通信装置
【課題】複数のアンテナからの信号を受信する際における伝搬路推定の精度を向上させる。
【解決手段】プリアンブルA生成部010と、プリアンブルB生成部011では、それぞれプリアンブルAとプリアンブルBが生成され、プリアンブルAはマルチプレックス部014、015に出力され、プリアンブルBは位相回転部012、013に出力される。プリアンブルBが入力された位相回転部012、013では、プリアンブルBの各サブキャリアに対して連続的な位相回転が与えられる。位相回転部012では位相回転を与えず、位相回転部013においてのみプリアンブルBに位相回転を与える。2つのプリアンブル信号は、互いに異なる時間シフト量が加えられる。
【解決手段】プリアンブルA生成部010と、プリアンブルB生成部011では、それぞれプリアンブルAとプリアンブルBが生成され、プリアンブルAはマルチプレックス部014、015に出力され、プリアンブルBは位相回転部012、013に出力される。プリアンブルBが入力された位相回転部012、013では、プリアンブルBの各サブキャリアに対して連続的な位相回転が与えられる。位相回転部012では位相回転を与えず、位相回転部013においてのみプリアンブルBに位相回転を与える。2つのプリアンブル信号は、互いに異なる時間シフト量が加えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関し、特に、複数のアンテナを備える無線送信装置及び、かかる無線送信装置からの信号を受信する無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信容量の増大に伴い、無線通信システムにおけるデータ伝送の高速化を求めるユーザが増えている。データ伝送の高速化・大容量化が実現可能な通信方式の1つとしてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)に代表されるマルチキャリア伝送方式が注目されている。OFDMは、5GHz帯の無線システムであるIEEE802.11aや地上ディジタル放送で用いられている方式であり、理論上干渉の起こらない最小となる周波数間隔に数十から数千のキャリアを並べて同時に通信する方式である。通常、OFDMにおいてこのキャリアをサブキャリアと呼び、各サブキャリアをPSK、QAM等のディジタル変調して通信を行なう。さらに、OFDMと誤り訂正方式とを組み合わせることにより、周波数選択性フェージングに対して強い耐性が得られることが知られている。
【0003】
ここで、IEEE802.11aにおけるデータパケットの構成について図1を参照しつつ説明する。図1に示すように、IEEE802.11aにおいて用いられるデータパケットは、プリアンブルA、Bと、データ信号と、から構成される。このプリアンブルAは、OFDMのシンボル同期や周波数同期に用いられ、プリアンブルBはアンテナ識別や伝搬路推定に用いられる。これら2つのプリアンブルは、いずれも予め決められた信号であり、受信側においても既知の信号である。
【0004】
次に、OFDM変復調回路の構成例を、それぞれ図12、図13に示す。但し、使用されるサブキャリア数をNとしている。
【0005】
図12は一般的なOFDM変調回路の機能ブロック図である。図12において、符号1000は誤り訂正符号部であり、符号1001はシリアル/パラレル変換部(S/P変換部)であり、符号1002はマッピング部であり、符号1003はIDFT(逆離散フーリエ変換:Inverse Discrete Fourier Transform)部であり、符号1004はパラレル/シリアル(P/S変換部)であり、符号1005はプリアンブルA生成部であり、符号1006はプリアンブルB生成部であり、符号1007はマルチプレックス部であり、符号1008はガードインターバル挿入部であり、符号1009はディジタル/アナログ変換部(D/A変換部)であり、符号1010は無線送信部であり、符号1011はアンテナである。
【0006】
送信される情報データは、誤り訂正符号部1000において、誤り訂正符号化が施される。次いで、S/P変換部1001において、各キャリアの変調に必要となるデータ分シリアル/パラレル変換され、マッピング部1002において各キャリアに変調が施される。その後、IDFT部1003においてIDFTが施される。ここではOFDMの変調にIDFTを使用する例を示したが、一般の回路ではポイント数を2nの形式にし、高速逆フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)を使用することが多く、N波のOFDM信号を生成する場合には、通常、N以上でNに最も近い2nの値がIFFTのポイント数として用いられる。
【0007】
IDFT後、P/S変換部1004においてシリアルデータに変換された後、マルチプレックス部1007においてプリアンブルA及びプリアンブルBと時間多重され、図1に示すパケット構成となる。そして、GI(ガードインターバル)挿入部1008において、ガードインターバルが挿入される。ガードインターバルはOFDM信号を受信する際、シンボル間干渉を低減させるために挿入される。さらに、データはD/A変換部1009でアナログ信号に変換された後、無線送信部1010において送信するべき周波数に変換された後、アンテナ1011よりパケットが送信される。
【0008】
図13はOFDMの復調回路の構成例を示す機能ブロック図である。図13に示すように、受信機側では、基本的に送信処理と逆の処理が行なわれる。図13において、符号1020はアンテナ、符号1021は無線受信部、符号1022はA/D(アナログ/ディジタル)変換部、符号1023は同期部、符号1024はGI除去部、符号1025はS/P変換部、符号1026はDFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)部、符号1027は切り替えスイッチ、符号1028はプリアンブル乗算部、符号1029、1030は乗算部、符号1031はデマッピング部、符号1032はP/S変換部、符号1033は誤り訂正復号部である。但し、前述のように、通常、復調回路においてもDFTではなくFFTが用いられることが多い。
【0009】
アンテナ部1020で受信された電波は、無線受信部1021においてA/D変換が可能な周波数帯域へ周波数変換される。A/D変換部1022においてディジタル信号に変換されたデータは、同期部1023においてプリアンブルAを利用したOFDMシンボル同期が取られ、GI除去部1024においてガードインターバルが除去される。その後、S/P変換部1025においてパラレル変換される。そして、DFT部1026におけるDFTの後、切り替えスイッチ1027によって、DFT後の受信プリアンブルBはプリアンブル乗算部1028へ送られ、DFT後の受信データ信号は乗算部1029に送られる。プリアンブル乗算部1028では、受信されたプリアンブルBの複素共役と送信側で用いられたプリアンブルBが乗算(周波数領域において乗算)され、伝搬路の推定が行なわれる。ここで、既知の信号であるプリアンブル(プリアンブルB)を用いた伝搬路推定及び伝搬路補償について数式を用いて簡単に説明する。まず、送信側で用いられたプリアンブルをp(f)、情報信号をs(f)とする。ここでは、これらは周波数領域の信号として表現している。また、プリアンブルや情報信号が送信された後、伝搬路で受ける変動をc(f)とする場合、受信プリアンブルp’(f)及び受信情報信号s’(f)はそれぞれ以下の式で表される。ここでc(f)は、サブキャリア毎に異なる振幅変動及び位相回転を与える複素関数である。
【式1】
【0010】
但し、ここでは簡単のため受信機内熱雑音は考慮していない。これらの受信信号に対して、先程述べたように、まず、プリアンブル乗算部1028にてp’(f)の複素共役を取り、送信側で用いられたプリアンブルp(f)との乗算が行われる。これを式(3)に表す。
【式2】
【0011】
このプリアンブル乗算部1028の出力(式(3))は、乗算部1029及び乗算部1030へ送られ、それぞれ受信データ信号及び受信プリアンブルとの乗算が行われる。乗算部1029の出力を式(4)に、乗算部1030の出力を式(5)に示す。
【式3】
【0012】
式(4)に示すように、受信情報信号にプリアンブル乗算部1028の出力を乗算することにより、伝搬路変動c(f)による位相回転の影響が補償され、送信信号s(f)と等しい位相を有する信号が得られる。そして、このように得られた乗算部1029及び乗算部1030の出力(式(4)及び式(5))はデマッピング部1031に入力され、式(5)に示す伝搬路補償後のプリアンブルを基準として情報信号のデマッピングがサブキャリア毎に行われる。その後、必要なデータがP/S変換部1032においてシリアル化され、誤り訂正復号部1033において、誤り訂正が行なわれ、送信データが復号される。
【0013】
また、OFDMの高速化・高品質化を目指した方式のひとつとして、非特許文献1に記載の方式がある。通常、OFDMの各サブキャリアには異なる情報ビットが割り当てられることとなるが、非特許文献1では、全てのサブキャリアに同一の情報ビットを割り当てる方式が用いられる。このように全てのサブキャリアに同一の情報ビットを割り当てつつ高い伝送速度を維持するために、非特許文献1では、情報ビット毎に異なる位相回転量を設定し、設定した位相回転をサブキャリアに与えることにより、異なる情報ビットを同一のサブキャリアに割り当て伝送を行うことを可能としている。
【0014】
ここで、非特許文献1に示されている送信機構成の一部を図14に示す。図14に示すように、非特許文献1における送信装置では、マッピング部1050によってマッピングされた情報ビット(非特許文献1ではBPSK変調を対象としている)が、コピー部1051においてサブキャリア数分(ここではサブキャリア数をNとしている)だけコピーされ、サブキャリア変調・位相回転部1052へ入力される。このサブキャリア変調・位相回転部1052では、図14に示すように、全てのサブキャリアに情報ビットが割り当てられ、情報ビット毎に設定された位相回転が各サブキャリアに与えられる。この時、k番目の情報ビットの1番目のサブキャリアに与えられる位相回転は0、n番目のサブキャリアに与えられる位相回転は(n−1)Δθkというように、隣り合うサブキャリア間で連続する位相回転を与えている。非特許文献1では、このように位相回転が加えられたサブキャリアを全て加算し、さらに全情報ビットのサブキャリア変調部・位相回転部の出力を加算器1053において加算している。受信装置では、送信装置において与えられた位相回転の複素共役を乗算することにより、位相回転を補償し情報データの復元を行っている。非特許文献1では、このような構成とすることにより、通常のOFDMと比較して受信特性が向上し高い伝送速度が確保できることが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「D. A. Wiegandt, Z. Wu, C. R. Nassar, “High-throughput, high-performance OFDM via pseudo-orthogonal carrier interferometry spreading codes”, IEEE Transactions on Communications, vol. 51, no. 7, Jul. 2003, pp. 1123-1134.」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
複数のアンテナから同時に異なるマルチキャリア信号を送信する場合や、隣り合うセルで同一周波数帯域を用いるOFDMセルラシステムにおいて、セルエッジ付近に位置する端末がダウンリンク伝送を受信する場合には、受信側では複数の異なるマルチキャリア信号が混在するため、それぞれの信号が互いに干渉し合うこととなる。このような場合には、受信信号がいずれのアンテナから送信された信号であるか、または、いずれの基地局から送信された信号であるかを識別することが非常に困難となり、伝搬路推定精度が著しく劣化するという問題があった。
本発明は、複数のアンテナからの信号を受信する際における伝搬路推定の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による無線通信技術では、複数のアンテナから同時に送信するシンボルに、アンテナ毎に異なる位相回転を与えることにより、各アンテナから送信された信号の遅延プロファイルを受信側で分離して算出する。すなわち、複数のアンテナまたはセル毎に異なる位相回転を施したプリアンブルを送信することにより、受信側で各アンテナまたは各セルから到来する信号の遅延プロファイルを分離し、送信アンテナや送信元基地局の識別並びに伝搬路推定を行う。また、分離する遅延プロファイル数が多い場合には、異なるプリアンブルパターンを併用することにより、遅延プロファイルを高精度に分離することを実現する。
【0018】
特に、1つの送信装置に複数のアンテナを備える場合に適用でき、送信ダイバーシチにおける送信アンテナの選択が可能である。また、MIMO(Multi Input Multi Output)システムにおける送信アンテナ数の決定が可能である。
【0019】
さらに、複数の送信装置からの信号を受信する場合にも適用できる。この際には、複数の基地局からの信号を受信する場合の基地局識別に利用できる。さらに、時間シフトと符号による遅延プロファイル分離を併用することができる。すなわち、基地局識別は符号、基地局内の複数のアンテナの識別には時間シフトを利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明を用いることにより、複数の基地局から同時に送信されたOFDM信号を分離・識別し、希望信号の伝搬路推定を高精度に行うことが可能となる。また、通信開始時及びハンドオーバ時に接続すべき基地局の信号検出を高精度に行うことができる。さらに、隣接する複数基地局から同一データを送信することによりサイトダイバーシチを行うことが容易となり、セル境界付近に位置する端末における受信特性の向上を図ることができる。また、各基地局にそれぞれ複数の送信アンテナが備えられる場合には、伝搬路推定用信号として基地局固有の系列を用い、この伝搬路推定用信号に送信アンテナ毎に異なる位相回転を与えて送信することにより、分離すべき信号が多数存在する状況においても希望信号の伝搬路推定を高精度に行うことができる。
【0021】
さらに、本発明を用いることにより、複数の送信アンテナを備えた送信装置において選択送信ダイバーシチ伝送やMIMO伝送を行う際に、伝搬路状況に応じた適切な送信アンテナ又は送信アンテナ数を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態による無線通信技術において対象となるパケットフォーマット例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による無線通信装置のうち基地局側送信装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による端末側受信機の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による無線通信技術により得られる遅延プロファイルの例を示す図である。図4(a)は、送信アンテナX及び送信アンテナYから送信されるプリアンブルに位相回転が施されなかった場合に、受信側において得られる遅延プロファイルを示す図である。図4(b)は、送信アンテナYから送信されるプリアンブルに位相回転が施された場合の遅延プロファイルを示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による無線通信技術の対象となるセル配置例を図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態による基地局側送信装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態による端末側受信装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態による無線通信技術の前提となる分離すべき遅延プロファイル数が多い場合の問題点を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による送信装置の一構成例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態による受信装置の一構成例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態による送受信処理の流れを示す図である。
