説明

透明又は半透明の液体柔軟剤組成物

【課題】 染み形成抑制効果の良い液体柔軟剤組成物の提供。
【解決手段】 (a)一般式(1)の化合物を5〜35質量%、(b)一般式(2)の非イオン界面活性剤を0.5〜20質量%、(c)LogPが0.1〜3の有機溶剤を1〜35質量%及び(d)水を含有する透明又は半透明の液体柔軟剤組成物。
【化1】


〔式中、R11、R12はエステル基等で分断されていてもよいC14〜26のアルキル基等、R13はC1〜3のアルキル基等、R14はC1〜3のアルキル基等、Xは陰イオン基である。〕
26−O−(AO)−OH (2)〔式中、R26はC11〜12のアルキル基等、Aはエチレン基等、dは平均付加モル数であり、21を超え40未満の数である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明又は半透明の液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明又は半透明の柔軟剤組成物はすでに知られており(例えば、特許文献1〜8)、これら公報には、貯蔵安定性を目的に非イオン界面活性剤を用いることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−232163号公報
【特許文献2】特開2004−60079号公報
【特許文献3】特開2004−84143号公報
【特許文献4】特開2004−84144号公報
【特許文献5】特表2001−515151号公報
【特許文献6】特開2003−328268号公報
【特許文献7】特開2000−328454号公報
【特許文献8】特開2000−355876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、審美的観点から組成物の外観を透明又は半透明にした柔軟剤組成物の開発が行われており、特許文献1〜8には特定のLogPを有する溶剤を用いる技術が開示されている。これらは水不溶性の4級アンモニウム塩化合物を、特定溶剤によりマイクロエマルジョン化又は可溶化することで透明化を達成しているものと考えられる。
【0004】
透明又は半透明の柔軟剤組成物は、洗濯工程のすすぎの段階ですすぎ水に加えることが一般的であるが、洗濯機の自動投入口を用いてすすぎ水に投入すると、柔軟剤組成物が直接衣料に付着する場合が多々存在し、そのままであると衣類上に染み(油染み様の濃色染み)が形成されることがある。このため、衣類への染みの形成を防止するには、衣類に付着した組成物を長時間のすすぎ工程で除去することが必要となる場合があることが判明した。この原因としては、マイクロエマルジョン化又は可溶化した柔軟剤組成物が衣類に付着した状態で水に希釈されると、衣類上で液晶化又は増粘するという現象が起こり、これらは水に容易には溶解し難いため(そのままであると染み形成の原因になるため)、通常の数倍の時間を掛けたすすぎが必要となるものと考えられる。
【0005】
この問題の解決手段としては、溶剤を多量に用いるなどの方法が考えられるが、不経済であり、しかも期待される効果も小さい。従って、効果的に衣類上で発生する液晶や増粘物の形成を抑制する(染みの形成を抑制する)方法が強く求められている。
【0006】
特許文献1〜8には、柔軟剤組成物の貯蔵安定性を改善する目的で非イオン界面活性剤を用いることが記載されているが、特定の構造の非イオン界面活性剤が衣料上で発生する液晶や増粘物の形成を改善し得ること(染みの形成を抑制できること)については何ら記載されておらず、当業者が容易に想到し得るものでもない。
【0007】
従って本発明の課題は衣類上で発生する液晶や増粘物の形成を抑制することで染み形成抑制効果を発揮できる透明又は半透明の液体柔軟剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、課題の解決手段として、
(a)下記一般式(1)の化合物を5〜35質量%、
(b)下記一般式(2)の非イオン界面活性剤を0.5〜20質量%、
(c)LogPが0.1〜3の有機溶剤を1〜35質量%及び
(d)水を含有する透明又は半透明の液体柔軟剤組成物を提供する。
【0009】
【化2】

【0010】
〔式中、
11は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい炭素数14〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、
12は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい炭素数14〜26のアルキル基又はアルケニル基であるか、あるいは炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基であり、
13は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、
14は、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、
は陰イオン基である。〕
26−O−(AO)−OH (2)
〔式中、R26は炭素数11〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、Aはエチレン基又はプロピレン基であり、dは平均付加モル数であり、21を超え40未満の数である〕。
【0011】
なお、本発明でいう透明又は半透明とは、測定セルの光路長10mmの石英セルを使用し、対照側セルにイオン交換水を入れた場合に660nmの波長の光透過率が30%以上であることをいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明の透明又は半透明の液体柔軟剤組成物は、衣料に適用した場合には、優れた染み形成抑制効果を発揮することができ、柔軟効果も優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、下記一般式(1)の化合物である。
【0014】
【化3】

【0015】
〔式中、
