説明

透湿性ポリオレフィン樹脂組成物、乾燥能力を有する樹脂組成物、およびこれらを積層させた積層体、包装体

【課題】乾燥能力を向上させながらも持続性および容器の物理的強度物性の維持を保つことが可能な、積層体、包装体が望まれていた。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂(樹脂A)50〜99wt%に対し、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物(樹脂B)を必須成分として含み、かつ吸湿性を有する樹脂(樹脂C)からなる樹脂組成物(樹脂B+樹脂C)相を1〜50wt%配合した事を特徴とする、透湿性ポリオレフィン樹脂組成物やそれを用いた包装体などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は透湿性を改善したポリオレフィン樹脂組成物と、その樹脂組成物と乾燥能力を有する樹脂組成物を積層させた積層体、包装体に関し、さらに詳細には、本樹脂組成物を乾燥機能の有する包装体として用いた場合に、吸湿機能の向上を果たす事が可能な樹脂組成物およびそれを用いた積層体および各種包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,214,255号公報
【0004】
各種内容物を包装するパッケージ事業という分野において、「パッケージ」あるいは「包装」のキーワードとしては大きく以下の内容が挙げられる。
【0005】
(1)消費者に対する購買意識の付与、危険性の提示といった「表示効果」
(2)充填した内容物自体に包装体が侵されないための「内容物耐性」
(3)外部刺激に対する「内容物の保護」
これらのキーワードは更に細分化され、細かい要求品質へと展開される。
【0006】
そのうち、「内容物の保護」という点で特に注目を浴びているのが、酸素や水分からの内容物の保護が挙げられる。
【0007】
特に最近では、食品分野、工業製品分野、医療・医薬品分野等の各分野において、酸素や水分に対する内容物の保護性が重要視されるようになってきた。
【0008】
その背景として、酸素については酸化による内容物の分解、変質、水分については吸湿や加水分解に伴う内容物の変質が挙げられる。
【0009】
このように酸素あるいは水分による内容物の変質を防ぐ為、様々な方法が検討されてきた。
【0010】
その一つが、酸素バリアあるいは水分バリア性を有する材料を用いた包装体を設計することが挙げられる。
【0011】
水分バリアという点で例を挙げると、防湿性のあるポリオレフィン系樹脂を用いる、あるいは、これらのポリオレフィンやポリエステルやポリアミドフィルムにポリビニリデンクロライド系コーティング層を設けることで防湿性を付与したフィルムが最も一般的である。
【0012】
これらの水分バリア性基材を用いた包装体は、その高い水分バリア性から各種用途に展開が広がっている。
【0013】
しかしながら、これらの水分バリア性基材は塩素系ポリマーを用いていることからその代替案が検討されている状態である。
【0014】
また、一部の内容物によっては、ヘッドスペース中のわずかな湿度や水分によって劣化を伴う場合もあり、包装容器外側からの水分バリア性だけでなく、ヘッドスペース中の湿度や水分も除去したいというニーズが出てきている。
【0015】
これらの問題点を解決する為に、各種容器に乾燥剤を練り込むことで、吸湿性を付与した技術が開発されている。
【0016】
これらの技術はすでに公知の技術である。
【0017】
そのうち、用いる乾燥剤としては各種公報より様々な提案がされており、ゼオライトや硫酸マグネシウムやシリカや酸化カルシウムや塩化カルシウムのような無機系乾燥剤、ポリアクリル酸誘導体やセルロース誘導体のような吸水性ポリマーが挙げられている。
【0018】
一方で、乾燥剤を練り込んだ熱可塑性樹脂組成物の改善が必要な事項として、吸湿速度が挙げられる。
【0019】
これは、ポリオレフィンなどの防湿性樹脂に乾燥剤を配合すると、せっかくの吸湿剤の効果が薄れてしまうという問題がある。
【0020】
この内容は、吸湿剤を練り込む樹脂層の水分バリア性が比較的良い為、吸湿剤のもつ吸湿速度に影響を与えることを意味する。
【0021】
ポリマーに乾燥剤を配合することで発生する吸湿速度の低下を克服する試みとして、特許文献1に記載されている乾燥容器があげられる。
【0022】
本内容では、熱可塑性樹脂に吸湿剤およびチャンネル構造形成剤を配合することで、射出成形容器を成形している。
【0023】
機構としては、乾燥剤が選択的にチャンネル構造形成剤からなる相に分散し、その局所的な濃度分布と吸湿を利用して、徐々にチャンネルユニット部分を起点に微細クラックを発生させ、そのクラックを水分の通り道とすることで乾燥性を向上させている。
【0024】
しかしながら、クラックの発生は容器の物理的強度物性への影響が懸念されるところである。
【0025】
また、成形方法が限定されているという点も課題事項としてあげられる。
【0026】
また、乾燥機能を向上させる為に高含量の乾燥剤を配合すると、樹脂と乾燥剤の密着性が低い為、物理的強度物性が低下する。
【0027】
また、ポリオレフィン樹脂の透湿性を向上させるという点については、ポリオレフィン樹脂に各種吸湿または吸水性ポリマーを配合した事例が多く挙げられている。
【0028】
しかしながら、ポリオレフィン樹脂と吸湿または吸水性ポリマーは非相溶系の組み合わせであり、組成物としての強度物性が課題である。
【0029】
また、ポリアクリル酸やそのナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体については熱可塑性を示さない為、単純にポリオレフィン系樹脂に配合すると、ポリマー型フィラーとして作用し、分散不良を伴う。
【0030】