【図12】一般的なOFDM変調回路の構成例を示す機能ブロック図である。
【図13】一般的なOFDM復調回路の構成例を示す機能ブロック図である。
【図14】非特許文献1に記載の送信装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、マルチキャリア伝送に用いる各サブキャリアに連続的な位相回転を与えることにより時間領域における信号を時間シフトできるという性質を用いて、複数のアンテナより同時に送信され、それぞれのアンテナ毎に異なる伝搬路を経由して受信されたマルチキャリア信号を分離する技術をアンテナ識別や基地局識別に適用することを特徴とする。より具体的には、同じプリアンブルの連続するサブキャリア間の位相差を一定とし、全キャリアで2mπ(mは1以上の整数)の位相回転を与えることにより、アンテナ毎に信号を時間シフトさせることにより実現するものである。
【0024】
時間シフトプリアンブルの特徴としては、同じ符号でも、異なった符号を用いた場合と同程度の精度で各アンテナからの伝搬路応答を推定できる。従って、符号の不足を解消することができる。また、1OFDMシンボルで複数のアンテナからの伝搬路を推定することができ、スループットの低下を防止できる。
【0025】
まず、各サブキャリアに与える位相回転と信号の時間シフトとの関係について簡単に説明する。
まず、時間領域の信号をs(t)とし、s(t)を周波数領域に変換した信号をS(f
)とする。このs(t)とS(f)はフーリエ変換対であり式(6)の関係となっている。
【式4】
【0026】
このとき時間シフトの関係が成り立ち、式(7)で表される。
【式5】
【0027】
式(7)に示すように、隣り合うサブキャリア間で連続した位相回転を与えることにより(式(7)右辺)、時間領域における信号を時間シフトすることができる。したがって、このような位相回転を、例えば、全てのサブキャリアの振幅及び位相を等しく設定した信号(時間領域ではインパルス信号となる)に適用する場合にはインパルスの位置を制御することができる。
【0028】
以下では、マルチキャリア信号の一種であるOFDM信号を用いるシステムを対象として説明を行う。対象とするOFDMシステムにおいて用いられるサブキャリア数は64とする。
【0029】
ここで、本発明の実施の形態による無線通信技術において対象とするパケットフォーマットは前述と同じ図1に示すものとする。先に述べたように、図1に示すパケットは、プリアンブルAと、プリアンブルBと、データと、を有している。ここで、プリアンブルAはOFDMのシンボル同期や周波数同期に用いられ、プリアンブルBはアンテナ識別や伝搬路推定に用いられる。これら2つのプリアンブルは、いずれも予め決められた信号である。
【0030】
以下に、本発明の実施の形態について具体的に説明する。以下の実施の形態による無線通信技術においては、デジタル信号に対してフーリエ変換・逆フーリエ変換を行う手段として、主に離散フーリエ変換・逆離散フーリエ変換を用いることとしているが、高速フーリエ変換・逆高速フーリエ変換を用いることも可能である。また、送信側において、逆離散フーリエ変換が用いられ受信側において高速フーリエ変換が用いられる場合や、送信側において逆高速フーリエ変換が用いられ受信側において離散フーリエ変換が用いられる場合においても、用いられるサブキャリア数と高速フーリエ変換に用いるポイント数とを考慮した調整を行った位相回転を施すことにより、アンテナ識別や基地局識別を行うことが可能となる。
【0031】
まず、本発明の第1の実施の形態による無線通信技術について図面を参照しつつ説明を行う。
本発明の第1の実施の形態による無線通信技術は、ダウンリンク伝送を対象とし、送信(基地局)側に複数アンテナを備え、送信アンテナ選択ダイバーシチを行う場合のアンテナ選択法に関する。ここでは、複数のアンテナからOFDM信号を同時に送信するものとし、受信側においてそれぞれのアンテナから送信された信号を分離し、どのアンテナから送信された信号が最も高電力を有して受信されるかを推定する。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施の形態による無線通信装置のうち基地局側送信装置の構成例を示す図である。但し、図2においては、送信アンテナが2本備えられている場合を例にして説明する。図2に示すように、本実施の形態による基地局側送信装置は、プリアンブルA生成部010と、プリアンブルB生成部011と、位相回転部012、013と、マルチプレックス部014、015と、誤り訂正符号部016と、S/P変換部017と、マッピング部018と、切り替えスイッチ019と、IDFT部(IFFTでも良い。)020、026と、P/S変換部021、027と、GI(Guard Interval)挿入部022、028と、D/A変換部023、029と、無線送信部024、030と、アンテナ部025、031と、を有している。
【0033】
図2に示す構成のうち、プリアンブルA生成部010と、プリアンブルB生成部011とでは、それぞれプリアンブルAとプリアンブルB(図1のパケットフォーマット参照)が生成され、プリアンブルAはマルチプレックス部014、015に出力され、プリアンブルBは位相回転部012、013に出力される。プリアンブルBが入力された位相回転部012、013では、プリアンブルBの各サブキャリアに対して連続的な位相回転が与えられる。本実施の形態による基地局側送信装置では、位相回転部012では位相回転を与えず、位相回転部013においてのみプリアンブルBに位相回転を与える。このように、基地局側送信装置に備えられた2本のアンテナから送信されるプリアンブルのうち、片方のアンテナから送信されるパケット中の2番目のプリアンブルについてのみ位相回転が与えられ、その他のプリアンブルには位相回転を与えない。情報データについては、誤り訂正符号部016において誤り訂正符号化が施され、S/P変換部017を経由してマッピング部018において変調方式に応じてマッピングが施される。
【0034】
このようにして生成された情報信号は、プリアンブルBと同様の位相回転が与えられた後に、プリアンブルと時間多重され送信される。情報信号については前のパケットにおける送信アンテナの選択結果を反映し、高い受信電力が得られると判断されたアンテナからのみ送信する。このため、端末から基地局へ送信アンテナの選択結果がフィードバックされる。基地局の受信装置032において受信されたアンテナ選択情報が切り替えスイッチ019に送られ、情報信号が、選択された送信アンテナからのみ送信されるように切り替えを行う。但し、通信開始時には予め決められたいずれか一方のアンテナからのみ情報信号の送信を行う。ここでは、例としてアンテナ部025が選択されているものとして以下の説明を行う。
【0035】
上述のようにして情報信号を送信するアンテナが選択され、切り替えスイッチ019において情報信号が位相回転部012へのみ入力されるよう制御され、位相回転部012においてプリアンブルBに与えられた位相回転と同様の位相回転が情報信号にも与えられる(但し、前述のように、本実施の形態においては、位相回転部012において与える位相回転量は0としている)。このように位相回転が与えられた情報信号は、マルチプレックス部014においてプリアンブルと時間多重された後に、GI挿入部022、028においてOFDMシンボル毎にガードインターバルが付加される。この時に、GI挿入部022ではプリアンブルA、B及び情報信号から形成されるパケットについて処理が行われ、GI挿入部028ではプリアンブルA、Bのみから形成されるパケットについての処理が行われる。ガードインターバルの付加後に、送信アンテナ毎に設けられたD/A変換部023、029と、無線送信部024、030と、をそれぞれ経由し、アンテナ部025からはプリアンブルA、B及び情報信号から形成されるパケットが、アンテナ部031からはプリアンブルA、Bから形成されるパケットが同時に送信される。
【0036】
次に、本実施の形態による端末側受信機の構成例について図3を参照しつつ説明を行う。図3に示すように、本実施の形態による端末側受信機は、アンテナ部040と、無線受信部041と、A/D変換部042と、同期部043と、GI除去部044と、S/P変換部045と、DFT部(FFTでも良い。)046、052と、切り替えスイッチ047と、プリアンブル乗算部048と、IDFT部(IFFTでも良い)049と、遅延プロファイル電力測定部050と、時間フィルタ051と、伝搬路補償・デマッピング部053と、P/S変換部054と、誤り訂正復号部055と、を有している。
【0037】
前述のように、基地局側送信装置では、プリアンブルA、B及び情報信号から構成されるパケットと、プリアンブルA、Bから構成されるパケットと、がそれぞれ異なるアンテナから同時に送信される。一方、端末側受信装置では、これらのパケットがそれぞれ異なる伝搬路を経由して1本のアンテナ040により同時に受信される。
【0038】
このように異なる伝搬路を経由した2つのパケットが加算された受信信号は、無線受信部041と、A/D変換部042と、を経由して同期部043に入力される。同期部043では、プリアンブルAを用いてシンボル同期が確立され、以後の処理は適切なタイミングで行われることとなる。
【0039】
次に、GI除去部044において、送信側で付加されたガードインターバルが除去された後、S/P変換部045において、シリアル信号がパラレル信号に変換されDFT部046に入力される。そしてDFT部046では、受信した時間領域の信号が周波数領域の信号に変換され、切り替えスイッチ047に送られる。この切り替えスイッチ047では、プリアンブルBがプリアンブル乗算部048に、情報信号が伝搬路補償・デマッピング部053に送られるように切り替え制御が行われる。次に、プリアンブル乗算部048においては、送信側で用いられたプリアンブルBの複素共役をプリアンブルBの振幅の2乗で正規化した値と、受信プリアンブルBと、の乗算が行われる。ここで、受信プリアンブルBは、2本の送信アンテナから送信され異なる伝搬路を経由して到来した2つのプリアンブルBが加算された信号を示している。この乗算結果をIDFT部049において時間領域の信号に変換すると、基地局側送信装置のアンテナ部025とアンテナ部031とから送信された信号がそれぞれ経由した伝搬路の遅延プロファイルを得ることができる。但し、ここで得られる遅延プロファイルとは、伝搬路のインパルス応答を意味している。このようにして得られる遅延プロファイルの例を図4に示す。図4(a)は、送信アンテナX及び送信アンテナYから送信されるプリアンブルに位相回転が施されなかった場合に、受信側において得られる遅延プロファイルを示す図である。図4(b)は、送信アンテナYから送信されるプリアンブルに位相回転が施された場合の遅延プロファイルを示す図である。簡単化のため、図4では、送信装置及び受信装置の詳細な構成については省略しているが、受信装置については図3と同様の構成を、送信装置については、図4(a)は位相回転部がない場合、図4(b)は位相回転部がある場合の構成例を示す図であり、その他の構成については図2に示す構成と同様の構成を有する。
【0040】
まず、図4(a)に示すように、プリアンブルB生成部011により生成された全く同じプリアンブルが図2の点線部に示される基地局側送信装置の2つのアンテナX、Yから伝搬路を介して受信装置に同時に送信された場合には、受信装置におけるIDFT後(図3のIDFT部049)において得られる遅延プロファイルは、2つのアンテナから送信された信号がそれぞれ経由した伝搬路の遅延プロファイルを加算した応答となる。従って、この場合には、2つのアンテナX,Yから送信された信号がそれぞれ経由した伝搬路の遅延プロファイルを分離して求めることができない。すなわち、遅延プロファイルと時間との関係に示されるように、実線で示されるアンテナXから送信された信号の遅延プロファイルと、点線で示されるアンテナYから送信された信号の遅延プロファイルとは、受信側では合成されたものとして観測され、分離することができない。
【0041】
これに対して、図4(b)に示すように、プリアンブルB生成部011の各サブキャリアに位相回転を施す(但し、ここでは、位相回転部012と013のうち012の方では位相回転量を0とする)場合には、式(7)に示す原理より、アンテナXから送信される信号とアンテナYから送信される信号には異なる時間シフトが与えられるため、受信側では、実線で示されるアンテナXから送信された信号の遅延プロファイルと、点線で示されるアンテナYから送信された信号の遅延プロファイルとは、受信側において時間的に分離した2つの遅延プロファイルとして観測される。このように、送信側の2本のアンテナから送信する信号に予め異なる位相回転を与えておき、受信側で適切な時間フィルタリング(送信側で与えられた位相回転量に応じてフィルタリングを開始する時間またはサンプル点が決定される時間フィルタリング)を行うことにより、受信側で観測される遅延プロファイルを簡単に分離することができることがわかる。
【0042】
本実施の形態による無線通信技術においては、上述のように、分離された遅延プロファイルを図3に示す遅延プロファイル電力測定部050に入力し、1パス目の電力が高く観測された送信アンテナを選択するものとする。このため、遅延プロファイル電力測定部050において1パス目の電力が高く観測された送信アンテナを選択する旨の選択アンテナ情報を送信装置056に入力し、基地局側へフィードバックする。この選択結果は次のダウンリンク伝送に反映されることとなる。
【0043】
尚、1パス目とは、以下のような意味で用いている。すなわち、一般的に無線通信環境では、電波はさまざまな経路を経由して受信機に到来するため、経路長の差によって電波の到着時間に差が生じる。このようなマルチパス環境において、パスという表現は、通常、ある時間に到来する電波(複数の電波の合成波)のことを指しており、1パス目というのは、最も早く到来する電波のことを意味する。
【0044】
また、IDFT部049において得られた遅延プロファイルは、時間フィルタ051へ入力されて不要な部分が除去されることとなるが、プリアンブルBの後に続く情報信号は送信側のい
ずれか一方のアンテナ(例えばアンテナ部021)からのみ送信されているため、情報信号の伝搬路補償を行う際には、情報信号が送信された方のアンテナと受信アンテナとの間の伝搬路変動のみが得られればよい。そこで、時間フィルタ051(図3)は、情報信号と同じアンテナから送信されたプリアンブルBから得られる遅延プロファイルのみを通過させるように構成されており、先に述べたように、フィルタリングを開始する時間またはサンプル点は送信側で与えられた位相回転量(時間シフト量)に応じて決定される。本実施の形態では、アンテナ部025が選択されるものとしているため、送信側にて与えられている位相回転量は0であり、フィルタリングを開始する基準サンプル点も0となる。これとは逆に、アンテナ部031が選択された場合のフィルタリングは与えられた時間シフトに近い基準サンプル点から開始されることとなり、基準サンプル点以前のサンプルには0が挿入される。この時間フィルタ051の出力がDFT部052に入力され、情報信号の復調に必要な伝搬路変動推定値が得られる。次に、得られた伝搬路変動推定値と受信情報信号とが伝搬路補償・デマッピング部053に入力され、伝搬路補償及びデマッピングが行なわれる。そして、P/S変換部054を経由して、誤り訂正復号部055において誤り訂正復号が行われ、情報データが再生される。
【0045】
以上に説明した送信装置及び受信装置を用いることにより、異なるアンテナから同時に送信されるOFDM信号がそれぞれ異なる伝搬路を経由して到来した受信信号の遅延プロファイルを分離することが可能となり、1シンボルで伝搬路変動の推定と送信ダイバーシチを行う際の送信アンテナの選択とを精度良く行うことができる。但し、本実施の形態による無線通信技術では、遅延プロファイルの1パス目の電力が高く測定された送信アンテナを選択するものとしたが、代わりに全てのパスの電力を合計し、その合計値が最も高い送信アンテナを選択する等の構成でも良い。
【0046】
