説明

透液シート及び動物用トイレ

【課題】悪臭の遮断及び細菌の繁殖の防止を可能とした透液能力に優れた透液シート及び動物用トイレを提供する。
【解決手段】上面に排尿口を有する中空箱型形状である気密性を有する排尿容器10と、上面の排尿口を覆うように敷設されている透液シートSと、排尿容器10の内部に設けられている吸液処理材32と、を備える動物用トイレであって、透液シートSは、透液性能を有する表面シート及び裏面シートの間に、複数個の粒状の排尿処理材が充填されている透液シートにおいて、排尿処理材は、茶葉又は茶殻と、接着剤とを含み、不透液性能又は難透液性能を有するように加圧造粒されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排尿等の液体を透液するシート材及び当該シート材を使用した動物用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、室内での愛玩動物等の飼育が非常に盛んになってきており、排泄物の処理を効果的に行うためのペット用のペットシートが提案されている。例えば、従来のペットシートS’の一例としては、透液性(液透過性)の表面層と、不透液性(液不透過性)の裏面層と、これら表面層90と裏面層91とに挟持される、液吸収能を有する吸収層94,95を有する構造のものが知られている(図6)(参考文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−6604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のペットシートS’は、液体を内部に吸収させることを目的とするものであり、内部に排尿を保持しているため、廃棄するまでの間、悪臭が生じてしまうとともに、雑菌が繁殖してしまうことから衛生上の問題点を有していた。
【0005】
本発明は、上記の各問題点を解決するためになされたものであり、悪臭及び雑菌の繁殖の防止を可能とした透液シートと、当該透液シートを用いた動物用トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、透液性能を有する表面シート及び裏面シートの間に、複数個の粒状の排尿処理材が充填されている透液シートにおいて、上記排尿処理材は、茶葉又は茶殻と、接着剤とを含み、不透液性能又は難透液性能を有するように加圧造粒されていること、を特徴とする透液シートを提供するものである。
【0007】
また、本発明は、透液性能を有する表面シート及び裏面シートの間に、複数個の粒状の排尿処理材が充填されている透液シートにおいて、上記排尿処理材は、焙煎コーヒー豆の粉砕物又は焙煎コーヒー豆の抽出残渣と、接着剤とを含み、不透液性能又は難透液性能を有するように加圧造粒されていること、を特徴とする透液シートを提供するものである。
【0008】
ここで、不透液性とは、排尿処理材の表層で液体が遮断され、当該液体がその内部に浸透しない性質をいい、難透液性であるとは、排尿処理材の内部への液体の浸透がごく少量であり、当該液体の浸透を実質的に遮断する性質をいう。
このような性質を維持するためには、接着剤は、不透液性能を有していることが好ましいものである。
【0009】
上記茶葉とは、緑茶、紅茶、中国茶(烏龍茶、プーアル茶など)等の種類は問わず、茶成分を未抽出の状態のものをいい、茶殻とは茶成分を抽出後の残渣をいう。
上記焙煎コーヒー豆の粉砕物とは、焙煎コーヒー豆を所定の粗さに挽いたコーヒー抽出液の抽出前の状態のものをいい、焙煎コーヒー豆の抽出残渣(以下、「コーヒー抽出残渣」という。)とは、缶コーヒー、インスタントコーヒー等のコーヒー飲料の製造時や、喫茶店或いは家庭などでコーヒー抽出液を抽出した後等に発生するもの、すなわち、焙煎コーヒー豆からコーヒー抽出液を抽出した際に排出される抽出残渣であり、所謂コーヒー粕と言われるものである。
なお、排尿処理材の製造コストを低減させるためには、茶殻又はコーヒー抽出残渣等の残渣構成材料を使用することが好適である。
【0010】
さらに、茶葉、茶殻、焙煎コーヒー豆の粉砕物又はコーヒー抽出残渣(以下、これらの材料を総称して、「茶コーヒー構成材料」という場合がある。)は、排尿処理材の全重量(水分を除く)に対して、80重量%乃至95重量%であることが、吸臭作用及び香気作用を効果的に奏させるためには好適である。
【0011】
本発明の透液シートは、透液性能を有する表面シート及び裏面シートの間に、複数個の不透水性能又は難透液性能を有する粒状の排尿処理材が充填されている。排尿処理材は不透水性能又は難透液性能を有しているため、排尿がその内部にほとんど浸透することはなく、当該排尿は隣接する排尿処理材間の間隙を流下することになる。そして、その過程で、排尿処理材が濾材として作用することにより、排尿を浄化することができる。また、茶コーヒー構成材料は、アンモニア臭の原因を作る黄色ブドウ球菌の繁殖を抑える効果があるため、排尿が排尿処理材に付着等した場合であっても、効果的に防臭効果を奏することができる。
