説明

透過照明装置、それを備えた顕微鏡、及び透過照明方法

【課題】簡単な構成で、培養環境を一定に保ちながら、透過照明観察を行うことのできる透過照明装置、それを備えた顕微鏡、及び透過照明方法を提供する。
【解決手段】筐体1の外部に配置された照明用光源5と、筐体1の内部に配置された、照明用光源5からの光を試料10側に導く落射照明光学系3aと、落射照明光学系3aからの光を試料10上に集光する対物レンズ3bと、試料10を挟んで対物レンズ3bと対向する位置に配置されたコンデンサレンズ3cと、コンデンサレンズ3cの前側焦点位置近傍に配置された反射部材3dとを備え、反射部材3dからの反射光を用いて試料10を透過照明するように構成する。コンデンサレンズ3cの前側焦点位置にリングスリット8を配置するとともに、対物レンズ3bの瞳位置に位相板9を配置する。光学部材3c,3d,8が、細胞培養庫2の筐体2aの内部に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インキュベータなどの細胞培養環境下で、培養細胞の観察を行うために用いるそれを備えた顕微鏡、及び透過照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、幹細胞培養など、細胞を大量に培養することが求められてきている。そして、従来、細胞を培養するための細胞培養装置として、インキュベータが使用されている。
インキュベータは、例えば、温度が約37℃、湿度が約95%、CO2の濃度が約5%等の一定の雰囲気に保たれた培養環境下で、無菌状態の環境を維持し、細胞を培養するように構成された装置である。
そして、従来、培養した細胞の標本を可視化して、細胞の活性や形態の観察を行うためには、インキュベータ内で培養した細胞標本をインキュベータから外部に取り出して、顕微鏡下で位相差観察等などの観察手法が用いられている。
しかしながら、このような観察手法では、培養細胞をインキュベータから外部に取り出すときに人手を介するため、コンタミの影響を受けることがあった。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、従来、培養細胞を外部に取り出すことなくインキュベータ内で観察するための技術が例えば、次の特許文献1において提案されている。
【特許文献1】特公平3−57744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
培養細胞を外部に取り出すことなくインキュベータ内で観察する場合、透過照明系の光源をインキュベータの内部に配置すると、光源が熱源として作用してしまうことになるため、培養環境の温度、湿度を一定に保つのが困難になる。
しかるに、特許文献1に記載の技術では、インキュベータ装置を改造して、光源を培養環境下には配置しない構成を採用している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、培養細胞の上方に配置された光源から照明光を照射し、培養細胞を透過した光を観察することができるように、透過照明光学系が配置されている。これでは、透過照明光学系の設置が煩雑となるので好ましくない。また、特許文献1に記載の技術では、光源を培養環境下には配置してはいないものの、インキュベータの筐体内に備えた構成となっている。このため、特許文献1に記載の技術においても、光源が熱源として機能し、培養環境の温度変化を招く要因となりやすい。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、培養環境を一定に保ちながら、透過照明観察を行うことのできる透過照明装置、それを備えた顕微鏡、及び透過照明方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による透過照明装置は、筐体の外部に配置された照明用光源と、筐体の内部に配置された、前記照明用光源からの光を試料側に導く落射照明光学系と、前記落射照明光学系からの光を試料上に集光する対物レンズと、前記試料を挟んで前記対物レンズと対向する位置に配置されたコンデンサレンズと、前記コンデンサレンズの前側焦点位置近傍に配置された反射部材とを備え、前記反射部材からの反射光を用いて前記試料を透過照明するようにしたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の透過照明装置においては、前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置のいずれかに、リングスリットを配置するとともに、前記対物レンズの瞳位置に、位相板を配置するのが好ましい。
【0009】
また、本発明の透過照明装置においては、前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置の両方に、リングスリットを配置するとともに、前記対物レンズの瞳位置に、位相板を配置するのが好ましい。
【0010】
また、本発明の透過照明装置においては、前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置のいずれかに、リングスリットを配置するとともに、前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置に、位相板を配置するのが好ましい。
【0011】
また、本発明の透過照明装置においては、前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置の両方に、リングスリットを配置するとともに、前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置に、位相板を配置するのが好ましい。
【0012】
また、本発明の透過照明装置においては、前記試料と前記反射部材との間に、λ/4板を配置し、落射照明光の光路上に、偏光子を配置し、透過照明光の光路上に、検光子を配置するのが好ましい。
【0013】
また、本発明の透過照明装置においては、前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、前記照明位置に移動した試料から前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されているのが好ましい。