11は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であり、
12は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であるか、あるいは炭素数1〜3のアルキル基もしくは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
13は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
14は、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
は陰イオン基である〕。
【0016】
より具体的には、下記一般式(1−1)及び(1−2)の化合物が柔軟剤組成物の透明化の点から好適である。
【0017】
【化4】

【0018】
〔式中、
15、R17は、炭素数16〜20のアルキル基又は炭素数16〜20のアルケニル基であり(R15及びR17の合計モル数に対してアルケニル基が50〜100モル%である。)、
16、R18は、炭素数1〜6のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、
19は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
20は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基もしくは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
A、Bは、−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、a及びbは0又は1の数であり、Xは陰イオン基である〕。
【0019】
【化5】

【0020】
〔式中、
21は炭素数16〜20のアルキル基又は炭素数16〜20のアルケニル基であり、
22は炭素数1〜6のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、
23、R24は炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
25は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基もしくは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
Dは、−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、a及びbは0又は1の数であり、Xは陰イオン基である〕。
【0021】
一般式(1−1)の化合物において、R1517は、R15及びR17の合計モル数に対して、アルキル基が1〜15モル%、好ましくは1〜13モル%、より好ましくは1〜10モル%、特に好ましくは1〜5モル%であり、アルケニル基が85〜99モル%、好ましくは87〜99モル%、より好ましくは90〜99モル%、特に好ましくは95〜99モル%であり、また、炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基の割合が10モル%以下、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.5〜8モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%が透明化又は半透明化の点から好適であり、しかも染み残り防止効果の点から好ましい。
【0022】
19は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好適であり、特にヒドロキシエチル基が最も好ましい。R20はメチル基が好適であり、A及びBは−COO−が特に好ましい。
【0023】
一般式(1−1)においてA及びBが−COO−である化合物は、上記好ましいアルキル組成を有する脂肪酸と対応するモノアルキルジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンとの脱水エステル化反応、あるいは好ましいアルキル組成を有する脂肪酸低級アルキル(炭素数1〜3)エステルとモノアルキルジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンとのエステル交換反応で製造したアミンを、ジアルキル硫酸(炭素数1〜3)、ハルゲン化アルキル(炭素数1〜3)から選ばれるアルキル化剤を用いて4級化反応を行うことで製造することができる。
【0024】
脂肪酸又は脂肪酸エステルは、牛脂、ヒマワリ油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、大豆油から選ばれる油脂をケン化して得られる脂肪酸組成のものが好適である。また、これらは炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基が多量に含有するため、例えば特開平4−306296号公報に記載されているような晶析や、特開平6−41578号公報に記載されているようにメチルエステルを減圧蒸留する方法、あるいは特開平8−99036号公報に記載の選択水素化反応を行うことで炭素−炭素不飽和結合を2つ以上含有する脂肪酸の割合を制御する方法等により製造することができる。
【0025】
なお、選択水素化反応を行った場合には不飽和結合の幾何異性体の混合物が形成するが、本発明ではシス/トランスが25/75〜100/0、好ましくは50/50〜95/5(モル比)が好ましい。
【0026】
エステル化反応あるいはエステル交換反応における脂肪酸又は脂肪酸エステルとモノメチルジアルカノールアミン、又はトリアルカノールアミンとのモル比率は1.4:1〜2.2:1、好適には1.6:1〜2.0:1が好ましい。
【0027】
