説明

透明フィルムの検査方法及び透明フィルム

【課題】本発明は、フィルム表面に緩やかに波状に生じ、それぞれの幅が10mm以上である凹凸条に起因して生じるフィルムの厚みむらを精度良く検査することができる透明フィルムの検査方法を提供する。
【解決手段】 本発明の透明フィルムの検査方法は、光源と、この光源から放射される光に対して直交した状態に配設されたスクリーンとの間に、透明フィルムを上記スクリーンに対して所望角度だけ傾斜させた状態に配設し、上記透明フィルムを透過した光を上記スクリーン上に投影して得られる画像の明度落差を測定し、この明度落差によって上記透明フィルムの厚みむらを検査することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルムの厚みむらを精度良く検査することができる透明フィルムの検査方法、及び、光学用途やディスプレー分野に好適に用いることができる透明フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学用途やディスプレー分野においては、透明性及び表面性に優れた光学フィルムが求められており、このような光学フィルムの製造方法としては、一般的に、溶液キャスティング法と溶融押出成形法が使用されている。
【0003】
溶液キャスティング法は、熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解し、キャストによる流延法によって成形するので、得られるフィルムは、その表面性に優れているものの、溶剤の乾燥に加熱が必要で時間がかかるため生産性が悪く、しかも、乾燥工程を経過しても有機溶剤がフィルム内に残存し、フィルム内に残存する有機溶剤量が経時的に変化し、フィルムの光性能に悪影響を与えるという欠点があった。
【0004】
そのため、最近では、特許文献1のように溶融押出成形で光学フィルムを製造する方法が盛んに研究されているが、Tダイを使用して押出機から溶融樹脂を押出すと、得られるフィルムにダイラインが発生するという欠点があり、このダイラインは、光学フィルムを光ディスクの基板や液晶ディスプレイに使用すると大きな障害になる。
【0005】
ダイラインとは、Tダイのリップ部の特定の位置に対応するフィルム表面に、押出方向に沿って連続的に発生する凹凸条であって目視によって確認できるものもあるが、より明確に確認するには、フィルム面に対して垂直若しくは30°程度の傾斜角度で光を入射させ、その出射光をスクリーンに投影して観察すればよい。
【0006】
しかしながら、上記方法では、数ミリ以下の細幅のダイラインの評価は可能であるものの、フィルム表面に緩やかに波状に生じ且つ幅が10mm以上である凹凸条に起因して生じるフィルムの厚みむらの評価はできなかった。
【0007】
又、特許文献2には、ダイラインをなくすために、環状オレフィン樹脂を溶融し、溶融状態の環状オレフィン樹脂を剥離強度75N以下のリップ部を有するダイを通して押出し、環状オレフィン樹脂を成形する、表面粗さが最大粗さRt表記で0.3μm以下であるフィルムが提案されている。
【0008】
しかしながら、上記特許では、フィルムに発生するダイラインの改善は可能であったが、フィルム表面に緩やかに波状に生じ且つ幅が10mm以上である凹凸条に起因して生じるフィルムの厚みむらの改善はできなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平3−223328号公報
【特許文献2】特開2000−280315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フィルム表面に緩やかに波状に生じ且つ幅が10mm以上である凹凸条に起因して生じるフィルムの厚みむらを精度良く検査することができる透明フィルムの検査方法、及び、光学用途やディスプレー分野に好適に用いることができる透明フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の透明フィルムの検査方法は、光源と、この光源から放射される光に対して直交した状態に配設されたスクリーンとの間に、透明フィルムを上記スクリーンに対して所望角度だけ傾斜させた状態に配設し、上記透明フィルムを透過した光を上記スクリーン上に投影して得られる画像の明度落差を測定し、この明度落差によって上記透明フィルムの厚みむらを検査することを特徴とする。
【0012】
又、上記透明フィルムの検査方法において、透明フィルムを45〜80°傾倒させていることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の透明フィルムは、溶融押出成形によって製造された厚みが200μm以下の透明フィルムであって、上記透明フィルムを60°傾倒させた状態で請求項1に記載の透明フィルムの検査方法に従って測定した明度落差の平均値が0.08以下であることを特徴とする。