【0014】
また、本発明の透過照明装置においては、前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、前記位相板から前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されているのが好ましい。
【0015】
また、本発明の透過照明装置においては、前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、前記対物レンズから前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されているのが好ましい。
【0016】
また、本発明による顕微鏡は、上記本発明によるいずれかの透過照明装置を備えている。
【0017】
また、本発明による顕微鏡は、上記本発明によるいずれかの透過照明装置と、前記筐体の内部に、前記透過照明装置を介して透過照明された前記試料の像を観察する観察光学系を備えている。
【0018】
また、本発明による顕微鏡は、筐体の外部に配置された照明用光源と、筐体の内部に配置された、前記照明用光源からの光を試料側に導く落射照明光学系と、前記落射照明光学系からの光を試料上に集光する対物レンズと、前記試料を挟んで前記対物レンズと対向する位置に配置されたコンデンサレンズと、前記コンデンサレンズの前側焦点位置近傍に配置された反射部材とを備え、前記反射部材からの反射光を用いて前記試料を透過照明するようにした透過照明装置と、前記筐体の内部に、前記透過観察装置を介して透過照明された前記試料の像を観察する観察光学系を備え、前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置のいずれかに、リングスリットを配置するとともに、前記観察光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置に、位相板を配置したことを特徴としている。
【0019】
また、本発明による顕微鏡は、筐体の外部に配置された照明用光源と、筐体の内部に配置された、前記照明用光源からの光を試料側に導く落射照明光学系と、前記落射照明光学系からの光を試料上に集光する対物レンズと、前記試料を挟んで前記対物レンズと対向する位置に配置されたコンデンサレンズと、前記コンデンサレンズの前側焦点位置近傍に配置された反射部材とを備え、前記反射部材からの反射光を用いて前記試料を透過照明するようにした透過照明装置と、前記筐体の内部に、前記透過観察装置を介して透過照明された前記試料の像を観察する観察光学系を備え、前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置の両方に、リングスリットを配置するとともに、前記観察光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置に、位相板を配置したことを特徴としている。
【0020】
また、本発明の顕微鏡においては、前記試料と前記反射部材との間に、λ/4板を配置し、落射照明光の光路上に、偏光子を配置し、透過照明光の光路上に、検光子を配置するのが好ましい。
【0021】
また、本発明の顕微鏡においては、前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、前記照明位置に移動した試料から前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されているのが好ましい。
【0022】
また、本発明の顕微鏡においては、前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、前記対物レンズから前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されているのが好ましい。
【0023】
また、本発明による透過照明方法は、筐体の外部に配置した照明用光源からの光を用いて、筐体の内部に配置した試料を落射照明し、落射照明したときに前記試料を透過した落射光を反射部材で反射し、反射した光で前記試料を透過照明することを特徴としている。
【0024】
また、本発明による透過照明方法は、上記いずれかの本発明の透過照明装置を介して、前記細胞培養庫内の試料を落射照明し、落射照明したときに前記試料を透過した落射光を前記反射部材で反射し、反射した光で前記試料を透過照明することを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡単な構成で、培養環境を一定に保ちながら、透過照明観察を行うことのできる透過照明装置、それを備えた顕微鏡、及び透過照明方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は本発明の第一実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
第一実施形態の顕微鏡は、筐体1の内部に、細胞培養庫2と、透過照明光学系3と、結像光学系4を有している。また、筐体1の外部に、照明用光源5と、撮像素子6と、画像処理装置7を備えている。
細胞培養庫2は、温度が37℃、湿度が95%の雰囲気でもって培養環境が一定に保たつように培養環境調整手段(図示省略)を備えた筐体2aからなる。筐体2aの内部には、培養標本(試料)10を培養するシャーレ111,112,・・・11nを複数個(n個)備えている。また、筐体2aは、所望のシャーレを照明光の照射位置に移動可能な移動手段を有する移動ステージ12を備えている。なお、培養環境調整手段、移動手段は、既知の公知技術を用いて構成することができる。
【0027】
透過照明光学系3は、落射照明光学系3aと、対物レンズ3bと、コンデンサレンズ3cと、反射部材3dを有している。
落射照明光学系3aは、明るさ絞り3a1と、レンズ3a2と、ハーフミラー3a3を有し、照明用光源5からの光を対物レンズ3bに導くように構成されている。
対物レンズ3bは、落射照明光学系3aからの光を細胞培養庫2の筐体2aの内部において照射位置に位置する培養標本(試料)10上に集光する機能を備えている。
コンデンサレンズ3cは、細胞培養庫2の筐体2aの内部において、培養標本10を挟んで対物レンズ3bと対向する位置に配置されている。
