説明

逆止弁及び逆止弁付き袋

【課題】逆止弁を開く順流の流れが弱い場合にあっても、閉止状態から開成状態へ良好且つ確実に移行できるようにした逆止弁及び逆止弁付き袋の提供を図る。
【解決手段】
前シート13と、後シート15との間に弁通路12が形成された逆止弁である。前シート13と後シート15とは、厚み方向に前後に対向して配置され、互いの密着によって前記弁通路を閉止状態に保持する。前シート13と後シート15との間であって、弁通路12の順流における上流側に、流通シート14が配位される。流通シート14は、弁通路12の順流における上流側にて、順流の流れ方向を横切る左右方向に渡って配置されたものであり、且つ、流体が同シート内を、同シートの厚み方向と交わる方向に通過できる流通性を備える。順流の流体は、流通シート14の内部を通って、弁通路12へと流入して、前シート13と後シート15を剥離させることにより、弁を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、逆止弁及び逆止弁付き袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、開閉口から内部へ被収納物を入れて開閉口を閉じ、内部の空気を排出するために用いる袋にあっては、特許文献1に示す逆止弁が用いられている。この逆止弁は、密封可能な袋体に取り付けられた状態であっても、速やかに脱気が可能なものであって、外装シート間に一部が重なり合うようにして、弁流通シート及びフラップを備えた弁機構が設けられたものであり、弁流通シート及びフラップの幅方向の寸法は、外装シートの幅方向の寸法よりも小さく形成されており、上記の外装シート及び弁流通シートの各々により流体流路が形成されたものであり、この流体流路の一部が、流入した気流の一部を滞留させる流体溜り部とされ、上記の弁機構が、上記の袋体を構成するシートに固定されない自由状態とされたことを特徴とするものである。
【0003】
また、特許文献2にあっては、対向する外装シートに挟まれるようにして、少なくとも1枚の弁体シート2が設けられ、外装シートと弁体シートとの間に気体通路が形成されたものであって、この弁体シートが外装シートに密着することにより閉鎖される気体通路に、間隔保持シートが設けられた逆止弁を開示する。圧縮袋などにこの逆止弁をヒートシールで取り付ける場合、間隔保持シートの、気流の通過方向に沿う側の側辺における端面よりも気体通路の外側方向においては、他方側外装シートと弁体シートとが密着しても、各シートの間に、気流の通過方向に沿う方向に延びる空間が常時確保されるため、間隔保持シートと弁体シートとは容易に分離でき、速やかに気体通路が開放されるとしたものであり、この間隔保持シートに不織布等の通気性のあるシートを用いることが開示されている。
【0004】
ところが、逆流防止の効果を高めるために、弁の開閉に直接作用する対向するシート同士の密着性を高めた場合、順流においては、シート同士が剥がれ難くなってしまう。特に、特許文献2のように、通気性のあるシートを用いた場合でも、シート同士が密着した状態をしばらくは維持し、順流の流体圧が高くない場合には、うまく弁が開かない場合があった。この状態を詳細に検討すると、可動性の高い上記弁体シートに対して、他方側外装シートが密着したまま浮き上がるように変形してしまう状態となっていた。
【0005】
また、吸引ポンプで袋内部の空気を吸引することによって、内部を減圧した状態で保管するための袋に用いた場合、この逆止弁は、電池等で駆動する比較的低出力の吸引ポンプで吸引されて順流状態となる。しかも、吸引ポンプの吸引口を流路口の上において吸引した際には、その吸引口が逆止弁の一部を押圧して、逆止弁がより開き難くなる場合がある。本願発明は、このような場合にあっても、吸引の開始時に、逆止弁が、良好に閉止状態から開成状態により確実に移行できるようにした逆止弁及び逆止弁付き袋の提供を目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−168865号公報
【特許文献2】特開2006−207743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、逆止弁が、良好に閉止状態から開成状態により確実に移行できるようにした逆止弁及び逆止弁付き袋の提供を目的とする。特に、逆止弁を開く順流の流れが弱い場合にあっても、良好に開くことができる逆止弁及び逆止弁付き袋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、
前シートと、後シートと、前記前シートと前記後シートとの間に形成された弁通路とを備え、