乾燥能力を有する樹脂組成物の登場は、今後のパッケージの内容物保存効果という点で期待される分野であるが、現状としては上述した改善事項が多く残されている。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上記の実情を考慮したものであり、乾燥能力を向上させながらも持続性および容器の物理的強度物性の維持を保つことが可能な、積層体、包装体を得ることが求められていた。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を克服するために考え出されたものであり、
請求項1記載の発明は、ポリオレフィン樹脂(樹脂A)50〜99wt%に対し、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物(樹脂B)を必須成分として含み、かつ吸湿性を有する樹脂(樹脂C)からなる樹脂組成物(樹脂B+樹脂C)相を1〜50wt%配合した事を特徴とする、透湿性ポリオレフィン樹脂組成物、としたものである。
【0033】
請求項2記載の発明は、吸湿性を有する樹脂(樹脂C)が、ポリ酢酸ビニルあるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分または完全けん化物、カルボキシメチルセルロースあるいはヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイドあるいはその誘導体、ポリアクリル酸あるいはそのナトリウムイオン塩、ポリエチレンイミンあるいはポリアリルアミンなどの塩基性窒素含有重合体、ポリエステル、ポリアミドである事を特徴とする、請求項1記載の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物、としたものである。
【0034】
請求項3記載の発明は、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物(樹脂B)が、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、あるいはこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属からなるイオン架橋物である事を特徴とする、請求項1または2記載の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物、としたものである。
【0035】
請求項4記載の発明は、ポリオレフィン樹脂(樹脂A)の透湿度A(g/24h/100μm)とし、透湿性ポリオレフィン樹脂組成物の透湿度B(g/24h/100μm)とした時の、透湿度B/透湿度Aが1.2以上である事を特徴とする、請求項1、2、または3記載の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物、としたものである。
【0036】
請求項5記載の発明は、密度0.930g/cm以下の低密度ポリエチレンあるいはエチレン−αオレフィン共重合体を必須成分として配合したポリオレフィン樹脂(樹脂D)100重量部に対し無機系乾燥剤1〜100重量部を配合した事を特徴とする乾燥能力を有する樹脂組成物、としたものである。
【0037】
請求項6記載の発明は、相対湿度90%雰囲気における、無機系乾燥剤の飽和吸水量が、自重に対し少なくとも10%以上であることを特徴とする、請求項5記載の乾燥能力を有する樹脂組成物、としたものである。
【0038】
請求項7記載の発明は、無機系乾燥剤がゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩化合物、アルミナ、活性炭、粘土鉱物、シリカゲルの少なくとも1種以上から選択されることを特徴とする、請求項5または6記載の乾燥能力を有する樹脂組成物、としたものである。
【0039】
請求項8記載の発明は、請求項1、2、3、または4記載の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物と請求項5、6、または7記載の乾燥能力を有する樹脂組成物を積層させた事を特徴とする、積層体、としたものである。
【0040】
請求項9記載の発明は、(透湿性ポリオレフィン樹脂組成物層)/(乾燥能力を有する樹脂組成物層)/(1層以上の樹脂層あるいは金属層)から構成される積層体で、1層以上の樹脂層が、ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはポリ酢酸ビニルの部分あるいは完全けん化物、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルム、オーバーコート層を設けた無機化合物蒸着フィルムなどの防湿層あるいは高酸素バリア層を設けたことを特徴とする請求項8記載の積層体、としたものである。
【0041】
請求項10記載の発明は、請求項8または9記載の積層体から形成された包装体、としたものである。
【0042】
請求項11記載の発明は、軟包装体として用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体、としたものである。
【0043】
請求項12記載の発明は、中空容器として用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体、としたものである。
【0044】
請求項13記載の発明は、トレーまたはカップとして用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体、としたものである。
【0045】
請求項14記載の発明は、複合紙容器として用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体、としたものである。
【0046】
請求項15記載の発明は、キャップとして用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体、としたものである。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0048】