【0014】
加えて、本発明の透明フィルムは、溶融押出成形によって製造された厚みが200μm以下の透明フィルムであって、上記透明フィルムを60°傾倒させた状態で請求項1に記載の透明フィルムの検査方法に従って測定した明度落差の標準偏差が0.02以下であることを特徴とする。
【0015】
そして、上記透明フィルムにおいて、透明フィルムが非晶性の熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする。
【0016】
又、上記透明フィルムにおいて、非晶性の熱可塑性樹脂が、ノルボルネン系単量体の重合体の水素添加物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の透明フィルムの検査方法は、上述の如き要領で透明フィルムを検査するものであるので、フィルム表面に緩やかに波状に生じ且つ幅が10mm以上である凹凸条に起因して生じるフィルムの厚みむらを精度良く検査することができる。
【0018】
そして、透明フィルムを60°に傾倒させた状態で上述した透明フィルムの検査方法に従って測定された明度落差の平均値が0.08以下或いは明度落差の標準偏差が0.02以下である場合には、透明フィルムの厚みむらが小さく、光学用途やディスプレー分野に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の透明フィルムの検査方法を図面を参照しつつ説明する。図1に示したように、暗室にて、白色のスクリーン1を垂直に立設し、このスクリーン1から所定距離、通常、3〜5m程度だけ離間した位置に投影機2を配設する。この際、投影機2の光の放射部の中心から放出される光の経路Rと、スクリーン1とが直交するように調整する。なお、投影機としては、例えば、ウシオ電機社から商品名「SX−U1500H」にて市販されている。
【0020】
又、スクリーン1としては、特に限定されないが、スクリーン1の表面に明度差があると、透明フィルムの厚みむらの検査に影響を及ぼすので、後述する明度落差の平均値Xが0.065以下、明度落差の標準偏差Yが0.015以下であることが好ましい。なお、スクリーン1の明度落差の平均値X及び明度落差の標準偏差Yは、スクリーン1と投影機2との間に透明フィルム3を配設しないこと以外は後述する要領と同様の要領で測定されたものをいう。
【0021】
そして、スクリーン1と投影機2との間に、透明フィルム3をその下端から上端に向かってスクリーン1方向に所定の傾倒角度αだけ傾倒した状態、好ましくは45〜80°傾倒し且つ撓まずにできるだけ透明フィルム3表面が平坦な状態となるように配設する。透明フィルム3の傾倒角度αが小さいと、透明フィルムの厚みむらの検査精度が低下する虞れがある一方、大きいと、透明フィルムの厚みむらの検査精度が高くなるものの、検査ノイズも大きくなり、結果として、透明フィルムの厚みむらの検査精度が低下してしまうので、透明フィルムの種類などを考慮しながら適宜、調整すればよい。なお、傾倒角度αとは、垂直面と透明フィルム3の表面とがなす角度である。
【0022】
このように透明フィルム3を垂直面から所定角度αだけ傾倒した状態に配設することによって、透明フィルム3を透過してスクリーン1上に投影される画像を構成しているピクセル間の明度落差を精度良く測定することができる。なお、投影機2における光の放射部の中心から放出される光の経路R上における透明フィルム3とスクリーン1との間の距離が、通常、1m程度となるように調整する。
【0023】
図1では、長方形状の透明フィルム3を配設した状態を示したが、長尺状の透明フィルムを順次、巻き出しながらスクリーン1と投影機2との間に連続的に配設してもよい。このような場合、検査対象となる透明フィルム3部分が垂直面から所定角度αだけスクリーン1側に傾倒した状態となるように配設すればよい。
【0024】
更に、投影機2から放射された光が透明フィルム3を透してスクリーン1上に投影されて得られる画像を撮影するための撮影機4を透明フィルム3よりもスクリーン1側に近い位置に配設する。この際、透明フィルム3を垂直に配設した時に、投影機2から放射された光が透明フィルム3を透してスクリーン1上に投影されて得られる画像のY方向(垂直方向)において、7ピクセル当り1mmとなるように調整する。なお、撮影機としては、日本ローパー社から商品名「MegaPlus Camera 1.6i 画素数1532×1024」で市販されているCCDカメラが挙げられる。
【0025】
