説明

通信システム、スイッチおよび帯域制御方法

【課題】アップリンク側に多方路の出力回線を有する場合に対応可能であり、帯域利用の効率化、帯域制御の最適化、省電力化を実現することができる通信システムを得ること。
【解決手段】L2スイッチ3は、1つ以上のアップリンク回線に接続され、アップリンク回線ごとのONU2−1−1〜2−n−mとアップリンク回線との間の通信の監視結果に基づいてLLID単位で帯域割当を行い、帯域割当の結果をOLT1−1〜1−nへ通知するDBA31,32、を備え、OLT1−1〜1−nは、帯域割当の結果に基づいては以下のONU2−1−1〜2−n−mに対する上り通信の開始時刻を決定し、帯域割当の結果と開始時刻とを帯域割当結果として配下のONU2−1−1〜2−n−mへ通知するDBA補助部11−1〜11−n、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、スイッチおよび帯域制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)では、一般に、ユ−ザを収容する宅内光終端装置ONU(Optical Network Unit)とONUを集線する局側光終端装置OLT(Optical Line Terminal)とにより構成されるPONシステムと、OLTを集線する上位装置であるL2(Layer 2)スイッチと、が接続されている。
【0003】
一般に、PONシステムと上位のL2スイッチは独立して動作し、それぞれ個別に、自身の入力と出力において帯域制御などを行っていた。OLTでは、OLTに接続された各ONUに対する割当帯域を動的に制御するDBA(動的帯域割当:Dynamic Bandwidth Allocation)を用いたMPCP(Multi−Point Control Protocol)制御を行っている。PONシステムでは、ONUが自身(自ユ−ザ)に蓄積している上りデ−タ量をOLTにREPORTフレ−ムに格納して通知する。OLTは、このONUから通知された蓄積上りデ−タ量と他のONUの使用帯域に基づいてDBAにより、このONUに与える上り帯域(ONUの上り送信開始時刻と送信量)を計算し、GATEフレ−ムによりONUに通知する。このようにして、PONシステムでは、帯域要求(上り蓄積デ−タ量)が多いONUに多くの帯域を割当ている。
【0004】
PONシステムを集線する上位のL2スイッチでは、PONシステムにおけるDBAの結果を考慮せず、フレ−ムバッファリングによる独立した帯域制御を行っている。このため、L2スイッチのアップリンク側の出力帯域を超える入力がPONシステム側からあった場合にはパケットが廃棄されてしまう。パケットの廃棄を防ぐためには、各OLTからの受信フレ−ムをバッファリングする必要がある。
【0005】
一方、バッファリングや帯域割当を効率的に行うための技術として、PONシステムにおけるDBAとL2スイッチにおける制御とを連携させ、L2スイッチ側にMPCP制御を統合する制御方法が、例えば特許文献1〜4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−246446号公報
【特許文献2】特開2010−147801号公報
【特許文献3】特開2010−206687号公報
【特許文献4】特開2009−147626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の一般的な技術によれば、PONシステムとL2スイッチを一つの系として見た場合、DBAによる帯域割当と、L2スイッチ内での出力時刻スケジュ−リングによる帯域制御は、それぞれが独立して制御されており、PONシステムとL2スイッチ双方の状態を反映した最適な帯域制御が行われていない。このため、帯域が効率的に利用されていないという問題がある。
【0008】
また、アクセス系(例えばユ−ザから電話局あるいはインタ−ネット・プロバイダまでの間のネットワ−ク(WAN:Wide Area Network))における将来的な回線速度の増加により、1基のL2スイッチに収容するユ−ザ数が激増した場合、現行のL2スイッチで対応するためにはバッファ回路の増加、フレ−ムバッファ用のRAM(Random Access Memory)チップの増加、L2スイッチ動作速度のクロックアップ等が求められることになり、消費電力が増大する。また、L2スイッチが収容する全PONシステムのリンク区間の上り帯域の合計が、L2スイッチの出力帯域を超えてしまう場合もある。
【0009】