本発明の乾燥能力を有する積層体あるいは包装体を得る為の構成は、(透湿性ポリオレフィン樹脂組成物)/(乾燥能力を有する樹脂組成物)/(防湿あるいは酸素バリア性を有する1層以上の層)が挙げられる。
【0049】
そこでこれらの機能としては、乾燥能力を有する樹脂組成物層は吸湿能力を、透湿性ポリオレフィン樹脂組成物は、乾燥能力を有する樹脂組成物層に包装体ヘッドスペース中の水分を高率良く輸送する機能を、防湿あるいは酸素バリア性を有する1層以上の層は、外部から侵入する酸素、水分を抑制する為に設けられる。
【0050】
透湿性ポリオレフィン樹脂組成物層は包装体の最内層に相当し、包装体ヘッドスペース中の水分を効率よく乾燥能力を有する樹脂組成物層に輸送する事が挙げられる。
【0051】
この樹脂組成物としては、ポリオレフィン樹脂である樹脂Aに、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物(樹脂B)を必須成分として含み、かつ吸湿性を有する樹脂(樹脂C)からなる樹脂組成物(樹脂B+樹脂C)相を1〜50wt%配合している。
【0052】
ポリオレフィン樹脂は防湿性に優れる材料であるが乾燥能力を付与するという点では、ポリオレフィンの防湿性と、乾燥剤により吸湿のコントロールを行う必要がある。吸湿しやすい材料を用いては、この吸湿の制御が困難であり、それ故ポリオレフィンの透湿性をコントロールする必要がある。
【0053】
樹脂Aとしては低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、αオレフィンがブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1などのエチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などのポリαオレフィン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどのαオレフィン−エチレン共重合体、あるいは2種以上のαオレフィンを共重合させたもの、例えばエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ブテン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−ヘキセン共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのエステル化物あるいはイオン架橋物、特にエチレン−(メタ)アクリル酸、エチレン(メタ)アクリル酸メチル、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル、エチレン−(メタ)アクリル酸n−ブチル、エチレン−(メタ)アクリル酸i−ブチル、エチレン−(メタ)アクリル酸t−ブチルやエチレン−酢酸ビニル共重合体も使用可能である。
【0054】
樹脂Bとしてはエチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物が必須成分として用いられる。
【0055】
このようなポリマーとしては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、あるいはこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属からなるイオン架橋物である。
【0056】
樹脂Cとしては吸湿性を有する樹脂が挙げられ、ポリ酢酸ビニルあるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分または完全けん化物、カルボキシメチルセルロースあるいはヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイドあるいはその融合体、ポリアクリル酸あるいはそのナトリウムイオン塩、ポリエチレンイミンあるいはポリアリルアミンなどの塩基性窒素含有重合体、ポリエステル、ポリアミドが挙げられる。
【0057】
樹脂Bと樹脂Cの配合組成としては、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物1〜99wt%に対し、吸水/吸湿性有機化合物を99〜1wt%配合したことを特徴とする。
【0058】
また樹脂Aを50〜99wt%に対し、(樹脂B+樹脂C)を1〜50wt%に設定する必要がある。これは樹脂Aを99wt%以上になれば(樹脂B+樹脂C)を配合する効果がなくなり、他方50wt%以下になれば成形加工性や乾燥能力を有する樹脂組成物層への接着性という問題点が発生するからである。
【0059】
この内容から、これらの材料の配合組成は任意に設定することが可能であり、求める透湿性に応じて設計することが可能である。
【0060】
また、材料組み合わせ的には加工性の低下等が伴う場合があるので、その場合は、加工性に応じて設定することも可能である。
【0061】
樹脂Bの役割は、樹脂Aと樹脂Cの相溶化材あるいは分散剤として作用する事である。
【0062】
エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物はイオン−双極子相互作用、イオン−イオン双極子作用などの分子間相互作用により、極性ポリマーとの相性に優れる材料である。
【0063】
また、エチレン系共重合体であることから、ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレンとも相性が良い。
【0064】
また、ポリアクリル酸(ナトリウム)やセルロース誘導体、あるいは高けん化度(けん化度98%以上)のポリ酢酸ビニルけん化物は、融点と分解点とのギャップが狭いこと、熱可塑性を示さないことから、単純にこれらの材料を樹脂Aに配合したとしても、分散性が極めて低く、外観不良を伴うばかりでなく、樹脂中の分散状態によっては、効率よく透湿機能を果たすことが困難になる。