反射部材3dは、細胞培養庫2の筐体2aの内部において、コンデンサレンズ3cの前側焦点位置近傍に配置されている。
そして、反射部材3dは、落射照明光学系3a、対物レンズ3bを経た照明用光源5からの光を反射して、培養標本10を透過照明するようになっている。
結像光学系4は、ハーフミラー3a3と撮像素子6との間に配置された、偏向ミラー4aと結像レンズ4bを有して構成されている。
画像処理装置7は、パソコンなどの演算処置装置で構成されている。
【0028】
さらに、第一実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡では、リングスリット8が、コンデンサレンズ3cの前側焦点位置に配置されるとともに、位相板9が、対物レンズ3bの瞳位置に配置されている。
【0029】
このように構成された第一実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡では、筐体1の外部に設けられた照明用光源5から発した光が、明るさ絞り3a1、レンズ3a2を経てハーフミラー3a3に入射する。そして、ハーフミラー3a3を透過した光が、位相板9、対物レンズ3bを経て、細胞培養庫2の筐体2aの内部において照射位置に位置するシャーレの中の培養標本10を照射する。ここで、培養標本10を透過した光が、コンデンサレンズ3cを経て、リングスリット8に入射し、リングスリット8を通過した光が、反射部材3dに入射する。反射部材3dで反射した光は、逆の光路を辿って、培養標本10を照射する。ここで、培養標本10を透過した光が、対物レンズ3b、位相板9を経て、ハーフミラー3a3に入射する。そして、ハーフミラー3a3を透過した光が、偏向ミラー4a、結像レンズ4bを経て撮像素子6の撮像面上で結像し、撮像素子6で撮像される。撮像素子6で撮像された培養標本10の透過観察像の電気信号は画像処理装置7を介して所定の画像処理が施された後、画像処理装置7に一体又は別体のモニタ等に表示される。
【0030】
第一実施形態の透過観察照明装置を備えた顕微鏡によれば、照明用光源5を顕微鏡の筐体1の外部に配置したので、照明用光源5が熱源として細胞培養庫2に影響を与えることがない。また、落射照明光の透過光を反射させることによって透過照明光として使用するようにしたので、落射照明と透過照明の2つの光源を配置する必要がなくて済み、照明系の構成を簡素化することができる。また、透過照明光学系を構成するために細胞培養庫2の筐体2aの内部に配置すべき光学部材を極力少なくすることができ、構成を簡素化できる。
【0031】
なお、図1では、位相差観察を行う構成を示したが、第一実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡は、それ以外の顕微鏡観察にも適用可能である。
例えば、通常の明視野観察を行う場合には、リングスリット8と位相板9を取り外した構成とすればよい。
また、例えば、ホフマンモジュレーションコントラスト(HMC)観察を行う場合には、リングスリット8をHMC観察用スリットに取り替えるとともに、位相板9をHMCモジュレータに取り替えた構成とすればよい。
また、例えば、微分干渉観察を行う場合には、リングスリット8と位相板9を取り外し、ハーフミラー3a3のレンズ3a2側に偏光子とDICプリズムを配置すると共に、ハーフミラー3a3の偏向ミラー4a側に検光子とDICプリズムを配置すればよい。
また、第一実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡は、培養標本1aに対して偏射照明となる構成であってもよい。
さらに、ハーフミラー3a3をユニット化して着脱可能とするとよい。その場合、他のユニットとしてハーフミラー3a3に所望の蛍光以外の波長をカットするバリアフィルタを備えたユニットや、さらには、これらに加えてハーフミラー3a3のそれぞれ異なる側に偏光子と検光子を配置したユニット等を構成し、それぞれのユニットの着脱に応じて、通常光の観察と蛍光観察、さらには偏光による観察とを切り替え可能に構成してもよい。
【0032】
図2は本発明の第二実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
第二実施形態の顕微鏡は、リングスリット8’が、対物レンズ2bの瞳位置と共役となる位置である図1における明るさ絞り3a1の位置に配置されている。
第二実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡によれば、細胞培養庫2の筐体2aの内部に設ける光学部材を、図1におけるリングスリット8の分だけ減らすことができ、細胞培養庫2の筐体2aの環境をより安定させ易くなる。また、細胞培養庫2の筐体2aの内部を照射する光をリングスリット8’を介して予め減らすことができるので、培養標本を照射する光を透過観察のために必要な最小限の光量に抑えることができ、フレアの発生を抑えやすくすることができるとともに、培養標本を照射することによる熱の影響を極力少なくすることができる。
その他の構成及び作用効果は第一実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡とほぼ同じである。
【0033】
図3は本発明の第三実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
第三実施形態の顕微鏡は、リングスリット8が、コンデンサレンズ3cの前側焦点位置に配置されると共に、リングスリット8’が、対物レンズ2bの瞳位置を共役となる位置である図1における明るさ絞り3a1の位置に配置されている。
第三実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡によれば、リングスリット8’を介して、細胞培養庫2の筐体2aの内部を照射する光を予め減らすことができるので、培養標本を照射する光を透過観察のために必要な最小限の光量に抑えることができ、培養標本を照射することによる熱の影響を極力少なくすることができる。しかも、リングスリットを2つ備えたので、フレアの発生をより一層抑えやすくすることができる。
その他の構成及び作用効果は第一実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡とほぼ同じである。
【0034】
