説明

送風機用羽根車の羽根および送風機用羽根車

【課題】 羽根の外表面を流れる空気流が余分な渦流となって騒音を発生することを防止する送風機用羽根車の羽根および送風機用羽根車を提供する。
【解決手段】 送風機用羽根車の羽根は、一方の面に凹所35が形成された羽根本体31と、羽根本体31とともに中空部41を形成する蓋部材32とを備え、蓋部材32の外面側端縁には前縁部垂直面66に連続する円弧状端縁68が形成されており、前縁部垂直面66の頂点Qが、羽根本体31の外面側端縁の頂点(R)より内方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、送風機用羽根車の羽根および送風機用羽根車に関し、特に、中空部を有しエアフォイル形状に構成された送風機用羽根車の羽根およびそのような羽根を備える送風機用羽根車に関する。
【0002】
【従来の技術】送風機用羽根車の羽根に関して、送風性能を向上させるために、その断面をエアフォイル形状(厚翼形状)とする技術が広く知られている。エアフォイル形状を採用すると、空気の流入角の変動にかかわらず空気流の剥離が抑制されるので、薄翼のものに較べて送風性能が向上する。
【0003】そして、薄翼形状のものに較べて羽根の重量が増加してしまうというエアフォイル形状の羽根の欠点を小さくする対策として、羽根を中空構造とする考え方も公知である。羽根を中空構造とする場合には、2つ以上の部材を接合して羽根を製作するか、あるいはガスアシスト成型により羽根を製作することになる。
【0004】2つの以上の部材を接合して羽根を製作する場合には、例えば、一方の面に凹所が形成された羽根本体と、この羽根本体の凹所に対応する形状の蓋部材とを重合して、蓋部材の縁部分を超音波溶着によって羽根本体に接合することが考えられる。羽根本体と蓋部材とを超音波溶着により接合する場合には、羽根本体の凹所の縁部分に、蓋部材の内面側と当接する段部を形成しておき、凹所に蓋部材を重合する。羽根本体の凹所に蓋部材が重合された羽根を所定の治具上に載置し、蓋部材と羽根本体との接合部分に超音波溶着装置の超音波ホーンを下降させる。この状態で超音波ホーンを蓋部材と羽根本体との接合部分に押圧接触させるとともに、接合部分に対する超音波振動を行う。このことから、超音波振動による摩擦熱により、蓋部材と羽根本体との接合部における溶着が行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】羽根の外表面は、なるべく滑らかに形成されていることが好ましく、外表面に突起部分や溝部分が存在すると回転駆動時に騒音発生の原因となるおそれがある。前述したような羽根本体と蓋部材とが接合された羽根では、羽根本体の凹所に設けた段部の深さと蓋部材の厚さを同一にして、羽根本体と蓋部材との接合部における段差をなくして滑らかな外表面を構成することが試みられる。
【0006】しかしながら、羽根本体の凹所と蓋部材とを全く隙間なく同一形状に作成することは困難であり、どうしてもわずかながら間隙が生じてしまい、羽根の外表面に溝が構成されることとなる。図17に示すように、羽根本体Aと蓋部材Bとの接合部において、羽根の回転方向前縁側に溝Cがある場合、羽根の外表面に沿って流れる空気流は、この溝Cの前縁側エッジDで剥離し、渦Fとなって下流側に流されることとなる。この渦Fは、溝Cの後縁側エッジEに衝突することにより、乱れた渦Gとなって騒音発生の原因となる。
【0007】特に、羽根本体の凹所に形成された段部の深さと、蓋部材の厚さとを同一にした場合には、蓋部材の前縁側の垂直面に空気流がぶつかって乱れた渦が発生し、上述したような現象が起こりやすくなる。また、羽根本体や蓋部材は合成樹脂の成型品で構成される場合が多く、羽根本体の凹所に設けられた段部の深さや蓋部材の厚さにばらつきが生じるおそれがある。したがって、羽根本体と蓋部材との接合個所において、羽根の外表面を正確に面一状態とすることが困難である。特に、成型時における寸法精度のばらつきや接合時における作業精度のばらつきにより、羽根の回転方向前縁側に蓋部材の縁部分の垂直面が露出すると、この蓋部材の垂直面にぶつかって乱れた渦が多く発生し、羽根の回転駆動時に発生する騒音が大きくなるという問題がある。