【0012】
また、茶葉、焙煎コーヒー豆の粉砕物はもちろん、茶殻又はコーヒー抽出残渣についても、茶成分又はコーヒー成分が残留しているため、排尿を浄化する過程で、当該排尿に対して、茶又はコーヒーの香気を付加させることができる。そして、茶又はコーヒーは自然材料を用いているため、人為的な香りを付加するものでないことから、使用者による好みに影響されることなく、香気作用を奏させることができる。
【0013】
さらに、排尿処理材は、排尿をほとんど吸収しないため、塊状等になったりせずに、複数回にわたって、繰り返して使用することができる。
【0014】
また、本発明は、上面に排尿口を有する中空箱型形状である気密性を有する排尿容器と、上面の排尿口を覆うように敷設されている本発明の上記透液シートと、上記排尿容器の内部に設けられている吸液処理材と、を備えることを特徴とする動物用トイレを提供するものである。
【0015】
ここで、上記吸液処理材は、排尿を吸液することができる性質を有するのであれば、粒状の吸液処理体若しくはシート状の吸液処理材等、その種類は問わないものである。
【0016】
本発明の動物用トイレによれば、排尿容器の上面の排尿口を覆うように上記透液シートが敷設されているため、当該透液シートの奏するメカニズムにより、排尿を浄化することができる。また、排尿容器は気密性を有しており、上記透液シートが上面の排尿口を覆うように敷設されているため、排尿容器の内部から排尿の臭気が発せられた場合でも、当該異臭を効果的に遮断することができるとともに、透液シート自身からも、その構成材料に応じて、茶又はコーヒーの芳香が発せられるため香気効果を発することができる。
【0017】
さらに、上記動物用トイレにおいて、上記吸液処理材は収容部材に収納されるとともに、当該吸液処理材の収容部材が上記排尿容器から取り出し自在に設けられており、上記吸液処理材が取替可能となるように構成されていることとすれば、当該収容部材に収容されている吸液処理材を容易に取り替ることができるため、利便性に優れたものとすることができるため好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、悪臭及び細菌の繁殖の防止を可能とした透液能力に優れた透液シートと、当該透液シートを用いた動物用トイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の透液シートを示す断面図である。
【図2】本発明の動物用トイレ(第1実施形態)の排尿容器を示す斜視図である。
【図3】本発明の動物用トイレ(第1実施形態)を示す斜視図である。
【図4】本発明の動物用トイレ(第1実施形態)の使用後の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の動物用トイレ(第2実施形態)を示す斜視図である。
【図6】従来のペットシートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための一形態(以下、「実施形態」という。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一の部材等には同一の符合を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
(1)透液シート
[透液シートの構成]
図1に示すように、本発明の透液シート(以下、「本透液シート」という。)Sは、表面シート5と、裏面シート6と、当該表面シート5と裏面シート6の間に積層された状態で狭持されることにより、その内部に充填されている複数の粒状の排尿処理材31とから形成されている。
【0022】
表面シート5及び裏面シート6は、透水性能(透液性能)を有している不織布から形成されている所定の厚さのシート材であり、矩形形状に形成されている。この不織布は、ポリプロピレンやレーヨンなどのセルロース系繊維で形成されたスパンレース不織布、前記セルロース系繊維と親水処理された合成樹脂繊維とで形成されたスパンレース不織布等の公知の材料を用いることができる。
【0023】
裏面シート6の上面には、全面に渡って、所定の厚さとなるように、多量の排尿処理材31が敷設されている。
そして、当該裏面シート6は、排尿処理材31を構成する層の下面の全面と、当該排尿処理材31を構成する層の側面と、その上面の所定幅の口字形状の四周部とを覆い、各排尿処理材31を包持するように設けられている。
【0024】
