説明

透明視覚効果演出方法及びその製品

【課題】対象物を透明または半透明に見せかける視覚効果を得る。
【解決手段】光の入射面に入射した平行光は対物面鏡1(102)、側面鏡1(101)、側面鏡2(107)、観察面鏡2(106)に反射され観察者に届く。入射光の進行方向の情報を保存したまま観察面鏡に提示されるため、中央部の遮蔽空間(104)中に置かれたものは視界から消失したように見える。光を遮蔽したものの周囲を平行に反射させて迂回させることで透明効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
商品の意匠的効果の演出技術、周囲環境から目立たなくする保護色効果や隠れ蓑効果に関する技術分野。
【背景技術】
【0002】
従来周囲環境に合わせた色と模様を彩色することで保護色効果を演出していた。また、下記特許文献1によると視線上の対象画像の三次元画像を形成して表示することで隠れ蓑を作る技術が開示されている。しかし、背景の景色のように距離の違う対象物を多数表示しなければならない場合にはうまく機能させることは困難である。
【0003】
【特許文献1】特開2006−319932
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中身をあたかも存在しない、または、透明な物として視覚的に知覚させる隠れ蓑効果を実現させるためには、観察者の位置が隠れ蓑に対して変化すれば隠れ蓑表面から知覚される像を位置やサイズが観察者の位置と対象物の位置を結ぶ視線上に表示し、大きさも視線上の大きさになるように変化させることが望ましい。表示位置やサイズなどが、観察者の位置変化にあわせて適宜変化する隠れ蓑効果とその演出手段が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の手段は、対象物からの平行な入射光を受ける対照物側の対物鏡面とその反射光、または、複数回反射した反射光(以降、単に「反射光」と呼ぶ)を受ける側面側の側面鏡面1と、更に側面鏡面1の反射光を観察面鏡に反射させる側面鏡面2と、その反射光を観察者側に反射させる観察鏡面を設け、それらの鏡面の位置や角度を観察者の眼で対象物を視認できるように組み合わせた透明視覚効果演出方法において、多角柱側面表面上に対物鏡面及び観察鏡面を形成し、対物鏡面と観察面鏡に平行な対面に側面鏡を設けたことを特徴とする。
【0006】
入射側からの入射光を遮蔽物の周囲を迂回させて観察面へ反射させることで入射側の景色を観察面に映し出す。この迂回時、光を両側の平行な反射面で構成された迂回通路を通すことで、入射面への光の進行方向情報を保存したまま観察面から放射することができ、観察面には入射面の像がそのまま映し出されることで迂回させた遮蔽空間にある物が消失したように見える。但し、光が迂回した余分な距離分だけ遠くに見えることになる。また本手段の反射面が平面のため水平方向のみ像の位置関係が合う。一例では、本手段の上下方向の長さをできるだけ短くすれか見る角度を水平近くのみに制限すれば、距離の違いによる見え方が元の像に近い状態で観察できる。
【0007】
第二の手段は、多面体1と、多面体1の対物鏡面及び観察鏡面に合同な多角形を含んで構成された多面体2、の二つの多面体を想定したとき、多面体1の表面上に対物鏡面及び観察鏡面を形成し、更に多面体2中に多面体1を、多面体2の中心点から多面体1及び2の頂点が直線に並ぶように配置し、側面鏡は多面体2の内面に鏡面を形成することで構成し、入射光取り入れ口は、多面体1の1頂点(頂点a)を含む平面で多面体2を切断した切頭多面体の切断面(切断面A)であり、同様に反射光出口は、頂点aの多面体中心点を挟んで対角の頂点(頂点b)を含む平面で切断した切断面(切断面B)から観察者方向へ反射させる多面体1と対角切頭多面体からなることを特徴とする。
【0008】
本手段では、反射面を立体とすることで、上下左右で反射させるため、左右方向のみならず、上下方向の光のベクトル情報も保存されて観察面に表示される像の位置関係を正確に再現することができる。
【0009】
第三の手段は、反射面で囲まれた遮蔽空間に光源を設け、点灯、消灯を制御するか、あるいは、該遮蔽空間への外部からの光の入射を制御することを特徴とする透明視覚効果演出方法及びその製品。
【0010】
特に、第二の手段では周りが全反射面で囲まれていて遮蔽部への光の入射がないため、そのままでは、遮蔽空間の中のものは透明に見える。しかし、中に光源を入れて点灯することで中のものと背面からの景色が重なって半透明に見える。また、第一の手段も遮蔽部を塞いでしまうと光が入らず同様に中が透明になる。この遮蔽空間の照度を制御することで遮蔽空間内の物が透明になったり半透明になったり、またオンオフ制御以外にも、照度の強弱制御によってそれらの像の混合具合やコントラストなどの見え方が変化する。
【発明の効果】
【0011】