また、上記特許文献1〜4では、アップリンク側の出力方路や1つの場合を想定しており、アップリンク側の出力方路が2方路以上の場合については言及されていない。このため、アップリンク側の出力方路が2方路以上に適用することができない。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アップリンク側に多方路の出力回線を有する場合に対応可能であり、帯域利用の効率化、帯域制御の最適化、省電力化を実現することができる通信システム、スイッチ、局側光終端装置および帯域制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、スイッチと、宅内光終端装置と、前記宅内光終端装置から受信した上りデ−タを前記スイッチへ転送し前記スイッチから受信した前記宅内光終端装置宛の下りデ−タを前記宅内光終端装置へ転送する複数の局側光終端装置と、を備える通信システムであって、前記スイッチは、1つ以上のアップリンク回線に接続され、アップリンク回線ごとの前記宅内光終端装置と当該アップリンク回線との間の通信の監視結果に基づいてLLID単位で帯域割当を行い、前記帯域割当の結果を前記局側光終端装置へ通知する帯域割当部、を備え、前記局側光終端装置は、前記帯域割当の結果に基づいて自身に接続する前記宅内光終端装置に対する上り通信の送信許可時間帯の開始時刻を決定し、前記帯域割当の結果と前記開始時刻とを帯域割当結果として前記宅内光終端装置へ通知する帯域割当補助部、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アップリンク側に多方路の出力回線を有する場合に対応可能であり、帯域利用の効率化、帯域制御の最適化、省電力化を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1の通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、従来のシステムにおけるDBA制御の範囲と実施の形態1のDBA制御の範囲との比較を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1のONUの学習の様子を示す図である。
【図4】図4は、蓄積デ−タ量による帯域の増減幅の制御の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態1の帯域制御方法の全体動作概要を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態1の通信システムの実装例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態3の通信システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる通信システム、スイッチ、局側光終端装置および帯域制御方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる通信システムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の通信システムは、OLT(局側光終端装置)1−1〜1−n(nは1以上の整数)と、ONU(宅内光終端装置)2−1−1〜2−n−m(mは1以上の整数)と、L2スイッチ(スイッチ)3と、を備える。L2スイッチ3は、2つのアップリンク回線Uplink#1,#2に接続されている。すなわち、L2スイッチ3のアップリンク側物理ポ−トは2ポ−トであり、各ポ−トに対応するアップリンク回線をUplink#1,#2とする。OLT1−i(i=1,2,…,n)は、DBA補助部(帯域割当補助部)11−iを備える。また、L2スイッチ3は、DBA(帯域割当部)31,32を備える。
【0016】
OLT1−iは、光回線により、例えば図示しないスタ−カプラ等を経由してONU2−i−1〜2−i−nと接続されている。
【0017】
なお、図1の構成例は1例であり、例えばL2スイッチ3のアップリンク側物理ポ−トが1ポ−トや3ポ−ト以上であってもよく、また、OLT1−1〜1−nがそれぞれ収容するONUの台数もOLT1−1〜1−nごとに異なっていてもよく、L2スイッチ3の代わりに同様の制御方法を導入したL3スイッチを備えていてもよい。アップリンク側物理ポ−トの数が2ポ−ト以外の場合、L2スイッチ3は、アップリンク側物理ポ−トの数のDBAを備える。
【0018】