次に、本発明の第2の実施の形態による無線通信技術について図面を参照しつつ説明を行う。上述した本発明の第1の実施の形態による無線通信技術は、マルチキャリア伝送に用いる各サブキャリアに連続的な位相回転を与えることにより時間領域における信号を時間シフトできるという性質を利用して、複数のアンテナから同時に送信されそれぞれのアンテナ毎に異なる伝搬路を経由して受信されたマルチキャリア信号を分離する技術であった。その関連技術として、送信側だけでなく受信側にも複数のアンテナを用いたシステムとしてMIMO(Multi Input Multi Output)システムがある。本発明の第2の実施の形態による無線通信技術は、MIMOシステムを対象とするものであり、特にMIMO伝送を行う際に用いられる送信アンテナ数を伝搬路状況に応じて決定する手法に関するものである。
【0047】
まず、本発明の第2の実施の形態による送信装置の一構成例を図9に示す。図9は、送信アンテナ数が3の場合の送信装置の構成例を示す図である。図9に示すように、本実施の形態による送信装置は、プリアンブルA生成部200、プリアンブルB生成部201と、位相回転部202、203、204と、マルチプレックス部205、206、207と、データ変調部208と、切り替えスイッチ209と、IDFT部210、216、222と、P/S変換部211、217、223と、GI挿入部212、218、224と、D/A変換部213、219、225と、無線送信部214、220、226と、アンテナ部215、221、227と、を有している。図9に示すように、本実施の形態による送信装置は、2つのプリアンブル生成部200、201と、これらのプリアンブル生成部200、201からの出力信号を直接に、又は、位相回転部を介して信号処理するいずれかを選択できるように構成されている。
【0048】
図9に示す送信装置における基本的なデータ送信処理の例について以下に説明する。送信すべき情報データが発生し送信処理を開始する際には、まず、情報データとして使用するアンテナ数分の異なるストリームが生成され、データ変調部208においてデータストリーム毎に誤り訂正符号化や変調が行われる。このようにアンテナ毎に異なるデータストリームを伝送するMIMO伝送を行う場合、例えば3本のアンテナを全て使用すると、1本のアンテナのみを使用して伝送した場合と比較して3倍の伝送容量を得ることができる。データ変調部208における変調後に、切り替えスイッチ209によって、各ストリームはそれぞれが伝送されるアンテナの系統に振り分けられる。そして、それぞれの系統の位相回転部202、203、204においてそれぞれプリアンブルBに与えられた回転量(アンテナ系統毎に異なる位相回転量)と同じ位相回転が与えられ、マルチプレックス部205、206、207においてプリアンブルA及びプリアンブルBと時間多重される。その後、それぞれのアンテナ系統においてIDFTが行われP/S変換された信号に、GI挿入部においてガードインターバルが付加される。さらに、D/A変換が行われ、無線送信部において無線周波数帯に周波数変換された後、アンテナ部からそれぞれの信号ストリームが送信されることとなる。
【0049】
図10は、本実施の形態による無線通信技術に用いられる受信装置の一構成例を示す図である。但し、図10は、受信アンテナ数が3の場合の例を示す図である。図10に示すように、本実施の形態による受信装置は、アンテナ部250、260、270と、無線受信部251、261、271と、A/D変換部252、262、272と、同期部253、263、273と、GI除去部254、264、274と、S/P変換部255、265、275と、DFT部256、266、276と、切り替えスイッチ257、267、277と、プリアンブル乗算部258、268、278と、IDFT部259、269、279と、最大遅延時間測定部280及び復調部281と、を有している。
【0050】
図10に示す送信装置における基本的なデータ復調処理例について以下に説明する。図10に示すアンテナ部250、260、270では、送信装置に備えられた複数アンテナから送信され伝搬路を経由した信号がそれぞれ受信される。例えば、図10に示すアンテナ部250では、送信装置において3本のアンテナから異なる情報信号ストリームが送信される場合に、それぞれ異なる伝搬路を経由した3つの情報信号ストリームが混在した信号が受信される。同様に、アンテナ部260、270においても、それぞれ異なる伝搬路を経由した3つの情報信号ストリームが混在した信号が受信される。このような受信信号に対して、無線受信部251、261、271では、A/D変換可能な周波数帯への周波数変換が行われ、A/D変換部252、262、272においてA/D変換が行われた後、同期部253、263、273においてOFDMシンボル同期が取られる。この同期部253、263、273における同期処理は、プリアンブルAを利用して行われる。その後、GI除去部254、264、274においてガードインターバルの除去が行われ、S/P変換部255、265、275においてS/P変換された後、DFT部256、266、276において時間領域の受信信号の周波数領域への変換が行われる。そして、切り替えスイッチ257、267、277においてプリアンブルBはプリアンブル乗算部258、268、278へ、受信情報信号は復調部281へ送られるよう制御される。
【0051】
プリアンブル乗算部258、268、278のそれぞれにおいては、送信側で用いられたプリアンブルBの複素共役をプリアンブルBの振幅の2乗で正規化した値と、受信プリアンブルBと、の乗算が行われる。この乗算結果がIDFT部259、269、279にそれぞれ入力されると、これまでの実施の形態においても説明したように、各送信アンテナから送信された信号が経由した伝搬路の遅延プロファイルが、送信アンテナ毎に分離された状態で得られる。これは、送信側においてアンテナ毎に異なる位相回転をプリアンブルに与えているため、式(7)の関係から、時間信号がアンテナ毎に時間シフトすることとなるためである。このように、送信アンテナ毎に分離された遅延プロファイルから、各情報信号ストリームに対する伝搬路変動の補償を行うことが可能となるため、IDFT部259、269、279の出力と各受信アンテナにより受信された情報信号とを復調部281に入力させる構成とすることにより、復調部281において情報データの復調を行うことができる。
【0052】
以上に説明した構成を有するMIMOシステム送受信装置において、情報信号ストリームを送信するアンテナ数を伝搬路状況に応じて変更する場合の制御の流れを示すフローチャート図を図11に示す。まず、送信側の制御の流れについて説明する。図11(a:図面左側)に示すように、本実施の形態による送信装置では、データパケットの送信に先立ち、まず、位相回転部において与えられる位相回転量を0に設定し(位相回転無し)、プリアンブルA、Bのみから構成される信号をある1つのアンテナのみから送信する(ステップ001〜002)。
【0053】
次いで、ステップ003に示すように、受信側からフィードバックされた送信アンテナ数情報を受信装置において受信する。次に、ステップ003において受信された送信アンテナ数情報に基づき、各アンテナから送信するプリアンブルB及び情報信号に与える位相回転量に関してアンテナ毎に異なる値に設定し(ステップ004)、送信アンテナ数情報で通知された数のアンテナを用いてデータパケットの送信を行う。但し、前述のように、アンテナ毎に異なる情報信号ストリームを送信するものとする。
【0054】
次に、受信側の制御処理の流れについて説明する。図11(b)に示すように、本実施の形態による受信装置では、送信側から送られたプリアンブルA及びプリアンブルBのみから構成される信号を例えば3本の受信アンテナによって受信し(ステップ010)、先に述べた復調手順と同様の処理を行い、IDFT部259、269、279において、それぞれ遅延プロファイルを算出する(ステップ011)。次に、算出された遅延プロファイルを図10に示す最大遅延時間測定部280に送り、全ての遅延プロファイルの中で最も遅延時間の大きい(最も遅く到来する)パスの遅延時間τmaxを算出する(ステップ012)。次いで、ステップ013、015に示すように、このτmaxがGI(ガードインターバル)長のどれほどの割合を占めるかを判定する。
【0055】
まずステップ013ではτmaxとGI長の1/3とを比較し、τmaxの方が短いと判断された場合には(Yes)ステップ014へ移り、τmaxの方が長いと判断された場合には(No)ステップ015へ移る。ステップ013においてτmaxの方が短いと判断された場合には、3本の送信アンテナから送信するプリアンブルBに与える位相回転量を、例えば、位相回転部202では0、位相回転部203では時間シフト量がGI長の1/3になる位相回転量、位相回転部204では時間シフト量がGI長の2/3になる位相回転量に設定することにより、受信側において遅延プロファイル同士が干渉し合うことなく分離することができる。従って、この場合には、ステップ014に示すように送信アンテナ数情報を3に設定する。
【0056】
逆に、ステップ013においてτmaxの方が長いと判断された場合に、3本のアンテナを用いて送信すると、受信側において遅延プロファイル同士が干渉することとなり(図8(b)参照)、正しい伝搬路推定が行えない。すなわち、基地局の異なるアンテナから送信された遅延プロファイルが干渉し合い、分離ができなくなる。従って、この場合には3本のアンテナを用いた送信を行うことをせずに、ステップ015に移り、τmaxとGI長の1/2の長さとを比較する。
【0057】
ステップ015においてGI長の1/2の長さよりもτmaxの方が短いと判断された場合には(YES)、2本の送信アンテナから送信するプリアンブルBに与える位相回転量を、例えば、位相回転部202では0、位相回転部203では時間シフト量がGI長の1/2になる位相回転量に設定することにより、受信側において遅延プロファイル同士が干渉し合うことなく遅延プロファイルを分離することができる。従って、この場合にはステップ016に示すように送信アンテナ数情報を2に設定する。逆に、ステップ015においてGI長の1/2の長さよりもτmaxの方が長いと判断された場合に(NO)、2本のアンテナを用いて送信すると、受信側において遅延プロファイル同士が干渉し(図8(b)参照)、正しい伝搬路推定を行うことができない。従って、この場合には2本のアンテナを用いた送信を行うことをせずに、ステップ017に移り送信アンテナ数情報を1に設定する。
【0058】
以上の処理により、送信側へフィードバックする送信アンテナ数情報が得られるため、
ステップ018に示すように、受信機側送信装置282(図10)を用いて送信アンテナ数情報を送信側へフィードバックすることができる。この送信アンテナ数情報に基づき、送信側では送信アンテナ数情報と同数の情報信号ストリームが生成され、データパケットが送信されるため(ステップ003〜005)、受信装置ではデータパケットの受信及び復調を行うことができる(ステップ019)。
【0059】
以上のように、本実施の形態による無線通信技術においては、遅延プロファイルの分離を行うことができるため、受信装置に到来する遅延波の遅延時間が大きく変動する環境においても、適切な送信アンテナ数を選択し高精度な伝搬路変動の推定が可能となり、安定したMIMO伝送を実現することができるという利点がある。
次に、本発明の第3の実施の形態による、無線通信技術について図面を参照しつつ説明を行う。
【0060】
上述のように、本発明の第1及び第2の実施の形態においては、1つの送信装置に複数のアンテナが備えられている構成に対して本発明を適用する例について示したが、単一アンテナを有する送信装置が複数存在する場合において、それぞれの送信装置に異なる位相回転を与えることにより、異なる送信装置から送信された信号の遅延プロファイルについても同様に分離して得ることができる。
【0061】
本発明の第3の実施の形態による無線通信技術は、かかる構成を基地局識別に利用するものである。
まず、本実施の形態による無線通信技術の対象となるセル配置例を図5に示す。ここでは、図5に示すように、3つの基地局S、T、Uがそれぞれカバーするセルの境界に端末Vが位置する場合の基地局識別技術について説明する。但し、全ての基地局は同期しているものとし、全てのセルで同一周波数が用いられるものとする。
【0062】
図6は、本発明の第3の実施の形態による基地局側送信装置の構成例を示す図である。
図6に示すように、本実施の形態による基地局側送信装置は、プリアンブルA生成部100と、プリアンブルB生成部101と、位相回転部102と、マルチプレックス部103と、誤り訂正符号部104と、S/P変換部105と、マッピング部106と、IDFT部107と、P/S変換部108と、GI挿入部109と、D/A変換部110と、無線送信部111と、アンテナ部112と、を有している。この構成例は第1の実施の形態において送信アンテナ数を1とした場合と同じである。尚、基地局S、T、Uの全てにおいて同じ構成となっているものとする。
【0063】
図6に示すように、本実施の形態による基地局装置のプリアンブルA生成部100及びプリアンブルB生成部101では、それぞれプリアンブルA及びプリアンブルBが生成され、プリアンブルAはマルチプレックス部103に、プリアンブルBは位相回転部102に送られる。位相回転部102では、プリアンブルBの各サブキャリアに対して連続的な位相回転が与えられることとなるが、ここで与えられる位相回転量は各基地局において異なる値に設定する。すなわち、例えば、基地局Sでは位相回転量を0、基地局Tでは2mπ、基地局Uでは2nπのように設定する。但し、m及びnはm≠nを満たす1より大きい整数である。このように、基地局毎に異なる位相回転量を設定しておくことにより、端末側において各基地局から到来する信号の遅延プロファイルを分離することが可能となり、接続する候補となる基地局を検知することができる。
【0064】
また、ダウンリンクにおける情報データは、誤り訂正符号部104において誤り訂正符号化され、S/P変換部105を経由してマッピング部106において変調方式に応じてマッピングが施される。但し、この時の情報データは端末V向けのデータではなく、セル全体に報知する制御情報であるか、或いは、基地局に接続済みの端末向けのデータである。このようにして生成された情報データは、位相回転部102においてプリアンブルBと同じ位相回転が与えられた後、マルチプレックス部103においてプリアンブルと時間多重され、IDFT部107、P/S変換部108、GI挿入部109、D/A変換部110、無線送信部111を経由してアンテナ部112から送信される。
【0065】
次に、本実施の形態による無線通信技術に適用される端末側受信装置の構成例について説明する。図7は本実施の形態による端末側受信装置の構成例を示す機能ブロック図である。図7に示すように、本実施の形態による端末側受信装置は、アンテナ部150と、無線受信部151と、A/D変換部152と、同期部153と、GI除去部154と、S/P変換部155と、DFT部(FFTでも良い)156と、切り替えスイッチ157と、プリアンブル乗算部158と、IDFT部(IFFTでも良い)159と、遅延プロファイル電力測定部160と、復調部161と、を有している。図7に示す端末側受信装置は、図3に示す第1の実施の形態による端末側受信装置とほぼ同じ構成を有している。まず、アンテナ部150では、基地局S、T、Uのそれぞれから送信された信号が同時に受信される。これらの各基地局から送信された信号が混在した受信信号は、無線受信部151、A/D変換部152を経て同期部153で同期が確立される。
【0066】
同期部153では、プリアンブルAを利用して同期を取ることとなるが、プリアンブルAは全ての基地局で共通の信号となっており、各基地局から送信された信号が混在する場合でも同期を取ることができる。同期が確立した後、受信信号(プリアンブルB及び情報データ)は、GI除去部154においてガードインターバルが除去され、S/P変換部155を経由して、DFT部156において時間領域の信号から周波数領域の信号へ変換される。
【0067】
次に、切り替えスイッチ157により、受信プリアンブルBはプリアンブル乗算部158へ送られ、受信データ信号は復調部161へ送られる。プリアンブル乗算部158では、送信側で用いられたプリアンブルBの複素共役をプリアンブルBの振幅の2乗で正規化した値と、受信プリアンブルBと、の乗算が行われる。この乗算の結果をIDFT部159において時間領域の信号に変換すると、基地局S、T、Uからそれぞれ送信された信号がそれぞれ経由した伝搬路の遅延プロファイルを時間的に分離して得ることができる。これは、基地局S、T、Uにおいて、周波数領域におけるプリアンブルBにそれぞれ異なる位相回転を施すことにより、式(7)の関係から、時間領域における信号を時間シフトさせたことによる。このように、位相回転を施すことによりプリアンブルを時間的に分離することにより、他のセルからの干渉を受けることのない遅延プロファイルを得ることができる。
