説明

通信遅延の緩和方法

【課題】PONシステムにおいて、加入者端末に蓄積された上りデータを効率良く局側装置へ送信させる。
【解決手段】
1個の局側装置と複数の加入者端末とで構成されたネットワークにおいて、複数の加入者端末は、固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方の契約がなされている。そして、局側装置は、固定帯域の契約がなされている加入者端末に対しては、少なくとも契約された値の固定帯域を確実に送信許可帯域として割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1個の局側装置と複数の加入者端末とで構成されるネットワークであって、特に、局側装置が、各加入者端末から送信された各帯域要求パケットを受信し、これら帯域要求パケットからこの局側装置の記憶部に格納された各要求帯域に基づいて、各加入者端末に対して送信許可帯域を割り当てるネットワークにおいて、局側装置と各加入者端末との間の通信遅延を緩和する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つの局側装置と、分配器を介してこの局側装置と接続された複数の加入者側装置とによって構成されている通信システムが周知である。近年では、このような通信システムとして、例えば受動型光加入者ネットワーク(以下、PON(Passive Optical Network)とも称する)システム等の、信号媒体として光信号を用いる通信システムが注目されている。
【0003】
PONシステムは、光ネットワークであって、インターネット接続サービス、IP電話、映像配信サービスなどのインターネットプロトコル(IP:Internet Protocol)を使用した各種サービスを提供することができる。
【0004】
図5を参照して、PONシステムの構成について説明する。
【0005】
図5は、PONシステムの概略構成図である。
【0006】
PONシステム100では、キャリアの局舎に設置される局側装置(OLT:Optical Line Terminal)200、及び加入者宅に設置される加入者端末(ONU:Optical Network Unit)300が1本の光ファイバから光スプリッタ400を介して複数の光ファイバに分岐する光ファイバ網で接続されている。
【0007】
PON技術の中で、Ethernet(登録商標)技術を使用したものを、Ethernet(登録商標)−PONと称し、Gigabit(1×10bit/sec)Ethernet(登録商標)技術を使用したものをGE−PONと称する。GE−PONは、IEEE802.3ahで標準化されている(例えば、非特許文献1参照)。また、10Gigabit(1×1010bit/sec)Ethernet技術を使用したものを10GE−PONと称する。10GE−PONは、IEEE802.3avで標準化されている。
【0008】
GE−PONシステムにおいて、OLT200及びONU300間でデータの通信を行うために、OLT200は、下り制御パケットとしてのゲートパケット(以下、単にゲートとも称する)を含む下り信号を各ONUに送信する。
【0009】
ゲートは、各ONUに対して、例えば各ONU300からOLT200に送信される上りデータパケット(以下、単に上りデータとも称する)やレポートパケット等を含む上り信号の送信開始時間、及び各ONUに割り当てた送信許可帯域を以ってその上り信号として送信可能な量を通知する。
【0010】
また、各ONU300は、それぞれ上り制御パケットとしてのレポートパケット(以下、単にレポートとも称する)を含む上り信号を各々OLTに送信する。
【0011】
レポートは、OLT200に対して、例えば各ONU300に蓄積されている上りデータの蓄積量を通知する。
【0012】
図6を参照して、従来のOLT200及び各ONU300間の通信手順について説明する。
【0013】
図6は、従来のOLT200及び各ONU300間の通信手順を説明するシーケンス図である。
【0014】
各ONUのうち、OLT200との間に相互のリンクが確立されたONU300、すなわちIEEE802.3ahで規定された周知のディスカバリシーケンスによりOLT200に登録されたONU300とOLT200との間では、上述したゲート及びレポートを用いて以下のように通信が行われる。なお、図6では、リンクが確立されたONU300のうちのある1つのONUに着目し、このONUとOLT200との間において行われる通信手順を示しているが、実際のPONシステムでは、OLT200及びOLT200とリンクが確立された各ONU300間において、この図6に示すのと同様の通信手順が行われる。また、このシーケンス図では、図中に示してある矢印方向に時間が経過するものとする。
【0015】
すなわち、OLT200は、リンクが確立された各ONU300に対して、ONU300からの上り信号の送信開始時間を通知するためのゲート1を送信する。このゲート1は、OLT200とリンクが確立された各ONU300に対して、一定時間毎に周期的に送信される。
【0016】
そして、時刻t1において、ONU300がゲート1を受信し、この時点においてONU300に上りデータが蓄積されている場合には、各ONU300は、ゲート1によって通知された送信開始時間、すなわち時刻t2において、OLT200に対して、ゲート1を受信した時点までに蓄積された上りデータの蓄積量を通知するためのレポート1を各々送信する。
【0017】
次に、時刻t3において、OLT200は、ONU300から送信されたそれぞれのレポート1を受信する。そして、レポート1からONU300におけるデータの蓄積量を、このONU300が要求する、蓄積量の上りデータを送信するために必要な帯域、すなわち要求帯域として読み出す。
【0018】
次に、OLT200は、この要求帯域に基づいて、各ONU300に対して送信許可帯域を各々割り当てる。そして、時刻t4において、OLT200は、送信許可帯域を通知するためのゲート2をONU300に対して送信することによって、割り当てた送信許可帯域分の上りデータの送信許可を行う。
【0019】
次に、時刻t5において、ONU300は、OLT200から送信されたゲート2を受信する。
【0020】
そして、ONU300は、ONU300が蓄積している上りデータの量、すなわち時刻t1までに蓄積された上りデータのうち、時刻t7にて送信する予定の送信許可帯域分の上りデータ1を除いた残存する分の上りデータの量と、ゲート1を受信した時点(時刻t1)から、レポート2を送信する時点(時刻t6)までに新たに蓄積された上りデータの量との和で算出される蓄積量を通知するために、時刻t6において、OLT200に対してレポート2を送信する。
【0021】
また、時刻t7において、ONU300は、ゲート2によって通知された送信許可帯域分の上りデータ1をOLT200に対して送信する。
【0022】
以降は、上述した時刻t3からt7までの手順と同様に、レポートを受信したOLT200が、ONU300の要求帯域を読み出し、これに基づいて割り当てた送信許可帯域分の上りデータの送信許可をONU300に対して行う過程と、ONU300が、割り当てられた送信許可帯域分の上りデータを送信する過程と、ONU300が、その時刻において蓄積されている上りデータの蓄積量を通知するレポートを送信する過程とが繰り返される。
