説明

透水性セラミックスブロックの製造方法

【課題】本発明は、製造ラインを汚損せずに、しかも簡略な工程で、曲げ強度、透水係数などの特性に優れた透水性セラミックスブロックを安定して製造する方法を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の透水性セラミックスブロックの製造方法は、骨材、無機バインダ、実質的にα化された澱粉粉末および水を必須成分とする混合物を加圧成型した後、乾燥固化し、次いで焼成することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐汚染性に優れ、かつ、比較的簡単容易に、安定して透水性セラミックスブロックを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】透水性セラミックスブロックの製造方法については、例えば特開昭63−176380号公報のように、骨材とガラス質粉末を水ガラスで混合したのち一次硬化させ、焼成する方法について記載がある。この方法では混合機、焼成用セッター、サヤなどの製造ラインを著しく汚したり、ラインでの固化物が混入して収率を下げるなどの問題があった。
【0003】一方、特公平1−54310号公報や、特公平5−5794号公報には、澱粉水溶液を糊剤として用いる方法が提案されている。しかしながら、澱粉水溶液を製造するには、80〜90℃程度に加熱しながら撹拌溶解する必要があり、工程的にも繁雑で、かつ該澱粉水溶液は、腐敗し易く、粘度などの溶液特性の経時変化が極めて著しく貯留面など工程管理上にも非常に扱いにくい問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、製造ラインを汚損せずに、しかも簡略な工程で、曲げ強度、透水係数などの特性に優れた透水性セラミックスブロックを安定して製造する方法を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明の透水性セラミックスブロックの製造方法は、骨材、無機バインダ、実質的にα化された澱粉粉末および水を必須成分とする混合物を加圧成型した後、乾燥固化し、次いで焼成することを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明は、従来の透水性セラミックスブロックの製造方法で惹起していた、製造ラインを汚損したり、該澱粉水溶液の場合は、腐敗し易く、経時変化が極めて著しく工程管理上にも非常に扱いにくいなどの問題のない、簡単容易で綺麗に、安定して優れた物性を有するセラミックスブロックを製造できる方法を提供せんと鋭意検討したところ、有機バインダーとして特定な澱粉を採用することを究明したものである。
【0007】すなわち、本発明で用いる特定な澱粉は、実質的にα化されているものである。従来技術で使用されていた澱粉は、植物に由来する通常の澱粉原料、つまりβ澱粉であるため、水特に常温程度の冷水と接触しても溶解せず粘性が発現しないものであるのに対して、本発明で採用するα化された澱粉は、常温程度の冷水と接触して容易に溶解する上に、粘性が発現し接着性を発揮する特徴を有するものである。かかるα化の程度は、少なくとも50モル%以上、好ましくは60モル%以上、高ければ高いほうが好ましい。
【0008】かかるα化澱粉の分子量は、平均分子量にして3万〜5000万程度である。3万未満では、接着力が不足する傾向があり実用的に乏しい。一方、約5000万を越える程に高分子量となると、水への溶解性が低下し、接着作用も欠ける傾向が出てくる。
【0009】また、かかるα化澱粉の中でも、粘性の点からいうと、水溶液としたときの粘度が、1〜4重量%濃度で、10〜5000cp(20℃)の範囲にあるものが好ましい。10cp未満では接着作用が小さく、5000cpを越えると粘度が高すぎて、混合状態が不均一になり焼結体の物性に悪影響を与える傾向がある。
【0010】かかるα化澱粉の粉末は、平均粒径としては種々のものを用いることができるが、好ましくは1〜20μ程度のものが好適に使用される。また、かかるα化澱粉の他に、カルボキシルメチルセルロースのナトリウム塩など易水溶性の高分子物質を併用することができる。
