説明

透過型スクリーン用素材およびこれを用いた透過型スクリーンの作製方法

【課題】隠蔽性を有する画像部分と、光透過性を有し投映映像を観察できる部分とを容易に形成可能であり、かつ強度も十分に優れる透過型スクリーン用素材を提供する。
【解決手段】透過型スクリーン1の一方の面に、カッティング及び剥離可能な隠蔽層2を有することを特徴とする透過型スクリーン用素材3。透過型スクリーン1の厚みは50μm〜500μmであることが好ましく、隠蔽層2の厚みは1μm〜250μmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽性を有する画像部分と、光透過性を有し投映映像を観察できる部分とを容易に形成可能な透過型スクリーン用素材に関する。また本発明は、前記スクリーン用素材を用いた透過型スクリーンの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型スクリーンは、背面から映像を投映するため光透過性を有する。このような透過型スクリーンは、レンズシートを用いたものや、光散乱層を用いたものなど様々なものがある(特許文献1、2)。
【0003】
このような透過型スクリーンは、映し出される映像にアクセントをつけるため、スクリーンの一部に画像を記録することがある。
【0004】
【特許文献1】特開2007−94067号公報
【特許文献2】特開2001−242546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、透過型スクリーンに画像を記録する場合、画像部分に隠蔽性を付与することが難しく、画像部分からプロジェクタの光が透過し、狙い通りの効果を得ることができないという問題がある。
【0006】
かかる問題は、記録を2回に分けること(例えば、1回目は隠蔽性の強い白色や黒色で画像を形成し、2回目に他の色を重ねる)などにより解消し得るが、作業性に劣ったり、隠蔽性を付与するためインクを厚く塗る必要があることから、スクリーンの巻き取り時などにインクが剥がれ落ちやすいという問題がある。
【0007】
上記問題を解決する手段として、隠蔽性を有する基材に画像を記録し、映像を投映したい部分を切り抜き、当該部分に透過型スクリーンを貼り付ける手段が考えられる。
【0008】
しかし、この場合、スクリーン自身の重力や、スクリーンを引っ張る張力により、切り抜いた部分に負荷が集中し、スクリーンの強度(特に、隠蔽性を有する基材の強度)が不足するという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、隠蔽性を有する画像部分と、光透過性を有し投映映像を観察できる部分とを容易に形成可能であり、かつ強度も十分に優れる透過型スクリーン用素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の透過型スクリーン用素材は、透過型スクリーンの一方の面に、カッティング及び剥離可能な隠蔽層を有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の透過型スクリーン用素材は、前記隠蔽層が少なくとも金属薄膜層からなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の透過型スクリーンの作製方法は、本発明の透過型スクリーン用素材の一方の面に画像を記録した後、隠蔽層の一部をカッティング、剥離して、隠蔽層のない投映可能な部分と、隠蔽層を背景に持つ画像部分とを形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の透過型スクリーン用素材によれば、隠蔽性を有する画像部分と、光透過性を有し投映映像を観察できる部分とを有する透過型スクリーンを容易に形成可能であり、かつ得られた透過型スクリーンの強度も十分なものとすることができる。
【0014】
また、本発明の透過型スクリーンの作製方法によれば、上記効果を有する透過型スクリーンを容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の透過型スクリーン用素材について説明する。本発明の透過型スクリーン用素材は、透過型スクリーンの一方の面に、カッティング及び剥離可能な隠蔽層を有することを特徴とするものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0016】
図1〜3に、本発明の透過型スクリーン用素材3の実施の形態を示す。図1は、光散乱層12(透過型スクリーン1)上に隠蔽層2を有するものである。図2は、透明基材11上に光散乱層12を有する透過型スクリーン1の透明基材11側の面に隠蔽層2を有するものである。図3は、透明基材11上に光散乱層12を有する透過型スクリーン1の光散乱層12側の面に隠蔽層2を有するものである。