上記表面シート5は、排尿処理材31を構成する層の上面(裏面シート6の上面の四周部を含む)を覆うように布設されている。この表面シート5の下面と、裏面シート6の四周部は強固に圧着されており、当該表面シート5及び裏面シート6とが一体となり袋体が形成され、当該袋体の内部に多量の排尿処理材31を包含することができるようになっている。
【0025】
排尿処理材31は、茶コーヒー構成材料(本実施形態では、コーヒー抽出残渣)と、非透液性接着剤を主な構成材料としており、ほぼ液体分を吸液しない難透水型(難透液型もしくは非透液型)の粒状の処理体として形成されている。その形状は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はないものであり、柱状体(細長形)、扁平形等、その形状は問わないものである。
【0026】
ここで、排尿処理材31に、茶コーヒー構成材料を用いた理由を説明する。
一般的に、排尿を放置すると黄色ブドウ球菌が繁殖するが、当該黄色ブドウ球菌中には、尿素を分解して二酸化炭素とアンモニアを発生する酵素が存在しており、この酵素によって、排尿からアンモニアが発生し、刺激臭の強い不快なアンモニア臭が発生するものであることが知られている。
そこで、本発明者が研究を重ねたところ、茶コーヒー構成材料には黄色ブドウ球菌の発生を防止する作用が存在することを見出し、当該茶コーヒー構成材料を混ぜた排尿処理材を作成したところ、アンモニア臭の発生を防ぐことを確認したものである(実施例参照)。
【0027】
また、接着剤は、排尿処理材31を粒状に成形するために用いるものであり、当該排尿処理材31が内部に液体を浸透し難い性能とするためには、合成樹脂系の不透液性接着剤を使用することが必要となる。
【0028】
なお、その他の構成材料として、脱臭材料、消臭材料、殺菌作用を有する物質、着色物質などの材料を添加するものであってもよい。また、所望の色の水溶性の着色剤を添加してもよい。
【0029】
上記排尿処理材31は、当該排尿処理材31の水分を除く全重量に対して、コーヒー抽出残渣を80重量%乃至95重量%、不透液性接着剤を20重量%乃至5重量%として、含水率が15重量%乃至7重量%となるように加水し、混練した後に、加圧造粒することにより製造される。これは、排尿処理材31を難透水型とするために、通常より、含水率を少なくして、硬度を増加させるとともに、間隙率を減少させているものである。
【0030】
[透液シートの作用効果]
続いて、本透液シートSの作用効果について説明する。
本透液シートSは、従来のペットシートと異なり、吸液性を有さない点に特徴があるため、下記の動物用トイレや、汚水等を浸透させる必要がある場所に敷設することになる。
【0031】
本透液シートSの表面シート5の上部から排尿させる。すると、排尿は、表面シート5から内部に浸透し、隣接する排尿処理材31の間隙を流下することになる。そして、その過程で、当該排尿処理材31が濾材として作用することにより、不純物が混入している場合には当該不純物をふるい分けしたり、悪臭等を付着・沈着させたりして除去し、排尿を浄化することができる。
そして、コーヒー抽出残渣には、コーヒー成分が残留しているため、排尿を浄化する過程で、当該排尿に対して、コーヒーの香気を付加させることができる。
【0032】
なお、排尿処理材31にはコーヒー抽出残渣が含まれているため、除去等した不純物から黄色ブドウ球菌が繁殖することを抑制することができるため、アンモニア臭の発生を防止することができる。
また、排尿処理材31は、排尿をほとんど吸収せず、透過させるだけであるため、塊状等になったりせずに、複数回にわたって、繰り返して使用することができる。
【0033】
(2)動物用トイレ
[動物用トイレの構成]
図2及び図3に示すように、本動物用トイレT1(第1実施形態)は、排尿容器10と、当該排尿容器10に敷設されている上記透液シートSと、粒状吸収体32とから構成されている。
【0034】
ア)排尿容器10
排尿容器10は、合成樹脂を原材料として直方体状の箱形に形成されている。この排尿容器10は、底部11a及び周壁部11bを有する中空状の容器本体11と、当該容器本体11の上面を塞ぐための蓋部15から形成されており、後記する排尿口15b及び側面開口部11cを除いて、所定の水密性及び気密性が保たれている。
【0035】
蓋部15は、容器本体11の上面を塞ぐ形状に形成され、当該容器本体11から容易に取り外しが可能となるように被嵌されている。また、蓋部15は、透液シートを敷設するために所定の深さとなるように凹部15aが形成されており、6個の円形状の排尿口15b(排尿孔)が短手方向に2列、長手方向に3列となるように、所定間隔で穿設されている。
なお、蓋部15は、その上部に愛玩動物が載り、排尿を行うために所定の耐久性能を有している。また、蓋部15には、排尿が排尿口15bに導かれるように、適度の傾斜が形成されている。
【0036】
そして、蓋部15の上面には、隙間なく、一枚の上記透水シートSが敷設されており、排尿口15bが覆われている。
