例の反射特性を示す図。
【図5】本発明による送電コイルの第2の実施の形態を説明する平面図。
【図6】本発明による送電コイルの第3の実施の形態を説明する平面図。
【図7】本発明による送電コイルの第4の実施の形態を説明する平面図。
【図8】本発明による送電コイルの第5の実施の形態を説明する平面図。
【図9】本発明による送電コイルの第6の実施の形態を説明する平面図。
【図10】本発明による送電コイルの第7の実施の形態を説明する平面図。
【図11】本発明による送電コイルの第8の実施の形態を説明する透視斜視図。
【図12】本発明による送電コイルの第9の実施の形態を説明する透視斜視図。
【図13】本発明による送電コイルの第10の実施の形態を説明する透視斜視図。
【図14】従来のコイルをアンテナとして用いた無線通信装置を示す構成説明図。
【図15】従来のアンテナと整合用スタブの構造を3次元的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明による送電コイルの第1の実施の形態を説明する平面図であり、図2は本発明による送電コイルの第1の実施の形態を説明する斜視図である。本実施の形態の送電コイルは、送電コイルと前記送電コイルに電力を供給するための送電回路とを有する送電装置と、前記送電コイルに電磁結合可能な受電コイルを有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイル間の電磁結合を介して非接触で電力伝送及び通信を行う非接触電力伝送及び通信システムに使用される送電コイルである。図1、図2において、本実施の形態の送電コイルは、平面基板102上に形成されたスパイラル形状のコイルである基本コイル部100と、1つの先端開放スタブ101とを有している。基本コイル部100には、送電装置から電力を入力する入力接続部104と電力を出力する出力接続部105が設置され、先端開放スタブ101は、基本コイル部100の入力接続部104に近接したスタブ接続部103において一端を接続され、基本コイル部100の内側に沿って配置された線状の導体からなっている。
【0024】
次に、本発明の効果を確認するため、第1の実施の形態の送電コイルの具体的な一実施例を設計して評価した結果について説明する。本実施例の送電コイルの基本コイル部100は、全体の外形が20mm×40mmであり、コイルパターン幅0.5mm、コイルパターン間隔1.5mm、巻数4ターンにて作成し、動作周波数13.56MHzを想定した送電コイルとしている。
【0025】
平面基板102として、形状が22mm×42mm×0.27mmの誘電体基板(FR−4)を使用し、基板の裏面にはグランドプレーンとして、厚み0.016mmの銅箔を使用している。
【0026】
上記の基本コイル部100と同じ平面上に同じ導体により、幅0.5mmの先端開放スタブ101を入力接続部104付近のスタブ接続部103から接続し、配置した構成としている。
【0027】
この実施例では3種類の長さの先端開放スタブ101を使用した。すなわち、その電気長が、平面基板102の誘電率による波長短縮効果によって、周波数100MHzにおいて1/4波長となる長さ340mmのもの、180MHzにおいて1/4波長となる長さ200mmのもの、450MHzにおいてλ/4となる長さ80mmのものの3種類を使用した。また、比較のため、先端開放スタブを有しない従来の送電コイルについても評価を行った。
【0028】
以上のように設計された、送電コイルにおいて、入力接続部104と、出力接続部105での観測電圧から、透過特性S21と、反射特性S11の電磁界シミュレーションを行った。透過特性の結果を図3に示し、反射特性の結果を図4に示す。図3は第1の実施の形態の送電コイルの実施例の透過特性を示す図である。図4は第1の実施の形態の送電コイルの実施例の反射特性を示す図である。図3と図4に示したとおり、従来の送電コイルでは、10MHzから1000MHzまで全ての周波数帯で反射が無く、全て透過していることが確認できる。これに対して、本実施例の送電コイルでは、先端開放スタブ101の効果によって、先端開放スタブ101の電気長が1/4波長に対応している周波数の奇数倍において、透過が減り反射が増える阻止帯域が生じていることが確認できる。また、動作周波数である13.56MHzでは、−0.1dB以上の透過と、−20dB以下の反射が得られ、非常に小さな反射特性をもつ伝送線路として作用していることが確認できる。
【0029】
以上のことから、本実施の形態の送電コイルを使用することにより、動作周波数である13.56MHzでは小さな反射で通常の送電コイルとして動作し、先端開放スタブ101の効果により生じる阻止帯域では大きな反射により、送電コイル部に電流が流れなくなり、コイル部から発生する高調波の放射ノイズを抑制することが可能となることが確認できた。
【0030】
以上のように、本発明により、高調波の放射ノイズを低減した送電コイルが得られ、この送電コイルの使用により、安定した電力供給および通信を行うことが可能な非接触電力伝送及び通信システムが得られる。
【0031】
