説明

通信システム、通信方法、及び車載器

【課題】車両からの電力供給が停止している車載器との通信を行う。
【解決手段】通信装置200は、車載器100に光エネルギーを出力する発光素子211と、車載器100から、アンテナ212を介して車両情報を受信する車両情報受信部とを備える。車載器100は、通信装置200との通信を行う通信回路と、通信装置200から供給される光エネルギーを電力に変換し、通信回路に当該電力を供給する光電池122とを備える。車載器100の通信回路は、車両情報を不揮発に記憶する車両情報記憶部と、車両情報記憶部が記憶する車両情報を通信装置200に送信する車両情報送信部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載器と、当該車載器との通信を行う通信装置とを備える通信システム、通信方法、及び車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ETC(Electronic Toll Collection)などのITS(Intelligent Transport Systems)の普及により、DSRC(Dedicated Short Range Communications)通信を行う車載器を搭載する車両が増加している。
車載器は、主に路側装置であるビーコンとDSRC通信を行う。これにより、道路交通情報を受信したり、有料道路の課金処理を行ったりすることができる。
【0003】
ところで、路側駐車場などビーコンの設置が困難な場所における駐車料金の課金などを行うため、ビーコンと同等の性能を有する携帯端末型の通信装置に対する需要があり、特許文献1にそのような通信装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−245501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車載器への電力供給がされていない場合、特許文献1に記載の通信装置を用いて当該車載器との通信ができないという問題がある。特に、車両が駐車している場合、通常バッテリーからの電力供給が遮断されているため、車載器への電力供給はなされない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、車両からの電力供給が停止している車載器と通信装置との通信を行う通信システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、車両に搭載される車載器と、当該車載器との通信を行う通信装置とを備える通信システムであって、前記通信装置は、前記車載器にエネルギーを出力する出力部と、前記車載器から、当該車載器を搭載する車両の情報である車両情報を受信する車両情報受信部とを備え、前記車載器は、前記通信装置との通信を行う通信回路と、前記通信装置から供給されるエネルギーを電力に変換し、前記通信回路に当該電力を供給する電力変換部とを備え、前記車載器の通信回路は、自装置を搭載する車両の情報である車両情報を不揮発に記憶する車両情報記憶部と、前記車両情報記憶部が記憶する車両情報を前記通信装置に送信する車両情報送信部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明においては、前記車載器は、前記車両の利用者と自装置との間で情報の入出力を行うユーザインタフェース回路と、自装置を搭載する車両からの電力供給を受け付け、前記ユーザインタフェース回路及び前記通信回路に当該電力を供給する電源部とを備えることが好ましい。
【0008】
また、本発明においては、前記車載器の通信回路は、前記通信装置と通信を行ったか否かを示す情報を不揮発に記憶する通信記憶部と、前記通信装置と通信を行った場合に前記通信記憶部が記憶する情報を、前記通信装置と通信を行ったことを示す情報に書き換える通信記録部とを備え、前記ユーザインタフェース回路は、前記通信記憶部が記憶する情報が、前記通信装置と通信を行ったことを示す場合に、所定の情報を利用者に提示することが好ましい。
【0009】