【0065】
そのような意味で、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物は必須成分としてあげられる。
【0066】
特にα,β不飽和カルボン酸のコンテントに対し、より陽イオンで中和されていたものの方が、相溶化材、分散剤として有効である。
【0067】
その際、樹脂A、B、Cこれら3成分を単独でそれぞれ配合する(製法−1)ことも可能であるが、あらかじめ、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物と吸水/吸湿性有機化合物からなるコンパウンド(樹脂B+樹脂C)を作成し、さらに樹脂Aと配合した方が好ましい(製法−2)。
【0068】
この内容は、(製法−1)を用いた場合で図1に示すように樹脂A中においてエチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物と吸水/吸湿性有機化合物が独立して分散する可能性が有り、特に熱可塑性を示さない吸湿性有機化合物の場合は、ポリマー型フィラーとして分散されてしまう。
【0069】
一方、(製法−2)を用いることで、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物と吸水/吸湿性有機化合物からなるコンパウンド(樹脂B+樹脂C)が効率よく分散することが可能である(図2)。
【0070】
また、図2の状態をさらに各種成形方法によりアスペクト比を1よりも大にすることで、より効率よく透湿度の制御を行うことが可能である。
【0071】
透湿性の改善効果としては、ポリオレフィン樹脂(樹脂A)の透湿度A(g/24h/100μm)そして透湿性ポリオレフィン樹脂組成物の透湿度B(g/24h/100μm)とした時の、透湿度B/透湿度Aが1.2以上である事が好ましい。
【0072】
1.2より小さいものは透湿性の改善効果が低い。
【0073】
乾燥能力を有する樹脂組成物としては、吸湿性を改善させたポリオレフィン系樹脂組成物を透過する水分を捕獲する機能を有する。
【0074】
組成としては、密度0.930g/cm以下の低密度ポリエチレンあるいはエチレン−αオレフィン共重合体を必須成分として配合したポリオレフィン樹脂(樹脂D)100重量部に対し無機系乾燥剤1〜100重量部を配合したことを特徴とする。
【0075】
1重量部以下であれば、樹脂Dとしての効果がなくなり、他方、100重量部以上であれば成形加工性や強度物性の低下という問題点があり好ましくない。
【0076】
上記乾燥剤を配合する熱可塑性樹脂(樹脂D)としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、αオレフィンがブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1などのエチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などのポリαオレフィン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどのαオレフィン−エチレン共重合体、あるいは2種以上のαオレフィンを共重合させたもの、例えばエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ブテン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−ヘキセン共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのエステル化物あるいはイオン架橋物、特にエチレン−(メタ)アクリル酸、エチレン(メタ)アクリル酸メチル、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル、エチレン−(メタ)アクリル酸n−ブチル、エチレン−(メタ)アクリル酸i−ブチル、エチレン−(メタ)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。
【0077】
特に、これらのポリオレフィン樹脂(樹脂D)には、密度0.930g/cm以下の低密度ポリエチレンあるいはエチレン−αオレフィン共重合体を必須成分として配合している事が好ましく、より好ましくは密度0.910g/cm以下のエチレン−αオレフィン共重合体が挙げられる。
【0078】
さらに好ましくは、これらのエチレン−α−オレフィン共重合体がシクロペンタジエニル誘導体の周期律表第III、IV、V、VI、IX、X族遷移金属原子からなる錯体および、上記金属錯体に必要に応じてメチルアルミノキサンからなる、シングルサイト触媒を用いて得られたエチレン−αオレフィン共重合体が好ましい。
【0079】
このような触媒の例として、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリドにメチルアミノキサンを加えて得られたシングルサイト触媒(カミンスキー触媒)やその誘導体が挙げられる。
【0080】
金属としては特に、チタニウムやジルコニウムやハフニウムなどの周期律第IV族の遷移金属が用いられるが、特にこれらに限定されるものでない。
【0081】
また、上記触媒は、嵩高い2つのシクロペンタジエニル基に遷移金属が導入された構造を有するが、チタン系の幾何拘束触媒を用いることで、C6,C8、あるいはC9以上の高級αオレフィンや、シクロペンタジエンやノルボルネンなどの環状オレフィンをも導入することが可能であることから非常に好ましい。
【0082】
ただし、コモノマーとしてはαオレフィンが好ましい。
【0083】
このような、シングルサイト系触媒を用いる利点は以下の内容が上げられる。
【0084】
(1)分子量分布が狭い
(2)コモノマーの導入位置が制御しやすい。