前記前シートと前記後シートとは、厚み方向に前後に対向して配置され、互いの密着によって前記弁通路を閉止状態に保持して流体の逆流を止めると共に、流体の順流によって前記前シートと前記後シートを剥離させることにより、前記弁通路を開いて流体の前記順流を許す逆止弁において、
前記前シートと前記後シートとの間であって、前記弁通路の順流における上流側に、流通シートが配位されたものであり、
前記流通シートは、前記弁通路の順流における上流側にて、前記順流の流れ方向を横切る左右方向に渡って配置されたものであり、且つ、流体が同シート内を、同シートの厚み方向と交わる方向に通過できる流通性を備えたものであり、
順流の流体は、前記流通シートの内部を通って、前記流通シートの下流側端縁から流出し、前記弁通路へと流入して、前記前シートと前記後シートを剥離させることにより、前記弁通路を開いて流体の前記順流を許すことを特徴とする逆止弁を提供する。
本願発明は、
前面側から後面側に向けて、前記前シート、前記流通シート、前記後シート、硬質シートの順に重ねられたものであり、
前記硬質シートは、前記後シートよりも硬質のシートであり、
前記流通シートは、中央シールによって、前記前シートと前記後シートとの少なくとも何れか一方に接着固定され、前記中央シールは、前記順流の流れ方向を横切る方向になされたものであり、且つ、その接着固定箇所における前記流通シートの内部における前記流通性を残してなされたものであり、
前記後シートと前記硬質シートとは、前記中央シールから前記順流の下流側に伸びる部分を備えたものであり、
前記前シートは、前記中央シールから前記順流の上流側に伸びる部分と、前記順流の下流側に伸びる部分を備えたものであり、
前記後シートと前記硬質シートとは、前記中央シールから前記順流の下流側に伸びる部分を備えたものであり、
前記前シートの前記順流の下流側に伸びる部分と、前記後シートの前記順流の下流側に伸びる部分との間が、前記弁通路を構成するものであり、
前記前シートと前記流通シートとは、前記中央シールによって接着固定されず、
前記流通シートと前記後シートと前記硬質シートとは、前記中央シールにて接着固定されたものとして実施することができる。
本願発明は、
前記中央シールから上記順流の少なくとも下流側において、前記後シートと前記硬質シートとの少なくとも2枚のシートは、順流の流れに沿う左右両側に形成された側部シールによって接着されたものとして実施することができる。
本願発明は、
前記逆止弁の外周を密閉状態で接着する外周シールによって、前記逆止弁は袋に取り付けられるものであり、
前記袋に取り付けられる前には前記外周シールは形成されず、前記袋に取り付けられる際に前記外周シールが形成されるものであり、
前記外周シールによって前記逆止弁が前記袋に取り付けられる前に、前記逆止弁を構成する全てのシートがバラバラにならないように接着するシールを備えるものとして実施することができる。
本願発明は、
上記逆止弁と、袋を構成する袋シートとを備え、前記袋シートには前記流体を袋シートの内外に通過させる流路口を備え、前記流路口と位置合わせして前記逆止弁が袋シートに固定され、この袋シートへの固定が前記逆止弁の外周を前記袋シートに密閉状態で接着する外周シールによってなされたものであることを特徴とする逆止弁付き袋を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、上記の手段によって、良好に閉止状態から開成状態により確実に移行できるようにした逆止弁及び逆止弁付き袋の提供することができたものである。特に、後シートの後面側に硬質シートを配位することによって、弁が開こうとする際に、後シートが浮き上がることを防止することができ、逆止弁を開く順流の流れが弱い場合にあっても、良好に開くことができることが可能となったものである。また、通路上シールを設けることによって、弁通路内の流体の流れを規制し得ると共に、逆止弁を袋に取り付ける前の状態で逆止弁を構成する各シートがバラバラになってしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の参考例及び本願発明の実施の形態に係る逆止弁を備えた袋の斜視図である。
【図2】(A)は参考例の逆止弁の平面図であり、(B)は(A)の中央断面図である。
【図3】(A)は同逆止弁の閉弁状態の説明図であり、(B)はは同逆止弁の開弁状態の説明図である。
【図4】(A)は本願発明の第1の実施の形態に係る逆止弁の平面図であり、(B)は(A)の中央断面図である。