反射面を鏡で構成することで光路を迂回させた中心部を、あたかも透明になったように見せることができる。また、反射面でプリズムを使って入射平行光を全反射させて迂回させると、中心にある物からの光は空気からガラスやアクリルのような屈折率の高いものへの入射であるため観察面へ抜ける。そのため、背景の像と中心の像が重なってみえるため物が半透明になったように見える。透明または半透明の視覚効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1、図2、図3、図4、図5、図6は本発明の原理を説明するための説明図であり、下記実施例で共通して使用する。図1は平面鏡を組み合わせた一例である。101は側面鏡1、102は対物鏡1、103は対物鏡2、104は隠蔽空間、105は観察面鏡1、106は観察面鏡2、107は側面鏡2である。図2は図1の側面部を延長した一例である。201は側面鏡、202は対物鏡、203は側壁、204は観察鏡である。図3は反射面を透明なガラスなどの全反射で構成したものである。301はプリズム部、302は入射面、303は遮蔽空間、304は観察面である。図4は図3の側面を延長したものである。401は入射面、402はプリズム部、403は観察面、404は遮蔽空間である。図5は外側を切頭4面体2個のプリズム、内部を2個の4面体の空洞で構成したものである。501は入射面、502はプリズム部、503は遮蔽部、504は観察面である。図6は図5の側面を延長したものである。601は入射面、602はプリズム部、603は遮蔽空間、604は観察面である。数1、表1、表2はプリズム部の屈折率と角度範囲である。θは、光線と反射面のなす角度で90度から入射角を引いた値である。αは空気との臨界角、βは絶対屈折率1.4のシリコンオイルとの臨界角、ωは水との臨界角である。
【0013】
【数1】

【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【実施例1】
【0016】
近年、公衆トイレでの犯罪が増加している。その主な理由は、プライバシー侵害の虞があるためトイレ内への防犯カメラの設置が困難で外部から隔離されることが多いことや、公衆トイレではトイレ外周に死角になる部分が多いためと考えられる。そこで、外から適度にトイレ建屋内を見ることができ、トイレの外周部の死角を少なくすることが求められている。図1及び図2は本発明の一例としてトイレに応用する場合、公衆トイレの上面断面図である。
【0017】
対物鏡側からの入射光を鏡で迂回させて観察面側に光の進行方向の情報を持ったまま反射させることで、観察面に対物鏡後方の景色を映し出すことで、中心部にあるものが視界から消失する。但し、光の到達距離が伸びるため、実際の位置よりも遠い位置に見える。図1の隠蔽空間(104)または、図2の鏡で囲まれた中心部にトイレを配置することで、トイレの周囲である側面鏡(101、107、201)と対物鏡(102、103、202)及び観察面鏡(105,106、204)の間の通路と対物鏡(102、103、202)の後方は前方の観察面から監視することが容易になる。この観察面側に監視カメラを設置することでトイレの周囲と後方を常に監視し犯罪の抑止につながる。また、トイレの上部の顔の位置を開口とすることでトイレ内の人の動きを最低限監視できる。
【0018】
本方式では、公衆トイレ以外にもエレベータの乗降口や柱、物置、テントなどに使用することができる。柱やエレベータなど視覚を遮るものを遮蔽したり隠蔽したりすることができる。
【実施例2】
【0019】
図7は花瓶に応用した一例を示す側面断面図である。701はプリズム部、702は遮蔽空間、703は観察面、704は遮蔽空間の空洞部、705は水面である。
【0020】
ガラス壁面(701)で図3または図4のプリズム部(301、402)を構成した花瓶である。遮蔽空間(702)は(303、404)に対応し、水と花を入れたものである。遮蔽空間の空洞部(704)では入射面からガラスに入射した光は空気とガラスの境界面で全反射して観察面(703)に像が表示される。また、空洞部(704)内の花の茎からの光は空気からガラスへの入射のため観察面(703)に表示される。後ろからの背景と重なって花の茎が表示されるため、あたかも花がその部分だけ半透明になったような視覚効果が得られる。更に、水の入った水面(705)以下の領域では水と低屈折率のガラスでは全反射が起きないため花の茎は実物と同じ茎として表示される。本実施例の遮蔽部に人形を入れたり、出したりすることで半透明な人形を用いた広告塔を作ることができ、他にも陳列用ディスプレイやアクセサリーに使用できる。また、ゴミ箱やペン立てなどの容器にも応用できる。
【実施例3】
【0021】
図8は置時計に応用した一例を示す側面断面図である。801は台、802はプリズム部、803は観察面、804は遮蔽空間である。
【0022】