【0023】
ここで、上述した送信許可帯域は、OLT200において、OLT200に設定された割当可能な全帯域から、各ONU300に対して、OLT200とのリンクが確立されたONU300の台数及びそれら要求帯域の値に基づいて動的に割り当てられる(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】「技術講座 GE−PON技術」NTT技術ジャーナル 2005.8
【非特許文献2】「技術講座 GE−PON技術」NTT技術ジャーナル 2005.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、PONシステムでは、OLT200が、まず、レポートから各ONU300の要求帯域を読み出し、次いで、各ONU300に対する送信許可帯域を動的に算出し、次いで、各ONU300に対して算出された送信許可帯域を割り当てるという一連の動作を行うことが必須である。
【0026】
従って、PONシステムでは、ONU300に蓄積した上りデータが送信されるまでに、ONU300が上りデータの蓄積量を通知するためのレポートをOLT200に対して送信する過程と、OLT200が、送信許可帯域を通知し、送信許可を行うためのゲートをONU300に対して送信する過程を常に経る必要がある。
【0027】
そして、各ONU300には、OLT200との間でレポート及びゲートの通信を行っている間にも上りデータが蓄積されていくため、この蓄積量の増加に伴って上りデータの通信遅延が発生する。
【0028】
また、既に説明したように、送信許可帯域は、OLT200とのリンクが確立されたONU300の台数及びそれら要求帯域の値に基づいて動的に割り当てられる。
【0029】
従って、上りデータが蓄積している、すなわちOLT200に対して帯域を要求しているONU300の台数が多いほど、各ONU300に割り当てられる送信許可帯域は、各々小さくなる。その結果、各ONU300が、蓄積した上りデータを送信するための十分な送信許可帯域を得られない恐れが大きくなる。
【0030】
そして、あるゲートにより与えられた送信許可帯域内で送信できずに残った上りデータは、次回以降の送信時までONU300に蓄積されるため、上りデータの蓄積量が増加し、その結果、上りデータの通信遅延が発生する。
【0031】
この発明の目的は、PONシステムにおいて、ONUに蓄積された上りデータを従来と比して効率良くOLTへ送信することができる通信遅延の緩和方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
そこで、上述した目的の達成を図るために、この発明による通信遅延の緩和方法では、加入者が予め固定帯域を契約することを可能とした。
【0033】
そして、局側装置すなわちOLTが、各加入者端末すなわちONUに対して帯域を割り当てる際に、固定帯域の契約がなされた加入者端末に対しては、毎回少なくとも契約された固定帯域を確実に割り当てることによって、加入者端末に蓄積された上りデータを従来と比して効率良く送信させる。
【0034】
この発明によれば、通信遅延の緩和方法は以下の特徴を有している。
【0035】
すなわち、この発明による通信遅延の緩和方法は、1個の局側装置と複数の加入者端末とで構成され、局側装置が、各加入者端末から送信された各上り信号を受信し、各これら上り信号に含まれる各上り制御パケットから当該局側装置の記憶装置に格納された各要求帯域に基づいて、各加入者端末に対して送信許可帯域を割り当てるネットワークにおける、局側装置と各加入者端末との間の通信遅延を緩和する方法である。
【0036】
そして、複数の加入者端末の、固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方の契約の有無を記憶装置に登録する契約登録過程を含む。
【0037】
また、局側装置は、要求帯域読み出し過程と、固定帯域割当過程と、動的帯域割当過程とを行う。
【0038】
要求帯域読み出し過程は、記憶部から各要求帯域を読み出す第1過程を含んでいる。
【0039】
また、固定帯域割当過程は、各加入者端末について、各々固定帯域の契約があるか否かを判別する第2過程と、第2過程において固定帯域の契約があると判別された各加入者端末に対して、各契約された固定帯域を割り当てる第3過程とを含んでいる。
【0040】
そして、第3過程の後、または、第2過程において固定帯域の契約がないと判別した場合には、前記動的帯域割当過程へ移行する。
【0041】
また、動的帯域割当過程は、各加入者端末について、各々動的帯域の契約があるか否かを判別する第4過程と、この第4過程において動的帯域の契約があると判別された各加入者端末の各要求帯域が、固定帯域割当過程において各割り当てた固定帯域の値よりも大きいか否かを判別する第5過程と、この第5過程において、動的帯域の契約があると判別された各加入者端末の各要求帯域が各割り当てた固定帯域よりも大きい場合には、動的帯域の契約があると判別された各加入者端末に対して動的帯域を通信環境に応じて割り当てることによって、動的帯域と割り当てた固定帯域との和を送信許可帯域とする第6過程と
を含んでいる。
【0042】
第4過程において動的帯域の契約がないと判別された各加入者端末に対しては第5過程及び第6過程を行うことなく、及び第5過程において各要求帯域が各前記割り当てられた固定帯域以下である動的帯域の契約があると判別された各加入者端末に対しては第6過程を行うことなく、割り当てた固定帯域を送信許可帯域とする。
【発明の効果】
【0043】
この発明による通信遅延の緩和方法では、上述したように、各加入者端末は、固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方の契約がなされている。
【0044】
そして、局側装置は、固定帯域の契約がなされた加入者端末に対して、送信許可帯域として、少なくとも契約された固定帯域を確実に割り当てる。
【0045】
従って、この発明による通信遅延の緩和方法では、固定帯域の契約がなされた加入者端末には、局側装置とのリンクが確立された他の加入者端末の台数及びそれらが要求する要求帯域の値に関わらず、少なくとも契約された固定帯域が確実に割り当てられるため、従来と比して効率良く蓄積された上りデータを送信することができる。
【0046】
また、この発明による通信遅延の緩和方法では、局側装置は、固定帯域及び動的帯域のうち固定帯域のみの契約がなされた加入者端末に対しては、従来とは異なり、動的帯域の割り当てを行うことなく、契約された値の固定帯域を送信許可帯域として割り当てる。
【0047】
従って、局側装置は、固定帯域のみの契約がなされた加入者端末については、動的帯域を割り当てるための、局側装置とのリンクが確立された他の加入者端末の台数及びそれらの要求帯域の値に基づいた演算を行う必要がない。そのため、従来と比して、局側装置の動作を簡略化することができる。
【0048】
また、この発明による通信遅延の緩和方法では、局側装置は、固定帯域及び動的帯域の双方の契約がなされた加入者端末に対しても、この加入者端末からの要求帯域が契約された固定帯域以下である場合には、契約された値の固定帯域を送信許可帯域として割り当てる。
【0049】