【0037】
容器本体11の短手方向の一側面において、中間高さから下方位置には、後記収容トレイ13(収容部材)を引き出し及び挿入するための側面開口部11cが形成されている。そして、上記側面開口部11cには、端部が当該側面開口部11cを塞ぐ形状であり、容器本体11の内部空間に嵌装されるよう、所定の高さ寸法を有し、上部が開口した直方体である収容トレイ13が取出自在(移動自在)となるように設けられている。
【0038】
この側面開口部11cの口字形状の周縁部には、気密性を高めるために矩形薄板形状に形成されているビニル樹脂製又はゴム等である複数枚のカーテン材16(介装部材)が変形自在に設けられている。このカーテン材16は、上記収容トレイ13が容器本体11に嵌装されている場合には、押圧されて変形することにより、容器本体11の内部に収納され、収容トレイ13と側面開口部11cの隙間を塞ぐ役割を果たすとともに、収容トレイ13が外部に引き出されている際には、下向き、横向き又は上向きの形状に戻るようになっている。
【0039】
上記収容トレイ13には、上面が開口しており、有底で壁部を有する中空の直方体形状の処理材収容カップ22が、短手方向に2列、長手方向に3列となるように、合計6個、隣接するカップとほぼ隙間がないように設けられている。これらの処理材収容カップ22は、内側にポリエチレンラミネート加工が施されている紙性又はポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製のカップである。
なお、蓋部15の各排尿口15bは、各処理材収容カップ22の上面の開口部のほぼ中央部に位置するように配置されている。
【0040】
上記処理材収容カップ22は、後記する複数の粒状吸収体32で満たされている。上記処理材収容カップ22は、収容トレイ13上に固着されているのではなく、取出自在となるように載置されているため、収容トレイ13を排尿容器本体11から取り出し、所望の処理材収容カップ22を取り上げて、充填されている粒状吸収材32を容易に交換することができるようになっている。
【0041】
なお、符合13aは、収容トレイ13を外部に取り出したり、容器本体11の内部に挿入するときに把持するための取手である。
【0042】
上記構成により、収容トレイ13を排尿容器10の内部に嵌装した状態において、側面開口部11cが閉塞され、底部11a及び周壁部11bと一体となり、所定の水密性と気密性が保たれ、臭気が外部に漏れ難い構造となっている。
【0043】
イ)粒状吸収材32
粒状吸収材32は、芯部と、この芯部の表面を被覆する被覆層部とから形成される複層構造を有しており、液体分を吸収する排尿の吸液処理材である。
【0044】
芯部は、吸液性能を有していれば特に制限はなく、ベントナイト、ゼオライト等の無機質材料や、製紙用パルプ、ケナフ、パルプスラッジ等の有機質廃材の単体又は複数の混合物を素材とし、これらの素材に吸水性樹脂を配合したものを基材とすることができる。
但し、透液シートSの排尿処理材31に用いた茶コーヒー構成材料と同種の茶コーヒー構成材料(例えば、コーヒー抽出残渣の場合はコーヒー抽出残渣、緑茶殻の場合には緑茶殻など)を用いれば、排尿容器10の内部と透液シートSの双方から同じ芳香を発生させることができる。したがって、芳香の相乗効果を発揮させることができるため、非常に好適である。
【0045】
被覆層部は、使用時に尿等で濡れた粒状吸収材32同士を付着させて塊状とさせ、排尿をその周囲から包み込む等の作用を奏させること主な目的としている。このような被覆層部の構成材料の例としては、吸水性樹脂又は接着性を有する材料又は両材料の混合物と、紙粉の混合物を用いることが好適である。
【0046】
接着剤としては、例えば、糊料やポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂がある。このような接着剤として機能する糊料としては、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、デキストリン、各アルファ(α)化した澱粉などの澱粉類、アクリルアミド、PVA、カルボキシメチルセルロース又はアルギン酸ナトリウムを使用することができ、又はこれら二以上を組み合わせて使用することができる。また、その他の接着剤としては、高吸水性樹脂、ビニルエステル、ベントナイト、プルラン、カゼイン又はゼラチンなどがあり、これらは、単独で使用されるか、又はこれら2種以上を混合して使用される。また、アルコール溶解性の接着剤としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はポリビニルピロリドン(PVP)などがあり、この場合も同様に、単独で使用されるか、又はこれら2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