また、本発明においては、前記車両が駐車している場合に駐車時間に応じた課金額による課金を行う駐車場課金装置を更に備え、前記駐車場課金装置は、前記通信装置から前記車両の車両情報を取得する車両情報取得部と、前記通信装置が前記車載器から車両情報を受信した時刻と当該車両情報が示す車両の駐車終了時刻との差の時間に基づいて課金額を算出し、前記車両情報が示す車両に対して課金処理を行う課金部と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明においては、前記車載器は、自装置を搭載する車両の移動の有無を検知する検知部を備え、前記駐車場課金装置の課金部は、前記車載器の検知部が前記車両の移動を検知した時刻を車両の駐車終了時刻として前記課金額を算出することが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、前記車載器の通信回路は、自装置の異常の有無をチェックするプログラムを記憶するプログラム記憶部と、前記プログラム記憶部によるチェックの対象であるチェック対象処理部と、前記電力変換部による電力の供給を受けた場合に前記プログラム記憶部が記憶するプログラムを実行するプログラム実行部と、前記プログラム実行部によるチェックの結果を前記携帯端末に送信するチェック結果送信部とを備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、前記通信装置の出力部は、所定の方向へ向けてエネルギーを出力し、前記車両情報受信部は、前記出力部がエネルギーを出力する方向に指向性を有するアンテナを介して、前記車両情報を受信することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、車両に搭載される車載器と、当該車載器との通信を行う通信装置とを備える通信システムを用いた通信方法であって、前記通信装置の出力部は、前記車載器にエネルギーを出力し、前記車載器の電力変換部は、前記通信装置から供給されるエネルギーを電力に変換して通信回路に当該電力を供給し、前記通信回路の車両情報送信部は、前記通信回路の車両情報記憶部から、当該車両情報記憶部が不揮発に記憶する自装置を搭載する車両の情報である車両情報を前記通信装置に送信し、前記通信装置の車両情報受信部は、前記車載器から、当該車載器を搭載する車両の情報である車両情報を受信することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、車両に搭載され、通信装置と通信を行う車載器であって、前記通信装置との通信を行う通信回路と、前記通信装置から供給されるエネルギーを電力に変換し、前記通信回路に当該電力を供給する電力変換部とを備え、前記車載器の通信回路は、自装置を搭載する車両の情報である車両情報を不揮発に記憶する車両情報記憶部と、前記車両情報記憶部が記憶する車両情報を前記通信装置に送信する車両情報送信部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信装置は車載器に対してエネルギーを出力し、車載器は当該エネルギーを電力に変換することで、通信回路を起動させる。これにより、通信装置は、車両からの電力供給が停止している車載器との通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による通信システムの基本構成を示す構成図である。
【図2】本発明による通信システムの車載器における電力供給の割当を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による駐車場課金システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による駐車場課金システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態による違法駐車取締システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による違法駐車取締システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態によるチェックシステムの構成を示す概略ブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態によるチェックシステムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《基本構成》
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明による通信システムの基本構成を示す構成図である。
通信システムは、車両に搭載される車載器100と、車載器100との通信を行う通信装置200とを備える。なお、車載器100と通信装置200とは、DSRC通信を行う。
【0018】
車載器100は、コンピュータシステムを内蔵する本体筐体110と、アンテナ121を内蔵するアンテナ筐体120とを備える。本体筐体110には、ETCカードなどのカードの挿入を受け付けるカード挿入口111が設けられる。また、アンテナ筐体120の表面には、受光した光のエネルギーを電力に変換する光電池122(電力変換部)が設けられる。なお、本体筐体110とアンテナ筐体120とは、電力及び情報を伝達する電気配線によって接続されている。