従って、局側装置は、固定帯域及び動的帯域の双方の契約がなされた加入者端末についても、要求帯域が契約された固定帯域以下である場合には、動的帯域を割り当てるための演算を行う必要がない。そのため、従来と比して、局側装置の動作を簡略化することができる。
【0050】
また、この発明による通信遅延の緩和方法では、局側装置とのリンクが確立された加入者端末が上りデータの蓄積量を通知するためのレポートを送信していない時点においては、局側装置が上述した第1過程において読み出す要求帯域は、0bit/sec(second)となる。
【0051】
そして、固定帯域の契約がなされた加入者端末からの要求帯域が0bit/secである場合には、当然のことながらこの要求帯域が契約された固定帯域以下となるため、局側装置は、この加入者端末に対して固定帯域を送信許可帯域として割り当てる。
【0052】
そのため、この発明による通信遅延の緩和方法では、局側装置は、従来とは異なり、上りデータの蓄積量が0のレポートを受信した時点においても、加入者端末に対して送信許可帯域を割り当て、この送信許可帯域分の送信許可を通知することができる。従って、この発明による通信遅延の緩和方法では、従来と比して通信遅延を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】OLTの概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るOLTの動作フローを示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態に係るOLT200及び各ONU300間の通信手順を説明するシーケンス図である。
【図4】第2の実施の形態に係るOLTの動作フローを示すフローチャートである。
【図5】PONシステムの概略構成図である。
【図6】従来のOLT200及び各ONU300間の通信手順を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態に係る通信装置について説明する。なお、各図は、この発明が理解できる程度に、各構成要素の配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。従って、この発明の構成は、何ら図示の構成例にのみ限定されるものではない。
【0055】
〈第1の実施の形態〉
第1の実施の形態では、1個の局側装置すなわちOLTと複数の加入者端末すなわちONUとで構成されるPONシステムにおける、局側装置と各加入者端末との間の通信遅延の緩和方法について説明する。
【0056】
第1の実施の形態に係る通信遅延の緩和方法は、図5を参照して説明したPONシステム100に対して適用される。そして、この通信遅延の緩和方法は、OLT200が備えている制御信号処理部を構成する例えばCPU(Central Processing Unit)のプログラムを従来と変更することによって容易に達成することができる。なお、ONU300の構成及び動作については、従来と同様であるためその説明を省略する。
【0057】
まず、図1を参照してOLT200の構成について説明する。
【0058】
図1は、OLT200の概略構成図である。
【0059】
OLT200は、上位ネットワーク側受信部202、上位ネットワーク側送信部204、データ中継処理部206、PON側受信部212、PON側送信部214、光受信部222、光送信部224、合分波部230、制御信号処理部240、及び記憶部250とデータベース260とを含む記憶装置270を具えている。
【0060】
なお、OLT200は、例えば、周波数fで通信を行っているものとする。従って、この場合の最大帯域は周知の通りfbit/secとなる。
【0061】
上位ネットワーク側受信部202は、上位ネットワークから下りデータパケット(以下、単位下りデータとも称する)を受信し、この下りデータをデータ中継処理部206に送る。データ中継処理部206は、受け取った下りデータをPON側送信部214に送る。PON側送信部214は、受け取った下りデータを符号化した後、光送信部224に送る。また、PON側送信部214は、制御信号処理部240において生成された下り制御パケットを受け取り、受け取った下り制御パケットを符号化した後、光送信部224に送る。光送信部224は、例えばレーザダイオード(LD)等の任意好適な電気/光変換手段を有して構成され、符号化された下りデータまたは下り制御パケットを所定の波長の光信号に変換する。光送信部224で生成された光信号は、合分波部230を経て下り信号として各ONU300(図5参照)に送られる。
【0062】
一方、各ONUから送られた光信号としての上り信号は、合分波部230を経て光受信部222に送られる。光受信部222は、フォトダイオード(PD)等の任意好適な光変換手段を有して構成され、光信号を電気信号に変換する。変換された電気信号は、PON側受信部212に送られる。PON側受信部212は、電気信号を符号化して、上りデータ、または例えばレポート等の上り制御パケットを復元する。復元された上りデータは、データ中継処理部206を経て上位ネットワーク側送信部204に送られる。また、上り制御パケットは、制御信号処理部240に送られる。上位ネットワーク側送信部204は、上りデータを上位ネットワークに送信する。
【0063】
また、制御信号処理部240は、例えばCPU等で構成されており、各ONU300に割り当てる上り信号の送信許可帯域や及び上り信号の送信開始時間の制御等、OLT200とONU300との間で送受信される信号に関する制御を行う。
【0064】
制御信号処理部240は、台数把握手段241、契約判別手段243、帯域判別手段245、動的帯域演算手段247、及びゲート生成手段249を具えている。
【0065】
台数把握手段241は、OLT200との間に相互のリンクが確立されたONU300、すなわち、IEEE802.3ah及びIEEE802.3avで規定された周知のディスカバリシーケンスによりOLT200に登録されたONU300の台数を把握する。そのために、制御信号処理部240は、OLT200と接続された各ONU300のうち、いずれのONU300が登録されているかを記憶装置270の一部である記憶部250から読み出し、台数把握手段241によってその台数を把握する。
【0066】
また、契約判別手段243は、OLT200と接続されている各ONU300についてそれぞれの契約状況を判別する。
【0067】
ここで、第1の実施の形態に係る通信遅延の緩和方法において、各ONU300には、固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方の契約の有無が予め設定されている。各ONU300についていずれの契約がなされているかに関する情報(以下、契約情報とも称する)が、例えば2bitの2値信号の形態(00)、(01)、(10)、及び(11)で記憶装置270、すなわち記憶装置270の一部であるデータベース260に格納されている。そして、制御信号処理部240は、データベース260からこの契約情報を読み出し、読み出した契約情報に基づき、契約判別手段243によって、各ONU300に、契約なし(00)か、或いは、固定帯域及び動的帯域の双方(11)、固定帯域(01)のみ、または動的帯域(10)のみのうち、いずれの契約がなされているかを判別する。この契約の内容は、固定帯域の場合には、加入者が固定帯域の割当を受ける権利とともに、その具体的なFbit/secの帯域が割り当てられる権利を有することである。また、動的帯域の場合には、加入者が動的帯域の割当を受ける権利を有するが、動的帯域として具体的に割り当てられるDbit/secは、通信時における通信環境に応じて、その都度決定されて割当が行われる権利を有することである。なお、通信環境としては、例えばOLT200とのリンクが確立されたONU300の台数、及びそれらの各要求帯域の値、またはそれらに既に割り当てられている各固定帯域の値等がある。