トリアルカノールアミンと脂肪酸又は脂肪酸エステルとをエステル化又はエステル交換反応させ、続いて4級化反応を行った場合、一般式(1−1)の化合物以外にモノエステル体〔一般式(1−1)において、R15が炭素数16〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、R17−[B−R18]b−がHO−R18−であり、R19が炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である化合物〕、トリエステル体〔一般式(1−1)において、R15、R17が炭素数16〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、R19がR17−[B−R18−である化合物〕が混在する。
【0028】
本発明においては、柔軟剤組成物の透明化の点及び染み形成抑制効果の点から、一般式(1−1)の化合物100質量部に対して、モノエステル体を25〜70質量部、トリエステル体を40〜120質量部含有する混合物が好適である。
【0029】
一般式(1−2)において、R21は炭素数16〜20のアルキル基が好適である。R21に炭素数16〜20のアルケニル基が含まれていてもかまわないが、アルケニル基の含有量は全R21に対して50モル%以下、好ましくは25モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。Dは−CONH−が好ましく、R22はプロピレン基がもっとも好ましい。R23、R24はメチル基又はエチル基が好ましく、R25は水素原子が好適である。
【0030】
(a)成分として一般式(1−1)の化合物と一般式(1−2)の化合物を併用するとき質量比〔(1−1)/(1−2)〕は、処理衣料の柔軟性能の観点から、0.2〜10が好ましく、0.2〜5がより好ましく、0.5〜2が特に好ましい。
【0031】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、下記一般式(2)の非イオン界面活性剤である。(b)成分を含有することにより、優れた染み形成抑制効果を発揮できる。
【0032】
26−O−(AO)−OH (2)
〔式中、R26は炭素数11〜22のアルキル基又は炭素数11〜22のアルケニル基であり、Aはエチレン基又はプロピレン基であり、dは平均付加モル数であり、21を超え40未満の数である〕。
【0033】
26は、好ましくは炭素数12〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、Aはエチレン基が好ましい。dは、22〜35が好ましく、22〜30がより好ましく、特に22〜28が好ましい。
【0034】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、LogPが0.1〜3の有機溶剤である。(c)成分は、LogPが、好ましくは0.5〜2、より好ましくは0.5〜1.8、特に好ましくは0.5〜1.6のものである。
【0035】
ここで、「LogP」とは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。
【0036】
実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP”で計算すると最も便利である。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと伴に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。
【0037】
このClogP値は、現在最も汎用的で信頼できる推定値であるので、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いた。
【0038】
(c)成分の具体的に好ましい有機溶剤としては、下記一般式(3)、一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物が好適である。
【0039】
31−OH (3)
〔式中、R31は炭素数4〜8の炭化水素基、好ましくはアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基である〕。
【0040】
41−(O−R42−O−R43 (4)
〔式中、
41及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、R44CO−(ここでR44は炭素数1〜3のアルキル基)又は炭素数1〜7の炭化水素基であり、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、
42は、炭素数2〜9の分岐鎖を有していてもよいアルキレン基である。ただし、R42が炭素数2〜3のアルキレン基で、かつR41及びR43の両方が水素原子である場合を除く。eは1〜5の数である〕。
【0041】
51−O−CHCH(O−R52)CH−O−R53 (5)
〔式中、R51は炭素数3〜8のアルキル基であり、R52及びR53はそれぞれ独立に、水素原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である〕。
【0042】
(c)成分のより具体的に好ましい化合物としては、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ノナンー1,6−ジオール、2−メチルオクタン−1,8−ジオール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−(2−メチル)プロポキシエタノール、ジエチレングリコールモノ−2−メチルプロピルエーテル、2−プロポキシ−1−プロパノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、2−ブトキシ−1−プロパノール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−t−ブトキシ−1−プロパノール、2−フェノキシ−1−プロパノール、2−エトキシプロピル−1−アセテート、2−プロポキシプロピル−1−アセテート、1,2−ジアセトオキシプロパン、3−ジメチル−3−メトキシ−1−プロパノール、1,3−ジメチルブチルグリセリルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、ヘキシルグリセリルエーテルを挙げることができる。