図5は、本発明による送電コイルの第2の実施の形態を説明する平面図である。第1の実施の形態では、先端開放スタブは入力接続部104付近から接続しているが、本実施の形態では、図5に示すように、先端開放スタブ111は出力接続部105付近のスタブ接続部113において一端を接続され、基本コイル部100の内側に沿って配置されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。 このような構成とすることで、不要な周波数帯域における負荷変動や電気信号の逆流などを出力接続部105で反射させ、コイル部から発生する高調波の放射ノイズを抑制することができる。
【0032】
図6は、本発明による送電コイルの第3の実施の形態を説明する平面図である。第1の実施の形態では、先端開放スタブ121は入力接続部104付近から接続され、基本コイル部100の内側に沿って配置されているが、本実施の形態では、先端開放スタブ121は基本コイル部100の外側に沿って配置され、入力接続部104付近のスタブ接続部123において接続されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0033】
図7は、本発明による送電コイルの第4の実施の形態を説明する平面図である。第1の実施の形態では先端開放スタブを1個のみ配置しているが、本実施の形態においては、入力接続部104付近のスタブ接続部133から接続された先端開放スタブ131と、出力接続部105付近のスタブ接続部134から接続された先端開放スタブ135との2つの先端開放スタブを有している。これらの2つの先端開放スタブは基本コイル部100の内側に沿って配置されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。このように、複数個の先端開放スタブを配置してもよい。 このような構成とすることで、不要な周波数帯域における負荷変動や電気信号などを入力接続部104と出力接続部105の双方で反射させ、コイル部から発生する高調波の放射ノイズを抑制することができる。
【0034】
図8は、本発明による送電コイルの第5の実施の形態を説明する平面図である。本実施の形態においては、入力接続部104付近のスタブ接続部143から接続され基本コイル部100の内側に沿って配置された先端開放スタブ141と、スタブ接続部143から接続され基本コイル部100の外側に沿って配置された先端開放スタブ145との2つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。 このような構成とすることで、先端開放スタブを2本接続することができるため、不要な信号の反射性能を向上させることができる。
【0035】
図9は、本発明による送電コイルの第6の実施の形態を説明する平面図である。本実施の形態においては、基本コイル部100の出力接続部105付近のスタブ接続部153から接続され基本コイル部100の内側に沿って配置された先端開放スタブ151と、スタブ接続部153から接続され基本コイル部100の外側に沿って配置された先端開放スタブ155との2つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0036】
図10は、本発明による送電コイルの第7の実施の形態を説明する平面図である。本実施の形態においては、入力接続部104付近のスタブ接続部163から接続され基本コイル部100の内側に沿って配置された先端開放スタブ161と、スタブ接続部163から接続され基本コイル部100の外側に沿って配置された先端開放スタブ165との2つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。第5の実施の形態では、複数配置した先端開放スタブの長さが同じとなる構成を示しているが、本実施の形態においては、図10に示すように、先端開放スタブ161と先端開放スタブ165では長さが異なっている。このように長さの異なる複数個の先端開放スタブを配置してもよい。 このような構成とすることで、互いに長さの異なる先端開放スタブを2本接続することができるため、不要な信号の周波数が多数ある場合にも対処することができる。
【0037】
図11は、本発明による送電コイルの第8の実施の形態を説明する透視斜視図である。本実施の形態においては、平面基板107は表面と裏面に導体層が配置された基板であって、先端開放スタブ171は、基本コイル部100が形成された表面の導体層とは異なる裏面の導体層に形成されている。先端開放スタブ171は入力接続部104付近のスタブ接続部173から接続されて裏面に引出され、表面の基本コイル部100に沿って配置されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。このように、平面基板107の裏面に先端開放スタブを配置してもよい。 このような構成とすることで、基本コイル部100および先端開放スタブ171の導線間の距離を詰めることができるため、送電コイル中央部に他部品を配置するような場合などに、基本コイル部100および先端開放スタブ171と他部品との距離を空け、電磁気的な影響を防ぐことができるため、望ましい。