【0068】
このように、基地局毎に分離された遅延プロファイルを測定することにより、接続先の候補となる基地局を検知することができる。さらに、基地局毎に分離された遅延プロファイルは、遅延プロファイル電力測定部160及び復調部161へ送られる。遅延プロファイル電力測定部160では、各遅延プロファイルについて1パス目の電力を測定・比較し、いずれの基地局から送信された信号が最も高電力を有して受信されるかを判断する。この結果、最も高電力を有して受信されると判断された信号を送信した基地局への接続を試みることができ、端末側送信装置162から基地局へ宛てた信号が送信されることとなる。また、復調部161では、基地局毎に分離された遅延プロファイルを用いた伝搬路補償が行なわれ、制御情報等の情報データの復調が行われる。
【0069】
以上の構成とすることにより、本実施の形態による無線通信システムでは、隣り合うセルで同一周波数を用いるOFDMセルラシステムにおいて、他セルからの干渉の影響を受けることなく接続先の候補となる基地局を識別することができる。また、分離された遅延プロファイルの電力を測定することにより、接続すべき基地局の判定を精度良く行うことができる。尚、本実施の形態では、遅延プロファイルの1パス目の電力が高く測定された基地局を接続先の基地局として選択するものとしたが、全てのパスの電力を合計し、その合計値が最も高い基地局を選択するようにしても良い。
【0070】
また、前述のように、基地局毎に異なる位相回転を施したプリアンブルを同時に送信することにより、それぞれの基地局から送信された信号の遅延プロファイルを分離して得ることができるため、基地局に接続した後の端末がセルエッジ付近に位置する場合には、隣接セルの基地局から到来する信号の遅延プロファイルを算出し、ハンドオーバ先の候補となる基地局を検出する処理を行うことも可能である。この場合には、接続している基地局以外の遅延プロファイルの中から、最も高電力を有する遅延プロファイルが得られる信号を送信した基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する。
【0071】
さらに、本実施の形態による無線通信システムでは、隣接する複数の基地局装置から、
ある端末に対するデータを同時に送信することにより、容易にサイトダイバーシチ(ソフトコンバイン受信)を行うことができる。これにより、セル境界付近に位置する端末における受信特性を向上することが可能となる。
【0072】
次に、本発明の第4の実施の形態による無線通信技術について図面を参照しつつ説明を行う。本発明の第3の実施の形態は、セルラシステムの各基地局においてそれぞれ異なる位相回転を施したプリアンブルを送信することにより、受信側ではそれぞれの基地局から送信された信号が経由する伝搬路の遅延プロファイルを分離して測定することが可能となることを利用して、分離して測定された遅延プロファイルに基づいて接続先基地局を選択することを特徴とする。かかる特徴を、各基地局が複数のアンテナを有しているシステム、つまり、各基地局において第1の実施の形態で示した送信アンテナ選択ダイバーシチのような方式が用いられているシステムに適用する場合には、基地局の識別と、基地局に設けられた複数アンテナの識別・選択と、を同時に行う必要がある。この場合には、分離しなければならない遅延プロファイル数は、(基地局数)×(各基地局のアンテナ数)となり、非常に多くなる。このように、分離しなければならない遅延プロファイル数が多い場合には次のような問題が生じる。この問題点について図8を参照しながら説明を行う。
【0073】
図8(a)に示すように、3つのセルにそれぞれ基地局K、L、Mが配置されており、
それぞれの基地局K、L、Mがアンテナ1とアンテナ2とを有している。そして、3つのセルの境界近傍に端末Jが位置している状況において、先に述べた第1の実施の形態又は第3の実施の形態を適用する場合には、各基地局のアンテナ毎に異なる位相回転をプリアンブルBに与え、各基地局の各アンテナから送信される信号が経由する伝搬路の遅延プロファイルを端末において分離することとなる。このように、分離する対象及び遅延波が多い場合には、アンテナ毎に与える時間シフト量の差が少なくなる。従って、図8(b)に示すように、分離後の遅延プロファイルが干渉し合うことがある。図8(b)に示す例では、基地局Kのアンテナ1から送信された信号の遅延プロファイルにおける最後のパスと、基地局Lのアンテナ1から送信された信号の遅延プロファイルにおける最初のパスが干渉しており、それ以外のパスも図8(b)に示すような干渉が生じている。このように隣り合う遅延プロファイル同士が干渉しあう場合には、基地局識別及びアンテナ選択に大きな誤差が生じるため、分離すべき遅延プロファイルの数が非常に多い場合には第1の実施の形態及び第3の実施の形態による遅延プロファイルの分離方法では分離が困難になる。尚、図では、説明のため隣り合うプロファイル同士をやや時間軸においてずらして表現しているが、実際には完全に重なり合成されている。
【0074】
そこで、かかる問題に対して、本発明の第4の実施の形態による無線通信技術では、サブキャリアに対して連続的な位相回転を与えることにより時間領域の信号を時間シフトする手法に加え、異なるプリアンブルパターンを用いた遅延プロファイルの分離法を基地局識別及びアンテナ選択に適用することを特徴とする。
【0075】
本実施の形態においては、各基地局に複数アンテナが備えられているセルラシステムにおいて、端末において各基地局の各アンテナから送信された信号の遅延プロファイルを分離する際に、各基地局の遅延プロファイルは、各基地局に固有のプリアンブルパターンで分離され、各基地局に備えられたアンテナ毎の遅延プロファイルは第1、第3の実施の形態と同様に、時間シフト(位相回転量)で分離する。この際の各基地局の送信装置は、図2に示す構成と同様の構成で実現できる。但し、本実施の形態では、プリアンブルBは基地局毎に固有のパターンを用いる必要がある。また、位相回転部012、013における位相回転量はアンテナ毎に異なる値に設定する必要がある。但し、基地局毎には位相回転量を共通の値に設定してもよい。
【0076】
本実施の形態による端末側受信装置も、図7に示す構成により実現できる。但し、本実施の形態では、プリアンブル乗算部158に基地局毎のプリアンブルパターン(図8に示す状況では基地局K、L、Mでそれぞれ用いられるプリアンブルパターン)を保持しておき、各基地局から送信された信号が混在した受信信号にそれぞれのプリアンブルパターンを乗算し基地局毎の遅延プロファイルを分離する。この際、基地局K、L、Mで用いられるプリアンブルパターンには相関がないものとすると、受信信号に基地局Kで用いられたプリアンブルパターンを乗算した場合には、基地局L、Mから送信された信号の遅延プロファイルは雑音状の波形となり、基地局Kの2つのアンテナから送信された信号が経由した伝搬路の遅延プロファイルのみがIDFT部159から得られる。
【0077】
同様に、受信信号に基地局Lで用いられたプリアンブルパターンを乗算した場合には、
基地局Lの2つのアンテナから送信された信号が経由した伝搬路の遅延プロファイルのみが得られ、受信信号に基地局Mで用いられたプリアンブルパターンを乗算した場合には、基地局Mの2つのアンテナから送信された信号が経由した伝搬路の遅延プロファイルのみが得られる。このように、送信側においてプリアンブルの各サブキャリアに連続的な位相回転を与え、時間波形をシフトすることによる遅延プロファイルの分離のみでなく異なるプリアンブルパターンを用いることによる遅延プロファイルの分離も行うことにより、基地局に複数のアンテナが備えられている場合等、分離すべき遅延プロファイルが非常に多い場合にも、高精度な遅延プロファイルの測定、つまり基地局識別やアンテナ選択を行うことができる。
【0078】
また、本実施の形態とは逆に、アンテナ毎に異なるプリアンブルパターンを用いてアンテナ毎の遅延プロファイルを分離し、基地局毎に異なる時間シフトをプリアンブルに与えることにより基地局毎の遅延プロファイルを分離する手法を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、無線通信システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
010…プリアンブルA生成部、011…プリアンブルB生成部、012、013…位相回転部、014、015…マルチプレックス部、016…誤り訂正符号部、017…S/P変換部、018…マッピング部、019…切り替えスイッチ、020、026…IDFT部、021、027…P/S変換部、022、028…GI(Guard Interval)挿入部、023、029…D/A変換部、024、030…無線送信部、025、031…アンテナ部、040…アンテナ部、041…無線受信部、042…A/D変換部、043…同期部、044…GI除去部、045…S/P変換部、046、052…DFT部、047…切り替えスイッチ、048…プリアンブル乗算部、049…IDFT部、050…遅延プロファイル電力測定部、051…時間フィルタ、053…伝搬路補償・デマッピング部、054…P/S変換部、055…誤り訂正復号部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関し、特に、複数のアンテナを備える無線送信装置及び、かかる無線送信装置からの信号を受信する無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信容量の増大に伴い、無線通信システムにおけるデータ伝送の高速化を求めるユーザが増えている。データ伝送の高速化・大容量化が実現可能な通信方式の1つとしてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)に代表されるマルチキャリア伝送方式が注目されている。OFDMは、5GHz帯の無線システムであるIEEE802.11aや地上ディジタル放送で用いられている方式であり、理論上干渉の起こらない最小となる周波数間隔に数十から数千のキャリアを並べて同時に通信する方式である。通常、OFDMにおいてこのキャリアをサブキャリアと呼び、各サブキャリアをPSK、QAM等のディジタル変調して通信を行なう。さらに、OFDMと誤り訂正方式とを組み合わせることにより、周波数選択性フェージングに対して強い耐性が得られることが知られている。
【0003】
ここで、IEEE802.11aにおけるデータパケットの構成について図1を参照しつつ説明する。図1に示すように、IEEE802.11aにおいて用いられるデータパケットは、プリアンブルA、Bと、データ信号と、から構成される。このプリアンブルAは、OFDMのシンボル同期や周波数同期に用いられ、プリアンブルBはアンテナ識別や伝搬路推定に用いられる。これら2つのプリアンブルは、いずれも予め決められた信号であり、受信側においても既知の信号である。
【0004】
次に、OFDM変復調回路の構成例を、それぞれ図12、図13に示す。但し、使用されるサブキャリア数をNとしている。
【0005】
図12は一般的なOFDM変調回路の機能ブロック図である。図12において、符号1000は誤り訂正符号部であり、符号1001はシリアル/パラレル変換部(S/P変換部)であり、符号1002はマッピング部であり、符号1003はIDFT(逆離散フーリエ変換:Inverse Discrete Fourier Transform)部であり、符号1004はパラレル/シリアル(P/S変換部)であり、符号1005はプリアンブルA生成部であり、符号1006はプリアンブルB生成部であり、符号1007はマルチプレックス部であり、符号1008はガードインターバル挿入部であり、符号1009はディジタル/アナログ変換部(D/A変換部)であり、符号1010は無線送信部であり、符号1011はアンテナである。
【0006】
送信される情報データは、誤り訂正符号部1000において、誤り訂正符号化が施される。次いで、S/P変換部1001において、各キャリアの変調に必要となるデータ分シリアル/パラレル変換され、マッピング部1002において各キャリアに変調が施される。その後、IDFT部1003においてIDFTが施される。ここではOFDMの変調にIDFTを使用する例を示したが、一般の回路ではポイント数を2nの形式にし、高速逆フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)を使用することが多く、N波のOFDM信号を生成する場合には、通常、N以上でNに最も近い2nの値がIFFTのポイント数として用いられる。
【0007】
IDFT後、P/S変換部1004においてシリアルデータに変換された後、マルチプレックス部1007においてプリアンブルA及びプリアンブルBと時間多重され、図1に示すパケット構成となる。そして、GI(ガードインターバル)挿入部1008において、ガードインターバルが挿入される。ガードインターバルはOFDM信号を受信する際、シンボル間干渉を低減させるために挿入される。さらに、データはD/A変換部1009でアナログ信号に変換された後、無線送信部1010において送信するべき周波数に変換された後、アンテナ1011よりパケットが送信される。
【0008】
図13はOFDMの復調回路の構成例を示す機能ブロック図である。図13に示すように、受信機側では、基本的に送信処理と逆の処理が行なわれる。図13において、符号1020はアンテナ、符号1021は無線受信部、符号1022はA/D(アナログ/ディジタル)変換部、符号1023は同期部、符号1024はGI除去部、符号1025はS/P変換部、符号1026はDFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)部、符号1027は切り替えスイッチ、符号1028はプリアンブル乗算部、符号1029、1030は乗算部、符号1031はデマッピング部、符号1032はP/S変換部、符号1033は誤り訂正復号部である。但し、前述のように、通常、復調回路においてもDFTではなくFFTが用いられることが多い。
【0009】
アンテナ部1020で受信された電波は、無線受信部1021においてA/D変換が可能な周波数帯域へ周波数変換される。A/D変換部1022においてディジタル信号に変換されたデータは、同期部1023においてプリアンブルAを利用したOFDMシンボル同期が取られ、GI除去部1024においてガードインターバルが除去される。その後、S/P変換部1025においてパラレル変換される。そして、DFT部1026におけるDFTの後、切り替えスイッチ1027によって、DFT後の受信プリアンブルBはプリアンブル乗算部1028へ送られ、DFT後の受信データ信号は乗算部1029に送られる。プリアンブル乗算部1028では、受信されたプリアンブルBの複素共役と送信側で用いられたプリアンブルBが乗算(周波数領域において乗算)され、伝搬路の推定が行なわれる。ここで、既知の信号であるプリアンブル(プリアンブルB)を用いた伝搬路推定及び伝搬路補償について数式を用いて簡単に説明する。まず、送信側で用いられたプリアンブルをp(f)、情報信号をs(f)とする。ここでは、これらは周波数領域の信号として表現している。また、プリアンブルや情報信号が送信された後、伝搬路で受ける変動をc(f)とする場合、受信プリアンブルp’(f)及び受信情報信号s’(f)はそれぞれ以下の式で表される。ここでc(f)は、サブキャリア毎に異なる振幅変動及び位相回転を与える複素関数である。
【式1】
【0010】
但し、ここでは簡単のため受信機内熱雑音は考慮していない。これらの受信信号に対して、先程述べたように、まず、プリアンブル乗算部1028にてp’(f)の複素共役を取り、送信側で用いられたプリアンブルp(f)との乗算が行われる。これを式(3)に表す。
【式2】
【0011】
このプリアンブル乗算部1028の出力(式(3))は、乗算部1029及び乗算部1030へ送られ、それぞれ受信データ信号及び受信プリアンブルとの乗算が行われる。乗算部1029の出力を式(4)に、乗算部1030の出力を式(5)に示す。
【式3】
【0012】