【0019】
通信装置200の筐体210には、光を発する発光素子211(出力部)と、電波の送受信を行うアンテナ212と、押下されることにより発光及び車載器100との通信を開始する通信開始ボタン213と、情報を表示するディスプレイ214とが設けられる。なお、発光素子211及びアンテナ212は筐体210の上端に設けられており、発光素子211による光の進行方向は、アンテナ212の指向性の方向と略同じ方向を向く。また、発光素子211としては、LED(Light Emitting Diode)やハロゲンランプ、白熱球、レーザ光源などを用いることができる。
【0020】
利用者が、通信装置200の筐体210の上端側を車載器100のアンテナ筐体120に向け、通信開始ボタン213を押下することで、光がアンテナ筐体120に照射される。これにより、アンテナ筐体120に設けられた光電池122が、照射された光のエネルギーを電力に変換して車載器100のコンピュータシステムやアンテナ121に当該電力を供給する。そして、車載器100のコンピュータシステムは、アンテナ121を介して自装置を搭載する車両の情報である車両情報を送信する。このとき、利用者は、通信装置200の筐体210の上端側を車載器100のアンテナ筐体120に向けており、通信装置200のアンテナ212は筐体210の上端側に指向性を有するため、通信装置200は、車載器100のアンテナ筐体120から照射される電波を捕捉し、車両情報を受信する。これにより、車載器100が車両からの電力供給を受けていない場合にも、通信装置200と車載器100とで通信を行うことができる。
【0021】
図2は、本発明による通信システムの車載器100における電力供給の割当を示す図である。
車載器100は、アンテナ121のほか、ROM131(Read Only Memory)、CPU132(Central Processing Unit)、RAM133(Random Access Memory)、フラッシュメモリ134(車両情報記憶部)、DSRC通信部135(車両情報通信部)、入力装置136、スピーカ137などの構成要素を備える。なお、ROM131は、情報を書き換え不可能に記憶する不揮発性メモリであり、CPU132に実行させるプログラム等を記憶する。また、RAM133は、主記憶装置として機能する揮発性メモリであり、CPU132が実行しているプログラムで用いる変数等を記憶する。また、フラッシュメモリ134は、情報を書き換え可能に記憶する不揮発性メモリであり、車両情報など書き換え可能なパラメータなどを記憶する。
【0022】
車載器100が車両からの電力供給を受けている場合、当該電力を車載器100のシステムに供給する電源部138は、車載器100が備える全ての構成要素に電力を供給する。他方、光電池122が通信装置200から照射される光のエネルギーを変換することで得られる電力は、車両から供給される電力より小さいため、全ての構成要素に対して供給することは好ましくない。そこで、光電池122は、車載器100の構成要素のうち、アンテナ121、ROM131、CPU132、RAM133、フラッシュメモリ134、DSRC通信部135など、通信装置200との通信に用いる構成要素を備える通信回路に電力を供給し、入力装置136やスピーカ137など利用者と自装置との間で情報の入出力を行うUI(User Interface)としての機能を提供するUI回路には電力を供給しない。
また、光電池122からの電力供給により動作する場合、CPU132は、ROM131が記憶するプログラムのうち、通信装置200との通信に用いるプログラムのみを実行することで、消費電力量を抑える。
【0023】
なお、上述した基本構成では、エネルギーを出力する出力部の例として発光素子211を挙げ、電力変換部の例として光電池122を挙げたが、これに限られず、他の組み合わせを用いても良い。例えば、エネルギーとして電波のエネルギーを用いる場合は、出力部と電力変換部の組み合わせとして、送受信アンテナを用いることができる。また例えば、エネルギーとして磁場のエネルギーを用いる場合は、出力部と電力変換部の組み合わせとして、送受信コイルを用いることができる。
【0024】
以下、上述した基本構成を備える通信システムを具体的なサービスに適用する実施形態について説明する。
【0025】
《第1の実施形態》
まず、第1の実施形態として、本発明の通信システムを駐車場課金システムに適用する実施形態について説明する。
本実施形態による駐車場課金システムは、ロードプライシングの対象となる課金エリア内に設けられた駐車場における課金システムである。なお、本駐車場課金システムで課金を行っているときは、二重の課金がなされないよう、ロードプライシングの課金を停止する必要がある。