【0085】
(3)ラメラ間に存在するタイ分子が多いため、引裂きなどに対する強度に優れる。
【0086】
(4)柔軟性を付与することが可能
(5)ストレスクラッキング耐性に優れる
(6)非晶領域が多い為、透湿性が良好である。
【0087】
また、密度が0.930g/cm以下、特に密度領域が0.850〜0.925g/cmのものは、ポリオレフィンエラストマーあるいはプラストマーの領域に入り、強度物性という点で非常に好ましい。
【0088】
また上述したように、水分はポリマーの非晶領域を通りやすい。
【0089】
その為、無機系乾燥剤を配合しているポリマーの透湿性を付与する事が可能である。
【0090】
特に、チタン系の幾何拘束触媒を用いることで、コモノマーの分布位置だけでなく、C9以上の高級αオレフィン(イオン重合における生成物)をコモノマーとして導入させることが可能であり、シングルサイト系触媒でありながら、低密度ポリエチレンのような長鎖分岐を構造中に取り込むことが可能である。
【0091】
この内容は、エチレン−αオレフィン共重合体でありながら溶融張力が大きい、せん断速度に対する溶融粘度の変化が顕著(高せん断で低粘度)など、各種成形加工に展開が可能である意味でも好ましい。
【0092】
また、詳細原理は不明であるが、シングルサイト系触媒によるエチレン−αオレフィン共重合体は無機化合物の分散性に優れる。
【0093】
特に上記密度範囲はなお有効である。
【0094】
このような強度物性、柔軟性、無機化合物分散性、成形性と言った点で、本材料系を配合することは非常に好ましい。
【0095】
高含量に無機系乾燥剤を配合した樹脂組成物はその強度物性の低下が懸念される。
【0096】
そこで、上述したエチレン−αオレフィン共重合体における曲げ弾性率も250MPa以下のものを用いる事で応力を繰り返すことによりクラックや強度物性の低下を抑制する事も可能である。
【0097】
無機系乾燥剤としては、乾燥効果を発揮させるためには、相対湿度90%雰囲気における、無機系乾燥剤の飽和吸水量が、自重に対し少なくとも10%以上であることが好ましく、特にゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩化合物、アルミナ、活性炭、粘土鉱物、シリカゲルの少なくとも1種以上から選択されるのが好ましい。
【0098】
分散性の向上あるいは酸化カルシウムのように吸湿により塩基性を呈するような化合物の場合には、必要に応じて表面処理を施しても構わない。
【0099】
その表面処理の具体例としては、飽和あるいは不飽和脂肪酸あるいはこれらの塩、アクリル酸あるいは無水マレイン酸などの酸成分により変性されたポリオレフィン系ワックス、さらには、潤滑油(軽質油、マシン油など)やシリコンオイルやシリコングリースに代表されるミネラルオイルで表面処理を施す事が挙げられ、シランカップリング剤などゾルゲル化剤を用いて形成されたシリカまたはアルミナ処理なども使用可能であり、種類を限定しない。
【0100】
上述した透湿性ポリオレフィン樹脂組成物あるいは乾燥能力を有する樹脂組成物は、必要に応じては上記以外の各種添加剤、酸化防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、分散剤など各種添加剤を配合してもかまわない。
【0101】
これらの乾燥能力を有する樹脂組成物の製造方法とし最も好ましい製法を以下に記載する。
【0102】
(1)乾燥能力を有する樹脂組成物の作成
最終製品の成形方法および必要とされる乾燥能力により設定した各種所定配合量の材料(樹脂巣Dと無機系乾燥剤)を、リボンミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサーなどを用いてドライブレンドし、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、バンバリーなどの混練機を用いて、ベースとなる熱可塑性樹脂にもよるが、融点以上280℃以下、好ましくは260℃以下、さらに好ましくは240℃以下で混練することで得られる。
【0103】
得られたストランドは空冷により冷却し、ペレタイズ後、アルミバッグなどの包装形態中で保管する。
【0104】
(2)透湿性ポリオレフィン樹脂組成物の作成
樹脂Bおよび樹脂Cをリボンミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサーなどを用いてドライブレンドしたものを単軸押出機、二軸押出機などの押出機、バンバリーなどの混練機を用いて、220℃以下で混練することで得られる。
【0105】
得られたストランドは空冷により冷却し、ペレタイズ後、アルミバッグなどの包装形態中で保管する。
【0106】
その後、各種成形法により樹脂Aと樹脂B+樹脂Cを配合して樹脂組成物層を得る。
【0107】
本発明の各々の樹脂組成物は、押出ラミネーション成形、押出キャスト成形、インフレーション成形、インジェクション成形、ダイレクトブロー成形など各種成形法を用いて積層体とすることが可能である。
【0108】
また上述した成形法で得られたフィルム(インフレーションなど)については後工程でドライラミネーションやウエットラミネーション、ノンソルベントラミネーションにより積層体を得ることも可能であり、またインジェクション成形で得られたプリフォームを延伸ブロー成形により多層延伸ブローボトルにすることも可能であるが、これらの成形法に限られるものではない。
【0109】
上述した積層体の例は、(透湿性ポリオレフィン樹脂組成物層)/(乾燥能力を有する樹脂組成物層)からなる例であるが、この構成は、乾燥能力は有するが、無機系乾燥剤が吸湿し飽和してしまうと、機能を発現しなくなる恐れがある。
【0110】
そのような意味で、本樹脂組成物を用いた積層体は少なくとも一層は、水分バリア性を有する材料を設けた方が好ましい。
【0111】