【図5】(A)は本願発明の第2の実施の形態に係る逆止弁の平面図であり、(B)は(A)の中央断面図であり、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図6】(A)は本願発明の第2の実施の形態に係る逆止弁の要部断面図であり、(B)は袋に取り付けた状態の要部断面図である。
【図7】(A)〜(C)はそれぞれ本願発明の変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図3に基づき、本願発明の前提となる参考例からまず説明する。この参考例に関する説明は、この参考例のつぎに述べる実施の形態についても適用される。
(袋71の概要)
この袋71は、開閉チャックを備えた開閉口72から内部へ被収納物を入れて開閉口72を閉じ、吸引ポンプ75で袋71内部の空気を吸引することによって、内部を減圧した状態で保管するための袋である。袋71を構成する袋シート73には、内部の空気を外部に排出するための流路口74が形成されている。この流路口74の内側(袋シート73の裏面側)には、逆止弁11が取り付けられている。この逆止弁11は、袋71の内部から流路口74を経て外部に排出する方向への空気の流れ(順流)のみを許し、外部から内部への空気の流れ(逆流)を許さないためのものであり、シート製の逆止弁11が用いられている。一般にシート製の逆止弁は種々の用いられかたをするが、この参考例における逆止弁11にあっては、特に、次の点を考慮して開発されたものである。即ち、電池等で駆動する比較的低出力の吸引ポンプ75を用い、その吸引口76を流路口74の上において吸引した際にも、良好に吸引することができるようにするもので、特に、吸引の開始時に、逆止弁11が、良好に閉止状態から開成状態に移行できるようにすることに開発の一つのポイントが置かれたものである。なお、以下の説明で上流下流は、特に断りがない限り、順流を基準としたものである。
【0012】
(逆止弁11の概要)
この逆止弁11は、図2に示すように、前面側(図2(B)の左側)から後面側(図2(B)の右側)に向けて、前シート13、流通シート14、後シート15の順に重ねられた3枚のシートを備えたものである。逆止弁11の全周は、外周シール20によって、袋シート73の内面(後面)に固定されている。この外周シール20は、ヒートシールによって、逆止弁11の全てのシートと、袋シート73とを密閉状態に融着するものであるが、ヒートシールに代えて、接着剤による接着などの他の密閉性のある接着手段を用いることもできる。この例では、外周シール20は、図示下方の基端シール21と、図示上方の先端シール22と、基端シール21と先端シール22の両端間を結ぶ左右の側部シール23とによって囲まれた略矩形をなすが、その全体形状は、適宜変更でき、3角形や5角形等の多角形や、円形、楕円形、不定形等々、種々変更して実施することができる。
【0013】
この逆止弁11は、後面側に上流開口17を備え、前面側に下流開口18を備える。上流開口17と下流開口18とは弁通路12を介してつながっている。詳しくは、後シート15の上流側と前シート13の中ほどには、流通シート14が配置されており、流通シート14よりも下流側における前シート13と後シート15とは、何も介在することなく直接対向しており、この区間が弁通路12となる。流通シート14より下流側において、前シート13と後シート15とが密着することにより弁通路12が閉じ、前シート13と後シート15とが離れることで弁通路12が開くものである。順流時には、上流開口17から流通シート14を通った空気が、前シート13と後シート15との間を開いて弁通路12を通過し、下流開口18から流出して、袋71の流路口74から流出する。逆流時には、流路口74から流入した空気が袋71から弁通路12内に進入せんとするが、前シート13と後シート15とが密着した状態となり、上流開口17から流出することはできない。
【0014】
(前シート13と後シート15)
前シート13と後シート15とは、比較的柔軟な合成樹脂フィルムの単体又は積層体から構成されたシートであり、厚み方向に前後に対向して配置されている。特に好ましくは、ポリエチレン等の軟質合成樹脂フィルムを用いて、互いに対向する面(前シート13の後面と後シート15の前面)を密着性(若しくは粘着性)の高い平滑な表面とする。他方、互いに反対の面は、前記表面と同じ性状のものでもよいが、密着性は必ずしも必要とされず、ポリアミド製フィルムなどの積層させることによって、ガスバリア性を向上させてもよい。なお、前シート13は、流通シート14の位置する部分よりも上流側の部分(以下、前シート上流部32という)は、下流側の部分(以下、前シート弁部31という)とは異なり弁として機能しないため、上記の密着性は不要である。但し、通常は、前シート上流部32と前シート弁部31とは1枚の前シート13から構成されるため、両者の表面の形態を異なるものとする必要はない。前シート13の前シート弁部31と後シート15とが対向した区間が弁通路12であり、前シート弁部31と後シート15との密着によって閉止状態に保持して空気の逆流を止めると共に、空気の順流によって前シート弁部31と後シート15とが剥離させられ、弁通路12を開いて空気の順流を許すものである。