【0068】
また、帯域判別手段245は、ONU300の要求帯域(ここでは、例えばRbit/secとする)が、このONU300に割り当てられた固定帯域、すなわち予め契約された固定帯域よりも大きいか否かを判別する。なお、固定帯域の契約がなされていないONU300については、固定帯域を0bit/secとして、要求帯域との比較が行われる。
【0069】
なお、要求帯域は、ONU300が蓄積している上りデータを送信するために必要な帯域であり、ONU300から送信されるレポートによりONU300に蓄積されている上りデータの蓄積量として、OLT200に通知される。また、レポートは、既に説明したように、PON側受信部212から制御信号処理部240に送られる。そして、要求帯域は、このレポートから一旦記憶部250に格納される。制御信号処理部240は、この記憶部250に格納された要求帯域を読み出し、読み出した要求帯域を参照して、帯域判別手段245によって契約された固定帯域との比較を行う。また、契約された固定帯域の値は、データベース260から読み出される。
【0070】
また、動的帯域演算手段247は、例えば周知のDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)コントローラであるのが好ましい。そして、動的帯域演算手段247は、OLT200とのリンクが確立されたONU300の台数、及びそれらの各要求帯域の値(Rbit/sec)、またはそれらに既に割り当てられている各固定帯域の値(Fbit/sec)に基づいて、動的帯域の契約がなされているONU300に対して、動的帯域を割り当てるための演算を行う。
【0071】
また、ゲート生成手段249は、各ONU300に割り当てた各送信許可帯域を通知するための下り制御パケットとしてのゲートを作成する。なお、ここでは、この送信許可帯域を例えばAbit/secとする。
【0072】
次に、図2を参照して、第1の実施の形態に係るOLT200が、このOLT200とリンクが確立されたONU300に対して送信許可帯域を割り当て、さらに割り当てた送信許可帯域をONU300に対して通知するまでの動作フローについて説明する。
【0073】
図2は、第1の実施の形態に係るOLT200の動作フローを示すフローチャートである。
【0074】
なお、この第1の実施の形態では、OLT200と接続されている各ONU300は、予め各加入者によって固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方の契約がなされている。
【0075】
第1の実施の形態において、OLT200は、要求帯域読み出し過程と、固定帯域割当過程と、動的帯域割当過程とを行う。
【0076】
まず、OLT200は、要求帯域読み出し過程を行う。
【0077】
要求帯域読み出し過程は、第1過程S1を含んでいる。
【0078】
第1過程S1では、OLT200は、記憶部250からリンクが確立された各ONU300からの各要求帯域(Rbit/sec)を読み出す。
【0079】
既に説明したように、これら要求帯域は、OLT200とのリンクが確立された各ONU300から送信されるレポートによりこれらONU300に蓄積されている上りデータの蓄積量として、OLT200に通知される。レポートは、PON側受信部212から制御信号処理部240に送られる。そして、要求帯域は、このレポートから一旦記憶部250に格納される。
【0080】
そこで、この第1過程S1では、制御信号処理部240が、記憶部250に格納されている各ONU300からの要求帯域(Rbit/sec)を読み出す。
【0081】
なお、制御信号処理部240は、OLT200との通信の開始時におけるONU300、すなわち、OLT200とのリンクが確立された後であって、上りデータの蓄積量を通知するためのレポートをOLT200に対して送信する前のONU300からの要求帯域をRbit/sec=0bit/secとして読み出す。
【0082】
次に、OLT200は、固定帯域割当過程を行う。
【0083】
固定帯域割当過程は、第2過程S2及び第3過程S3を含んでいる。
【0084】
まず、第2過程S2では、OLT200は、リンクが確立された各ONU300について、各々固定帯域の契約があるか否かを判別する。
【0085】
既に説明したように、この第1の実施の形態では、各ONU300は、固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方の契約がなされている。そして、各ONU300の契約情報は、データベース260に格納されている。
【0086】
そこで、この第2過程S2では、まず、制御信号処理部240は、データベース260に格納されている、OLT200とのリンクが確立している各ONU300の契約情報を読み出す。そして、上述した契約判別手段243が、この読み出した契約情報を参照し、各ONU300に固定帯域の契約がなされているか否かを判別する。
【0087】
そして、OLT200は、この第2過程S2において固定帯域の契約がなされている(Yes)と判別されたONU300の各々に対しては、続く第3過程S3を行う。
【0088】
また、OLT200は、この第2過程S2において固定帯域の契約がなされていない(No)と判別されたONU300の各々に対しては、続く第3過程S3を行うことなく、後述する動的帯域割当過程を行う。すなわち、固定帯域の契約がなされていない(No)と判別されたONU300の各々に対しては、続く第3過程S3を行うことなく、第4過程S4に移行する。
【0089】
次に、第3過程S3では、OLT200は、上述した第2過程S2において固定帯域の契約がなされている(Yes)と判別された各ONU300に対して、各契約された固定帯域を割り当てる。
【0090】
固定帯域の契約がなされているONU300は、予め加入者によって任意の値の固定帯域がそれそれぞれ契約されている。これら各契約された固定帯域の値は、データベース260に格納されている。なお、各ONU300の固定帯域は異なるか、部分的に或いは全部同一となっている場合もあるが、ここでは、各固定帯域を代表して例えばFbit/secとする。
【0091】
そこで、制御信号処理部240は、この第3過程S3において、データベース260から各契約された固定帯域を読み出し、これら読み出した各契約された固定帯域を、固定帯域の契約がなされている各ONU300に対してそれぞれ割り当てる。
【0092】
次に、OLT200は、動的帯域割当過程を行う。
【0093】
動的帯域割当過程は、第4過程S4から第6過程S6までを含んでいる。
【0094】
まず、第4過程S4では、OLT200は、リンクが確立された各ONUについて、各々動的帯域の契約があるか否かを判別する。