【0043】
これらの中でもn−ヘキサノール、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール、ノナンー1,6− ジオール、2−プロポキシ−1−プロパノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ペンチルグリセリルエーテルが好ましく、組成物の透明化及び貯蔵安定性の点から、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ(n−ブチル)エーテルから選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0044】
<(d)成分>
本発明の(d)成分は水であり、水中に微量に存在するカルシウム、マグネシウム等の硬度成分や鉄等の重金属を除去した水が好ましく、イオン交換水又は蒸留水を用いることができる。また、水を殺菌あるいは滅菌する目的から少量の塩素を含有しても差し支えない。
【0045】
<その他の成分>
本発明では、任意ではあるが柔軟効果を向上させる目的から陰イオン界面活性剤(以下(e)成分という)を含有することが好ましく、特に上記(a) 成分において一般式(1−2)の化合物を用いる場合に(e)成分を用いると、柔軟効果を著しく向上させることができる。
【0046】
(e)成分としては、炭素数14〜20、好ましくは炭素数16〜18の飽和又は不飽和脂肪酸、あるいはそのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩〔以下(e1)成分という〕、又は炭素数16〜36、好ましくは16〜28のアルキル基又はアルケニル基を有し、−SOM基及び/又は−OSOM基〔M:対イオン〕を有する陰イオン界面活性剤〔以下(e2)成分という〕が好ましい。
【0047】
(e1)成分としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸から選ばれる脂肪酸あるいはそれらの塩を挙げることができ、特にステアリン酸、オレイン酸が好適である。
【0048】
(e2)成分としては、上記炭素数を有するアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル( 又はアルケニル) 硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル( 又はアルケニル) エーテル硫酸エステル、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル及びこれらの塩が好ましい。これらの中でも特に炭素数16〜28のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル( 又はアルケニル)硫酸エステル、炭素数16〜28のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシド平均付加モル数が1〜6、好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3であるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上を配合することが好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、及びマグネシウム塩が貯蔵安定性の点から良好である。
【0049】
本発明の組成物には、(f)成分として金属封鎖剤を含有することが好適である。金属封鎖剤としては、(I)クエン酸、りんご酸、コハク酸などのポリカルボン酸化合物、(II)エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸などのアミノポリカルボン酸、(III)1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸などのホスホン酸から選ばれる1種以上が好適である。(f)成分としては、特にエチレンジアミン4酢酸及び/又は1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。
【0050】
本発明の組成物には、(g)成分として無機塩を含有することができる。無機塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが貯蔵安定性の点から好ましい。但し、脂肪酸塩類などの界面活性剤にはナトリウム塩やカリウム塩が含まれているが、このような界面活性剤の使用によって組成物に混入する無機塩は上記制限を受けるものではない。
【0051】
本発明の組成物には、貯蔵安定性を改善する目的で(h)成分として炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物を含有することができるが、透明な外観を得るために種類や含有量に留意する必要がある。含有できる化合物としては、トリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリエステル、ソルビタンエステルを挙げることができる。
【0052】
本発明の組成物は、上記(c)成分以外の溶剤〔以下(i)成分という〕を含有してもよい。具体的には、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる溶媒であり、特にエタノールが匂いの点から好ましい。
【0053】
本発明の柔軟剤組成物には、通常繊維処理剤に香料(特に好ましくは特開平8−113871号公報記載の成分(c)及び(d)にて示された香気成分の組み合わせ)、を配合しても差し支えない。また、本発明の柔軟剤組成物には水溶性染料を含有することができ、好ましくは特開平11−256474号公報の(b)成分として示される化合物や特開2004−60079号公報の(c)成分として記載されている化合物が好適である。
