説明

逆洗型ろ過装置

【課題】原水の処理能力に優れ、また、逆洗時には、ろ過エレメントに詰まった微生物等を効果的に除去することができ、また、逆圧として作用する出口圧力の問題も解消することができる。
【解決手段】ろ過水室内の圧力と原水室の圧力との差圧が所定の基準値に達しないときは、通常状態でろ過エレメントの洗浄を行う通常の運転モードで運転を行い、差圧が所定の基準値に達したときは、検出手段の検出信号に基づいて制御弁を制御してろ過水室の圧力を上昇させてろ過エレメントの洗浄を行う運転モードで運転した後、通常の運転モードに復帰させることを特徴とする逆洗型ろ過装置。ろ過エレメントの洗浄を、前記の運転モードで開始する前に、ろ過水室内の圧力をPとし、排水弁の出口圧力をPとし、配管抵抗および逆洗を効率的に行うために必要な逆洗水の排水圧をαとしたときに、P+α≦Pの関係が成立するように制御弁を制御する逆洗型ろ過装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水をろ過エレメントによりろ過すると共に、ろ過水を逆流させてろ過エレメントを洗浄することができる逆洗型ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の逆洗型ろ過装置は、圧力容器と、前記圧力容器内に配置される複数の筒状ろ過エレメントとを備えている。
【0003】
そして、逆洗型ろ過装置のろ過運転時には、原水を前記ろ過エレメントの内側に流入させてろ過エレメントに形成されるろ過流路を通過させる一方、複数のろ過エレメントの中から適宜選択されるろ過エレメントに対して、ろ過水を逆流させてろ過流路に詰まった微生物や浮遊固形物質などを除去して前記ろ過エレメントを順次洗浄することにより、連続ろ過を可能にしている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0004】
そして、ろ過エレメントとしては、ノッチワイヤなどのワイヤを巻き付けたものが知られている(例えば、特許文献3)。
【0005】
しかし、ワイヤを巻き付けて構成されるろ過エレメントは、ワイヤの線径が小さいため、液圧に対して変形し易く、強度面で問題があった。
【0006】
そこで、かかる問題点を解消するために、ディスク型のろ過材を積層したろ過エレメントが提案されている(例えば、特許文献4)。ディスク型のろ過材は、半径方向の幅を充分に確保できるため、充分の強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3137987号公報
【特許文献2】特開2001−170416号公報
【特許文献3】特開2000−117013号公報
【特許文献4】特開2001−300216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ディスク型のろ過材を積層したろ過エレメントは、径方向の幅を充分に確保できる分だけ、ろ過材間のろ過流路の流路長が長くなるため、圧力損失との関係で原水の処理量が低減するという問題があった。また、逆洗時には、ろ過エレメントに詰まった微生物等を充分に除去することができないという問題があった。
【0009】
また、ろ過エレメントの洗浄を済ませた逆洗水を逆洗管から排水する時に、逆圧として作用する出口圧力が生じるという問題があった。このような問題は、例えば、逆洗型ろ過装置を船に搭載してバラスト水をろ過するときに発生する。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑み、原水の処理能力に優れ、また、逆洗時には、ろ過エレメントに詰まった微生物等を効果的に除去することができ、また、逆圧として作用する出口圧力の問題も解消することができる逆洗型ろ過装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る逆洗型ろ過装置は、
原水室およびろ過水室を有する圧力容器と、前記圧力容器内に配置される筒状のろ過エレメントと、制御手段とを備え、前記ろ過エレメントの内側から外側に向けて原水を通過させてろ過すると共に、ろ過水を逆流させて前記ろ過エレメントの洗浄を行う逆洗型ろ過装置であって、
前記ろ過エレメントは、半径方向にろ過流路形成溝が形成されたディスク型のろ過材を積層し、上下の前記ろ過材間にろ過流路を形成することにより構成され、
前記ろ過流路の流路高は、下流側が上流側よりも高くなるように構成され、