これらの材料としては、ポリオレフィン樹脂やポリビニリデンクロライドのようなバリアコート層を設けた基材を用いた方が良い。
【0112】
これらのバリア層を用いることで、これらのバリア層を僅かに透過した水分を吸収するだけでなく、包装体のヘッドスペースの湿度を低下させることが可能になる。
【0113】
また、高酸素バリア性の基材たとえばアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、シリカやアルミナの蒸着フィルム、ポリビニルアルコール系コーティング層を設けたシリカやアルミナの蒸着フィルムを用いる事で、水分吸収だけでなく酸素バリア性も付与する事が可能である。
【0114】
また当然の事ながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体などを設ける事で、軟包装やボトル用途にも展開可能である。
【0115】
つまり、(透湿性ポリオレフィン樹脂組成物層)/(乾燥能力を有する樹脂組成物層)/(1層以上の樹脂層あるいは金属層)とし、(1層以上の樹脂層あるいは金属層)としては防湿性あるいは酸素バリア性を有する層を用いた方が好ましい。
【0116】
積層体の例を以下に記載する。
【0117】
積層体の例に記載されている記号は、各々A:ポリオレフィン樹脂、B:ポリエステルフィルム、C:ポリビニリデンクロライドコート、D:アルミ箔、E:乾燥能力を有する樹脂組成物、F透湿性ポリオレフィン樹脂組成物、である。
【0118】
「構成例−1」
層構成:A/E/F
成形法:押出成形、射出成形、ブロー成形、など
用途:シート、中空容器、カップ、トレーなど
【0119】
「構成例−2」
層構成:B/C/接着剤/A/E/F
成形法:押出/ドライラミネートなど
用途:軟包装体、蓋材
【0120】
「構成例−3」
層構成:B/接着剤/D/接着剤/A/E/F
成形法:同上
用途:同上
【0121】
「構成例−4」
層構成:紙/A/D/接着剤/A/E/F
成形法:押出ラミネートなど
用途:複合紙容器など
【0122】
Bのポリエステルフィルムについては、Cのコート層ではなく、アルミ蒸着やシリカ、アルミナ蒸着あるいはさらにバリア性を付与する為にポリビニルアルコール系オーバーコート層を設けた高酸素ガスバリアフィルムでも構わない。
【0123】
上述したように、様々な構成で得られた積層体は、そのまま各種用途の包装体へ展開することが可能である。
【0124】
これらの例は上述した内容にかぎられないで、様々な包装形態へ展開が可能になる。
【0125】
また、これらの包装形態を組み合わせることで、水分を吸収し、乾燥能力を有する包装体を形成することが可能になる。
【0126】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、それに限定されるものではない。
【0127】
[透湿性ポリオレフィン樹脂組成物の作成:材料]
以下の材料を用いた。
【0128】
<樹脂A>
A−1:低密度ポリエチレン(MI=4、曲げ弾性率200MPa、密度0.915g/cm
<樹脂B>
B−1:Na−アイオノマー
<樹脂C>
C−1:ポリビニルアルコール(けん化度50〜70%)
C−2:ポリアクリル酸ナトリウム
【0129】
[透湿性ポリオレフィン樹脂組成物の作成:製造]
以下の実施例に示す配合組成になるように調整した樹脂Aと樹脂Bと樹脂Cのうち、樹脂Bと樹脂Cについては事前に2軸押出機(φ=30,L/D=49)により吐出9kg、200℃、50rpmでコンパウンドを行った。
【0130】
得られたコンパウンドは空冷ペレタイズを行い、アルミ包装体に保管した(不活性ガス置換済み)。
【0131】
その後、以下の実施例に示す成形法で最終的に樹脂Aと樹脂Bと樹脂Cからなる樹脂組成物を作成した。
【0132】
[透湿性ポリオレフィン樹脂組成物の評価法]
小型フィルム製膜装置(加工温度200℃)で100μm厚の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物フィルムを作成した。
【0133】
その際には樹脂Aと樹脂B+樹脂Cを所定量になるようにドライブレンドしたものをそのままフィルム製膜に用いた。
【0134】
その単膜を、100×200mm四方にサンプリングし、テフロン(R)デュポン社登録商標)シートを保護フィルムとしてヒートシールを施す事で、単膜からなるパウチを作成した。
【0135】
そのパウチ中に塩化カルシウムを所定量充填し、40℃−90%R.H.保管による透湿性の評価を行った。
【0136】
この時得られたデータをm換算した時の透湿度を求めた。
【0137】
また、目視による分散性も確認した。
【0138】
評価結果を表1に示す。
【0139】
【表1】



【0140】
<実施例1>
A−1/B−1/C−1=80/14/6に調整した。
【0141】
<実施例2>
A−1/B−1/C−1=80/10/10に調整した。
【0142】
<実施例3>
A−1/B−1/C−1=80/6/14に調整した。
【0143】
<実施例4>
A−1/B−1/C−2=80/14/6に調整した。
【0144】
<比較例1>
A−1のみを用いた。
【0145】
<比較例2>
実施例4のうちB−1を用いなかった。
【0146】
[乾燥能力を有する樹脂組成物の作成:材料]
<ポリオレフィン樹脂>
D−1:シングルサイト エチレン−ヘキセン−1共重合体(MI=25、曲げ弾性率80MPa、密度0.901g/cm
D−2:低密度ポリエチレン(MI=20、曲げ弾性率160MPa、密度0.915g/cm
【0147】
<乾燥剤>
DRY−1:酸化カルシウム(ミネラルオイル表面処理品)
DRY−2:ゼオライト
【0148】
[乾燥能力を有する樹脂組成物の作成:製造]
あらかじめ、ポリオレフィン樹脂60wt%に対し、乾燥剤40wt%になるように調整した混合物を2軸押出機(φ=30,L/D=49)により吐出9kg、200℃、50rpmでコンパウンドを行った(ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、乾燥剤67重量部)。