[動物用トイレの作用効果]
続いて、本動物用トイレT1の作用効果を説明する。
まず、透液シートSを蓋部15の上面に敷設するとともに、収容トレイ13の上に、粒状吸収材32を充填した処理材収容カップ22を敷設して、排尿容器10にセットする。このとき、透液シートSから発せられるコーヒーの香気が室内空間に向けて発せられている。
【0048】
続いて、透液シートSの上部から愛玩動物に排尿させる。すると、排尿は個々の透液シートSの表面シート5を透過し、隣接する排尿処理材31の間を通過して下方に滴下し、その過程で、吸着作用等により排尿が浄化されてコーヒーの香気が付加されるとともに、アンモニア臭等の悪臭が吸臭される。
そして、排尿口15bを通過して、排尿容器10の内部に滴下し、粒状吸収材32に達する。粒状吸収材32では、芯部が排尿を吸収するとともに、隣接する粒状吸収材32の被覆層部が排尿により付着して塊33となり、排尿をその周囲から包み込む等の作用を奏することになる。そのため、排尿部分を容易に確認することができる。
【0049】
粒状吸収材32の塊33が増加した場合には、収容トレイ13を引き出し、粒状吸収材32のうち塊33となった部分のみを取り出して廃棄する(図4参照)。そして、新しい粒状吸収材32を補充して、収容トレイ13を容器本体11に嵌装することになる。
【0050】
このように、本動物用トイレT1によれば、透液シートSの奏する効果により、排尿を浄化し、アンモニア臭で代表される悪臭の発生を防止させることができる。
また、排尿容器10は気密性を有しており、上記透液シートSが蓋部15の排尿口15bを覆うように敷設されているため、排尿容器10の内部から排尿の臭気が発せられた場合でも、効果的に遮断することができるとともに、透液シートS自身からも、その構成材料に応じて、コーヒーの芳香が発せられるため香気効果を発することができる。
【0051】
また、粒状吸収材32は、芯部と被覆層部から構成される二層構造であり、被覆層部の作用により、被覆層部が吸液することにより塊33となるため、当該塊33となった部分だけを容易に除去することができる。
【0052】
さらに、本動物用トイレT1において、収容トレイ13を引き出すだけで、容器本体10から分離可能となっているため、当該収容トレイ13に収納されている粒状吸収材32を容易に取り替ることができる。
【0053】
[動物用トイレの他の実施形態]
図5に示すように、本動物用トイレT2の他の実施形態は、排尿容器10と、蓋部15に敷設されている透液シートSと、複数枚(本実施形態では6枚)の排尿吸収シート42(シート状吸液処理材)から構成されている。
【0054】
本実施形態の動物用トイレT2は、第1実施形態の動物用トイレT1における処理材収容カップ22のかわりに、排尿を吸収するための排尿吸収シート42を敷設した点が大きく異なっている。
収容トレイ13’には、排尿吸収シート42の敷設を容易にするために、縦方向及び横方向に仕切部材14が設けられている。そして、各排尿吸収シート42は、排尿口15bがほぼその中央部に位置するように、収容トレイ13’の各区画に敷設されている。この排尿吸収シート42も、第1実施形態の動物用トイレT1における処理材収容カップ22の場合と同様に、収容トレイ13’を容器本体11の外部に引き出して、容易に取り替えることが可能となっている。
【0055】
また、この排尿吸収シート42は、排尿を吸収可能なものでれば、その種類は問わないものである。すなわち、排尿吸収シート42は、吸液性材料を所定の厚さのシート状に形成したものであればよい。
【0056】
本動物用トイレT2を使用した場合、愛玩動物の排尿は、透液シートSによって処理されながら、蓋部15の排尿口15bから排尿吸収シート42に流下し、吸収限界量に達するまで、当該排尿吸収シート42に吸収されて処理されることになる。そして、排尿吸収シート42が吸収限界量に達した場合には、第1実施形態の動物用トイレT1の場合と同様に、収容トレイ13’を引き出し、所望の排尿吸収シート42のみを交換することができる。
【0057】
このように、本実施形態の動物用トイレT2を使用した場合においても、第1実施形態の動物用トイレT1とほぼ同様の効果を奏することができる。
また、粒状吸収材32を用いる場合と比べて、排尿吸収シート42の交換は容易であるため、さらに、使用後の後始末を簡易に行うことができる。
【0058】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0059】
特に、本動物用トイレにおいて、排尿容器の形状、材質等に制限はなく、有底、周壁を有し、水密性及び気密性が保たれていればよい。そして、排尿口は、動物が排尿可能となるように開口していれば、その位置及び形状等にも制限はない。