前記制御手段は、
前記ろ過水室からの前記ろ過水の流出を制御する制御弁と、
前記ろ過水室内の圧力と前記原水室の圧力との差圧を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号により前記制御弁を制御する制御部と
を備えており、
前記差圧が所定の基準値に達しないときは、通常状態で前記ろ過エレメントの洗浄を行う通常の運転モードで運転を行い、
前記差圧が所定の基準値に達したときは、前記検出手段の検出信号に基づいて前記制御弁を制御して前記ろ過水室の圧力を上昇させて前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モードで運転した後、通常の運転モードに復帰させることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る逆洗型ろ過装置は、
前記制御手段は、
前記ろ過水室に強制逆洗用の清水を供給する清水供給手段と、
前記差圧を検出する前記検出手段の検出信号により前記清水供給手段を制御する制御部と
を備えており、
前記制御弁の制御によっても通常の運転モードに復帰させることができないときは、前記制御弁を全閉にした状態で、前記ろ過水室に前記清水を供給して前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モードで運転した後、通常の運転モードに復帰させることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る逆洗型ろ過装置は、
原水室およびろ過水室を有する圧力容器と、前記圧力容器内に配置される筒状のろ過エレメントと、制御手段とを備え、前記ろ過エレメントの内側から外側に向けて原水を通過させてろ過すると共に、ろ過水を逆流させて前記ろ過エレメントの洗浄を行う逆洗型ろ過装置であって、
前記ろ過エレメントは、半径方向にろ過流路形成溝が形成されたディスク型のろ過材を積層し、上下の前記ろ過材間にろ過流路を形成することにより構成され、
前記ろ過流路の流路高は、下流側が上流側よりも高くなるように構成され、
前記制御手段は、
前記ろ過水室からの前記ろ過水の流出を制御する制御弁と、
前記ろ過水室内の圧力と前記原水室の圧力との差圧を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号により前記制御弁を制御する制御部と
を備えており、
前記差圧が第1基準値に達しないときは、所定の逆洗時間で前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モード1で運転を行い、
前記差圧が第1基準値に達したときは、前記所定の逆洗時間よりも長い時間で前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モード2で運転した後、運転モード1に復帰させ、
前記差圧が前記第1基準値よりも大きい値の第2基準値に達したときは、前記検出手段の検出信号に基づいて前記制御弁を制御して前記ろ過水室の圧力を上昇させて前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モード3で運転した後、運転モード1に復帰させることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る逆洗型ろ過装置は、
逆洗水の逆洗管に設けられた排水弁と、
前記排水弁の出口圧力を検出する検出手段と
を備えており、
前記ろ過エレメントの洗浄を、前記の運転モードで開始する前に、
ろ過水室内の圧力をPとし、前記排水弁の出口圧力をPとし、配管抵抗および逆洗を効率的に行うために必要な逆洗水の排水圧をαとしたときに、
+α≦P
の関係が成立するように前記制御弁を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、原水の処理能力に優れ、また、逆洗時には、ろ過エレメントに詰まった微生物等を効果的に除去することができ、また、逆圧として作用する出口圧力の問題も解消することができる逆洗型ろ過装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る逆洗型ろ過装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示したA−A線の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