図4は本発明の第四実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
第四実施形態の顕微鏡は、図3の構成に加えて、培養標本10と反射部材3dとの間にλ/4板13を配置して構成されている(図4では一例として、λ/4板13は、リングスリット8とコンデンサレンズ3cとの間に配置されている)。また、ハーフミラー3a3のレンズ3a2側及び偏向ミラー4a側に偏光子14及び検光子15をそれぞれ配置して構成されており、位相差偏光観察を行うことができるようになっている。
【0035】
このように構成された第四実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡では、筐体1の外部に設けられた照明用光源5から発した光が、スリット8’、レンズ3a2を経て、偏光子13に入射し、一方の直線偏光成分の光が偏光子14を通過してハーフミラー3a3に入射する。そして、ハーフミラー3a3を透過した光が位相板9、対物レンズ3bを経て、細胞培養庫2の筐体2aの内部において照射位置に位置するシャーレの中の培養標本10を照射する。ここで、培養標本10を透過した光が、コンデンサレンズ3cを経て、λ/4板13に入射し、λ/4板13を介して円偏光成分に偏光されて、リングスリット8に入射する。そして、リングスリット8を通過した光が、反射部材3dに入射する。反射部材3dで反射した光は、逆の光路を辿って、培養標本10を照射する。その際、円偏光成分が、λ/4板13を介して、上記一方の直線偏光成分に対して垂直な他方の直線偏光成分の光に偏光される。ここで、培養標本10を透過した光が、対物レンズ3b、位相板9を経て、ハーフミラー3a3に入射する。そして、ハーフミラー3a3を透過した光が、検光子15に入射する。このとき、他方の直線偏光成分の光に偏光された光は検光子15を透過し、偏向ミラー4a、結像レンズ4bを経て撮像素子6の撮像面上で結像し、撮像素子6で撮像される。撮像素子6で撮像された培養標本10の透過観察像の電気信号は画像処理装置7を介して所定の画像処理が施された後、画像処理装置7に一体又は別体のモニタ等に表示される。
【0036】
第四実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡によれば、偏光子14及び検光子15を介して所定の偏光成分のみを通過させるようにしたので、フレア光をより一層除去することができる。
その他の構成及び作用効果は第三実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡とほぼ同じである。
【0037】
図5は本発明の第五実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
第五実施形態の顕微鏡は、図4に示した第四実施形態の構成に加えて、筐体1の外部に結像レンズ4bで結像した中間像をリレーするためのリレー光学系16を備えるとともに、位相板9を、対物レンズ3bの瞳位置ではなく、リレー光学系16を構成するレンズ16a,16bの間に配置して構成している。
第五実施形態の顕微鏡によれば、位相板9を筐体1の外部に配置することになるので、培養標本10を透過照明する途中での光量のロスがない。このため、より一層良好な透過観察像を観察することができる。
その他の構成は、第四実施形態の透過照明装置を備えた顕微鏡とほぼ同じである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の透過照明装置、それを備えた顕微鏡、及び透過照明方法は、医学、生物学、薬学、農学等、細胞等の培養物を観察することが分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
【図2】本発明の第二実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
【図3】本発明の第三実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
【図4】本発明の第四実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
【図5】本発明の第五実施形態にかかる透過照明装置を備えた顕微鏡の概略構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1 筐体
2 細胞培養庫
3 透過照明光学系
3a 落射照明光学系
3a1 明るさ絞り
3a2 レンズ
3a3 ハーフミラー
3b 対物レンズ
3c コンデンサレンズ
3d 反射部材
4 結像光学系
4a 偏向ミラー
4b 結像レンズ
5 照明用光源
6 撮像素子
7 画像処理装置
8,8’ リングスリット
9 位相板
10 培養標本(試料)
111,112,・・・11n シャーレ
12 移動ステージ
13 λ/4板
14 偏光子
15 検光子
16 リレー光学系
16a,16b レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の外部に配置された照明用光源と、
筐体の内部に配置された、前記照明用光源からの光を試料側に導く落射照明光学系と、前記落射照明光学系からの光を試料上に集光する対物レンズと、前記試料を挟んで前記対物レンズと対向する位置に配置されたコンデンサレンズと、前記コンデンサレンズの前側焦点位置近傍に配置された反射部材とを備え、
前記反射部材からの反射光を用いて前記試料を透過照明するようにしたことを特徴とする透過照明装置。
【請求項2】
前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置のいずれかに、リングスリットを配置するとともに、
前記対物レンズの瞳位置に、位相板を配置したことを特徴とする請求項1に記載の透過照明装置。
【請求項3】
前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置の両方に、リングスリットを配置するとともに、
前記対物レンズの瞳位置に、位相板を配置したことを特徴とする請求項1に記載の透過照明装置。
【請求項4】
前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置のいずれかに、リングスリットを配置するとともに、