【0095】
既に説明したように、各ONU300の契約情報は、データベース260に格納されている。
【0096】
そこで、この第4過程S4では、まず、制御信号処理部240は、データベース260に格納されている、OLT200とのリンクが確立している各ONU300の契約情報を読み出す。そして、上述した契約判別手段243が、この読み出した契約情報を参照し、各ONU300に動的帯域の契約がなされているか否かを判別する。
【0097】
そして、OLT200は、この第4過程S4において動的帯域の契約がなされている(Yes)と判別されたONU300の各々に対しては、続く第5過程S5を行う。
【0098】
また、OLT200は、この第4過程S4において動的帯域の契約がなされていない(No)と判別されたONU300の各々に対しては、続く第5過程S5及び第6過程を行うことなく、上述した固定帯域割当過程の第3過程S3において割り当てた固定帯域を、これらONU300に対して割り当てる送信許可帯域(Abit/sec)として決定する。そして、後述する第7過程S7に移行する。
【0099】
なお、既に説明したように、ONU300は、固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方の契約がなされている。従って、この第4過程S4において動的帯域の契約がなされていない(No)と判別されたONU300は、必ず固定帯域の契約がなされている。そのため、動的帯域の契約がなされていないONU300に対しては、確実に契約した値の固定帯域(Fbit/sec)が割り当てられる。
【0100】
ここで、OLT200とのリンクが確立されているONU300全てが、固定帯域及び動的帯域のうち、固定帯域のみの契約を行っている場合には、この第4過程S4において、OLT200は、これらONU300の全てを、動的帯域の契約がなされていない(No)と判別する。従って、OLT200は、この第4過程S4において動的帯域の契約がなされていない(No)と判別されたONU300の各々に対しては、続く第4過程S4及び第5過程S5を行う必要がなく、上述した第3過程S3において割り当てた固定帯域(Fbit/sec)を、これら全てのONU300に対する送信許可帯域(Abit/sec)として決定する。
【0101】
従って、この第1の実施の形態において、OLT200とのリンクが確立されているONU300全てが、固定帯域のみの契約を行っている場合には、実質的に第3過程S3において各ONU300に対して固定帯域(Fbit/sec)を割り当てた時点で、これら各ONU300への送信許可帯域(Abit/sec)の割当が完了する。
【0102】
次に、第5過程S5では、OLT200は、第4過程S4において動的帯域の契約があると判別された各ONU300の各要求帯域(Rbit/sec)が、固定帯域割当過程において各割り当てた固定帯域の値(Fbit/sec)よりも大きいか否かを判別する。
【0103】
そのために、制御信号処理部240は、記憶部250に格納されている、各動的帯域の契約がなされたONU300からの要求帯域(Fbit/sec)を読み出し参照する。
【0104】
また、制御信号処理部240は、上述した固定帯域割当過程の第3過程S3においてこれら各動的帯域の契約がなされたONU300に割り当てた固定帯域(Fbit/sec)を参照する。上述したように、この実施の形態では、固定帯域はONU300毎に予め契約された値(Fbit/sec)が各々割り当てられる。そして、ONU300が契約した各固定帯域の値(Fbit/sec)は、データベース260に格納されている。そこで、制御信号処理部240は、データベース260から、各ONU300が契約した各固定帯域の値を読み出すことによって、第3過程S3において割り当てた固定帯域(Fbit/sec)を参照する。
【0105】
そして、制御信号処理部240は、上述した帯域判別手段245において、これら参照した要求帯域(Rbit/sec)及び第3過程S3において割り当てた固定帯域(Fbit/sec)を比較することによって、要求帯域が各割り当てた固定帯域の値よりも大きいか否かを判別する。
【0106】
そして、OLT200は、この第5過程S5において、動的帯域の契約がなされた各ONU300の各要求帯域が各割り当てた固定帯域よりも大きい(Yes)と判別されたONU300に対しては、続く第6過程S6を行う。
【0107】
また、OLT200は、この第5過程S5において、動的帯域の契約がなされた各ONU300の各要求帯域(Rbit/sec)が各割り当てた固定帯域(Fbit/sec)以下である(No)と判別されたONU300の各々に対しては、続く第5過程S5及び第6過程を行うことなく、上述した固定帯域割当過程の第3過程S3において割り当てた固定帯域(Fbit/sec)を、これらONU300に対して割り当てる送信許可帯域(Abit/sec)として決定する。そして、後述する第7過程S7に移行する。
【0108】
なお、固定帯域の契約がなされていないONU300については、既に説明したように、上述した第3過程が行われていない。従って、この第5過程において、帯域判別手段245は、固定帯域の契約がなされていないONU300については、割り当てた固定帯域を0bit/secとして要求帯域との比較を行う。そのため、固定帯域の契約がなされていないONU300がレポートを送信することによって上りデータの蓄積量をOLT200に対して通信している限り、すなわち帯域を要求している限り、この第5過程において、OLT200は、固定帯域の契約がなされていないONU300に対して、要求帯域が割り当てた固定帯域よりも大きい(Yes)と判別する。
【0109】
次に、第6過程S6では、OLT200は、動的帯域の契約がなされ、かつそれらの要求帯域が第3過程S3において各割り当てた固定帯域よりも大きい各ONUに対して、動的帯域を割り当てる。
【0110】
そのために、制御信号制御部240は、上述した台数把握手段241によって、OLT200とのリンクが確立されたONU300の台数を把握する。
【0111】
そして、制御信号制御部240は、上述した動的帯域演算手段247によって、台数把握手段241によって把握されたOLT200とのリンクが確立されたONU300の台数、及びそれらの各要求帯域の値(Rbit/sec)、またはそれらに上述した第3過程S3において既に割り当てられている各固定帯域の値(Fbit/sec)に基づいて、動的帯域(Dbit/sec)を割り当てるための演算を行う。
【0112】
この演算結果に基づいて、制御信号制御部240は、動的帯域の契約がなされ、かつそれらの要求帯域(Rbit/sec)が第3過程S3において各割り当てた固定帯域(Fbit/sec)よりも大きい各ONU300に対して動的帯域(Dbit/sec)を割り当てる。
【0113】
そして、これらの各ONU300に対して、この第6過程S6において割り当てた動的帯域と第3過程S3において割り当てた固定帯域との和(Dbit/sec+Fbit/sec)を送信許可帯域(Abit/sec)として決定する。
【0114】
なお、固定帯域の契約がなされていないONU300については、上述した第3過程S3が行われていないため、すなわち割り当てた固定帯域が0bit/secであるため、この第6過程S6において割り当てた動的帯域を送信許可帯域として決定する。