る逆洗型ろ過装置のろ過エレメントを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る逆洗型ろ過装置のろ過エレメントのろ過材を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る逆洗型ろ過装置のろ過エレメントの一部を拡大した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る逆洗型ろ過装置のろ過エレメントの他の例の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
1.逆洗型ろ過装置の全体構成
図1は本実施の形態の逆洗型ろ過装置の構成を示す断面図である。図2は図1に示したA−A線の断面図である。
【0019】
図1および図2に示すように、逆洗型ろ過装置1は、圧力容器2と、圧力容器2内に配置される複数の筒状のろ過エレメント6と、制御手段Cとを備えており、ろ過エレメント6の内側から外側に向けて原水を通過させてろ過する一方、ろ過水を逆流させてろ過エレメント6に詰まった微生物等を洗浄するように構成されている。図1において、3は原水の流入口、4はろ過水の流出口、5は仕切り板、8は逆洗手段、9はモータである。
【0020】
圧力容器2の内部は、複数の開口部10を有する仕切り板5により流入口3を有する原水室11と、流出口4を有するろ過水室12とに区画されている。
【0021】
複数のろ過エレメント6はろ過水室12側に配置され、仕切り板5の複数の開口部10には、ろ過エレメント6の底面開口部14が取り付けられている。
【0022】
そして、原水は、図外の圧送ポンプにより圧送されて、図1の実線矢印に示すように、流入口3より原水室11を通って開口部10よりろ過エレメント6内に流入した後、ろ過されてろ過水室12内にろ過水として流出する。一方、ろ過運転中に、逆洗手段8を用いてろ過エレメント6の逆洗が行われる。
【0023】
2.逆洗手段
図1に示すように、逆洗手段8は、一端付近にボール弁(排水弁)C7が設けられた逆洗管21を備えており、逆洗管21は、分岐管21a、21bを有する回転管210と、ボール弁C7に繋がる固定管211とで構成されており、回転管210と固定管211との接続部分はシールされている。また、分岐管21a、21bの先端には逆洗ノズル20a、20bが設けられている。逆洗管21の回転管210は回転軸22によりモータ9に連結されている。
【0024】
そして、ろ過運転中に、逆洗管21を回転させて逆洗ノズル20a、20bを仕切り板5の開口部10に順次接続することにより、圧力差を利用してろ過水をろ過エレメント6の内側に向けて逆流させ、破線矢印のように逆洗管21を通って逆洗管21の一端から外部に排出させる。これによりろ過エレメント6に詰まった微生物等が除去される。
【0025】
3.ろ過エレメント
図3は本実施の形態に係る逆洗型ろ過装置のろ過エレメントを示す斜視図であり、図4は本実施の形態に係る逆洗型ろ過装置のろ過エレメントのろ過材を示す斜視図であり、図5は本実施の形態に係る逆洗型ろ過装置のろ過エレメントの一部を拡大した断面図である。
【0026】
図3〜図5に示すようにろ過エレメント6は、ディスク型で上側表面にろ過流路形成溝15が形成されたろ過材7を積層した積層体を備えており、上側のろ過材7の平坦な下側表面と、下側のろ過材7のろ過流路形成溝15とによりろ過流路16が形成され、最上のろ過材7の上側開口部が天板13により閉塞されている。
【0027】
図3に示すように、ろ過エレメント6の固定手段は、仕切り板5(図1参照)に立設されるロッドボルト17および位置決めロッド19を備えており、各ろ過材7の外周部には複数個の固定溝7a(図4参照)が形成され、これらの固定溝7aを位置決めロッド19に嵌合し、ロッドボルト17および位置決めロッド19の上端部を天板13の取付孔13aに挿通し、ロッドボルト17の上端部にナット18を嵌合している。これにより、ナット18で天板13を介してろ過材7の積層体を押圧してろ過材7の積層体を固定している。なお、位置決めロッド19にねじ部を設け、このねじ部にナットを嵌合しても良い。このような構造にすれは、ロッドボルト17を省略することができる。
【0028】
図4に示すように、ろ過材7の固定溝7aは周方向に不等間隔で複数個設けられている。これにより、ろ過材7が裏返しの状態で積層された場合には、上下のろ過材7の固定溝7aが一致せず、位置決めロッド19の嵌合が不可能になるため、ろ過材7の積層作業ミスを防ぐことができる。