図1のL2スイッチ3内のDBA31,32は、アップリンクがUplink#1,#2の2方路である場合に、それぞれ対応するアップリンク宛の出力帯域制御を行う。L2スイッチ3内のDBA31,32では、ONU2−1−1〜2−n−m側からの蓄積デ−タ量のほか、L2スイッチ3のアップリンク側ポ−トにおけるLLIDごとの流量監視結果、アップリンク側とONU2−1−1〜2−n−m側との接続確立状況等を学習テ−ブル(学習情報)として保持し、LLIDごとの割当帯域を計算する機能を持つ。
【0019】
図1におけるOLT1−i内のDBA補助部11−iは、ONUからの蓄積デ−タ量通知(例えばREPORTフレ−ムによる通知)をL2スイッチ3に転送する。また、DBA補助部11−iは、L2スイッチ3からLLID毎の割当帯域通知を受け、割当帯域通知に基づいて配下のONU2−i−1〜2−i−mに対してLLID毎に割当帯域を通知(例えばGATEフレ−ムによる通知)する制御を行う。
【0020】
また、DBA補助部11−1〜11−nは、それぞれ、割当帯域通知に基づいて配下のPON区間におけるデ−タ送信間隔の空き時間を求め、当該空き時間を利用して配下のONUのディスカバリを行うようにしてもよい。
【0021】
ここで、本実施の形態の通信システムにおけるDBA制御の概念を説明する。図2は、従来のシステムにおけるDBA制御の範囲と本実施の形態のDBA制御の範囲との比較を示す図である。図2の例では、Uplink#1にはエッジル−タ4経由で電話5が接続され、Uplink#1にはSAR(Service Aggregation Router)7を含む地域IP(Internet Protocol)網6経由でWebなど8に接続されている。Uplink#1,Uplink#2に接続される装置やネットワ−クは図2の例に限定されない。
【0022】
従来のDBA制御は、図2に点線の従来のDBA実施範囲200として示したように1つのPONシステムのみを対象としている。また、従来のシステムでは、L2スイッチ3は、OLT1−1〜1−nから受け取ったデ−タに対して、アップリンク回線側への出力の帯域制御を行っていた。なお、従来のシステムでは、アップリンク回線が1つである場合を想定しており、本実施の形態のようにアップリンク回線が複数の場合は想定していない。
【0023】
本実施の形態では、帯域を効率的に使用しつつ、アップリンク回線が複数の場合に対応できるよう、DBA制御の範囲を図2にDBA実施範囲201として示すように、PONシステム全体およびL2スイッチ3としている。すなわち、L2スイッチ3において、各ONU2−1−1〜2−n−mに対するDBA制御を実施する。これにより、システム全体で帯域を効率的に使用でき、かつバッファ量も低減することができる。
【0024】
以下に、本実施の形態の動作例としてDBA31におけるUplink#1に関連する制御方法を記載する。初期状態として、DBA31は、それぞれのLLIDに対して一定の固定帯域を割当てる。なお、LLIDは、ONU2−1−1〜2−n−mごとに割当られていてもよいし、1つのONUに複数のLLIDを割当てていてもよい。固定帯域は、ARP(Address Resolution Protocol)パケットの送受やシグナリングが可能な程度の帯域を割当てることとする。この割当帯域(固定帯域)は終始変化させず、固定的に割当てる。
【0025】
上記の状態で、L2スイッチ3は、ONU2−1−1〜2−n−mとアップリンク側のネットワ−ク(ル−タなど)との間で通信するARPパケット、ARP応答パケットや、Uplink#1側からONU2−1−1〜2−n−m側への下りパケットを監視する。図3は、本実施の形態のONUの学習の様子を示す図である。ここでは、ONU2−1−1がUplink#1を経由する通信を行うとする。L2スイッチ3は、アップリンク側からあるONU宛てのパケットが通過した際に当該ONU(またはLLID)を学習する。具体的には、当該ONUの識別情報を学習テ−ブルに格納する。例えば、L2スイッチ3は、Uplink#1側からONU2−1−1宛のパケット(例えば、ARP応答パケットや下りデ−タパケット)が通過したことを検出すると、ONU2−1−1の識別情報を学習テ−ブルに格納する。
【0026】
DBA31は、この学習テ−ブルのエントリを参照し、学習されているONUだけを帯域割当て制御の対象とする。今、学習されているONUがONU2−1−1のみである場合を考えると、DBA31は、学習されているONU2−1−1に対応する各LLIDに対しては、ある一定の帯域を初期割当帯域として割当てる。この一定の帯域は、L2スイッチ3のUplink#1の出力帯域から、ONU2−1−1〜2−n−mの各LLIDに対して固定的に割当てている固定帯域の総計(以下、総固定帯域という)を差し引いた分から、更に各LLID(あるいはユ−ザ)単位に設定してある保証帯域を差し引いた分を超えてはならない。例えば、DBA31は、Uplink#1の出力帯域から総固定帯域および保障帯域を差し引いた帯域を配下の全LLID数で除算した帯域を、学習後の初期割当帯域として割当てる。