【0008】本発明の目的は、羽根の外表面を流れる空気流が余分な渦流となって騒音を発生することを防止する送風機用羽根車の羽根および送風機用羽根車を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る送風機用羽根車の羽根は、一方の面に凹所が設けられた羽根本体と、羽根本体の凹所に重合されて縁部分が羽根本体の凹所の縁部分と接合される蓋部材とを備え、羽根本体と蓋部材とによって中空部を形成するとともにエアフォイル形状に構成された送風機用羽根車の羽根であって、蓋部材の外面側端縁は、少なくとも羽根の回転方向前縁側において、羽根本体の凹所の外面側端縁より内方に位置している。
【0010】このことにより、羽根本体と蓋部材との接合部において、蓋部材の縁部分の垂直面が羽根本体よりも外側に露出することなく、回転駆動時の騒音の発生が抑制される。請求項2に記載の送風機用羽根車の羽根は、請求項1に記載の送風機用羽根車の羽根であって、蓋部材の外面側端縁が、少なくとも羽根の回転方向前縁側において、面取りされている。
【0011】この場合には、羽根の外表面に沿って流れてくる空気流が、蓋部材の外面側端縁に衝突して乱れた渦となることがなく、騒音の発生が抑制される。請求項3に記載の送風機用羽根車の羽根は、請求項1に記載の送風機用羽根車の羽根であって、蓋部材の外面側端縁が、少なくとも羽根の回転方向前縁側において、円弧形状に形成されている。
【0012】この場合も、同様にして、羽根の外表面に沿って流れてくる空気流が、蓋部材の円弧形状に形成された外面側端縁にぶつかって乱れた渦となることがなく、騒音の発生が抑制される。請求項4に記載の送風機用羽根車の羽根は、請求項1〜3のいずれかに記載の送風機用羽根車の羽根であって、少なくとも羽根の回転方向前縁側の外表面が羽根本体の凹所の外面側端縁よりも内方に位置するように蓋部材の厚さが設定されている。
【0013】この場合には、蓋部材が羽根本体の外表面よりも突出することがなく、羽根の外表面に沿って流れてくる空気流は、蓋部材の縁部分の垂直面にぶつかることがなく、騒音の発生が抑制される。請求項5に記載の送風機用羽根車は、駆動源の回転軸に装着されるハブと、ハブの外周であって回転方向に等間隔の位置に取り付けられる複数の請求項1〜4のいずれかに記載の送風機用羽根車の羽根とを備える構成である。
【0014】前述したように、請求項1〜4に記載の送風機用羽根車の羽根は、騒音の発生が抑制されるような構造となっており、このような羽根を用いて送風機用羽根車を構成しているため、回転駆動時に騒音が少ない送風機用羽根車を提供できる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態であるプロペラファン(送風機用羽根車)1が採用される空調機用の室外機10を図1、図2に示す。室外機10は、図1に示すように、熱交換室8および機械室9から構成されており、両室が仕切板で仕切られている。熱交換室8には、プロペラファン1を回転軸4aに装着したモータ4と、横断面がL字状である熱交換器5とが配設されており、前面には、桟形状の吹き出しグリル6がはめられている。モータ4によりプロペラファン1が回転すると、図1の2点鎖線で示す矢印の向きに沿って、熱交換器5を通過した空気が吹き出しグリル6から室外機10の前方(図1下方)へと流れる。なお、プロペラファン1は、図2に示す矢印の向きに回転する。機械室9には、圧縮機ユニット7や図示しない電装品などが配置される。
【0016】プロペラファン1は、図3に示すように、モータ4の回転軸4aに装着される円筒形状のハブ2と、ハブ2の外周面に送風方向に所定の傾斜角を有して接合される複数の羽根3とから構成されている。ハブ2の内周部には、モータ4の回転軸4aに回転不能に嵌合する溝など(図示せず)が形成されている。この実施形態においては、図示したように、3枚の羽根3,3を備えるプロペラファン1を採用している。