【0029】
図4および図5に示すように、ろ過材7のろ過流路形成溝15は、ろ過材7の周方向に所定間隔で複数形成されている。
【0030】
ろ過流路形成溝15は、上流溝e、中流溝fおよび下流溝gを備え、上流溝eは、全長にわたって同じ深さに形成され、中流溝fは、0.5〜5度の傾斜角度で下流側に行くほど深くなるように形成され、下流溝gは、全長にわたって同じ深さに形成されている。具体的には、上流溝eの長さは2mm、中流溝fの長さ(水平方向)は2.5mm、下流溝gの長さは2.5mmにそれぞれ設定されている。また、流路幅は約1mmに設定されている。なお、ろ過材7の外半径と内半径の差である幅寸法は7mmであり、ろ過材7の厚みdは0.2〜0.4mmに形成される。このようなろ過材7はプレス加工等により形成される。
【0031】
図5に示すように、ろ過流路16は、ろ過流路形成溝15の上流溝e、中流溝fおよび下流溝gに対応する、上流部E、中流部Fおよび下流部Gを備えており、上流部Eおよび下流部Gは、全長にわたって同じ流路高に形成され、中流部Fは、下流側に行くほど流路高が大きくなるように形成されている。また、原水の流入口3を形成するろ過材の角部は、アールでなくシャープな形状になっている。
【0032】
4.制御手段
制御手段Cは、通常運転、およびSS濃度が高くなる等の高負荷運転に対応できるように装置を制御するものである。
【0033】
すなわち、通常時には、定期的に逆洗(通常逆洗)を行い、また、高負荷運転時には、通常逆洗では、ろ過エレメント6の詰まりを除去することができず、さらにろ過エレメント6が完全に目詰まり状態となるとろ過が不可能になるため、ろ過エレメント6の目詰まりを解消するように制御する。
【0034】
制御手段Cは、ろ過水室12からろ過水の流出を制御するバタフライ弁(制御弁の一例)C1と、検出手段C2と、ろ過水室12に強制逆洗用の清水を供給する清水供給手段C3と、バタフライ弁C1および清水供給手段C3を制御する制御部C4とを備えている。
【0035】
バタフライ弁C1は、ろ過水室12のろ過水の流出口に配置されており、コントロールダンパーモータ(CDM)C11により駆動してろ過水の流量を調節する。
【0036】
検出手段C2は、原水室11およびろ過水室12に設けられる圧力計C42、C41を備えており、原水室11内の圧力Pとろ過水室12内の圧力Pとの差圧ΔP(P−P)が第1基準値に達したとき検出信号を出力し、第1基準値よりも大きい値の第2基準値に達したときにも検出信号を出力するように構成されている。
【0037】
また、検出手段C2は、逆洗管21のボール弁(排水弁)C7の出口圧力Pを計測する圧力計C43を備えている。
【0038】
清水供給手段C3は、図外の清水源からろ過水室12に清水を供給する供給路C31と、供給路C31に設けられるボール弁C32と、ボール弁C32を駆動させるクリーニングモータ(CM)C33を備えている。
【0039】
5.逆洗型ろ過装置の制御方法
次に、第1の制御方法および第2の制御方法について説明する。
【0040】
A.第1の制御方法
第1の制御方法は、SSの濃度の程度、ろ過エレメント6の目詰まり状態に応じて、下記の運転モード1〜4により逆洗制御を行う。
【0041】
(1)運転モード1
差圧ΔPが第1基準値に達しない場合、運転モード1の定期的逆洗モードで、一定時間おきに、通常逆洗(制御弁は全開状態)を行って差圧ΔPを低下させることにより、良好な状態でろ過を行う。
【0042】
(2)運転モード2
差圧ΔPが低下せずに、差圧ΔPが第1基準値に達した場合、運転モード2の不定期的逆洗モードにして、運転モード1の定期的逆洗モードよりも逆洗時間を長くして差圧ΔPを低下させる(制御弁は全開状態)。そして、差圧ΔPが第1基準値よりも小さい値の復帰基準値を下回れば、運転モード1の定期的逆洗モードに復帰させる。運転モード2における逆洗時間は、具体的には、差圧ΔPを第1基準値にまで低下させるのに必要な時間に、差圧ΔPが第1基準値を一定値だけ下回るのに必要な一定時間を加えた時間である。
【0043】
(3)運転モード3
運転モード2によっても差圧ΔPが回復せず、差圧ΔPが第1基準値よりも大きい値の第2基準値に達した場合、バタフライ弁C1の開度を調整してろ過水室12内の圧力Pを高める運転モード3に移る。
【0044】