【0017】
透過型スクリーンとしては、汎用の透過型スクリーンを用いることができる。例えば、特開2007−94067号のように、フレネルレンズシートおよびレンチキュラーレンズシートを組み合わせてなるもの、特開2001−242546号のように、光散乱層を有するものなどがあげられる。本発明においては、画像記録時の通紙性や画像記録適性の観点から、光散乱層を有するものが好適である。
【0018】
光散乱層を有するタイプの透過型スクリーンは、図1のように、光散乱層単層のもの、図2、3のように、透明基材上に光散乱層を有するものがあげられる。
【0019】
光散乱層を有するタイプの場合、投映された映像の視認性を良好にするため、光散乱層のヘーズ(JIS K7136:2000)が20%以上、全光線透過率(JIS K7361−1:1997)が70%以上であることが好ましい。ヘーズや全光線透過率は、光散乱層に含まれる微粒子の含有量や光散乱層の厚みにより調整することができる。
【0020】
透過型スクリーンは、画像記録時の通紙性や、重力や張力に耐え得る強度という観点から、厚みが50〜500μm程度であることが好ましい。
【0021】
隠蔽層は、透過型スクリーンの一方の面に設けられ、カッティング及び剥離可能であることが必要である。本発明では、このような隠蔽層を有することから、隠蔽性を有する部分と、光透過性を有し投映映像を観察できる部分とを兼ね備えることができる。なお、隠蔽層は、必要に応じて透過型スクリーンの両面に設けられていてもよい。
【0022】
隠蔽層は、着色層や金属薄膜層などの隠蔽性に寄与する層の単独であってもよいし、隠蔽性に寄与する層を相互に積層したものであってもよいし、隠蔽性に寄与する層以外の層を含むものであってもよい。このような隠蔽層は、少なくとも金属薄膜層からなることが好ましい。隠蔽層の構成要素として金属薄膜層を含むことにより、隠蔽力を十分にするための隠蔽層の厚みを薄くできることから、隠蔽層のカッティング適性や隠蔽層をカッティング・剥離した後の透過型スクリーン用素材の平面性を良好なものとすることができる。
【0023】
着色層は、主として合成樹脂と着色剤とから構成される。着色層を構成する樹脂としては、ビニル系、酢酸ビニル系、ポリウレタン系、ゴム系、ポリエステル系、アルキッド系、ポリオレフィン系、シリコーン系、セルロース系等の樹脂を1種または2種以上混合したものが使用できる。着色剤としては、染料や有機顔料、無機顔料等さまざまなものを使用できる。隠蔽層を白色にする場合、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪素酸化物、カオリン、クレーがあげられる。着色層の厚みは1〜250μmであることが好ましい。
【0024】
金属薄膜層は、アルミニウム、亜鉛、金、銀、銅、ニッケル等の公知の金属および金属化合物からなる材料を用いて、真空蒸着、スパッタリング、無電解メッキ又はこれと電解メッキとの組み合わせなどにより薄膜に形成したり、あるいは前記金属や金属化合物からなる材料を薄く引き延ばして金属箔とすることなどにより得ることができる。これら金属薄膜層の中でも、厚みを薄くできるという点で、真空蒸着、スパッタリング、無電解メッキ又はこれと電解メッキとの組み合わせにより形成した薄膜が好ましい。金属薄膜層の厚みは、10〜1000nmであることが好ましく、10〜300nmであることがより好ましい。
【0025】
隠蔽層を剥離可能とするには、透過型スクリーンを構成する素材に応じて隠蔽層を構成する樹脂を選択し、隠蔽層と透過型スクリーンとの接着力が強くなり過ぎないようにしたり、あるいは隠蔽層と透過型スクリーンとの間に、後述するような接着層や剥離調整層を設ける手段があげられる。
【0026】
隠蔽層の全体厚みは下限として1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。1μm以上とすることにより剥離することができ、5μm以上とすることにより剥離する際に層が破れにくくすることができ、20μm以上とすることにより隠蔽性を出しやすく剥離もしやすくすることができる。隠蔽層の全体厚みは上限としては250μm以下、好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm以下である。250μm以下とすることにより印刷時の通紙性に悪影響を与えづらくすることができ、100μm以下とすることにより剥離する部分をカッティングし易くすることができ、50μm以下とすることによりカッティング性がよく、カッティングマシンの刃の摩耗も少なくすることができる。
【0027】