【0027】
なお、DBA31が実施する帯域割当では、割当帯域の量を決定する。すなわち、ONU2−1−1における送信許可時間帯の長さ(送信時間)に対応する量を決定する。
【0028】
この状態から、L2スイッチ3は、Uplink#1におけるONU2−1−1からのLLID単位のデ−タ流量を監視し、このデ−タ流量が対応するLLIDに割当てた割当帯域に対する第1の閾値(たとえば割当帯域の90%)を超えた場合に、該当するLLIDに対する割当帯域を増加させる制御を行う。逆に、このデ−タ流量が対応するLLIDに割当てた割当帯域に対する第2の閾値(たとえば割当帯域の50%)を下回った場合に、該当するLLIDに対する割当帯域を減少させる制御を行う。LLID単位の流量監視はリアルタイムに行い、あるいは一定周期間隔で測定を行い測定値はデ−タベ−ス化するなどして保持し、DBA31は割当帯域計算時に測定値を参照する。
【0029】
また、OLT1−1は、ONU2−1−1からの蓄積デ−タ量情報を受け取ると、この蓄積デ−タ量情報をL2スイッチ上のDBA31およびDBA32に転送し、L2スイッチ3上のDBA31は、上記した流量監視による割当帯域増減の条件として、この蓄積デ−タ量情報を加味した制御を行う。具体的には、例えば図4に示すように、流量監視によって増減させる帯域の増減幅の度合いを、このONU2−1−1の蓄積デ−タ量に従って変化させる。図4は、蓄積デ−タ量による帯域の増減幅の制御の一例を示す図である。図4では、ONU2−1−1がLLID#1とLLID#2の2つのLLIDを割当られている例を示している。
【0030】
図4では例として割当帯域増減を量子化して説明しており、「LLID#1の流量<第2の閾値かつLLID#1の蓄積デ−タ量=小」の場合には割当帯域を2段階(図4の2目盛り)減、「LLID#1の流量<閾値かつLLID#1の蓄積デ−タ量=大」の場合には割当帯域を1段階減、とするなどの制御とする。すなわち、同じ流量<第2の閾値の状態でも、帯域割当を減少させる減少幅を蓄積デ−タ量の大小により変えている。蓄積デ−タ量の大小は、例えばデ−タの蓄積量が所定の値より多いか否かにより判断する。なお、図4は一例であり、割当帯域の増減方法、増減度合いや増減粒度について限定するものではない。
【0031】
また、「LLID#2の流量>第1の閾値かつLLID#2の蓄積デ−タ量=大」の場合には割当帯域を2段階増、「LLID#2の流量>第1の閾値かつLLID#2の蓄積デ−タ量=大」の場合には割当帯域を1段階増、とするなどの制御とする。
【0032】
ONU2−1−1以外が学習テ−ブルに格納されている場合は、学習テ−ブルに格納されているONUに対応するLLIDごとにそれぞれ同様に帯域割当を実施する。以上、DBA31の帯域割当について説明したが、DBA32もUplink#2について、DBA31と同様に、ONU学習、デ−タ流量の監視等を行い、これらとONUにおける蓄積デ−タ量に基づいて帯域割当を実施する。
【0033】
図5は、本実施の形態の帯域制御方法の全体動作概要を示す図である。本実施の形態では、アップリンク回線ごとに、DBA(DBA31、32)を備え、さらにアップリンク回線ごとに、デ−タ流量を測定するデ−タ流量計を備える。図5では、アップリンク回線ごとにデ−タ流量を測定することを示すために、アップリンク回線ごとにデ−タ流量計(デ−タ流量測定部)33、35を備える例を示しているが、1つのデ−タ流量計がアップリンク回線ごとにデ−タ流量を測定するようにしてもよい。また、アップリンク回線ごとに上述した学習したONUを格納する学習テ−ブル34、36を備える。
【0034】
上述のように、DBA31、32が、自身に対応するアップリンク回線に関するONU(またはLLID)の学習テ−ブル34、36と、デ−タ流量計33、35によるデ−タ流量の測定結果と、ONU2−1−1〜2−n−m側からの蓄積デ−タ量情報(REPORT)の3つの要素を元にしてLLIDごとの割当帯域を決定する。すなわち、DBA31、32は、アップリンク回線とONU2−1−1〜2−n−mとの通信を監視し、監視結果(学習テ−ブル、デ−タ流量の測定値)と蓄積デ−タ量情報(REPORT)とに基づいてLLIDごとの割当帯域を決定する。
【0035】