【0011】本発明では、骨材、無機バインダ、実質的にα化された澱粉粉末および水を必須成分とする混合物を採用するものであるが、その混合順序は、たとえば骨材と無機バインダと実質的にα化された澱粉粉末を混合したのち水を添加するなど、混合は複数の段階にわけて、例えば二段階で行う。骨材と無機バインダと実質的にα化された澱粉粉末を均一にまぜるために予め実質的に乾いた状態で混合するのが好ましい。実質的に乾いた状態とは、骨材の種類によって、例えば火成岩質砕石のように水を含んでいる場合があるが、含水率6%以内が好ましい。その後で水を添加して澱粉粉末を溶解させ接着作用を発現せしめる。そうでないとα化された澱粉がゲル化して凝集しやすく不均一になりやすい。粉末混合手段としては公知の装置を用いる事ができる。たとえば、アイリッヒミキサー、リボンミキサー、モルタルミキサーなどを使用する。
【0012】別の混合順序としては、骨材と実質的にα化された澱粉粉末を予め実質的に乾いた状態で混合したのち水を添加し、ついで無機バインダを添加して混合してもよい。
【0013】かかる水の添加量としては、水添加後の混合物の含水率が、4〜12重量%となるように添加する。骨材自体が予め水を含んでいる場合はその分を補正して含水率を調整する。4重量%未満では、水が混合物を形成する粒子全体にゆきわたらず、不均一となりやすく、12重量%を越えると成型時に水が分離しやすく、この場合も不均一になり易くなる。
【0014】本発明の無機バインダとしては、種々のガラス例えば板ガラス、瓶ガラスなどの粉砕粉末、各種フリット粉末、釉薬粉末、ベントナイト、粘土類などを用いる。融点は、500〜900℃程度のものが好ましい。
【0015】本発明で使用する骨材の無機質粒子としては、材質的には種々のものがあるが、焼成に耐え、かつ焼成後も強度を保持させる必要があるため、例えば、鉄鋼スラグ、タイル粉砕物、碍子粉砕物、瓦粉砕物、土管粉砕物、煉瓦粉砕物、各種シャモット類、水成岩質砕石、火成岩質砕石、下水道汚泥焼却処理灰、下水道汚泥溶融スラグ、都市廃棄物焼却処理スラグ、水性堆積物焼却処理灰、水性堆積物溶融スラグなどが好ましく用いられる。
【0016】鉄鋼スラグの例としては、さらに徐冷スラグ、水砕スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグなどがある。水成岩質砕石としては、例えば砂岩、シルト岩、角レキ岩、チャート、泥岩、頁岩、石灰岩などがあるがこれらに限定されるものではない。火成岩質砕石としては、例えば流紋岩、玄武岩、凝灰岩、石英粗面岩、安山岩のような火山岩そして花崗岩、閃緑岩、斑レイ岩、カンラン岩、蛇紋岩などの深成岩などがあるがこれらに限定されるものではない。下水道汚泥焼却処理灰、下水道汚泥溶融スラグは都市の下水処理場で発生する汚泥を焼却処理し有機物を分解せしめたもので、比較的粒度の細かい灰状のもの、あるいは融点以上の温度で処理して生成した溶融物を粉砕した粒状のスラグなどが用いられる。これらは処理場によって化学的な組成が変化することがあるが特に限定されるものではない。都市廃棄物焼却処理スラグは主として都市部で発生する家庭廃棄物あるいは産業廃棄物を焼却処理して発生するもので灰状のもの、溶融物を粉砕した粒状のスラグなどがある。また、水性堆積物焼却処理灰、水性堆積物溶融スラグは、例えば海洋、湖沼、河川に沈殿した堆積物を焼却して発生するもので、灰状のもの、溶融物を粉砕した粒状のスラグなどがある。
【0017】これら骨材を使用して製造される透水性セラミックスブロックは、一層のこともあれば二層のこともある。一層の場合、これらの骨材を1種類単独で使用して良く、あるいは数種類組み合わせブレンドして用いてもよい。さらに、二層の場合、各層が同じ骨材系でもよく、異種の組み合わせであってもよい。
【0018】本発明の骨材の無機質粒子は、最大粒径10mm以内でかつ、ブロック全体での平均粒度が4.0mm〜1.5mmの範囲にある。ブロック全体での平均粒度が4.0mmを越えると焼成体の曲げ強度が低下し、1.5mm未満になると焼成体の組織が緻密化し透水性が低下するため実用性に乏しくなる。
【0019】あるいは本発明の製造法で得られる透水性セラミックスブロックが、二層構造を有する場合では、表層部を構成する骨材の無機質粒子は平均粒度4.0mm〜0.5mmの範囲がよい。4.0mmを越えると骨材とバインダ間の接着力が低下して骨材が欠落しやすくなる。0.5mm未満になると、表層部の組織が緻密化し透水性が低下するとともに焼成時の収縮が顕著になってひび割れが発生しやすく品位が低下する。一方、基層部を構成する骨材の無機質粒子は平均粒度4.0mm〜1.0mmの範囲がよい。平均粒度が4.0mmを越えると焼成体の曲げ強度が低下し、1.0mm未満になると焼成体の組織が緻密化し透水性が低下するので実用的でない。表層部と基層部を構成する骨材の平均粒度をこれらの範囲にし、ブロック全体では、平均粒度が4.0mm〜1.5mmの範囲にあるように調整する。