そして、スクリーン1上の画像の平均明度が1024階調で400〜800となるように投影機2の光量を調整する。これは、平均明度が低すぎても高すぎても、スクリーン1上の画像を構成しているピクセルの明度落差が出にくくなり、透明フィルムの検査精度が低下するからである。
【0026】
上述のように、スクリーン1、投影機2、透明フィルム3及び撮影機4を配設し、投影機2の光の放射部からスクリーン1に向かって光を放射する。すると、投影機2から放射された光は、透明フィルム3を透過してスクリーン1上に画像を形成する。そして、このスクリーン1上に形成された画像を撮影機4で取り込む。
【0027】
ここで、光は、透明フィルム3を通過している間に減衰させられるので、透明フィルム3の厚みが厚い部分を透過してきた光がスクリーン1上に形成する画像の明度は低く、逆に、透明フィルム3の厚みが薄い部分を透過してきた光がスクリーン1上に形成する画像の明度は高くなる。
【0028】
そして、スクリーン1上に形成された画像を撮影機4で取り込んで得られる画像データを構成している各ピクセルについても、スクリーン1上の画像において明度の高い部分に対応するピクセルはその明度が高く、明度の低い部分に対応するピクセルはその明度が低い。
【0029】
これを踏まえて、撮影機4で取り込まれた画像を構成している各ピクセルの明度を測定し、下記の要領で明度落差の平均値X及び明度落差の標準偏差Yを算出し、これらに基づいて透明フィルムの厚みむらを検査する。なお、画像の画素数は、X方向(横方向)にnピクセル、Y方向(縦方向)にmピクセルであるとする。
【0030】
撮影機4で取り込まれた画像Gは、図2に示したように、X方向(横方向)にn個のピクセルが、Y方向(縦方向)にm個のピクセルが縦横に配列することによって構成されている。そして、画像Gにおいて、Y方向(縦方向)の任意の10行を選択し、この10行に含まれている各ピクセルの明度値を順次、Aij(iは1〜10の整数、jは1〜nの整数)とする。
【0031】
次に、各行ごとに、ピクセルの明度の平均値Biを下記式1に基づいて算出する。この平均値Biは、それぞれの行に存在する全てのピクセルの明度の平均値を意味する。
【0032】
【数1】

【0033】
更に、第i行において、X方向に連続する35画素分のピクセルを一組のピクセル群とし、この一組のピクセル群内におけるピクセルの明度の最大値と最小値との差Cik(iは1〜10の整数、kは1〜(n−34)の整数)を算出する。
【0034】
【数2】

【0035】
即ち、上記Cikは、例えば、X方向における左端のピクセルを始点として図2において右方向に連続する35画素分のピクセル群内におけるピクセルの明度の最大値と最小値との差をCi1とし、X方向における左から二つ目のピクセルを始点として図2において右方向に連続する35画素分のピクセル群内におけるピクセルの明度の最大値と最小値との差をCi2としたものであって、これと同様の要領でCi3〜Cikも算出される。
【0036】
このように、Cikは、第i行内において、ピクセル群をピクセル一個分づつ右方向に移動させながら、各ピクセル群内での最大明度差を算出したものである。このようにピクセルを一個づつ移動させながら最大明度差を算出することによって、所定幅寸法内に存在するピクセル間の最大明度差を見逃すことなく確実に算出することができ、よって、フィルム表面に緩やかに波状に生じ且つ広幅な凹凸条に起因して生じるフィルムの厚みむらを逃すことなく検査することができる。
【0037】
そして、Bi及びCikを基にして、明度落差の平均値X及び明度落差の標準偏差Yを下記式3,4に基づいて算出する。なお、明度落差の平均値X及び明度落差の標準偏差Yは、ピクセルの明度の平均値Biで補正している。
【数3】

【0038】
【数4】

【0039】
明度落差の平均値Xが0.08以下、明度落差の標準偏差Yが0.02以下であると、透明フィルム3は厚みむらが小さく、光学用途やディスプレー分野において好適に用いることができる。
【0040】
次に、上記透明フィルム3について説明する。この透明フィルム3を構成する合成樹脂としては、透明フィルム3が光を透過させることができればよく、非晶性の熱可塑性樹脂が好ましいが、このような非晶性の熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、脂環式構造を有する重合体、セルロース系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどを挙げることができ、流動性が良好で厚みむらの小さい厚み精度の高い透明フィルムを製膜することができ、しかも、吸湿性が極めて低く寸法安定性に優れていることから、脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0041】