なお、OLT1−1〜1−nとL2スイッチ3との間の制御情報(蓄積デ−タ量情報、帯域割当の結果等)の送受信は、どのような形式で行われてもよい。本実施の形態では、OLT1−1〜1−nが配下のONU2−1−1〜2−n−mとの間の制御フレ−ム(REPORTフレ−ム、GATEフレ−ム)を終端する処理を実施しており、OLT1−1〜1−nと配下のONU2−1−1〜2−n−mの制御フレ−ムの送受信処理と、OLT1−1〜1−nとL2スイッチ3との間の制御は非同期で実施することができる。
【0036】
次に、一例として、DBA31が割当帯域を計算後に、ONU2−1−1に対して割当帯域を通知する動作について説明する。L2スイッチ3のDBA31は、学習テ−ブル34に学習したONU(LLID)についてLLIDごとの帯域割当計算を順番に行っており、DBA31は割当帯域の計算後、該当するLLIDに対する割当帯域情報を格納した制御フレ−ムをOLT1−1に通知する。DBA31は、(1)学習テ−ブル34の参照→(2)流量計の測定値の参照→(3)ONUの蓄積デ−タ量の参照を常時行っており、割当帯域計算が完了したLLIDから順次、当該LLIDに対する割当帯域をOLT1−1に対して制御フレ−ムとして送信し続ける。
【0037】
OLT1−1では、L2スイッチ3のDBA31から割当帯域情報を受け取り、この割当帯域情報に従って、各LLIDについて割当帯域(送信時間)と送信タイミング(送信許可時間帯の開始時刻)を通知するGATEフレ−ムを、ONU2−1−1に対して送信する。GATEフレ−ムの送信やGATEフレ−ム内に格納するONU2−1−1からの出力タイミングなどはOLT1−1のDBA補助部11−1にて制御を行う。すなわち、DBA31は、割当帯域としてLLIDごとの送信許可時間帯の長さ(送信時間)を決定し、LLIDごとの送信許可時間帯の開始時刻はOLT1−1のDBA補助部11−1が実施する。また、OLT1−1は、L2スイッチ3に接続された全OLT1−1〜1−n間で時刻同期を行い、各OLT1−1〜1−nは、宛先のアップリンク回線ごとに、配下のONUからのデ−タ出力タイミングがOLT1−1〜1−n間でタイミング競合しないようデ−タ出力時刻を決定する制御を行う。これにより、L2スイッチ3がアップリンク回線に出力する際にデ−タの大きな衝突は無くなり、パケットバッファを最小限とすることができる。
【0038】
図6は、本実施の形態の通信システムの実装例を示す図である。図6は、既存の従来のL2スイッチを流用する場合に実装例を示している。図6に示すように、従来のL2スイッチ3aに対して、DBA91およびインタフェ−ス部(I/F)92を備えるFPGA(Field Programmable GATE Array)9を外付けに接続して実現することもできる。この場合、例えば、DBA91が、DAB31、32の機能を備え、インタフェ−ス部92がONUの学習機能と流量監視を実施する。なお、図6は一例であり、具体的な実現方法について制約はない。
【0039】
また、各OLT1−1〜1−nは、それぞれ配下のONUに対してディスカバリを行う必要があるが、本実施の形態ではPONリンクにおける帯域利用効率が最適化されたことから従来の制御と比べて空き時間が多くなり、空き時間を利用したディスカバリが可能である。ディスカバリの具体的な実施方法について制約はない。
【0040】
なお、DBA31、32は、LLID単位でアップリンク側出力方路が完全に分かれている場合、すなわち1つのLLIDが複数のアップリンク回線に分岐することがない場合、ONU2−1−1〜2−n−mから送信されたLLID単位の蓄積デ−タ量に従って、LLID単位で帯域割当を実施することができる。
【0041】
以上のように、本実施の形態では、L2スイッチ3において、アップリンク回線ごとに、パケットが通過したONU(またはLLID)を学習して保持する学習テ−ブルと、デ−タ流量の測定結果と、ONU2−1−1〜2−n−m側からの蓄積デ−タ量情報と、に基づいてLLIDごとの割当帯域を決定し、OLT1−1〜1−nが配下のONUについて上り通信の出力タイミングを調整して、割当帯域として通知するようにした。このため、流量監視による割当帯域のフィ−ドバック制御と、蓄積デ−タ量監視による割当帯域の予測制御を同時に行うことができ、複数方路当ての帯域割当て制御を高い精度にて行うことができる。この制御方法を用いることで、PONリンクの使用帯域の効率化に伴うOLT装置の稼働率が低下し、かつL2スイッチ3上のパケットバッファを削減することができ、システム全体として消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0042】
実施の形態2.