本実施例は、図5または図6のプリズムの遮蔽空間(503、603)に照明付時計を、文字盤を観察面(504、604)側に向けて設けたものである。プリズム部(802)は502または602に対応し、観察面(803)は504または604し、遮蔽空間(804)は503または603に対応する。本実施例は前述実施例と同様に時計の文字盤が半透明に見える。また、表2の高屈折率ガラスやキュービックジルコニアをプリズム部に使用することでプリズムの反射面角度を表のごとく大きくすることができ厚みを薄くすることができる。また、設定時間になると照明を点滅することで音とともに時計が透明になったり半透明になったりして時間を知らせる時計ができる。また、遮蔽空間部(804)に水とともに半透明に見せたい物を入れる場合は、プリズムの材料に表2のωの値が45度を超えるものを使用し、シリコンオイルと共に封入する場合はβの値が45度を超えるものを使用する。
【実施例4】
【0023】
本実施例では、図5または図6を透明な食品に応用した一例を示す。
【0024】
寒天やゼラチン、飴、氷砂糖、塩等の透明または半透明の食品をプリズム部(502、602)に、他の固形食品を遮蔽空間(503、603)に空気とともに密閉することで、固形食品を半透明に見せかけることができる。表1の臨界角αが45度未満の食品の場合は、プリズムの入射光に対する反射面の角度を臨界角θ以下にすることで半透明効果を得ることができる。臨界角αが45度以上の食品は表の最小θ以上と最大θ以下の範囲で構成することで同様の効果を得ることができる。また、表にない材料は、最小θの値は数1によって求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
建物、建築物の柱やエレベータホール、置き時計、看板や広告塔やディスプレイ、ゴミ箱、収納容器、ペン立てや筆箱、照明器具、花瓶、菓子等の食品、プリズム。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一例で、実施例全般を説明するための上面断面図である。
【図2】本発明の一例で、実施例全般を説明するための上面断面図である。
【図3】本発明の一例で、実施例全般を説明するための斜視説明図である。
【図4】本発明の一例で、実施例全般を説明するための斜視説明図である。
【図5】本発明の一例で、実施例全般を説明するための斜視説明図である。
【図6】本発明の一例で、実施例を説明するための斜視説明図である。
【図7】本発明の一例で、実施例2を説明するための側面断面説明図である。
【図8】本発明の一例で、実施例3を説明するための側面断面説明図である。
【符号の説明】
【0027】
101、107、201 側面鏡
102、103、202 対物鏡
104、303、404、503、603、702、804 隠蔽空間
105、106、204 観察面鏡
203 側壁
301、402、502、602、701、802 プリズム部
302、401、501、601 入射面
304、403、504、604、703、803 観察面
704 遮蔽空間の空洞部
705 水面
801 台
θ 光線と反射面のなす角度
α、β、ω 臨界角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物からの平行な入射光を受ける対照物側の対物鏡面とその反射光、または、複数回反射した反射光(以降、単に「反射光」と呼ぶ)を受ける側面側の側面鏡面1と、更に側面鏡面1の反射光を観察面鏡に反射させる側面鏡面2と、その反射光を観察者側に反射させる観察鏡面を設け、それらの鏡面の位置や角度を観察者の眼で対象物を視認できるように組み合わせた透明視覚効果演出方法において、多角柱側面表面上に対物鏡面及び観察鏡面を形成し、対物鏡面と観察面鏡に平行な対面に側面鏡を設けたことを特徴とする透明視覚効果演出方法及びその製品。
【請求項2】
多面体1と、多面体1の対物鏡面及び観察鏡面に合同な多角形を含んで構成された多面体2、の二つの多面体を想定したとき、多面体1の表面上に対物鏡面及び観察鏡面を形成し、更に多面体2中に多面体1を、多面体2の中心点から多面体1及び2の頂点が直線に並ぶように配置し、側面鏡は多面体2の内面に鏡面を形成することで構成し、入射光取り入れ口は、多面体1の1頂点(頂点a)を含む平面で多面体2を切断した切頭多面体の切断面(切断面A)であり、同様に反射光出口は、頂点aの多面体中心点を挟んで対角の頂点(頂点b)を含む平面で切断した切断面(切断面B)から観察者方向へ反射させる多面体1と対角切頭多面体からなることを特徴とする請求項1に記載の透明視覚効果演出方法及びその製品。
【請求項3】
反射面で囲まれた遮蔽空間に光源を設け、点灯、消灯を制御するか、あるいは、該遮蔽空間への外部からの光の入射を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の透明視覚効果演出方法及びその製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−139997(P2010−139997A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−336009(P2008−336009)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(507275604)株式会社ミツヤコーポレーション (10)