【0017】羽根3は、図6に示すような羽根本体31と、図8に示すような蓋部材32とから形成されている。羽根3は、いわゆる前進翼と呼ばれる構造であり、空力性能の向上のために前縁部が外周側ほど回転方向に前進している形状となっており、また、流入してくる気流(空気)に対する剥離の発生度合い、特に前縁剥離の度合いを減少させるために、前縁部分が丸みを帯びた厚翼形状(エアフォイル形状)となっている。これに対応して、図5に示すように、羽根本体31は、丸みを帯びた厚肉形状である前縁部33と、羽根後部に対応する後縁部34と、前縁部33と後縁部34との中間に位置して負圧面側に凹所35が形成される中間薄肉部36とを有している。
【0018】凹所35の縁部分には、蓋部材32の縁部分と接合される段部37,37が不連続に形成されている。蓋部材32が凹所35に嵌合されるとき、この段部37の表面が蓋部材32の内面に当接するとともに、超音波溶着において羽根本体31と蓋部材32との接合を行う。段部37は、図7に示すように、湾曲面38により凹所35と連接されており、凹所35に付着した水滴などの液体を羽根本体31と蓋部材32との接合部に案内するように構成されている。また、羽根本体31の段部37の適所に、蓋部材32の位置決めを行うための位置決め突起39,39,39が設けられている。図示したものでは、この位置決め突起39,39,39は3個所に設けられている。
【0019】蓋部材32は、羽根本体31の段部37と当接して凹所35にはめ合わされる形状であり、羽根3の負圧面側の表面を構成するものである。蓋部材32には、羽根本体31の位置決め突起39,39,39に対応して、位置決め用凹部40,40,40が設けられている。図5の一部拡大図を図13に示す。羽根3の回転方向前方側に位置する蓋部材32の端縁は前縁部垂直面66を有しており、この前縁部垂直面66と外表面67とが交差する外面側端縁は円弧状に形成された円弧状端縁68となっている。このことにより、蓋部材32の前縁部垂直面66の外表面側頂点Qが、羽根本体31の外表面65の後縁部頂点Rよりも内方に位置することとなる。このことにより、羽根3の回転駆動中に、羽根本体31の外表面65に沿って流れる気流は、蓋部材32の前縁部垂直面66にぶつかって乱れた渦となることがなくなり、その代わりに円弧状端縁68および蓋部材32の外表面67に沿って後方に流れることとなる。したがって、蓋部材32の端縁にぶつかって乱れた渦を発生することを防止でき、騒音の発生が抑制される。
【0020】蓋部材32の内面側には、羽根本体31の段部37と対応する位置に、エネルギーダイレクタ48が形成されている。このエネルギーダイレクタ48は、超音波ホーンによる超音波振動によって溶融して、羽根本体31の段部37と蓋部材32の縁部分とを溶着するものであり、図9に示すように、断面略3角形状に構成されている。
【0021】蓋部材32は、位置決め用凹部40を羽根本体31の位置決め用突起39に合わせ、羽根本体31の凹所35にはめ合わされる。この後、羽根本体31と蓋部材32とは超音波接合などにより接合され、中空部41を有する羽根3が構成される。羽根本体31と蓋部材32とは、段部37が設けられた位置において蓋部材32に設けられたエネルギーダイレクタ48が溶融することにより接合される。この羽根本体31と蓋部材32との接合部において、段部37が存在していない位置では、中空部41から外部に連通するわずかな間隙が形成されることとなる。
【0022】蓋部材32には、縁部分の3個所に排出口用凹部42,43,44が設けられている。この排出口用凹部42,43,44は、蓋部材32が羽根本体31に接合されたときに、中空部41と連通して、中空部41に浸入した水滴などの液体を排出するための排出口45,46,47を構成するものである。図10,図11に示すように、羽根本体31の前縁部33には、突起61が設けられている。この突起61は、羽根本体31と一体に形成されるものであって、前縁部33の外周部分において負圧面側に膨らんでいる。図10、図11に示す点Pは、突起61の頂点を示している。この突起61は、プロペラファン1の回転時に外周側前縁に位置する排出口45の回転方向上流側となる部分に位置し、その表面が排出口45の表面よりも外側にある。また、突起61はなめらかな丘陵状であり、排出口45に近い側の後方傾斜面62が排出口45から遠い側の前方傾斜面63よりも急峻となっている(図11参照)。さらに、突起61は、排出口45の回転方向上流側に向かっての前方部分だけではなく、排出口45の回転方向上流側に向かっての側方部分にもまたがって、排出口45の表面よりも盛り上がっている(図10参照)。