なお、透過型スクリーンと隠蔽層との間に剥離可能な接着層を有する構成であってもよい。この場合、隠蔽層を剥離する際に、当該接着層が当該隠蔽層と同時に剥離される構成と、透過型スクリーン上に残る構成とが考えられるが、接着成分を表面に露出させないため前者の構成が好ましい。
【0028】
接着層を構成する樹脂としては、天然もしくは合成ゴム等のゴム系樹脂、塩ビ/酢ビ共重合体等のビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が使用でき、その他、ワックス、可塑剤、粘着増強剤を添加し接着性をコントロールするようにしてもよい。さらに接着剤としての性能を損なわない程度に界面活性剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤等や隠蔽層に含まれる着色剤を添加することもできる。接着層の厚みは一概には言えないが、下限として0.5μm以上、好ましくは1μm以上、上限として50μm以下、好ましくは10μm以下である。材料にもよるが0.5μm以上とすることにより、良好な接着性が得やすく、50μm以下とすることにより、カッティング適性を良好にでき、また、接着剤が切り口からはみ出しにくくすることができる。
【0029】
さらに、隠蔽層、接着層、透過型スクリーンとの間に、接着力をコントロールするために剥離調整層を設けることも有用である。
【0030】
透過型スクリーン用素材は少なくとも一方の面に画像を記録する。したがって、透過型スクリーン用素材の少なくとも一方の面は、画像記録に好適な公知の処理が施されていることが好ましい。例えば、図1および図2の構成の場合、光散乱層12又は隠蔽層2を画像記録に好適な材料から形成すること、図3の構成の場合、隠蔽層2又は透明基材11を画像記録に好適な材料から形成することが好ましい。画像記録は、オフセット印刷機、スクリーン印刷機、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、PPC複写機などを用いて行うことができる。
【0031】
次に、本発明の透過型スクリーンの作製方法の実施の形態を説明する。本発明の透過型スクリーンの作製方法は、上述した本発明の透過型スクリーン用素材の一方の面に画像を記録した後、隠蔽層の一部をカッティング、剥離して、隠蔽層のない投映可能な部分と、隠蔽層を背景に持つ画像部分とを形成することを特徴とするものである。
【0032】
まず、上述した本発明の透過型スクリーン用素材の一方の面に画像4を記録する(図4a)。画像記録は、用いる透過型スクリーン用素材や隠蔽層の記録特性等を考慮し、オフセット印刷機、スクリーン印刷機、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、PPC複写機などから適宜選択して行うことができる。
【0033】
次に、隠蔽層2の一部をカッティングする(図4b)。カッティングの範囲は、映像を投映したい範囲に対応させる。隠蔽層と透過型スクリーンとの間に接着層や剥離調整層等が介在する場合には、必要に応じてこれらの層もカッティングする。カッティングは、カッターを用いて手作業で行ってもよいし、カッティングマシンを用いた機械作業で行ってもよい。また、1箇所に限られず、複数箇所をカッティングしてもよい。
【0034】
次に、カッティングした範囲の隠蔽層2を剥離する(図4c)。隠蔽層と透過型スクリーンとの間に接着層や剥離調整層等が介在する場合には、必要に応じてこれらの層も剥離する。剥離作業は、カッティングラインにカッターの先端などの鋭利な物をあて、当該鋭利な物を上方に起こすことにより、隠蔽層の端部をはね起こし、これをきっかけにして剥離を行う手段があげられる。また、隠蔽層に接着力の強い接着シート(隠蔽層と透過型スクリーンとの接着力より、接着シートと隠蔽層との接着力が強くなる接着シート)を貼り合わせ、接着シートとともに隠蔽層を剥離する手段があげられる。
【0035】
このような作業により、隠蔽層を背景に持つ画像部分(隠蔽性を有する画像部分)と、隠蔽層のない投映可能な部分(光透過性を有し投映映像を観察できる部分)とを兼ね備える透過型スクリーンを作製することができる。
【0036】
なお、得られた透過型スクリーンは、画像を記録した側の面を視認者側(プロジェクタとは反対側)に向けて使用することが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0038】
[実施例1]
白色ポリ塩化ビニルフィルムの一方の面に剥離可能な接着層を有してなるシート(LAGマウントG・IJ P-224RW:リンテック社、フィルムの厚み80μm、接着層の厚み約20μm)の接着層と、透過型スクリーン(ケミカルマットPBB:きもと社、厚み125μm)とを貼り合わせ、実施例1の透過型スクリーン用素材を得た。
【0039】
[実施例2]