ここで、透明フィルム3の可視光透過率は、低いと、光学用途やディスプレー用途に好適に用いることができないことがあるので、90%以上が好ましい。なお、可視光透過率は、JIS Z8722及びJIS R3106に準拠した方法によって波長380〜780nmの範囲内において測定された可視光透過率のうちの最小値をいう。
【0042】
脂環式構造を有する重合体としては、主鎖又は側鎖に脂環式構造を有する重合体を挙げることができ、得られる透明フィルムが機械的強度及び耐熱性に優れていることから、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0043】
そして、脂環式構造は、飽和環状炭化水素構造であることが好ましく、その炭素数は、4〜30であることが好ましく、5〜20であることがより好ましく、6〜15であることが特に好ましい。
【0044】
脂環式構造を有する重合体中における脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。
【0045】
脂環式構造を有する重合体としては、例えば、(1)ノルボルネン系単量体の開環重合体若しくは開環共重合体を必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加等の変性を行った後に水素添加した樹脂などのような、ノルボルネン系単量体の開環重合体若しくは開環共重合体又はそれらの水素添加物、(2)ノルボルネン系単量体とエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系単量体とを付加重合させた樹脂、ノルボルネン系単量体と、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエンなどの環状オレフィン系単量体とを付加重合させた樹脂などのような、ノルボルネン系単量体の付加重合体若しくは付加共重合体又はそれらの水素添加物、(3)単環の環状オレフィン系単量体の重合体又はその水素添加物、(4)環状共役ジエン系単量体の重合体又はその水素添加物、(5)ビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体若しくは共重合体又はそれらの水素添加物、(6)ビニル芳香族炭化水素系単量体の重合体又は共重合体の芳香環を含む不飽和結合部分の水素添加物などを挙げることができ、製膜性が良好であって、機械的強度、耐熱性、透明性及び液晶とのマッチング性に優れ、固有複屈折率が低く、光弾性係数が小さい透明フィルムを得ることができるので、ノルボルネン系単量体の重合体の水素添加物が好ましい。
【0046】
なお、ノルボルネン系単量体の重合体の水素添加物は、極性基を有さないものとしては、日本ゼオン社から商品名「ゼオノア」で、極性基を有するものとしては、ジェイエスアール社から商品名「アートン」として販売されている。
【0047】
又、上記ノルボルネン系重合体としては、繰り返し単位として、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイルエチレン構造と、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイルエチレン構造を有し、これらの繰り返し単位がノルボルネン系重合体の60重量%以上であり、且つ、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイルエチレン構造とトリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイルエチレン構造との重量比が100:0〜40:60である重合体は、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れた透明フィルムが得られるので好ましい。
【0048】
そして、繰り返し単位としてビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイルエチレン構造を形成するノルボルネン系単量体としては、例えば、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.10,5]デカ−3−エン(メタノテトラヒドロフルオレン)などを挙げることができる。
【0049】
又、繰り返し単位としてトリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイルエチレン構造を形成するノルボルネン系単量体としては、例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3,7−ジエン(テトラシクロドデセン)などを挙げることができる。
【0050】