【0026】
このとき、駐車場が課金エリア内の道路の路側に設けられる場合、車両が路側駐車場に駐車しているのか、道路を走行しているのかを判定することが困難である。このような場合に、本発明の通信システムを用いることで、課金の切り替えを適切に行うことができる。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施形態による駐車場課金システムの構成を示す概略ブロック図である。
駐車場課金システムは、車載器100、通信装置200、駐車場課金装置300を備える。なお、車載器100は車両の所有者が所有する装置であり、通信装置200及び駐車場課金装置300は駐車場の管理人が所有する装置である。また、第1の実施形態による車載器100及び通信装置200は、上述した基本構成のものに駐車場課金システムの構成を加えたものである。
【0028】
車載器100は、自装置を搭載する車両の車両情報を記憶する車両情報記憶部141(フラッシュメモリ134の一記憶領域)、アンテナ121を介して通信装置200との通信を行うDSRC通信部135、自装置を搭載する車両に対する課金モードがエリア課金であるか駐車場課金であるかを管理する課金モード管理部142、自装置を搭載する車両が移動したか否かを検知する検知部143、PHS(Personal Handy−phone System)や携帯電話網などの移動体通信網を介して通信を行う移動体通信部144を備える。なお、検知部143としては、例えばGPS(Global Positioning System)や加速度センサ、ジャイロセンサなどを用いることができる。
【0029】
通信装置200は、通信開始ボタン213が押下されたときにアンテナ212を介して車載器100との通信を行うDSRC通信部221と、無線LAN(Local Area Network)を介して駐車場課金装置300との通信を行う無線LAN通信部222とを備える。
駐車場課金装置300は、LANやインターネットなどのネットワークを介して通信装置200及び車載器100との通信を行う通信部301と、駐車場に駐車している車両に対する課金処理を行う課金部302とを備える。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施形態による駐車場課金システムの動作を示すフローチャートである。
車載器100を搭載した車両が路側駐車場に駐車すると、車両の所有者は通常、当該車両のエンジンを停止させる。これにより、車両から車載器100への電力供給は停止する。このとき、車載器100の検知部143は、自装置を搭載する車両が停車したことを検知し、現在時刻を停車時刻として車両情報記憶部141に記録する。
そして、駐車場の管理人は、駐車場での課金を開始するため、通信装置200を持って車両に近づき、通信装置200の上端側を車載器100のアンテナ筐体120に向けて、通信開始ボタン213を押下する。
【0031】
駐車場の管理人が通信開始ボタン213を押下すると、通信装置200の発光素子211は車載器100のアンテナ筐体120に向けて発光を開始する(ステップS1)。車載器100の光電池122は、通信装置200から発せられる光のエネルギーを電力に変換し、当該電力によりコンピュータシステムを起動させる(ステップS2)。このとき、光電池122は、少なくとも車両情報記憶部141、DSRC通信部135及び課金モード管理部142を構成する構成要素に電力を供給する。他方、光電池122は、検知部143及び移動体通信部144を構成する構成要素には電力を供給しない。
【0032】
また、駐車場の管理人が通信開始ボタン213を押下したとき、通信装置200のDSRC通信部221は、アンテナ212を介して車載器100に車両情報及び停車時刻の送信を要求する車両情報要求をDSRC送信する(ステップS3)。車載器100のDSRC通信部135は、アンテナ121を介して通信装置200から車両情報要求を受信すると、車両情報記憶部141が記憶する車両情報及び停車時刻を通信装置200に送信する(ステップS4)。また、このとき車載器100の課金モード管理部142は、自装置を搭載する車両に対する課金モードが駐車場課金に切り替わったことを認識する(ステップS5)。
【0033】
通信装置200のDSRC通信部221が、アンテナ212を介して車載器100から車両情報及び停車時刻を受信すると、無線LAN通信部222は、DSRC通信部221が受信した車両情報及び停車時刻を、無線LANにより駐車場課金装置300に送信する(ステップS6)。なお、車載器100からの車両情報及び停車時刻の受信を完了すると、通信装置200のディスプレイ214には、車両情報及び停車時刻の受信を完了した旨が表示される。受信が完了した旨が表示されることで、駐車場の管理人は、車載器100との通信が終了したことを認識し、通信開始ボタン213の押下を解放することができる。