【0023】中空部に浸入した液体を排出するための排出口を設けた場合に、プロペラファンの回転駆動時にこの排出口から空気が流入して風切り音が発生し、中空部において共鳴して騒音源となるおそれがある。特に、上述したような前進翼では、前端側に設けた排出口45における騒音の発生が問題となる。したがって、排出口45の前方に突起61を設けることによって、この位置における気流の剥離を大きくし、排出口45に空気が流入しないようにしている。
【0024】具体的には、プロペラファン1の回転時に、図12に示すように、羽根3の前縁部33にぶつかって剥離した気流は、排出口45を通り越した下流側の位置で蓋部材32の表面に再付着することとなる。また、突起61の下流側において、剥離による渦流の発生位置およびベクトルが変わり、排出口45より中空部41に流入することが抑制される。このことから、排出口45に空気が流入することによる風切り音の発生や共鳴現象の発生を抑制し、騒音の発生を抑えることができる。
【0025】また、ここでは、突起61を羽根本体31の一部として一体に形成しているため、突起を接合するなどの工程が必要とされず、突起61を丘陵状としているため、プロペラファン1の回転抵抗が少なくなり回転効率が良好となる。また、後方傾斜面62の傾斜を前方傾斜面63の傾斜よりも急峻にしているため、後方傾斜面62に沿って流れて排出口45に流れ込む空気の量が減少する。これにより、中空部41に空気が流れ込む現象がより抑えられており、風切り音や共鳴現象も抑制される。
【0026】さらに、空調機用室外機10にはL字状の熱交換器5が配設されており、熱交換器5の2面から空気が吸い込まれるため、羽根3に流入する空気の方向が変動しやすい。これに対しこの実施形態によるプロペラファンでは、突起61が排出口45の回転方向上流側のみならず、回転方向上流側に向かって側方にも排出口45の表面よりも盛り上がっている部分を含んでいるため、羽根3に流入する空気の流れ方向が変動した場合にも、排出口45への空気の流入を抑えることができる。
【0027】この実施形態のように前進翼を3枚配置したプロペラファン1では、モータ4による駆動がなされていないときには、図4に示すような状態が比較的安定した状態であり、このような状態で止まることが多い。この状態にある各羽根3を図示したように3A,3B,3Cとすると、羽根3Aでは、中空部41の最下端位置が排出口45の位置と一致する。また、羽根3Bでは、中空部41の最下端位置が排出口46の位置と一致し、羽根3Cでは、中空部41の最下端位置が排出口47の位置と一致することとなる。このような排出口45,46,47を構成するために、プロペラファン1が非駆動時に安定状態となる回転位置において、各羽根3の中空部41の最下端部に位置するように、蓋部材32の排出口用凹部42,43,44を設定している。
【0028】また、羽根本体31の凹所35内面および蓋部材32の内面は、少なくとも羽根本体31の外表面および蓋部材32の外表面と同等の平滑な表面仕上げがなされている。これは、羽根本体31および蓋部材32を作成する際の金型を鏡面仕上げとすることで実現できる。必要であれば、羽根本体31の凹所35および蓋部材32の内面に撥水剤をスプレーするなどして撥水加工することもできる。