【0020】平均粒度の調整方法としては、例えば粒度範囲が3.5mm〜1.5mmの粗粒、粒度範囲が1.5mm〜0.5mmの中粒、粒度範囲が0.5mm以下の細粒を適当な配合比でブレンドしてもよく、あるいは粒度範囲が5mm〜2.5mmの粗粒と粒度範囲が2.5mm以下の細粒を適当な配合比でブレンドしてもよい。
【0021】骨材と無機バインダと実質的にα化された澱粉粉末を混合した後に水を加えてなる混合物を加圧成型して成型物を得る。加圧成型に際しては、通常の加圧プレスの他に振動式プレスを用いて成型できる。成型物の充填密度を高めるためには、振動式プレスが有効である。成型に際しては、異種の混合物原料を使用し、成型体を異種の積層構造とすることもできれば、単層にすることもできる。成形機に充填する際、一つの混合物原料を充填して、ついで別の混合物原料を充填してから、加圧成型することもできれば、一つの混合物原料を充填して、一度加圧成型したのち、ついで別の混合物原料を充填して、さらに加圧成型することもできる。
【0022】また、成型に際しては、種々の形状の金型を用いることによって任意の形状、任意の大きさの成型物を得ることができる。
【0023】かくして、成型物を公知の乾燥手段を用いて水分を蒸散せしめ、成型物にハンドリング性を付与する。乾燥手段としては、例えば、熱風式乾燥法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などがある。通常、乾燥前の含水率の約半分まで乾燥すれば、機械的なハンドリング性も十分である。この乾燥固化体をついで焼成工程に供する。焼成手段としては、公知の例えば、ローラーハースキルン、シャトルキルン、トンネルキルンなどが、好ましく用いられる。焼成温度としては、骨材、無機バインダの配合組成によって異なるが、通常ピーク温度を1000〜1250℃の範囲に設定し、適宜の焼成プロフィルにより透水性セラミックスブロックを得ることができる。
【0024】
【実施例】次に、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
【0025】実施例1骨材として、タイル粉砕物の3.5〜1.5mm品を85重量部、1.5〜0.5mm品を8重量部、0.5mmアンダー品を7重量部計量した。
【0026】さらに板ガラス粉を12重量部、α化澱粉粉末を0.25重量部を計量し、モルタルミキサーに投入した。これらを乾式で混合した後、水を7重量部添加しさらに混合した。
【0027】この混合物を100×200mmサイズの金型を備えた振動式加圧プレスに充填し成型を行った。成型物を100℃で1時間乾燥を行い、乾燥固化体を得た。ついで、この乾燥固化体を、最高温度が1180℃のトンネルキルンに投入して焼結して焼成体を得た。
【0028】この焼成体の三点曲げ強度は、62kg/cm2 、透水係数は、0.051cm/秒であった。実施例2骨材として、安山岩砕石を使用し、その配合はJIS A−5001に定められる7号砕石とスクリーニングスをそれぞれ70重量部と30重量部計量したものを使用した。
【0029】次に、板ガラス粉を15重量部、α化澱粉粉末を0.25重量部を計量し、モルタルミキサーに投入した。これらを乾式で混合した後、水を8重量部添加しさらに混合した。
【0030】この混合物を100×200mmサイズの金型を備えた振動式加圧プレスに充填し成型を行った。成型物を110℃で1時間乾燥を行い、乾燥固化体を得た後、ついで、最高温度が1190℃であるトンネルキルンに投入して焼結して焼成体を得た。
【0031】この焼成物の三点曲げ強度は、76kg/cm2 、透水係数は、0.12cm/秒であった。
【0032】実施例3基層用原料として、骨材は、粒度範囲が3.5mm〜1.5mmの下水道汚泥溶融スラグの粗粒を60重量部、粒度範囲が1.5mm〜0.5mmの下水道汚泥溶融スラグの中粒を30重量部、粒度範囲が0.5mm以下の下水道汚泥焼却灰を10重量部計量した。
【0033】さらに、板ガラスの粉砕品を17重量部、α化澱粉粉末を0.25重量部計量した。
【0034】これらの原料をモルタルミキサ−に投入し乾式で混合した後、水を7重量部添加しさらに混合した。(混合原料Aとする)