【0149】
その後空冷ペレタイズを行い、アルミ包装体に保管した(不活性ガス置換済み)。
【0150】
[乾燥能力を有する樹脂組成物の評価]
射出成形機を用いる事で、全長42mm口径20mmの乾燥容器(図3)を試作した(210℃)。
【0151】
その容器の40℃−90%保管時による容器吸湿量を測定した。
【0152】
また、この容器をテンシロン(クロスヘッドスピード20mm/min.)にて座屈強度評価を行った時の降伏点強度を求め、柔軟性および容器破壊挙動を観察した。
【0153】
評価結果を表2および図4に示す。
【0154】
【表2】



【0155】
<実施例5>
ポリオレフィン樹脂60wt%の内訳としてD−1/D−2=20/40になるように調整し、乾燥剤としてDRY−1を用いた。
【0156】
<実施例6>
ポリオレフィン樹脂60wt%の内訳としてD−1/D−2=30/30になるように調整し、乾燥剤としてDRY−1を用いた。
【0157】
<実施例7>
ポリオレフィン樹脂60wt%の内訳としてD−1/D−2=40/20になるように調整し、乾燥剤としてDRY−1を用いた。
【0158】
<実施例8>
実施例7において、乾燥剤をDRY−2を用いた。
【0159】
<比較例3>
ポリオレフィン樹脂60wt%の内訳としてD−1/D−2=0/60になるように調整し、乾燥剤としてDRY−1を用いた。
【0160】
<比較例4>
乾燥剤を用いなかった以外は実施例8と同じである。
【0161】
<積層体及び包装体の作成>
共射出成形あるいは共押出キャスト成形により、容器およびフィルムを作成した。
【0162】
その際、双方の樹脂組成物で用いたポリオレフィン樹脂は、その成形法に見合った粘度のものを選定し、曲げ弾性率あるいは密度については上記実施例のものと近いものを選定している。
【0163】
共射出成形では、図5に示す容器を設計した。
【0164】
この容器をあらかじめ防湿性の優れるポリプロピレン樹脂を用いて図6に示すスクリューキャップ型容器を作成し、図5および図6に示す容器を別工程で一体化させる事で容器を作成した。
【0165】
この容器はキャップと図6に示す容器が密封性を向上させる構造になっており、キャップを閉めることで図5に示す容器にキャップが食い込み、図5の容器が変形するようになっている。
【0166】
容器サイズは乾燥能力を有する樹脂組成物については同じであり、その内側に透湿性ポリオレフィン樹脂組成物層が積層された構造を有する。
【0167】
また、共押出キャスト成形では、図5に示す容器と同様の積層構造を有する積層体を作成した後防湿包装を施し、その後、ポリエステルフィルムにアルミナ蒸着およびバリア性向上の為のオーバーコート層を設けた蒸着フィルムとドライラミネート手法により積層化させ、軟包装体を作成した(図7)。
【0168】
軟包装体のサイズは100×200mmである。
【0169】
<積層体及び包装体の評価方法>
共射出成形品は、キャップ部分に穴を開け、その穴に湿度センサーを設けた後密封処理を施した。
【0170】
容器内には湿度90%の空気を充填し、その中の容器の湿度変化を観察した。
【0171】
またキャップを50回開閉作業を行った時の図5に示す容器の破壊挙動を観察した。
【0172】
軟包装体についても湿度センサーを用いた、包装体内の湿度変化を観察した。
【0173】
この結果を表3および図8に示す。
【0174】
【表3】



【0175】
表3、図8におけるデータは、図6に示す容器で得られた結果であるが、容器内湿度変化については軟包装体も同様な結果が得られた。
【0176】
<実施例9>
実施例3と実施例7を組み合わせた射出成形による積層容器、および積層軟包装体をそれぞれ作成した。
【0177】
<実施例10>
実施例3と実施例8を組み合わせた射出成形による積層容器、および積層軟包装体をそれぞれ作成した。
【0178】
<比較例5>
実施例3においてB−1を用いない組成物と(A−1/B−1/C−1=86/0/14)と実施例7を組み合わせた射出成形による積層容器、および積層軟包装体をそれぞれ作成した。
【0179】
<比較例6>
実施例3においてB−1を用いない組成物と(A−1/B−1/C−1=86/0/14)と比較例3を組み合わせた射出成形による積層容器、および積層軟包装体をそれぞれ作成した。
【0180】
<比較例7>
比較例1と実施例7を組み合わせた射出成形による積層容器、および積層軟包装体をそれぞれ作成した。
【0181】
【発明の効果】
実施例および比較例の内容から、透湿性ポリオレフィン樹脂組成物層は、ポリオレフィン樹脂の透湿性を向上させるだけでなく、樹脂B配合による相溶性または分散性の効果や容器強度物性の向上が確認される。
【0182】
また、乾燥能力を有する樹脂組成物については、柔軟性を付与する事が可能なエチレン−αオレフィン共重合体を用いる事で、容器柔軟性を付与する事が可能なだけでなく、容器破壊の低減や乾燥速度の向上に貢献している事が確認される。
【0183】
また、これらの樹脂組成物を組み合わせる事で得られた積層体や容器は、優れた乾燥能力を有するだけでなく、容器外側に相当する各種バリア層の存在の効果で、乾燥能力が長続きさせる事も可能であり、さらには実施例に示す構成にする事で酸素バリア性も付与する事が可能である。
【0184】
従来の乾燥能力や透湿性を改善させる為の手法としては、単に乾燥剤や吸湿剤を配合するに過ぎなかったが、本発明に示す樹脂組成を用いる事で、単純配合では得られなかった強度物性や乾燥速度の向上といった機能を付与する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】製法1で得られた樹脂組成物中の配合物の分散状態の模式図である。
【図2】製法2で得られた樹脂組成物中の配合物の分散状態の模式図である。
【図3】実施例5〜8で用いた容器の模式図である。