【0034】
駐車場課金装置300の通信部301が、無線LANを介して通信装置200から車両情報及び停車時刻を取得すると、受信した停車時刻を課金開始時刻として特定する(ステップS7)。このとき、駐車場課金装置300は、車両に対するエリア課金を行うエリア課金装置(図示せず)に車両情報を送信し、当該車両情報が示す車両に対して駐車場課金を開始した旨を通知することが好ましい。これにより、エリア課金装置は、当該車両に対するエリア課金を停止することができる。
【0035】
次に、車両の駐車が終了し、車両の所有者が車両のエンジンをかけると、車両から車載器100への電力供給が開始する。これにより、車両情報記憶部141、DSRC通信部135及び課金モード管理部142に加え、車載器100の検知部143及び移動体通信部144が起動する。
車両の所有者が車両の運転を開始すると、検知部143は車両の移動を検知する(ステップS8)。次に、移動体通信部144は、検知部143が移動を検知した旨及び車両情報記憶部141が記憶する車両情報を、駐車場課金装置300に送信する(ステップS9)。また、このとき車載器100の課金モード管理部142は、自装置を搭載する車両に対する課金モードがエリア課金に切り替わったことを認識する(ステップS10)。
【0036】
駐車場課金装置300の通信部301が、インターネットを介して車載器100から、車両が移動を開始した旨及び車両情報を受信すると、課金部302は、現在時刻が当該車両情報が示す車両に対する駐車場課金の終了時刻であると特定する(ステップS11)。そして、課金部302は、ステップS7で特定した課金開始時刻とステップS11で特定した課金終了時刻に基づいて課金額を算出し、車両に対して駐車場課金処理を行う(ステップS12)。このとき、駐車場課金装置300は、エリア課金装置に車両情報を送信し、当該車両情報が示す車両に対する駐車場課金を終了した旨を通知することが好ましい。これにより、エリア課金装置は、当該車両に対するエリア課金を再開することができる。
【0037】
このように、本発明による通信システムを駐車場課金システムに適用することで、必ずしも車両のエンジンを停止させる前に車載器100との通信を行う必要がなくなる。
【0038】
なお、本実施形態では、駐車場課金装置300が課金処理を行う場合を説明したが、これに限られず、車載器100が課金処理を行うような構成であっても良い。
【0039】
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態として、本発明の通信システムを違法駐車取締システムに適用する実施形態について説明する。
本実施形態による違法駐車取締システムは、違法駐車している車両の情報を違法駐車取締装置400に通報するシステムである。また、違法駐車であることを通報された車両に搭載された車載器100は、通報された旨を車両の利用者に通知する。このとき、車両は駐車しているため、通常エンジンが停止されたおり、車載器100に対する電力の供給がなく、車載器100が停止していることが多い。そこで本発明による通信システムを用いることで、停止している車載器100から車両情報を取得することができる。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施形態による違法駐車取締システムの構成を示す概略ブロック図である。
違法駐車取締システムは、車載器100、通信装置200、違法駐車取締装置400を備える。なお、車載器100は車両の所有者が所有する装置であり、通信装置200及び違法駐車取締装置400は警察署が所有する装置である。また、第2の実施形態による車載器100及び通信装置200は、上述した基本構成のものに違法駐車取締システムの構成を加えたものである。
【0041】
車載器100は、自装置を搭載する車両の車両情報を記憶する車両情報記憶部141、アンテナ121を介して通信装置200との通信を行うDSRC通信部135、通信装置200との通信を行ったか否かを通信記憶部152に記録する通信記録部151、通信装置200との通信を行ったか否かを示す情報を不揮発に記憶する通信記憶部152(フラッシュメモリ134の一記憶領域)、通信装置200との通信を行った場合において電源部138からの電力供給が開始されたときに、通報された旨をスピーカ137から通知する通知部153を備える。
【0042】
通信装置200は、通信開始ボタン213が押下されたときにアンテナ212を介して車載器100との通信を行うDSRC通信部221と、無線LANを介して違法駐車取締装置400との通信を行う無線LAN通信部222とを備える。