前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置に、位相板を配置したことを特徴とする請求項1に記載の透過照明装置。
【請求項5】
前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置の両方に、リングスリットを配置するとともに、
前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置に、位相板を配置したことを特徴とする請求項1に記載の透過照明装置。
【請求項6】
前記試料と前記反射部材との間に、λ/4板を配置し、
落射照明光の光路上に、偏光子を配置し、
透過照明光の光路上に、検光子を配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透過照明装置。
【請求項7】
前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、
前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、
前記照明位置に移動した試料から前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透過照明装置。
【請求項8】
前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、
前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、
前記位相板から前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の透過照明装置。
【請求項9】
前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、
前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、
前記対物レンズから前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の透過照明装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の透過照明装置を備えた顕微鏡。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の透過照明装置と、
前記筐体の内部に、前記透過照明装置を介して透過照明された前記試料の像を観察する観察光学系を備えた顕微鏡。
【請求項12】
筐体の外部に配置された照明用光源と、筐体の内部に配置された、前記照明用光源からの光を試料側に導く落射照明光学系と、前記落射照明光学系からの光を試料上に集光する対物レンズと、前記試料を挟んで前記対物レンズと対向する位置に配置されたコンデンサレンズと、前記コンデンサレンズの前側焦点位置近傍に配置された反射部材とを備え、前記反射部材からの反射光を用いて前記試料を透過照明するようにした透過照明装置と、
前記筐体の内部に、前記透過観察装置を介して透過照明された前記試料の像を観察する観察光学系を備え、
前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置のいずれかに、リングスリットを配置するとともに、
前記観察光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置に、位相板を配置したことを特徴とする顕微鏡。
【請求項13】
筐体の外部に配置された照明用光源と、筐体の内部に配置された、前記照明用光源からの光を試料側に導く落射照明光学系と、前記落射照明光学系からの光を試料上に集光する対物レンズと、前記試料を挟んで前記対物レンズと対向する位置に配置されたコンデンサレンズと、前記コンデンサレンズの前側焦点位置近傍に配置された反射部材とを備え、前記反射部材からの反射光を用いて前記試料を透過照明するようにした透過照明装置と、
前記筐体の内部に、前記透過観察装置を介して透過照明された前記試料の像を観察する観察光学系を備え、
前記落射光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置、及び前記コンデンサレンズの前側焦点位置の両方に、リングスリットを配置するとともに、
前記観察光学系内において前記対物レンズの瞳位置と共役となる位置に、位相板を配置したことを特徴とする顕微鏡。
【請求項14】
前記試料と前記反射部材との間に、λ/4板を配置し、
落射照明光の光路上に、偏光子を配置し、
透過照明光の光路上に、検光子を配置したことを特徴とする請求項12又は13に記載の顕微鏡。
【請求項15】
前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、
前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、
前記照明位置に移動した試料から前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の顕微鏡。
【請求項16】
前記筐体の内部に複数の試料を培養するための細胞培養庫を有し、
前記細胞培養庫が、前記複数の試料のうち、所定の試料を照明位置に移動可能な移動手段を備え、
前記対物レンズから前記反射部材までの光路上に配置される光学部材が、前記前記細胞培養庫の内部に配置されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の顕微鏡。
【請求項17】
筐体の外部に配置した照明用光源からの光を用いて、筐体の内部に配置した試料を落射照明し、
落射照明したときに前記試料を透過した落射光を反射部材で反射し、
反射した光で前記試料を透過照明することを特徴とする透過照明方法。
【請求項18】
請求項7〜9のいずれかに記載の透過照明装置を介して、前記細胞培養庫内の試料を落射照明し、
落射照明したときに前記試料を透過した落射光を前記反射部材で反射し、
反射した光で前記試料を透過照明することを特徴とする透過照明方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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