【0015】
(流通シート14)
弁通路12の順流における上流側に、流通シート14が配位されている。この流通シート14は、空気が同シート内部を、同シートの厚み方向と交わる方向(図2(A)では上下方向)に通過できる流通性(通気性)を備えたシートであり、具体的には、不織布を例示できる他、例えば、発泡ポリエチレンや、多数の貫通孔を持ったハニカム構造や格子状などの多孔質体を用いることも可能である。
【0016】
この流通シート14は、弁通路12の上流側にて、後シート15と接着固定されている。この接着固定は、前シート13となされてもよく、前シート13と後シート15の双方に対してなされてもよい。この接着固定は、逆止弁11の中央(基端シール21と先端シール22との間)に形成されたもので、以下の説明では中央シール19と呼ぶ。この中央シール19は、ヒートシールによって帯状に形成されたもので、ヒートシールに代えて、接着剤による接着などの他の接着手段を用いることもできる。この中央シール19は、順流の流れ方向を横切る方向になされたものであり、この例では、左右の側部シール23同士を結ぶように形成されている。その際、重要な事は、中央シール19内部の前記の流通性(通気性)を残してシールすることであり、接着後においても、中央シール19の内部を通じて、流通シート14の厚み方向と交わる方向に空気が通過するようにしておくことである。これにより、順流の空気は、流通シート14の上流側端縁41から、中央シール19の位置における流通シート14内部を通って、流通シート14の下流側端縁42から流出し、流通シート14へと流入して、前シート13と後シート15とを剥離させることによって弁を開くことができる。流通シート14の通気性が維持される部分(以下、非加工部分24という)の厚み方向の長さは、流通シート14の全厚みの1/2〜1/1であることが望ましいが、これより小さくても、空気の実質的な流通が維持できていればよい。なお、前シート13及び後シート15の厚みは30〜70μm、硬質シート16の厚みは30〜100μmが望ましく、流通シート14の厚みは前シート13及び後シート15より大きいことが望ましいが、各シートの厚みはそれぞれの機能を果たし得る範囲で適宜変更して実施し得る。
【0017】
この非加工部分24の形成は、中央シール19のヒートシールの温度、金型間の押圧条件を調整することでなされ得るが、中央シール19の後面側に合成樹脂フィルムを積層させておき、合成樹脂フィルムのみ中央シール19でヒートシールするようにしてもよい。
【0018】
なお、外周シール20(詳しくは左右の側部シール23)によって固定されるため、中央シール19を設けずに実施することもできる。即ち、流通シート14の中央ではいずれのシートとも接着固定されず、その左右両端のみが外周シール20で固定されるものであってもよい。
【0019】
(袋シート73)
前述のように、この逆止弁11は、袋シート73の流路口74と位置合わせされて、外周シール20によって固定される。図示の例では、下流開口18と流路口74とが一致するように位置合わせされているが、流路口74が外周シール20によって規定された領域内に位置し、下流開口18からの空気が流路口74から流出できるものであれば、下流開口18と流路口74との位置はずれるものであってもよい。また、流路口74は一つに限らず、複数個設けても良い。
【0020】
上記の外周シール20は、逆止弁11と袋シート73との固定の前に上記各シート間をヒートシール等で接着させておき、袋シート73への取り付けの際に改めてヒートシール等で接着するものであってもよいが、袋シート73への取り付けの際に、上記各シート間のヒートシールを施すようにしてもよい。また、図2の例では、袋71の内部に逆止弁11を配置しているが、外側に逆止弁11を配置することもできる。その場合には、流路口74からの空気が上流開口17に導入されるように位置合わせして取り付けることとなる。そして前シート上流部32を保護する目的等から、前シート上流部32の前側に、流路口を有する他のシート(図示せず)を配置した弁として実施することもできる。この他のシートは、袋シート73の内側に逆止弁11を配置する場合においても設けることができる。
【0021】
(流出時の空気の流れ)