【0115】
このように、第1の実施の形態では、OLT200は、上述した要求帯域読み出し過程、固定帯域割当過程、及び動的帯域割当過程を行うことによって、OLT200とリンクが確立された各ONU300に対して送信許可帯域を割り当てる。
【0116】
そして、OLT200は、各ONU300に対して割り当てる送信許可帯域を決定した後に、第7過程S7を行う。
【0117】
第7過程S7では、OLT200は、各ONU300に対して、各々割り当てた送信許可帯域を通知するためのゲートを生成し送信する。
【0118】
すなわち、この第7過程S7では、制御信号制御部240が、各ONU300にそれぞれ割り当てた送信許可帯域を通知するための下り制御パケットとしてのゲートをゲート生成手段249によって生成する。その後、OLT200は、生成したゲートを各ONU300に対して送信することによって、各ONU300に対して各々割り当てた送信許可帯域を通知する。そして、このゲートの送信を以って、各割り当てた送信許可帯域分の上りデータの送信を許可する。
【0119】
さらに、第1の実施の形態では、OLT200は、第7過程S7に続いて、第8過程S8を行う。
【0120】
第8過程S8では、OLT200は、OLT200とのリンクが確立されているONU300の有無を判別する。
【0121】
そのために、制御信号処理部240は、台数把握手段241によって、OLT200とリンクが確立されているONU300が0台であるか否かを把握する。
【0122】
そして、OLT200は、この第8過程S8において、OLT200とリンクが確立されているONU300が0台である(Yes)と判別した場合には、各ONU300に対する送信許可帯域の割り当て、これら送信許可帯域を通知するためのフローを終了する。
【0123】
また、OLT200は、この第8過程S8において、OLT200とリンクが確立されているONU300が0台でなない(No)と判別した場合、すなわちOLT200とのリンクが確立されているONU300が少なくとも1台以上存在している場合には、要求帯域に移行し、再び上述した第1過程S1からこの第8過程S8までのフローを行う。
【0124】
このように、第1の実施の形態では、OLT200は、固定帯域の契約がなされたONU300に対して、送信許可帯域として、少なくとも契約された固定帯域を確実に割り当てる。
【0125】
従って、この第1の実施の形態による通信遅延の緩和方法では、固定帯域の契約がなされたONU300には、OLT200とのリンクが確立された他のONU300の台数及びそれらが要求する要求帯域の値に関わらず、少なくとも契約された固定帯域が確実に割り当てられる。そのため、第1の実施の形態をPONシステム100に適用することによって、ONU300が従来と比して効率良く蓄積された上りデータを送信することができる。
【0126】
また、この第1の実施の形態では、OLT200は、固定帯域及び動的帯域のうち固定帯域のみの契約がなされたONU300に対しては、従来とは異なり、動的帯域の割り当てを行うことなく、要求帯域の値に関わらず、予め契約された値の固定帯域を送信許可帯域として割り当てる。
【0127】
従って、OLT200は、固定帯域のみの契約がなされたONU300については、動的帯域を割り当てるために、すなわちOLT200とのリンクが確立された他のONU300の台数及びそれらの要求帯域の値に基づいた演算過程、すなわち上述した第6過程S6を行う必要がない。そのため、従来と比して、OLT200の動作を簡略化することができる。
【0128】
また、この第1の実施の形態では、OLT200は、固定帯域及び動的帯域の双方の契約がなされたONU300に対しても、このONU300からの要求帯域が契約された固定帯域以下である場合には、要求帯域の値に関わらず、予め契約された値の固定帯域を送信許可帯域として割り当てる。
【0129】
従って、この場合には、OLT200は、固定帯域及び動的帯域の双方の契約がなされたONU300についても、動的帯域を割り当てるための演算過程、すなわち上述した第6過程S6を行う必要がない。そのため、従来と比して、OLT200の動作を簡略化することができる。
【0130】
次に、図3を参照して、第1の実施の形態に係るPONシステムにおける、OLT200及び各ONU300間の通信手順について説明する。
【0131】
図3は、第1の実施の形態に係るOLT200及び各ONU300間の通信手順を説明するシーケンス図である。
【0132】
なお、図3では、リンクが確立されたONU300のうちのある1つのONU300に着目し、このONU300とOLT200との間において行われる通信手順を示しているが、PONシステム100においてOLT200とリンクが確立された各ONU300が複数台存在している場合には、OLT200は、同時に各ONU300との間において通信を行っている。
【0133】
また、図3に係るONU300は、固定帯域の契約がなされているものとする。
【0134】
また、図3では、図中に示してある矢印方向に時間が経過するものとする。
【0135】
まず、OLT200とONU300との間にリンクが確立されると、OLT200は、上述した第1過程S1から第6過程S6までのフロー(図2参照)を行い、このONU300に対して送信許可帯域の割当を行う。
【0136】
ここで、OLT200及びONU300間の通信の開始時、すなわち、OLT200及びONU300間のリンクが確立された後であって、OLT200が、ONU300から送信された、上りデータの蓄積量を通知するためのレポートを受信する前においては、上述した第1過程S1においてOLT200が読み出す、ONU300からの要求帯域は0bit/secとなる。
【0137】
そして、リンクが確立されているONU300に、予め固定帯域の契約がなされている場合には、OLT200は、上述した第3過程S3において固定帯域を割り当てる。
【0138】
通信の開始時では、第1過程S1において読み出したONU300からの要求帯域が0bit/secであるため、このONU300に固定帯域のみの契約がなされている場合、または固定帯域及び動的帯域の双方の契約がなされている場合のいずれの場合においても、当然のことながら要求帯域が契約された固定帯域以下となる。従って、通信の開始時では、OLT200は、動的帯域の契約の有無に関わらず、固定帯域の契約がなされたONU300に対して、第3過程S3で割り当てた固定帯域を送信許可帯域として決定する。
【0139】
そして、時刻t1において、決定した送信許可帯域を通知するために、OLT200は、上述した第7過程S7を行うことによってONU300に対してゲート1を送信する。
【0140】
次に、時刻t2において、ONU300は、OLT200から送信されたゲート1を受信する。
【0141】
そして、時刻t3において、ONU300は、時刻t4にて送信する予定の上りデータ1のデータ量を除いたONU300が蓄積している上りデータの蓄積量、すなわち時刻t3までに蓄積された上りデータのうち、送信許可帯域分の上りデータ1の送信予定のデータ量を除いた残存する分の上りデータの蓄積量を通知するために、OLT200に対してレポート1を送信する。なお、ゲート1によって通知された送信許可帯域内で、時刻t3までに蓄積された上りデータを全て送信することが可能であった場合には、ONU300は、OLT200に対して、レポート1によって上りデータの蓄積量を0bitと通知する。