また、排尿容器は、透明材料で形成されていれば、その内部の状況が認識可能となるため特に好適である。
【0060】
また、本透液シートは、所定の形状に分割されたものを、蓋部の上面に敷設するものであってもよい。
さらに、収容トレイに設けられている粒状吸収材は処理材収容カップ等に入っている必要はなく、また、排尿吸収シートも分割されている必要はないものである。
【実施例】
【0061】
本透液シートの効果を確認するために抗菌力試験及びアンモニア発生試験を行った。
【0062】
(サンプル)
表1に示すコーヒー抽出残渣及び各種茶殻を構成材料とした4種類の透液シートのサンプルを作成した。各サンプルは、各構成材料を90重量%、接着剤(カルボキシメチルセルロース)10重量%とし、含水率を10重量%にして加圧造粒した。
なお、比較対象資料(サンプル番号0と称する)は、下記の菌液を脱脂綿にしみ込ませたものとした。

【表1】

【0063】
(試験方法)
高圧蒸気滅菌(121℃、15分間)したサンプル10gに、黄色ブドウ球菌の菌液(10%Nutrient Broth(ニュートリエントブロス)溶液10mlに2%尿素液を添加したもの)を滴下し、以下の試験を行った。
【0064】
(抗菌力試験)
各サンプルを35℃で保存し、24時間経過時及び48時間経過時にSCDLP培地(日本製薬株式会社製)で直ちに10倍又は100倍に希釈し、各サンプルの生菌数を菌数測定用培地を用いて測定した。
【0065】
(アンモニア発生試験)
サンプルをにおい袋(25cm×40cm)(有限会社 ミヤコビニル加工所製)に入れ密封し、空気1リットルを注入した。そして、35℃で保存し、24時間経過時及び48時間経過時におけるアンモニア濃度を、検知管により計測した。
【0066】
(実験結果)
表2に示すように、尿素液を滴下した直後の黄色ブドウ球菌の生菌数は1.9×104であったが、各残渣の構成材料を使用したサンプル1乃至4に関しては、24時間経過時及び48時間経過時の黄色ブドウ球菌量は検出されない程度に減少した。しかし、比較対象サンプルは、黄色ブドウ球菌数は増加していることが明らかになった。
【0067】
また、アンモニア濃度につき、サンプル1乃至4に関しては、24時間経過時及び48時間経過時には1ppm以下であったが、サンプル0に関しては、200ppm又は140ppmという結果になった。
【0068】

【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
これにより、上記各構成材料を使用した排尿処理材に関し、黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用及び殺菌作用と、アンモニアの不発生が明らかになり、ひいては、当該排尿処理材を使用した透液シートの有効性も示されることになった。
【符号の説明】
【0071】
S 透液シート
5 表面シート
6 裏面シート
T1,T2 動物用トイレ
10 排尿容器
11 容器本体
11c 側面開口部
13,13’ 収容トレイ
15 蓋部
15a 凹部
15b 排尿口
16 カーテン材
22 処理材収容カップ
31 排尿処理材
32 粒状吸収材(吸液処理材)
42 排尿吸収シート(吸液処理材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性能を有する表面シート及び裏面シートの間に、複数個の粒状の排尿処理材が充填されている透液シートにおいて、
前記排尿処理材は、
茶葉又は茶殻と、接着剤とを含み、不透液性能又は難透液性能を有するように加圧造粒されていること、を特徴とする透液シート。
【請求項2】
透液性能を有する表面シート及び裏面シートの間に、複数個の粒状の排尿処理材が充填されている透液シートにおいて、
前記排尿処理材は、
焙煎コーヒー豆の粉砕物又は焙煎コーヒー豆の抽出残渣と、接着剤とを含み、不透液性能又は難透液性能を有するように加圧造粒されていること、を特徴とする透液シート。
【請求項3】
上面に排尿口を有する中空箱型形状である気密性を有する排尿容器と、
前記上面の排尿口を覆うように敷設されている請求項1又は請求項2に記載の透液シートと、
前記排尿容器の内部に設けられている吸液処理材と、を備えることを特徴とする動物用トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−39910(P2012−39910A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182633(P2010−182633)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000148977)株式会社大貴 (43)
【Fターム(参考)】