これにより、差圧ΔPが回復して復帰基準値を下回れば、運転モード1の定期的逆洗モードに復帰させる。
【0045】
一方、バタフライ弁C1の調整を行っても、差圧ΔPが回復しない場合には、次の運転モード4の強制洗浄モードに移る。
【0046】
(4)運転モード4
運転モード4の強制洗浄モードでは、バタフライ弁C1を全閉にした状態で、清水供給手段C3により清水をろ過水室12に供給して清水により逆洗を一定時間行う。
【0047】
その後、清水の供給を停止し、バタフライ弁C1の開度を調整し、差圧ΔPが復帰基準値を下回れば、運転モード1の定期的逆洗モードに復帰させる。
【0048】
このようにして、SS濃度が高い場合でも、安定したろ過を継続させることができる。なお、第1基準値、第2基準値は、装置の設計条件、安全度等を考慮して適宜決定される。
【0049】
また、運転モード2を省略し、運転モード1から運転モード3に直ちに移る制御方法を採用することも可能である。
【0050】
図1中のC6は、バタフライ弁C1の下流側に設けられる流量計、C7は逆洗水の逆洗管21のボール弁、C71はボール弁C7を駆動させるバックウオッシュモータ(BWM)、C8はドレーン管24のボール弁、C81はボール弁C8を駆動させるドレーンモータ(DM)である。バックウオッシュモータC71はモータ9と連動し、逆洗時に逆洗水を逆洗管21から排出する。ドレーンモータC81は、逆洗終了後の所定時間、ボール弁C8を開路し、原水室11の底に溜まった汚れを排出する。
【0051】
なお、ろ過水室12から排出されるろ過水の流量管理は、バタフライ弁C1の下流側のろ過水の圧力Pを圧力計C5で計測することにより簡易に行われる。また、ろ過水の流量Qは、Q、Cv値、G(ろ過水の比重)、ΔP(バタフライ弁C1の圧力損失)の関係を示す公知の式を用いて算出される。
【0052】
B.第2の制御方法
第2の制御方法は、上記のように逆圧として作用する出口圧力が生じる場合に、逆洗開始準備モードを付加する方法である。
【0053】
逆洗開始準備モードは、ろ過水室内の圧力をPとし、ボール弁(排水弁)C7の出口圧力をPとし、配管抵抗および逆洗を効率的に行うために必要な逆洗水の排水圧をαとしたときに、P+α≦Pの関係が成立するようにバタフライ弁C1を制御する。
【0054】
そして、P≦P+αのときは、バタフライ弁C1を閉じ方向に動かし、P>P+αになったときは、上記の第1の制御方法に基づいて逆洗運転を行うことにより、出口圧力が逆圧として作用することがないようにする。
【0055】
6.ろ過材の他の形態
図6は、本発明の実施の形態に係る逆洗型ろ過装置のろ過エレメントの他の例の一部を示す斜視図である。図6に示すように、ろ過材7は、全周にわたって、内側の厚さよりも外側の厚さの方が薄くなるように形成されている。ろ過材7の上面は、所定の傾斜角度で下流側に行くほど低くなるように傾斜しており、上面には製作が容易で大きな開口率をとることができる円柱状のスペーサ7bが均一な密度で所定の間隔を設けて多数形成されている。また、ろ過材7の下面は、平滑な水平面に形成されている。
【0056】
ろ過エレメント6のさらに他の例として、各ろ過材7を上記のように平板状ではなく、切頭円錐状に形成した態様が考えられる。このような態様にすれば、上記のように固定溝7aを周方向に不等間隔にしなくても、ろ過材7が裏返しの状態で積層されるという積層作業ミスを防ぐことができる。
【0057】
そして、ろ過材7を積層することにより、下側のろ過材7のスペーサ7bの存在により下流側に行くほど流路高が大きくなるろ過流路16が形成されている。
【0058】
7.本発明の効果
(1)制御手段に関する効果
(a)差圧ΔPが第1基準値に達したときは、通常逆洗よりも長い逆洗時間でろ過エレメント6の洗浄を行うため、軽度のろ過エレメント6の詰まりを解消することができる。
【0059】
(b)また、高負荷運転により、ろ過エレメント6の詰まりの程度が高くなり、差圧ΔPが第1基準値を超えて第2基準値に達したときに、バタフライ弁C1によりろ過水室12の圧力を上昇させるため、差圧ΔPを回復させることができる。このため、高負荷運転の条件の下でも、ろ過を安定的に行うことができる。
【0060】
(c)さらに、差圧ΔPがバタフライ弁C1によっても回復しないときは、清水を逆洗水として用いることにより、所定の差圧ΔPに回復させることができる。このため、ろ過エレメント6が完全に目詰まり状態になったときであっても、差圧ΔPを回復させることができる。