【0029】このようにしたプロペラファン1では、羽根3の中空部41に浸入した水滴は、回転駆動時には、遠心力により羽根本体31の凹所35内面および蓋部材32の内面を外周方向に案内され、排出口45,46および外周側の溶着されていない間隙から排出されることとなる。また、プロペラファン1は非駆動状態では図4に示すような回転位置で安定状態となる。このとき、羽根3の中空部41に浸入した水滴は、平滑面に形成された羽根本体31の凹所35の内表面および蓋部材32の内表面により、各羽根3,3の最下部に位置する排出口45,46,47側に案内される。凹所35の縁部分は、湾曲面38により段部37に連接しており、凹所35および蓋部材32の内表面を案内されてきた水滴は、羽根本体31と蓋部材32とが溶着されていない間隙および排出口45,46,47に案内されて外部に排出される。
【0030】本実施形態により構成した羽根3に対して、風量とそのときの騒音レベルとを計測し、その実験結果を図16に示す。本実施形態による実験結果を(A1)、蓋部材32に円弧状端縁68を設けなかった場合の実験結果を(Ref)として示す。この結果から、本実施形態によれば、蓋部材32に円弧状端縁68を設けなかった場合に比して、約0.3〜0.8[dBA]程度騒音が低減されることがわかる。
〔他の実施形態〕
(A)図14に示すように、蓋部材32の前縁部垂直面66と外表面67とが交差する外表面側端縁を面取りして傾斜部69とすることも可能である。この場合にも、蓋部材32の前縁部垂直面66の外表面側頂点Qが、羽根本体31の外表面65の後縁部頂点Rよりも内方に位置することとなる。したがって、前述した実施形態と同様にして、羽根3の回転駆動中に、羽根本体31の外表面65に沿って流れる気流が、蓋部材32の前縁部垂直面66にぶつかって乱れた渦となることがなく、その代わりに円弧状端縁68および蓋部材32の外表面67に沿って後方に流れることとなる。したがって、蓋部材32の端縁部にぶつかって乱れた渦を発生することがなくなり、騒音の発生が抑制される。
【0031】この実施形態により構成した羽根3に対して、風量とそのときの騒音レベルとを計測した実験結果を図16(A2)に示す。この結果から、前述した実施形態よりも騒音抑制効果はわずかに劣るものの、蓋部材32に円弧状端縁68を設けなかった場合(Ref)に比して、約0.2〜0.7[dBA]程度騒音が低減されることがわかる。
(B)図15に示すように、羽根3の回転方向前縁側において、蓋部材32の縁部分の厚さを薄くした薄肉部81を設けることも可能である。羽根本体31の外表面65と段部37との段差を(H1)とし、蓋部材32の薄肉部81の厚さを(H2)とすると、H1>H2の関係となる。このことにより、蓋部材32の前縁部垂直面66の外表面側頂点Qが、羽根本体31の外表面65の後縁部頂点Rよりも内方に位置することとなる。また、蓋部材32は、薄肉部81以外の部分において、羽根本体31の外表面65と段部37との段差(H1)と略同一の厚さ(H3)で構成されており、薄肉部81との境界部は滑らかな傾斜面82によって連続している。
【0032】したがって、前述した実施形態と同様にして、羽根3の回転駆動中に、羽根本体31の外表面65に沿って流れる気流が、蓋部材32の前縁部垂直面66にぶつかって乱れた渦となることが少なくなり、蓋部材32の薄肉部81の外表面および傾斜面82を経て後方の外表面67に沿って流れることとなる。このことにより、蓋部材32の端縁部にぶつかって乱れた渦を発生することが少なくなり、騒音の発生が抑制される。
【0033】傾斜面82は、面取りによる傾斜面で構成することも可能であり、図13の円弧状端縁68と同様に円弧状に形成することも可能である。また、蓋部材32の厚さを全体的に薄くして、羽根本体31の外表面65と段部37との段差(H1)よりも小さな厚さ(H2)に構成してもよい。この場合には、蓋部材32の後縁側の厚さを大きくするか、あるいは羽根本体31の後縁側における段部の段差を小さくして、羽根3の後縁側において羽根本体31の縁部分が蓋部材32よりも上面に露出しないようにすることが好ましい。
【0034】蓋部材32の厚さを全体的に均一にしておき、羽根3の回転方向前縁部における羽根本体31の外表面65と段部37との段差を大きくし、羽根3の回転方向後縁部における羽根本体31の外表面65と段部37との段差を小さくすることによって、蓋部材32の前縁部垂直面66が羽根本体31の外表面65より外側に露出しないように構成することも可能である。