次に、本発明にかかる通信システムの実施の形態2の帯域割当方法について説明する。本実施の形態の通信システムの構成は、実施の形態1と同様である。実施の形態2は、実施の形態1において考慮した3つの帯域割当てのための要素のうち、LLIDの蓄積デ−タ量を考慮せずに帯域割当を実施する。すなわち、L2スイッチ3のDBA31、32は、ONU(LLID)の学習テ−ブル34、36と、デ−タ流量計33、35の測定値と、を使用して帯域割当を実施する。例えば、「LLID#1の流量<第2の閾値」の場合は割当帯域量を減少させ、「LLID#2の流量>第1の閾値」の場合は割当帯域量を増加させる。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。
【0043】
なお、接続する全ONUと通信が行われることが確実なアップリンク回線については、学習テ−ブルを用いたONUの学習は行わずに、全ONUに帯域を割当てるようにしてもよい。
【0044】
実施の形態2では、実施の形態1で可能だった予測による割当帯域制御が不可能となるが、制御の簡素化および処理時間の短縮を図ることができるため、実施の形態1に比べよりリアルタイムに近いデ−タ流量からのフィ−ドバック制御が可能となる。
【0045】
実施の形態3.
図7は、本発明にかかる通信システムの実施の形態3の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の通信システムは、OLT一体型スイッチ100と、ONU(宅内光終端装置)2−1−1〜2−n−m(mは1以上の整数)と、を備える。OLT100は、2つのアップリンク回線Uplink#1,#2に接続されている。
【0046】
OLT一体型スイッチ100は、PONインタフェ−ス部(PON−IF)110−1〜110−nと、L2/L3スイッチ(スイッチ)120と、を備える。PONインタフェ−ス部110−i(i=1,2,…,n)は、ONU2−i−1〜ONU2−i−mと接続されており、配下のONU2−i−1〜ONU2−i−mとの間の光回線を終端する局側光終端装置としての機能を有する。また、PONインタフェ−ス部110−iは実施の形態1と同様のDBA補助部11−iを備える。L2/L3スイッチ120は、実施の形態1と同様のDBA31、32を備える。なお、L2/L3スイッチ120は、図示していないが、実施の形態1と同様に、学習テ−ブル34、36と、デ−タ流量計33、35と、を備える。
【0047】
本実施の形態では、L2スイッチあるいはL3スイッチであるL2/L3スイッチ120とOLTを一体化した構成を想定しており、同一装置内にL2/L3スイッチ120とOLTの機能部(PONインタフェ−ス部110−1〜110−n)が存在する構成とする。
【0048】
本実施の形態の帯域制御方法は基本的には実施の形態1と同様となるが、同一装置内となるため、OLT間(本実施の形態ではPONインタフェ−ス部110−1〜110−n間)の同期制御についてはプロトコルを使用する必要が無くなり、L2/L3スイッチ120を介したクロック同期制御によって実現可能となる。
【0049】
以上のように、L2/L3スイッチ120とOLTの機能を一体化して複数のPONインタフェ−ス部110−1〜110−nを備えるOLT100において、実施の形態1と同様の帯域割当制御を行うようにした。このため、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、装置間の制御フレ−ムのやりとりを装置内のやりとりとすることができ、装置および処理を簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる通信システム、スイッチ、局側光終端装置および帯域制御方法は、PONシステムに有用であり、特に、複数のアップリンク回線に接続するPONシステムに適している。
【符号の説明】
【0051】
1−1〜1−n,100 OLT
2−1−1〜2−n−m ONU
3 L2スイッチ
4 エッジル−タ
5 電話
6 地域IP網
7 SAR
8 Webなど
9 追加回路
11−1〜11−n DBA補助部
31,32 DBA
33,35 流量計
34,36 学習テ−ブル
110−1〜110−n PON−IF
200 従来のDBA実施範囲
201 DBA実施範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチと、宅内光終端装置と、前記宅内光終端装置から受信した上りデ−タを前記スイッチへ転送し前記スイッチから受信した前記宅内光終端装置宛の下りデ−タを前記宅内光終端装置へ転送する複数の局側光終端装置と、を備える通信システムであって、
前記スイッチは、
1つ以上のアップリンク回線に接続され、
アップリンク回線ごとの前記宅内光終端装置と当該アップリンク回線との間の通信の監視結果に基づいてLLID単位で帯域割当を行い、前記帯域割当の結果を前記局側光終端装置へ通知する帯域割当部、
を備え、