【0142】
また、時刻t4において、ONU300は、ゲート1によって通知された送信許可帯域分の上りデータ1をOLT200に対して送信する。
【0143】
次に、OLT200は、時刻t5においてレポート1を、また、時刻t6において上りデータ1を受信する。
【0144】
上りデータ1を受信したOLT200は、上りデータ1を上位ネットワークへ送信する(図示せず)。
【0145】
また、OLT200は、上述した第1過程S1を行うことによって、受信したレポート1からONU300の要求帯域を読み出す。そして、上述した第6過程S6までの過程を経て、ONU300に対して送信許可帯域を割り当てる。
【0146】
このとき、ONU300に固定帯域及び動的帯域のうち固定帯域の契約のみがなされている場合には、既に説明したように、OLT200は、ONU300からの要求帯域の値に関わらず、契約された値の固定帯域を送信許可帯域としてONU300に対して割り当てる。
【0147】
また、ONU300に固定帯域及び動的帯域の双方の契約がなされている場合であって、ONU300からの要求帯域が契約された固定帯域以下である場合には、既に説明したように、OLT200は、この要求帯域の値に関わらず、契約された値の固定帯域を送信許可帯域としてONU300に対して割り当てる。
【0148】
また、ONU300に固定帯域及び動的帯域の双方の契約がなされている場合であって、ONU300からの要求帯域が契約された固定帯域よりも大きい場合には、OLT200は、契約された固定帯域と、第6過程S6において割り当てられる動的帯域との和を送信許可帯域としてONU300に対して割り当てる。
【0149】
このように、この第1の実施の形態では、OLT200は、固定帯域の契約がなされたONU300に対しては、送信許可帯域として、少なくとも確実に契約された固定帯域を割り当てる。
【0150】
そして、時刻t7において、決定した送信許可帯域を通知するために、OLT200は、上述した第7過程S7を行うことによってONU300に対してゲート2を送信する。
【0151】
次に、時刻t8において、ONU300は、OLT200から送信されたゲート2を受信する。
【0152】
そして、時刻t9において、ONU300は、上りデータ2を送信した後にONU300が蓄積している上りデータの蓄積量、すなわち時刻t3において上りデータ1を送信した後に残存した分の上りデータの蓄積量、及び時刻t3からt9までに新たに蓄積した上りデータの蓄積量の和によって算出される蓄積量のうち、上りデータ2を送信した後に残存する分の上りデータの蓄積量を通知するために、OLT200に対してレポート2を送信する。なお、ゲート2によって通知された送信許可帯域内で、時刻t9までに蓄積された上りデータを全て送信することが可能であった場合には、ONU300は、OLT200に対して、レポート2によって上りデータの蓄積量を0bitと通知する。
【0153】
また、時刻t10において、ONU300は、ゲート2によって通知された送信許可帯域分の上りデータ2をOLT200に対して送信する。
【0154】

以降は、上述した時刻t6からt10までの手順と同様に、レポートを受信したOLT200が、ONU300の契約状況及び要求帯域に基づいて割り当てた送信許可帯域をゲートによってONU300に対して通知する過程と、ONU300が、割り当てられ通知された送信許可帯域分の上りデータを送信する過程と、その時刻において蓄積されている上りデータの蓄積量をレポートとして送信する過程とが繰り返される。
【0155】
以上に説明したように、第1の実施の形態では、OLT200とのリンクが確立されたONU300が上りデータの蓄積量を通知するためのレポートを送信していない時点においては、OLT200が上述した第1過程S1において読み出す要求帯域が0bit/sec(second)となる。
【0156】
そして、固定帯域の契約がなされたONU300からの要求帯域が0bit/secである場合には、当然のことながらこの要求帯域が契約された固定帯域以下となる。そのため、OLT200は、このONU300に対して固定帯域を送信許可帯域として割り当てる。
【0157】
従って、この第1の実施の形態では、OLT200は、従来とは異なり、上りデータの蓄積量を通知するためのレポートを受信していない時点、例えば上述した通信の開始時においても、固定帯域の契約がなされたONU300に対しては、契約された値の固定帯域を送信許可帯域として割り当て、この送信許可帯域分の送信許可を通知することができる。従って、この第1の実施の形態では、従来と比して通信遅延を緩和することができる。
【0158】
また、第1の実施の形態では、OLT200は、固定帯域の契約がなされたONU300に対しては、要求帯域の値に関わらず、送信許可帯域として、少なくとも確実に契約された固定帯域を割り当てることができる。そのため、第1の実施の形態をPONシステム100に適用することによって、ONU300が従来と比して効率良く蓄積された上りデータを送信することができる。
【0159】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、1個の局側装置すなわちOLTと複数の加入者端末すなわちONUとで構成されるPONシステムにおける、局側装置と各加入者端末との間の通信遅延の緩和方法について説明する。
【0160】
なお、この第2の実施の形態による通信遅延の緩和方法が、上述した第1の実施の形態による通信遅延の緩和方法と相違するのは、上述した要求帯域読み出し過程の前に、台数判別過程を追加的に行う点、及び台数判別過程において、通信中、すなわちOLTとのリンクが確立されているONUが1台である場合には、このONUに対して送信許可帯域として割当可能な全帯域を割り当てる点である。この通信遅延の緩和方法は、OLT200が備えている制御信号処理部240を構成する例えばCPUのプログラムを第1の実施の形態から変更することによって容易に達成することができる。OLTの構成、その他の構成及び作用効果は、第1の実施の形態と同様であるので、共通する構成要素、動作フローについては、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0161】
図4を参照して、第2の実施の形態に係るOLT200が、このOLT200とリンクが確立されたONU300に対して送信許可帯域を割り当て、さらに割り当てた送信許可帯域をONU300に対して通知するまでの動作フローについて説明する。
【0162】
図4は、第2の実施の形態に係るOLT200の動作フローを示すフローチャートである。
【0163】
まず、OLT200は、通信中のONU300の台数を判別する台数判別過程S9を行う。
【0164】
そのために、制御信号処理部240は、OLT200と接続された各ONU300のうち、いずれのONU300がOLT200に登録されているかを記憶部250から読み出し、台数把握手段241によって通信中、すなわちOLT200とのリンクが確立されている台数を把握する。
【0165】
そして、OLT200は、この台数判別過程S9において、通信中のONU300が複数台であるか否かを判別する。
【0166】