【0061】
このため、本実施の形態によれば、例えば、バラスト海水の1次ろ過に用いられ、SSのサイズが50μm以上であり、1m当たり個数が10個で、最大10個(プランクトンの異常発生時)という条件の下で、ろ過精度が50μmと高い値に設定される場合にも対処することができる。
【0062】
(d)逆洗の運転モード開始前に、ろ過水室内の圧力を、出口圧力、配管抵抗および逆洗を効率的に行うために必要な逆洗水の排水圧の関係を考慮して設定するため、逆圧として作用する出口圧力の問題も解決することができる。
【0063】
(2)ろ過エレメントに関する効果
(a)ろ過エレメント6の内側より外側の流路高が高くなるように構成されているため、ろ過時には微生物等を効率よく捕獲して原水のろ過を行うことができ、逆洗時には、効率よく逆洗できる。
【0064】
(b)また、ろ過エレメント6のろ過流路16のうち、上流部Eは、全長にわたって同じ小さい流路高に形成され、中流部Fは、下流側に行くほど流路高が大きくなるように形成され、下流側は中流側よりも流路高が小さくならないように構成されているため、ろ過時には、小さい流路高の上流部Eの流入口で微生物等を捕獲して原水のろ過を行うことができ、下流部Gの存在により圧力損失を減少させることができる。そして、中流部Fの存在により、圧力損失を徐々に滑らかに減少させることができる。このため、円滑に充分なろ過を行いながら、原水の処理量を向上させることができる。
【0065】
(c)また、逆洗時には、ろ過エレメント6の外側からろ過流路16内に流入するろ過水は、上流部Eにおいて増速されるため、上流部Eの入口に詰まった微生物等に当たるときに、微生物等に大きな衝撃力を与えることができる。このため、上流部Eの入口に詰まった微生物等を効率的に除去することができる。
【0066】
(d)また、中流部Fに対応するろ過流路形成溝15の底面の傾斜角度については、処理量の向上に不利となる損失を抑えるために、適切な角度であることが必要である。本発明においては、ろ過流路形成溝15の底面の傾斜角度が、適切な角度である0.5〜5度とされているため、処理量の向上に不利となる損失を抑えることができる。なお、ろ過流路形成溝15の底面の傾斜角度は、0.5〜2度であることがより好ましい。
【0067】
(e)上流部Eの流路高は、上流部Eの流入口で微生物等を捕獲するため、一定高さよりも大きくすることができない。本発明においては、上流部Eの流路高は、100μm以下に設定されているため、微生物等を適切に捕獲することができる。一方、10μm以上に設定されているため、上流部Eへの原水の流入が過剰に制限されることがない。
【0068】
(f)また、上流部Eの流路長は、ろ過流路の全長に対して30%以下に設定されているため、中流部Fおよび下流部Gと比べて流路高の低い上流部Eでの損失を充分に抑えることができる。また、上流部Eの流路長は、ろ過流路16の全長に対して5%以上に設定されているため、ろ過流路形成溝15の作製等において支障が生じることがない。
【0069】
(g)原水の流入口を形成するろ過材の角部は、大きなアールでなくシャープな形状になっているため、流入口において微生物等が詰まり難くなる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 逆洗型ろ過装置
2 圧力容器
3 原水の流入口
4 ろ過水の流出口
5 仕切り板
6 ろ過エレメント
7 ろ過材
7a 固定溝
7b スペーサ
8 逆洗手段
9 モータ
10 開口部
11 原水室
12 ろ過水室
13 天板
13a 取付孔
14 底面開口部
15 ろ過流路形成溝
16 ろ過流路
17 ロッドボルト
18 ナット
19 位置決めロッド
20a、20b 逆洗ノズル
21 逆洗管
21a、21b 分岐管
22 回転軸
24 ドレーン管
210 回転管
211 固定管
C 制御手段
C1 バタフライ弁(制御弁)
C2 検出手段
C3 清水供給手段
C4 制御部
C5、C41、C42、C43 圧力計
C6 流量計
C7、C8、C32 ボール弁
C11 コントロールダンパーモータ
C31 供給路
C33 クリーニングモータ
C71 バックウオッシュモータ
C81 ドレーンモータ
E 上流部
F 中流部
G 下流部
d ろ過材の厚み
e 上流溝
f 中流溝
g 下流溝
原水室内の圧力
ろ過水室内の圧力