式(4)に示すように、受信情報信号にプリアンブル乗算部1028の出力を乗算することにより、伝搬路変動c(f)による位相回転の影響が補償され、送信信号s(f)と等しい位相を有する信号が得られる。そして、このように得られた乗算部1029及び乗算部1030の出力(式(4)及び式(5))はデマッピング部1031に入力され、式(5)に示す伝搬路補償後のプリアンブルを基準として情報信号のデマッピングがサブキャリア毎に行われる。その後、必要なデータがP/S変換部1032においてシリアル化され、誤り訂正復号部1033において、誤り訂正が行なわれ、送信データが復号される。
【0013】
また、OFDMの高速化・高品質化を目指した方式のひとつとして、非特許文献1に記載の方式がある。通常、OFDMの各サブキャリアには異なる情報ビットが割り当てられることとなるが、非特許文献1では、全てのサブキャリアに同一の情報ビットを割り当てる方式が用いられる。このように全てのサブキャリアに同一の情報ビットを割り当てつつ高い伝送速度を維持するために、非特許文献1では、情報ビット毎に異なる位相回転量を設定し、設定した位相回転をサブキャリアに与えることにより、異なる情報ビットを同一のサブキャリアに割り当て伝送を行うことを可能としている。
【0014】
ここで、非特許文献1に示されている送信機構成の一部を図14に示す。図14に示すように、非特許文献1における送信装置では、マッピング部1050によってマッピングされた情報ビット(非特許文献1ではBPSK変調を対象としている)が、コピー部1051においてサブキャリア数分(ここではサブキャリア数をNとしている)だけコピーされ、サブキャリア変調・位相回転部1052へ入力される。このサブキャリア変調・位相回転部1052では、図14に示すように、全てのサブキャリアに情報ビットが割り当てられ、情報ビット毎に設定された位相回転が各サブキャリアに与えられる。この時、k番目の情報ビットの1番目のサブキャリアに与えられる位相回転は0、n番目のサブキャリアに与えられる位相回転は(n−1)Δθkというように、隣り合うサブキャリア間で連続する位相回転を与えている。非特許文献1では、このように位相回転が加えられたサブキャリアを全て加算し、さらに全情報ビットのサブキャリア変調部・位相回転部の出力を加算器1053において加算している。受信装置では、送信装置において与えられた位相回転の複素共役を乗算することにより、位相回転を補償し情報データの復元を行っている。非特許文献1では、このような構成とすることにより、通常のOFDMと比較して受信特性が向上し高い伝送速度が確保できることが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「D. A. Wiegandt, Z. Wu, C. R. Nassar, “High-throughput, high-performance OFDM via pseudo-orthogonal carrier interferometry spreading codes”, IEEE Transactions on Communications, vol. 51, no. 7, Jul. 2003, pp. 1123-1134.」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
複数のアンテナから同時に異なるマルチキャリア信号を送信する場合や、隣り合うセルで同一周波数帯域を用いるOFDMセルラシステムにおいて、セルエッジ付近に位置する端末がダウンリンク伝送を受信する場合には、受信側では複数の異なるマルチキャリア信号が混在するため、それぞれの信号が互いに干渉し合うこととなる。このような場合には、受信信号がいずれのアンテナから送信された信号であるか、または、いずれの基地局から送信された信号であるかを識別することが非常に困難となり、伝搬路推定精度が著しく劣化するという問題があった。
本発明は、複数のアンテナからの信号を受信する際における伝搬路推定の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による無線通信技術では、複数のアンテナから同時に送信するシンボルに、アンテナ毎に異なる位相回転を与えることにより、各アンテナから送信された信号の遅延プロファイルを受信側で分離して算出する。すなわち、複数のアンテナまたはセル毎に異なる位相回転を施したプリアンブルを送信することにより、受信側で各アンテナまたは各セルから到来する信号の遅延プロファイルを分離し、送信アンテナや送信元基地局の識別並びに伝搬路推定を行う。また、分離する遅延プロファイル数が多い場合には、異なるプリアンブルパターンを併用することにより、遅延プロファイルを高精度に分離することを実現する。
【0018】
特に、1つの送信装置に複数のアンテナを備える場合に適用でき、送信ダイバーシチにおける送信アンテナの選択が可能である。また、MIMO(Multi Input Multi Output)システムにおける送信アンテナ数の決定が可能である。
【0019】
さらに、複数の送信装置からの信号を受信する場合にも適用できる。この際には、複数の基地局からの信号を受信する場合の基地局識別に利用できる。さらに、時間シフトと符号による遅延プロファイル分離を併用することができる。すなわち、基地局識別は符号、基地局内の複数のアンテナの識別には時間シフトを利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明を用いることにより、複数の基地局から同時に送信されたOFDM信号を分離・識別し、希望信号の伝搬路推定を高精度に行うことが可能となる。また、通信開始時及びハンドオーバ時に接続すべき基地局の信号検出を高精度に行うことができる。さらに、隣接する複数基地局から同一データを送信することによりサイトダイバーシチを行うことが容易となり、セル境界付近に位置する端末における受信特性の向上を図ることができる。また、各基地局にそれぞれ複数の送信アンテナが備えられる場合には、伝搬路推定用信号として基地局固有の系列を用い、この伝搬路推定用信号に送信アンテナ毎に異なる位相回転を与えて送信することにより、分離すべき信号が多数存在する状況においても希望信号の伝搬路推定を高精度に行うことができる。
【0021】
さらに、本発明を用いることにより、複数の送信アンテナを備えた送信装置において選択送信ダイバーシチ伝送やMIMO伝送を行う際に、伝搬路状況に応じた適切な送信アンテナ又は送信アンテナ数を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態による無線通信技術において対象となるパケットフォーマット例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による無線通信装置のうち基地局側送信装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による端末側受信機の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による無線通信技術により得られる遅延プロファイルの例を示す図である。図4(a)は、送信アンテナX及び送信アンテナYから送信されるプリアンブルに位相回転が施されなかった場合に、受信側において得られる遅延プロファイルを示す図である。図4(b)は、送信アンテナYから送信されるプリアンブルに位相回転が施された場合の遅延プロファイルを示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による無線通信技術の対象となるセル配置例を図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態による基地局側送信装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態による端末側受信装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態による無線通信技術の前提となる分離すべき遅延プロファイル数が多い場合の問題点を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による送信装置の一構成例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態による受信装置の一構成例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態による送受信処理の流れを示す図である。
【図12】一般的なOFDM変調回路の構成例を示す機能ブロック図である。
【図13】一般的なOFDM復調回路の構成例を示す機能ブロック図である。
【図14】非特許文献1に記載の送信装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、マルチキャリア伝送に用いる各サブキャリアに連続的な位相回転を与えることにより時間領域における信号を時間シフトできるという性質を用いて、複数のアンテナより同時に送信され、それぞれのアンテナ毎に異なる伝搬路を経由して受信されたマルチキャリア信号を分離する技術をアンテナ識別や基地局識別に適用することを特徴とする。より具体的には、同じプリアンブルの連続するサブキャリア間の位相差を一定とし、全キャリアで2mπ(mは1以上の整数)の位相回転を与えることにより、アンテナ毎に信号を時間シフトさせることにより実現するものである。
【0024】
時間シフトプリアンブルの特徴としては、同じ符号でも、異なった符号を用いた場合と同程度の精度で各アンテナからの伝搬路応答を推定できる。従って、符号の不足を解消することができる。また、1OFDMシンボルで複数のアンテナからの伝搬路を推定することができ、スループットの低下を防止できる。
【0025】
まず、各サブキャリアに与える位相回転と信号の時間シフトとの関係について簡単に説明する。
まず、時間領域の信号をs(t)とし、s(t)を周波数領域に変換した信号をS(f
)とする。このs(t)とS(f)はフーリエ変換対であり式(6)の関係となっている。
【式4】
【0026】
このとき時間シフトの関係が成り立ち、式(7)で表される。
【式5】
【0027】
式(7)に示すように、隣り合うサブキャリア間で連続した位相回転を与えることにより(式(7)右辺)、時間領域における信号を時間シフトすることができる。したがって、このような位相回転を、例えば、全てのサブキャリアの振幅及び位相を等しく設定した信号(時間領域ではインパルス信号となる)に適用する場合にはインパルスの位置を制御することができる。
【0028】
以下では、マルチキャリア信号の一種であるOFDM信号を用いるシステムを対象として説明を行う。対象とするOFDMシステムにおいて用いられるサブキャリア数は64とする。
【0029】
ここで、本発明の実施の形態による無線通信技術において対象とするパケットフォーマットは前述と同じ図1に示すものとする。先に述べたように、図1に示すパケットは、プリアンブルAと、プリアンブルBと、データと、を有している。ここで、プリアンブルAはOFDMのシンボル同期や周波数同期に用いられ、プリアンブルBはアンテナ識別や伝搬路推定に用いられる。これら2つのプリアンブルは、いずれも予め決められた信号である。
【0030】
以下に、本発明の実施の形態について具体的に説明する。以下の実施の形態による無線通信技術においては、デジタル信号に対してフーリエ変換・逆フーリエ変換を行う手段として、主に離散フーリエ変換・逆離散フーリエ変換を用いることとしているが、高速フーリエ変換・逆高速フーリエ変換を用いることも可能である。また、送信側において、逆離散フーリエ変換が用いられ受信側において高速フーリエ変換が用いられる場合や、送信側において逆高速フーリエ変換が用いられ受信側において離散フーリエ変換が用いられる場合においても、用いられるサブキャリア数と高速フーリエ変換に用いるポイント数とを考慮した調整を行った位相回転を施すことにより、アンテナ識別や基地局識別を行うことが可能となる。
【0031】
まず、本発明の第1の実施の形態による無線通信技術について図面を参照しつつ説明を行う。
本発明の第1の実施の形態による無線通信技術は、ダウンリンク伝送を対象とし、送信(基地局)側に複数アンテナを備え、送信アンテナ選択ダイバーシチを行う場合のアンテナ選択法に関する。ここでは、複数のアンテナからOFDM信号を同時に送信するものとし、受信側においてそれぞれのアンテナから送信された信号を分離し、どのアンテナから送信された信号が最も高電力を有して受信されるかを推定する。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施の形態による無線通信装置のうち基地局側送信装置の構成例を示す図である。但し、図2においては、送信アンテナが2本備えられている場合を例にして説明する。図2に示すように、本実施の形態による基地局側送信装置は、プリアンブルA生成部010と、プリアンブルB生成部011と、位相回転部012、013と、マルチプレックス部014、015と、誤り訂正符号部016と、S/P変換部017と、マッピング部018と、切り替えスイッチ019と、IDFT部(IFFTでも良い。)020、026と、P/S変換部021、027と、GI(Guard Interval)挿入部022、028と、D/A変換部023、029と、無線送信部024、030と、アンテナ部025、031と、を有している。
【0033】
図2に示す構成のうち、プリアンブルA生成部010と、プリアンブルB生成部011とでは、それぞれプリアンブルAとプリアンブルB(図1のパケットフォーマット参照)が生成され、プリアンブルAはマルチプレックス部014、015に出力され、プリアンブルBは位相回転部012、013に出力される。プリアンブルBが入力された位相回転部012、013では、プリアンブルBの各サブキャリアに対して連続的な位相回転が与えられる。本実施の形態による基地局側送信装置では、位相回転部012では位相回転を与えず、位相回転部013においてのみプリアンブルBに位相回転を与える。このように、基地局側送信装置に備えられた2本のアンテナから送信されるプリアンブルのうち、片方のアンテナから送信されるパケット中の2番目のプリアンブルについてのみ位相回転が与えられ、その他のプリアンブルには位相回転を与えない。情報データについては、誤り訂正符号部016において誤り訂正符号化が施され、S/P変換部017を経由してマッピング部018において変調方式に応じてマッピングが施される。
【0034】
このようにして生成された情報信号は、プリアンブルBと同様の位相回転が与えられた後に、プリアンブルと時間多重され送信される。情報信号については前のパケットにおける送信アンテナの選択結果を反映し、高い受信電力が得られると判断されたアンテナからのみ送信する。このため、端末から基地局へ送信アンテナの選択結果がフィードバックされる。基地局の受信装置032において受信されたアンテナ選択情報が切り替えスイッチ019に送られ、情報信号が、選択された送信アンテナからのみ送信されるように切り替えを行う。但し、通信開始時には予め決められたいずれか一方のアンテナからのみ情報信号の送信を行う。ここでは、例としてアンテナ部025が選択されているものとして以下の説明を行う。
【0035】
上述のようにして情報信号を送信するアンテナが選択され、切り替えスイッチ019において情報信号が位相回転部012へのみ入力されるよう制御され、位相回転部012においてプリアンブルBに与えられた位相回転と同様の位相回転が情報信号にも与えられる(但し、前述のように、本実施の形態においては、位相回転部012において与える位相回転量は0としている)。このように位相回転が与えられた情報信号は、マルチプレックス部014においてプリアンブルと時間多重された後に、GI挿入部022、028においてOFDMシンボル毎にガードインターバルが付加される。この時に、GI挿入部022ではプリアンブルA、B及び情報信号から形成されるパケットについて処理が行われ、GI挿入部028ではプリアンブルA、Bのみから形成されるパケットについての処理が行われる。ガードインターバルの付加後に、送信アンテナ毎に設けられたD/A変換部023、029と、無線送信部024、030と、をそれぞれ経由し、アンテナ部025からはプリアンブルA、B及び情報信号から形成されるパケットが、アンテナ部031からはプリアンブルA、Bから形成されるパケットが同時に送信される。
【0036】