違法駐車取締装置400は、無線LANを介して通信装置200との通信を行う通信部401と、違法駐車をしている車両に対する取締処理を行う取締部402とを備える。
【0043】
図6は、本発明の第2の実施形態による違法駐車取締システムの動作を示すフローチャートである。
車載器100を搭載した車両が駐車すると、車両の所有者は通常、当該車両のエンジンを停止させる。これにより、車両から車載器100への電力供給は停止する。当該駐車が違法駐車である場合、違法駐車の取締員は、当該車両に対する取締処理を実施するため、通信装置200を持って車両に近づき、通信装置200の上端側を車載器100のアンテナ筐体120に向けて、通信開始ボタン213を押下する。
【0044】
取締員が通信開始ボタン213を押下すると、通信装置200の発光素子211は車載器100のアンテナ筐体120に向けて発光を開始する(ステップS21)。車載器100の光電池122は、通信装置200から発せられる光のエネルギーを電力に変換し、当該電力によりコンピュータシステムを起動させる(ステップS22)。このとき、光電池122は、少なくとも車両情報記憶部141、DSRC通信部135、通信記録部151及び通信記憶部152を構成する構成要素に電力を供給する。他方、光電池122は、通知部153を構成する構成要素には電力を供給しない。
【0045】
また、取締員が通信開始ボタン213を押下したとき、通信装置200のDSRC通信部221は、アンテナ212を介して車載器100に車両情報の送信を要求する車両情報要求をDSRC送信する(ステップS23)。車載器100のDSRC通信部135は、アンテナ121を介して通信装置200から車両情報要求を受信すると、車両情報記憶部141が記憶する車両情報を通信装置200に送信する(ステップS24)。また、このとき車載器100の通信記録部151は、通信装置200との通信を行ったことを示す情報を、通信記憶部152に記録する(ステップS25)。
【0046】
通信装置200のDSRC通信部221が、アンテナ212を介して車載器100から車両情報を受信すると、無線LAN通信部222は、DSRC通信部221が受信した車両情報を、無線LANにより違法駐車取締装置400に送信する(ステップS26)。なお、車載器100からの車両情報の受信を完了すると、通信装置200のディスプレイ214には、車両情報の受信を完了した旨が表示される。受信が完了した旨が表示されることで、取締員は、車載器100との通信が終了したことを認識し、通信開始ボタン213の押下を解放することができる。
【0047】
違法駐車取締装置400の通信部401が、無線LANを介して通信装置200から車両情報を取得すると、取締部402は、当該車両情報が示す車両に対する取締処理を実施する(ステップS27)。
【0048】
その後、車両の駐車が終了し、車両の所有者が車両のエンジンをかけると、車両から車載器100への電力供給が開始する(ステップS28)。これにより、車両情報記憶部141、DSRC通信部135、通信記録部151及び通信記憶部152に加え、通知部153が起動する。
通知部153は、通信記憶部152が、通信装置200との通信を行ったことを示す情報を記憶しているか否かを判定する(ステップS29)。通知部153は、通信記憶部152が、通信装置200との通信を行ったことを示す情報を記憶していると判定した場合(ステップS29:YES)、スピーカ137を介して、違法駐車の通報がされた旨を車両の所有者に通知する(ステップS30)。
他方、通信記憶部152が、通信装置200との通信を行ったことを示す情報を記憶していないと判定した場合(ステップS29:NO)、通知部153は通知を行わずに処理を終了する。
【0049】
このように、本発明による通信システムを違法駐車取締システムに適用することで、取締員は、車両からの電源供給がない車載器100から車両情報を取得し、違法駐車の通報を行うことができる。
【0050】
《第3の実施形態》
次に、第3の実施形態として、第1の実施形態、第2の実施形態において車載器100の情報を取得するときに、併せて車載器100の動作チェックを実行する実施形態について説明する。
【0051】
図7は、本発明の第3の実施形態によるチェックシステムの構成を示す概略ブロック図である。
チェックシステムは、車載器100及び通信装置200を備える。なお、第3の実施形態による車載器100及び通信装置200は、上述した第1の実施形態または第2の実施形態のものにチェックシステムの構成を加えたものである。
【0052】