表層用原料として、骨材は、粒度範囲が2.3mm〜0.5mmの碍子粉砕物を100重量部計量した。さらに、板ガラスの粉砕品を12重量部、α化澱粉粉末を0.25重量部計量した。
【0035】これらの原料をモルタルミキサ−に投入し乾式で混合した後、水を6重量部添加しさらに混合した。(混合原料Bとする)
混合原料Aを100×200サイズの金型を備えた振動式加圧成型機に投入し1段目の成型を行った。ついで、金型枠内上方に生じた空間に混合原料Bを充填し2段目の成型を行った。成型後の表層部と基層部の厚さの比率は約1:8であった。
【0036】この成型物を箱型乾燥機に投入し、105℃で約1時間処理し、乾燥固化体を得た。ついで、この乾燥固化体を最高温度が約1190℃のトンネルキルンに投入して焼成体を得た。
【0037】焼成体の三点曲げ強度は、57kg/cm2 、透水係数は、0.067cm/秒であった。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、混合装置、焼成用セッター、サヤを汚損することなく簡略な工程で曲げ強度、透水係数などの特性に優れたセラミックスブロックを安定して製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】骨材、無機バインダ、実質的にα化された澱粉粉末および水を必須成分とする混合物を加圧成型した後、乾燥固化し、次いで焼成することを特徴とする透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項2】該必須成分の混合順序が、骨材、無機バインダおよび実質的にα化された澱粉粉末の3者を混合した後に水を混合する順序である請求項1記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項3】該必須成分の混合順序が、骨材と実質的にα化された澱粉粉末を混合し、次いで水を混合し、最後に無機バインダを混合する順序である請求項1記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項4】該α化された澱粉粉末が、冷水可溶性である請求項1記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項5】該α化された澱粉粉末が、3万〜5000万の平均分子量を有するものである請求項1記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項6】該α化された澱粉粉末が、その1〜4重量%水溶液の粘度が20℃で10〜5000cpである請求項1記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項7】該無機バインダが、ガラス粉末、フリット、釉薬、粘土類である請求項1記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項8】該加圧成型が、振動式加圧成型である請求項1記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項9】該透水性セラミックスブロックを構成する骨材が、最大粒径10mm以内でかつ、ブロック全体での平均粒度が4.0mm〜1.5mmの範囲にある無機質粒子である請求項1に記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項10】該透水性セラミックスブロックが、二層構造を有し、表層部を構成する骨材が平均粒度4.0mm〜0.5mmの範囲にある無機質粒子であり、基層部を構成する骨材が平均粒度4.0mm〜1.0mmの範囲にある無機質粒子である請求項1に記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項11】該無機質粒子が、鉄鋼スラグ、タイル粉砕物、碍子粉砕物、瓦粉砕物、土管粉砕物、煉瓦粉砕物、各種シャモット類、水成岩質砕石、火成岩質砕石、下水道汚泥焼却処理灰、下水道汚泥溶融スラグ、都市廃棄物焼却処理スラグ、水性堆積物焼却処理灰、水性堆積物溶融スラグから選ばれた少なくとも1種である請求項9または請求項10に記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。
【請求項12】該水の添加量が、水添加後の混合物の含水率が4〜12重量%となる量である請求項1記載の透水性セラミックスブロックの製造方法。