【0038】
図12は、本発明による送電コイルの第9の実施の形態を説明する透視斜視図である。本実施の形態においては、平面基板107は表面と裏面に導体層が配置された基板であって、入力接続部104付近のスタブ接続部183から接続され基本コイル部100と同じ平面上の基本コイル部100の外側に沿って配置された先端開放スタブ181と、裏面に引出されたスタブ接続部184から接続され裏面に形成された先端開放スタブ185との2つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0039】
図13は、本発明による送電コイルの第10の実施の形態を説明する透視斜視図である。本実施の形態においては、平面基板108は表面と裏面および内側に導体層が配置された多層基板であって、基本コイル部100の入力接続部104付近のスタブ接続部193から接続され基本コイル部100と同じ平面上の基本コイル部100の内側に沿って配置された先端開放スタブ191と、入力接続部104付近から内層面および裏面に引出されたスタブ接続部194から接続され内層面に配置された先端開放スタブ195と、スタブ接続部194から接続され裏面に形成された先端開放スタブ196との3つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。このように、平面基板として導体層が多層状に配置された多層基板を用い、先端開放スタブの一部または全てを、基本コイル部が形成された導体層とは異なる導体層に形成してもよい。 このような構成とすることで、互いに長さの異なる先端開放スタブを複数接続することができるため、不要な信号の周波数が非常に多い場合にも対処することができる。
【0040】
以上の各実施の形態において、平面基板102、107、108としては、FPCやFR−4基板等の誘電体基板、または、フェライト等の磁性体基板を用いることができ、システムの動作周波数では低損失である材料から構成されることが望ましい。また、複数の異なる材料定数を持った誘電体、または、磁性体を組み合わせた複合材料で構成してもよい。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態や実施例に限られるものではないことはいうまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の送電コイル及び非接触電力伝送及び通信システムは、携帯電話、デジタルカメラ、ヘッドセット、デジタルビデオ、ゲームコントローラー器、等の携帯端末機器とその充電装置などに利用することができる。また、自動車等の大電力が必要な装置とその充電機器にも応用可能である。
【符号の説明】
【0043】
100 基本コイル部
101、111、121、131、135、141、145、151、155、161、165、171、181、185、191、195、196 先端開放スタブ
102、107、108 平面基板
103、113、123、133、134、143、153、163、173、183、184、193、194 スタブ接続部
104 入力接続部
105 出力接続部
200 コイル
201 オープンスタブ
206 アンテナ
207、208 ICチップ
300 線状アンテナ
301 整合用スタブ
309 接続ライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電子機器などに備えた受電装置と給電機器などに備えた送電装置とからなり、電磁誘導により、送電装置から受電装置へ非接触で電力を送電する機能と両装置間で非接触でデータ通信を行う機能とを有する非接触電力伝送及び通信システムで使用する送電コイル、及びそれを用いた非接触電力伝送及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化に伴い、携帯電話や携帯型音楽プレーヤー等に代表される携帯型電子機器は、小型化や軽量化が図られ、広く普及してきている。一般的に、携帯型電子機器に内蔵された二次電池またはキャパシタへの充電は、携帯型電子機器の充電端子と充電装置の充電台(クレードル)に設置してある充電端子を接触させて電気的に接続し、充電台から電力を供給して携帯型電子機器の二次電池またはキャパシタを充電する方式がとられる。
【0003】
しかし、充電端子同士を接触して接続する充電方式では、充電端子の汚れや、充電端子間への異物侵入により充電ができない場合があるので、最近は電磁誘導の原理を利用した非接触の電力供給方式が多く使用されており、これに用いる非接触電力伝送装置の需要が増加している。非接触電力伝送装置では、一般的に、送電装置の送電コイルと受電装置の受電コイルとを近接して対向させて配置し、送電コイルと受電コイル間の電磁結合を介して電力の伝送が行なわれている。さらに、受電側の要求電力や異常時の送電停止等を指示するデータや送受電装置間のID認証などのデータも送電コイルと受電コイル間を介して通信する機能を有する非接触電力伝送及び通信システムが開発されている。