次に、本実施の形態による端末側受信機の構成例について図3を参照しつつ説明を行う。図3に示すように、本実施の形態による端末側受信機は、アンテナ部040と、無線受信部041と、A/D変換部042と、同期部043と、GI除去部044と、S/P変換部045と、DFT部(FFTでも良い。)046、052と、切り替えスイッチ047と、プリアンブル乗算部048と、IDFT部(IFFTでも良い)049と、遅延プロファイル電力測定部050と、時間フィルタ051と、伝搬路補償・デマッピング部053と、P/S変換部054と、誤り訂正復号部055と、を有している。
【0037】
前述のように、基地局側送信装置では、プリアンブルA、B及び情報信号から構成されるパケットと、プリアンブルA、Bから構成されるパケットと、がそれぞれ異なるアンテナから同時に送信される。一方、端末側受信装置では、これらのパケットがそれぞれ異なる伝搬路を経由して1本のアンテナ040により同時に受信される。
【0038】
このように異なる伝搬路を経由した2つのパケットが加算された受信信号は、無線受信部041と、A/D変換部042と、を経由して同期部043に入力される。同期部043では、プリアンブルAを用いてシンボル同期が確立され、以後の処理は適切なタイミングで行われることとなる。
【0039】
次に、GI除去部044において、送信側で付加されたガードインターバルが除去された後、S/P変換部045において、シリアル信号がパラレル信号に変換されDFT部046に入力される。そしてDFT部046では、受信した時間領域の信号が周波数領域の信号に変換され、切り替えスイッチ047に送られる。この切り替えスイッチ047では、プリアンブルBがプリアンブル乗算部048に、情報信号が伝搬路補償・デマッピング部053に送られるように切り替え制御が行われる。次に、プリアンブル乗算部048においては、送信側で用いられたプリアンブルBの複素共役をプリアンブルBの振幅の2乗で正規化した値と、受信プリアンブルBと、の乗算が行われる。ここで、受信プリアンブルBは、2本の送信アンテナから送信され異なる伝搬路を経由して到来した2つのプリアンブルBが加算された信号を示している。この乗算結果をIDFT部049において時間領域の信号に変換すると、基地局側送信装置のアンテナ部025とアンテナ部031とから送信された信号がそれぞれ経由した伝搬路の遅延プロファイルを得ることができる。但し、ここで得られる遅延プロファイルとは、伝搬路のインパルス応答を意味している。このようにして得られる遅延プロファイルの例を図4に示す。図4(a)は、送信アンテナX及び送信アンテナYから送信されるプリアンブルに位相回転が施されなかった場合に、受信側において得られる遅延プロファイルを示す図である。図4(b)は、送信アンテナYから送信されるプリアンブルに位相回転が施された場合の遅延プロファイルを示す図である。簡単化のため、図4では、送信装置及び受信装置の詳細な構成については省略しているが、受信装置については図3と同様の構成を、送信装置については、図4(a)は位相回転部がない場合、図4(b)は位相回転部がある場合の構成例を示す図であり、その他の構成については図2に示す構成と同様の構成を有する。
【0040】
まず、図4(a)に示すように、プリアンブルB生成部011により生成された全く同じプリアンブルが図2の点線部に示される基地局側送信装置の2つのアンテナX、Yから伝搬路を介して受信装置に同時に送信された場合には、受信装置におけるIDFT後(図3のIDFT部049)において得られる遅延プロファイルは、2つのアンテナから送信された信号がそれぞれ経由した伝搬路の遅延プロファイルを加算した応答となる。従って、この場合には、2つのアンテナX,Yから送信された信号がそれぞれ経由した伝搬路の遅延プロファイルを分離して求めることができない。すなわち、遅延プロファイルと時間との関係に示されるように、実線で示されるアンテナXから送信された信号の遅延プロファイルと、点線で示されるアンテナYから送信された信号の遅延プロファイルとは、受信側では合成されたものとして観測され、分離することができない。
【0041】
これに対して、図4(b)に示すように、プリアンブルB生成部011の各サブキャリアに位相回転を施す(但し、ここでは、位相回転部012と013のうち012の方では位相回転量を0とする)場合には、式(7)に示す原理より、アンテナXから送信される信号とアンテナYから送信される信号には異なる時間シフトが与えられるため、受信側では、実線で示されるアンテナXから送信された信号の遅延プロファイルと、点線で示されるアンテナYから送信された信号の遅延プロファイルとは、受信側において時間的に分離した2つの遅延プロファイルとして観測される。このように、送信側の2本のアンテナから送信する信号に予め異なる位相回転を与えておき、受信側で適切な時間フィルタリング(送信側で与えられた位相回転量に応じてフィルタリングを開始する時間またはサンプル点が決定される時間フィルタリング)を行うことにより、受信側で観測される遅延プロファイルを簡単に分離することができることがわかる。
【0042】
本実施の形態による無線通信技術においては、上述のように、分離された遅延プロファイルを図3に示す遅延プロファイル電力測定部050に入力し、1パス目の電力が高く観測された送信アンテナを選択するものとする。このため、遅延プロファイル電力測定部050において1パス目の電力が高く観測された送信アンテナを選択する旨の選択アンテナ情報を送信装置056に入力し、基地局側へフィードバックする。この選択結果は次のダウンリンク伝送に反映されることとなる。
【0043】
尚、1パス目とは、以下のような意味で用いている。すなわち、一般的に無線通信環境では、電波はさまざまな経路を経由して受信機に到来するため、経路長の差によって電波の到着時間に差が生じる。このようなマルチパス環境において、パスという表現は、通常、ある時間に到来する電波(複数の電波の合成波)のことを指しており、1パス目というのは、最も早く到来する電波のことを意味する。
【0044】
また、IDFT部049において得られた遅延プロファイルは、時間フィルタ051へ入力されて不要な部分が除去されることとなるが、プリアンブルBの後に続く情報信号は送信側のい
ずれか一方のアンテナ(例えばアンテナ部021)からのみ送信されているため、情報信号の伝搬路補償を行う際には、情報信号が送信された方のアンテナと受信アンテナとの間の伝搬路変動のみが得られればよい。そこで、時間フィルタ051(図3)は、情報信号と同じアンテナから送信されたプリアンブルBから得られる遅延プロファイルのみを通過させるように構成されており、先に述べたように、フィルタリングを開始する時間またはサンプル点は送信側で与えられた位相回転量(時間シフト量)に応じて決定される。本実施の形態では、アンテナ部025が選択されるものとしているため、送信側にて与えられている位相回転量は0であり、フィルタリングを開始する基準サンプル点も0となる。これとは逆に、アンテナ部031が選択された場合のフィルタリングは与えられた時間シフトに近い基準サンプル点から開始されることとなり、基準サンプル点以前のサンプルには0が挿入される。この時間フィルタ051の出力がDFT部052に入力され、情報信号の復調に必要な伝搬路変動推定値が得られる。次に、得られた伝搬路変動推定値と受信情報信号とが伝搬路補償・デマッピング部053に入力され、伝搬路補償及びデマッピングが行なわれる。そして、P/S変換部054を経由して、誤り訂正復号部055において誤り訂正復号が行われ、情報データが再生される。
【0045】
以上に説明した送信装置及び受信装置を用いることにより、異なるアンテナから同時に送信されるOFDM信号がそれぞれ異なる伝搬路を経由して到来した受信信号の遅延プロファイルを分離することが可能となり、1シンボルで伝搬路変動の推定と送信ダイバーシチを行う際の送信アンテナの選択とを精度良く行うことができる。但し、本実施の形態による無線通信技術では、遅延プロファイルの1パス目の電力が高く測定された送信アンテナを選択するものとしたが、代わりに全てのパスの電力を合計し、その合計値が最も高い送信アンテナを選択する等の構成でも良い。
【0046】
次に、本発明の第2の実施の形態による無線通信技術について図面を参照しつつ説明を行う。上述した本発明の第1の実施の形態による無線通信技術は、マルチキャリア伝送に用いる各サブキャリアに連続的な位相回転を与えることにより時間領域における信号を時間シフトできるという性質を利用して、複数のアンテナから同時に送信されそれぞれのアンテナ毎に異なる伝搬路を経由して受信されたマルチキャリア信号を分離する技術であった。その関連技術として、送信側だけでなく受信側にも複数のアンテナを用いたシステムとしてMIMO(Multi Input Multi Output)システムがある。本発明の第2の実施の形態による無線通信技術は、MIMOシステムを対象とするものであり、特にMIMO伝送を行う際に用いられる送信アンテナ数を伝搬路状況に応じて決定する手法に関するものである。
【0047】
まず、本発明の第2の実施の形態による送信装置の一構成例を図9に示す。図9は、送信アンテナ数が3の場合の送信装置の構成例を示す図である。図9に示すように、本実施の形態による送信装置は、プリアンブルA生成部200、プリアンブルB生成部201と、位相回転部202、203、204と、マルチプレックス部205、206、207と、データ変調部208と、切り替えスイッチ209と、IDFT部210、216、222と、P/S変換部211、217、223と、GI挿入部212、218、224と、D/A変換部213、219、225と、無線送信部214、220、226と、アンテナ部215、221、227と、を有している。図9に示すように、本実施の形態による送信装置は、2つのプリアンブル生成部200、201と、これらのプリアンブル生成部200、201からの出力信号を直接に、又は、位相回転部を介して信号処理するいずれかを選択できるように構成されている。
【0048】
図9に示す送信装置における基本的なデータ送信処理の例について以下に説明する。送信すべき情報データが発生し送信処理を開始する際には、まず、情報データとして使用するアンテナ数分の異なるストリームが生成され、データ変調部208においてデータストリーム毎に誤り訂正符号化や変調が行われる。このようにアンテナ毎に異なるデータストリームを伝送するMIMO伝送を行う場合、例えば3本のアンテナを全て使用すると、1本のアンテナのみを使用して伝送した場合と比較して3倍の伝送容量を得ることができる。データ変調部208における変調後に、切り替えスイッチ209によって、各ストリームはそれぞれが伝送されるアンテナの系統に振り分けられる。そして、それぞれの系統の位相回転部202、203、204においてそれぞれプリアンブルBに与えられた回転量(アンテナ系統毎に異なる位相回転量)と同じ位相回転が与えられ、マルチプレックス部205、206、207においてプリアンブルA及びプリアンブルBと時間多重される。その後、それぞれのアンテナ系統においてIDFTが行われP/S変換された信号に、GI挿入部においてガードインターバルが付加される。さらに、D/A変換が行われ、無線送信部において無線周波数帯に周波数変換された後、アンテナ部からそれぞれの信号ストリームが送信されることとなる。
【0049】
図10は、本実施の形態による無線通信技術に用いられる受信装置の一構成例を示す図である。但し、図10は、受信アンテナ数が3の場合の例を示す図である。図10に示すように、本実施の形態による受信装置は、アンテナ部250、260、270と、無線受信部251、261、271と、A/D変換部252、262、272と、同期部253、263、273と、GI除去部254、264、274と、S/P変換部255、265、275と、DFT部256、266、276と、切り替えスイッチ257、267、277と、プリアンブル乗算部258、268、278と、IDFT部259、269、279と、最大遅延時間測定部280及び復調部281と、を有している。
【0050】
図10に示す送信装置における基本的なデータ復調処理例について以下に説明する。図10に示すアンテナ部250、260、270では、送信装置に備えられた複数アンテナから送信され伝搬路を経由した信号がそれぞれ受信される。例えば、図10に示すアンテナ部250では、送信装置において3本のアンテナから異なる情報信号ストリームが送信される場合に、それぞれ異なる伝搬路を経由した3つの情報信号ストリームが混在した信号が受信される。同様に、アンテナ部260、270においても、それぞれ異なる伝搬路を経由した3つの情報信号ストリームが混在した信号が受信される。このような受信信号に対して、無線受信部251、261、271では、A/D変換可能な周波数帯への周波数変換が行われ、A/D変換部252、262、272においてA/D変換が行われた後、同期部253、263、273においてOFDMシンボル同期が取られる。この同期部253、263、273における同期処理は、プリアンブルAを利用して行われる。その後、GI除去部254、264、274においてガードインターバルの除去が行われ、S/P変換部255、265、275においてS/P変換された後、DFT部256、266、276において時間領域の受信信号の周波数領域への変換が行われる。そして、切り替えスイッチ257、267、277においてプリアンブルBはプリアンブル乗算部258、268、278へ、受信情報信号は復調部281へ送られるよう制御される。
【0051】
プリアンブル乗算部258、268、278のそれぞれにおいては、送信側で用いられたプリアンブルBの複素共役をプリアンブルBの振幅の2乗で正規化した値と、受信プリアンブルBと、の乗算が行われる。この乗算結果がIDFT部259、269、279にそれぞれ入力されると、これまでの実施の形態においても説明したように、各送信アンテナから送信された信号が経由した伝搬路の遅延プロファイルが、送信アンテナ毎に分離された状態で得られる。これは、送信側においてアンテナ毎に異なる位相回転をプリアンブルに与えているため、式(7)の関係から、時間信号がアンテナ毎に時間シフトすることとなるためである。このように、送信アンテナ毎に分離された遅延プロファイルから、各情報信号ストリームに対する伝搬路変動の補償を行うことが可能となるため、IDFT部259、269、279の出力と各受信アンテナにより受信された情報信号とを復調部281に入力させる構成とすることにより、復調部281において情報データの復調を行うことができる。
【0052】
以上に説明した構成を有するMIMOシステム送受信装置において、情報信号ストリームを送信するアンテナ数を伝搬路状況に応じて変更する場合の制御の流れを示すフローチャート図を図11に示す。まず、送信側の制御の流れについて説明する。図11(a:図面左側)に示すように、本実施の形態による送信装置では、データパケットの送信に先立ち、まず、位相回転部において与えられる位相回転量を0に設定し(位相回転無し)、プリアンブルA、Bのみから構成される信号をある1つのアンテナのみから送信する(ステップ001〜002)。
【0053】
次いで、ステップ003に示すように、受信側からフィードバックされた送信アンテナ数情報を受信装置において受信する。次に、ステップ003において受信された送信アンテナ数情報に基づき、各アンテナから送信するプリアンブルB及び情報信号に与える位相回転量に関してアンテナ毎に異なる値に設定し(ステップ004)、送信アンテナ数情報で通知された数のアンテナを用いてデータパケットの送信を行う。但し、前述のように、アンテナ毎に異なる情報信号ストリームを送信するものとする。
【0054】
次に、受信側の制御処理の流れについて説明する。図11(b)に示すように、本実施の形態による受信装置では、送信側から送られたプリアンブルA及びプリアンブルBのみから構成される信号を例えば3本の受信アンテナによって受信し(ステップ010)、先に述べた復調手順と同様の処理を行い、IDFT部259、269、279において、それぞれ遅延プロファイルを算出する(ステップ011)。次に、算出された遅延プロファイルを図10に示す最大遅延時間測定部280に送り、全ての遅延プロファイルの中で最も遅延時間の大きい(最も遅く到来する)パスの遅延時間τmaxを算出する(ステップ012)。次いで、ステップ013、015に示すように、このτmaxがGI(ガードインターバル)長のどれほどの割合を占めるかを判定する。
【0055】