前述のように、この袋71は、開閉口72から内部へ被収納物を入れて開閉口72を閉じ、吸引ポンプ75で袋71内部の空気を吸引することによって、内部を減圧した状態で保管するための袋である。図3(A)に示すように、空気を吸引すると、袋71内部の空気は、流通シート14の内部をその厚み方向に通過して、弁通路12内に流入し、前シート弁部31と後シート15とを剥離させて弁が開く。その際、この例では、非加工部分24の前面と前シート13の後面との間が接着されていないため、両者間を通って、空気が流通することもある。ただし、同図では袋シート73と前シート13との間には十分な隙間があるように描かれているが、実際は、袋シート73、前シート13及び後シート15は互いに密着した状態にある。そのため、空気の吸引開始時に、袋シート73と前シート13との間から空気は通過し難い状態にある。特に、吸引ポンプ75を袋71の上に置いて使用する場合には、吸引口76によって、袋シート73と前シート13とが押しつけられた状態になる場合がある。このような場合にあっても、本願発明では、流通シート14の内部を厚み方向に空気が移動できるため、良好に弁を開くことができるものである。
【0022】
吸引ポンプ75を外すなどして、吸引を停止すると、図3(B)に示すように、負圧となった袋71の内部に、流路口74から空気が流入しようとする。ところが、内部の負圧により、13前シートと後シート15とが密着し、下流開口18から流入した空気は前シート13と袋シート73との間に流れ込み、外周シール20によって封じ込められて、袋71内に流入することはない。
【0023】
(本願発明の実施の形態)
次に図4を参照して本願の第1の実施の形態を説明する。この実施の形態に係る逆止弁は、上述の参考例の逆止弁における後シート15の後側に、硬質シート16が配置されたものであると共に、流通シート14を比較的大きなシート面積を持つものとしたものである。他の部分や実施の条件については、先の参考例と実質的に同じであり、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0024】
まず、流通シート14は、前述の中央シール19から上流側に大きく伸ばされ、基端シール21によって、逆止弁11の上流端と接着されると共に、袋シート73と接着されている。これは、小型の逆止弁にあっては、流通シート14の幅も小さくなり、ハンドリングが悪いため、流通シート14の幅を比較的大きなものとしたものである。この例では、上記のように、基端シール21にまで流通シート14が達して、前シート上流部32の全体を覆うものであるが、基端シール21にまで流通シート14が達する必要はない。
【0025】
次に、硬質シート16は、後シート15と実質的に同じ大きさであり、中央シール19によって、後シート15及び流通シート14と接着固定されている。硬質シート16の下流端側は、先端シール22に達するもので、後シート15と共に袋シート73に接着されている。また、硬質シート16の左右両側は、他のシートと共に側部シール23によって接着されている。この硬質シート16は、後シート15よりも硬質なものであり、例えば、ポリエチレンテフタレートや、ポリエチレンテフタレートとポリエチレンとの積層体を用いることができる。また、後シート15と同じ素材であっても、その厚みを大きくすることよって、後シート15よりも変形し難いものであればよい。この硬質シート16は、後シート15よりも変形し難いため、吸引ポンプ75によって吸引する際にも、後シート15が硬質シート16と一体となって変形しない状態を保ち易い。その結果、前シート13のみが吸引によって引っ張られて、後シート15と剥離し、弁が開き易くなるものである。特に、この実施の形態では、上記各シール19、22、23によって、後シート15の全周が硬質シート16と接着されているため、後シート15が硬質シート16と一体となって変形し難いものである。よって、この例では、流通シート14の作用と相俟って、より開弁機能が向上した逆止弁を提供することができたものである。
【0026】
なお、実施の形態にあっても、流通シート14の大きさを参考例と同じように、比較的小さなものとして実施することもできる。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に図5を参照して第2の実施の形態を説明する。この例では、前シート弁部31と後シート15とを接着する通路上シール25を形成したものである。この通路上シール25はヒートシールによって形成してもよく、接着剤等の他の接着手段を用いてよい。通路上シール25は、前シート弁部31と後シート15のみを接着すれば足りるが、硬質シート16も接着するようにしてもよい。また、通路上シール25によって、流通シート14(特に中央シール19よりも下流側部分)を接着してもよいが、必ずしも接着する必要はない。