更に、上記以外のノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−エチリデン−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロキシシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノヒドロオクタフルオレンなどが挙げられる。
【0051】
上記非晶性の熱可塑性樹脂は、シクロヘキサン又はトルエン溶液についてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量が、10,000〜100,000であることが好ましく、15,000〜80,000であることがより好ましく、20,000〜50,000であることが特に好ましい。
【0052】
これは、ポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜100,000の非晶性の熱可塑性樹脂を用いることにより、成形加工性と機械的強度のバランスのとれた透明フィルムを得ることができるからである。
【0053】
又、上記非晶性の熱可塑性樹脂の数平均分子量は、小さくなると、透明フィルムの機械的強度が低下することがある一方、大きくなると、透明フィルムの製膜性が低下することがあるので、テトラヒドロフラン溶媒又はシクロヘキサン溶媒についてゲルパーミエーション・クロマトグラフィにより測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の数平均分子量が5,000〜40,000であることが好ましく、7,000〜35,000であることがより好ましく、8,000〜30,000であることが特に好ましい。
【0054】
本発明に用いる非晶性の熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、1〜10であることが好ましく、1.1〜4であることがより好ましく、1.2〜3.5であることがさらに好ましい。
【0055】
そして、透明フィルム3の厚みは、厚いと、光学用途やディスプレー分野において用いた場合に薄型化の阻害要因となることがあるので、200μm以下が好ましい。なお、透明フィルム3の厚みは、測定精度(1/1000)mmのマイクロゲージを用いて測定されたものをいう。
【0056】
又、上記非晶性の熱可塑性樹脂には、透明フィルムの耐熱性、耐候性、平滑性などを向上させるために、フェノール系、リン系などの老化防止剤、フェノール系などの熱劣化防止剤、アミン系などの帯電防止剤、脂肪族アルコールのエステル、多価アルコールの部分エステルなどの滑剤などが添加されてもよい。
【0057】
次に、透明フィルムの製造方法について説明する。この透明フィルムは、汎用の溶融押出成形により製膜される。具体的には、非晶性の熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたTダイからフィルム状に押出すことによって透明フィルムを得ることができる。
【0058】
上述したように、明度落差の平均値Xが0.08以下、明度落差の標準偏差Yが0.02以下であると、透明フィルムは厚みむらが小さく、光学用途やディスプレー分野において好適に用いることができるが、このような透明フィルムを製造するためには、押出機に取り付けたTダイのリップ部の真直度が全面に亘って0.5μm/100mm以下であることが好ましく、0.3μm/100mm以下が好ましく、0.2μm/100mm以下がより好ましい。
【0059】
このように、Tダイのリップ部の真直度を0.5μm/100mm以下とすることによって、Tダイのリップ部に存在する凹凸を小さく抑えることができ、透明フィルムの表面に緩やかな波状の凹凸が発生するのを概ね抑えることができる。なお、Tダイのリップ部の真直度は、非接触式変位計を用いて測定することができる。なお、非接触式変位計は、例えば、キーエンス社から商品名「LT9000」にて市販されている。
【0060】
なお、非晶性の熱可塑性樹脂を溶融押出成形する際における樹脂温度は、押出機の種類、押出量などの押出条件により適宜決定されればよいが、一般的には、非晶性の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも50℃以上高い温度で且つ非晶性の熱可塑性樹脂の分解温度以下の温度が好ましい。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
熱可塑性飽和ノルボルネン樹脂(日本ゼオン社製 商品名「ゼオノア#1600」、ガラス転移温度:168℃)を3時間に亘って予備乾燥した後、この熱可塑性ノルボルネン樹脂を単軸押出機(直径:100mm、L/D=32)に供給して310℃にて溶融混練し、押出機の先端に取り付けたTダイからフィルム状に押出し、引き取り速度15m/分で巻取って透明フィルムを得た。