【図4】容器吸湿能力を示すグラフである。
【図5】透湿性ポリオレフィン樹脂組成物と乾燥能力を有する樹脂組成物から作成した容器である。
【図6】図5の容器を用いた複合容器である。
【図7】軟包装への展開を考慮した図である。
【図8】容器内の湿度変化を示す図である。
【符号の説明】
a:透湿性ポリオレフィン樹脂組成物のベース樹脂(樹脂A)
b:エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物(樹脂B)
c:吸湿性を有する樹脂(樹脂C)
d:樹脂Bと樹脂Cの複合物
e:乾燥能力を有する樹脂組成物
f:乾燥能力を有する樹脂組成物のベース樹脂(樹脂D)
g:乾燥剤
h:透湿性ポリオレフィン樹脂組成物
i:容器とキャップの密封部である容器応力集中部
j:バリア層を含む一層以上の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(樹脂A)50〜99wt%に対し、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物(樹脂B)を必須成分として含み、かつ吸湿性を有する樹脂(樹脂C)からなる樹脂組成物(樹脂B+樹脂C)相を1〜50wt%配合した事を特徴とする、透湿性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
吸湿性を有する樹脂(樹脂C)が、ポリ酢酸ビニルあるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分または完全けん化物、カルボキシメチルセルロースあるいはヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイドあるいはその誘導体、ポリアクリル酸あるいはそのナトリウムイオン塩、ポリエチレンイミンあるいはポリアリルアミンなどの塩基性窒素含有重合体、ポリエステル、ポリアミドである事を特徴とする、請求項1記載の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのイオン架橋物(樹脂B)が、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、あるいはこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属からなるイオン架橋物である事を特徴とする、請求項1または2記載の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂(樹脂A)の透湿度A(g/24h/100μm)とし、透湿性ポリオレフィン樹脂組成物の透湿度B(g/24h/100μm)とした時の、透湿度B/透湿度Aが1.2以上である事を特徴とする、請求項1、2、または3記載の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
密度0.930g/cm以下の低密度ポリエチレンあるいはエチレン−αオレフィン共重合体を必須成分として配合したポリオレフィン樹脂(樹脂D)100重量部に対し無機系乾燥剤1〜100重量部を配合した事を特徴とする乾燥能力を有する樹脂組成物。
【請求項6】
相対湿度90%雰囲気における、無機系乾燥剤の飽和吸水量が、自重に対し少なくとも10%以上であることを特徴とする、請求項5記載の乾燥能力を有する樹脂組成物。
【請求項7】
無機系乾燥剤がゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩化合物、アルミナ、活性炭、粘土鉱物、シリカゲルの少なくとも1種以上から選択されることを特徴とする、請求項5または6記載の乾燥能力を有する樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1、2、3、または4記載の透湿性ポリオレフィン樹脂組成物と請求項5、6、または7記載の乾燥能力を有する樹脂組成物を積層させた事を特徴とする、積層体。
【請求項9】
(透湿性ポリオレフィン樹脂組成物層)/(乾燥能力を有する樹脂組成物層)/(1層以上の樹脂層あるいは金属層)から構成される積層体で、1層以上の樹脂層が、ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはポリ酢酸ビニルの部分あるいは完全けん化物、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルム、オーバーコート層を設けた無機化合物蒸着フィルムなどの防湿層あるいは高酸素バリア層を設けたことを特徴とする請求項8記載の積層体。
【請求項10】
請求項8または9記載の積層体から形成された包装体。
【請求項11】
軟包装体として用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体。
【請求項12】
中空容器として用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体。
【請求項13】
トレーまたはカップとして用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体。
【請求項14】
複合紙容器として用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体。
【請求項15】
キャップとして用いられることを特徴とする、請求項10記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2004−142799(P2004−142799A)
【公開日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−310826(P2002−310826)
【出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】