車載器100は、上述した第1の実施形態または第2の実施形態の構成に加えて、チェックプログラムを記憶するプログラム記憶部161(ROMの一記憶領域)、プログラム記憶部161が記憶するプログラムを実行するプログラム実行部162、プログラム実行部162がチェックプログラムを実行したチェック結果を不揮発に記憶するチェック結果記憶部163(フラッシュメモリ134の一記憶領域)、通信装置200との通信を行った場合において電源部138からの電力供給が開始されたときに、チェック結果をスピーカ137から通知するチェック結果通知部164を備える。
【0053】
図8は、本発明の第3の実施形態によるチェックシステムの動作を示すフローチャートである。
上述した第1の実施形態、第2の実施形態において、通信装置200の通信開始ボタン213が押下され、通信装置200のDSRC通信部221が上述したステップS4またはステップS24で車載器100から車両情報を受信すると、DSRC通信部221は、チェックプログラムの実行を要求するチェック要求を車載器100に送信する(ステップS31)。
【0054】
車載器100のDSRC通信部135は、アンテナ121を介して通信装置200からチェック要求を受信すると、プログラム実行部162は、プログラム記憶部161が記憶するチェックプログラムを読み出し、実行する(ステップS32)。例えば、チェックプログラムを実行することで、プログラム実行部162は、車載器100内の各種センサ(チェック対象処理部)からの信号の授受が異常なく行うことができるか否かなどのチェックを行う。
プログラム実行部162がチェックを完了すると、DSRC通信部135は、チェック結果を通信装置200に送信する(ステップS33)。通信装置200は、アンテナ212を介して車載器100から車両情報を受信すると、ディスプレイ214に受信したチェック結果を表示する。このとき、車載器100に不正な改造があることを示すチェック結果が表示された場合、当該情報をセンタに送信し、センタにおいて必要に応じて不正通行処理を行っても良い。
また、プログラム実行部162は、チェックを完了すると、チェック結果をチェック結果記憶部163に記録する(ステップS34)。
【0055】
その後、車両の駐車が終了し、車両の所有者が車両のエンジンをかけると、車両から車載器100への電力供給が開始する(ステップS35)。これにより、チェック結果通知部164が起動する。
チェック結果通知部164は、チェック結果記憶部163が記憶するチェック結果を読み出し、スピーカ137を介して、チェック結果を車両の所有者に通知する(ステップS36)。
【0056】
このように、本発明による通信システムを用いることで、車両からの電源供給がない車載器100において動作チェックを行うことができる。
【0057】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した基本構成では、車載器100が本体筐体110とアンテナ筐体120とから構成される分離型の構成である場合を説明したが、これに限られず、本体とアンテナが一体になった一体型の構成であっても良い。
【0058】
また、上述した基本構成では、車載器100が通信装置200との通信を行う際にCPU132を起動して所定のプログラムを実行する場合を説明したが、これに限られない。例えば車載器100がDSRC通信専用のマイクロプロセッサを備える場合、光電池122はROM131、RAM133、CPU132への電力供給を行わずに、アンテナ121、DSRC通信部135、フラッシュメモリ134及びマイクロプロセッサに電力を供給するようにしても良い。つまり、光電池122は、通信装置200との通信を行うのに最低限必要な回路にのみ電力を供給する。
【0059】
上述の車載器100及び通信装置200は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0060】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0061】
100…車載器 121…アンテナ 122…光電池 131…ROM 132…CPU 133…RAM 134…フラッシュメモリ 135…DSRC通信部 136…入力装置 137…スピーカ 200…通信装置 211…発光素子 212…アンテナ 213…通信開始ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載器と、当該車載器との通信を行う通信装置とを備える通信システムであって、
前記通信装置は、
前記車載器にエネルギーを出力する出力部と、
前記車載器から、当該車載器を搭載する車両の情報である車両情報を受信する車両情報受信部と
を備え、
前記車載器は、
前記通信装置との通信を行う通信回路と、
前記通信装置から供給されるエネルギーを電力に変換し、前記通信回路に当該電力を供給する電力変換部と
を備え、