まずステップ013ではτmaxとGI長の1/3とを比較し、τmaxの方が短いと判断された場合には(Yes)ステップ014へ移り、τmaxの方が長いと判断された場合には(No)ステップ015へ移る。ステップ013においてτmaxの方が短いと判断された場合には、3本の送信アンテナから送信するプリアンブルBに与える位相回転量を、例えば、位相回転部202では0、位相回転部203では時間シフト量がGI長の1/3になる位相回転量、位相回転部204では時間シフト量がGI長の2/3になる位相回転量に設定することにより、受信側において遅延プロファイル同士が干渉し合うことなく分離することができる。従って、この場合には、ステップ014に示すように送信アンテナ数情報を3に設定する。
【0056】
逆に、ステップ013においてτmaxの方が長いと判断された場合に、3本のアンテナを用いて送信すると、受信側において遅延プロファイル同士が干渉することとなり(図8(b)参照)、正しい伝搬路推定が行えない。すなわち、基地局の異なるアンテナから送信された遅延プロファイルが干渉し合い、分離ができなくなる。従って、この場合には3本のアンテナを用いた送信を行うことをせずに、ステップ015に移り、τmaxとGI長の1/2の長さとを比較する。
【0057】
ステップ015においてGI長の1/2の長さよりもτmaxの方が短いと判断された場合には(YES)、2本の送信アンテナから送信するプリアンブルBに与える位相回転量を、例えば、位相回転部202では0、位相回転部203では時間シフト量がGI長の1/2になる位相回転量に設定することにより、受信側において遅延プロファイル同士が干渉し合うことなく遅延プロファイルを分離することができる。従って、この場合にはステップ016に示すように送信アンテナ数情報を2に設定する。逆に、ステップ015においてGI長の1/2の長さよりもτmaxの方が長いと判断された場合に(NO)、2本のアンテナを用いて送信すると、受信側において遅延プロファイル同士が干渉し(図8(b)参照)、正しい伝搬路推定を行うことができない。従って、この場合には2本のアンテナを用いた送信を行うことをせずに、ステップ017に移り送信アンテナ数情報を1に設定する。
【0058】
以上の処理により、送信側へフィードバックする送信アンテナ数情報が得られるため、
ステップ018に示すように、受信機側送信装置282(図10)を用いて送信アンテナ数情報を送信側へフィードバックすることができる。この送信アンテナ数情報に基づき、送信側では送信アンテナ数情報と同数の情報信号ストリームが生成され、データパケットが送信されるため(ステップ003〜005)、受信装置ではデータパケットの受信及び復調を行うことができる(ステップ019)。
【0059】
以上のように、本実施の形態による無線通信技術においては、遅延プロファイルの分離を行うことができるため、受信装置に到来する遅延波の遅延時間が大きく変動する環境においても、適切な送信アンテナ数を選択し高精度な伝搬路変動の推定が可能となり、安定したMIMO伝送を実現することができるという利点がある。
次に、本発明の第3の実施の形態による、無線通信技術について図面を参照しつつ説明を行う。
【0060】
上述のように、本発明の第1及び第2の実施の形態においては、1つの送信装置に複数のアンテナが備えられている構成に対して本発明を適用する例について示したが、単一アンテナを有する送信装置が複数存在する場合において、それぞれの送信装置に異なる位相回転を与えることにより、異なる送信装置から送信された信号の遅延プロファイルについても同様に分離して得ることができる。
【0061】
本発明の第3の実施の形態による無線通信技術は、かかる構成を基地局識別に利用するものである。
まず、本実施の形態による無線通信技術の対象となるセル配置例を図5に示す。ここでは、図5に示すように、3つの基地局S、T、Uがそれぞれカバーするセルの境界に端末Vが位置する場合の基地局識別技術について説明する。但し、全ての基地局は同期しているものとし、全てのセルで同一周波数が用いられるものとする。
【0062】
図6は、本発明の第3の実施の形態による基地局側送信装置の構成例を示す図である。
図6に示すように、本実施の形態による基地局側送信装置は、プリアンブルA生成部100と、プリアンブルB生成部101と、位相回転部102と、マルチプレックス部103と、誤り訂正符号部104と、S/P変換部105と、マッピング部106と、IDFT部107と、P/S変換部108と、GI挿入部109と、D/A変換部110と、無線送信部111と、アンテナ部112と、を有している。この構成例は第1の実施の形態において送信アンテナ数を1とした場合と同じである。尚、基地局S、T、Uの全てにおいて同じ構成となっているものとする。
【0063】
図6に示すように、本実施の形態による基地局装置のプリアンブルA生成部100及びプリアンブルB生成部101では、それぞれプリアンブルA及びプリアンブルBが生成され、プリアンブルAはマルチプレックス部103に、プリアンブルBは位相回転部102に送られる。位相回転部102では、プリアンブルBの各サブキャリアに対して連続的な位相回転が与えられることとなるが、ここで与えられる位相回転量は各基地局において異なる値に設定する。すなわち、例えば、基地局Sでは位相回転量を0、基地局Tでは2mπ、基地局Uでは2nπのように設定する。但し、m及びnはm≠nを満たす1より大きい整数である。このように、基地局毎に異なる位相回転量を設定しておくことにより、端末側において各基地局から到来する信号の遅延プロファイルを分離することが可能となり、接続する候補となる基地局を検知することができる。
【0064】
また、ダウンリンクにおける情報データは、誤り訂正符号部104において誤り訂正符号化され、S/P変換部105を経由してマッピング部106において変調方式に応じてマッピングが施される。但し、この時の情報データは端末V向けのデータではなく、セル全体に報知する制御情報であるか、或いは、基地局に接続済みの端末向けのデータである。このようにして生成された情報データは、位相回転部102においてプリアンブルBと同じ位相回転が与えられた後、マルチプレックス部103においてプリアンブルと時間多重され、IDFT部107、P/S変換部108、GI挿入部109、D/A変換部110、無線送信部111を経由してアンテナ部112から送信される。
【0065】
次に、本実施の形態による無線通信技術に適用される端末側受信装置の構成例について説明する。図7は本実施の形態による端末側受信装置の構成例を示す機能ブロック図である。図7に示すように、本実施の形態による端末側受信装置は、アンテナ部150と、無線受信部151と、A/D変換部152と、同期部153と、GI除去部154と、S/P変換部155と、DFT部(FFTでも良い)156と、切り替えスイッチ157と、プリアンブル乗算部158と、IDFT部(IFFTでも良い)159と、遅延プロファイル電力測定部160と、復調部161と、を有している。図7に示す端末側受信装置は、図3に示す第1の実施の形態による端末側受信装置とほぼ同じ構成を有している。まず、アンテナ部150では、基地局S、T、Uのそれぞれから送信された信号が同時に受信される。これらの各基地局から送信された信号が混在した受信信号は、無線受信部151、A/D変換部152を経て同期部153で同期が確立される。
【0066】
同期部153では、プリアンブルAを利用して同期を取ることとなるが、プリアンブルAは全ての基地局で共通の信号となっており、各基地局から送信された信号が混在する場合でも同期を取ることができる。同期が確立した後、受信信号(プリアンブルB及び情報データ)は、GI除去部154においてガードインターバルが除去され、S/P変換部155を経由して、DFT部156において時間領域の信号から周波数領域の信号へ変換される。
【0067】
次に、切り替えスイッチ157により、受信プリアンブルBはプリアンブル乗算部158へ送られ、受信データ信号は復調部161へ送られる。プリアンブル乗算部158では、送信側で用いられたプリアンブルBの複素共役をプリアンブルBの振幅の2乗で正規化した値と、受信プリアンブルBと、の乗算が行われる。この乗算の結果をIDFT部159において時間領域の信号に変換すると、基地局S、T、Uからそれぞれ送信された信号がそれぞれ経由した伝搬路の遅延プロファイルを時間的に分離して得ることができる。これは、基地局S、T、Uにおいて、周波数領域におけるプリアンブルBにそれぞれ異なる位相回転を施すことにより、式(7)の関係から、時間領域における信号を時間シフトさせたことによる。このように、位相回転を施すことによりプリアンブルを時間的に分離することにより、他のセルからの干渉を受けることのない遅延プロファイルを得ることができる。
【0068】
このように、基地局毎に分離された遅延プロファイルを測定することにより、接続先の候補となる基地局を検知することができる。さらに、基地局毎に分離された遅延プロファイルは、遅延プロファイル電力測定部160及び復調部161へ送られる。遅延プロファイル電力測定部160では、各遅延プロファイルについて1パス目の電力を測定・比較し、いずれの基地局から送信された信号が最も高電力を有して受信されるかを判断する。この結果、最も高電力を有して受信されると判断された信号を送信した基地局への接続を試みることができ、端末側送信装置162から基地局へ宛てた信号が送信されることとなる。また、復調部161では、基地局毎に分離された遅延プロファイルを用いた伝搬路補償が行なわれ、制御情報等の情報データの復調が行われる。
【0069】
以上の構成とすることにより、本実施の形態による無線通信システムでは、隣り合うセルで同一周波数を用いるOFDMセルラシステムにおいて、他セルからの干渉の影響を受けることなく接続先の候補となる基地局を識別することができる。また、分離された遅延プロファイルの電力を測定することにより、接続すべき基地局の判定を精度良く行うことができる。尚、本実施の形態では、遅延プロファイルの1パス目の電力が高く測定された基地局を接続先の基地局として選択するものとしたが、全てのパスの電力を合計し、その合計値が最も高い基地局を選択するようにしても良い。
【0070】
また、前述のように、基地局毎に異なる位相回転を施したプリアンブルを同時に送信することにより、それぞれの基地局から送信された信号の遅延プロファイルを分離して得ることができるため、基地局に接続した後の端末がセルエッジ付近に位置する場合には、隣接セルの基地局から到来する信号の遅延プロファイルを算出し、ハンドオーバ先の候補となる基地局を検出する処理を行うことも可能である。この場合には、接続している基地局以外の遅延プロファイルの中から、最も高電力を有する遅延プロファイルが得られる信号を送信した基地局をハンドオーバ先の基地局として選択する。
【0071】
さらに、本実施の形態による無線通信システムでは、隣接する複数の基地局装置から、
ある端末に対するデータを同時に送信することにより、容易にサイトダイバーシチ(ソフトコンバイン受信)を行うことができる。これにより、セル境界付近に位置する端末における受信特性を向上することが可能となる。
【0072】
次に、本発明の第4の実施の形態による無線通信技術について図面を参照しつつ説明を行う。本発明の第3の実施の形態は、セルラシステムの各基地局においてそれぞれ異なる位相回転を施したプリアンブルを送信することにより、受信側ではそれぞれの基地局から送信された信号が経由する伝搬路の遅延プロファイルを分離して測定することが可能となることを利用して、分離して測定された遅延プロファイルに基づいて接続先基地局を選択することを特徴とする。かかる特徴を、各基地局が複数のアンテナを有しているシステム、つまり、各基地局において第1の実施の形態で示した送信アンテナ選択ダイバーシチのような方式が用いられているシステムに適用する場合には、基地局の識別と、基地局に設けられた複数アンテナの識別・選択と、を同時に行う必要がある。この場合には、分離しなければならない遅延プロファイル数は、(基地局数)×(各基地局のアンテナ数)となり、非常に多くなる。このように、分離しなければならない遅延プロファイル数が多い場合には次のような問題が生じる。この問題点について図8を参照しながら説明を行う。
【0073】
図8(a)に示すように、3つのセルにそれぞれ基地局K、L、Mが配置されており、
それぞれの基地局K、L、Mがアンテナ1とアンテナ2とを有している。そして、3つのセルの境界近傍に端末Jが位置している状況において、先に述べた第1の実施の形態又は第3の実施の形態を適用する場合には、各基地局のアンテナ毎に異なる位相回転をプリアンブルBに与え、各基地局の各アンテナから送信される信号が経由する伝搬路の遅延プロファイルを端末において分離することとなる。このように、分離する対象及び遅延波が多い場合には、アンテナ毎に与える時間シフト量の差が少なくなる。従って、図8(b)に示すように、分離後の遅延プロファイルが干渉し合うことがある。図8(b)に示す例では、基地局Kのアンテナ1から送信された信号の遅延プロファイルにおける最後のパスと、基地局Lのアンテナ1から送信された信号の遅延プロファイルにおける最初のパスが干渉しており、それ以外のパスも図8(b)に示すような干渉が生じている。このように隣り合う遅延プロファイル同士が干渉しあう場合には、基地局識別及びアンテナ選択に大きな誤差が生じるため、分離すべき遅延プロファイルの数が非常に多い場合には第1の実施の形態及び第3の実施の形態による遅延プロファイルの分離方法では分離が困難になる。尚、図では、説明のため隣り合うプロファイル同士をやや時間軸においてずらして表現しているが、実際には完全に重なり合成されている。
【0074】
そこで、かかる問題に対して、本発明の第4の実施の形態による無線通信技術では、サブキャリアに対して連続的な位相回転を与えることにより時間領域の信号を時間シフトする手法に加え、異なるプリアンブルパターンを用いた遅延プロファイルの分離法を基地局識別及びアンテナ選択に適用することを特徴とする。
【0075】
本実施の形態においては、各基地局に複数アンテナが備えられているセルラシステムにおいて、端末において各基地局の各アンテナから送信された信号の遅延プロファイルを分離する際に、各基地局の遅延プロファイルは、各基地局に固有のプリアンブルパターンで分離され、各基地局に備えられたアンテナ毎の遅延プロファイルは第1、第3の実施の形態と同様に、時間シフト(位相回転量)で分離する。この際の各基地局の送信装置は、図2に示す構成と同様の構成で実現できる。但し、本実施の形態では、プリアンブルBは基地局毎に固有のパターンを用いる必要がある。また、位相回転部012、013における位相回転量はアンテナ毎に異なる値に設定する必要がある。但し、基地局毎には位相回転量を共通の値に設定してもよい。
【0076】
本実施の形態による端末側受信装置も、図7に示す構成により実現できる。但し、本実施の形態では、プリアンブル乗算部158に基地局毎のプリアンブルパターン(図8に示す状況では基地局K、L、Mでそれぞれ用いられるプリアンブルパターン)を保持しておき、各基地局から送信された信号が混在した受信信号にそれぞれのプリアンブルパターンを乗算し基地局毎の遅延プロファイルを分離する。この際、基地局K、L、Mで用いられるプリアンブルパターンには相関がないものとすると、受信信号に基地局Kで用いられたプリアンブルパターンを乗算した場合には、基地局L、Mから送信された信号の遅延プロファイルは雑音状の波形となり、基地局Kの2つのアンテナから送信された信号が経由した伝搬路の遅延プロファイルのみがIDFT部159から得られる。
【0077】
同様に、受信信号に基地局Lで用いられたプリアンブルパターンを乗算した場合には、
基地局Lの2つのアンテナから送信された信号が経由した伝搬路の遅延プロファイルのみが得られ、受信信号に基地局Mで用いられたプリアンブルパターンを乗算した場合には、基地局Mの2つのアンテナから送信された信号が経由した伝搬路の遅延プロファイルのみが得られる。このように、送信側においてプリアンブルの各サブキャリアに連続的な位相回転を与え、時間波形をシフトすることによる遅延プロファイルの分離のみでなく異なるプリアンブルパターンを用いることによる遅延プロファイルの分離も行うことにより、基地局に複数のアンテナが備えられている場合等、分離すべき遅延プロファイルが非常に多い場合にも、高精度な遅延プロファイルの測定、つまり基地局識別やアンテナ選択を行うことができる。
【0078】