その結果、OLT200は、この台数判別過程S9において、通信中のONU300が複数台であると判別した場合には、上述した第1の実施の形態と同様の要求帯域読み出し過程、固定帯域割当過程、及び動的帯域割当過程、すなわち上述した第1過程S1〜第6過程S6を行い、その後、上述した第7過程S7及び第8過程S8を行う。なお、これら第1過程S1から第8過程S8までは、上述した第1の実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0167】
また、この台数判別過程S9において、通信中のONU300が1台であると判別した場合には、要求帯域読み出し過程、固定帯域割当過程、及び動的帯域割当過程を行うことなく全帯域割当過程S10に移行する。
【0168】
全帯域割当過程S10では、OLT200は、通信中である1台のONU300に対して、送信許可帯域として割当可能な全帯域を割り当てる。
【0169】
この全帯域割当過程S10において、制御信号処理部240は、通信中である1台のONU300が、固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方のうち、いずれの契約がなされているかに関わらず、また、このONU300からの要求帯域の値に関わらず、OLT200に予め設定されている割当可能な全帯域をこのONU300に対して割り当て、この全帯域を送信許可帯域として決定する。
【0170】
このように、全帯域割当過程S10においてONU300に対する送信許可帯域を決定した後、OLT200は、上述した第7過程S7を行う。これによって、OLT200は、通信中である1台のONU300に対してゲートを送信し、決定した送信許可帯域を通知する。
【0171】
その後、上述した第1の実施の形態と同様に、上述した第8過程S8を行う。
【0172】
このように、第2の実施の形態では、通信中のONU300が1台である場合において、OLT200は、このONU300に対して割当可能な全帯域を割り当てる。
【0173】
従って、第2の実施の形態をPONシステム100に適用することによって、通信中のONU300が1台である場合には、従来とは異なり、OLT200が動的帯域の割り当てを行うことなく、ONU300が効率良く蓄積された上りデータを送信することができる。
【0174】
また、この第2の実施の形態では、通信中のONU300が1台である場合には、このONU300の契約状況及びこのONUからの要求帯域の値に関わらず、OLT200は、要求帯域読み出し過程、固定帯域割当過程、及び動的帯域割当過程を行うことなく送信許可帯域の割当を行う。従って、上述した第1の実施の形態と比して、よりOLT200の動作を簡略化することができる。
【0175】
また、この第2の実施の形態では、通信中のONU300が1台である場合には、このONU300の契約状況及びこのONUからの要求帯域の値に関わらず、OLT200は、上りデータの蓄積量を通知するためのレポートを受信していない時点、例えば上述した通信の開始時において、このONU300に対して、割当可能な全帯域分の送信許可を通知することができる。従って、この第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と比してより効率良く通信遅延を緩和することができる。
【符号の説明】
【0176】
100:PONシステム
200:局側装置(OLT)
202:上位ネットワーク側受信部
204:上位ネットワーク側送信部
206:データ中継処理部
212:PON側受信部
214:PON側送信部
222:光受信部
224:光送信部
230:合分波部
240:制御信号処理部
241:台数把握手段
243:契約判別手段
245:帯域判別手段
247:動的帯域演算手段
249:ゲート生成手段
250:記憶部
260:データベース
270:記憶装置
300:加入者端末(ONU)
400:光スプリッタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個の局側装置と複数の加入者端末とで構成され、
該局側装置が、各該加入者端末から送信された各上り信号を受信し、各該上り信号に含まれる各上り制御パケットから当該局側装置の記憶装置に格納された各要求帯域に基づいて、各該加入者端末に対して送信許可帯域を割り当てるネットワークにおける、
該局側装置と各該加入者端末との間の通信遅延を緩和する方法であって、
前記複数の加入者端末の、固定帯域及び動的帯域の双方またはいずれか一方の契約の有無を前記記憶装置に登録する契約登録過程を含み、
前記局側装置は、要求帯域読み出し過程と、固定帯域割当過程と、動的帯域割当過程とを行い、
前記要求帯域読み出し過程は、
前記記憶装置から各要求帯域を読み出す第1過程を含み、
固定帯域割当過程は、
各前記加入者端末について、各々前記固定帯域の契約の有無を判別する第2過程と、
該第2過程において前記固定帯域の契約があると判別された各前記加入者端末に対して、各契約された固定帯域を割り当てる第3過程と
を含み、
該第3過程の後、または、前記第2過程において前記固定帯域の契約がないと判別した場合には、前記動的帯域割当過程へ移行し、
前記動的帯域割当過程は、
各前記加入者端末について、各々前記動的帯域の契約の有無を判別する第4過程と、
該第4過程において前記動的帯域の契約があると判別された各前記加入者端末の各前記要求帯域が、前記固定帯域割当過程において各割り当てた固定帯域よりも大きいか否かを判別する第5過程と、
該第5過程において、各前記要求帯域が各前記割り当てた固定帯域よりも大きいと判別された場合には、当該判別結果に係る各加入者端末に対して動的帯域を通信環境に応じて割り当てることによって、該動的帯域と前記割り当てた固定帯域との和を前記送信許可帯域として割り当てる第6過程と
を含み、
前記第4過程において前記動的帯域の契約がないと判別された各前記加入者端末に対しては、前記割り当てた固定帯域を前記送信許可帯域として割り当てる
ことを特徴とする通信遅延の緩和方法。
【請求項2】
請求項1に記載の通信遅延の緩和方法であって、
前記局側装置は、前記要求帯域読み出し過程の前に、通信中の前記加入者端末の台数を判別する台数判別過程を含み、
該台数判別過程において、通信中の前記加入者端末が複数台であると判別した場合には、前記要求帯域読み出し過程、前記固定帯域割当過程、及び前記動的帯域割当過程を行い、
前記台数判別過程において、通信中の前記加入者端末が1台であると判別した場合には、前記要求帯域読み出し過程、前記固定帯域割当過程、及び前記動的帯域割当過程を行うことなく、前記送信許可帯域として割当可能な全帯域を該加入者端末に対して割り当てる
ことを特徴とする通信遅延の緩和方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−146780(P2011−146780A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3925(P2010−3925)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(503262509)株式会社オー・エフ・ネットワークス (62)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】