前記車載器の通信回路は、
自装置を搭載する車両の情報である車両情報を不揮発に記憶する車両情報記憶部と、
前記車両情報記憶部が記憶する車両情報を前記通信装置に送信する車両情報送信部と
を備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記車載器は、
前記車両の利用者と自装置との間で情報の入出力を行うユーザインタフェース回路と、
自装置を搭載する車両からの電力供給を受け付け、前記ユーザインタフェース回路及び前記通信回路に当該電力を供給する電源部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記車載器の通信回路は、
前記通信装置と通信を行ったか否かを示す情報を不揮発に記憶する通信記憶部と、
前記通信装置と通信を行った場合に前記通信記憶部が記憶する情報を、前記通信装置と通信を行ったことを示す情報に書き換える通信記録部と
を備え、
前記ユーザインタフェース回路は、前記通信記憶部が記憶する情報が、前記通信装置と通信を行ったことを示す場合に、所定の情報を利用者に提示する
ことを特徴とする請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記車両が駐車している場合に駐車時間に応じた課金額による課金を行う駐車場課金装置を更に備え、
前記駐車場課金装置は、
前記通信装置から前記車両の車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記通信装置が前記車載器から車両情報を受信した時刻と当該車両情報が示す車両の駐車終了時刻との差の時間に基づいて課金額を算出し、前記車両情報が示す車両に対して課金処理を行う課金部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記車載器は、自装置を搭載する車両の移動の有無を検知する検知部を備え、
前記駐車場課金装置の課金部は、前記車載器の検知部が前記車両の移動を検知した時刻を車両の駐車終了時刻として前記課金額を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記車載器の通信回路は、
自装置の異常の有無をチェックするプログラムを記憶するプログラム記憶部と、
前記プログラム記憶部によるチェックの対象であるチェック対象処理部と、
前記電力変換部による電力の供給を受けた場合に前記プログラム記憶部が記憶するプログラムを実行するプログラム実行部と、
前記プログラム実行部によるチェックの結果を前記携帯端末に送信するチェック結果送信部と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記通信装置の出力部は、所定の方向へ向けてエネルギーを出力し、
前記車両情報受信部は、前記出力部がエネルギーを出力する方向に指向性を有するアンテナを介して、前記車両情報を受信する
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
車両に搭載される車載器と、当該車載器との通信を行う通信装置とを備える通信システムを用いた通信方法であって、
前記通信装置の出力部は、前記車載器にエネルギーを出力し、
前記車載器の電力変換部は、前記通信装置から供給されるエネルギーを電力に変換して通信回路に当該電力を供給し、
前記通信回路の車両情報送信部は、前記通信回路の車両情報記憶部から、当該車両情報記憶部が不揮発に記憶する自装置を搭載する車両の情報である車両情報を前記通信装置に送信し、
前記通信装置の車両情報受信部は、前記車載器から、当該車載器を搭載する車両の情報である車両情報を受信する
ことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
車両に搭載され、通信装置と通信を行う車載器であって、
前記通信装置との通信を行う通信回路と、
前記通信装置から供給されるエネルギーを電力に変換し、前記通信回路に当該電力を供給する電力変換部と
を備え、
前記車載器の通信回路は、
自装置を搭載する車両の情報である車両情報を不揮発に記憶する車両情報記憶部と、
前記車両情報記憶部が記憶する車両情報を前記通信装置に送信する車両情報送信部と
を備える
ことを特徴とする車載器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−92834(P2013−92834A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233102(P2011−233102)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】