また、本実施の形態とは逆に、アンテナ毎に異なるプリアンブルパターンを用いてアンテナ毎の遅延プロファイルを分離し、基地局毎に異なる時間シフトをプリアンブルに与えることにより基地局毎の遅延プロファイルを分離する手法を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、無線通信システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
010…プリアンブルA生成部、011…プリアンブルB生成部、012、013…位相回転部、014、015…マルチプレックス部、016…誤り訂正符号部、017…S/P変換部、018…マッピング部、019…切り替えスイッチ、020、026…IDFT部、021、027…P/S変換部、022、028…GI(Guard Interval)挿入部、023、029…D/A変換部、024、030…無線送信部、025、031…アンテナ部、040…アンテナ部、041…無線受信部、042…A/D変換部、043…同期部、044…GI除去部、045…S/P変換部、046、052…DFT部、047…切り替えスイッチ、048…プリアンブル乗算部、049…IDFT部、050…遅延プロファイル電力測定部、051…時間フィルタ、053…伝搬路補償・デマッピング部、054…P/S変換部、055…誤り訂正復号部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブキャリアを用い、複数のアンテナから、送受信機間で既知の信号を送信する期間とデータを送信する期間の少なくとも2つの期間を有するパケットを送信する送信方法であって、
前記既知の信号を送信する期間の少なくとも一部において複数のプリアンブル信号を送信し、
前記複数のプリアンブル信号のうち、少なくとも2つのプリアンブル信号は、互いに異なる時間シフト量が加えられていることを特徴とし、
前記データを送信する期間において、複数のデータストリームを送信することを特徴とする送信方法。
【請求項2】
複数のサブキャリアを用い、M(Mは2以上の整数)本のアンテナから、送受信機間で既知の信号を送信する期間とデータを送信する少なくとも2つの期間を有するパケットを送信する送信方法であって、
前記既知の信号を送信する期間の少なくとも一部においてM個のプリンブル信号を送信し、
前記M個のプリアンブル信号は互に異なる時間シフト量が加えられていることを特徴とし、
前記データを送信する期間において、M個のデータストリームを送信することを特徴とする送信方法。
【請求項3】
前記M個のデータストリームは、互に異なる時間シフト量が加えられていることを特徴とし、
該時間シフト量は前記プリアンブル信号に加えられた時間シフト量と同一であることを特徴とする請求項2記載の送信方法。
【請求項4】
前記加えられた時間シフト量には0を含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項5】
前記加えられた時間シフト量の最大値と最小値の差がガードインターバルの長さ以下となることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項6】
前記加えられた時間シフト量が2つの場合に、
前記時間シフト量の差をガードインターバルの長さの1/2となる大きさとすることを特徴とする請求項5記載の送信方法。
【請求項7】
前記加えられた時間シフト量が3以上である場合に、
異なる値を持つ時間シフト量の2つの差が、一定値の整数倍となることを特徴とする請求項5記載の送信方法。
【請求項8】
前記加えられた時間シフト量の種類をパケットに毎に決定すること特徴とする請求項5記載の送信方法。
【請求項9】
異なる値を持つ前記加えられた時間シフト量の2つの差の絶対値の最小値が、前記加えられた時間シフト量の種類が多いほど、小さくなることを特徴とする請求項8記載の送信方法。
【請求項10】
複数のサブキャリアを用い、複数のアンテナから、送受信機間で既知の信号を送信する期間と、複数のサブキャリアを用い、1又は複数のアンテナからデータを送信する期間の少なくとも2つの期間を有する信号の送信方法であって、
前記既知の信号を送信する期間の少なくとも一部において複数のアンテナ選択信号を送信し、
前記複数のアンテナ選択信号のうち、少なくとも2つのアンテナ選択信号は、互いに異なる時間シフト量を持つことを特徴とし、
前記データを送信する期間において、前記アンテナ選択信号を送信した送信アンテナ数より少ないアンテナ数でデータストリームを送信することを特徴とする送信方法。
【請求項11】
前記データを送信するアンテナを、送信先からの指示により決定することを特徴とする請求項10記載の送信方法。
【請求項12】
複数のサブキャリアを用い、複数のアンテナから、送受信機間で既知の信号である複数のプリアンブル信号と、データ信号を送信する送信装置であって、
少なくとも位相回転部と無線部を有し、
前記位相回転部では、前記プリアンブル信号に対し、隣接するサブキャリア間で一定の位相差となる位相回転で与えるものであり、
該位相回転は少なくとも2つの前記プリアンブル信号間で異なる量であることを特徴とし、
前記無線部は、前記プリアンブル信号と前記データ信号を複数のストリームとして送信することを特徴とする送信装置。
【請求項13】
複数のサブキャリアを用い、M(Mは2以上の整数)本のアンテナから、送受信機間で既知の信号であるM個のプリアンブル信号と、データ信号を送信する送信装置であって、
少なくとも位相回転部と無線部を有し、
前記位相回転部では、前記プリアンブル信号に対し、隣接するサブキャリア間で一定の位相差となる位相回転で与えるものであり、
該位相回転は前記M個のプリアンブル信号間で異なる量であることを特徴とし、
前記無線部は、前記データ信号をM個のストリームとして送信することを特徴とする送信装置。
【請求項14】
前記位相回転部は、前記M個のストリームに対し、隣接するサブキャリア間で一定の位相差であって、前記M個のストリーム間で互いに異なる位相回転を与えるものであり、
該位相回転量は前記プリアンブル信号に与えられた位相回転量と同一であることを特徴とする請求項13記載の送信装置。
【請求項15】
前記一定の位相差には0を含むことを特徴とする請求項12から14までのいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項16】
2のn乗が前記複数のサブキャリアの数以上となるnを用い、
前記プリアンブル信号に与える位相回転量をθとする場合に、全ての位相回転量に対し、
θ×(2のn乗)が2πの整数倍となることを特徴とする請求項12から15までのいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項17】
前記プリアンブル信号に対して与える位相回転量に対応する時間のシフト量を時間シフト量とした場合、全ての位相回転量に対応する時間シフト量がガードインターバルの長さ以下となることを特徴とする請求項12から16までのいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項18】
前記時間シフト量が2つの場合に、
前記時間シフト量の1つをガードインターバルの長さの1/2となる大きさとすることを特徴とする請求項17記載の送信装置。
【請求項19】
前記時間シフト量が3以上である場合に、
異なる値を持つ前記時間シフト量の2つの差が、一定値の整数倍となることを特徴とする請求項17記載の送信装置。
【請求項20】
前記時間シフト量の種類をパケット毎に決定すること特徴とする請求項17記載の送信装置。
【請求項21】
異なる値を持つ前記時間シフト量の2つの差の最小値が、前記時間シフト量の種類が多いほど、小さくなることを特徴とする請求項20記載の送信装置。
【請求項22】
複数のサブキャリアを用い、複数のアンテナから、送受信機間で既知の信号である複数のアンテナ選択信号を送信し、複数のサブキャリアを用い、1又は複数のアンテナからデータを送信する送信装置であって、
少なくとも位相回転部を有し、
該位相回転部では、前記アンテナ選択信号に対し、隣接するサブキャリア間で一定の位相差となる位相回転で与えるものであり、
該位相回転は少なくとも2つの前記アンテナ選択信号間で異なる量であることを特徴とし、
前記データを送信する際、前記アンテナ選択信号を送信した送信より少ないアンテナ数でデータストリームを送信することを特徴とする送信装置。
【請求項23】
更に受信部を有し、送信先からアンテナを選択するための情報を受信することを特徴とする請求項22記載の送信装置。
【請求項1】
複数のサブキャリアを用い、複数のアンテナから、送受信機間で既知の信号を送信する期間とデータを送信する期間の少なくとも2つの期間を有するパケットを送信する送信方法であって、
前記既知の信号を送信する期間の少なくとも一部において複数のプリアンブル信号を送信し、
前記複数のプリアンブル信号のうち、少なくとも2つのプリアンブル信号は、互いに異なる時間シフト量が加えられていることを特徴とし、
前記データを送信する期間において、複数のデータストリームを送信することを特徴とする送信方法。
【請求項2】
複数のサブキャリアを用い、M(Mは2以上の整数)本のアンテナから、送受信機間で既知の信号を送信する期間とデータを送信する少なくとも2つの期間を有するパケットを送信する送信方法であって、
前記既知の信号を送信する期間の少なくとも一部においてM個のプリンブル信号を送信し、
前記M個のプリアンブル信号は互に異なる時間シフト量が加えられていることを特徴とし、
前記データを送信する期間において、M個のデータストリームを送信することを特徴とする送信方法。
【請求項3】
前記M個のデータストリームは、互に異なる時間シフト量が加えられていることを特徴とし、
該時間シフト量は前記プリアンブル信号に加えられた時間シフト量と同一であることを特徴とする請求項2記載の送信方法。
【請求項4】
前記加えられた時間シフト量には0を含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項5】
前記加えられた時間シフト量の最大値と最小値の差がガードインターバルの長さ以下となることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項6】
前記加えられた時間シフト量が2つの場合に、
前記時間シフト量の差をガードインターバルの長さの1/2となる大きさとすることを特徴とする請求項5記載の送信方法。
【請求項7】
前記加えられた時間シフト量が3以上である場合に、
異なる値を持つ時間シフト量の2つの差が、一定値の整数倍となることを特徴とする請求項5記載の送信方法。
【請求項8】
前記加えられた時間シフト量の種類をパケットに毎に決定すること特徴とする請求項5記載の送信方法。
【請求項9】
異なる値を持つ前記加えられた時間シフト量の2つの差の絶対値の最小値が、前記加えられた時間シフト量の種類が多いほど、小さくなることを特徴とする請求項8記載の送信方法。
【請求項10】
複数のサブキャリアを用い、複数のアンテナから、送受信機間で既知の信号を送信する期間と、複数のサブキャリアを用い、1又は複数のアンテナからデータを送信する期間の少なくとも2つの期間を有する信号の送信方法であって、
前記既知の信号を送信する期間の少なくとも一部において複数のアンテナ選択信号を送信し、
前記複数のアンテナ選択信号のうち、少なくとも2つのアンテナ選択信号は、互いに異なる時間シフト量を持つことを特徴とし、
前記データを送信する期間において、前記アンテナ選択信号を送信した送信アンテナ数より少ないアンテナ数でデータストリームを送信することを特徴とする送信方法。
【請求項11】
前記データを送信するアンテナを、送信先からの指示により決定することを特徴とする請求項10記載の送信方法。
【請求項12】
複数のサブキャリアを用い、複数のアンテナから、送受信機間で既知の信号である複数のプリアンブル信号と、データ信号を送信する送信装置であって、
少なくとも位相回転部と無線部を有し、
前記位相回転部では、前記プリアンブル信号に対し、隣接するサブキャリア間で一定の位相差となる位相回転で与えるものであり、
該位相回転は少なくとも2つの前記プリアンブル信号間で異なる量であることを特徴とし、
前記無線部は、前記プリアンブル信号と前記データ信号を複数のストリームとして送信することを特徴とする送信装置。
【請求項13】
複数のサブキャリアを用い、M(Mは2以上の整数)本のアンテナから、送受信機間で既知の信号であるM個のプリアンブル信号と、データ信号を送信する送信装置であって、
少なくとも位相回転部と無線部を有し、
前記位相回転部では、前記プリアンブル信号に対し、隣接するサブキャリア間で一定の位相差となる位相回転で与えるものであり、
該位相回転は前記M個のプリアンブル信号間で異なる量であることを特徴とし、
前記無線部は、前記データ信号をM個のストリームとして送信することを特徴とする送信装置。
【請求項14】
前記位相回転部は、前記M個のストリームに対し、隣接するサブキャリア間で一定の位相差であって、前記M個のストリーム間で互いに異なる位相回転を与えるものであり、
該位相回転量は前記プリアンブル信号に与えられた位相回転量と同一であることを特徴とする請求項13記載の送信装置。
【請求項15】
前記一定の位相差には0を含むことを特徴とする請求項12から14までのいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項16】
2のn乗が前記複数のサブキャリアの数以上となるnを用い、
前記プリアンブル信号に与える位相回転量をθとする場合に、全ての位相回転量に対し、
θ×(2のn乗)が2πの整数倍となることを特徴とする請求項12から15までのいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項17】
前記プリアンブル信号に対して与える位相回転量に対応する時間のシフト量を時間シフト量とした場合、全ての位相回転量に対応する時間シフト量がガードインターバルの長さ以下となることを特徴とする請求項12から16までのいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項18】
前記時間シフト量が2つの場合に、
前記時間シフト量の1つをガードインターバルの長さの1/2となる大きさとすることを特徴とする請求項17記載の送信装置。
【請求項19】
前記時間シフト量が3以上である場合に、
異なる値を持つ前記時間シフト量の2つの差が、一定値の整数倍となることを特徴とする請求項17記載の送信装置。
【請求項20】
前記時間シフト量の種類をパケット毎に決定すること特徴とする請求項17記載の送信装置。
【請求項21】
異なる値を持つ前記時間シフト量の2つの差の最小値が、前記時間シフト量の種類が多いほど、小さくなることを特徴とする請求項20記載の送信装置。
【請求項22】
複数のサブキャリアを用い、複数のアンテナから、送受信機間で既知の信号である複数のアンテナ選択信号を送信し、複数のサブキャリアを用い、1又は複数のアンテナからデータを送信する送信装置であって、
少なくとも位相回転部を有し、
該位相回転部では、前記アンテナ選択信号に対し、隣接するサブキャリア間で一定の位相差となる位相回転で与えるものであり、
該位相回転は少なくとも2つの前記アンテナ選択信号間で異なる量であることを特徴とし、
前記データを送信する際、前記アンテナ選択信号を送信した送信より少ないアンテナ数でデータストリームを送信することを特徴とする送信装置。
【請求項23】
更に受信部を有し、送信先からアンテナを選択するための情報を受信することを特徴とする請求項22記載の送信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−48422(P2013−48422A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198196(P2012−198196)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2010−210421(P2010−210421)の分割
【原出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2010−210421(P2010−210421)の分割
【原出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
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