【0028】
この例では、通路上シール25を、流路口74の左右において、上流から下流の方向に伸びる一対の帯状のヒートシールとすることによって、弁通路12の幅を制限し、流路口74に対して効率的に空気が流通するようにした。このように、通路上シール25は流路の幅を制限し空気の流通を促すものとして実施することもできる反面、空気が流れにくくなるように流路を制限し逆流を防止する点状や適宜形状の部分シールとして実施することもできる。このように通路上シール25は、流路を制限して、空気の流れを制御する機能を果たし得る。また、この通路上シール25は逆止弁11を袋シート73に取り付ける前に形成することによって、逆止弁11を構成する各シートがバラバラになってしまうことを防止することができ、製造効率向上にも貢献することができる。また、図6(A)に示すように、通路上シール25をヒートシールによって形成した場合、ポリエチレン製の前シート13、後シート15は熱の影響によって収縮する傾向を示す反面、ポリエチレンテレフタレート製の硬質シート16は熱によって収縮しにくい傾向を示すため、この逆止弁11は、前シート13、後シート15側に反るようになる。図6(B)に示すように、反った状態を略平面状に矯正して、外周シール23によって袋シート73に貼り付けることにより、前シート13、後シート15はピンと伸ばされた張力を受けた状態で袋シート73に取り付けられることになる。その結果、前シート13と後シート15との密着度が増して、より、有効に逆流を防止することができるものである。このように、通路上シール25は、逆止弁11を袋シート73に取り付ける前に、形成することが有利ではあるが、逆止弁11を袋シート73に取り付けた後に形成することを妨げるものではない。
【0029】
(変更例)
上記の実施の形態の他、本願発明は種々変更して実施することができるものであり、例えば、図7(A)に示すように、前シート13の前に他の外装シート26を配置することもできる。言い換えれば、この外装シート26の役割を、先の各実施の形態では、袋シート73が果たしていたこととなる。この外装シート26にも、先の流路口74に相当する流路口27が形成される。なお、この流路口74及び流路口27は、外周シール20の内側であれば、どの位置に設けることも可能である。
【0030】
先の、各実施の形態では、上流開口17と下流開口18とをそれぞれ、環状に形成される外周シール20の内側に配置していたものである。詳しくは、上流開口17は、外周シール20の内側であって後面側に開口し、下流開口18は外周シール20の内側であって前面側に開口していた。これによって、袋シート73に取り付けた場合に、そのシートの平面方向に沿って、各開口が配置されることとなっていた。この開口の配置はこれに限るものではなく、図7(B)に示すように、下流開口18を厚み方向に形成し、対向するシートとシートとの間(この例では、外装シート26と後シート15との間)を下流開口18としたものである。また、図7(C)の例では、上流開口17をも、対向するシートとシートとの間(この例では、前シート13と後シート15との間)に形成したものである。
【0031】
上記の実施の形態では、流体として空気を用いたものを示したが、本願発明は、空気以外の気体や液体を含む流体を対象とするものである。また、上記の実施の形態では、袋内部の流体を抜いた状態を保持するものとして逆止弁を用いたが、袋内部の流体を流出しないように保持するものとして、逆止弁の順流と逆流とを、反対にして用いることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
11 逆止弁
12 弁通路
13 前シート
14 流通シート
15 後シート
16 硬質シート
17 上流開口
18 下流開口
19 中央シール
20 外周シール
21 基端シール
22 先端シール
23 側部シール
24 非加工部分
25 通路上シール
26 外装シート
27 流路口
31 前シート弁部
32 前シート上流部
41 上流側端縁
42 下流側端縁
71 袋
72 開閉口
73 袋シート
74 流路口
75 吸引ポンプ
76 吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前シートと、後シートと、前記前シートと前記後シートとの間に形成された弁通路とを備え、
前記前シートと前記後シートとは、厚み方向に前後に対向して配置され、互いの密着によって前記弁通路を閉止状態に保持して流体の逆流を止めると共に、流体の順流によって前記前シートと前記後シートを剥離させることにより、前記弁通路を開いて流体の前記順流を許す逆止弁において、