(C)羽根の数は上述した実施形態に限定されるものではなく、2枚、あるいは4枚以上で構成することもできる。
【0035】
【発明の効果】本発明に係る送風機用羽根車の羽根は、蓋部材の外面側端縁が、少なくとも羽根の回転方向前縁側において、羽根本体の凹所の外面側端縁より内方に位置しており、羽根本体の外表面に沿って流れてくる気流が蓋部材の端縁にぶつかって乱れた渦となることを防止して、騒音の発生を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態が採用される空調機用室外機の横断面図。
【図2】その正面図。
【図3】本発明の一実施形態であるプロペラファンの斜視図。
【図4】その平面図。
【図5】図4のV−V断面図。
【図6】羽根本体の平面図。
【図7】図6のVII −VII 断面図。
【図8】蓋部材の平面図。
【図9】図8のIX−IX断面図。
【図10】羽根の一部拡大平面図。
【図11】図10のXI−XI断面図。
【図12】空気の流れを示す説明図。
【図13】図5の部分拡大図。
【図14】他の実施形態の要部拡大断面図。
【図15】さらに他の実施形態の要部拡大断面図。
【図16】羽根に対する風量と騒音との関係を示す特性図。
【図17】従来例における羽根本体と蓋部材との接合部を示す一部拡大断面図。
【符号の説明】
1 プロペラファン
2 ハブ
3 羽根
31 羽根本体
32 蓋部材
35 凹所
37 段部
38 湾曲面
41 中空部
45 排出口
46 排出口
47 排出口
48 エネルギーダイレクタ
65 外表面
66 前縁部垂直面
67 外表面
68 円弧状端縁
69 傾斜面
81 薄肉部
82 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】一方の面に凹所(35)が設けられた羽根本体(31)と、前記羽根本体(31)の凹所(35)に重合されて縁部分が前記羽根本体(31)の凹所(35)の縁部分と接合される蓋部材(32)とを備え、前記羽根本体(31)と蓋部材(32)とによって中空部(41)を形成するとともにエアフォイル形状に構成された送風機用羽根車の羽根(3)であって、前記蓋部材(32)の外面側端縁(Q)は、少なくとも羽根(3)の回転方向前縁側において、前記羽根本体(31)の凹所(35)の外面側端縁(R)より内方に位置している送風機用羽根車の羽根。
【請求項2】前記蓋部材(32)の外面側端縁は、少なくとも羽根(3)の回転方向前縁側において、面取り(69)されてなる、請求項1に記載の送風機用羽根車の羽根。
【請求項3】前記蓋部材(32)の外面側端縁は、少なくとも羽根(3)の回転方向前縁側において、円弧形状(68)に形成されている、請求項1に記載の送風機用羽根車の羽根。
【請求項4】前記蓋部材(32)は、少なくとも羽根(3)の回転方向前縁側の外表面が前記羽根本体(31)の凹所(35)の外面側端縁(R)よりも内方に位置するようにその厚さ(H2)が設定されている、請求項1〜3のいずれかに記載の送風機用羽根車の羽根。
【請求項5】駆動源(4)の回転軸(4a)に装着されるハブ(2)と、前記ハブ(2)の外周であって回転方向に等間隔の位置に取り付けられる複数の請求項1〜4のいずれかに記載の送風機用羽根車の羽根(3)とを備える送風機用羽根車。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図16】
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【公開番号】特開平11−210697
【公開日】平成11年(1999)8月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−14613
【出願日】平成10年(1998)1月27日
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)