【0004】
このようなシステムでは、送電コイルおよび受電コイルとしては、小型実装のためにループコイルやスパイラルコイルが適している。しかし、一般にループコイルやスパイラルコイルを用いて電力を送電する場合、送電コイルに流れる電流には送電周波数の高調波成分や送電回路において発生する他の周波数成分が含まれてしまう場合があり、これらの周波数の電磁放射ノイズが発生してしまう。そこで、安定した電力供給および通信を行うためには、放射ノイズの発生を抑制したループコイルやスパイラルコイルからなる送電コイルを実現し、システムの動作周波数以外の周波数成分の信号の送電コイルからの放射をできるだけ抑える必要がある。
【0005】
従来、特定の周波数成分の信号の伝播を抑制する手段として、スタブを用いる方法がある。例えば、特許文献1には、コイルをアンテナとして用いた無線通信装置において、信号入出力端に先端開放スタブ(オープンスタブ)を設けて、干渉対策を行う手段が開示されている。図14は、特許文献1に記載された従来のコイルをアンテナとして用いた無線通信装置としてのRFIDタグを示す構成説明図である。これによれば、この無線通信装置は二つの周波数帯域の信号に対応した無線通信装置であり、低い周波数帯の誘導電磁界でアンテナとして動作しICチップ208に接続されたコイル200と、高い周波数帯の放射電磁界で動作しICチップ207に接続されたアンテナ206の二つのアンテナを有している。そして、誘導電磁界で動作するコイル200に接続されたICチップ208の入出力端子にオープンスタブ201を設置することにより、放射電磁界で動作するアンテナ206からの干渉を抑制する構造を実現し、通信性能の劣化を低減させている。
【0006】
また、オープンスタブとアンテナとを組み合わせた従来の他の構造として、オープンスタブを整合用として設置する方法も報告されている。例えば、特許文献2には、車載用の無線通信装置に用いるアンテナにオープンスタブを設けて、アンテナのインピーダンス整合を行う構造が示されている。図15は、特許文献2に記載された、アンテナと整合用スタブの構造を3次元的に示す説明図である。これによれば、基板の表面に配置された2つの線状アンテナ300と、裏面に配置され、それらを接続する接続ライン309との境界において、線状アンテナを伝搬する信号の反射が生じないように、その境界に設けた整合用スタブ301によりインピーダンス整合を行う構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−288874号公報
【特許文献2】特開2009−100445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の従来例では、一体化して配置され異なる周波数帯で動作する2種類のアンテナを使用する場合、低い周波数帯で動作するコイルアンテナへの入出力端子に先端開放スタブを設けて、他の周波数信号に対する電磁干渉対策を行っている。また、特許文献2の従来例では、先端開放スタブによって、アンテナ接続部の境界における接続線路のインピーダンス整合を行っている。しかし、上述のように、非接触電力伝送及び通信システムにおいては、送電コイルからのシステムの動作周波数以外の周波数成分の放射をできるだけ抑えることが要求されており、この目的に対しては上記の従来の技術をそのまま適用することはできない。
【0009】
そこで、本発明の課題は、小型実装に適したループコイルまたはスパイラルコイルからなり、動作周波数の高調波成分や動作周波数以外の周波数成分の放射を抑制することが可能な送電コイル及びそれを用いた非接触電力伝送装置及び通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明による送電コイルは、送電コイルと前記送電コイルに電力を供給するための送電回路とを有する送電装置と、前記送電コイルに電磁結合可能な受電コイルを有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイル間の電磁結合を介して非接触で電力伝送及び通信を行う非接触電力伝送及び通信システムに使用される送電コイルであって、ループ形状またはスパイラル形状のコイルと、少なくとも1つの前記コイルに沿って配置された線状の導体からなる先端開放スタブとを有し、前記先端開放スタブは、前記コイルの一部に一端を接続されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、30MHz以上、1000MHz以下の周波数であって、かつ、前記送電回路の少なくとも一部において発生する電気信号またはその高調波成分の少なくとも1つの周波数に対応する波長の1/4倍を前記導体の長さとすることが望ましい。
【0012】
また、前記コイルおよび前記先端開放スタブは、磁性体を主な材料とする基板、または誘電体を主な材料とする基板、または磁性体及び誘電体とを主な材料とする基板の表面または内部に形成されていてもよい。
【0013】