前記前シートと前記後シートとの間であって、前記弁通路の順流における上流側に、流通シートが配位されたものであり、
前記流通シートは、前記弁通路の順流における上流側にて、前記順流の流れ方向を横切る左右方向に渡って配置されたものであり、且つ、流体が同シート内を、同シートの厚み方向と交わる方向に通過できる流通性を備えたものであり、
順流の流体は、前記流通シートの内部を通って、前記流通シートの下流側端縁から流出し、前記弁通路へと流入して、前記前シートと前記後シートを剥離させることにより、前記弁通路を開いて流体の前記順流を許すものであり、
前記後シートの後面側に硬質シートが重ねられたものであり、
前記硬質シートは、前記後シートよりも硬質のシートであり、
前記後シートと前記硬質シートとは、前記流通シートから前記順流の下流側に伸びる部分を備えたものであり、且つ、その少なくとも一部分で互いに接着されたことを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記流通シートは、中央シールによって、前記前シートと前記後シートとの少なくとも何れか一方に接着固定され、前記中央シールは、前記順流の流れ方向を横切る方向になされたものであり、且つ、その接着固定箇所における前記流通シートの内部における前記流通性を残してなされたものであり、
前記後シートと前記硬質シートとは、前記中央シールから前記順流の下流側に伸びる部分を備えたものであり、
前記前シートは、前記中央シールから前記順流の上流側に伸びる部分と、前記順流の下流側に伸びる部分を備えたものであり、
前記前シートの前記順流の下流側に伸びる部分と、前記後シートの前記順流の下流側に伸びる部分との間が、前記弁通路を構成するものであり、
前記前シートと前記流通シートとは、前記中央シールによって接着固定されず、
前記流通シートと前記後シートと前記硬質シートとは、前記中央シールにて接着固定されたものであることを特徴とする請求項1記載の逆止弁。
【請求項3】
前記流通シートから上記順流の少なくとも下流側の前記弁通路において、前記前シートと前記後シートとの少なくとも2枚のシートを接着する通路上シールを備えたことを特徴とする請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記逆止弁の外周を密閉状態で接着する外周シールによって、前記逆止弁は袋に取り付けられるものであり、
前記袋に取り付けられる前には前記外周シールは形成されず、前記袋に取り付けられる際に前記外周シールが形成されるものであり、
前記外周シールによって前記逆止弁が前記袋に取り付けられる前に、前記逆止弁を構成する全てのシートがバラバラにならないように接着するシールを備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の逆止弁。
【請求項5】
前記前シート及び前記後シートは、熱の影響によって収縮する傾向が、前記硬質シートより高いものであり、
前記通路上シールをヒートシールによって形成することにより、前記ヒートシールの熱影響で、前記逆止弁が、前記前シート及び前記後シート側に反っているものであり、
この反った状態の前記逆止弁を矯正して、袋に貼り付けることにより、前記前シート及び後シートが張力を受けた状態で前記袋に取り付けられることを特徴とする請求項3又は4記載の逆止弁。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の逆止弁と、袋を構成する袋シートとを備え、前記袋シートには前記流体を袋シートの内外に通過させる流路口を備え、前記流路口と位置合わせして前記逆止弁が袋シートに固定され、この袋シートへの固定が前記逆止弁の外周を前記袋シートに密閉状態で接着する外周シールによってなされたものであることを特徴とする逆止弁付き袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−236625(P2012−236625A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106339(P2011−106339)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【特許番号】特許第4932950号(P4932950)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000153683)株式会社柏原製袋 (12)
【Fターム(参考)】