【0054】
<液体柔軟剤組成物>
本発明の液体柔軟剤組成物は、上記した各成分を下記の含有量になるように混合して得ることができる。
【0055】
(a)成分の含有量は、処理衣料の柔軟性能の観点から、5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%である。
【0056】
(b)成分の含有量は、低温における貯蔵安定性の観点から、0.5〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0057】
(a)成分/(b)成分は、染み形成抑制効果の観点から、質量比で好ましくは40/1〜2/1、より好ましくは20/1〜4/1である。
【0058】
(c)成分は、透明な外観の維持の観点から、1〜35質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0059】
本発明の(e)成分は任意ではあるが、柔軟効果及び貯蔵安定性の点から重要であり、(a)成分の種類によって好ましい(e)成分が異なる。
【0060】
(a)成分として一般式(1−1)の化合物を選択する場合には(e1)成分が好ましく、その含有量は、好ましくは1〜12質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。また、(a)成分/(e1)成分は質量比で99/1〜50/50、特に95/5〜60/40が好ましい。
【0061】
(a)成分として一般式(1−2)の化合物を選択する場合には(e2)成分が好ましく、その含有量は、好ましくは1〜12質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。また、(a)成分/(e2)成分は質量比で99/1〜50/50、特に95/5〜60/40が好ましい。
【0062】
本発明の(f)成分は透明又は半透明の柔軟剤組成物の安定性を向上させる目的からは重要な成分であり、好ましくは25〜2000ppm(質量基準)、好ましくは25〜1000ppm、特に好ましくは50〜500ppmである。
【0063】
また、(g)成分、(h)成分、(i)成分も貯蔵安定性の点から含有することが好ましく、組成物中に(g)成分を好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%、(h)成分を好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%、(i)成分を好ましくは0.5〜5質量%、特に好ましくは1〜3質量%である。
【0064】
本発明では上記成分を(d)成分である水に溶解、又は分散させた水溶液の形態であり、特に(a)成分は組成物中にマイクロエマルジョンあるいは(c)成分に可溶化された状態と推察される。(d)成分は組成物中に30〜95質量% 、更に50〜85質量%含有することが好ましい。
【0065】
さらに本発明の組成物は、貯蔵安定性の点から、組成物の20 ℃ におけるpHを1〜8.5、更に1〜8、特に2〜8に調整することが好ましい。pH調整剤としては塩酸、硫酸、燐酸などの無機酸や(f)成分を酸剤として用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等をアルカリ剤として用いることができる。
【0066】
pHは、冷却後(25℃)のpHを、(株)堀場製作所製pHメータD-52S、pH電極6367-10Dを用いて測定したものである。
【実施例】
【0067】
実施例及び比較例
<配合成分>
以下に実施例に用いた成分を示す。
【0068】
合成例1:(a−1)の合成
ヒマワリ油を原料としたヨウ素価90gI/100g、酸価201mgKOH/gの脂肪酸とトリエタノールアミンを反応モル比1.95/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で定法に従って脱水縮合反応を行い、主成分としてN,N−ジオレオイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチルアミンを45%、副成分としてN,N,N−トリオレオイルオキシエチルアミンを39%、N−オレオイルオキシエチル−N,N−ジヒドロキシエチルアミンを15%含む縮合物を得た。次に、この縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、エタノール溶媒存在下、定法に従って4級化を行い、主成分としてN,N−ジオレオイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを45%、副成分としてN,N、N−トリオレオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを37%、N−オレオイルオキシエチル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを16%含む第4級アンモニウム塩混合物を得た(以下、(a−1)という)。
【0069】
合成例2:(a−2)の合成
合成パルミチン酸/ステアリン酸を40/60(重量比)で混合した混合脂肪酸とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンとの脱水アミド化反応により(a−2)を合成した。すなわち、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン161gと混合脂肪酸273.3gを攪拌機、温度計、脱水管のついた4つ口フラスコに入れ、180℃まで昇温した。次に、その温度で約5時間生成する水を留去しながら加熱撹拌した。その後、120℃に冷却し、減圧下、未反応のアミンを留去し、目的とするN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン(a−2)を得た。