さらに、前記基板は導体層が多層状に配置された多層基板であって、前記先端開放スタブの少なくとも一部は、前記コイルが形成された導体層とは異なる導体層に形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明による非接触電力伝送及び通信システムは、上記のいずれかの送電コイルを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明の送電コイルは、コイルの一部に接続された先端開放スタブを有するループ形状またはスパイラル形状のコイルであり、動作周波数の高調波成分あるいは所望の他の周波数成分の信号を先端開放スタブによって除去することで、送電コイルに電磁妨害対策を施し、送電コイルからの不要な放射ノイズの発生を防ぐものである。
【0016】
すなわち、本発明の送電コイル及びそれを使用した非接触電力伝送及び通信システムにおいては、送電コイルの動作周波数では本来の目的とする送電動作や通信動作を保ちつつ、システムの妨害となる所望の周波数に阻止帯域を設定することが可能となる。なお、この妨害となる周波数は、通常の非接触電力伝送及び通信システムにおいては、30以上、1000MHz以下の間に存在するので、本発明はその妨害波を阻止するものである。
【0017】
本発明の送電コイル及びそれを使用した非接触電力伝送及び通信システムによれば、所望の周波数に阻止帯域を設定することで送電コイルに供給される電力を減少させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の送電コイルでは、先端開放スタブは、送電コイルのコイルパターンに沿って配置されるため、送電コイルの全体形状を大きくすること無く、小型化な高調波抑制型の送電コイルの提供が可能となる。
【0019】
また、本発明の送電コイルでは、長さの異なる複数個の先端開放スタブを配置することが可能であるため、複数の阻止帯域を設定することが可能となる。
【0020】
よって、本発明により、小型実装に適したループコイルまたはスパイラルコイルからなり、動作周波数の高調波成分や動作周波数以外の周波数成分の放射を抑制することが可能な送電コイル及びそれを用いた非接触電力伝送及び通信システムの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による送電コイルの第1の実施の形態を説明する平面図。
【図2】本発明による送電コイルの第1の実施の形態を説明する斜視図。
【図3】第1の実施の形態の送電コイルの実施例の透過特性を示す図。
【図4】第1の実施の形態の送電コイルの実施例の反射特性を示す図。
【図5】本発明による送電コイルの第2の実施の形態を説明する平面図。
【図6】本発明による送電コイルの第3の実施の形態を説明する平面図。
【図7】本発明による送電コイルの第4の実施の形態を説明する平面図。
【図8】本発明による送電コイルの第5の実施の形態を説明する平面図。
【図9】本発明による送電コイルの第6の実施の形態を説明する平面図。
【図10】本発明による送電コイルの第7の実施の形態を説明する平面図。
【図11】本発明による送電コイルの第8の実施の形態を説明する透視斜視図。
【図12】本発明による送電コイルの第9の実施の形態を説明する透視斜視図。
【図13】本発明による送電コイルの第10の実施の形態を説明する透視斜視図。
【図14】従来のコイルをアンテナとして用いた無線通信装置を示す構成説明図。
【図15】従来のアンテナと整合用スタブの構造を3次元的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明による送電コイルの第1の実施の形態を説明する平面図であり、図2は本発明による送電コイルの第1の実施の形態を説明する斜視図である。本実施の形態の送電コイルは、送電コイルと前記送電コイルに電力を供給するための送電回路とを有する送電装置と、前記送電コイルに電磁結合可能な受電コイルを有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイル間の電磁結合を介して非接触で電力伝送及び通信を行う非接触電力伝送及び通信システムに使用される送電コイルである。図1、図2において、本実施の形態の送電コイルは、平面基板102上に形成されたスパイラル形状のコイルである基本コイル部100と、1つの先端開放スタブ101とを有している。基本コイル部100には、送電装置から電力を入力する入力接続部104と電力を出力する出力接続部105が設置され、先端開放スタブ101は、基本コイル部100の入力接続部104に近接したスタブ接続部103において一端を接続され、基本コイル部100の内側に沿って配置された線状の導体からなっている。
【0024】
次に、本発明の効果を確認するため、第1の実施の形態の送電コイルの具体的な一実施例を設計して評価した結果について説明する。本実施例の送電コイルの基本コイル部100は、全体の外形が20mm×40mmであり、コイルパターン幅0.5mm、コイルパターン間隔1.5mm、巻数4ターンにて作成し、動作周波数13.56MHzを想定した送電コイルとしている。
【0025】