白色ポリ塩化ビニルフィルムの一方の面に剥離可能な接着層を有してなるシート(lettaxプリントシリーズ KJR101STG:キヌガワ社、フィルムの厚み100μm、接着層の厚み約25μm)の接着層と、透過型スクリーン(ケミカルマットPBB:きもと社、厚み125μm)とを貼り合わせ、実施例2の透過型スクリーン用素材を得た。
【0040】
[実施例3]
インクジェット用白色ポリエステルフィルム(LS光沢白PET:桜井社、フィルム厚み100μm)の一方の面に、タミヤ社のタミヤカラーアクリルつや消し黒(商品名)を用いて厚み10μmの黒色層を形成し、次いで、黒色層上に、ステンレス板180度剥離試験にて150g/25mmの接着力に調整したアクリル接着剤を用いて、厚み20μmの剥離可能な接着層を形成し、次いで、接着層と透過型スクリーン(ケミカルマットPBB:きもと社、厚み125μm)とを貼り合わせ、実施例3の透過型スクリーン用素材を得た。
【0041】
[実施例4]
インクジェット用白色ポリエステルフィルム(LS光沢白PET:桜井社、フィルム厚み100μm)の一方の面に、厚み100nmのアルミ蒸着膜を形成し、次いで、蒸着膜上に、ステンレス板180度剥離試験にて150g/25mmの接着力に調整したアクリル接着剤を用いて、厚み20μmの剥離可能な接着層を形成し、次いで、接着層と透過型スクリーン(ケミカルマットPBB:きもと社、厚み125μm)とを貼り合わせ、実施例4の透過型スクリーン用素材を得た。
【0042】
実施例1〜4で得られた透過型スクリーン用素材の白色フィルム側の面に、インクジェットプリンタ(SOLJET SC−500:ローランド社)を用いて画像を記録した。次いで、カッターを用いて、映像を投映したい範囲の隠蔽層(白色フィルム、黒色層、アルミ蒸着膜)および接着層をカッティングし、隠蔽層および接着層を透過型スクリーンから剥離し、透過型スクリーンを得た。
【0043】
このようにして得られた透過型スクリーンに、画像を記録した側(白色フィルム側)とは反対側から明るさ2000ルーメンのプロジェクタにより映像を投映したところ、隠蔽層および接着層を剥離した箇所では良好な映像を視認することができた。また、剥離した箇所以外の箇所は、十分な隠蔽性を有し、インクジェットプリンタで記録した画像が、プロジェクタの光の影響を受けることなく良好な状態で視認することができた。
【0044】
また、得られた透過型スクリーンは、天井から吊り下げたり、しわが寄らないように四方に引っ張った際も破れたりすることなく、強度も十分なものであった。
【0045】
特に、実施例4の透過型スクリーン用素材から得られた透過型スクリーンはアルミ蒸着膜を有することから、明るさ4000ルーメンのプロジェクタにより映像を投映した場合でも、剥離した箇所以外の箇所が十分な隠蔽性を有し、インクジェットプリンタで記録した画像が、プロジェクタの光の影響を受けることなく良好な状態で視認することができた。
【0046】
なお、実施例3の透過型スクリーン用素材から得られた透過型スクリーンは、黒色層の影響により地肌部が若干黒ずんでいた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の透過型スクリーン用素材の一実施例を示す断面図
【図2】本発明の透過型スクリーン用素材の他の実施例を示す断面図
【図3】本発明の透過型スクリーン用素材の他の実施例を示す断面図
【図4】本発明の透過型スクリーン作製方法の工程を示す図
【符号の説明】
【0048】
11・・・透明基材
12・・・光散乱層
1・・・・透過型スクリーン
2・・・・隠蔽層
3・・・・透過型スクリーン用素材
4・・・・画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型スクリーンの一方の面に、カッティング及び剥離可能な隠蔽層を有することを特徴とする透過型スクリーン用素材。
【請求項2】
前記隠蔽層が少なくとも金属薄膜層からなることを特徴とする請求項1記載の透過型スクリーン用素材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の透過型スクリーン用素材の一方の面に画像を記録した後、隠蔽層の一部をカッティング、剥離して、隠蔽層のない投映可能な部分と、隠蔽層を背景に持つ画像部分とを形成することを特徴とする透過型スクリーンの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−20473(P2009−20473A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201868(P2007−201868)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】