【0062】
なお、透明フィルムの可視光透過率は、92.4%であった。又、Tダイは、幅が1800mmのコートハンガータイプのTダイであり、樹脂流路面はその全面にH−Crメッキが施されていると共に、リップクリアランスが800μmであった。Tダイにおけるリップ部の真直度の最大値は、0.35μm/100mmであった。
【0063】
(実施例2)
熱可塑性ノルボルネン樹脂の代わりに、ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ社製 商品名「UDEL P−3500」、ガラス転移温度:185℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして透明フィルムを得た。なお、透明フィルムの可視光透過率は、92.0%であった。
【0064】
(比較例1)
Tダイとして、Tダイにおけるリップ部の真直度の最大値は、1.2μm/100mmであるTダイを用いたこと以外は実施例1と同様にして透明フィルムを得た。
【0065】
次に、得られた透明フィルムを下記の要領で検査した。先ず、暗室にて、白色のスクリーン1(明度落差の平均値X:0.060、明度落差の標準偏差Y:0.012)を垂直に立設し、このスクリーン1から4mだけ離間した位置に投影機2(ウシオ電機社製 商品名「SX−U1500H」)を配設した。
【0066】
そして、スクリーン1と投影機2との間に、透明フィルム3をその下端から上端に向かってスクリーン1方向に傾倒角度αが60°となるように且つ撓まないように傾倒させた状態に配設した。なお、投影機2における光の放射部の中心から放出される光の経路R上において、透明フィルム3とスクリーン1との間の距離Dが1mとなるように調整した。
【0067】
更に、投影機2から放射された光が透明フィルム3を透してスクリーン1上に投影されて得られる画像を撮影するための撮影機4(日本ローパー社製 商品名「MegaPlus Camera 1.6i 画素数1532×1024)をスクリーン1から0.8mだけ離間した位置に配設した。そして、スクリーン1上の画像の平均明度が1024階調で400〜800となるように投影機2の光量を調整した。
【0068】
そして、投影機2からスクリーン1に向かって光を放射してスクリーン1上に形成された画像を撮影機4で取り込み、上述した要領で、明度落差の平均値X及び明度落差の標準偏差Yを算出した。
【0069】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の透明フィルムの検査方法の要領を示した模式図である。
【図2】撮影機に取り込んだ画像を示した模式図である。
【符号の説明】
【0071】
1 スクリーン
2 投影機
3 透明フィルム
4 撮影機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、この光源から放射される光に対して直交した状態に配設されたスクリーンとの間に、透明フィルムを上記スクリーンに対して所望角度だけ傾倒させた状態に配設し、上記透明フィルムを透過した光を上記スクリーン上に投影して得られる画像の明度落差を測定し、この明度落差によって上記透明フィルムの厚みむらを検査することを特徴とする透明フィルムの検査方法。
【請求項2】
透明フィルムを45〜80°傾倒させていることを特徴とする請求項1に記載の透明フィルムの検査方法。
【請求項3】
溶融押出成形によって製造された厚みが200μm以下の透明フィルムであって、上記透明フィルムを60°傾倒させた状態で請求項1に記載の透明フィルムの検査方法に従って測定した明度落差の平均値が0.08以下であることを特徴とする透明フィルム。
【請求項4】
溶融押出成形によって製造された厚みが200μm以下の透明フィルムであって、上記透明フィルムを60°傾倒させた状態で請求項1に記載の透明フィルムの検査方法に従って測定した明度落差の標準偏差が0.02以下であることを特徴とする透明フィルム。
【請求項5】
透明フィルムが非晶性の熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の透明フィルム。
【請求項6】
非晶性の熱可塑性樹脂が、ノルボルネン系単量体の重合体の水素添加物であることを特徴とする請求項5に記載の透明フィルム。

【図1】
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【図2】
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