平面基板102として、形状が22mm×42mm×0.27mmの誘電体基板(FR−4)を使用し、基板の裏面にはグランドプレーンとして、厚み0.016mmの銅箔を使用している。
【0026】
上記の基本コイル部100と同じ平面上に同じ導体により、幅0.5mmの先端開放スタブ101を入力接続部104付近のスタブ接続部103から接続し、配置した構成としている。
【0027】
この実施例では3種類の長さの先端開放スタブ101を使用した。すなわち、その電気長が、平面基板102の誘電率による波長短縮効果によって、周波数100MHzにおいて1/4波長となる長さ340mmのもの、180MHzにおいて1/4波長となる長さ200mmのもの、450MHzにおいてλ/4となる長さ80mmのものの3種類を使用した。また、比較のため、先端開放スタブを有しない従来の送電コイルについても評価を行った。
【0028】
以上のように設計された、送電コイルにおいて、入力接続部104と、出力接続部105での観測電圧から、透過特性S21と、反射特性S11の電磁界シミュレーションを行った。透過特性の結果を図3に示し、反射特性の結果を図4に示す。図3は第1の実施の形態の送電コイルの実施例の透過特性を示す図である。図4は第1の実施の形態の送電コイルの実施例の反射特性を示す図である。図3と図4に示したとおり、従来の送電コイルでは、10MHzから1000MHzまで全ての周波数帯で反射が無く、全て透過していることが確認できる。これに対して、本実施例の送電コイルでは、先端開放スタブ101の効果によって、先端開放スタブ101の電気長が1/4波長に対応している周波数の奇数倍において、透過が減り反射が増える阻止帯域が生じていることが確認できる。また、動作周波数である13.56MHzでは、−0.1dB以上の透過と、−20dB以下の反射が得られ、非常に小さな反射特性をもつ伝送線路として作用していることが確認できる。
【0029】
以上のことから、本実施の形態の送電コイルを使用することにより、動作周波数である13.56MHzでは小さな反射で通常の送電コイルとして動作し、先端開放スタブ101の効果により生じる阻止帯域では大きな反射により、送電コイル部に電流が流れなくなり、コイル部から発生する高調波の放射ノイズを抑制することが可能となることが確認できた。
【0030】
以上のように、本発明により、高調波の放射ノイズを低減した送電コイルが得られ、この送電コイルの使用により、安定した電力供給および通信を行うことが可能な非接触電力伝送及び通信システムが得られる。
【0031】
図5は、本発明による送電コイルの第2の実施の形態を説明する平面図である。第1の実施の形態では、先端開放スタブは入力接続部104付近から接続しているが、本実施の形態では、図5に示すように、先端開放スタブ111は出力接続部105付近のスタブ接続部113において一端を接続され、基本コイル部100の内側に沿って配置されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。 このような構成とすることで、不要な周波数帯域における負荷変動や電気信号の逆流などを出力接続部105で反射させ、コイル部から発生する高調波の放射ノイズを抑制することができる。
【0032】
図6は、本発明による送電コイルの第3の実施の形態を説明する平面図である。第1の実施の形態では、先端開放スタブ121は入力接続部104付近から接続され、基本コイル部100の内側に沿って配置されているが、本実施の形態では、先端開放スタブ121は基本コイル部100の外側に沿って配置され、入力接続部104付近のスタブ接続部123において接続されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0033】
図7は、本発明による送電コイルの第4の実施の形態を説明する平面図である。第1の実施の形態では先端開放スタブを1個のみ配置しているが、本実施の形態においては、入力接続部104付近のスタブ接続部133から接続された先端開放スタブ131と、出力接続部105付近のスタブ接続部134から接続された先端開放スタブ135との2つの先端開放スタブを有している。これらの2つの先端開放スタブは基本コイル部100の内側に沿って配置されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。このように、複数個の先端開放スタブを配置してもよい。 このような構成とすることで、不要な周波数帯域における負荷変動や電気信号などを入力接続部104と出力接続部105の双方で反射させ、コイル部から発生する高調波の放射ノイズを抑制することができる。
【0034】
図8は、本発明による送電コイルの第5の実施の形態を説明する平面図である。本実施の形態においては、入力接続部104付近のスタブ接続部143から接続され基本コイル部100の内側に沿って配置された先端開放スタブ141と、スタブ接続部143から接続され基本コイル部100の外側に沿って配置された先端開放スタブ145との2つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。 このような構成とすることで、先端開放スタブを2本接続することができるため、不要な信号の反射性能を向上させることができる。