前記局側光終端装置は、前記帯域割当の結果に基づいて自身に接続する前記宅内光終端装置に対する上り通信の送信許可時間帯の開始時刻を決定し、前記帯域割当の結果と前記開始時刻とを帯域割当結果として前記宅内光終端装置へ通知する帯域割当補助部、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記スイッチは、
アップリンク回線ごとに、前記監視結果として前記宅内光終端装置から当該アップリンク回線に送信されるデ−タ流量を測定するデ−タ流量測定部、
を備え、
前記帯域割当部は、前記デ−タ流量に基づいて帯域割当を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記スイッチは、
前記監視結果としてアップリンク回線ごとに当該アップリンク回線との間で通信を行う前記宅内光終端装置を学習情報として保持し、
前記帯域割当部は、アップリンク回線ごとに前記学習情報に含まれる前記宅内光終端装置に対して帯域を割当てることを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記スイッチは、前記アップリンク回線から前記宅内光終端装置宛のARP応答または前記アップリンク回線から前記宅内光終端装置宛のデ−タ送信を検出した場合に、当該宅内光終端装置を前記学習情報として保持することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記帯域割当部は、アップリンク回線ごとに、当該アップリンク回線に関する割当帯域の総量が当該アップリンク回線への出力帯域以内となるよう前記帯域割当を実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項6】
前記帯域割当補助部は、前記宅内光終端装置から受信した当該宅内光終端装置における上り蓄積デ−タ量を前記帯域割当部へ通知し、
前記帯域割当部は、さらに前記上り蓄積デ−タ量に基づいて帯域割当を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項7】
前記帯域割当補助部は、前記宅内光終端装置との間で制御フレ−ムの送受信処理を実施し、
前記制御フレ−ムの送受信処理と、前記局側光終端装置と前記スイッチの間の制御と、を非同期とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項8】
前記局側光終端装置は、他の前記局側光終端装置との間で時刻同期を行い、前記宅内光終端装置から送信されたデ−タが前記スイッチからアップリンク回線に出力される際に、デ−タが衝突しないよう配下の前記局側光終端装置の前記開始時刻を他の前記局側光終端装置との間で調整することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項9】
前記帯域割当部は、同一LLIDが格納されたパケットが同一のアップリンク回線へ転送される場合、前前記宅内光終端装置から送信されたLLID単位の蓄積デ−タ量に基づいてLLID単位で帯域割当を実施することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項10】
前記スイッチと前記複数の局側光終端装置とを同一装置内に備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項11】
宅内光終端装置と接続される複数の局側光終端装置と接続され、前記宅内光終端装置から前記局側光終端装置経由で受信し上りデ−タをアップリンク回線へ転送し、アップリンク回線から受信した前記宅内光終端装置宛のデ−タを前記局側光終端装置経由で前記宅内光終端装置へ転送するスイッチであって、
1つ以上のアップリンク回線に接続され、
アップリンク回線ごとの前記宅内光終端装置と当該アップリンク回線との間の通信の監視結果に基づいてLLID単位で帯域割当を行い、前記帯域割当の結果を前記局側光終端装置へ通知する帯域割当部、
を備えることを特徴とするスイッチ。
【請求項12】
スイッチと、宅内光終端装置と、前記宅内光終端装置から受信した上りデ−タを前記スイッチへ転送し前記スイッチから受信した前記宅内光終端装置宛の下りデ−タを前記宅内光終端装置へ転送する複数の局側光終端装置と、を備える通信システムにおける帯域制御方法であって、
前記スイッチは、1つ以上のアップリンク回線に接続され、
前記スイッチがアップリンク回線ごとの前記宅内光終端装置と当該アップリンク回線との間の通信の監視結果に基づいてLLID単位で帯域割当を行い、前記帯域割当の結果を前記局側光終端装置へ通知する帯域割当ステップと、
前記局側光終端装置が、前記帯域割当の結果に基づいて自身に接続する前記宅内光終端装置に対する上り通信の送信許可時間帯の開始時刻を決定し、前記帯域割当の結果と前記開始時刻とを帯域割当結果として前記宅内光終端装置へ通知する帯域割当通知ステップと、
を含むことを特徴とする帯域制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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