【0070】
(a−1):合成例1で得たN,N−ジオレオイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを主成分とする反応物
(a−2):合成例2で得たN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンを主成分とする反応物
(b−1):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均縮合度21)
(b−2):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均縮合度25)
(b−3):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均縮合度40)
(b−4):ポリオキシエチレンステアリルエーテル(平均縮合度21)
(b’−5):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均縮合度4)
(b’−6):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均縮合度70)
(b’−7):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(平均縮合度140)
(b’−8):ポリオキシエチレンステアリルエーテル(平均縮合度6)
(c−1):フェノキシエタノール
(c−2):ポリオキシエチレン(平均縮合度3)モノフェニルエーテル
(e−1):オレイン酸
(e−2):2−デシル−1−テトラデシル硫酸エステルナトリウム
(f−1):エチレンジアミン4酢酸
(g−1):硫酸ナトリウム
(h−1):オレイン酸とソルビタンとの脱水縮合物。オレイン酸/ソルビタンのモル比は3/1である。
【0071】
(i−1):エタノール
<柔軟剤組成物の調製方法>
上記成分を用いて表1に示す液体柔軟剤組成物を調製した。300mLビーカーに、柔軟剤組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(300r/min)、所要量の(a)成分、(b)成分、(e)成分を溶解させた。そのまま5分攪拌後、順次、(c)成分、(f)成分〜(i)成分を添加し、5分攪拌後、35%塩酸水溶液と48%水酸化ナトリウム水溶液で目標のpHに調製し、出来あがり質量にするのに必要な量の60℃のイオン交換水を添加した。その後10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら25℃に冷却した。なお、表1に示すpHは冷却後(25℃)のpHを記載した。
【0072】
<柔軟処理方法>
バスタオル(木綿100%)5枚を市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)アタック)を用いて洗濯機で洗浄した(東芝製2槽式洗濯機VH−360S1、洗剤濃度0.0667質量%、水道水30L使用、水温20℃、10分間)。その後、洗浄液を排出し、3分間脱水後、30Lの水道水を注水して5分間すすぎを行い、排水後3分間脱水を行った。その後再度30Lの水道水を注水後、表1の柔軟剤組成物1mlをシミ塗布用の4cm角の布に添加し2分間攪拌した。その後脱水し、室内で平干し乾燥させた。
【0073】
(外観評価)
以上に示した調製方法により表1に示す柔軟剤組成物を調製し、その外観を下記の評価基準により判定し、点数が1以上、1.5未満を×、1.5以上2未満を△、2以上を○として評価し、表1に示す。
【0074】
評価基準(外観)
3…透明又は半透明の液体である。
2…組成物がやや分離もしくは白濁している。
1…組成物が分離もしくは白濁している。
【0075】
(衣料の柔軟処理により生成するシミの評価)
以上に示した調製方法により調製した液体柔軟剤組成物を用いて処理した衣料に生成するシミの評価を下記の評価基準により判定した。点数が1以上、1.5未満を×、1.5以上2未満を△、2以上を○として評価し、表1に示す。
【0076】
評価基準(シミ)
3…衣料上にシミはない。
2…衣料上にわずかにシミがある。
1…衣料上にはっきりとシミがある。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例の組成物は、0℃で20日間保存した場合でも外観に変化がなかった(モヤなどが生じなかった)。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)の化合物を5〜35質量%、
(b)下記一般式(2)の非イオン界面活性剤を0.5〜20質量%、
(c)LogPが0.1〜3の有機溶剤を1〜35質量%及び
(d)水を含有する透明又は半透明の液体柔軟剤組成物。
【化1】

〔式中、
11は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい炭素数14〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、
12は、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい炭素数14〜26のアルキル基又はアルケニル基であるか、あるいは炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基であり、
13は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、
14は、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、
は陰イオン基である。〕
26−O−(AO)−OH (2)
〔式中、R26は炭素数11〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、Aはエチレン基又はプロピレン基であり、dは平均付加モル数であり、21を超え40未満の数である。〕