【0035】
図9は、本発明による送電コイルの第6の実施の形態を説明する平面図である。本実施の形態においては、基本コイル部100の出力接続部105付近のスタブ接続部153から接続され基本コイル部100の内側に沿って配置された先端開放スタブ151と、スタブ接続部153から接続され基本コイル部100の外側に沿って配置された先端開放スタブ155との2つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0036】
図10は、本発明による送電コイルの第7の実施の形態を説明する平面図である。本実施の形態においては、入力接続部104付近のスタブ接続部163から接続され基本コイル部100の内側に沿って配置された先端開放スタブ161と、スタブ接続部163から接続され基本コイル部100の外側に沿って配置された先端開放スタブ165との2つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。第5の実施の形態では、複数配置した先端開放スタブの長さが同じとなる構成を示しているが、本実施の形態においては、図10に示すように、先端開放スタブ161と先端開放スタブ165では長さが異なっている。このように長さの異なる複数個の先端開放スタブを配置してもよい。 このような構成とすることで、互いに長さの異なる先端開放スタブを2本接続することができるため、不要な信号の周波数が多数ある場合にも対処することができる。
【0037】
図11は、本発明による送電コイルの第8の実施の形態を説明する透視斜視図である。本実施の形態においては、平面基板107は表面と裏面に導体層が配置された基板であって、先端開放スタブ171は、基本コイル部100が形成された表面の導体層とは異なる裏面の導体層に形成されている。先端開放スタブ171は入力接続部104付近のスタブ接続部173から接続されて裏面に引出され、表面の基本コイル部100に沿って配置されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。このように、平面基板107の裏面に先端開放スタブを配置してもよい。 このような構成とすることで、基本コイル部100および先端開放スタブ171の導線間の距離を詰めることができるため、送電コイル中央部に他部品を配置するような場合などに、基本コイル部100および先端開放スタブ171と他部品との距離を空け、電磁気的な影響を防ぐことができるため、望ましい。
【0038】
図12は、本発明による送電コイルの第9の実施の形態を説明する透視斜視図である。本実施の形態においては、平面基板107は表面と裏面に導体層が配置された基板であって、入力接続部104付近のスタブ接続部183から接続され基本コイル部100と同じ平面上の基本コイル部100の外側に沿って配置された先端開放スタブ181と、裏面に引出されたスタブ接続部184から接続され裏面に形成された先端開放スタブ185との2つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0039】
図13は、本発明による送電コイルの第10の実施の形態を説明する透視斜視図である。本実施の形態においては、平面基板108は表面と裏面および内側に導体層が配置された多層基板であって、基本コイル部100の入力接続部104付近のスタブ接続部193から接続され基本コイル部100と同じ平面上の基本コイル部100の内側に沿って配置された先端開放スタブ191と、入力接続部104付近から内層面および裏面に引出されたスタブ接続部194から接続され内層面に配置された先端開放スタブ195と、スタブ接続部194から接続され裏面に形成された先端開放スタブ196との3つの先端開放スタブを有している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。このように、平面基板として導体層が多層状に配置された多層基板を用い、先端開放スタブの一部または全てを、基本コイル部が形成された導体層とは異なる導体層に形成してもよい。 このような構成とすることで、互いに長さの異なる先端開放スタブを複数接続することができるため、不要な信号の周波数が非常に多い場合にも対処することができる。
【0040】
以上の各実施の形態において、平面基板102、107、108としては、FPCやFR−4基板等の誘電体基板、または、フェライト等の磁性体基板を用いることができ、システムの動作周波数では低損失である材料から構成されることが望ましい。また、複数の異なる材料定数を持った誘電体、または、磁性体を組み合わせた複合材料で構成してもよい。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態や実施例に限られるものではないことはいうまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の送電コイル及び非接触電力伝送及び通信システムは、携帯電話、デジタルカメラ、ヘッドセット、デジタルビデオ、ゲームコントローラー器、等の携帯端末機器とその充電装置などに利用することができる。また、自動車等の大電力が必要な装置とその充電機器にも応用可能である。