ボール弁(排水弁)の出口圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水室およびろ過水室を有する圧力容器と、前記圧力容器内に配置される筒状のろ過エレメントと、制御手段とを備え、前記ろ過エレメントの内側から外側に向けて原水を通過させてろ過すると共に、ろ過水を逆流させて前記ろ過エレメントの洗浄を行う逆洗型ろ過装置であって、
前記ろ過エレメントは、半径方向にろ過流路形成溝が形成されたディスク型のろ過材を積層し、上下の前記ろ過材間にろ過流路を形成することにより構成され、
前記ろ過流路の流路高は、下流側が上流側よりも高くなるように構成され、
前記制御手段は、
前記ろ過水室からの前記ろ過水の流出を制御する制御弁と、
前記ろ過水室内の圧力と前記原水室の圧力との差圧を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号により前記制御弁を制御する制御部と
を備えており、
前記差圧が所定の基準値に達しないときは、通常状態で前記ろ過エレメントの洗浄を行う通常の運転モードで運転を行い、
前記差圧が所定の基準値に達したときは、前記検出手段の検出信号に基づいて前記制御弁を制御して前記ろ過水室の圧力を上昇させて前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モードで運転した後、通常の運転モードに復帰させることを特徴とする逆洗型ろ過装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記ろ過水室に強制逆洗用の清水を供給する清水供給手段と、
前記差圧を検出する前記検出手段の検出信号により前記清水供給手段を制御する制御部と
を備えており、
前記制御弁の制御によっても通常の運転モードに復帰させることができないときは、前記制御弁を全閉にした状態で、前記ろ過水室に前記清水を供給して前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モードで運転した後、通常の運転モードに復帰させることを特徴とする請求項1に記載の逆洗型ろ過装置。
【請求項3】
原水室およびろ過水室を有する圧力容器と、前記圧力容器内に配置される筒状のろ過エレメントと、制御手段とを備え、前記ろ過エレメントの内側から外側に向けて原水を通過させてろ過すると共に、ろ過水を逆流させて前記ろ過エレメントの洗浄を行う逆洗型ろ過装置であって、
前記ろ過エレメントは、半径方向にろ過流路形成溝が形成されたディスク型のろ過材を積層し、上下の前記ろ過材間にろ過流路を形成することにより構成され、
前記ろ過流路の流路高は、下流側が上流側よりも高くなるように構成され、
前記制御手段は、
前記ろ過水室からの前記ろ過水の流出を制御する制御弁と、
前記ろ過水室内の圧力と前記原水室の圧力との差圧を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号により前記制御弁を制御する制御部と
を備えており、
前記差圧が第1基準値に達しないときは、所定の逆洗時間で前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モード1で運転を行い、
前記差圧が第1基準値に達したときは、前記所定の逆洗時間よりも長い時間で前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モード2で運転した後、運転モード1に復帰させ、
前記差圧が前記第1基準値よりも大きい値の第2基準値に達したときは、前記検出手段の検出信号に基づいて前記制御弁を制御して前記ろ過水室の圧力を上昇させて前記ろ過エレメントの洗浄を行う運転モード3で運転した後、運転モード1に復帰させることを特徴とする逆洗型ろ過装置。
【請求項4】
逆洗水の逆洗管に設けられた排水弁と、
前記排水弁の出口圧力を検出する検出手段と
を備えており、
前記ろ過エレメントの洗浄を、前記の運転モードで開始する前に、
ろ過水室内の圧力をPとし、前記排水弁の出口圧力をPとし、配管抵抗および逆洗を効率的に行うために必要な逆洗水の排水圧をαとしたときに、
+α≦P
の関係が成立するように前記制御弁を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の逆洗型ろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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