【符号の説明】
【0043】
100 基本コイル部
101、111、121、131、135、141、145、151、155、161、165、171、181、185、191、195、196 先端開放スタブ
102、107、108 平面基板
103、113、123、133、134、143、153、163、173、183、184、193、194 スタブ接続部
104 入力接続部
105 出力接続部
200 コイル
201 オープンスタブ
206 アンテナ
207、208 ICチップ
300 線状アンテナ
301 整合用スタブ
309 接続ライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルと前記送電コイルに電力を供給するための送電回路とを有する送電装置と、前記送電コイルに電磁結合可能な受電コイルを有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイル間の電磁結合を介して非接触で電力伝送及び通信を行う非接触電力伝送及び通信システムに使用される送電コイルであって、ループ形状またはスパイラル形状のコイルと、少なくとも1つの前記コイルに沿って配置された線状の導体からなる先端開放スタブとを有し、前記先端開放スタブは、前記コイルの一部に一端を接続されていることを特徴とする送電コイル。
【請求項2】
30MHz以上、1000MHz以下の周波数であって、かつ、前記送電回路の少なくとも一部において発生する電気信号またはその高調波成分の少なくとも1つの周波数に対応する波長の1/4倍を前記導体の長さとすることを特徴とする請求項1に記載の送電コイル。
【請求項3】
前記コイルおよび前記先端開放スタブは、磁性体を主な材料とする基板、または誘電体を主な材料とする基板、または磁性体及び誘電体とを主な材料とする基板の表面または内部に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の送電コイル。
【請求項4】
前記基板は導体層が多層状に配置された多層基板であって、前記先端開放スタブの少なくとも一部は、前記コイルが形成された導体層とは異なる導体層に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の送電コイル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の送電コイルを用いたことを特徴とする非接触電力伝送及び通信システム。
【請求項1】
送電コイルと前記送電コイルに電力を供給するための送電回路とを有する送電装置と、前記送電コイルに電磁結合可能な受電コイルを有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイル間の電磁結合を介して非接触で電力伝送及び通信を行う非接触電力伝送及び通信システムに使用される送電コイルであって、ループ形状またはスパイラル形状のコイルと、少なくとも1つの前記コイルに沿って配置された線状の導体からなる先端開放スタブとを有し、前記先端開放スタブは、前記コイルの一部に一端を接続されていることを特徴とする送電コイル。
【請求項2】
30MHz以上、1000MHz以下の周波数であって、かつ、前記送電回路の少なくとも一部において発生する電気信号またはその高調波成分の少なくとも1つの周波数に対応する波長の1/4倍を前記導体の長さとすることを特徴とする請求項1に記載の送電コイル。
【請求項3】
前記コイルおよび前記先端開放スタブは、磁性体を主な材料とする基板、または誘電体を主な材料とする基板、または磁性体及び誘電体とを主な材料とする基板の表面または内部に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の送電コイル。
【請求項4】
前記基板は導体層が多層状に配置された多層基板であって、前記先端開放スタブの少なくとも一部は、前記コイルが形成された導体層とは異なる導体層に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の送電コイル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の送電コイルを用いたことを特徴とする非接触電力伝送及び通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−38887(P2012−38887A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177132(P2010−177132)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
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